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特開2023-65163ロケットエンジンの燃焼器及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065163
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】ロケットエンジンの燃焼器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F02K 9/64 20060101AFI20230502BHJP
   B23K 20/00 20060101ALI20230502BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
F02K9/64
B23K20/00 310L
B23K1/00 330P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175814
(22)【出願日】2021-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】521472025
【氏名又は名称】インターステラテクノロジズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】為政 博史
【テーマコード(参考)】
4E167
【Fターム(参考)】
4E167AA08
4E167DA11
(57)【要約】
【課題】大掛かりな設備を必要とすることなく且つ少ない工数で製造することができる燃焼器であって、高い確実性を持って封止された冷却流体流路を有する燃焼器を提供する。
【解決手段】本実施形態に係る燃焼器は、燃焼室を構成する金属製の内筒12と、内筒の外面に形成された冷却流体流路と、内筒12の外面を覆って冷却流体流路を封止する封止層16とを備える。封止層16は、内筒12の外面に巻き付けられた金属線材30の拡散接合による接合体で構成され、内筒12の外面に拡散接合によって接合されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室を構成する金属製の内筒と、
前記内筒の外面に形成された冷却流体流路と、
前記内筒の外面を覆って前記冷却流体流路を封止する封止層と、を備え、
前記封止層は、
前記内筒の外面に巻き付けられた金属線材の冶金的接合による接合体で構成され、
前記内筒の外面に前記冶金的接合によって接合されている
ことを特徴とするロケットエンジンの燃焼器。
【請求項2】
請求項1に記載のロケットエンジンの燃焼器において、
前記冶金的接合は拡散接合である
ことを特徴とするロケットエンジンの燃焼器。
【請求項3】
請求項1に記載のロケットエンジンの燃焼器において、
前記冶金的接合はろう接合である
ことを特徴とするロケットエンジンの燃焼器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のロケットエンジンの燃焼器において、
前記封止層の表面に密着して前記内筒を保持する外筒をさらに備える
ことを特徴とするロケットエンジンの燃焼器。
【請求項5】
燃焼室を構成する金属製の内筒の外面に冷却流体流路を形成することと、
前記内筒の外面に金属線材を巻き付けることと、
前記金属線材が巻き付けられた前記内筒を前記金属線材の拡散温度以上の温度に加熱し、前記金属線材同士及び前記金属線材と前記内筒とを拡散接合することによって前記冷却流体流路を封止することと、を含む
ことを特徴とするロケットエンジンの燃焼器の製造方法。
【請求項6】
燃焼室を構成する金属製の内筒の外面に冷却流体流路を形成することと、
前記内筒の外面と金属線材の少なくとも一方にろう材を付着させることと、
前記内筒の外面に前記金属線材を巻き付けることと、
前記金属線材が巻き付けられた前記内筒を前記ろう材の溶融温度以上の温度に加熱し、前記金属線材同士及び前記金属線材と前記内筒とをろう接合することによって前記冷却流体流路を封止することと、を含む
ことを特徴とするロケットエンジンの燃焼器の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のロケットエンジンの燃焼器の製造方法において、
前記内筒の外面に前記金属線材をガイドするための連続溝を設けること、をさらに含む
ことを特徴とするロケットエンジンの燃焼器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロケットエンジンの燃焼器及びその製造方法に関し、詳しくは、再生冷却式燃焼器に用いて好適な燃焼器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には燃焼室とノズルとを備えた従来のロケットエンジンの構造が開示されている。燃焼室では燃料を酸化剤と混合させて燃焼させる。その際の焼室内の温度は典型的には5000~6000度Fに達し、燃焼室内の圧力は典型的には1000~4000ポンドに達する。燃焼室で生成された高温高圧のガスはノズルにおいて膨張し、後方に排出されることによってロケットに推進力を与える。一般に、ノズルはその全体或いは上部の一部が燃焼室と一体化されている。本明細書では、燃焼室にノズルの全体或いは一部が一体化されているロケットエンジンの構成部品を燃焼器と称する。
【0003】
ロケットエンジンの作動時、燃焼器の内部空間は高温にさらされる。このため燃焼器にとって内部空間を形成する壁の冷却は不可欠である。燃焼器の壁を冷却する方法としては、壁の内部に流路を作り、その流路に冷却流体を流して冷却流体と壁との間で熱交換を行わせる方法が一般的である。再生冷却式燃焼器の場合、冷却流体には一般に液体燃料が使用されている。
【0004】
燃焼器の壁に冷却流体流路を設ける従来方法としては、まず、機械的な切削加工により内壁材(内筒)の外面に冷却流体流路となる溝を形成し、次に、電気鋳造法にて内壁材の外面にめっき処理を行うことによって冷却流体流路を封止する方法が知られている。この方法では内壁材の外面を覆うめっきが外筒として機能する。しかし、めっき処理は非常に労働集約的な作業であり、臨界的ないくつかの動作が必要とされる。このため、典型的な設計形状の燃焼器の場合、その製造過程においてかなりの頻度で再加工が必要になっていた。
【0005】
具体的には、冷却流体流路を封止する処理の間、冷却流体流路はワックス材料で満たされる。外部に露出された内壁材の外面は銀の粉末で磨かれ、導電性のめっき可能な表面が形成される。その表面上に水素バリアがめっきされ、それに続いてニッケルがめっきされることにより冷却流体圧力に耐える閉じた構造が形成される。このように冷却流体流路の封止にはいくつかのめっき処理が必要であり、また、いくつかの中間的な機械加工工程が必要である。そして、全てのめっき処理は、めっきされた材料の結合力を低下させる汚染の他、めっき化学液およびその他の処理パラメータについて問題を有している。完成までの間に異常が発生した場合には、冷却流体流路上のめっきされた材料は機械加工により除去されて再度めっき処理が繰り返されなければならない。ゆえに、めっきを用いて冷却流体流路を封止する従来方法は、完成までに多くの時間と労力を必要とするため製造コストが高くなってしまう。
【0006】
さらに、上述の従来方法では、めっき処理の完了に続いてワックス材料を冷却流体流路から除去する処理が必要とされる。ワックス材料が残留して存在すると次の動作における汚染の原因となるためである。ゆえに、上述の従来方法は、ワックス材料の除去処理のためにも多くの時間と労力を必要とする。
【0007】
また、燃焼器の壁に冷却流体流路を設ける方法としては、特許文献2に開示された方法も知られている。特許文献2に開示された方法は、冷却流体流路となる溝を内筒の外面に形成し、その内筒に外筒をろう接合あるいは拡散接合するというものでる。接合時に両部材を密着させる方法には、熱間等方圧加圧法(以下HIPと略す)が採用されている。HIPとは、水やアルゴンなどのガスを圧力媒体とし、通常98MPa(1000kgf/cm)以上の高い等方圧力と1000℃以上の温度との相乗効果を利用して加圧処理する技術である。
【0008】
しかし、HIPによる施工には大がかりな設備が必要であるため、特許文献2に開示された方法では設備費が嵩み製造コストが高くなってしまう。さらに、外筒は2分割形状で加工されるが、その合わせ面の接合不良によって冷却流体や燃焼ガスの漏れが発生しやすいという問題もある。
【0009】
一方、これまで述べた電気鋳造法やHIPを用いる方法とは異なる方法が特許文献3に開示されている。特許文献3に開示された方法は、内筒と外筒とを拡散接合する拡散接合用治具として、カーボンコンポジット材(以下C/C材と略す)を用いて形成した治具を使用するというものである。拡散接合用治具は、拡散接合すべき被拡散接合体を挟持する一対の挟持部材とその挟持部材を連結する連結部材とからなり、少なくとも連結部材がC/C材で形成されている。C/C材は熱膨張率が極めて小さいので、被接合部材と拡散接合用治具との熱膨張率の差により充分な接合圧力を確保することができる。
【0010】
特許文献3に開示された方法では、機械的な切削等によって冷却流体流路となる溝を加工した内筒に外筒を精度良く合わせる必要がある。しかし、曲面形状である両部品を精度良く加工するのは困難であり、両部品間に隙間が発生した場合には接合不良が発生するという問題がある。さらに、特許文献2に開示された方法と同様、2分割された外筒の合わせ面の接合不良によって冷却流体や燃焼ガスの漏れが発生しやすいという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005-513322号公報
【特許文献2】特開2004-169702号公報
【特許文献3】特開2010-064099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、大掛かりな設備を必要とすることなく且つ少ない工数で製造することができる燃焼器であって、高い確実性を持って封止された冷却流体流路を有する燃焼器を提供することである。また、本発明の第2の目的は、高い確実性を持って封止された冷却流体流路を有する燃焼器を大掛かりな設備を必要とすることなく且つ少ない工数で製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明が提供するロケットエンジンの燃焼器は、燃焼室を構成する金属製の内筒と、内筒の外面に形成された冷却流体流路と、内筒の外面を覆って冷却流体流路を封止する封止層とを備える。封止層は、内筒の外面に巻き付けられた金属線材の冶金的接合による接合体で構成され、内筒の外面に冶金的接合によって接合されている。
【0014】
本発明のロケットエンジンの燃焼器において、冶金的接合は拡散接合でもよいし、ろう接合でもよい。また、本発明のロケットエンジンの燃焼器は、封止層の表面に密着して内筒を保持する外筒をさらに備えてもよい。
【0015】
本発明が提供するロケットエンジンの燃焼器の第1の製造方法は、燃焼室を構成する金属製の内筒の外面に冷却流体流路を形成することと、内筒の外面に金属線材を巻き付けることと、金属線材が巻き付けられた内筒を金属線材の拡散温度以上の温度に加熱し、金属線材同士及び金属線材と内筒とを拡散接合することによって冷却流体流路を封止することとを含む。
【0016】
本発明が提供するロケットエンジンの燃焼器の第2の製造方法は、燃焼室を構成する金属製の内筒の外面に冷却流体流路を形成することと、内筒の外面と金属線材の少なくとも一方にろう材を付着させることと、内筒の外面に金属線材を巻き付けることと、金属線材が巻き付けられた内筒をろう材の溶融温度以上の温度に加熱し、金属線材同士及び金属線材と内筒とをろう接合することによって冷却流体流路を封止することとを含む。
【0017】
本発明のロケットエンジンの燃焼器の第1の製造方法及び第2の製造方法は、内筒の外面に金属線材をガイドするための連続溝を設けること、をさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0018】
上述のように本発明のロケットエンジンの燃焼器は、内筒の外面に巻き付けられた金属線材の冶金的接合による接合体で構成され、内筒の外面に冶金的接合によって接合された封止層を備える。冶金的接合は電気鋳造法やHIPと比較して大掛かりな設備を必要とすることなく且つ少ない工数で済むため、本発明のロケットエンジンの燃焼器は製造コストを抑えることができる。また、上記のように形成される封止層によれば冷却流体流路は高い確実性を持って封止されるので、冷却流体の漏れが発生する可能性は低く抑えられる。そして、本発明のロケットエンジンの燃焼器の第1の製造方法及び第2の製造方法によれば、高い確実性を持って封止された冷却流体流路を有する燃焼器を大掛かりな設備を必要とすることなく且つ少ない工数で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明が適用される燃焼器の構成例を示す図である。
図2】本発明が適用される燃焼器の封止層の概要を説明する模式図である。
図3】本発明が適用される燃焼器の封止層の概要を説明する模式図である。
図4】本発明が適用される燃焼器の封止層の概要を説明する模式図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る燃焼器の封止層の構成例を示す模式図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る燃焼器の製造方法を示すフローチャートである。
図7】本発明の第2実施形態に係る燃焼器の封止層の第1の構成例を示す模式図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る燃焼器の封止層の第2の構成例を示す模式図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る燃焼器の製造方法を示すフローチャートである。
図10】金属線材を1層に巻く巻き方を示す図である。
図11】金属線材を2層に巻く巻き方を示す図である。
図12】金属線材を3層に巻く巻き方を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。ただし、以下に示す実施形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、本開示に係る思想が限定されるものではない。また、以下に示す実施形態において説明する構造等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、本開示に係る思想に必ずしも必須のものではない。
【0021】
1.概要
本発明は、例えば、図1に模式的に示される再生冷却式の燃焼器4に適用される。燃焼器4はロケットエンジン2を構成する部品であり、燃焼器4の排気口にはノズル6が取り付けられている。本発明が適用される燃焼器4を備えるロケットエンジン2は単段式ロケットのエンジンでもよいし、多段式ロケットのエンジンでもよい。例えば、2段式ロケットの場合であれば、ロケットエンジン2は第1段エンジンでもよいし第2段エンジンでもよい。また、本発明が適用される燃焼器4を備えるロケットエンジン2の推力には特に限定はないが、例えば10kN~100kNが一つの好適な推力の範囲である。
【0022】
燃焼器4は燃焼室10を構成する内筒12と内筒12の外側に取り付けられた外筒18とを備える。内筒12は金属で製作されている。内筒12の壁の内部には冷却流体流路14が形成されている。冷却流体流路14は燃焼器4の後端から先端に向けて内筒12の全周に等間隔に多数本形成されている。それぞれの冷却流体流路14は外筒18の後端部と先端部にそれぞれ形成されたドーナツ状のマニホールド20,21に接続されている。後端部のマニホールド20から冷却流体流路14には冷却流体としての高圧の液体燃料が供給される。冷却流体は内筒12の壁との間で熱交換しながら冷却流体流路14を流れ、先端部のマニホールド21に集められる。先端部のマニホールド21に集められた冷却流体は、燃焼器4の先端に取り付けられた図示しない噴射器から別系統で供給される酸化剤とともに燃焼室10内に噴射される。
【0023】
冷却流体流路14は、詳しくは、内筒12の外面に形成された溝であり、内筒12の外面を覆う封止層16によって封止されている。本発明が適用される燃焼器4では、封止層16が冷却流体流路14からの冷却流体の漏れを防ぐシール部材として機能する。外筒18は封止層16の表面に密着して内筒12を保持し、冷却流体流路14を流れる冷却流体の圧力から封止層16を保護している。外筒18は例えばステンレス等の金属で製作されている。外筒18の製造方法に限定はなく、例えば、機械加工による2分割製法、めっき法や溶射法等による一体積層法等を用いることができる。外筒18にはシール部材としての機能は求められないため、2分割形状であっても接合面からの冷却流体の漏れが発生するおそれはない。
【0024】
図2は本発明が適用される燃焼器4の封止層16の概要を説明する模式図である。図2に示す構成は図1におけるA部の構成に相当する。図2に示すように、冷却流体流路14は内筒12の外面に形成された溝である。冷却流体流路14の断面形状は内筒12の径方向に長い縦長の長方形である。一例では、冷却流体流路14の深さは幅の5乃至10倍である。
【0025】
本発明が適用される燃焼器4では、内筒12の外面に周方向に隙間なく巻き付けられた金属線材30によって冷却流体流路14の開口部分が蓋をされている。ただし、図2に示す例では、金属線材30によって冷却流体流路14がどのように蓋をされているか分かりやすく表示するため、一部の金属線材30は途中で斜めに切断されている。
【0026】
金属線材30の材質には限定はないが、好ましくは内筒12の材質に近い材質、特に好ましくは内筒12の材質と同じ材質のものが選定される。金属線材30の材質と内筒12の材質との組み合わせ次第では、熱処理によって脆い金属間化合物が生成されるおそれがあるからである。
【0027】
金属線材30の断面形状にも特に限定はない。図2に示す例では断面形状が円形の金属線材30が用いられているが、例えば、金属線材の断面形状は偏平円形、楕円形、三角形、四角形、五角形以上の角を有する多角形などであってもよい。ただし、金属線材30の太さに関しては好適な範囲が存在する。これに関しては追って実施例において説明する。
【0028】
また、図2に示す例では金属線材30は単層に巻かれているが、冷却流体流路14の開口部により確実に蓋をするためには金属線材30は多層に巻かれてもよい。図3に示す例では、下層の金属線材30の真上に上層の金属線材30を重ねるようにして金属線材30は2層に巻かれている。さらに、図4に示す例のように、下層の金属線材30と金属線材30との間に上層の金属線材30が位置するように金属線材30を多層に巻き重ねてもよい。なお、図4に示すように、内筒12の外面には金属線材30をガイドするための連続溝15が形成されてもよい。連続溝15は内筒12の先端から後端までの金属線材30が巻かれる部位に螺旋状に形成される。内筒12の形状の円筒部分と円錐部分のうち、特に円錐部分に金属線材30を巻き付ける際の滑り止めとして連続溝15は有用である。連続溝15は機械的な切削加工により形成することができる。
【0029】
封止層16は、上述のように単層或いは多層に巻かれた金属線材30によって形成されている。ただし、金属線材30を単に巻き付けただけでは、どれだけ隙間なく又どれだけ多層に巻き付けたところで冷却流体の漏れは防ぐことはできない。そこで、本発明が適用される燃焼器4では、金属線材30同士が冶金的接合によって接合された接合体によって封止層16が形成されている。さらに、封止層16を構成する金属線材30は内筒12と冶金的接合によって接合されている。このように金属線材30同士及び金属線材30と内筒12とを冶金的接合によって接合することで、高い確実性を持って冷却流体流路14を封止することが可能となる。
【0030】
以下、燃焼器4の封止層16の構成例と燃焼器4の製造方法について2つの実施形態を具体的に説明する。
【0031】
2.第1実施形態
図5は第1実施形態に係る燃焼器4の封止層16の構成例を示す模式図である。第1実施形態では、金属線材30がそのまま内筒12の外面に巻き付けられる。ただし、図5に示す例では説明を簡単にするために金属線材30は単層とされているが、金属線材30の層数は封止層16の必要厚さ等の条件に応じて決まる。
【0032】
第1実施形態では、金属線材30同士及び金属線材30と内筒12とを接合する冶金的接合として拡散接合が用いられる。金属線材30が巻き付けられた内筒12を金属線材30の拡散温度以上の温度に加熱することによって、金属線材30同士は拡散焼結により接合されるとともに、金属線材30と内筒12も拡散焼結により接合される。これにより、金属線材30同士の拡散焼結による焼結体によって封止層16が形成される。この封止層16は内筒12との間でも拡散焼結により接合されているので、隙間が無く、高い確実性を持って冷却流体流路14を封止することができる。
【0033】
第1実施形態では、冷却流体流路14の開口部は封止層16を構成する金属線材30の焼結体によって蓋をされる。冷却流体流路14は幅が狭く縦に深い断面形状であるため、冷却流体流路14の内面面積全体に占める封止層16による蓋部分の面積の割合は僅かである。ゆえに、封止層16で蓋をされた部分の表面は滑らかではないが、その影響による圧力損失の増大が特に問題になることはない。
【0034】
図6は第1実施形態に係る燃焼器4の製造方法を示すフローチャートである。まず、ステップS11では、内筒12の設計形状への加工が行われる。設計形状はロケットエンジン2に求められる性能から決まる。基本的には、本発明はどのような設計形状の内筒12を有する燃焼器4にも適用可能である。
【0035】
ステップS12では、内筒12の外面に冷却流体流路14が形成される。冷却流体流路14の形成は例えば機械的な切削加工により行われる。冷却流体流路14は内筒12の軸方向に延びる溝であり、内筒12の全周に等間隔で多数本形成される。
【0036】
ステップS13では、冷却流体流路14が形成された内筒12の外面に金属線材30が巻き付けられる。金属線材30は冷却流体流路14の開口部を全て覆うように内筒12の先端部から後端部まで巻き付けられ、必要な封止層16の厚さが得られる層数まで繰り返し巻き付けられる。その際、巻き崩れが起きないように金属線材30には所定の張力がかけられる。特に曲面部分は巻き崩れし易いので、金属線材30は張力をかけながら巻き付けられる。
【0037】
ステップS14では、金属線材30を巻き付けられた内筒12が金属線材30の拡散温度以上の温度まで加熱される。加熱は水素などの還元雰囲気下で行われる。この加熱によって金属線材30同士及び金属線材30と内筒12とが拡散接合され、冷却流体流路14を封止する封止層16が形成される。封止層16の形成後、封止層16の表面に密着して内筒12を保持するように外筒18が取り付けられる。
【0038】
3.第2実施形態
図7は第2実施形態に係る燃焼器4の封止層16の第1の構成例を示す模式図である。第2実施形態の第1の構成例では、内筒12の外面にろう材32を付着させ、ろう材32が付着した内筒12の外面に金属線材30が巻き付けられる。ろう材32としては例えば銀を用いることができ、めっきによって内筒12の外面に付着させることができる。なお、図7に示す例では説明を簡単にするために金属線材30は単層とされているが、金属線材30の層数は封止層16の必要厚さ等の条件に応じて決まる。
【0039】
図8は第2実施形態に係る燃焼器4の封止層16の第2の構成例を示す模式図である。第2実施形態の第2の構成例では、内筒12の外面にろう材32を付着させるとともに、金属線材30の表面にもろう材34を付着させ、ろう材32が付着した内筒12の外面にろう材34が付着した金属線材30が巻き付けられる。ろう材32,34としては例えば銀を用いることができ、めっきによって内筒12の外面及び金属線材30に付着させることができる。ただし、ろう材32とろう材34とは同じ材質が好ましいが、互いに接合可能であり且つ熱処理によって脆い金属間化合物を生成しないのであれば異なる材質であってもよい。なお、図8に示す例では説明を簡単にするために金属線材30は単層とされているが、金属線材30の層数は封止層16の必要厚さ等の条件に応じて決まる。
【0040】
第2実施形態では、金属線材30同士及び金属線材30と内筒12とを接合する冶金的接合としてろう接合が用いられる。図7に示す第1の構成例では、金属線材30が巻き付けられた内筒12をろう材32の溶融温度以上の温度に加熱することによって、金属線材30同士はろう材32によってろう接合される。このように金属線材30同士のろう接合によって形成された封止層16は内筒12ともろう材32によってろう接合される。このように構成された封止層16は、隙間が無く、高い確実性を持って冷却流体流路14を封止することができる。
【0041】
図8に示す第2の構成例では、金属線材30が巻き付けられた内筒12をろう材32,34の溶融温度以上の温度に加熱する。ろう材32,34が溶融して混合したろう材36によって金属線材30同士はろう接合される。金属線材30同士のろう接合によって形成された封止層16は内筒12ともろう材36によってろう接合される。このように構成された封止層16は、隙間が無く、高い確実性を持って冷却流体流路14を封止することができる。
【0042】
第2実施形態では、冷却流体流路14の開口部は封止層16を構成する金属線材30及びろう材32,36によって蓋をされる。冷却流体流路14は幅が狭く縦に深い断面形状であるため、冷却流体流路14の内面面積全体に占める封止層16による蓋部分の面積の割合は僅かである。ゆえに、封止層16で蓋をされた部分の表面は滑らかではないが、その影響による圧力損失の増大が特に問題になることはない。
【0043】
図9は第2実施形態に係る燃焼器4の製造方法を示すフローチャートである。まず、ステップS21では、内筒12の設計形状への加工が行われる。設計形状はロケットエンジン2に求められる性能から決まる。基本的には、本発明はどのような設計形状の内筒12を有する燃焼器4にも適用可能である。
【0044】
ステップS22では、内筒12の外面に冷却流体流路14が形成される。冷却流体流路14の形成は例えば機械的な切削加工により行われる。冷却流体流路14は内筒12の軸方向に延びる溝であり、内筒12の全周に等間隔で多数本形成される。
【0045】
ステップS23では、内筒12の外面と金属線材30の少なくとも一方へろう材が付着される。図7に示す例では内筒12の外面へろう材32が付着され、図8に示す例では内筒12の外面と金属線材30のそれぞれにろう材32,34が付着されている。これらに加えて、金属線材30のみにろう材を付着させてもよい。
【0046】
ステップS24では、冷却流体流路14が形成された内筒12の外面に金属線材30が巻き付けられる。金属線材30は冷却流体流路14の開口部を全て覆うように内筒12の先端部から後端部まで巻き付けられ、必要な封止層16の厚さが得られる層数まで繰り返し巻き付けられる。その際、巻き崩れが起きないように金属線材30には所定の張力がかけられる。特に曲面部分は巻き崩れし易いので、金属線材30は張力をかけながら巻き付けられる。
【0047】
ステップS25では、金属線材30を巻き付けられた内筒12がろう材32,34の溶融温度以上の温度まで加熱される。ただし、金属線材30の拡散温度は超えないようにする。加熱は水素などの還元雰囲気下で行われる。この加熱によって金属線材30同士及び金属線材30と内筒12とがろう材32,36よってろう接合され、冷却流体流路14を封止する封止層16が形成される。封止層16の形成後、封止層16の表面に密着して内筒12を保持するように外筒18が取り付けられる。
【0048】
4.金属線材の巻き方
ここで、内筒12の外面への金属線材30の巻き方について図10乃至図12を用いて説明する。図10は金属線材30を1層に巻く巻き方の例を示し、図11は金属線材30を2層に巻く巻き方の例を示し、図12は金属線材30を3層に巻く巻き方の例を示している。金属線材30の太さと必要とされる封止層16の厚さとの関係次第ではより多層に巻かれる場合もあるが、ここで示す1層から3層までの巻き方を適宜組み合わせることによって多層にも対応することができる。
【0049】
図10には1層巻きの例として3つのパターン1A,1B,1Cが示されている。パターン1Aでは、円形の金属線材30Aが内筒12の外面に巻き付けられている。パターン1Bでは、偏平円形の金属線材30Bが長辺を縦にして内筒12の外面に巻き付けられている。パターン1Cでは、偏平円形の金属線材30Cが長辺を横にして内筒12の外面に巻き付けられている。本明細書では、パターン1Bに示すような巻き方向を縦の巻き方向と呼び、パターン1Cに示すような巻き方向を横の巻き方向と呼ぶ。楕円や角形のような長辺と短辺を有する金属線材の場合、縦又は横の巻き方向が選択されることになる。一方、円形のように長辺と短辺が存在しない金属線材の場合、巻き方向も存在しない。
【0050】
なお、内筒12の外面の先端部及び後端部には、図10に示すように、押し当て壁40が形成されている。押し当て壁40は金属線材30(図10に示す例では30A,30B,30C)を内筒12の外面に巻き付ける際に利用される。金属線材30を押し当て壁40に押し当てながら巻き付けていくことで、金属線材30を隙間なく巻き付けることができる。押し当て壁40は機械的な切削加工により形成することができる。図10には押し当て壁40の高さの一例として5mmが示されている。
【0051】
図11には2層巻きの例として3つのパターン2A,2B,2Cが示されている。パターン2Aでは、円形の金属線材30Aが内筒12の外面に2層に巻き付けられている。2層目の金属線材30Aは1層目の金属線材30Aの真上に重ねて配置されているが、1層目の2つの金属線材30A,30Aの間に2層目の金属線材30Aが配置されるようにしてもよい。パターン2Bでは、1層目には長辺を横にした偏平円形の金属線材30Cが巻き付けられ、2層目には長辺を縦にした偏平円形の金属線材30Bが巻き付けられている。パターン2Cでは、1層目には長辺を縦にした偏平円形の金属線材30Bが巻き付けられ、2層目には長辺を横にした偏平円形の金属線材30Cが巻き付けられている。
【0052】
図12には3層巻きの例として3つのパターン3A,3B,3Cが示されている。パターン3Aでは、円形の金属線材30Aが内筒12の外面に3層に巻き付けられている。2層目と3層目の金属線材30Aは1層目の金属線材30Aの真上に重ねて配置されているが、2層目の金属線材30Aを横にずらし、1層目の2つの金属線材30A,30Aの間に2層目の金属線材30Aが配置され、2層目の2つの金属線材30A,30Aの間に3層目の金属線材30Aが配置されるようにしてもよい。パターン2Bでは、1層目と3層目には長辺を横にした偏平円形の金属線材30Cが巻き付けられ、2層目には長辺を縦にした偏平円形の金属線材30Bが巻き付けられている。パターン2Cでは、1層目と3層目には長辺を縦にした偏平円形の金属線材30Bが巻き付けられ、2層目には長辺を横にした偏平円形の金属線材30Cが巻き付けられている。このように巻き方向を層ごとに交互に変えることによって、層間に隙間が生じることを抑えることができる。
【実施例0053】
(水耐圧/気密試験)
各実施例及び比較例では、金属線材同士及び金属線材と内筒とを冶金的接合により接合することによって冷却流体流路が封止された燃焼器を製作した。さらに内筒を保持するステンレス製の外筒を機械加工による2分割製法で製作し、燃焼器の外面を外筒で保持した。そして、燃焼器の冷却流体流路中に水を流して2.0MPaの圧力を10分間かけ、圧力の低下が起きるかどうかを観察した。また、併せて封止層の厚みと焼結率についても計測した。
【0054】
全ての実施例及び比較例に共通する事項として、燃焼器を構成する内筒は所定の設計形状のものを用いた。外径に代表される内筒のサイズも全ての実施例及び比較例に共通であり、内筒に形成される冷却流体流路の本数や断面形状も全ての実施例及び比較例に共通である。銅合金の円柱材料を機械加工により内筒の設計形状に加工した後、機械加工によりその外面に複数の冷却流体の流路を加工した。流路の形状(特に幅)は内筒の軸方向の位置によって異なり、燃焼室とノズルとの間のくびれ部付近において最も幅が狭くなる。実施例では、くびれ部付近における流路の形状を幅1.2mm、深さ3.0mmとした。
【0055】
封止用の金属線材には、内筒が銅合金であることからリン青銅線材を使用した。金属線材の断面形状は円形、角形、或いは楕円形とした。角形の金属線材は長辺と短辺のアスペクト比が10:3のものを用いた。楕円形の金属線材は長辺と短辺のアスペクト比が10:3のものを用いた。
【0056】
拡散接合処理を行った実施例では、水素雰囲気下においてリン青銅線材の拡散温度以上の温度である900℃をピーク温度として2時間加熱した。ろう接合処理を行った実施例では、ろう材として冷却流体流路が加工された内筒の外面に厚さ10μmのAgめっきを施した。そして、水素雰囲気下においてAgの溶融温度以上の温度である780℃をピーク温度として1時間加熱した。
【0057】
(実施例1)
内筒はCu-Cr-Zr合金で作製した。金属線材は断面形状が円形で長辺が0.5mmのものを使用した。金属線材同士及び金属線材と内筒部材とを接合する方法としては拡散接合を用いた。水耐圧試験後に気密試験を実施した結果、圧力の低下は見られなかった。
【0058】
(実施例2)
内筒はCu-Cr-Zr合金で作製した。金属線材は断面形状が角形で長辺が1.0mmのものを巻き方向を横にして使用した。金属線材同士及び金属線材と内筒部材とを接合する方法としては拡散接合を用いた。水耐圧試験後に気密試験を実施した結果、圧力の低下は見られなかった。
【0059】
(実施例3)
内筒はCu-Cr-Zr合金で作製した。金属線材は断面形状が楕円形で長辺が1.0mmのものを巻き方向を横にして使用した。金属線材同士及び金属線材と内筒部材とを接合する方法としては拡散接合を用いた。水耐圧試験後に気密試験を実施した結果、圧力の低下は見られなかった。
【0060】
(実施例4)
内筒はCu-Cr-Zr合金で作製した。金属線材は断面形状が円形で長辺が0.5mmのものを使用した。金属線材同士及び金属線材と内筒部材とを接合する方法としてはろう接合を用いた。水耐圧試験後に気密試験を実施した結果、圧力の低下は見られなかった。
【0061】
(実施例5)
内筒はCu-Cr-Zr合金で作製した。金属線材は断面形状が角形で長辺が1.0mmのものを巻き方向を横にして使用した。金属線材同士及び金属線材と内筒部材とを接合する方法としてはろう接合を用いた。水耐圧試験後に気密試験を実施した結果、圧力の低下は見られなかった。
【0062】
(実施例6)
内筒はCu-Cr-Zr合金で作製した。金属線材は断面形状が楕円形で長辺が1.0mmのものを巻き方向を横にして使用した。金属線材同士及び金属線材と内筒部材とを接合する方法としてはろう接合を用いた。水耐圧試験後に気密試験を実施した結果、圧力の低下は見られなかった。
【0063】
実施例1から実施例6の燃焼器の製造法について、それぞれの詳細と評価結果とを表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
(実施例7)
内筒はCu-Cr合金で作製した。金属線材は断面形状が円形で長辺が20μmのものを使用した。金属線材同士及び金属線材と内筒部材とを接合する方法としては拡散接合を用いた。水耐圧試験後に気密試験を実施した結果、圧力の低下は見られなかった。
【0066】
(実施例8)
内筒はCu-Cr-Zr合金で作製した。金属線材は断面形状が円形で長辺が200μmのものを使用した。金属線材同士及び金属線材と内筒部材とを接合する方法としてはろう接合を用いた。水耐圧試験後に気密試験を実施した結果、圧力の低下は見られなかった。
【0067】
(実施例9)
内筒はCu-Cr-Zr合金で作製した。金属線材は断面形状が円形で長辺が380μmのものを使用した。金属線材同士及び金属線材と内筒部材とを接合する方法としては拡散接合を用いた。水耐圧試験後に気密試験を実施した結果、圧力の低下は見られなかった。
【0068】
(実施例10)
内筒はCu-Cr-Zr合金で作製した。金属線材は断面形状が円形で長辺が2.0mmのものを使用した。金属線材同士及び金属線材と内筒部材とを接合する方法としては拡散接合を用いた。水耐圧試験後に気密試験を実施した結果、圧力の低下は見られなかった。
【0069】
(実施例11)
内筒はCu-Cr-Zr合金で作製した。金属線材は断面形状が円形で長辺が3.4mmのものを使用した。金属線材同士及び金属線材と内筒部材とを接合する方法としてはろう接合を用いた。水耐圧試験後に気密試験を実施した結果、圧力の低下は見られなかった。
【0070】
(実施例12)
内筒はCu-Cr合金で作製した。金属線材は断面形状が円形で長辺が5.1mmのものを使用した。金属線材同士及び金属線材と内筒部材とを接合する方法としては拡散接合を用いた。水耐圧試験後に気密試験を実施した結果、圧力の低下は見られなかった。
【0071】
(実施例13)
内筒はCu-Cr-Zr合金で作製した。金属線材は断面形状が円形で長辺が6.6mmのものを使用した。金属線材同士及び金属線材と内筒部材とを接合する方法としては拡散接合を用いた。水耐圧試験後に気密試験を実施した結果、圧力の低下は見られなかった。
【0072】
(実施例14)
内筒はCu-Cr-Zr合金で作製した。金属線材は断面形状が円形で長辺が8.1mmのものを使用した。金属線材同士及び金属線材と内筒部材とを接合する方法としてはろう接合を用いた。水耐圧試験後に気密試験を実施した結果、圧力の低下は見られなかった。
【0073】
(実施例15)
内筒はCu-Cr合金で作製した。金属線材は断面形状が円形で長辺が9.5mmのものを使用した。金属線材同士及び金属線材と内筒部材とを接合する方法としては拡散接合を用いた。水耐圧試験後に気密試験を実施した結果、圧力の低下は見られなかった。
【0074】
実施例7から実施例15の燃焼器の製造法について、それぞれの詳細と評価結果とを表2に示す。
【0075】
【表2】
【0076】
(実施例16)
内筒はCu-Cr-Zr合金で作製した。金属線材は断面形状が角形で長辺が30μmのものを巻き方向を横にして使用した。金属線材同士及び金属線材と内筒部材とを接合する方法としてはろう接合を用いた。水耐圧試験後に気密試験を実施した結果、圧力の低下は見られなかった。
【0077】
(実施例17)
内筒はCu-Cr-Zr合金で作製した。金属線材は断面形状が角形で長辺が250μmのものを巻き方向を横にして使用した。金属線材同士及び金属線材と内筒部材とを接合する方法としては拡散接合を用いた。水耐圧試験後に気密試験を実施した結果、圧力の低下は見られなかった。
【0078】
(実施例18)
内筒はCu-Cr合金で作製した。金属線材は断面形状が角形で長辺が420μmのものを巻き方向を横にして使用した。金属線材同士及び金属線材と内筒部材とを接合する方法としては拡散接合を用いた。水耐圧試験後に気密試験を実施した結果、圧力の低下は見られなかった。
【0079】
(実施例19)
内筒はCu-Cr-Zr合金で作製した。金属線材は断面形状が角形で長辺が710μmのものを巻き方向を縦にして使用した。金属線材同士及び金属線材と内筒部材とを接合する方法としては拡散接合を用いた。水耐圧試験後に気密試験を実施した結果、圧力の低下は見られなかった。
【0080】
(実施例20)
内筒はCu-Cr合金で作製した。金属線材は断面形状が角形で長辺が3.3mmのものを巻き方向を横にして使用した。金属線材同士及び金属線材と内筒部材とを接合する方法としては拡散接合を用いた。水耐圧試験後に気密試験を実施した結果、圧力の低下は見られなかった。
【0081】
(実施例21)
内筒はCu-Cr-Zr合金で作製した。金属線材は断面形状が角形で長辺が5.0mmのものを巻き方向を縦にして使用した。金属線材同士及び金属線材と内筒部材とを接合する方法としてはろう接合を用いた。水耐圧試験後に気密試験を実施した結果、圧力の低下は見られなかった。
【0082】
(実施例22)
内筒はCu-Cr-Zr合金で作製した。金属線材は断面形状が角形で長辺が6.4mmのものを巻き方向を横にして使用した。金属線材同士及び金属線材と内筒部材とを接合する方法としては拡散接合を用いた。水耐圧試験後に気密試験を実施した結果、圧力の低下は見られなかった。
【0083】
(実施例23)
内筒はCu-Cr合金で作製した。金属線材は断面形状が角形で長辺が7.8mmのものを巻き方向を縦にして使用した。金属線材同士及び金属線材と内筒部材とを接合する方法としてはろう接合を用いた。水耐圧試験後に気密試験を実施した結果、圧力の低下は見られなかった。
【0084】
(実施例24)
内筒はCu-Cr-Zr合金で作製した。金属線材は断面形状が角形で長辺が9.3mmのものを巻き方向を横にして使用した。金属線材同士及び金属線材と内筒部材とを接合する方法としては拡散接合を用いた。水耐圧試験後に気密試験を実施した結果、圧力の低下は見られなかった。
【0085】
実施例16から実施例24の燃焼器の製造法について、それぞれの詳細と評価結果とを表3に示す。
【0086】
【表3】
【0087】
(実施例25)
内筒はCu-Cr-Zr合金で作製した。金属線材は断面形状が楕円形で長辺が50μmのものを巻き方向を横にして使用した。金属線材同士及び金属線材と内筒部材とを接合する方法としては拡散接合を用いた。水耐圧試験後に気密試験を実施した結果、圧力の低下は見られなかった。
【0088】
(実施例26)
内筒はCu-Cr-Zr合金で作製した。金属線材は断面形状が楕円形で長辺が280μmのものを巻き方向を横にして使用した。金属線材同士及び金属線材と内筒部材とを接合する方法としては拡散接合を用いた。水耐圧試験後に気密試験を実施した結果、圧力の低下は見られなかった。
【0089】
(実施例27)
内筒はCu-Cr合金で作製した。金属線材は断面形状が楕円形で長辺が450μmのものを巻き方向を縦にして使用した。金属線材同士及び金属線材と内筒部材とを接合する方法としてはろう接合を用いた。水耐圧試験後に気密試験を実施した結果、圧力の低下は見られなかった。
【0090】
(実施例28)
内筒はCu-Cr-Zr合金で作製した。金属線材は断面形状が楕円形で長辺が750μmのものを巻き方向を横にして使用した。金属線材同士及び金属線材と内筒部材とを接合する方法としては拡散接合を用いた。水耐圧試験後に気密試験を実施した結果、圧力の低下は見られなかった。
【0091】
(実施例29)
内筒はCu-Cr-Zr合金で作製した。金属線材は断面形状が楕円形で長辺が3.1mmのものを巻き方向を横にして使用した。金属線材同士及び金属線材と内筒部材とを接合する方法としては拡散接合を用いた。水耐圧試験後に気密試験を実施した結果、圧力の低下は見られなかった。
【0092】
(実施例30)
内筒はCu-Cr合金で作製した。金属線材は断面形状が楕円形で長辺が4.8mmのものを巻き方向を縦にして使用した。金属線材同士及び金属線材と内筒部材とを接合する方法としてはろう接合を用いた。水耐圧試験後に気密試験を実施した結果、圧力の低下は見られなかった。
【0093】
(実施例31)
内筒はCu-Cr-Zr合金で作製した。金属線材は断面形状が楕円形で長辺が6.1mmのものを巻き方向を横にして使用した。金属線材同士及び金属線材と内筒部材とを接合する方法としては拡散接合を用いた。水耐圧試験後に気密試験を実施した結果、圧力の低下は見られなかった。
【0094】
(実施例32)
内筒はCu-Cr-Zr合金で作製した。金属線材は断面形状が楕円形で長辺が7.5mmのものを巻き方向を横にして使用した。金属線材同士及び金属線材と内筒部材とを接合する方法としては拡散接合を用いた。水耐圧試験後に気密試験を実施した結果、圧力の低下は見られなかった。
【0095】
(実施例33)
内筒はCu-Cr合金で作製した。金属線材は断面形状が楕円形で長辺が9.0mmのものを巻き方向を縦にして使用した。金属線材同士及び金属線材と内筒部材とを接合する方法としてはろう接合を用いた。水耐圧試験後に気密試験を実施した結果、圧力の低下は見られなかった。
【0096】
実施例25から実施例33の燃焼器の製造法について、それぞれの詳細と評価結果とを表4に示す。
【0097】
【表4】
【0098】
(比較例1)
内筒はCu-Cr-Zr合金で作製した。金属線材は断面形状が円形で長辺が5μmのものを使用した。しかし、金属線材を内筒に巻き付ける際のテンションにより金属線材が切れ、内筒に巻き付けることはできなかった。
【0099】
(比較例2)
内筒はCu-Cr-Zr合金で作製した。金属線材は断面形状が円形で長辺が12mmのものを巻き方向を横にして使用した。金属線材同士及び金属線材と内筒部材とを接合する方法としては拡散接合を用いた。水耐圧試験後に気密試験を実施した結果、圧力漏れによる圧力の低下が発生した。
【0100】
比較例1及び比較例2の燃焼器の製造法について、それぞれの詳細と評価結果とを表5に示す。
【0101】
【表5】
【0102】
(考察)
上記の実施例と比較例より、金属線材の断面形状によらず、また、拡散接合かろう接合かによらず、金属線材の太さは長辺の長さで10μmから10mmまでの範囲が一つの好ましい範囲であると判断することができる。
【符号の説明】
【0103】
2 ロケットエンジン
4 燃焼器
6 ノズル
10 燃焼室
12 内筒
14 冷却流体流路
15 連続溝
16 封止層
18 外筒
20,21 マニホールド
30,30A,30B,30C 金属線材
32,34,36 ろう材
40 押し当て壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12