(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065144
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】マイクロ波加熱装置
(51)【国際特許分類】
H05B 6/64 20060101AFI20230502BHJP
H05B 6/72 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
H05B6/64 D
H05B6/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】59
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175778
(22)【出願日】2021-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183276
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 裕三
(72)【発明者】
【氏名】前田 和樹
(72)【発明者】
【氏名】細川 大介
(72)【発明者】
【氏名】大森 義治
【テーマコード(参考)】
3K090
【Fターム(参考)】
3K090AA01
3K090AB02
3K090BA01
3K090DA08
3K090DA17
3K090EB05
3K090EB06
3K090EB07
3K090EB14
(57)【要約】
【課題】被加熱物により適した調理が可能なマイクロ波加熱装置を提供すること。
【解決手段】マイクロ波加熱装置(100)は、被加熱物(102A、102B)を配置する加熱室(101)と、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生部(103)と、マイクロ波発生部(103)が発生させたマイクロ波を加熱室(101)内に放射するマイクロ波放射部(104)と、加熱室(101)の空間を少なくとも2つの分割室(128A、128B)に分割する分割部(105)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を配置する加熱室と、
マイクロ波を発生させるマイクロ波発生部と、
前記マイクロ波発生部が発生させたマイクロ波を前記加熱室内に放射するマイクロ波放射部と、
前記加熱室の空間を少なくとも2つの分割室に分割する分割部と、を備える、
マイクロ波加熱装置。
【請求項2】
熱風加熱手段、輻射加熱手段、スチーム加熱手段のうちの少なくとも1つをさらに備える、請求項1に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項3】
前記分割室は、2つ設けられる、請求項1又は2に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項4】
前記分割室は、3つ以上設けられる、請求項1又は2に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項5】
前記分割室のうち、1つの分割室でのみ、被加熱物を加熱する機能を有した、請求項1から4のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項6】
前記分割室のうち、2つの分割室で、被加熱物を加熱する機能を有した、請求項1から4のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項7】
前記分割部は、前記加熱室の内壁に対して着脱可能である、請求項1から6のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項8】
前記分割部を前記加熱室から取り外した状態で、マイクロ波放射部から加熱室内にマイクロ波を放射する、請求項7に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項9】
前記分割部は、誘電体で構成される、請求項1から8のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項10】
前記分割部は、金属で構成される、請求項1から8のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項11】
前記分割部と前記加熱室の内壁との間に絶縁体を設けた、請求項1から10のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項12】
前記分割部は、前記加熱室を高さ方向に分割する、請求項1から11のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項13】
前記分割部は、前記加熱室を幅方向に分割する、請求項1から11のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項14】
前記分割部は、前記加熱室を奥行方向に分割する、請求項1から11のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項15】
前記分割部は、加熱前あるいは加熱中に移動可能に構成される、請求項1から14のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項16】
前記分割部は、被加熱物を載置する載置面を有する、請求項1から15のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項17】
前記載置面は誘電体で構成され、前記分割部は、前記載置面の下方に凹部を形成する、請求項16に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項18】
前記凹部に誘電体を設けた、請求項17に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項19】
前記凹部に金属を設けた、請求項17又は18に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項20】
前記分割室のそれぞれにセンサを設けた、請求項1から19のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項21】
前記分割室の少なくとも1つに赤外線センサを設けた、請求項1から20のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項22】
前記分割室の少なくとも1つに蒸気センサを設けた、請求項1から21のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項23】
前記分割室の少なくとも1つにマイクロ波センサを設けた、請求項1から22のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項24】
前記分割室の少なくとも1つにカメラを設けた、請求項1から23のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項25】
前記分割室は、第1分割室と第2分割室とを有し、
前記第1分割室に第1センサを設け、前記第2分割室に前記第1センサとは異なる種類の第2センサを設けた、請求項1から24のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項26】
前記マイクロ波放射部は、前記加熱室の底面から前記加熱室にマイクロ波を放射する、請求項1から25のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項27】
前記マイクロ波放射部は、前記加熱室の天面から前記加熱室にマイクロ波を放射する、請求項1から25のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項28】
前記マイクロ波放射部は、前記加熱室の側面から前記加熱室にマイクロ波を放射する、請求項1から25のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項29】
前記マイクロ波放射部は、前記加熱室の背面から前記加熱室にマイクロ波を放射する、請求項1から25のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項30】
前記マイクロ波放射部は、回転アンテナを備える、請求項1から29のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項31】
前記マイクロ波放射部は、前記回転アンテナを連続的に回転させながらマイクロ波を放射する機能を有する、請求項30に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項32】
前記マイクロ波放射部は、前記回転アンテナを停止させながらマイクロ波を放射する機能を有する、請求項30又は31に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項33】
前記回転アンテナは、所定の回転範囲内で回転するように制御される、請求項30から32のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項34】
前記マイクロ波放射部は、マイクロ波を第1方向と第2方向に同時に放射する機能を有する、請求項1から33のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項35】
前記マイクロ波放射部は、前記第1方向と前記第2方向に放射されるマイクロ波を用いて、複数の前記分割室に対して同時にマイクロ波を放射する機能を有する、請求項34に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項36】
前記分割部は、前記加熱室に固定される、請求項1から35のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項37】
前記分割部に片方向の電波遮蔽構造を設けた、請求項1から36のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項38】
前記分割部に両方向の電波遮蔽構造を設けた、請求項1から37のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項39】
前記分割部の1辺に電波遮蔽構造を設けた、請求項1から38のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項40】
前記分割部の2辺に電波遮蔽構造を設けた、請求項1から38のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項41】
前記分割部の3辺に電波遮蔽構造を設けた、請求項1から38のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項42】
前記分割部の4辺に電波遮蔽構造を設けた、請求項1から38のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項43】
前記分割部における角部と前記角部以外の部分にそれぞれ異なる電波遮蔽構造を設けた、請求項1から42のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項44】
前記分割部の第1辺に第1電波遮蔽構造を設け、前記分割部の第2辺に前記第1電波遮蔽構造とは異なる第2電波遮蔽構造を設けた、請求項1から43のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項45】
前記第1辺は、前記分割部におけるドア側の辺である、請求項44に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項46】
前記第1辺は、前記分割部における前記マイクロ波放射部に近い側の辺である、請求項44に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項47】
前記電波遮蔽構造は、非接触式であるとともに、前記分割部におけるドア側の辺以外の辺に設けられる、請求項37から46のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項48】
前記電波遮蔽構造は、非接触式であるとともに、前記分割部におけるドア側の辺においては、当該辺の限定された範囲に設けられる、請求項37から46のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項49】
前記加熱室の内壁に電波遮蔽構造を設けた、請求項1から48のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項50】
前記電波遮蔽構造は、接触式の第1電波遮蔽構造と、非接触式の第2電波遮蔽構造とを有する、請求項1から49のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項51】
前記電波遮蔽構造は、誘電体カバーを有する、請求項37から50のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項52】
前記電波遮蔽構造は、非接触式のチョークである、請求項37から51のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項53】
前記分割部は、前記加熱室を高さ方向に分割し、
前記加熱室の内壁は、前記分割部を前記加熱室の中央に向けてセンタリングするための傾斜形状を有する、請求項1から52のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項54】
前記マイクロ波発生部は、半導体式発信器を有する、請求項1から53のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項55】
前記マイクロ波放射部は、第1マイクロ波放射部と、前記第1マイクロ波放射部とは異なる第2マイクロ波放射部とを有する、請求項1から54のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項56】
前記第1マイクロ波放射部と前記第2マイクロ波放射部のそれぞれが放射するマイクロ波の位相を制御する位相制御手段をさらに備える、請求項55に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項57】
前記第1マイクロ波放射部と前記第2マイクロ波放射部はそれぞれ、互いに対向する位置から前記加熱室にマイクロ波を放射する、請求項55又は56に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項58】
前記マイクロ波発生部が発生させるマイクロ波の周波数を可変とする周波数可変手段をさらに備える、請求項1から57のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項59】
前記マイクロ波発生部が発生させるマイクロ波の電力を可変とする電力可変手段をさらに備える、請求項1から58のいずれか1つに記載のマイクロ波加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マイクロ波加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品等の被加熱物を加熱室に収容し、加熱室内にマイクロ波を給電して被加熱物を加熱調理するマイクロ波加熱装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生部と、マイクロ波発生部が発生させたマイクロ波を加熱室内に放射するマイクロ波放射部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、被加熱物により適した調理が可能なマイクロ波加熱装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様にかかるマイクロ波加熱装置は、被加熱物を配置する加熱室と、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生部と、前記マイクロ波発生部が発生させたマイクロ波を前記加熱室内に放射するマイクロ波放射部と、前記加熱室の空間を少なくとも2つの分割室に分割する分割部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、被加熱物により適した調理が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1にかかるマイクロ波加熱装置の構成例の概略正面図
【
図2】実施の形態1にかかるマイクロ波加熱装置の動作の一例のフローチャート
【
図3】実施の形態1にかかるマイクロ波加熱装置の動作の一例のフローチャート
【
図4】実施の形態2にかかるマイクロ波加熱装置の構成例の概略側面図
【
図5】実施の形態2にかかる分割部を含む加熱室の概略上面図
【
図8】実施の形態2にかかる分割部を含む加熱室の概略斜視図
【
図9】実施の形態2にかかる分割部と加熱室内壁とが近接する箇所を示す概略正面図
【
図10】実施の形態2の変形例1にかかる電波遮蔽構造と加熱室内壁との間のマイクロ波の遮蔽構造の概略断面図
【
図11】実施の形態2の変形例2にかかる電波遮蔽構造と加熱室内壁との間のマイクロ波の遮蔽構造の概略断面図
【
図12】実施の形態2の変形例3にかかる電波遮蔽構造と加熱室内壁との間のマイクロ波の遮蔽構造の概略断面図
【
図13】実施の形態2の変形例4にかかる電波遮蔽構造と加熱室内壁との間のマイクロ波の遮蔽構造の概略断面図
【
図14】実施の形態2の変形例5にかかる電波遮蔽構造と加熱室内壁との間のマイクロ波の遮蔽構造の概略断面図
【
図15】実施の形態2の変形例6にかかる電波遮蔽構造と加熱室内壁との間のマイクロ波の遮蔽構造の概略断面図
【
図16】実施の形態2の変形例7にかかる電波遮蔽構造と加熱室内壁との間のマイクロ波の遮蔽構造の概略断面図
【
図17】実施の形態2の変形例8にかかる電波遮蔽構造と加熱室内壁との間のマイクロ波の遮蔽構造の概略断面図
【
図18A】実施の形態3にかかるマイクロ波加熱装置の構成例の概略側面図
【
図18B】実施の形態3の変形例にかかるマイクロ波加熱装置の構成例の概略側面図
【
図20】実施の形態3にかかる分割部を正面側から見た概略断面図
【
図21】実施の形態3にかかる回転アンテナの動作例を示す概略正面図
【
図22】実施の形態3にかかる回転アンテナの動作例を示す概略正面図
【
図23】実施の形態3にかかる回転アンテナの動作例を示す概略正面図
【
図24】実施の形態3にかかる加熱装置を用いたマイクロ波センサの利用例に関する概略図
【
図25】実施の形態3にかかるマイクロ波加熱装置の動作の一例のフローチャート
【
図26】実施の形態3にかかる被加熱物の状態変化の検知の説明図
【
図27】実施の形態3にかかるマイクロ波加熱装置の動作の一例のフローチャート
【
図28】実施の形態3にかかる被加熱物の状態変化の検知の説明図
【
図29】実施の形態3にかかる被加熱物の状態変化の検知の説明図
【
図30】実施の形態3にかかる被加熱物の状態変化の検知の説明図
【
図31】実施の形態3にかかる被加熱物の状態変化の検知の説明図
【
図32】実施の形態3にかかる被加熱物の状態変化の検知の説明図
【
図33】実施の形態4にかかるマイクロ波加熱装置の構成例の概略上面図
【
図34】実施の形態5にかかるマイクロ波加熱装置の構成例の概略正面図
【
図35】実施の形態6にかかるマイクロ波加熱装置の構成例の概略側面図
【
図36】実施の形態7にかかるマイクロ波加熱装置の構成例の概略正面図
【
図37】実施の形態8にかかるマイクロ波加熱装置の構成例の概略上面図
【
図38】実施の形態8の変形例1にかかるマイクロ波加熱装置の構成例の概略上面図
【
図39】実施の形態8の変形例2にかかるマイクロ波加熱装置の構成例の概略上面図
【
図40】実施の形態9にかかるマイクロ波加熱装置の構成例の概略上面図
【
図41】実施の形態9にかかるマイクロ波加熱装置の構成例の概略正面図
【
図42】実施の形態10にかかるマイクロ波加熱装置の構成例の概略正面図
【
図43】位相差0°の場合の被加熱物の加熱分布を説明する図
【
図44】位相差180°の場合の被加熱物の加熱分布を説明する図
【
図45】位相差0°と位相差180°とを組み合わせた場合の被加熱物の加熱分布を説明する図
【
図47】比較例において加熱処理を行った後の被加熱物の加熱分布を説明する図
【
図48】周波数及び位相差による加熱室の電波分布及び被加熱物の加熱分布のシミュレーションに用いたモデルの説明図
【
図49】
図48に示すモデルにおいて周波数及び位相差による加熱室の電波分布及び被加熱物の加熱分布の違いを説明する図
【
図50】実施の形態11にかかるマイクロ波加熱装置の構成例の概略正面図
【
図51】周波数及び位相差による被加熱物の加熱分布の違いを説明する図
【
図52】周波数及び位相差による被加熱物の加熱分布の違いを説明する図
【
図53】
図52に示す位相差0°、周波数2400MHzの場合の被加熱物の加熱分布の図
【
図54】周波数及び位相差による被加熱物の加熱分布の違いを説明する図
【
図55】
図54に示す位相差0°、周波数914MHzの場合の被加熱物の加熱分布の図
【
図56】実施の形態12にかかるマイクロ波加熱装置の構成例の概略正面図
【
図57】実施の形態13にかかるマイクロ波加熱装置の構成例の概略側面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面を参照しながら、実施形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者(ら)は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面及び以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0010】
[1.実施の形態]
[1.1 実施の形態1]
[1.1.1 構成]
図1は、実施の形態1にかかるマイクロ波加熱装置100の構成例の概略正面図である。マイクロ波加熱装置100は、例えば、電子レンジ等のマイクロ波処理装置である。
図1に示すマイクロ波加熱装置100は、加熱室101と、マイクロ波発生部103と、マイクロ波放射部104と、分割部105と、センサ106A、106Bと、制御部110と、を備える。
【0011】
加熱室101は、被加熱物102A、102Bを収容するための空間を形成し、電波を遮蔽する材料で構成される。加熱室101は、例えば、被加熱物102A、102Bを収納する直方体の箱状である。
図1において、加熱室101に関わる方向を、奥行方向X、幅方向Y、高さ方向Zとして図示する。加熱室101は、例えば、電波を遮蔽する材料からなる左壁面、右壁面、底面108、天面109及び背面と、被加熱物102A、102Bを収納するために開閉する開閉扉とを備え、マイクロ波放射部104から放射されるマイクロ波を加熱室101の内部に閉じ込めるように構成される。このように、加熱室101は、電波を遮蔽する材料で構成され、被加熱物102A、102Bの加熱の際に閉空間を形成できる。本開示において、「遮蔽」は、反射、吸収、多重反射等によって電波のエネルギを滅衰させることを意味する。したがって、電波を遮蔽する材料は、このような「遮蔽」の作用が得られる材料であればよい。電波を遮蔽する材料としては、金属材料等の電波を反射する材料、及び、フェライトゴム等の電波を吸収する材料が挙げられる。
【0012】
マイクロ波発生部103は、被加熱物102A、102Bの誘電加熱用のマイクロ波を発生させるマイクロ波発生器である。マイクロ波発生部103は、例えば、マグネトロンや半導体式発信器などを用いてマイクロ波を発生させる。以下、すべての実施の形態において、マイクロ波発生部はマグネトロンであっても半導体式発振器であってもよい。マイクロ波の周波数は、例えば、300MHz~1000GHzである。このような周波数のマイクロ波を誘電体に照射することで、誘電体内部において誘電損失が生じ、誘電体において熱が発生する。これによって、誘電体を加熱できる。本実施の形態において、マイクロ波発生部103は、商用交流電源により動作可能であり、商用交流電源からの交流電力に基づいてマイクロ波を発生させる。
【0013】
マイクロ波放射部104は、マイクロ波発生部103が発生させたマイクロ波を加熱室101に放射する部材である。マイクロ波放射部104は、例えば、導波管と、回転アンテナ(図示せず)とを有する。導波管と、回転アンテナとを有する構成は、以下、すべての実施の形態において適用してもよい。本実施の形態では、マイクロ波放射部104は、加熱室101の底面108の下方に配置され、マイクロ波を透過する材料で構成された底面108を通じて、加熱室101の内部にマイクロ波を放射する。マイクロ波放射部104は、例えば、後述する分割室128A、128Bのそれぞれにマイクロ波を放射する。
【0014】
分割部105は、加熱室101を複数の分割室128A、128Bに分割するための部材である。
図1に示す分割部105は、加熱室101を幅方向Yに分割するように、加熱室101の底面108から天面109まで高さ方向Zに沿って延びる。加熱室101は、分割部105によって、2つの分割室128A、128Bに分割される。
図1に示す例では、下段の分割室128Aには被加熱物102Aが配置され、上段の分割室128Bには被加熱物102Bが配置される。分割部105は、例えば、加熱室101の内壁に固定されており、着脱できない。分割部105は、例えば、金属などの電波遮蔽材料、あるいは、誘電体などの電波透過材料で構成される。
【0015】
センサ106A、106Bはそれぞれ、加熱室101の庫内状態を検知するためのセンサである。本実施の形態では、加熱室101に2つのセンサ106A、106Bが設けられる。センサ106Aは分割室128Aに配置され、センサ106Bは分割室128Bに配置される。センサ106A、106Bのそれぞれは、例えば、赤外線センサであり、加熱室101に配置された被加熱物102A、102Bの温度を検知する。センサ106Aは被加熱物102Aの温度を検知し、センサ106Bは被加熱物102Bの温度を検知する。センサ106A、106Bが検知した温度の情報は、制御部110に送信される。
【0016】
制御部110は、マイクロ波加熱装置100の動作を制御する部材である。制御部110は、例えば、マイクロコンピュータを有して構成される。制御部110は、マイクロ波加熱装置100の各構成要素に電気的に接続されており、各構成要素の動作を制御する。
図1では、制御部110と他の構成要素との電気的な接続を点線で示しているが、以降の図面では点線および制御部の表記を省略する。
図1に示す制御部110は、例えば、マイクロ波発生部103、マイクロ波放射部104、センサ106A、106Bに電気的に接続される。
【0017】
[1.1.2 動作]
図1に示す加熱装置100の制御部110の動作について、
図2、
図3に示すフローチャートを参照して説明する。
【0018】
図2に示すように、制御部110は、センサ106A、106Bの検知結果等に基づいて被加熱物102A、102Bである食品を検知し(S11)、ユーザによるメニューの選択を受信し(S12)、選択されたメニューに基づいて加熱シーケンスを決定し(S13)、決定した加熱シーケンスに従って加熱処理を実行する(S14)。ステップS14の加熱処理に関するフローチャートを
図3に示す。
【0019】
図3に示すように、制御部110は、マイクロ波放射部104の回転アンテナの回転を制御し(S21)、マイクロ波発生部103を駆動してマイクロ波を発生させて、マイクロ波放射部104の回転アンテナを介してマイクロ波の電力を加熱室101に供給し(S22)、センサ106A、106Bの検知結果を取得して被加熱物102A、102Bの加熱状態に関する進捗を監視し(S23)、ステップS23で監視した進捗の結果に基づいて加熱処理を終了するか否かを判定する(S24)。加熱処理を終了しないと判断した場合(S24でNO)、ステップS21に戻る。加熱処理を終了すると判断した場合(S24でYES)、ステップS14の加熱処理を終了する。
【0020】
[1.1.3 作用効果]
上述した実施の形態1のマイクロ波加熱装置100は、被加熱物102A、102Bを収容する加熱室101と、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生部103と、マイクロ波発生部103が発生させたマイクロ波を加熱室101内に放射するマイクロ波放射部104と、加熱室101の空間を分割室128A、128Bに分割する分割部105と、を備える。この構成によれば、加熱室101を複数の分割室128A、128Bに分割することで、分割室128A、128Bのそれぞれに放射するマイクロ波の供給形態を異ならせる等、被加熱物102A、102Bごとに加熱条件を変えることが可能となる。これにより、被加熱物102A、102Bにより適した加熱処理が可能となる。
【0021】
また、加熱室101は2つの分割室128A、128Bに分割される。この構成によれば、各分割室128A、128Bにそれぞれ被加熱物102A、102Bを入れることで、被加熱物102A、102Bごとに加熱条件を変えることが可能となる。さらに、従来の機器では被加熱物102A、102Bを1つずつ加熱する必要があったが、複数の被加熱物102A、102Bを同時に加熱することが可能となる。また、分割室128A、128Bのうち被加熱物102A、102Bの大きさと同等の分割室128A、128Bに被加熱物102A、102Bを入れて加熱することにより高効率な加熱が可能となる。これにより、各被加熱物102A、102Bに適した加熱源を選択でき、2品の同時加熱、時短・高温加熱、及び省エネな加熱が実現できる。なお、被加熱物102A、102Bを入れる分割室128A、128Bの大きさが分割前の加熱室101より小さければ効果があるので、被加熱物102A、102Bと同等の大きさを有する分割室128A、128Bでなくても効果を有する。また、分割部105は、加熱室101を2つの分割室128A、128Bに分割する場合に限らず、少なくとも2つ(3つ以上を含む。)の分割室に分割すればよい。
【0022】
また、加熱室101は幅方向Yに分割される。この構成によれば、加熱室101を幅方向Yに分割することで複品加熱が可能となり、さらに、被加熱物102A、102Bの高さ方向Zまたは奥行方向Xの寸法を制限することなく、分割室128A、128Bを形成できる。これにより、加熱できる被加熱物102A、102Bの寸法制限を緩和できる。本構成は、被加熱物102A、102Bが、背の高いコップのように高さ方向Zの寸法が大きい場合に特に有効である。
【0023】
また、分割室128A、128Bのそれぞれにセンサ106A、106Bを設けている。この構成によれば、各分割室128A、128Bに配置したセンサ106A、106Bのセンシング結果に基づき、マイクロ波およびその他熱源による加熱条件を変更したり、加熱処理を終了することにより、被加熱物102A、102Bの加熱状態の変化に適した加熱が可能となる。これにより、均一加熱、及び加熱終了検知(適温加熱)を実現できる。
【0024】
また、センサ106A、106Bとして、赤外線センサを用いている。この構成によれば、被加熱物102A、102Bの表面温度を検知することで、加熱による被加熱物102A、102Bの温度変化に応じて加熱条件を変更したり、加熱処理を終了することが可能となる。また、被加熱物102A、102Bの表面の初期温度を加熱前に検知することで、初期温度に合わせて加熱条件を設定することが可能となる。これにより、均一加熱、適温加熱(過加熱・加熱不足の緩和)、及び自動調理を実現できる。なお、センサ106A、106Bは赤外線センサに限らず、湿度を検知する湿度センサ、色を検知する色センサ、マイクロ波の入射波又は反射波を検知するマイクロ波センサ等、任意の種類のセンサを用いてもよい。
【0025】
また、マイクロ波放射部104は、加熱室101の底面108から加熱室101にマイクロ波を放射する。この構成によれば、加熱室101の底面108からマイクロ波を給電することにより、被加熱物102A、102Bの下方からマイクロ波を強く入射させることが可能となる。よって、特に液体の加熱において下部の温度を上昇させることができ、被加熱物102A、102B内に上向きの対流が発生し、加熱効率の向上と加熱ムラの低減を実現できる。また、被加熱物102A、102Bの下部は皿などに接しているため、室温以上に加熱する際には、被加熱物102A、102Bから皿などへ伝熱が生じるため、被加熱物102A、102Bの下部の温度が低くなる傾向がある。よって、被加熱物102A、102Bに対して下方からマイクロ波を給電することで、被加熱物102A、102Bの下部の温度をより上昇させることが可能となる。これにより、高効率加熱、時短調理、及び均一加熱を実現できる。
【0026】
また、分割部105は、加熱室101に固定される。この構成によれば、分割部105と加熱室101の内壁とを金属で構成してマイクロ波を遮蔽する際に、より高い遮蔽性能を実現できる。また、分割部105を固定し、分割部105の取外しをできないようにすることで、分割部105の取外しによる電波遮蔽構造の変形リスクを低減することが可能となる。これにより、遮蔽性能の向上、及び遮蔽性能の安定化を実現できる。なお、分割部105を加熱室101に固定する際には、分割部105と加熱室101の内壁とを導通させる。なお、固定している部分の間隔は、分割部105の辺の方向(奥行方向X)にマイクロ波波長の半分より短い必要がある。実際は、部分的に固定が不十分な場合を生じることを考慮して、マイクロ波波長の1/4より短い間隔で固定させてもよい。
【0027】
上述した作用効果について、実施の形態2以降のマイクロ波加熱装置でも同様の作用効果を奏する場合がある。以降の説明では、実施の形態1と重複する作用効果について適宜記載を省略する。
【0028】
[1.2 実施の形態2]
[1.2.1 構成]
図4は、実施の形態2にかかるマイクロ波加熱装置200の構成例の概略側面図である。
図4に示すマイクロ波加熱装置200は、加熱室201と、マイクロ波発生部203と、マイクロ波放射部204と、分割部205、206と、カメラ207と、蒸気センサ208と、制御部211と、を備える。
【0029】
図4に示す加熱室201は、2つの分割部205、206によって、高さ方向Zに分割され、3つの分割室228A、228B、228Cを形成する。
図4に示すように、下段の分割室228Aには2つの被加熱物250Aが配置され、中段の分割室228Bには1つの被加熱物250Bが配置され、上段の分割室228Cには1つの被加熱物250Cが配置される。
【0030】
マイクロ波放射部204は、加熱室201の背面220の裏側に設けられる。マイクロ波放射部204は、マイクロ波を透過する材料で構成された背面220から加熱室201に向けてマイクロ波を放射する。マイクロ波放射部204は、回転アンテナ209を有する。回転アンテナ209は、マイクロ波を放射する開口を有して、回転機能を有する。回転機能を有する回転アンテナ209は、マイクロ波を放射する開口位置および放射方向を変化させることができる。回転アンテナ209は、例えば、中段の分割室228Bと上段の分割室228Cのそれぞれにマイクロ波を放射する。回転アンテナ209は、例えば、第1の回転範囲において分割室228Bにマイクロ波を放射し、第2の回転範囲において分割室228Cにマイクロ波を放射する。
【0031】
カメラ207は、加熱室201の内部を撮像するセンサである。カメラ207は、例えば、加熱室201の天面212に設けられ、上段の分割室228Cを撮像する。蒸気センサ208は、加熱室201における蒸気を検知するセンサである。蒸気センサ208は、例えば、加熱室201の天面212に設けられ、上段の分割室228Cに存在する蒸気を検知する。例えば、カメラ207は前面側X1に設けられ、蒸気センサ208は背面側X2に設けられるが、任意の位置に配置してもよい。
【0032】
分割部205、206のそれぞれは、例えば、マイクロ波を遮蔽する金属で構成されるとともに、端部に電波遮蔽構造210、211を有する。ここで、電波遮蔽構造210、211について、
図5~
図7を用いて説明する。電波遮蔽構造210、211はそれぞれ同様の構造を有し、
図5~
図7では代表して分割部205の電波遮蔽構造210について説明する。
【0033】
図5は、分割部205を含む加熱室201の上面図であり、
図6は、分割部205の斜視図であり、
図7は、分割部205の側面図である。
図8は、分割部205を含む加熱室201の概略斜視図であり、
図9は、分割部205と加熱室205の内壁214とが近接する箇所を示す概略正面図である。
【0034】
図5、
図6に示すように、分割部205は、被加熱物250Bを載置するための載置面252を中央部に有する。分割部205は、4辺に電波遮蔽構造210を有する。電波遮蔽構造210は、分割部205の直線部に設けられた電波遮蔽構造210Aと、分割部205の角部に設けられた電波遮蔽構造210Bとを有する。電波遮蔽構造210Aは、例えば、一列に規則的に並ぶ複数のチョーク構造を有する。電波遮蔽構造210Bは、電波遮蔽構造210Aとは異なる構造を有し、例えば、第1列における端のチョーク構造と第1列に隣接する第2列の端のチョーク構造が間隔を空けて配置された構造を有する。
図5に示すように、分割部205の4辺に電波遮蔽構造210Aを設け、分割部205の4隅に電波遮蔽構造210Bを設ける。これにより、分割部205の全周においてマイクロ波が遮蔽され、複数の分割室間におけるマイクロ波の透過が防止される。
図6、
図7に示すように、電波遮蔽構造210は2段設けられている。これにより、1段の場合に比べて、マイクロ波の遮蔽性能が向上する。
【0035】
図5、
図8に示すように、加熱室201の内側面である内壁214にはレール216が設けられる。レール216は、分割部205を下方から支持し、分割部205を加熱室201の内部で所定位置に位置決めする。分割部205は、レール216の上に載置すればよく、加熱室201に対して着脱可能に構成される。これにより、分割部205を加熱室201に配置した状態での被加熱物の加熱処理、あるいは、分割部205を加熱室201に配置しない状態での被加熱物の加熱処理を選択することができる。
【0036】
図9に示すように、電波遮蔽構造210Aは、レール216の上面に接触しない非接触式のチョーク構造である。分割部205は、電波遮蔽構造210Aとは異なる箇所で、加熱室201の内壁214に接触して支持される。
【0037】
レール216は、例えば、樹脂やゴム等の絶縁体で構成される。電波遮蔽構造210Aと加熱室201の内壁214がともに金属で構成される場合、その間に絶縁体としてのレール216を設けることで、絶縁抵抗が高まる。なお、レール216は絶縁体に限らず、金属で構成されてもよく、その場合、電波遮蔽構造210Aとレール216との間に別の絶縁体を設ければよい。
【0038】
[1.2.2 作用効果]
上述した実施の形態2のマイクロ波加熱装置200によれば、分割室228A~228Cは3つ設けられる。この構成によれば、分割室が2つの場合に比べて、加熱条件のバリエーションを増加させることができ、より柔軟な加熱処理が可能となる。
【0039】
また、分割部205、206は、金属で構成される。この構成によれば、マイクロ波、熱風、スチームは金属を透過しない。よって、マイクロ波、熱風、スチームの加熱源による加熱度合いを分割室228A~228Cごとに変えることが可能となる。また、加熱室201を分割することで、小さな空間で食品をマイクロ波加熱、熱風加熱あるいはスチーム加熱することが可能となり、高効率な加熱が可能となる。被加熱物250A~250Cのそれぞれに適した加熱源を選択でき、複品の同時加熱、時短・高温加熱、及び省エネな加熱を実現できる。なお、代表的な金属としてはステンレス、アルミ、アルミメッキ鋼板、亜鉛メッキ鋼板が挙げられる。なお、分割部205、206にマイクロ波が透過しない程度の隙間(穴、スリットなど)を空けることで、熱風およびスチームのみ透過させることも可能である。
【0040】
また、分割部205と加熱室201の内壁214との間に絶縁体(レール216)を設ける。この構成によれば、金属間に絶縁体を入れることで、絶縁抵抗を高めることが可能となり、マイクロ波加熱時に金属間に強電界が生じたとしても放電の可能性を低減することができる。また、絶縁体により金属間の距離を一定以上に保つことが可能となるため、放電の可能性を更に低減できる。これにより、安全性の向上(放電の可能性を低減)を実現できる。なお、代表的な絶縁体としては、樹脂、ゴム、木が挙げられる。
【0041】
また、加熱室201は高さ方向Zに分割される。この構成によれば、加熱室201を高さ方向Zに分割することで複品加熱が可能となり、さらに、被加熱物250A~250Cの幅方向Yまたは奥行方向Xの寸法を制限することなく、分割室228A~228Cを形成できる。これにより、複品の同時加熱を実現し、加熱できる被加熱物250A~250Cの寸法制限を緩和することができる。本構成は、被加熱物250A~250Cが、お弁当のように高さは低いが水平面の面積が大きい場合に特に有効である。
【0042】
また、分割部205、206は、被加熱物250B、250Cを載置する載置面252を有する。この構成によれば、分割部205、206のそれぞれに加熱室201を分割する機能と、被加熱物250B、250Cを載置する機能を持たせることができ、部品点数を削減することが可能となる。これにより、構成の簡素化(使い勝手アップ、清掃性アップ)、及び低コスト化を実現できる。
【0043】
また、分割室228Cに蒸気センサ208を備える。この構成によれば、分割室228Cに設置した蒸気センサ208により、被加熱物250Cから発生する蒸気を検知することで、被加熱物250Cの温度が上昇したことを判断することができ、加熱条件を変更したり、加熱処理を終了することが可能となる。これにより、均一加熱、適温加熱(過加熱・加熱不足の緩和)、及び自動調理を実現できる。なお、蒸気センサを設ける場合は、分割室228A~228Cのそれぞれに設けてもよく、少なくとも1つの分割室228A~228Cに設ければよい。
【0044】
また、分割室228Cにカメラ207を備える。この構成によれば、分割室228Cに設置したカメラ207により、被加熱物250Cの形状または表面の色を検知することで、被加熱物250Cの加熱の進行具合を判断し、加熱条件を変更したり、加熱処理を終了することが可能となる。また、加熱開始前に被加熱物250Cの形状または表面の色を検知することで、初期温度に合わせて加熱条件を設定することが可能となる。これにより、均一加熱、適温加熱(過加熱・加熱不足の緩和)、及び自動調理を実現できる。なお、カメラを設ける場合は分割室228A~228Cのそれぞれに設けてもよく、少なくとも1つの分割室228A~228Cに設ければよい。
【0045】
なお、実施の形態2では、同じ分割室228Cに2種類のセンサとしてのカメラ207および蒸気センサ208を設けたが、このような場合に限らず、異なる分割室228A~228Cにそれぞれ異なる種類のセンサを設けてもよい。具体的には、分割室は、第1分割室と第2分割室を有し、第1分割室に第1センサを設け、第2分割室に第1センサとは異なる種類の第2センサを設けてもよい。この構成によれば、加熱による被加熱物の温度変化は被加熱物の種類によって異なる。被加熱物の種類によって、被加熱物における内部と表面波の温度差、被加熱物から出る蒸気の量、加熱による被加熱物の形状変化、温度上昇による被加熱物の表面の色の変化が異なる。よって、被加熱物の種類によって、被加熱物の加熱状態をより正確に検知するセンサの種類は異なる。このため、複数の分割室で異なる種類のセンサを設けることで、被加熱物の種類に応じて、被加熱物を配置する分割室を選択すれば、被加熱物の加熱状態をより正確に検知することが可能となり、加熱条件を変更したり、加熱処理を終了することが可能となる。これにより、均一加熱、適温加熱(過加熱・加熱不足の緩和)、及び自動調理を実現できる。
【0046】
また、マイクロ波放射部204は、加熱室201の背面220から加熱室201にマイクロ波を放射する。この構成によれば、加熱室201の前後方向(奥行方向X)の形状および構成要素の誘電率は大きくことなるが、側面の形状および構成要素はほぼ同等であることが多い。よって、加熱室201内の定在波分布はほぼ左右対称になるため、左右対称の被加熱物250A~250Cを加熱室201の左右方向の中央に置けば、被加熱物250A~250Cの加熱分布は左右対称になる。しかし、加熱室201の形状および構成要素の対称性から前後方向および上下方向(高さ方向Z)の加熱分布は対称とならないことが多い。よって、加熱室201の背面220にマイクロ波放射部204を設け、そのマイクロ波放射部204から加熱室201に放射されるマイクロ波の指向性を上下方向で制御することで、被加熱物250A~250Cの上下方向の加熱分布を均一化することができる。これにより、均一加熱を実現できる。
【0047】
また、マイクロ波放射部204は、回転アンテナ209を備える。この構成によれば、回転アンテナ209で加熱室201または分割室228A~228Cに放射するマイクロ波の指向性を制御することで、加熱室201または分割室228A~228Cにおける定在波分布を変えることが可能となる。よって、被加熱物250A~250Cの加熱分布を制御することも可能となり、均一加熱を実現できる。
【0048】
また、分割部205、206は、加熱室201の内壁214に対して着脱可能である。この構成によれば、加熱室201に入る寸法の被加熱物であれば加熱可能となる。また、分割部205、206を取り外すことで清掃しやすくなる。これにより、清掃性を向上させ、被加熱物の大きさに応じた分割室を形成することができ、加熱できる被加熱物の寸法制限を緩和できる。
【0049】
また、分割部205、206に両方向の電波遮蔽構造210、211を設けている。この構成によれば、マイクロ波を放射する分割室228A~228Cのそれぞれにマイクロ波を集中することが可能となる。1つの分割室から他の分割室へ伝播するマイクロ波を低減することで、調理条件の設定が容易になり、例えば、マイクロ波を当てたくない被加熱物250A~250Cにはマイクロ波を当てないように制御することが可能となる。これにより、集中加熱を実現できる。
【0050】
また、分割部205、206の4辺に電波遮蔽構造210、211を設けている。この構成によれば、分割部205、206の電波遮蔽性能が向上する。
【0051】
また、分割部205における角部と角部以外の部分にそれぞれ異なる電波遮蔽構造210A、210Bを設けている。この構成によれば、分割部205の角部と角部以外の部分(直線部)では電界分布が異なることが多い。具体的には、角部周辺は隣り合った加熱室201の内壁で反射するマイクロ波の影響を大きく受けることと、隣り合った分割部205の辺の電波遮蔽構造210において辺と平行の方向にマイクロ波が伝播してくるため、2つの辺にそれぞれ平行に伝播してきたマイクロ波が干渉し合うため、直線部とは異なる電界分布になる。よって、直線部と角部周辺で電波遮蔽構造210の最適な形状は異なる。これにより、角部と角部以外の部分に異なる電波遮蔽構造210A、210Bを設けることで、遮蔽性能の向上を実現できる。
【0052】
また、電波遮蔽構造210、211は、非接触式のチョークである。この構成によれば、非接触式の遮蔽構造を用いることで、分割部205、206の取外しが容易になる。接触式の遮蔽構造の場合に比べて、加熱室201の内壁と分割部205、206の金属同士を確実に接触させる必要がなくなり、構成を簡素化できる。これにより、分割部205、206の取外しが簡単になり、清掃性の向上を実現できる。また、加熱室201の内壁と分割部205、206の金属同士が接触していない部分からのマイクロ波の漏洩を防止し、放電の可能性を低減できる。
【0053】
[1.2.3 電波遮蔽構造の変形例]
[1.2.3.1 構成]
ここで、電波遮蔽構造210の変形例について、
図10~
図17を用いて説明する。
図10~
図17は、電波遮蔽構造210と加熱室201の内壁214との間のマイクロ波の遮蔽構造の概略断面図である。
【0054】
変形例1に係る電波遮蔽構造210は、
図10に示す断面形状を有し、片方向の電波を遮蔽する。
図10に示す電波遮蔽構造210は、下方向Z1へ入射しようとするマイクロ波を遮蔽する一方、上方向Z2へ入射するマイクロ波は遮蔽しない。
【0055】
変形例2に係る電波遮蔽構造210は、
図11に示す断面形状を有し、片方向の電波を遮蔽する。
図11に示す電波遮蔽構造210は、下方向Z1へ入射しようとするマイクロ波を遮蔽する一方、上方向Z2へ入射するマイクロ波は遮蔽しない。
【0056】
変形例3に係る電波遮蔽構造210は、
図12に示す断面形状を有し、両方向の電波を遮蔽する。
図12に示す電波遮蔽構造210は、下方向Z1へ入射しようとするマイクロ波を遮蔽するとともに、上方向Z2へ入射しようとするマイクロ波を遮蔽する。
【0057】
変形例4に係る電波遮蔽構造210は、
図13に示す断面形状を有し、両方向の電波を遮蔽する。
図13に示す電波遮蔽構造210は、下方向Z1へ入射しようとするマイクロ波を遮蔽するとともに、上方向Z2へ入射しようとするマイクロ波を遮蔽する。
【0058】
変形例5に係る電波遮蔽構造210は、
図14に示すように、変形例1の電波遮蔽構造210(
図10)と同様の形状を有し、片方向の電波遮蔽構造である。
図14に示す電波遮蔽構造210はさらに、誘電体カバー218を有する。
【0059】
変形例6に係る電波遮蔽構造210は、
図15に示すように、変形例2の電波遮蔽構造210(
図11)と同様の形状を有し、片方向の電波遮蔽構造である。
図15に示す電波遮蔽構造210はさらに、誘電体カバー218を有する。
【0060】
変形例7に係る電波遮蔽構造210は、
図16に示すように、変形例3の電波遮蔽構造210(
図12)と同様の形状を有し、両方向の電波遮蔽構造である。
図16に示す電波遮蔽構造210はさらに、誘電体カバー218を有する。
【0061】
変形例8に係る電波遮蔽構造210は、
図17に示すように、変形例4の電波遮蔽構造210(
図13)と同様の形状を有し、両方向の電波遮蔽構造である。
図17に示す電波遮蔽構造210はさらに、誘電体カバー218を有する。
【0062】
[1.2.3.2 作用効果]
変形例1、2、5、6によれば、分割部205は、片方向の電波遮蔽構造210を有する。この構成によれば、例えば、非接触式の電波遮蔽構造において、分割室205から電波遮蔽構造210の共振空間に入るまでの金属が対向する距離に応じて、電波遮蔽性能は大きく異なる。このように、分割部205の電波遮蔽性能が方向性を有することで、1つの分割室にマイクロ波を放射することで他の分割室にもマイクロ波を伝播させることと、1つの分割室内にマイクロ波を集中することを使い分けることが可能となる。これにより、集中加熱を行いやすく、複数の分割室を1度にマイクロ波加熱できる。
【0063】
変形例3、4、7、8によれば、分割部205は、両方向の電波遮蔽構造210を有する。この構成によれば、実施の形態2と同様の作用効果を奏する。
【0064】
変形例5~8によれば、電波遮蔽構造210は、誘電体カバー218を有する。この構成によれば、非接触式の電波遮蔽構造210は、金属の周期構造体で構成されていることが多い。また、遮蔽構造が有する共振空間の伝送長は、遮蔽したいマイクロ波の波長の1/4の整数倍としていることが多い。よって、電波遮蔽構造210は金属板を曲げた構成になっており、食品カス、水滴などの異物が入ってしまうことがある。誘電率の高い異物が入ることで、電波遮蔽構造210の共振空間内のマイクロ波分布が変わり、異物の入っていない正常な条件と比較して遮蔽性能が低下する可能性が生じる。また、電波遮蔽構造210の金属間には強い電界が生じる可能性が高いため、食品カスが入ることで放電および発煙の可能性が高まる。よって、樹脂などの誘電率の低い誘電体で遮蔽構造に誘電体カバー218を配置することで、遮蔽性能の低下、放電、発煙の可能性を下げることが可能となる。また、清掃性能を向上させることも可能となる。これにより、遮蔽性能を安定化させ(安全性向上)、異物の挿入を防止し、放電を低減し(安全性向上)、金属部の絶縁抵抗を向上させることができる。また、加熱室201の内壁214と電波遮蔽構造210の距離を一定以上に保つことで、放電を低減し(安全性向上)、清掃性を向上させることができる。なお、代表的な誘電体としてはセラミック、樹脂、ガラスが挙げられる。
【0065】
[1.3 実施の形態3]
[1.3.1 構成]
図18Aは、実施の形態3にかかるマイクロ波加熱装置300の構成例の概略側面図である。
図18Aに示すマイクロ波加熱装置300は、加熱室301と、マイクロ波発生部303と、マイクロ波放射部304と、分割部305と、熱風加熱手段315と、輻射加熱手段316と、スチーム加熱手段317と、マイクロ波センサ318A、318Bと、を備える。
【0066】
図18Aに示す加熱室301は、分割部305によって高さ方向Zに分割され、2つの分割室328A、328Bを形成する。下段の分割室328Aには被加熱物302Aが配置され、上段の分割室328Bには被加熱物302Bが配置される。
【0067】
マイクロ波放射部304は、加熱室301の背面側に設けられ、回転アンテナ309を有する。回転アンテナ309は、例えば、上段の分割室328Bに向けてマイクロ波を放射する。
【0068】
熱風加熱手段315は、熱風による加熱を行うための部材である。熱風加熱手段315は、例えば、コンベクションヒータとファンを有する。熱風加熱手段315は、例えば、下段の分割室328Aに向けて熱風を吹き出すように、加熱室301の背面側に設けられる。
【0069】
輻射加熱手段316は、輻射による加熱を行うための部材である。輻射加熱手段316は、例えば、赤外線ヒータを有する。輻射加熱手段316は、例えば、上段の分割室328Bに向けて輻射熱を供給するように、加熱室301の天面側に設けられる。
【0070】
スチーム加熱手段317は、スチームによる加熱を行うための部材である。スチーム加熱手段317は、例えば、蒸気生成用の貯水部とヒータとを有する。スチーム加熱手段317は、例えば、上段の分割室328Bに向けてスチームを吹き出すように、加熱室301の背面側に設けられる。
【0071】
マイクロ波センサ318A、318Bはそれぞれ、マイクロ波を検知するセンサである。
図18Aに示す加熱室301には、2つのマイクロ波センサ318A、318Bが設けられる。マイクロ波センサ318Aは、下段の分割室328Aにおけるマイクロ波を検知し、マイクロ波センサ318Bは、上段の分割室328Bにおけるマイクロ波を検知する。
【0072】
下段の分割室328Aにおいて、被加熱物302Aは載置面319Aに載置される。載置面319Aは、加熱室1の底面を構成する板状の部材である。上段の分割室328Bにおいて、被加熱物302Bは載置面319Bに載置される。載置面319Bは、分割部305の上面を構成する板状の部材である。載置面319A、319Bはそれぞれ、誘電体で構成される。
【0073】
分割部305は、載置面319Bの下方に凹部320を形成する。凹部320には金属321が配置される。金属321を配置することで、被加熱物302Bの下部周辺のマイクロ波分布を変化させることができる。
【0074】
分割部305はさらに、電波遮蔽構造310を有する。電波遮蔽構造310の詳細について、
図19、
図20を用いて説明する。
【0075】
図19は、分割部305の上面図であり、
図20は、分割部305を正面側から見た断面図である。
【0076】
図19に示すように、電波遮蔽構造310は、2種類の電波遮蔽構造310A、310Bを有する。電波遮蔽構造310Aは、分割部310におけるドア325に近い側の1辺に設けられ、ドア325を構成するドアガラス326に対向する。電波遮蔽構造310Bは、分割部310における電波遮蔽構造310Aが設けられる辺以外の3辺に設けられる。電波遮蔽構造310Aは、電波遮蔽構造310Bとは異なる構造を有し、例えば、電波遮蔽構造310Bのチョーク構造に対してピッチや幅が異なる。
【0077】
図19、
図20に示すように、加熱室310の両側の内壁312にはレール323が設けられる。
図20に示すレール323は、分割部305を支持する傾斜面324を有する。分割部305の下面には、傾斜面324の傾斜に応じた傾斜面325が形成される。分割部305の傾斜面325とレール323の傾斜面324とを接触させて分割部305を配置することで、分割部305を加熱室301に配置する際に分割部305をY方向における所定位置(中心位置)に向けて位置決め(センタリング)できる。
【0078】
【0079】
図21に示す回転アンテナ309は、加熱室301の略中心に位置する回転軸321を中心として、回転範囲R1の中で回転するように制御される。回転範囲R1は、上段の分割室328Bのみをカバーする範囲である。回転アンテナ309は、上段の分割室328Bに向けてマイクロ波を放射し、下段の分割室328Aにはマイクロ波を放射しない。
【0080】
図22に示す回転アンテナ309は、加熱室301の略中心に位置する回転軸321を中心として、回転範囲R2の中で回転するように制御される。回転範囲R2は、下段の分割室328Aのみをカバーする範囲である。回転アンテナ309は、下段の分割室328Aに向けてマイクロ波を放射し、上段の分割室328Bにはマイクロ波を放射しない。
【0081】
図23に示す回転アンテナ309は、加熱室301の略中心に位置する回転軸321を中心として、回転範囲R3の中で回転するように制御される。回転範囲R3は、360度の回転範囲であり、分割室328A、328Bの両方をカバーする。回転アンテナ309は、第1の回転範囲において下段の分割室328Aに向けてマイクロ波を放射し、第2の回転範囲において上段の分割室328Bに向けてマイクロ波を放射する。
【0082】
[1.3.2 作用効果]
上述した実施の形態3のマイクロ波加熱装置300は、熱風加熱手段315、輻射加熱手段316、及びスチーム加熱手段317をさらに備える。この構成によれば、マイクロ波加熱に加え、熱風、輻射、スチーム加熱のいずれかを併用することで、被加熱物302A、302Bにより適した調理が可能となり、調理品位を向上させることができ、調理可能なメニューが増加する。例えば、グラタンなどのように全体の温度上昇と表面への焼き色を付ける必要がある被加熱物には、マイクロ波加熱と輻射加熱の併用が有効である。また、中華まんなどのように全体の温度上昇と乾燥を防ぐことの両立が必要となる被加熱物には、マイクロ波加熱とスチーム加熱の併用が有効である。また、ローストビーフなどのように、体積が大きく、全体の温度上昇と全体を焼く必要がある被加熱物には、マイクロ波加熱と熱風加熱の併用が有効である。なお、熱風加熱手段315、輻射加熱手段316、及びスチーム加熱手段317は全て設ける必要がなく、少なくとも1つの手段を、少なくとも1つの分割室に設ければよい。
【0083】
また、複数の分割室328A、328Bのうち、1つの分割室でのみ、被加熱物を加熱する機能を有する(
図21、
図22)。この構成によれば、1つの分割室に被加熱物を入れることで、被加熱物ごとに加熱条件を変えることが可能となる。また、複数の分割室328A、328Bのうち、被加熱物の大きさと同等の分割室に被加熱物を入れて加熱することにより、高効率な加熱が可能となる。これにより、時短・高温加熱、及び省エネな加熱を実現できる。なお、1つの分割室に入れる被加熱物は複数個でも同様の効果を有する。なお、被加熱物を入れる分割室の大きさが分割前の加熱室301より小さければ効果があるので、被加熱物と同等の分割室の大きさでなくても効果を有する。
【0084】
また、複数の分割室328A、328Bのうち、2つの分割室328A、328Bで、被加熱物302A、302Bを加熱する機能を有する(
図23)。この構成によれば、2つの分割室328A、328Bにそれぞれ被加熱物302A、302Bを入れることで、被加熱物302A、302Bごとに加熱条件を変えることが可能となる。さらに、従来の機器では被加熱物302A、302Bを1つずつ加熱する必要があったが、複数の被加熱物302A、302Bを同時に加熱することが可能となる。また、複数の分割室328A、328Bのうち、被加熱物302A、302Bの大きさと同等の分割室328A、328Bに被加熱物302A、302Bを入れて加熱することにより、高効率な加熱が可能となる。これにより、各被加熱物302A、302Bに適した加熱源を選択でき、2品の同時加熱、時短・高温加熱、及び省エネな加熱を実現できる。なお、1つの分割室328A、328Bに入れる被加熱物302A、302Bは複数個でも同様の効果を有する。なお、被加熱物302A、302Bを入れる分割室328A、328Bの大きさが分割前の加熱室301より小さければ効果があるので、被加熱物302A、302Bと同等の分割室328A、328Bの大きさでなくても効果を有する。
【0085】
また、分割部305の載置面319Bは誘電体で構成され、分割部305は、載置面319Bの下方に凹部320を形成する。この構成によれば、載置面319Bの下方に凹部320を設けることで、マイクロ波を被加熱物302Bの下に回り込ませられる空間を形成できる。仮に、被加熱物302Bを金属板の上に置いた場合、マイクロ波加熱の際に生じる電界強度は金属表面でゼロになるため、被加熱物302Bと金属との接触面は加熱が弱くなる。よって、誘電体で構成される載置面319Bの下方に空間を設けることで、被加熱物302Bの設置面である載置面319Bにおける加熱を強めることが可能となる。これにより、均一加熱を実現できる。なお、代表的な誘電体としてはセラミック、樹脂、ガラスが挙げられる。
【0086】
また、凹部320に金属321を設ける。この構成によれば、金属321はマイクロ波を反射するので、周囲のマイクロ波分布が、金属321がない場合とは異なるマイクロ波分布になる。よって、金属321の形状や置き位置に応じて、被加熱物302Bの加熱分布を均一化することが可能となる。これにより、均一加熱を実現できる。なお、金属321は板状、ブロック状、棒状のいずれでも効果がある。なお、金属321のいずれかの寸法をマイクロ波の1/4波長の整数倍にすることにより、アンテナとして作用させることが可能となり、より顕著に金属321周辺のマイクロ波分布を変化させることが可能となる。金属321のいずれかの寸法とは、金属321の1辺の寸法、あるいは金属321における表面間の寸法のことをいう。
【0087】
また、回転アンテナ309は、所定の回転範囲内で回転するように制御される。この構成によれば、回転アンテナ309の回転角度を1つの分割室にマイクロ波を放射する範囲で往復させることで、1つの分割室内の被加熱物を集中して加熱することと、回転角度により決まる分割室内の定在波分布を変えながらの加熱が可能になり、被加熱物の加熱の均一性を向上させることが可能となる。これにより、狙った分割室内の被加熱物にマイクロ波を集中させることができ、その被加熱物を均一加熱することができる。
【0088】
また、分割部305の4辺に電波遮蔽構造310を設ける。この構成によれば、分割部305の電波遮蔽性能が向上する。
【0089】
また、分割部305の第1辺に電波遮蔽構造310A(第1電波遮蔽構造)を設け、分割部305の第1辺とは異なる第2辺に電波遮蔽構造310Aとは異なる電波遮蔽構造310B(第2電波遮蔽構造)を設ける。この構成によれば、加熱室301の内壁の形状および構成要素の誘電率は異なることが多い。例えば、ドア325側にはガラス板または樹脂板などの誘電体があり、給電部を有する面にはマイクロ波を加熱室301に放射するアンテナがある。よって、加熱室301の内壁312の形状および構成要素の誘電率の違いにより最適な遮蔽構成の形状は異なる。これにより、分割部305の辺に応じて電波遮蔽構造310を設計することで、電波遮蔽性能を向上させることができる。
【0090】
また、分割部305の電波遮蔽構造310Aを設ける第1辺は、分割部305におけるドア325側の辺である。この構成によれば、ドア325における加熱室301に面する側にはドアガラス326または樹脂の板が設置してあることが多い。誘電体内ではマイクロ波の波長圧縮が生じるため、加熱室301の内壁と分割部305との間におけるマイクロ波分布は、ドア325側の辺とドア325側以外の辺とでは異なる。よって、ドア325側の辺における遮蔽性能を他の辺における遮蔽性能と同等にする場合は、ドア325側の辺の電波遮蔽構造310Aと、他の辺の電波遮蔽構造310Bを異ならせるとよい。電波遮蔽構造310とドア325側の金属面との距離が、電波遮蔽構造310と他の辺の金属面と同等の場合、誘電体内での波長圧縮を考慮して、電波遮蔽構造310の共振空間内のマイクロ波伝送長を短くするとよい。また、機械的な干渉を防ぐために、電波遮蔽構造310とドア325側の金属面の距離が誘電体内での波長圧縮以上に大きい場合は、電波遮蔽構造310の共振空間内のマイクロ波伝送長を長くするとよい。これにより、分割部305のドア325側の辺における電波遮蔽構造310を他の辺における電波遮蔽構造310と異ならせることで、電波遮蔽性能を向上させることができる。
【0091】
なお、電波遮蔽構造310Aを設ける辺は、分割部305におけるドア325側の辺に限らず、例えば、分割部305においてマイクロ波放射部304に対向する側の辺(背面側)に設けてもよい。すなわち、分割部305の電波遮蔽構造310Aを設ける第1辺は、分割部305におけるマイクロ波放射部304に近い側の辺であってもよい。この構成によれば、マイクロ波放射部304の近傍はマイクロ波のエネルギー密度がより高く、分割部305の金属と回転アンテナ309との間に強電界が生じて放電が起きる可能性が高い。よって、マイクロ波放射部304の近傍における分割部305の電波遮蔽構造を、他の部分の電波遮蔽構造よりも放電が起きにくい構成にすると、放電の可能性を低減できる。例えば、回転アンテナ309と電波遮蔽構造300との距離を、加熱室301の他の内壁312(側壁)と電波遮蔽構造300との距離よりも長くすることで、電波遮蔽構造を異ならせてもよい。また、電波遮蔽構造310または回転アンテナ309の各金属の端面に丸みをつけることも有効である。また、電波遮蔽構造310または回転アンテナ309の各金属の端面に絶縁体を貼り、金属表面の絶縁抵抗を上げることも有効である。これにより、電波遮蔽性能の向上と、放電の低減による安全性の向上を実現できる。
【0092】
また、分割部305は、加熱室301を高さ方向Zに分割し、加熱室301の内壁312は、分割部305を加熱室301の中央に向けてセンタリングするための傾斜面324を有する。この構成によれば、傾斜面同士が平行でない場合は、傾斜面同士が点もしくは線で接触するため、滑りやすくなるのに対し、傾斜面324、325同士が平行の場合は、傾斜面324、325同士が広い面積で接触するため、互いに滑りにくくなる。よって、分割部305とレール323に傾斜面324を設けることで、分割部305の自重により斜面324、325が平行になる位置まで分割部305が滑らせることができ、加熱室301の内壁に対する分割部305の位置を安定化させることができる。これにより、分割部305の遮蔽性能を安定化できる。
【0093】
また、分割室328A、328Bにマイクロ波センサ318A、318Bを設ける。この構成によれば、マイクロ波センサ318A、318Bの検知結果を利用して様々な制御が可能となる。当該制御について、
図24~
図32を用いて説明する。
【0094】
[1.3.3 マイクロ波センサの利用例]
図24は、実施の形態3にかかる加熱装置300を用いたマイクロ波センサの利用例に関する概略図である。
図24に示すように、加熱装置300は、マイクロ波W1を発生させるためのマイクロ波発生部350と、マイクロ波発生部350が発生させたマイクロ波を加熱室301内の被加熱物302Aに放射するためのマイクロ波放射部351と、マイクロ波とは別の手段により被加熱物302Aを加熱するための加熱部352とを備える。マイクロ波発生部350は、制御部311に接続されている。加熱部352は、例えば、輻射加熱源、熱風対流加熱源、スチーム加熱源等のマイクロ波加熱源以外の加熱源(ヒータ)である。
【0095】
図24に示すマイクロ波発生部350およびマイクロ波放射部351は、マイクロ波を放射する機能と、放射したマイクロ波を検知する機能を兼ねており、マイクロ波センサとしても機能する。マイクロ波センサは、例えば、マイクロ波放射部351あるいはマイクロ波発生部350に内蔵されている。このような場合に限らず、
図18Aに示す加熱装置300の構成例のように、マイクロ波発生部303およびマイクロ波放射部304と、マイクロ波センサ318A、318Bが別体であってもよく、同様の制御を適用することができる。
【0096】
制御部311は、マイクロ波センサにより反射波の電力の経時的に検知し、反射波の電力の経時変化に基づいて被加熱物302Aの状態の判定をし、判定の結果に基づいてマイクロ波放射部351により照射される電波を制御する処理を行う。
【0097】
制御部311は、例えば、反射波の電力の経時変化に基づいて被加熱物302Aの状態が加熱終了の状態であれば、マイクロ波放射部351により照射される電波を制御することによって、加熱処理を終了してよい。
【0098】
この場合の制御部311の動作を、
図25に示すフローチャートを参照して説明する。制御部311は、加熱処理を開始し(S31)、マイクロ波センサにより反射波電力を検出し(S32)、反射波電力の経時変化に基づいて被加熱物302Aの状態の判定をする(S33)。判定の結果、被加熱物302Aの状態が加熱終了の状態であれば(S34でYES)、制御部311は、加熱処理を終了する(S35)。
【0099】
例えば、被加熱物302Aが水であり、加熱処理により被加熱物302Aを沸騰させる場合を例に挙げる。この場合、加熱終了の状態は、被加熱物302Aが沸騰している状態である。
図26は、被加熱物302Aの状態変化の検知の説明図であり、被加熱物302Aが沸騰している場合を示す。被加熱物302Aが沸騰している場合、被加熱物302Aの液面の上下するため、液面の高さが、h1と、h1+d1との間で変化する。液面の高さがh1+d1である場合には、被加熱物302Aにマイクロ波W1が照射されるが、液面の高さがh1である場合には、マイクロ波W1が被加熱物302Aに当たらずに加熱室301の壁面に当たって反射され、反射波W2としてマイクロ波センサにより検知される。したがって、マイクロ波センサにより検出される反射波電力の経時変化に基づいて被加熱物302Aの状態が、被加熱物302Aが沸騰している状態かどうかを判定できる。
【0100】
制御部311は、例えば、反射波の電力の経時変化に基づいて被加熱物302Aの状態が条件変更の状態であれば、マイクロ波放射部351により照射される電波を制御することによって、加熱条件を変更してよい。加熱条件の変更は、例えば、マイクロ波発生部350による加熱から、加熱部352による加熱への切り替えであってよい。加熱条件の変更は、特に限定されず、マイクロ波発生部350で発生させる電波の電力、周波数、及び位相差の少なくとも一つの変更であってよい。
【0101】
この場合の制御部311の動作を、
図27に示すフローチャートを参照して説明する。制御部311は、加熱処理を開始し(S41)、マイクロ波センサにより反射波電力を検出し(S42)、反射波電力の経時変化に基づいて被加熱物302Aの状態の判定をする(S43)。判定の結果、被加熱物302Aの状態が条件変更の状態であれば(S44でYES)、制御部311は、加熱条件を変更する(S45)。
【0102】
被加熱物302Aの条件変更の状態の例としては、膨化による形状変化、融解による局所的な誘電率の上昇、解凍による局所的な誘電率の上昇、位置の変化、乾燥による誘電率の低下が挙げられる。
【0103】
図28は、被加熱物302Aの状態変化の検知の説明図であり、被加熱物302Aの膨化による形状変化が生じている場合を示す。被加熱物302Aが膨化した場合、被加熱物302Aの高さが、h2からh2+d2に変化する。被加熱物302Aの高さがh2である場合には、マイクロ波W1が被加熱物302Aに当たらずに加熱室301の壁面に当たって反射され、反射波W2としてマイクロ波センサにより検知される。被加熱物302Aの高さがh2+d2である場合には、被加熱物302Aにマイクロ波W1が照射され、吸収される。したがって、マイクロ波センサにより検出される反射波電力の経時変化に基づいて、被加熱物302Aの状態として、被加熱物302Aが膨化により形状変化しているかどうかを判定できる。
【0104】
図29は、被加熱物302Aの状態変化の検知の説明図であり、被加熱物302Aの融解による局所的な誘電率の上昇が生じている場合を示す。誘電体が吸収するマイクロ波の電力は、誘電体の比誘電率に比例する。被加熱物302Aに融解部分360が生じた後は、融解部分360で吸収される電波の電力が増加し、反射波W2の電力が低下する。したがって、マイクロ波センサにより検出される反射波電力の経時変化に基づいて、被加熱物302Aの状態として、被加熱物302Aが部分的に融解して局所的に誘電率の上昇が生じているかどうかを判定できる。
【0105】
図30は、被加熱物302Aの状態変化の検知の説明図であり、被加熱物302Aの解凍による局所的な誘電率の上昇が生じている場合を示す。この状態変化は、被加熱物302Aが冷凍食品であり、加熱処理により被加熱物302Aを解凍する場合に生じる。誘電体が吸収するマイクロ波の電力は、誘電体の比誘電率に比例する。被加熱物302Aに解凍部分362が生じた後は、解凍部分362で吸収される電波の電力が増加し、反射波W2の電力が低下する。したがって、マイクロ波センサにより検出される反射波電力の経時変化に基づいて、被加熱物302Aの状態がとして、被加熱物302Aが部分的に解凍されて局所的に誘電率の上昇が生じているかどうかを判定できる。
【0106】
図31は、被加熱物302Aの状態変化の検知の説明図であり、被加熱物302Aの位置が変化している場合を示す。例えば、加熱処理において、被加熱物302Aの一部が弾けて被加熱物302Aが加熱室301内で移動し、被加熱物302Aの位置が変わる場合がある。例えば、被加熱物302Aが初期位置にある場合には、マイクロ波W1が被加熱物302Aに当たらずに加熱室301の壁面に当たって反射され、反射波W2としてマイクロ波センサにより検知される。一方で、例えば、被加熱物302Aが初期位置から移動した場合には、被加熱物302Aにマイクロ波W1が照射され、吸収される。したがって、マイクロ波センサにより検出される反射波電力の経時変化に基づいて、被加熱物302Aの状態として、被加熱物302Aが移動して位置が変化したかどうかを判定できる。
【0107】
図32は、被加熱物302Aの状態変化の検知の説明図であり、被加熱物302Aの乾燥による誘電率の低下が生じている場合を示す。誘電体が吸収するマイクロ波の電力は、誘電体の比誘電率に比例する。被加熱物302Aに乾燥部分364が生じた後は、乾燥部分364で吸収される電波の電力が低下し、反射波W2の電力が増加する。したがって、マイクロ波センサにより検出される反射波電力の経時変化に基づいて、被加熱物302Aの状態として、被加熱物302Aが部分的に乾燥して誘電率の低下が生じているかどうかを判定できる。
【0108】
なお、本実施の形態においても、反射波電力の代わりに、反射率を採用してもよい。
【0109】
以上述べたように、本実施の形態では、制御部311は、反射波電力又は反射率の変化から被加熱物302Aの状態変化を検知する状態検知手段としての機能と、検知された状態に応じてマイクロ波の制御をする制御手段としての機能を有する。制御部311は、反射波電力又は反射率の変化から被加熱物302Aの状態変化(例えば、沸騰、膨化、融解、解凍、弾け、乾燥)を検知し、加熱条件の変更又は加熱を終了する。ここで、マイクロ波の制御とは、マイクロ波の照射、マイクロ波の照射の停止、マイクロ波の周波数の変更、マイクロ波の出力調整等を含む。
【0110】
被加熱物302Aの加熱が進行することで、沸騰や膨化等、被加熱物302Aの揺れや形状変化、及び融解や乾燥等の被加熱物302Aの急激な誘電率の変化が生じる場合がある。この被加熱物302Aの状態の変化により被加熱物302Aのマイクロ吸収特性が変わるため、反射波電力又は反射率にも変化が生じる。被加熱物302Aの状態が変化した時点で加熱条件を変更又は加熱を終了することは、加熱の過不足を緩和し、高品位な仕上がりに近付けることに有効である。従来は、予め加熱条件の変更時間及び加熱の終了時間を決めて調理するか、熱電対により加熱室内の温度を測定して加熱条件の変更及び加熱の終了を行っていたため、被加熱物302Aの重量、容器、初期温度が想定と異なっていた場合に、加熱の過不足が生じやすく、高品位な仕上がりの自動調理は実現できていなかった。しかし、本実施の形態では、被加熱物302Aの状態を検知することで高品位な仕上がりの自動調理が可能となる。なお、被加熱物302Aの情報、例えば、被加熱物302Aの重量、被加熱物302Aの現在の温度、被加熱物302Aの種類等の情報を利用できれば、被加熱物302Aの状態変化検知の精度をさらに向上することができる。また、検知した反射波電力と入射波(照射波)の電力の関係から、例えば、反射率等の補助的な情報を算出し、フィードバック情報として用いることで、さらに精度の向上が図れる。
【0111】
なお、反射波電力を用いた状態の判定では、特に周波数に対する反射波電力だけをもいいてもよいし、複数の周波数に対する反射波電力の代表値(例えば、平均値、最大値、最小値、最頻値、中央値、中心値等)を用いてもよい。また、反射波電力を用いた状態の判定では、反射波電力又は反射率の任意の時間当たりの変化度又は標準偏差等が予め設定した閾値を超えたかどうかで、状態の判定を行ってよい。
【0112】
[1.3.4 実施の形態3の変形例]
図18Bは、実施の形態3の変形例にかかるマイクロ波加熱装置300の構成例の概略側面図である。
【0113】
図18Bに示すマイクロ波加熱装置300は、マグネトロン370と、導波管372と、マイクロ波センサ374とを備える。
【0114】
マグネトロン370は、マイクロ波発生部の一例であり、導波管372にマイクロ波を供給する。導波管372は、マグネトロン370が発生させたマイクロ波を伝搬させる部材であり、マイクロ波放射部304および回転アンテナ309に結合される。マイクロ波センサ374は、導波管372を伝搬するマイクロ波を検知するセンサである。
【0115】
上記構成によれば、マグネトロン370が発生させたマイクロ波を、導波管372を通じてマイクロ波放射部304および回転アンテナ309に供給することで、回転アンテナ309から分割室328A、328Bに向けてマイクロ波を放射することができる。マイクロ波センサ374を利用すれば、
図24~
図32を用いて説明した「マイクロ波センサの利用例」と同様の制御を実行することも可能である。
【0116】
図18Bに示すようなマグネトロン370と導波管372を有する構成は、すべての実施の形態において適用してもよい。
【0117】
[1.4 実施の形態4]
[1.4.1 構成]
図33は、実施の形態4にかかるマイクロ波加熱装置400の構成例の概略上面図である。
図33に示すマイクロ波加熱装置400は、加熱室401と、マイクロ波発生部403と、マイクロ波放射部404と、分割部405A、405Bと、を備える。
【0118】
図33に示す加熱室401は、2つの分割部405A、405Bによって、3つの分割室428A、428B、428Cに分割される。分割部405Aは、加熱室301を幅方向Xに分割するように奥行方向Yに延びる。分割部405Bは、分割部405Aによって分割された加熱室301の一方側の空間をさらに奥行方向Yに分割するように幅方向Xに延びる。
図33に示す例では、分割室428Bに被加熱物402が配置される。
【0119】
分割部405Aは、例えば、金属などのマイクロ波を遮蔽する材料で構成される。一方、分割部405Bは、例えば、樹脂などのマイクロ波を透過する材料、すなわち誘電体で構成される。これにより、分割室428Aと分割室428B、428Cとの間は、分割部405Aによってマイクロ波が遮蔽され、分割室428Bと分割室428Cとの間は、分割部405Bによってマイクロ波が遮蔽されずに透過する。
【0120】
分割部405Aはさらに、加熱室401に対向する端部に電波遮蔽構造410A、410Bを有する。本実施の形態では、電波遮蔽構造410A、410Bはそれぞれ異なる方式の構造が採用されている。例えば、分割部405Aと加熱室401の内壁との距離に応じて、電波放射部404に近接しない側の電波遮蔽構造410Aを非接触式の電波遮蔽構造とし、電波放射部404に近接する側の電波遮蔽構造410Bを接触式の電波遮蔽構造とする。
【0121】
マイクロ波放射部404は、加熱室401の側面側に設けられ、回転アンテナ409を有する。回転アンテナ409は、例えば、分割室428Bと分割室428Aのそれぞれに向けてマイクロ波を放射する。分割室428Bに向けて放射されたマイクロ波は、分割部405Bを透過して分割室428Cに進入可能である。
【0122】
図33に示すように、分割室428Bに被加熱物402が配置され、他の分割室428A、428Cには被加熱物が配置されていない場合、マイクロ波放射部404は、例えば、回転アンテナ409を停止させた状態で、分割室428Bに向けてマイクロ波を放射するように制御される。これにより、回転アンテナ409は常に分割室428Bに向けてマイクロ波を放射する。一方、分割室428Bに配置される被加熱物402に加えて、分割室428Aに別の被加熱物が配置される場合、マイクロ波放射部404は、例えば、回転アンテナ409を連続的に回転させながらマイクロ波を放射するように制御される。この場合、マイクロ波放射部404は、第1の回転範囲において分割室428Aに向けてマイクロ波を放射し、第2の回転範囲において分割室428Bに向けてマイクロ波を放射する。これにより、分割室428Bに配置される被加熱物402と、分割室428Aに配置される被加熱物を交互に加熱することができ、複品加熱が可能となる。
【0123】
[1.4.2 作用効果]
上述した実施の形態4のマイクロ波加熱装置400は、分割室428A~428Cのうち、1つの分割室(例えば分割室428B)でのみ、被加熱物402を加熱する機能を有する。この構成によれば、1つの分割室に被加熱物402を入れることで、被加熱物402ごとに加熱条件を変えることが可能となる。また、複数の分割室428A~428Cのうち、被加熱物402の大きさと同等の分割室に被加熱物402を入れて加熱することにより、高効率な加熱が可能となる。これにより、時短・高温加熱、及び省エネな加熱を実現できる。なお、1つの分割室に入れる被加熱物402は複数個でも同様の効果を有する。なお、被加熱物402を入れる分割室の大きさが分割前の加熱室401より小さければ効果があるので、被加熱物402と同等の分割室の大きさでなくても効果を有する。
【0124】
また、分割部405Bは、誘電体で構成される。この構成によれば、マイクロ波は誘電体を透過するが、熱風およびスチームは透過しない。よって、マイクロ波以外の加熱源による加熱度合いを分割室ごとに変えることが可能となる。また、加熱室401を分割することで、より小さな空間で食品を熱風加熱およびスチーム加熱することが可能となり、高効率な加熱が可能となる。これにより、各被加熱物に適した加熱源を選択でき、複品の同時加熱、時短・高温加熱、及び省エネな加熱を実現できる。なお、代表的な誘電体としてはセラミック、樹脂、ガラスが挙げられる。
【0125】
また、分割部405Aは、加熱室401を奥行方向Xに分割する。この構成によれば、加熱室401を奥行方向Yに分割することで複品加熱が可能となり、さらに分割前と比較して、被加熱物402の高さ方向Zまたは幅方向Yの寸法を制限することなく、分割室を形成できる。これにより、複品の同時加熱を実現でき、加熱できる被加熱物402の寸法制限を緩和できる。本構成は、分割室428Aに配置される被加熱物が、パスタのように幅方向Yの寸法が大きい場合に特に有効である。
【0126】
また、マイクロ波放射部404は、加熱室401の側面から加熱室401にマイクロ波を放射する。この構成によれば、電子レンジは前方にドアを設けて、前方から被加熱物402を取り出す構成が多い。ドアの外側から加熱室401内を見ることができるように、ドアの金属の平面部にはパンチングメタルが使われており、加熱室401内の密閉度を高めるとともに清掃性を向上させるために、パンチングメタルの加熱室401側には、透明なガラス板または樹脂板などの誘電体が配置されている。よって、加熱室401の前後方向では壁面の形状および構成要素の誘電率が大きく異なるため、被加熱物402の加熱分布は前後方向で大きく異なることが多い。よって、加熱室401の側面にマイクロ波放射部404(給電部)を設け、そのマイクロ波放射部404から加熱室401に放射されるマイクロ波の指向性を前後方向で制御することで、被加熱物402の前後方向の加熱分布を均一化することができる。また、加熱室401の側面にマイクロ波放射部404を設け、そのマイクロ波放射部404から加熱室401に放射されるマイクロ波の指向性を上下方向で制御することで、被加熱物402の上下方向の加熱分布を均一化することができる。これにより、均一加熱を実現できる。
【0127】
また、マイクロ波放射部404は、回転アンテナ409を停止させながらマイクロ波を放射する機能を有する。この構成によれば、回転アンテナ409を停止させて、1つの分割室(例えば分割室428B)にマイクロ波を集中して放射することで、その分割室428B内の被加熱物402を集中してマイクロ波加熱することが可能となる。これにより、集中加熱を実現できる。なお、実際は回転アンテナ409を一方向に固定して長時間マイクロ波加熱をすると、加熱室401内の定在波分布が固定されて放電および加熱ムラが生じやすいため、それを抑制するために、回転アンテナ409の停止動作と回転動作を組合わせてもよい。なお、回転アンテナ409の形状が分岐していて2つの方向にマイクロ波を放射可能な場合は、2つの分割室内の被加熱物を同時に集中してマイクロ波加熱することも可能となる。
【0128】
また、マイクロ波放射部404は、回転アンテナ409を連続的に回転させながらマイクロ波を放射する機能を有する。この構成によれば、回転アンテナ409を連続的に回転させて被加熱物を加熱することで、回転アンテナ409の回転角度により決まる分割室428A~428C内の定在波分布を変えながら被加熱物を加熱することが可能になり、加熱の均一性を向上させることが可能となる。また、複数の分割室428A~428Cにおいて回転アンテナ409の回転角度によりマイクロ波をより強く放射する分割室428A~428Cが変わる場合は、複数の分割室428A~428C内の被加熱物を同時加熱することが可能となる。これにより、均一加熱、及び複品の同時加熱を実現できる。
【0129】
また、電波遮蔽構造410A、410Bは、接触式の電波遮蔽構造410B(第1電波遮蔽構造)と、非接触式の電波遮蔽構造410A(第2電波遮蔽構造)とを有する。この構成によれば、加熱室401の内壁と分割部405Aの位置関係により、電波遮蔽構造410A、410Bの方式を非接触式と接触式のいずれかに選択できる。加熱室401の内壁に凹凸を設けるなどして板状の分割部405Aを保持する部分においては、分割部405Aと加熱室401が接触するため、接触式の遮蔽構造を使用することで、分割部405Aの遮蔽構成を単純化することが可能となる。分割部405Aと加熱室401が接触しない部分については、非接触式の遮蔽構成を用いることで、安定して遮蔽性能を確保できる。これにより、分割部405A、405Bの構造を単純化できる。
【0130】
[1.5 実施の形態5]
[1.5.1 構成]
図34は、実施の形態5にかかるマイクロ波加熱装置500の構成例の概略正面図である。
図34に示すマイクロ波加熱装置500は、加熱室501と、マイクロ波発生部503と、マイクロ波放射部504と、を備える。
【0131】
マイクロ波加熱装置500は、加熱室501を分割するための分割部(図示せず)を有するが、分割部は着脱可能であり、
図34では分割部を取り外した状態が示される。
【0132】
マイクロ波放射部504は、加熱室501の天面側に設けられ、加熱室501には被加熱物502が配置される。当該構成において、分割部を取り外した状態において、マイクロ波放射部504は、加熱室501の天面から加熱室501に向けてマイクロ波を放射し、被加熱物502をマイクロ波加熱する。
【0133】
[1.5.2 作用効果]
上述した実施の形態5のマイクロ波加熱装置500は、分割部を加熱室501から取り外した状態で、マイクロ波放射部504から加熱室501内にマイクロ波を放射する。この構成によれば、加熱室501に入る寸法の被加熱物502であれば加熱可能となる。これにより、加熱できる被加熱物502の寸法制限を緩和できる。
【0134】
また、マイクロ波放射部504は、加熱室501の天面から加熱室501にマイクロ波を放射する。この構成によれば、加熱室501の天面からマイクロ波を放射することにより、加熱室501の底面から給電する構成と比較して、被加熱物502とマイクロ波放射部504(給電部)の距離を長く確保できる。これにより、マイクロ波放射部504から加熱室501内にマイクロ波を拡散させながら被加熱物502に当てることが可能となる。本構成は、背が低い被加熱物502や、水平方向における加熱分布の均一性が重要な被加熱物502について特に有効である。これにより、均一加熱を実現できる。
【0135】
[1.6 実施の形態6]
[1.6.1 構成]
図35は、実施の形態6にかかるマイクロ波加熱装置600の構成例の概略側面図である。
図35に示すマイクロ波加熱装置600は、加熱室601と、マイクロ波発生部603と、マイクロ波放射部604と、分割部605と、熱風加熱手段615と、輻射加熱手段616と、スチーム加熱手段617と、分割部移動機構627と、を備える。
【0136】
図35に示す加熱室601は、分割部605によって高さ方向Zに分割され、2つの分割室628A、628Bを形成する。分割部605は、例えば、マイクロ波を遮蔽する金属などの材料で構成されるとともに、電波遮蔽構造610を有する。
図35では、分割部605の上面に被加熱物602が配置されている。
【0137】
分割部移動機構627は、分割部605を上下方向に移動させるための機構である。分割部移動機構627は、例えば、加熱前あるいは加熱中に分割部605を移動させる。分割部移動機構627は、載置部630と、スライド部632とを備える。載置部630は、分割部605を載置するための部材であり、例えば、水平方向に延在する板状の形状を有する。スライド部632は、載置部630を上下方向に移動可能に支持する部材であり、高さ方向Zに沿って延びる。図示を省略しているが、加熱室601の側壁には、載置部630を通過させるための隙間(スリット)が形成される。
【0138】
マイクロ波放射部604は、加熱室601の側面側に設けられる。熱風加熱手段615は、熱風による加熱を行うための部材であり、マイクロ波放射部604と同様に、加熱室601の側面側に設けられる。輻射加熱手段616は、輻射による加熱を行うための部材であり、加熱室601の天面側に設けられる。スチーム加熱手段617は、スチームによる加熱を行うための部材であり、マイクロ波放射部604およびスチーム加熱手段617と同様に、加熱室601の側面側に設けられる。
【0139】
[1.6.2 作用効果]
上述した実施の形態6のマイクロ波加熱装置600によれば、分割部605は、加熱前あるいは加熱中に移動可能に構成される。この構成によれば、加熱前に分割部605を移動させれば、分割室628Bの寸法を被加熱物602と同等の大きさに設定することが可能となる。また、加熱中に分割部605を移動させれば、分割室628Bの寸法を変えることができ、マイクロ波・熱風・スチームのそれぞれの分布などの加熱条件を変えることが可能となる。これにより、被加熱物602の加熱状態に合わせた、柔軟な加熱条件の変更が可能となる。なお、分割部605が金属の場合、分割室628Bの寸法が変わることにより、マイクロ波の定在波分布は大きく変わる。これにより、マイクロ波加熱による加熱分布の均一化が可能となる。
【0140】
[1.7 実施の形態7]
[1.7.1 構成]
図36は、実施の形態7にかかるマイクロ波加熱装置700の構成例の概略正面図である。
図36に示すマイクロ波加熱装置700は、加熱室701と、分割部705A、705Bと、マイクロ波放射部709と、を備える。
【0141】
図36に示す加熱室701は、分割部705A、705Bによって幅方向Yおよび高さ方向Zに分割され、4つの分割室728A、728B、728C、728Dを形成する。分割部705Aは、加熱室701を幅方向Yに分割するように高さ方向Zに延びる。分割部705Bは、加熱室701を高さ方向Zに分割するように幅方向Yに延びる。分割部705Aは、例えば、後述する回転アンテナ709A,709Bの回転中心721に重なるように幅方向Yの中間位置に配置される。分割部705Bは、例えば、回転アンテナ709A、709Bの回転中心721に対して下方の高さ位置に配置される。分割部705A、705Bはそれぞれ、例えば、別体であっても、一体であってもよい。分割部705A、705Bはそれぞれ、例えば、加熱室701の内壁に固定されていても、着脱可能であってもよい。
【0142】
マイクロ波放射部709は、加熱室701の背面側に設けられるとともに、回転アンテナ709A、709Bを有する。回転アンテナ709A、709Bはそれぞれ、加熱室701に向けてマイクロ波を放射するように構成され、例えば、回転アンテナ709Aは、第1の方向にマイクロ波を放射し、回転アンテナ709Bは、第2の方向にマイクロ波を放射する。回転アンテナ709A、709Bによって、マイクロ波放射部709によるマイクロ波放射が複数に分割される。より具体的には、アンテナの給電結合点からの距離がλ/2の整数倍になる放射点を複数設け、アンテナからの放射指向性を複数にする。
【0143】
回転アンテナ709A、709Bは、加熱室701の幅方向Xおよび高さ方向Zの中心である中心位置721を回転中心として、回転方向R4に沿って一体的に回転可能である。加熱室701を正面視した場合の回転アンテナ709Aと回転アンテナ709Bの成す角度は、約90度に設定されている。回転アンテナ709Aが1つの分割室に向けてマイクロ波を放射する間、回転アンテナ709Bはその分割室に隣接する分割室に向けてマイクロ波を放射する。これにより、複数の分割室に同時にマイクロ波が放射される。
【0144】
[1.7.2 作用効果]
上述した実施の形態7のマイクロ波加熱装置700によれば、マイクロ波放射部709は、マイクロ波を第1方向と第2方向に同時に放射する機能を有する。この構成によれば、アンテナ給電電力を複数の方向に分割して放射することができる。これにより、加熱パターンを増やすことができ、多種多様な食品に対して最適な加熱を選択できる。
【0145】
また、マイクロ波放射部709は、第1方向と第2方向に放射されるマイクロ波を用いて、複数の分割室728A~728Dに対して同時にマイクロ波を放射する機能を有する。この構成によれば、例えば、回転アンテナ709を用いて給電した場合に、回転アンテナ709の回転制御を行うことで、複数の分割室728A~728Dへの給電制御を行うことが可能となる。これにより、複品同時仕上げを実現することができ、一方の被加熱物を保温しながら他方の被加熱物を加熱することが可能となり、同様条件の複品を同時加熱することが可能となる。
【0146】
[1.8 実施の形態8]
[1.8.1 構成]
図37は、実施の形態8にかかるマイクロ波加熱装置800の構成例の概略上面図である。
図37に示すマイクロ波加熱装置800は、加熱室801と、分割部805と、ドア825と、を備える。
【0147】
図37に示す分割部805は、4辺のうちの1辺にのみ、電波遮蔽構造810を有する。分割部805の4辺のうち、ドア825のドアガラス826に対向する1辺に、電波遮蔽構造810が設けられる。
【0148】
[1.8.2 作用効果]
上述した実施の形態8のマイクロ波加熱装置800によれば、分割部805の1辺に電波遮蔽構造810を設ける。この構成によれば、分割部805の1辺に電波遮蔽構造810を設けることで、分割部805の電波遮蔽性能が向上する。なお、加熱室801内の定在波分布は分割部805の各辺で異なるため、漏洩電波量も各辺で異なる。よって、漏洩電波量が多い1辺に電波遮蔽構造810を設けることで、遮蔽性能をより高めることが可能となる。
【0149】
[1.8.3 実施の形態8の変形例]
[1.8.3.1 変形例1]
[1.8.3.1.1 構成]
図38は、実施の形態8の変形例1にかかるマイクロ波加熱装置800の構成例の概略上面図である。
【0150】
図38に示す分割部805は、4辺のうちの2辺にのみ、電波遮蔽構造810を有する。分割部805の4辺のうち、加熱室801の幅方向Xの両端部(側壁)に対向する2辺に、電波遮蔽構造810A、810Bが設けられる。
【0151】
[1.8.3.1.2 作用効果]
上述した実施の形態8のマイクロ波加熱装置800によれば、分割部805の2辺に電波遮蔽構造810A、810Bを設ける。この構成によれば、分割部805の2辺に電波遮蔽構造810A、810Bを設けることで、分割部805の電波遮蔽性能が向上する。なお、加熱室801内の定在波分布は分割部805の各辺で異なるため、漏洩電波量も各辺で異なる。よって、漏洩電波量が多い2辺に電波遮蔽構造810A、810Bを設けることで、遮蔽性能をより高めることが可能となる。
[1.8.3.2 変形例2]
[1.8.3.2.1 構成]
図39は、実施の形態8の変形例2にかかるマイクロ波加熱装置800の構成例の概略上面図である。
【0152】
図39に示す分割部805は、4辺のうちの3辺にのみ、電波遮蔽構造810を有する。分割部805の4辺のうち、ドア825のドアガラス826に対向する1辺に電波遮蔽構造810Aを設け、加熱室801の幅方向Xの両端部(側壁)に対向する2辺に、電波遮蔽構造810Bを設ける。
【0153】
[1.8.3.2.2 作用効果]
上述した実施の形態8のマイクロ波加熱装置800によれば、分割部805の3辺に電波遮蔽構造810A、810Bを設ける。この構成によれば、分割部805の3辺に電波遮蔽構造810A、810Bを設けることで、分割部805の電波遮蔽性能が向上する。なお、加熱室801内の定在波分布は分割部805の各辺で異なるため、漏洩電波量も各辺で異なる。よって、漏洩電波量が多い3辺に電波遮蔽構造810A、810Bを設けることで、遮蔽性能をより高めることが可能となる。
【0154】
[1.9 実施の形態9]
[1.9.1 構成]
図40、
図41はそれぞれ、実施の形態9にかかるマイクロ波加熱装置900の構成例の概略上面図、概略正面図である。
図40に示すマイクロ波加熱装置900は、加熱室901と、分割部905と、ドア925と、を備える。
【0155】
図40に示す分割部905は、4辺のうちの3辺にのみ、電波遮蔽構造910を有する。具体的には、分割部905の4辺のうち、ドア925のドアガラス926に対向する1辺に電波遮蔽構造910Aを設け、加熱室901の幅方向Xの両端部(側壁)に対向する2辺に電波遮蔽構造910Bを設ける。電波遮蔽構造910A、910Bはそれぞれ、例えば、非接触式のチョーク構造である。電波遮蔽構造910Bが分割部905の辺の全長にわたって設けられるのに対して、電波遮蔽構造910Aは分割部905の辺の端部のみに設けられ、辺の中央部には設けられていない。すなわち、分割部905におけるドア925に対向する辺では、非接触式の電波遮蔽構造910Aを限られた範囲に設けている。
図41に示すように、加熱室901を正面視したときに、分割部905の中央部906が開いた構成となり、分割部905の上に載置された被加熱物902を取り出しやすくなる。
【0156】
[1.9.2 作用効果]
上述した実施の形態9のマイクロ波加熱装置900によれば、電波遮蔽構造910Aは、非接触式であるとともに、分割部905におけるドア925側の辺においては、当該辺の限定された範囲に設けられる。この構成によれば、非接触式の電波遮蔽構造を採用した場合の分割部の厚みは、電波遮蔽構造を設けない平板状の分割部や、接触式の電波遮蔽構造を採用した場合の分割部と比較して厚くなる。よって、食品を取り出す側であるドア925側の一部の電波遮蔽構造をなくすことで、分割部905の厚みが部分的に薄くなり、間口が広がるため、食品を取り出しやすくなる。
【0157】
[1.10 実施の形態10]
[1.10.1 構成]
図42は、実施の形態10にかかるマイクロ波加熱装置1000の構成例の概略正面図である。
図42に示すように、マイクロ波加熱装置1000は、マイクロ波信号発生部1002と、2つの信号増幅部1003A、1003Bと、2つのマイクロ波放射部1004A、1004Bと、位相差制御部1006とを備える。
【0158】
マイクロ波信号発生部1002は、例えば、半導体式発信器を用いたマイクロ波発生部である。信号増幅部1003A、1003Bはそれぞれ、マイクロ波信号発生部1002からのマイクロ波信号を増幅する信号増幅器であり、マイクロ波放射部1004A、1004Bに接続される。位相差制御部1006は、複数のマイクロ波放射部1004A、1004Bにより照射されるマイクロ波の位相差を制御する。位相差制御部1006は、マイクロ波信号発生部1002と2つの信号増幅部1003A、1003Bとの間に接続される。位相差制御部1006は、マイクロ波信号発生部1002からのマイクロ波信号を、2つの信号増幅部1003A、1003Bのそれぞれに分配する。位相差制御部1006は、2つの信号増幅部1003に分配される電波信号間の位相差を制御することによって、複数のマイクロ波放射部1004により照射される複数の電波の位相差を制御する。位相差制御部1006は、マイクロ波放射部1004により照射される電波の位相差を変更することによって、加熱室1001内のマイクロ波分布を変更するために利用可能である。位相差制御部1006は、位相可変部であるといえる。
【0159】
位相差制御部1006は、例えば、印加電圧に応じて容量が変化する容量可変素子を用いて構成される。位相差制御部1006による位相可変範囲は、例えば、0°から略180°の範囲であってよい。これによって、複数のマイクロ波放射部1004から照射される電力の位相差は0°から±180°の範囲で制御することができる。
【0160】
マイクロ波加熱装置1000は、2つの電波照射部1004が互いに向けて電波を照射するように互いに対向して配置されている。
図42に示すように、2つのマイクロ波放射部1004は、加熱室1001の右側壁及び左側壁に配置されて、互いに向けて電波を照射する。
【0161】
加熱室1001には分割部1005が設けられている。加熱室1001は、分割部1005によって高さ方向Zに分割され、2つの分割室1028A、1028Bを形成する。
図42に示す例では、下段の分割室1028Aに2つのマイクロ波放射部1004が設置され、分割室1028Aの中央部に被加熱物1015が配置されている。
【0162】
図42に示すように、分割室1028A内で対向する位置にあるマイクロ波放射部1004から分割室1028Aに放射するマイクロ波の位相差を制御することにより、分割室1028Aの内壁で電波が反射し、電波の放射方向及び位相が乱れる前の直接波同士の電界の重ね合わせを制御することが可能となる。例えば、マイクロ波放射部1004からのマイクロ波の位相差が180°である場合には、分割室1028Aの中央を強く加熱することが可能になる。マイクロ波放射部1004からの電波の位相差が0°である場合には、分割室1028Aの中央よりも周辺の加熱が可能となる。マイクロ波放射部1004からの電波の位相差が90°である場合には、分割室1028Aの内部でマイクロ波分布を一方のマイクロ波放射部1004に偏った電波分布とすることができる。このように、複数のマイクロ波放射部1004からのマイクロ波の位相差を制御し、分割室1028A内の電波分布を制御することで、被加熱物1015の均一加熱及び選択加熱が可能となる。
【0163】
図42の加熱装置1000において、2つのマイクロ波放射部1004からの電波を重ね合わせるためには、2つのマイクロ波放射部1004間の距離は、2つのマイクロ波放射部1004からのマイクロ波の周波数における1波長以上であることが好ましい。つまり、重ね合わせの対象となるマイクロ波の照射位置間の距離は、当該マイクロ波の周波数における1波長以上に設定される。
【0164】
[1.10.2 作用効果]
上述した実施の形態10のマイクロ波加熱装置1000によれば、マイクロ波信号発生手段1002(マイクロ波発生部)は、半導体式発信器を有する。この構成によれば、従来の真空管式のマイクロ波発生部であるマグネトロンは、数kVの印加電圧が必要なため、インバータによる昇圧が必要であった。半導体式発振器であれば、数十Vの印加電圧でマイクロ波を発生させることが可能となる。よって、高電圧部品が不要となる。これにより、安全性の向上、給電構成の簡素化、及びコストダウン(部品点数の減少、高耐圧部品の排除)を実現できる。
【0165】
また、マイクロ波放射部1004A、1004Bは、マイクロ波放射部1004A(第1マイクロ波放射部)と、マイクロ波放射部1004Aとは異なるマイクロ波放射部1004B(第2マイクロ波放射部)とを有する。この構成によれば、従来は、給電部が1つであり、回転アンテナなどを用いてマイクロ波の指向性を変え、被加熱物の加熱分布の制御を行なっていた。しかし、電子レンジほどの加熱室の大きさの場合、被加熱物の加熱分布は、加熱室内壁で反射したマイクロ波による定在波分布の影響を大きく受ける。この定在波分布は回転アンテナの場合、アンテナの方向でしか制御することができない。複数の給電部にそれぞれ半導体式発振器を配置することで、周波数および位相差の制御が可能になり、定在波分布をより多様に制御可能となる。これにより、均一加熱、選択加熱を実現できる。なお、各給電部のマイクロ波出力を独立して制御できる構成の場合、加熱したい被加熱物1015に近い半導体式マイクロ波発振器からマイクロ波を放射することで、その被加熱物1015を選択的に加熱することができる。
【0166】
また、マイクロ波放射部1004Aとマイクロ波放射部1004Bのそれぞれが放射するマイクロ波の位相を制御する位相制御部1006(位相差制御手段)をさらに備える。この構成によれば、複数のマイクロ波放射部1004A、1004B間の位相差を変えることで、加熱室1001内の各場所での電界の重ね合わせ方向が変わるので、加熱室1001内全体の電波分布も変わる。被加熱物1015が分割室1028Aに置かれている場合は、被加熱物1015に吸収される電波量および吸収電力の分布も位相差により異なる。よって、位相差を変えることで分割室1028A内の電界分布を攪拌することが可能となる。位相差を変えて分割室1028A内の電界分布を攪拌することで、被加熱物1015に対して異なる吸収電力分布の組合せでの加熱が可能となり、被加熱物1015の均一な加熱を実現できる。
【0167】
また、マイクロ波放射部1004Aとマイクロ波放射部1004Bはそれぞれ、互いに対向する位置から加熱室1001にマイクロ波を放射する。この構成によれば、対向する位置から加熱室1001に放射するマイクロ波の位相を制御することにより、加熱室1001の内壁でマイクロ波が反射し、放射方向及び位相が乱れる前の直接波同士の電界の重ね合わせを制御することが可能となる。これにより、例えば、位相差がpiの場合、加熱室1001の中央を強く加熱することが可能になり、位相差がゼロで中央周辺の加熱が可能となる。また、位相差がpi/2の場合、偏ったマイクロ波分布になる。これにより、マイクロ波放射部1004A、1004Bが放射するマイクロ波の位相を制御し、加熱室1001内のマイクロ波分布を制御することで、被加熱物1015の均一加熱および選択加熱が可能となる。なお、位相制御するマイクロ波の放射位置同士は、放射する周波数における1波長以上の距離を有するように設計すればよい。
[1.10.3 実施の形態10に関する実施例]
【0168】
周波数と位相差との組み合わせを複数用いることで被加熱物1015を均一に加熱できることについて更に
図43~
図47を参照して説明する。
図43~
図47において、被加熱物1015は、例えば、冷凍ラザニアであり、平面視において矩形状である。つまり、
図43~
図47は、冷凍ラザニアの解凍時の温度分布を示している。以下、加熱室1001から分割部1005を取り外した状態で加熱室1001に配置した被加熱物1015をマイクロ波加熱した場合の実施例について説明する。なお、
図42に示すように加熱室1001に分割部1015を設置した状態で分割室1028Aに配置した被加熱物1015をマイクロ波加熱した場合も、同様の傾向になるものと考えられる。
【0169】
図43は、位相差0°の場合の被加熱物1015の加熱分布を説明する図である。
図43に示すように、2つのマイクロ波放射部1004A、1004Bから照射されるマイクロ波の位相差が0°の場合、被加熱物1015の中心領域R11よりも、中心領域R11の周りの領域R12のほうが、温度が高い。
図44は、位相差180°の場合の被加熱物1015の加熱分布を説明する図である。
図44に示すように、2つのマイクロ波放射部1004A、1004Bから照射されるマイクロ波の位相差が180°の場合、被加熱物1015の中心領域及び被加熱物1015の表面側の領域R13のほうが、中心の周りの領域R14よりも温度が高い。そのため、2つのマイクロ波放射部1004A、1004Bから照射されるマイクロ波の位相差が0°の加熱と2つのマイクロ波放射部1004A、1004Bから照射されるマイクロ波の位相差が180°の加熱とを組みあわせることで被加熱物1015を均一に加熱できると考えられる。
図45は、位相差0°と位相差180°とを組み合わせた場合の被加熱物1015の加熱分布を説明する図である。
図45から明らかなように、2つのマイクロ波放射部1004A、1004Bから照射されるマイクロ波の位相差が0°の加熱と2つのマイクロ波放射部1004A、1004Bから照射されるマイクロ波の位相差が180°の加熱とを組みあわせることで被加熱物1015を均一に加熱できることが確認された。
【0170】
図46は、比較例の被加熱物1015の加熱分布を説明する図である。比較例は、従来の電子レンジであって、被加熱物1015をターンテーブルにより回転させて加熱する。この場合、
図46から明らかなように、被加熱物1015の四隅の領域R15の温度が中心部に比べて高くなっており、被加熱物1015が四隅から加熱されることがわかる。
図47は、比較例において加熱処理を行った後の被加熱物1015の加熱分布を説明する図である。
図47から明らかなように、被加熱物1015の四隅の領域R16は中心部分より明らかに温度が高い。そのため、被加熱物1015の中心部が十分に温まる前に、四隅が過度に加熱されてしまう。被加熱物1015が冷凍ラザニアであれば、冷凍ラザニアの中心部が十分に解凍される前に、冷凍ラザニアの四隅の生地が脱水したり焦げたりしてしまう。
【0171】
次に、
図48及び
図49を参照して、周波数及び位相差による加熱室の電波分布及び被加熱物の加熱分布のシミュレーションについて説明する。
図48は、周波数及び位相差による加熱室の電波分布及び被加熱物の加熱分布のシミュレーションに用いたモデルを説明する図である。
図48に示すモデルは、4つの給電点P1~P4を備えている。例えば、給電点P1、P2はマイクロ波放射部1004Aに相当し、給電点P3、P4はマイクロ波放射部1004Bに相当する。
図48に示すモデルでは、4つの給電点P1~P4は、加熱室1001の底壁面1008の四隅にある。より詳細には、給電点P1,P2が底壁面1008の長さ方向の第1端側(
図48における右側)、給電点P3,P4が底壁面1008の長さ方向の第2端側(
図48における左側)にある。
【0172】
図49は、
図48に示すモデルにおいて周波数及び位相差による加熱室の電波分布及び被加熱物の加熱分布の違いを説明する図である。4つの給電点P1~P4から放射される電波の周波数は等しく、2413MHz、2455MHz、2495MHzのいずれかである。位相差は、給電点P1,P2から放射される電波と給電点P3,P4から放射される電波との位相差であり、給電点P3,P4から放射される電波の位相を変化させている。
【0173】
図49から明らかなように、周波数と位相差との組み合わせによって、加熱室1001内の電波分布が大きく変化している。また、周波数と位相差との組み合わせによって、被加熱物1015の加熱分布が大きく変化している。このように、複数の電波の周波数と位相差との組み合わせによって、加熱室1001内の電波分布及び被加熱物1015の加熱分布が一義的に決定される。したがって、周波数と位相差との組み合わせによって、加熱室1001内の電波分布及び被加熱物1015の加熱分布を制御することが可能である。
【0174】
加熱室1001の高さ、幅、及び奥行きの寸法の少なくとも一つをマイクロ波放射部1004A、1004Bから照射される電波の半波長以下にしてもよい。加熱室1001においてマイクロ波放射部1004A、1004Bから照射される電波の半波長以下の寸法である方向においては、電波分布(電界分布)が生じにくくなるから、周波数及び位相差により加熱室1001内の電波分布を制御しやすくなる。特に、加熱室1001の高さ、幅、及び奥行きの寸法の少なくとも一つをマイクロ波放射部1004A、1004Bから照射される電波の波長の1/4以下にしてもよい。加熱室1001においてマイクロ波放射部1004A、1004Bから照射される電波の波長の1/4以下の寸法である方向においては、電波分布(電界分布)が生じないから、周波数及び位相差により加熱室1001内の電波分布を更に制御しやすくなる。このように、加熱室1001の形状によって、電波分布を生じさせるかどうかを決定できる。そのため、加熱室1001内の電波分布の制御性を向上させることができる。これにより、被加熱物1015の均一加熱と選択加熱とを選択的に実行することが容易になる。なお、被加熱物1015が加熱室1001内にある場合、被加熱物1015の存在が加熱室1001内の電波分布に影響を及ぼすが、被加熱物1015の大きさが加熱室1001に収容することが想定される実用的な大きさであれば、周波数及び位相差による加熱室1001内の電波分布の制御は可能である。
【0175】
なお、加熱室1001に分割部1005を設置する場合は、被加熱物1015が配置される分割室1028Aの寸法を上記の通り設計すればよい。
【0176】
[1.11 実施の形態11]
[1.11.1 構成]
図50は、実施の形態11にかかるマイクロ波加熱装置1100の構成例の概略正面図である。
図50に示すように、加熱装置1100は、加熱室1101を分割する分割部1105を有する。加熱室1101は、分割部1105によって高さ方向Zに分割され、2つの分割室1128A、1128Bを形成する。下段の分割室1128Aには被加熱物1115Aが配置され、上段の分割室1128Bには被加熱物111BAが配置される。
【0177】
マイクロ波加熱装置1100は、4つのマイクロ波供給部1103A~1103Dを有する。マイクロ波供給部1103A、1103Bは、下段の分割室1128Aに向けてマイクロ波を供給するように加熱室1101の底面側に設けられ、マイクロ波供給部1103C、1103Dは、上段の分割室1128Bに向けてマイクロ波を供給するように加熱室1101の天面側に設けられる。
【0178】
マイクロ波供給部1103A~1103Dのそれぞれは、複数のマイクロ波放射部1104A~1104Dと、複数のマイクロ波信号発生部1130A~1130Dと、複数の信号増幅部1131A~1131Dと、複数のマイクロ波制御部1132A~1132Dと、を備える。
【0179】
マイクロ波制御部1132A~1132Dのそれぞれは、「周波数制御部」と「電力制御部」を兼ねている。マイクロ波制御部1132~1132Dのそれぞれは、マイクロ波の周波数を制御する機能、および、マイクロ波の電力を制御する機能の両方を有する。
【0180】
周波数制御部としてのマイクロ波制御部1132A~1132Dはそれぞれ、マイクロ波放射部1104A~1104Dにより照射される電波の周波数を制御する。例えば、マイクロ波制御部1132A~1132Dはそれぞれ、マイクロ波放射部1104A~1104Dにより照射される電波の周波数を所定の周波数範囲内で制御する。所定の周波数範囲は、被加熱物1115A、1115Bの誘電加熱に利用可能な周波数範囲から適宜選択されてよい。マイクロ波制御部1132A~1132Dはそれぞれ、電波信号発生部11320~1130Dが発生させる電波信号の周波数を制御することによって、マイクロ波放射部1104A~1104Dにより照射される電波の周波数を制御する。マイクロ波制御部1132A~1132Dは、被加熱物1115A、1115Bに応じて、マイクロ波放射部1104A~1104Dにより照射されるマイクロ波の周波数を変更するために利用可能である。周波数制御部としてのマイクロ波制御部1132A~1132Dはそれぞれは、周波数可変部であるといえる。
【0181】
電力制御部としてのマイクロ波制御部1132A~1132Dはそれぞれ、マイクロ波放射部1104A~1104Dにより照射される電波の出力を制御する。マイクロ波制御部1132A~1132Dはそれぞれ、マイクロ波信号発生部1130A~1130Dが発生させるマイクロ波信号の大きさを制御することによって、マイクロ波放射部1104A~1104Dにより照射される電波の出力を制御する。マイクロ波制御部1132A~1132Dはそれぞれ、被加熱物1115A、1115Bに応じて、マイクロ波放射部1104A~1104Dにより照射されるマイクロ波の出力を変更するために利用可能である。電力制御部としてのマイクロ波制御部1132A~1132Dはそれぞれ、出力可変部であるといえる。なお、マイクロ波制御部1132A~1132Dはそれぞれは、信号増幅部1131A~1131Dの増幅率の変更、信号増幅部1131A~1131Dに接続される内部電源の電圧の変更等のその他の手段によってマイクロ波放射部1104A~1104Dにより照射される電波の出力を制御してもよい。
【0182】
周波数制御部および電力制御部としてのマイクロ波制御部1132A~1132Dは、例えば、1以上のプロセッサ及びメモリを有するマイクロコントローラにより構成されてもよい。マイクロ波制御部1132A~1132Dは、例えば、FPGA(Field-ProgrammableGate Array)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等で構成されてもよい。
【0183】
[1.11.2 作用効果]
上述した実施の形態11のマイクロ波加熱装置1100によれば、マイクロ波信号発生部1130A~1130D(マイクロ波発生部)が発生させるマイクロ波の周波数を可変とする周波数制御手段としてのマイクロ波制御部1132A~1132Dをさらに備える。この構成によれば、誘電率の異なる被加熱物1115A,1115Bに応じて最適な周波数の電波が照射される。また、加熱室1101内のマイクロ波分布が変えることが可能となる。これにより、誘電体を効率的に加熱でき、均一加熱が可能となる。なお、誘電体の誘電率だけではなく、大きさ、重量、容器、置き位置によっても加熱に最適な周波数は異なる。誘電体に上記のような違いがある場合においても、本発明により効率的な加熱が可能となる。また、同一の誘電体に対しても周波数の違いにより半減深度が異なるので、表面付近を主に加熱することが目的か内部も加熱することが目的かにより、最適な周波数で加熱することは有効である。
【0184】
また、マイクロ波信号発生部1130A~1130D(マイクロ波発生部)が発生させるマイクロ波の電力を可変とする電力可変手段としてのマイクロ波制御部1132A~1132Dを備える。この構成によれば、数W刻みの精緻な出力制御により、被加熱物1115A,1115Bに適した出力でのマイクロ波加熱が可能となる。マイクロ波出力の精緻な制御による加熱が必要な冷凍品などの被加熱物1115A,1115Bに対して、最適なマイクロ波出力での加熱が可能となり、従来の数百W刻みの出力制御では実現できなかった適温加熱が可能となる。また、数Wの低いマイクロ波を安定して連続発振して被加熱物1115A,1115Bの加熱を続けることが可能となる。卵など高出力なマイクロ波では加熱できない被加熱物1115A,1115Bに対して、低出力なマイクロ波加熱により、被加熱物1115A,1115B内で熱伝導させながら過加熱を防いだ加熱が可能となり、従来の大電力の加熱では実現できなかった低温加熱が可能となる。これにより、適温加熱(加熱性能の向上)、及び、従来できなかった被加熱物1115A,1115B(卵など)の加熱が可能となる。
【0185】
[1.11.3 実施の形態11に関する実施例]
図51は、2つのマイクロ波放射部1104A、1104Bから照射される電波の周波数及び2つのマイクロ波放射部1104A、1104Bから照射される電波の位相差による被加熱物1115Aの加熱分布の違い説明する図である。以下、加熱室1101から分割部1105を取り外した状態で加熱室1101に配置した被加熱物1115Aをマイクロ波加熱した場合の実施例について説明する。なお、
図50に示すように加熱室1101に分割部1105を設置した状態で分割室1128Aに配置した被加熱物1115Aをマイクロ波加熱した場合、および、分割室1128Bに配置した被加熱物1115Bをマイクロ波加熱した場合も、同様の傾向になるものと考えられる。
【0186】
図51は、2つのマイクロ波放射部1104A、1104Bから照射される電波の周波数と2つのマイクロ波放射部1104A、1104Bから照射される電波の位相差との組み合わせに対する被加熱物1115Aの加熱分布を示す。
図51では、周波数は、902MHz、906MHz、910MHz、914MHz、918MHz、922MHz、926MHzであり、位相差は、0°、30°、60°、90°、120°、150°、180°である。なお、被加熱物1115Aは、例えば、ローストビーフである。
【0187】
図51から明らかなように、周波数と位相差との組み合わせによって、被加熱物1115Aの加熱分布が大きく変わっている。周波数が914MHz、918MHz、922MHz、926MHzで、位相差が0°、30°、60°である場合、被加熱物1115Aの中央部分及び長さ方向の両側において温度が高くなっている。一方で、周波数が906MHzで位相差が120°、150°、180°である場合、被加熱物1115Aの幅方向の両側において温度が高くなっている。このように、同一の被加熱物1115Aであっても、周波数と位相差との組み合わせによって、加熱する部分を選択することができ、周波数と位相差との組み合わせを複数用いることによって、均一に加熱することが可能となる。
【0188】
図52~
図55は、異なる種類の被加熱物1115Aについての、周波数及び位相差による加熱分布の違い説明する図である。
図52及び
図54は、2つのマイクロ波放射部1104A、1104Bから照射される電波の周波数と2つのマイクロ波放射部1104A、1104Bから照射される電波の位相差との組み合わせに対する被加熱物1111,1112,1113(
図53、
図55参照)の加熱分布を示す。被加熱物1111,1112は、例えば、野菜である。被加熱物1111は、例えば、ジャガイモである。被加熱物1112は、例えば、パプリカである。被加熱物1113は、例えば、肉である。被加熱物1113は、例えば、牛肉である。
【0189】
図52では、周波数は、2400MHz、2420MHz、2440MHz、2460MHz、2480MHz、2500MHzであり、位相差は、0°、30°、60°、90°、120°、150°、180°である。
図53は、
図52に示す位相差0°、周波数2400MHzの場合の被加熱物1111,1112,1113の加熱分布を示す図である。
図54では、周波数は、902MHz、906MHz、910MHz、914MHz、918MHz、922MHz、926MHzであり、位相差は、0°、30°、60°、90°、120°、150°、180°である。
図55は、
図54に示す位相差0°、周波数914MHzの場合の被加熱物1111,1112,1113の加熱分布を示す図である。
【0190】
図52~
図55から明らかなように、周波数と位相差との組み合わせによって、被加熱物1111~1113の種類によって加熱分布が大きく変わっている。
図52に示すように、周波数が2400MHz~2500MHz(2450±50MHz)の場合、被加熱物1113よりも被加熱物1111,1112を加熱することが可能である。被加熱物1111,1112は野菜であり、被加熱物1113は肉であるから、2400MHz~2500MHzの周波数は、
図53に示すように、野菜(被加熱物1111,1112)を選択的に加熱するのに有効である。
図54に示すように、周波数が902MHz~928MHz(915±13MHz)の場合、被加熱物1111,1112よりも被加熱物1113を加熱することが可能である。被加熱物1111,1112は野菜であり、被加熱物1113は肉であるから、902MHz~928MHzの周波数は、
図55に示すように、肉(被加熱物1113)を選択的に加熱するのに有効である。このように、周波数と位相差との組み合わせによって、種類の異なる被加熱物1111,1112,1113を選択的に加熱することができ、周波数と位相差との組み合わせを複数用いることによって、異なる種類の被加熱物1111,1112,1113を均一に加熱することが可能となる。
【0191】
[1.12 実施の形態12]
[1.12.1 構成]
図56は、実施の形態12にかかるマイクロ波加熱装置1200の構成例の概略正面図である。
図56に示すように、マイクロ波加熱装置1200は、加熱室1201と、加熱室1201を高さ方向Zに分割する分割部1205と、を備える。下段の分割室1228Aには被加熱物1115Aが配置され、上段の分割室1228Bには被加熱物1115Bが配置される。
【0192】
本実施の形態では、分割部1205にはチョーク構造等の電波遮蔽構造が設けられておらず、加熱室1201の内壁1220に非接触式の電波遮蔽構造1210が設けられている。分割部1205は、電波遮蔽構造1210と対向する箇所以外の箇所で、加熱室1201の内壁1220に接触して支持されている。
【0193】
[1.12.2 作用効果]
上述した実施の形態12のマイクロ波加熱装置1200によれば、加熱室1201の内壁1220に電波遮蔽構造1210を設ける。この構成によれば、非接触式の電波遮蔽構造1210は、加熱室1201の内壁1220に設けることも可能である。また、電波遮蔽構造の一部を加熱室1201の内壁1220に設け、残りの電波遮蔽構造を分割部1205に設けることも可能である。分割部1205の電波遮蔽構造をなくす、または簡素化することで、被加熱物1115A、1115Bの取り出し時に被加熱物1115A、1115Bが分割部1205に接触することによる電波遮蔽構造の変形、及びそれに伴う電波遮蔽性能の低下を防ぐ効果がある。また、分割部1205を取り外している際の電波遮蔽構造の変形も防ぐことが期待できる。これにより、分割部1205の構造の簡素化、および遮蔽性能の安定化を実現できる。
【0194】
[1.13 実施の形態13]
[1.13.1 構成]
図57は、実施の形態13にかかるマイクロ波加熱装置1300の構成例の概略側面図である。
図57に示すように、マイクロ波加熱装置1300は、加熱室1301と、マイクロ波発生部1303と、マイクロ波放射部1304と、分割部1305と、を備える。
【0195】
図57に示す加熱室1301は、分割部1305によって高さ方向Zに分割され、2つの分割室1328A、1328Bを形成する。分割部1305は、例えば、マイクロ波を遮蔽する金属などの材料で構成されるとともに、非接触式あるいは接触式の電波遮蔽構造1310を有する。
図57では、下段の分割室1328Aに被加熱物1302Aが配置され、上段の分割部1328Bに被加熱物1302Bが配置されている。
【0196】
マイクロ波発生部1303およびマイクロ派放射部1304は、加熱室1301の背面側X2に設けられる。マイクロ波放射部1304は、加熱室1301の背面から加熱室1301に向けてマイクロ波を放射する。マイクロ波放射部1304はさらに、回転アンテナ1309を有する。回転アンテナ1309は、例えば、回転位置に応じて、分割室1328Aと分割室1328Bのそれぞれにマイクロ波を放射する。
【0197】
図57に示すように、分割部1305は、被加熱物1302Bを載置するための載置面1320を有する。載置面1320は、例えば、誘電体で構成される。分割部1305は、載置面1320の下方に凹部1322を形成するとともに、凹部1322に誘電体1324が配置される。
[1.13.2 作用効果]
上述した実施の形態13のマイクロ波加熱装置1300によれば、載置面1320は誘電体で構成され、分割部1305は、載置面1320の下方に凹部1322を形成し、凹部1322に誘電体1324を設ける。この構成によれば、誘電体1324内では誘電体1324の誘電率に応じてマイクロ波の波長圧縮が生じる。凹部1322内に誘電体1324を設置することで、誘電体1324内の波長圧縮により、誘電体1324の周囲のマイクロ波分が誘電体1324がない場合とは異なるマイクロ波分布となる。よって、誘電体1324の誘電率、形状、置き位置に応じて、被加熱物1302Bの加熱分布を均一化することが可能となる。これにより、均一加熱を実現できる。
【0198】
以上、上述の実施の形態を挙げて本開示の発明を説明したが、本開示の発明は上述の実施の形態に限定されない。本開示は、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した特許請求の範囲による発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。また、各実施の形態における要素の組合せや順序の変化は、本開示の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【0199】
なお、前記実施の形態のうち、任意の実施の形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0200】
本開示は、食品等の被加熱物をマイクロ波で加熱調理するマイクロ波加熱装置であれば適用可能である。
【符号の説明】
【0201】
1 加熱室
2A、2B 被加熱物
3 マイクロ波発生部
4 マイクロ波放射部
5 分割部
6A、6B センサ
100 マイクロ波加熱装置
101 制御部
102 底面
104 天面
X 奥行方向
Y 幅方向
Z 高さ方向