(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065174
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】加熱炉
(51)【国際特許分類】
F27B 9/30 20060101AFI20230502BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20230502BHJP
F27D 7/06 20060101ALI20230502BHJP
F27D 1/18 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
F27B9/30
F27D17/00 104G
F27D7/06 B
F27D1/18 E
F27D17/00 105G
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175833
(22)【出願日】2021-10-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 美保
(72)【発明者】
【氏名】石田 洋史
(72)【発明者】
【氏名】大竹 英明
【テーマコード(参考)】
4K050
4K051
4K056
4K063
【Fターム(参考)】
4K050AA01
4K050AA05
4K050BA17
4K050CA10
4K050CA19
4K050CB02
4K050CC07
4K050CD13
4K050CG28
4K050DA06
4K050DA07
4K050EA10
4K051AA03
4K051AB09
4K051MA12
4K056AA09
4K056AA14
4K056BB06
4K056CA18
4K056DB04
4K056FA08
4K063AA05
4K063AA09
4K063AA15
4K063BA12
4K063CA05
4K063CA06
4K063DA05
4K063DA06
4K063DA07
4K063DA09
4K063DA22
4K063DA24
4K063DA33
(57)【要約】
【課題】加熱炉の劣化を抑制する。
【解決手段】ここで開示される加熱炉10は、被処理物Aを搬送方向に搬送する搬送空間20aを有する炉体20と、開閉機構30と、第1排気ダクト40と、排気装置60に接続される第2排気ダクト50とを備えている。炉体20は、炉体本体21と、排気孔27を有する蓋25とを有している。開閉機構30は、蓋25の開閉を駆動する。第1排気ダクト40は、蓋25の上部に取り付けられ、排気孔27に繋がっており、かつ、第2排気ダクト50と接続される第1接続部45を有している。第2排気ダクト50は、炉体20の外部に固定されており、第1排気ダクト40と接続される第2接続部55を有している。第1接続部45と第2接続部55は、蓋25が閉じられているときに接続され、蓋が開かれているときに切り離される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を搬送方向に搬送する搬送空間を有する炉体と、
開閉機構と、
第1排気ダクトと、
排気装置に接続される第2排気ダクトと
を備え、
前記炉体は、
炉体本体と、
排気孔を有する蓋と
を有し、
前記炉体本体は、底壁と、前記底壁から上方に延びる一対の側壁とを有し、上方に開口が形成されており、
前記蓋は、前記炉体本体の前記開口に重ねられ、
前記開閉機構は、前記蓋の開閉を駆動し、
前記第1排気ダクトは、前記蓋の上部に取り付けられ、前記排気孔に繋がっており、かつ、前記第2排気ダクトと接続される第1接続部を有し、
前記第2排気ダクトは、前記炉体の外部に固定されており、前記第1排気ダクトと接続される第2接続部を有し、
前記第1接続部と前記第2接続部は、前記蓋が閉じられているときに接続され、前記蓋が開かれているときに切り離される、加熱炉。
【請求項2】
前記開閉機構は、前記蓋を上下方向に開閉する、請求項1に記載された加熱炉。
【請求項3】
前記第1排気ダクトは、前記第1排気ダクトよりも広がったトラップ部に接続されている、請求項1または2に記載された加熱炉。
【請求項4】
前記第1接続部と前記第2接続部のうち一方の接続部は、シール部材を備え、他方の接続部は、接続時に前記シール部材が押し当てられる当接面を備えている、請求項1から3までの何れか一項に記載された加熱炉。
【請求項5】
前記第1接続部と前記第2接続部のうち少なくともいずれか一方は、前記シール部材が前記当接面に押し当てられる圧力を調節可能な圧力調節部材を有している、請求項4に記載された加熱炉。
【請求項6】
前記排気孔は、前記被処理物と対向する位置に設けられている、請求項1から5までの何れか一項に記載された加熱炉。
【請求項7】
前記第1排気ダクトは、円形ダクトから構成されている、請求項1から6までの何れか一項に記載された加熱炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加熱炉に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-48977号公報には、被乾燥物を搬送方向に搬送しつつ、上記被乾燥物に風を当てて乾燥させる乾燥装置が開示されている。同公報に開示されている乾燥装置は、被乾燥物を載置して搬送方向に搬送する載置搬送部と、載置搬送部の上方に配置され、載置搬送部に向けて風を吹き出す吹出ボックスとを備えている。吹出ボックスは、カバー部に取り付けられている。カバー部は、ヒンジを中心として回転することによって上方に移動される。これによって、被乾燥物や載置搬送部のローラ等の点検、異物除去などが容易であるとされている。
【0003】
特開2012-47401号公報には、フィルム状の被塗工体を乾燥させる複数の乾燥室を備える乾燥装置が開示されている。それぞれの乾燥室は、本体部と、蓋部とを備えている。乾燥室は、蓋部が昇降装置によってわずかに昇降し、次いで、ガイド部に沿って水平スライドすることによって開閉自在に構成されている。かかる構成によって、例えば、乾燥室が上下二層構成であっても乾燥装置の高さ寸法を抑えることができ、また、メンテナンス性も向上するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-48977号公報
【特許文献2】特開2012-47401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、被処理物を加熱処理または乾燥処理する際に発生するガスや雰囲気ガスは、加熱炉の炉体内や排気ダクト内で凝集しうる。それによって、加熱炉の炉体内や排気ダクトが劣化する懸念がある。本発明者は、加熱炉の劣化を抑制したいと考えている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで開示される加熱炉は、被処理物を搬送方向に搬送する搬送空間を有する炉体と、開閉機構と、第1排気ダクトと、排気装置に接続される第2排気ダクトとを備えている。炉体は、炉体本体と、排気孔を有する蓋とを有している。炉体本体は、底壁と、底壁から上方に延びる一対の側壁とを有し、上方に開口が形成されている。蓋は、炉体本体の開口に重ねられる。開閉機構は、蓋の開閉を駆動する。第1排気ダクトは、蓋の上部に取り付けられ、排気孔に繋がっており、かつ、第2排気ダクトと接続される第1接続部を有している。第2排気ダクトは、炉体の外部に固定されており、第1排気ダクトと接続される第2接続部を有している。第1接続部と第2接続部は、蓋が閉じられているときに接続され、蓋が開かれているときに切り離される。かかる加熱炉は、メンテナンス性が良好であり、加熱炉の劣化が抑制される。
【0007】
開閉機構は、蓋を上下方向に開閉してもよい。
第1排気ダクトは、第1排気ダクトよりも広がったトラップ部に接続されていてもよい。
第1接続部と第2接続部のうち一方の接続部は、シール部材を備えていてもよい。他方の接続部は、接続時にシール部材が押し当てられる当接面を備えていてもよい。
第1接続部と第2接続部のうち少なくともいずれか一方は、シール部材が当接面に押し当てられる圧力を調節可能な圧力調節部材を有していてもよい。
第1排気ダクトは、円形ダクトから構成されていてもよい。
排気孔は、被処理物と対向する位置に設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、加熱炉10を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、上方から見た加熱炉10の平面図である。
【
図5】
図5は、第1接続部45と第2接続部55の構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示における典型的な実施形態の1つについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚み等)は実際の寸法関係を反映するものではない。上、下、左、右、前、後の向きは、図中、U、D、L、R、F、Rrの矢印でそれぞれ表されている。ここで、上、下、左、右、前、後の向きは、説明の便宜上、定められているに過ぎず、特に言及されない限りにおいて本願発明を限定しない。
【0010】
〈加熱炉10〉
加熱炉10は、被処理物Aを、搬送方向に搬送しながら連続的に加熱するための加熱炉である。この実施形態では、被処理物Aは、フィルム状の被処理物である。
図1は、加熱炉10を模式的に示す断面図である。
図1では、被処理物Aの搬送方向は矢印で示されている。
図2は、
図1のII-II断面図である。
図2では、加熱炉10の断面が示されている。なお、
図2では、被処理物A、ガイドローラ12、ヒータ13等の加熱炉10内の図示は省略されている。
図3は、加熱炉10の正面図である。
図3には、加熱炉10の第2排気ダクトが設けられている右側の面が図示されている。
図4は、上方から見た加熱炉10の平面図である。
【0011】
加熱炉10は、フィルム状の被処理物Aを加熱処理または乾燥処理する際に用いられる。加熱炉10は、例えば、フレキシブル銅張積層板FCCL(Flexible Cupper Clad Laminate)を製造する際に用いられうる。被処理物Aは、図示しない巻出ロールと巻取ロールに巻き付けられている。巻出ロールに巻き付けられている被処理物Aは、例えば、銅箔等の金属箔の表面に、ポリイミド等の樹脂材料と有機溶剤との混合物が塗工されたものでありうる。被処理物Aは、加熱炉10内で搬送されながら連続的に加熱処理され、有機溶剤が除去され、巻取ロールに巻き付けられる。
【0012】
図1に示されているように、加熱炉10は、被処理物Aを搬送方向に搬送する搬送空間20aを有する炉体20と、開閉機構30(
図2参照)と、第1排気ダクト40と、排気装置60(
図2参照)に接続される第2排気ダクト50(
図2参照)と、を備えている。第1排気ダクト40は、蓋25の上部に取り付けられている。第2排気ダクト50は、炉体20の外部に固定されている。加熱炉10は、炉体20内の搬送空間20aに、被処理物Aをガイドするガイドローラ12と、被処理物Aを加熱処理するヒータ13とを備えている。炉体20は、炉体本体21と蓋25とを有している。開閉機構30は、蓋25の開閉を駆動する。被処理物Aを加熱処理する時に蓋25は閉じられる。被処理物Aを加熱炉10にセットする時や、加熱炉10内の清掃等のメンテナンスを行う時に、蓋25は開かれる。なお、以下では、炉体本体21に対して蓋25が閉じられている状態を単に「閉状態S1」ともいい、炉体本体21に対して蓋25が開かれている状態を単に「開状態S2」ともいう。
図2において、開状態S2は、二点鎖線で示されている。
【0013】
〈炉体20〉
炉体20は、
図2に示されているように、閉状態S1において搬送空間20aの周りを全周に亘って囲っている。炉体20は、断熱材によって構成されている。断熱材としては、例えば、所定の形状に成形されたセラミックファイバーボードやロックウール等が用いられうる。断熱材の厚さは、搬送空間20aの熱が十分に断熱される程度の所要の厚さに設定されている。断熱材の外側面や内側面は、剛性および耐熱性に優れる金属製の内壁や外壁によって覆われている。内壁や外壁には、例えば、ステンレス等が用いられうる。
【0014】
炉体20は、炉体本体21と、排気孔27を有する蓋25とを有している。炉体本体21は、底壁21aと、底壁21aから上方に延びる側壁21bとを有し、上方に開口21cが形成されている。蓋25は、炉体本体21の開口21cに重ねられる。この実施形態では、側壁21bは、炉体20の長手方向に沿って底壁21aの端部から延びる一対の側壁21b1と、炉体20の幅方向に沿って底壁21aの端部から延びる一対の側壁21b2(
図1参照)から構成されている。側壁21bの上面には、全周に亘ってシール部材22が設けられている。蓋25は、底壁21aと対向する天井25aと、天井25aから下方に向かって延びる段差25bとを有している。段差25bの下面は、炉体本体21の側壁21bの上面と対応する形状を有している。閉状態S1では、段差25bの下面は、全周に亘って側壁21b上面のシール部材22に押し当てられる。それによって、炉体20の気密性が保たれる。シール部材22としては、例えば、シリコンスポンジ等が用いられうる。
【0015】
図1に示されているように、炉体20には、被処理物Aを搬入するための搬入口10aと、被処理物Aを搬出するための搬出口10bが設けられている。この実施形態では、搬入口10aおよび搬出口10bは、炉体本体21の側壁21b2に設けられている。搬入口10aおよび搬出口10bは、搬送空間20aの幅方向に広い矩形状の隙間であり、フィルム状の被処理物Aを挿通できるような寸法に設定されている。搬入口10aからは、加熱処理前の被処理物Aが搬入される。搬出口10bからは、加熱処理された被処理物Aが搬出される。被処理物Aの搬入および搬出は、図示しない巻取装置や巻出装置によって行われうる。特に限定されないが、巻出装置や巻取装置には、例えば、巻出ロールと巻取ロールを回転させるモータ、被処理物Aにかかる張力を調整する張力調整用のローラ、被処理物Aをガイドするガイドローラ等の種々の構成が設けられうる。炉体20の外部において、搬入口10aや搬出口10bの近傍には、炉体20内の雰囲気を維持するためのエアカーテンが設けられていてもよい。また、搬入口10aや搬出口10bには、被処理物Aをさらに別の条件で加熱処理するための加熱炉等の設備が接続されていてもよい。
【0016】
炉体20は、基台15に載せられている。基台15は、
図2に示されているように、基台の下端を構成する下部フレーム15aと、下部フレーム15aから上方に延びる支柱フレーム15bと、支柱フレーム15bから水平に延び炉体20の下面が載せられる上側フレーム15cとを有している。
【0017】
〈ガイドローラ12〉
ガイドローラ12は、
図1に示されているように、被処理物Aをガイドするローラである。炉体20内には、搬送方向に沿って複数のガイドローラ12が並べられている。ガイドローラ12は、円筒形状の金属製のローラであり、高さを揃え、予め定められたピッチで並べられている。図示は省略するが、ガイドローラ12は、炉体本体21の側壁21b1を貫通し、炉体20の外部で軸受を介して回転可能に支持されている。この実施形態では、被処理物Aは、搬送時に撓まないように、複数のガイドローラ12によって支持されている。ガイドローラ12としては、例えば、セラミック製のローラが用いられてもよい。
なお、配置される高さやピッチ等、ガイドローラ12の構成は、かかる形態に限定されない。ガイドローラ12は、例えば、ガイドローラ12ごとに異なる高さに配置されていてもよい。ガイドローラ12には、異なる2つの高さが設定されていてもよく、ガイドローラ12は、搬送方向に沿って上記の2つの高さに交互に配置されていてもよい。
【0018】
〈ヒータ13〉
ヒータ13は、搬送空間20aにおいて被処理物Aを加熱する装置である。ヒータ13は、搬送空間20aにおいて、複数のガイドローラ12の上方および下方に搬送方向に沿って並べられている。この実施形態では、ヒータ13として、遠赤外線加熱式の板状の電気式のプレートヒータが用いられている。図示は省略するが、ヒータ13は、炉体20に支持されている。ガイドローラ12の下方に配置されているヒータ13は、底壁21aに支持されている。ガイドローラ12の上方に配置されているヒータ13は、蓋25に支持されている。ヒータ13としては、加熱温度や加熱雰囲気等に応じて種々のヒータが用いられうる。ヒータ13としては、例えば、板状の電気式のプレートヒータの他に、電気式パイプヒータ、金属シースヒータ、セラミックヒータ等が用いられうる。また、ヒータ13は、遠赤外線加熱式のヒータに限られない。例えば、ヒータ13としては、被処理物に熱風が吹き付けられる熱風加熱式のヒータが用いられてもよい。
【0019】
〈給気孔23〉
給気孔23は、炉体20内に雰囲気ガスを供給するための孔である。給気孔23には、図示しないガス導入管が接続され、ガス導入管には、導入する雰囲気ガスのボンベが接続されている。この実施形態では、給気孔23は、側壁21b1の上方および下方に複数設けられている。炉体20内に供給される雰囲気ガスは特に限定されない。雰囲気ガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスや、酸素ガス、水素ガス、塩素ガス、塩化水素ガス等が用いられうる。
【0020】
〈排気孔27〉
排気孔27は、炉体20内の雰囲気ガスや、被処理物Aから揮発する有機溶剤等を排気する孔である。排気孔27は、蓋25の天井25aに設けられている。排気孔27は、後述する第1排気ダクト40と第2排気ダクト50を介して排気装置60と接続されている(
図2参照)。排気装置60によって炉体20内のガスが吸引され、排気孔27から排気が行われる。排気装置60としては、例えば、ファンやブロワ等が用いられうる。排気装置60には、廃棄されるガスに応じて溶剤回収装置等が接続されていてもよい。また、排気装置60には、回収された溶剤を燃焼させる燃焼装置等が接続されていてもよい。
【0021】
なお、被処理物Aが加熱処理されることによって揮発する有機溶剤は、炉体20内の雰囲気ガスよりも軽く、上方に向かって流れうる。かかる観点から、排気孔27は、蓋25の天井に設けられていることが好ましい。また、炉体20の高さ方向において、排気孔27は、被処理物Aと対向する位置に設けられていることが好ましい。かかる構成によって、被処理物Aが加熱されることによって発生するガスを効率よく排気しうる。なお、炉体20内のガスを排気する排気孔は、蓋25の天井に限られず、炉体本体21の下部にも設けられていてもよい。
【0022】
また、この実施形態では、排気孔27は、複数設けられている。排気孔27は、搬送方向の上流側と下流側に2個ずつ炉体20の幅方向に並んで設けられており、合計4個の排気孔27が設けられている。排気孔27の位置や数は、加熱条件や搬送空間20aの容積等に応じて適宜設定されるが、排気孔率を向上させる観点から、複数の排気孔27が設けられていることが好ましい。複数の排気孔27が設けられていることによって、加熱炉10内から万遍なくガスが排気されやすくなる。
【0023】
〈開閉機構30〉
図2に示されているように、開閉機構30は、炉体20の蓋25を開閉させる。開閉機構30の構成は特に限定されないが、この実施形態では、開閉機構30は、リニアガイド31と、モータ32と、ボールねじ33と、接続部材34とを備えている。蓋25の上部には、接続部材34が固定されている。接続部材34は、両端がリニアガイド31に接続されている。蓋25は、リニアガイド31の昇降に合わせて開閉される。
【0024】
蓋25の開閉を駆動するモータ32は、下部フレーム15aに取り付けられている。ボールねじ33は、カップリング等を介してモータ32と接続されている。ボールねじ33は、モータ32から上方に延びている。ボールねじ33は、炉体20と対向する面を除いて支柱35に覆われている。接続部材34は、炉体20とボールねじ33やリニアガイド31とを接続している。リニアガイド31と、モータ32と、ボールねじ33と、支柱35は、炉体20の幅方向の両側に設けられている。接続部材34の両端は、炉体20の幅方向の両側のリニアガイド31に接続されている。また、接続部材34は、蓋25の上部に固定されている。モータ32を回転させることによってリニアガイド31に固定されている接続部材34が昇降し、蓋25が開閉される。開閉機構30は、リニアガイド31によって蓋25の開閉方向が設定されている。この実施形態では、開閉機構30は、蓋25を上下方向に開閉する。
【0025】
〈第1排気ダクト40〉
第1排気ダクト40は、炉体20内のガスを排気するための排気経路である。第1排気ダクト40は、蓋25の上部に取り付けられているため、蓋25の開閉に合わせて開閉方向に動くように構成されている。第1排気ダクト40は、排気孔27に繋がっている。第1排気ダクト40は、排気孔27に接続されている上流部41と、第2排気ダクト50に向かって延びる下流部43とを備えている。第1排気ダクト40は、第2排気ダクト50と接続される第1接続部45を有している。第1接続部45は、第1排気ダクト40の最も下流側である下流部43の先端に設けられている。特に限定されないが、この実施形態では、第1排気ダクト40は、円形ダクトから構成されている。第1排気ダクト40が円形ダクトから構成されていることによって、配管内で有機溶剤が凝集したとしても残留しにくくなっている。
【0026】
第1排気ダクト40は、第1排気ダクト40よりも広がったトラップ部42に接続されている。この実施形態では、上流部41と下流部43は、上流部41と下流部43の配管の径よりも広がった空間を有するトラップ部42に接続されている。トラップ部42には、炉体20内で発生したガスや雰囲気ガスが温度の高い状態で流入しうる。トラップ部42は、これらのガスの一部をトラップしうる部位である。トラップ部42は、上流部41と下流部43の間に設けられている。トラップ部42は、炉体20の蓋25の略中央部に位置している。トラップ部42は、略直方体形状であり、内部に空間を有している。トラップ部42は、蓋25の上面から上方に延びる脚部42aに支持され、蓋25に取り付けられている。トラップ部42と蓋25の間には空間が形成されている。
【0027】
上流部41は、それぞれの排気孔27に接続されている4本の配管から構成されている。上流部41は、排気孔27から2回屈曲してトラップ部42に接続されている。上流部41は、排気孔27から上方に延び、略垂直に屈曲して炉体20の長手方向と平行に延びている(
図2~4参照)。上流部41はさらに、炉体20の長手方向と平行に延びた部位から略垂直に屈曲し、炉体20の幅方向と平行にトラップ部42に向かって延びている(
図4参照)。上流部41は、トラップ部42の幅方向の側面42bに接続されている。
【0028】
下流部43は、トラップ部42の幅方向の一方の側面42b1の上部に接続されている。下流部43は、トラップ部42の側面42b1から炉体20の幅方向に延び、次いで、下方に向かって屈曲している。この実施形態では、下流部43の、炉体20の幅方向に延びている部位は、蓋25の側面に取り付けられている支持部材26によって下方から支持されている。当該支持されている部位は、パイプバンド26aによって周方向に巻かれて、支持部材26に取り付けられている。これによって、第1排気ダクト40の下流部43は、撓むことなく蓋25に固定されている。
【0029】
〈第2排気ダクト50〉
第2排気ダクト50は、炉体20内のガスを排気するための排気経路である。第2排気ダクト50は、炉体20の外部に固定されている。この実施形態では、第2排気ダクト50は、
図3に示されているように、支持部材16に取り付けられている。特に限定されないが、この実施形態では、第2排気ダクト50は、第1排気ダクト40同様に円形ダクトから構成されている。第2排気ダクト50の内径は、第1排気ダクト40の内径よりも大きい。このように、第1排気ダクト40よりも第2排気ダクト50の内径を大きくすることによって、排気時の圧力損失を小さくすることができる。
【0030】
第2排気ダクト50は、第1排気ダクト40と接続される第2接続部55を有している。第1排気ダクト40の第1接続部45と第2排気ダクト50の第2接続部55は、蓋25が閉じられているときに接続され、蓋25が開かれているときに切り離されるように構成されている。この実施形態では、第1接続部45と第2接続部55の着脱方向は、蓋25の開閉方向(上下方向)と一致している。
【0031】
〈第1接続部45、第2接続部55〉
図5は、第1接続部45と第2接続部55の構成を模式的に示す断面図である。第1排気ダクト40の第1接続部45と第2排気ダクト50の第2接続部55は、
図5に示されているように、それぞれ他方の接続部に対向した開口45a,55aを有している。この実施形態では、第2接続部55の開口55aは、第1接続部45の外径よりも広くなっている。閉状態S1(
図2参照)では、第1接続部45の先端部45bは、第2接続部55に収められる。第1接続部45の先端部45bには、第2接続部55の内壁との隙間を埋めるためのフッ素ゴム等が設けられていてもよい。第2接続部55には、第1接続部45が収められる部位から下流側に向かうに従って徐々に狭くなる傾斜部55bが設けられている。傾斜部55bよりも下流側では、第2排気ダクト50の内径は、第1排気ダクト40の内径よりも大きい。
【0032】
第1接続部45と第2接続部55のうち一方の接続部は、シール部材56を備え、他方の接続部は、接続時にシール部材が押し当てられる当接面46aを備えていてもよい。この実施形態では、第2接続部55は、シール部材56を備えている。第2接続部55には、フランジ状のフランジ部55cが設けられている。フランジ部55cの、第1接続部45と対向する面には、シール部材56が取り付けられる基部55dが設けられている。シール部材56は、所要の耐熱性や耐腐食性等を有している限りにおいて特に限定されない。シール部材56としては、例えば、シリコンスポンジ等が用いられうる。第1接続部45は、先端部45bに、第1接続部45から外側に向かって延びる円盤46を備えている。円盤46の一方の面は、第2接続部55と対向している。当該第2接続部55と対向している面は、閉状態S1でシール部材56が押し当てられる当接面46aである。シール部材56および当接面46aは、それぞれ第1接続部45および第2接続部55の周方向に連続して設けられている。これによって、第1接続部45と第2接続部55は、閉状態S1の時に気密に接続されるように構成されている。
【0033】
なお、第1接続部45と第2接続部55のうち少なくともいずれか一方は、シール部材56が当接面46aに押し当てられる圧力を調節可能な圧力調節部材47を有していてもよい。この実施形態では、第1接続部45は、圧力調節部材47を有している。圧力調節部材47の構成は特に限定されない。この実施形態では、圧力調節部材47は、円盤47aと、ねじボルト47bと、ナット47c,47dを備えている。
【0034】
円盤47aは、第1接続部45から外側に向かって延びている。円盤47aは、円盤46よりも上流側に設けられており、第1接続部45に固定されている。円盤47aには、ねじボルト47bが挿通される挿通孔47a1が設けられている。円盤46の、当接面46aと反対側の面には、ナット47cが固定されている。また、ナット47cには、ねじボルト47bの一端が固定されている。ねじボルト47bは、円盤47aの挿通孔47a1に挿通され、上下方向からナット47dに締め付けられることによって、円盤47aに固定される。ねじボルト47bが円盤47aに対して固定されることによって、円盤46の位置が固定される。挿通孔47a1、ねじボルト47bおよびナット47c,47dは、円盤47aの周方向に沿って複数設けられている。これによって、円盤46は円盤47aに対して安定的に固定される。ナット47dをゆるめ、ねじボルト47bが円盤47aに固定される位置を調節することにより、円盤47aに対する円盤46の位置を上下方向に調節することができる。その結果、開状態S2(
図2参照)での円盤47aの当接面46aからシール部材56までの距離が調節され、閉状態S1でシール部材56が当接面46aに押し当てられる圧力が調節される。例えば、円盤46の位置を上方に移動させることによって、シール部材56が当接面46aに押し当てられる圧力が低くなる。円盤46の位置を下方に移動させることによって、シール部材56が当接面46aに押し当てられる圧力が高くなる。
【0035】
ところで、加熱炉内で被処理物を加熱処理または乾燥処理する際には、種々のガスが発生しうる。例えば、ポリイミド樹脂のような樹脂材料を含む被処理物を処理する際は、被処理物に含まれる有機溶剤が加熱炉内で気化しうる。硫黄成分が含まれる被処理物を処理する際は、硫化水素が発生しうる。加熱炉内で気化した有機溶剤は、排気ダクトを通って加熱炉外で回収される。しかしながら、加熱炉内で気化した有機溶剤が凝集し排気ダクトや加熱炉内に付着しうる。また、例えば、塩素ガスや塩化水素雰囲気で被処理物を処理する際は、かかる雰囲気ガスが凝集し排気ダクトや加熱炉内に付着しうる。
【0036】
これに対して、上述した実施形態では、加熱炉10は、炉体20と、開閉機構30と、第1排気ダクト40と、第2排気ダクト50とを備えている。炉体20は、炉体本体21と、排気孔27を有する蓋25とを有している。開閉機構30は、蓋の開閉を駆動する。第1排気ダクト40は、蓋25の上部に取り付けられている。一方、第2排気ダクト50は、炉体20の外部に固定されている。第1排気ダクト40と第2排気ダクト50は、炉体20の炉体本体21と蓋25が閉じられているときに接続され、炉体20の炉体本体21と蓋25が開かれているときに切り離される。このため、第1排気ダクト40と第2排気ダクト50が切り離された状態で排気ダクト内の清掃等のメンテナンス作業をすることができる。その結果、排気ダクトを含めた加熱炉10の劣化が抑制される。
【0037】
上述した実施形態では、開閉機構30は、蓋25を上下方向に開閉するように構成されている。蓋25が上下方向に開閉されることによって、加熱炉10を設置するスペースを小さくすることができる。また、蓋25の開閉と連動して第1排気ダクト40と第2排気ダクト50も上下方向に着脱される。そのため、第1排気ダクト40と第2排気ダクト50とが切り離された状態でも、第1排気ダクト40の開口45aの下方に第2排気ダクト50の開口55aが位置する。例えば、凝集した有機溶剤等の液体が第1排気ダクト40内に残っている場合にも、液体が排気ダクトの外に流れることを抑制することができる。また、第2接続部55の開口55aが第1接続部45の外径よりも広くすることによって、液体を排気ダクトの外により流れにくくすることができる。
【0038】
上述した実施形態では、第1排気ダクト40は、第1排気ダクト40よりも広がったトラップ部42に接続されている。トラップ部42は、内部に第1排気ダクト40よりも広がった空間を有している。このため、トラップ部42では、上流部41を通ったガスの温度と圧力が低下する。ガスの温度と圧力が低下すると、トラップ部42に流入したガスのうち、例えば、有機溶剤が凝縮しうる。凝集した有機溶剤は、トラップ部42の底に溜まる。このため、トラップ部42よりも下流側の、第1排気ダクト40の下流部43や、後述する第2排気ダクト50に流入する有機溶剤を減らすことができる。その結果、トラップ部42よりも下流側で有機溶剤の凝集が抑制され、排気ダクトを腐食しにくくすることができる。なお、トラップ部42には、凝集した有機溶剤を廃棄できるよう、上部に蓋等が設けられているとよい。
【0039】
以上、具体的な実施形態を挙げて詳細な説明を行ったが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。例えば、上述した実施形態では、第1排気ダクトの第1接続部45に圧力調節部材47が設けられており、第2排気ダクト50の第2接続部55にシール部材56が設けられている。しかしながら、特に言及されない限りにおいて、かかる形態に限定されない。シール部材56は、第1接続部45に設けられていてもよく、第1接続部45と第2接続部55の両方に設けられていてもよい。圧力調節部材47は、第2接続部55に設けられていてもよく、第1接続部45と第2接続部55の両方に設けられていてもよい。
【0040】
このように、請求の範囲に記載の技術には、以上に記載した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。また、上記実施形態で例示された複数の技術の一部を加熱炉に採用することも可能である。
【符号の説明】
【0041】
10 加熱炉
10a 搬入口
10b 搬出口
12 ガイドローラ
13 ヒータ
15 基台
16 支持部材
20 炉体
20a 搬送空間
21 炉体本体
22 シール部材
23 給気孔
25 蓋
26 支持部材
27 排気孔
30 開閉機構
31 リニアガイド
32 モータ
33 ボールねじ
34 接続部材
35 支柱
40 第1排気ダクト
41 上流部
42 トラップ部
43 下流部
45 第1接続部
45a 開口
45b 先端部
46 円盤
46a 当接面
47 圧力調節部材
47a 円盤
47a1 挿通孔
47b ねじボルト
47c,47d ナット
50 第2排気ダクト
55 第2接続部
55a 開口
55b 傾斜部
55c フランジ部
55d 基部
56 シール部材
60 排気装置
A 被処理物
【手続補正書】
【提出日】2022-03-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を搬送方向に搬送する搬送空間を有する炉体と、
開閉機構と、
第1排気ダクトと、
排気装置に接続される第2排気ダクトと
を備え、
前記炉体は、
炉体本体と、
排気孔を有する蓋と
を有し、
前記炉体本体は、底壁と、前記底壁から上方に延びる一対の側壁とを有し、上方に開口が形成されており、
前記蓋は、前記炉体本体の前記開口に重ねられ、
前記開閉機構は、前記蓋の開閉を駆動し、
前記第1排気ダクトは、前記蓋の上部に取り付けられ、前記排気孔に繋がっており、かつ、前記第2排気ダクトと接続される第1接続部を有し、
前記第2排気ダクトは、前記炉体の外部に固定されており、前記第1排気ダクトと接続される第2接続部を有し、
前記第1接続部と前記第2接続部は、前記蓋の開閉に合わせて、前記蓋が閉じられているときに接続され、前記蓋が開かれているときに切り離されるように構成された、加熱炉。
【請求項2】
前記開閉機構は、前記蓋を上下方向に開閉する、請求項1に記載された加熱炉。
【請求項3】
前記第1排気ダクトは、前記第1排気ダクトよりも広がったトラップ部に接続されている、請求項1または2に記載された加熱炉。
【請求項4】
前記第1接続部と前記第2接続部のうち一方の接続部は、シール部材を備え、他方の接続部は、接続時に前記シール部材が押し当てられる当接面を備えている、請求項1から3までの何れか一項に記載された加熱炉。
【請求項5】
前記第1接続部と前記第2接続部のうち少なくともいずれか一方は、前記シール部材が前記当接面に押し当てられる圧力を調節可能な圧力調節部材を有している、請求項4に記載された加熱炉。
【請求項6】
前記排気孔は、前記被処理物と対向する位置に設けられている、請求項1から5までの何れか一項に記載された加熱炉。
【請求項7】
前記第1排気ダクトは、円形ダクトから構成されている、請求項1から6までの何れか一項に記載された加熱炉。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉体と、
開閉機構と、
第1排気ダクトと、
排気装置に接続される第2排気ダクトと
を備え、
前記炉体は、
炉体本体と、
排気孔を有する蓋と
を有し、
前記炉体本体は、底壁と、前記底壁から上方に延びる一対の側壁とを有し、上方に開口が形成されており、
前記蓋は、前記炉体本体の前記開口に重ねられ、
前記炉体は、
前記底壁と、前記側壁と、前記蓋とに囲まれた搬送空間を有しており、
前記搬送空間は、被処理物を搬送方向に沿って搬送するための空間であり、
前記炉体は、前記搬送方向の一端に前記被処理物を前記搬送空間に搬送する搬入口と、他端に前記被処理物を前記搬送空間から搬出するための搬出口を有し、
前記開閉機構は、前記蓋の開閉を駆動し、
前記第1排気ダクトは、前記蓋の上部に取り付けられ、前記排気孔に繋がっており、かつ、前記第2排気ダクトと接続される第1接続部を有し、
前記第2排気ダクトは、前記炉体の外部に固定されており、前記第1排気ダクトと接続される第2接続部を有し、
前記第1接続部と前記第2接続部は、前記蓋の開閉に合わせて、前記蓋が閉じられているときに接続され、前記蓋が開かれているときに切り離されるように構成された、加熱炉。
【請求項2】
前記開閉機構は、前記蓋を上下方向に開閉する、請求項1に記載された加熱炉。
【請求項3】
前記第1排気ダクトは、前記第1排気ダクトよりも広がったトラップ部に接続されている、請求項1または2に記載された加熱炉。
【請求項4】
前記第1接続部と前記第2接続部のうち一方の接続部は、シール部材を備え、他方の接続部は、接続時に前記シール部材が押し当てられる当接面を備えている、請求項1から3までの何れか一項に記載された加熱炉。
【請求項5】
前記第1接続部と前記第2接続部のうち少なくともいずれか一方は、前記シール部材が前記当接面に押し当てられる圧力を調節可能な圧力調節部材を有している、請求項4に記載された加熱炉。
【請求項6】
前記排気孔は、前記被処理物と対向する位置に設けられている、請求項1から5までの何れか一項に記載された加熱炉。
【請求項7】
前記第1排気ダクトは、円形ダクトから構成されている、請求項1から6までの何れか一項に記載された加熱炉。