(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065200
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】積層フィルムの製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
B32B 33/00 20060101AFI20230502BHJP
B32B 38/00 20060101ALI20230502BHJP
B32B 38/06 20060101ALI20230502BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230502BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20230502BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20230502BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
B32B33/00
B32B38/00
B32B38/06
B32B27/00 B
B05D7/00 A
B05D3/00 D
B05D1/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175864
(22)【出願日】2021-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】中谷 耕太
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
【Fターム(参考)】
4D075AC02
4D075AC54
4D075AC62
4D075AC80
4D075AC88
4D075AC91
4D075AC92
4D075AC93
4D075AC94
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4D075BB20Z
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4D075BB92Y
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4D075DA04
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4D075DC13
4D075DC19
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4D075EA05
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4F100AH06
4F100AH06B
4F100AK49
4F100AK49A
4F100AK52
4F100AK52B
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4F100AK53B
4F100AR00B
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4F100DD01
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4F100GB41
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4F100JA06B
4F100JK12
4F100JK12B
4F100JK15
4F100JK15B
4F100JK17
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】コーティング層が形成された積層フィルムにおいて、MDスジの発生を低減する。
【解決手段】基材フィルムを長手方向に連続搬送しながら、基材フィルム上にコーティング層を形成する積層フィルムの製造方法であって、コーティング膜を形成する塗工工程、および表面処理部でコーティング膜の表面を処理する表面処理工程、を含み、表面処理部は、表面に溝を有する断面円形状の回転体を備え、回転体は、コーティング膜に接触するように配置され、特定条件となるように構成され、基材フィルムの搬送方向と逆方向に回転する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムを長手方向に連続搬送しながら、前記基材フィルム上にコーティング層を形成する積層フィルムの製造方法であって、
前記基材フィルム上にコーティング液を塗工してコーティング膜を形成する塗工工程、および
表面処理部で前記コーティング膜の表面を処理する表面処理工程、を含み、
前記表面処理部は、表面に溝を有する断面円形状の回転体を備え、
前記回転体は、前記コーティング膜に接触するように配置され、
前記回転体は、0.1w≦A≦1.5wとなるように構成され、
(式中、w(mm)はコーティング膜の膜厚であり、A(mm2/mm)は、回転体の溝の単位断面積であり、A=A’/Pにより求め、A’(mm2)は溝の断面積であり、P(mm)は溝ピッチである)
前記表面処理工程では、前記回転体は、前記基材フィルムの搬送方向と逆方向に回転する、積層フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記回転体は、1≦Vr≦50A+1.3となるように回転させる、請求項1記載の積層フィルムの製造方法。
(式中、Vrは前記基材フィルムの搬送速度に対する回転体の回転速度比であり、A(mm2/mm)は回転体の溝の単位断面積である)
【請求項3】
前記回転体の溝は、基材フィルムの搬送方向に対して傾斜した凹凸溝である、請求項1または2に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記凹凸溝は、基材フィルムの搬送方向を0°とした場合、回転体の凹凸溝の方向が10°~45°傾斜している、請求項3に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記コーティング液は、1cp~100cpの粘度を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記コーティング膜は、20μm以上の膜厚を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項7】
基材フィルムを長手方向に連続搬送しながら、前記基材フィルム上にコーティング層を形成する積層フィルムの製造装置であって、
前記基材フィルム上にコーティング液を塗工してコーティング膜を形成する塗工部、および前記コーティング膜の表面を処理する表面処理部、を備え、
前記表面処理部は、表面に溝を有する断面円形状の回転体を備え、
前記回転体は、前記コーティング膜に接触するように配置され、
前記回転体は、0.1w≦A≦1.5wとなるように構成され、
(式中、w(mm)はコーティング膜の膜厚であり、A(mm2/mm)は、回転体の溝の単位断面積であり、A=A’/Pにより求め、A’(mm2)は溝の断面積であり、P(mm)は溝ピッチである)
前記回転体は、前記基材フィルムの搬送方向とは逆方向に回転する、積層フィルムの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムの製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルディスプレイ向けのガラス代替フィルムとして、コーティング層が形成された透明フィルムの開発が検討されている。このような透明フィルムには、ガラス代替フィルムとして、屈曲性、硬度等の物性の他、フィルム外観に対して高い品質レベルが求められている。
【0003】
コーティング層を形成する方法として、塗工手段により塗工した膜の膜厚を調整するため、ワイヤーバーを基材フィルムの搬送方向に対して順方向や逆方向に回転させて使用し、塗工膜を形成する技術が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
透明フィルムにコーティング層を形成する際に、得られる積層フィルムの外観欠陥として、フィルムの長手方向に生じるスジ(MDスジ)、フィルムの短手方向に生じるムラ(段ムラ)、点状欠陥、厚みムラ等が生じるという問題がある。そのため、コーティング層が形成された透明フィルムは、光学フィルムとして高品質レベルを満足するため、外観の欠陥を改善する技術が必要とされている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術において、厚膜のコーティング層については、低粘度のコーティング液を用いる場合であっても、十分な外観欠陥解消効果が得られないか、または厚みムラの悪化や気泡混入等によって、かえってコーティング層の外観品質が悪化するという課題があることが本発明者らの検討の結果、明らかとなった。外観欠陥のなかでも、特に、濃いMDスジの低減が課題となる場合が多い。
【0007】
本発明の一態様は、外観欠陥のうち、特にMDスジの発生を低減し得る、積層フィルムの製造方法および製造装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討した結果、基材フィルム上にコーティング膜を形成する工程において、特定の溝構造を有する回転体を、フィルムの搬送方向とは逆回転させつつコーティング膜の表面を処理することによって、MDスジの発生を低減し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明の一実施形態は、以下の構成を含むものである。
【0009】
〔1〕基材フィルムを長手方向に連続搬送しながら、前記基材フィルム上にコーティング層を形成する積層フィルムの製造方法であって、
前記基材フィルム上にコーティング液を塗工してコーティング膜を形成する塗工工程、および
表面処理部で前記コーティング膜の表面を処理する表面処理工程、を含み、
前記表面処理部は、表面に溝を有する断面円形状の回転体を備え、
前記回転体は、前記コーティング膜に接触するように配置され、
前記回転体は、0.1w≦A≦1.5wとなるように構成され、
(式中、w(mm)はコーティング膜の膜厚であり、A(mm2/mm)は、回転体の溝の単位断面積であり、A=A’/Pにより求め、A’(mm2)は溝の断面積であり、P(mm)は溝ピッチである)
前記表面処理工程では、前記回転体は、前記基材フィルムの搬送方向と逆方向に回転する、積層フィルムの製造方法。
【0010】
〔2〕前記回転体は、1≦Vr≦50A+1.3(式中、Vrは前記基材フィルムの搬送速度に対する回転体の回転速度比であり、A(mm2/mm)は回転体の溝の単位断面積である)となるように回転させる、〔1〕記載の積層フィルムの製造方法。
【0011】
〔3〕前記回転体の溝は、基材フィルムの搬送方向に対して傾斜した凹凸溝である、〔1〕または〔2〕に記載の積層フィルムの製造方法。
【0012】
〔4〕前記凹凸溝は、基材フィルムの搬送方向を0°とした場合、回転体の凹凸溝の方向が10~45°傾斜している、〔3〕に記載の積層フィルムの製造方法。
【0013】
〔5〕前記コーティング液は、1cp~100cpの粘度を有する、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法。
【0014】
〔6〕前記コーティング膜は、20μm以上の膜厚を有する、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の製造フィルムの製造方法。
【0015】
〔7〕基材フィルムを長手方向に連続搬送しながら、前記基材フィルム上にコーティング層を形成する積層フィルムの製造装置であって、
前記基材フィルム上にコーティング液を塗工してコーティング膜を形成する塗工部、および前記コーティング膜の表面を処理する表面処理部、を備え、
前記表面処理部は、表面に溝を有する断面円形状の回転体を備え、
前記回転体は、前記コーティング膜に接触するように配置され、
前記回転体は、0.1w≦A≦1.5wとなるように構成され、
(式中、w(mm)はコーティング膜の膜厚であり、A(mm2/mm)は、回転体の溝の単位断面積であり、A=A’/Pにより求め、A’(mm2)は溝の断面積であり、P(mm)は溝ピッチである)
前記回転体は、前記基材フィルムの搬送方向とは逆方向に回転する、積層フィルムの製造装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、MDスジの発生を低減した積層フィルムを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る積層フィルムを製造する製造装置の構成の一例を示す模式断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る積層フィルムを製造する製造方法における、基材フィルムの搬送方向と回転体の回転方向を示す模式図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る積層フィルムを製造する製造方法における、回転体の溝の断面積A’および溝ピッチPを示す模式図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る積層フィルムを製造する製造方法における、基材フィルムの搬送方向に対して、回転体の溝の方向が傾斜していることを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0019】
[本発明の一実施形態の技術思想]
本発明者らの検討の結果、上述した特許文献1に記載のような技術では、厚膜のコーティング層については、低粘度のコーティング液を用いる場合であっても、十分な外観欠陥解消効果が得られないか、または厚みムラの悪化や気泡混入等によって、かえってコーティング層の外観品質が悪化するという課題があることがわかった。例えば、コーティング膜にMDスジが濃く発生した場合には、MDスジを解消することが困難であり、特許文献1に記載のワイヤーバーを使用すると、ワイヤーバーの回転による外観不良により、却ってコーティング層の品質が悪化してしまう。
【0020】
本発明の一実施形態は、上記の課題を解決することを目的としている。
【0021】
より具体的には、本発明者らは、外観欠陥改善効果を高める方法として、(i)使用する回転体(バー)について、表面の凹凸溝が基材フィルムの搬送方向に対して傾斜しており、且つ溝1つ分の容積がコーティング膜に対してある程度小さいものを使用し、回転体を、基材フィルムの搬送方向に対して逆回転とすることが有効であること、(ii)基材フィルムの搬送速度に対する回転体の回転速度比の条件について、回転体の溝仕様(溝単位面積)によって決まる最適条件、を見出し、本発明の一実施形態に至った。本発明の一実施形態によれば、上記の課題を解決することができる。
【0022】
[本発明の一実施形態]
本発明の一実施形態に係る積層フィルムの製造方法(以下、本製造方法と称する場合がある)は、基材フィルムを長手方向に連続搬送しながら、前記基材フィルム上にコーティング層を形成する積層フィルムの製造方法であって、前記基材フィルム上にコーティング液を塗工してコーティング膜を形成する塗工工程、および表面処理部で前記コーティング膜の表面を処理する表面処理工程、を含み、前記表面処理部は、表面に溝を有する断面円形状の回転体を備え、前記回転体は、前記コーティング膜に接触するように配置され、前記回転体は、0.1w≦A≦1.5w(式中、w(mm)はコーティング膜の膜厚であり、A(mm2/mm)は、回転体の溝の単位断面積であり、A=A’/Pにより求め、A’(mm2)は溝の断面積であり、P(mm)は溝ピッチである)となるように構成され、前記表面処理工程では、前記回転体は、前記基材フィルムの搬送方向と逆方向に回転する。
【0023】
本製造方法によれば、コーティング層が形成された積層フィルムにおいて、MDスジの発生を低減することができる。それゆえ、コーティング層が形成された積層フィルムの外観品質を向上させることができる。
【0024】
本発明の一実施形態に係る積層フィルムを製造する製造方法および製造装置について、以下に、
図1を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る積層フィルムを製造する製造装置の一例を示す模式図である。
【0025】
(1.塗工工程)
本製造方法における塗工工程は、基材フィルム上にコーティング液を塗工してコーティング膜を形成する工程であればよい。より具体的には、塗工工程では、基材フィルムを搬送ロールにより連続的に搬送しながら、塗工手段を用いて基材フィルム表面に連続的にコーティング液の塗工を施す。
【0026】
図1に示されるように、積層フィルムの製造装置10は、塗工部2と、表面処理部3と、乾燥手段としてのドライヤ4と、UV照射機と、を備える。本製造方法における塗工工程は、例えば、塗工部2にて、基材フィルム1上にコーティング液を塗工して、コーティング膜5を形成する工程である。
【0027】
製造装置10は、基材フィルム1を複数の搬送ローラにより連続搬送する構成である。ダイ2aは、連続搬送される基材フィルム1の表面に対して塗工液を一様に塗布する塗工部2に備えられる。ダイ2aは、タンクから供給される塗工液を、基材フィルム1に吐出する。なお、
図1に示す構成では、塗工部2は、ダイ2aを有するダイコータである。塗工部2は、ダイコータに限定されず、基材フィルム1の表面に対して塗工液を一様に塗布できる構成であれば、特に限定されない。塗工部2として、例えば、グラビアコーター、バーコーター、スプレーコーター等が挙げられる。
【0028】
また、製造装置10は、コーティング膜5の表面を処理する表面処理部3を備える。回転体3aは、表面処理部3に備えられるものであり、基材フィルム1の搬送方向において、ダイ2aとドライヤ4との間に配される。塗工部2により形成されるコーティング膜5には、外観不良(特にMDスジ)が発生しやすい。特に、コーティング膜5の膜厚が比較的大きく、かつ塗工液の粘度が比較的低い場合に当該問題が生じやすい傾向にある。表面処理部3の回転体3aは、このようにMDスジの発生を低減するためにコーティング膜5の表面を処理する。
【0029】
ドライヤ4は、コーティング膜5を乾燥することによって、基材フィルム1にコーティング層6が積層された積層フィルムとする装置である。ドライヤ4により乾燥したコーティング層6は、UV照射機によって、さらに硬化する。
【0030】
(1-1.基材フィルム1)
基材フィルム1は、厚さが均一であり、かつ可撓性があるフィルムまたはシート状の基材を長尺帯状に形成したものであることが好ましい。基材フィルム1の材料は、特に限定されないが、例えば、樹脂、紙、布、金属などが挙げられ、用途に応じて適宜選択され得る。基材フィルム1の材料としては、透明性のあるプラスチックフィルムであれば特に制限されることなく使用可能である。基材フィルム1を構成する材料が樹脂である場合、当該材料として、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ環状オレフィン等のポリオレフィン系樹脂;アクリル系樹脂;セルロース系樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート;ポリイミド;これら樹脂の混合物等が挙げられる。積層フィルムの用途がスマートフォン等のディスプレイである場合、これら樹脂の中でも、基材フィルム1の材料は、ポリイミド系樹脂であることが好ましい。
【0031】
基材フィルム1の膜厚は、10μm~300μmが好ましく、20μm~200μmがより好ましい。基材フィルム1の膜厚が10μm未満であると、基材フィルム1の強度が低下することで加工性が劣化し、また300μmを超えると透明性が低下するか、または基材フィルム1の重量が大きくなるという問題が生じる。
【0032】
基材フィルム1の形状は、連続搬送可能な帯状であればよく、幅(短手方向)および長さ(長手方向)は限定されない。基材フィルムの幅は、搬送性安定化の点で、好ましくは1cm~200cm、より好ましくは10cm~100cmである。基材フィルムの長さは、巻き取り後のハンドリング性の点で、100cm~100000cmであることが好ましい。
【0033】
基材フィルム1は、単層または他の層を含む複数層から形成されてもよい。複数層から形成される場合、他の層としては、接着材層、粘着剤層等が挙げられる。また裏面に同様のコーティング層が形成されていてもよい。
【0034】
(1-2.コーティング液)
コーティング液は、コーティング膜5の原料であり、硬化性樹脂、硬化剤、および溶剤に加えて、添加剤を更に含んでよい。コーティング膜5は、積層フィルムに含まれるコーティング層の乾燥前の状態をいう。コーティング液に使用される硬化性樹脂は、光硬化性樹脂であっても、熱硬化性樹脂であってもかまわない。また、コーティング液に使用される硬化剤は、光重合開始剤であっても熱重合開始剤であってもよい。
【0035】
コーティング液に使用される硬化性樹脂(光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂)は、2個以上の重合性(光重合性、熱重合性)の官能基を有する多官能化合物である。多官能化合物はモノマーまたはオリゴマーであってもよい。重合性官能基としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等のエチレン性不飽和二重結合を有する官能基、およびエポキシ基、オキセタン基等の環状エーテル基が挙げられる。
【0036】
コーティング液に使用される硬化性樹脂の具体例として、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ポリオールアクリレート系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。光硬化性樹脂として、WO2018/096729号、WO2014/204010号、特開2017-8142号公報等に開示されている、光重合性官能基としてエポキシ基を有するポリシロキサン樹脂を用いてもよい。
【0037】
硬化剤が熱重合開始剤である場合、当該熱硬化開始剤との組み合わせにより、硬化性樹脂は熱硬化性樹脂となる。また、硬化剤が光重合開始剤である場合、当該光重合開始剤との組み合わせにより、硬化性樹脂は光硬化性樹脂となる。
【0038】
光重合開始剤としては、硬化性樹脂の重合性に応じて、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤(光酸発生剤)等を用いればよい。光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α-アミノキシムエステル、チオキサントン類、プロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、アシルホスフィンオキシド類が挙げられる。光カチオン重合開始剤としては、トルエンスルホン酸または四フッ化ホウ素等の強酸;スルホニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、セレニウム塩等のオニウム塩類;鉄-アレン錯体類;シラノール-金属キレート錯体類;ジスルホン類、ジスルホニルジアゾメタン類、ジスルホニルメタン類、スルホニルベンゾイルメタン類、イミドスルホネート類、ベンゾインスルホネート類等のスルホン酸誘導体;有機ハロゲン化合物類等が挙げられる。
【0039】
光重合開始剤の含有量は、硬化性樹脂100重量部に対して、0.05~10重量部程度であり、0.1~5重量部、または0.2~2重量部であってもよい。
【0040】
光重合開始剤以外に、感光性の向上等を目的として光増感剤を含んでいてもよい。光増感剤としては、アントラセン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、アントラキノン誘導体、ベンゾイン誘導体等が挙げられる。中でも、光誘起電子供与性の観点から、アントラセン誘導体、チオキサントン誘導体、およびベンゾフェノン誘導体が好ましい。
【0041】
コーティング液には、微粒子、着色剤、可塑剤、分散剤、湿潤剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤、難燃剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤等の添加剤を含んでいてもよい。また、ハードコート組成物は、上記の光硬化性樹脂に加えて、熱可塑性または熱硬化性の樹脂材料を含んでいてもよい。
【0042】
コーティング液には、無溶媒型でもよく、溶媒を含んでいてもよい。溶媒は、フィルム基材を溶解させないものが好ましい。一方、ポリイミドフィルムを膨潤させる程度の溶解性を有する溶媒を用いることにより、基材のフィルムとコーティング層との密着性が向上する場合がある。
【0043】
溶媒としては、アセトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル等のエステル類:ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル等のエーテル類;ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド類;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化アルキル類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類が挙げられる。
【0044】
溶剤は、コーティング液を100重量%とした場合、5~90重量%、好ましくは、10~85重量%の範囲で含まれていてよい。溶剤が5重量%未満の場合は、高粘度となることでコーティング膜表面のレベリング作用が低下し、コーティング不良が発生しやすくなる。また90重量%を超える場合は、コーティング膜の膜厚の調整が難しく、外観不良が生じるという不具合がある。
【0045】
(コーティング液の調製)
コーティング液の調製方法は特に限定されない。例えば、上記の各成分を配合し、ハンドミキサーやスタティックミキサー等による混合、プラネタリーミキサーやディスパー、ロール、ニーダー等による混練等を行ってもよい。
【0046】
コーティング液は、比較的低粘度のコーティング液を用いた場合のコーティング膜の外観欠陥解消に有効であることから、1cp~100cpの粘度を有することが好ましく、5cp~80cpの粘度がより好ましく10cp~70cpの粘度がさらに好ましい。
【0047】
(1-3.塗工方法)
塗工工程において用いられるコーティング液の塗工方法は、工業的に利用可能な公知の方法を用いることができ、特に限定されないが、例えば、ワイヤーバーコーター法、ロールコーター法、ダイコート法、スクリーン印刷法などの塗工方法を用いて、基材フィルム上にコーティング液を塗工することができる。これらの中でも、巾方向への均一塗工の点から、ダイコート法が好ましい。
【0048】
(1-4.コーティング膜5)
コーティング膜5は、基材フィルム1上にコーティング液を塗工部2により塗工して形成される。コーティング膜5は、20μm以上の膜厚を有することが好ましい。本実施形態に係る製造方法によれば、20μm以上の膜厚、すなわち比較的厚膜であるコーティング膜5を乾燥させてコーティング層6とした場合に、MDスジが低減し、外観欠陥が解消された積層フィルム製造することができる。コーティング膜5は、より好ましくは、30μm以上の膜厚であり、さらに好ましくは、40μm以上の膜厚である。表面処理工程における表面処理部3を通過できるようするため、基材フィルム1とコーティング膜5との合計膜厚が、500μm以下であることが好ましく、400μm以下がより好ましく、300μm以下がさらに好ましい。
【0049】
(2.表面処理工程)
表面処理工程は、表面処理部3でコーティング膜5の表面を処理する工程である。
図1において、表面処理工程は、塗工工程において形成された上層側のコーティング膜5(下層側:基材フィルム1)が、表面処理部3が備える回転体3aに接触して、ドライヤ4により乾燥する前までの工程である。
【0050】
(2-1.回転体)
表面処理部3は、溝を有する断面円形状の回転体3aを備える。
図2に示すように、回転体3aは、表面に凹凸溝3bを有し、回転体3aは、コーティング膜5に接触するように配置される。表面処理工程では、回転体3aは、基材フィルム1の搬送方向と逆方向に回転する。
【0051】
回転体3aの形状は、断面が円形状であれば、特に制限されないが、得られる積層フィルムの厚みムラの発生を低減するため、
図2に示すような円柱形状が好ましい。
【0052】
回転体3aが表面に有する凹凸溝3bは、基材フィルム1の搬送方向に対して傾斜した凹凸溝であることが好ましい。このように傾斜した凹凸溝を回転体3aが有することにより、得られる積層フィルムのMDスジの発生が低減され、外観欠陥の解消効果が高くなる。基材フィルム1の搬送方向を0°とした場合、回転体3aの凹凸溝3bの方向は、10°~45°傾斜していることが好ましい。換言すれば、
図4に示すように、基材フィルム1の搬送方向に対する凹凸溝3bの傾斜角度をθとすると、傾斜角度θは、基材フィルム1の搬送方向に対する凹凸溝3bの傾斜角度は、10°~45°であることが好ましい。さらには、傾斜角度θは、20°~40°がより好ましく、25°~35°がさらに好ましい。傾斜角度θを上記範囲とすることで、MDスジの発生をより一層低減することができ、外観欠陥の解消効果を向上させることができる。
【0053】
回転体3aの凹凸溝3bの単位断面積Aは、コーティング膜5の膜厚に対して小さいほど、外観欠陥の解消効果が高い。すなわち、回転体3aは、0.1w≦A≦1.5w(式中、w(mm)はコーティング膜5の膜厚であり、A(mm
2/mm)は、回転体3aの凹凸溝3bの単位断面積であり、A=A’/Pにより求め、A’(mm
2)は凹凸溝3bの断面積であり、P(mm)は溝ピッチである)となるように構成される(
図3を参照のこと)。
図3に示すとおり、A’は、溝ピッチ当たりの凹凸溝3bの断面積である。Aが0.1w以上であることにより、凹凸溝3bが閉塞することを防止し、回転体3aがコーティング液をせき止めてコーティング厚みを減少することなくMDスジの低減効果を得ることができる。Aが1.5w以下であることにより、凹凸溝3bの凸凹差を適度な大きさにできるため、回転によるMDスジの発生を低減できる。また、厚みムラが生じることも抑制できる。
【0054】
回転体3aは、0.1w≦A≦1.3wとなるように構成されることが好ましく、0.1w≦A≦1.0wとなるように構成されることがより好ましい。溝の断面積A’は、上記範囲を満たす限り、任意に設定可能であるが、0.0005mm2~0.1mm2が好ましく、0.001mm2~0.05mm2がより好ましい。さらに、溝ピッチPは、上記範囲を満たす限り、任意に設定可能であるが、0.1mm~1.0mmが好ましく、0.2mm~0.8mmがより好ましい。
【0055】
回転体3aの素材は、上記条件を満たすものであれば、特に限定されない。例えば、金属、樹脂、セッラミックが挙げられる。回転体の耐久性の観点から、回転体3aの素材は、好ましくは金属およびセラミックであり、より好ましくは、金属である。
【0056】
回転体3aが表面に有する凹凸溝3bの製造方法は、上記条件を満たす溝を作製できる限り、特に限定されない。溝の賦形方法としては、例えば、素材を回転させながら強い力を加えて素材を変形させて溝を作製する方法(転造)や、素材を削ることで溝を作製する方法、素材を成形した後クセづけして溝を作製する方法などが挙げられる。溝の寸法精度の点で、好ましくは転造である。
【0057】
回転体3aは、基材フィルム1の搬送方向と逆方向に回転する。回転体3aを搬送方向と順方向に回転させる、または無回転で用いると、回転体3aがコーティング液をせき止めてしまい、得られる積層フィルムの外観欠陥が悪化するか、コーティング膜5の膜厚が減少してしまう。
【0058】
基材フィルム1の搬送速度に対する回転体3aの回転速度比について、使用する回転体3aの凹凸溝3bの単位断面積Aに従った数値を制御することによって、回転体3a由来の外観不良発生を低減しつつ、高品質なコーティング膜5を得ることができる。例えば、回転体3aは、1≦Vr≦50A+1.3(式中、Vrは前記基材フィルム1の搬送速度に対する回転体3aの回転速度比であり、A(mm2/mm)は回転体の溝の単位断面積である)となるように回転させることが好ましい。Vrが1以上である場合、回転体3aの速度が基材フィルム1の搬送速度よりも速くなり、効果的にMDスジの発生を抑制し得る。また、Vrが50A+1.3以下であることにより、回転体3aの速度が適度に速くなり、回転体3aの凹凸溝3bがコーティング液で満たされて凹凸溝3bが閉塞しやすくなる状態を回避でき、MDスジ発生の低減効果を得ることができる。回転体3aの凹凸溝3bの単位断面積Aに応じて、Vrが上記範囲を満たすように、回転体3aの回転速度を調整することで、得られる積層フィルムのMDスジの発生が大きく低減され、段ムラ(搬送方向に対して垂直な方向に発生するムラ)等の他の外観欠陥も防止できるため、優れた外観欠陥の解消効果が得られる。
【0059】
(コーティング層6)
コーティング層6は、コーティング膜5をドライヤ等の乾燥手段により乾燥したものをいう。コーティング液を基材フィルム1に塗工した後は、乾燥手段を用いて、50℃~150℃の温度で10秒~1時間、より具体的には30秒~10分間、溶剤等の揮発物を蒸発乾燥させて、コーティング層6を形成する。その後、
図1に示すように、UV照射機で、UV光を照射してコーティング層6を硬化させる。UV光の照射量は、具体的に約50mJ/cm
2~10000mJ/cm
2であればよく、より具体的に100mJ/cm
2~5000mJ/cm
2であればよい。
【0060】
形成されるコーティング層6の膜厚は、優れたMDスジ低減効果を得ることができる点で、5μm以上が好ましく、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上である。
【0061】
(積層フィルム)
積層フィルムは、基材フィルム1上にコーティング層6が形成されたフィルムである。本発明の製造方法により得られる積層フィルムは、基材フィルム1上にコーティング層6が形成されていればよく、基材フィルム1の片面または両面にコーティング層6が形成された積層フィルムでもよい。基材フィルム1とコーティング層6の間に粘着層等の他の層が含まれてもよい。
【0062】
(積層フィルムの製造装置)
上述した本実施形態に係る積層フィルムの製造装置(以下、本製造装置を称する場合もある)10も本発明の一実施形態として含まれ得る。なお、本製造装置は、上述した製造方法の説明を適宜援用する。本製造装置10によれば、コーティング層6が形成された積層フィルムにおいて、MDスジの発生を低減し、外観を向上させることができる。
【0063】
本発明の一実施形態に係る積層フィルムは、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパーなどの各種の画像表示装置に用いることができる。
【実施例0064】
以下、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明する。これらの実施例および比較例は、単に本発明を説明するためのものであるに過ぎず、本発明の範囲がこれらに限定されないことは当業者にとって自明である。以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0065】
(1)ポリアミド酸溶液の調製
反応容器に、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を383重量部投入し、窒素雰囲気下で撹拌した。そこに、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンを31.8重量部、3,3’-ジアミノジフェニルスルホンを10.5重量部投入し、窒素雰囲気化で撹拌してジアミン溶液を得た。当該ジアミン溶液に、p-フェニレンビス(トリメリット酸無水物)を15.9重量部、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン酸無水物を37.4重量部、および3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を10.4重量部加え、窒素雰囲気下で撹拌してポリアミド酸溶液を得た。
【0066】
(2)イミド化およびポリイミド樹脂の抽出
(1)にて得られたポリアミド酸溶液(ポリアミド酸の固形分100重量部)に、イミド化触媒としてピリジン38.4重量部を添加し、撹拌した。その後、無水酢酸49.5重量部を添加し、120℃で2時間撹拌後、室温まで冷却してポリイミド溶液を得た。当該ポリイミド溶液を撹拌しながら、1Lのイソプロピルアルコールを滴下して、ポリイミド樹脂を析出させた。その後、濾別したポリイミド樹脂をイソプロピルアルコールで3回洗浄した後、120℃で12時間乾燥させてポリイミド樹脂の粉体を得た。
【0067】
(3)ポリイミドフィルム(基材フィルム)の作製
(2)にて得られたポリイミド樹脂を塩化メチレンに溶解し、固形分濃度10%のポリイミド溶液を得た。コンマコーターを用いて、ポリイミド溶液を基材上に塗布し、40℃で10分、80℃で10分、150℃で10分、180℃で10分の順番で、大気圧雰囲気下で乾燥した後、基材から剥離して、厚み50μmの透明ポリイミドフィルム(基材フィルム)を得た。
【0068】
(4)ハードコート組成物(コーティング液)の調製
反応容器に、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン100重量部、塩化マグネシウム0.12重量部、水11重量部およびプロピレングリコールモノメチルエーテル11重量部を仕込み、130℃で3時間攪拌後、60℃で減圧脱気してシロキサン樹脂を得た。そして、得られたシロキサン系樹脂100重量部、トリアリールスルホニウム・SbF6塩のプロピレンカーボネート溶液2重量部、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンのキシレン/イソブタノール溶液0.2重量部、およびプロピレングリコールモノメチルエーテル150重量部を配合し、ハードコート組成物を得た。このハードコート組成物の粘度は、30cpであった。
【0069】
(回転体の作製)
表面処理工程で用いる回転体を、表1に記載した条件となるように、転造用金型を用いてステンレス鋼に対して溝を賦形することで回転体A~DとFを作製した。回転体Eについては、表1に示す条件のワイヤー回転体(ワイヤーバー)を用いた。
【0070】
(実施例1)
上述のように製造した基材フィルムを、2m/分の搬送速度で、長手方向に連続搬送しながら、ダイを用いて、基材フィルム上に調製したコーティング液を塗工して、膜厚が0.05mmとなるようにコーティング膜を形成した(塗工工程)。
【0071】
コーティング膜が形成された基材フィルムを、表面処理部にて、セットした回転体Aとコーティング膜を接触させながら、連続搬送した(表面処理工程)。回転体Aは、基材フィルムの搬送方向と逆方向に回転させた。回転体Aの回転速度は、表1に示すとおり、速度比Vr(基材フィルムの搬送速度に対する回転速度)=1となるように調整した。
【0072】
コーティング膜が形成された基材フィルムを、ドライヤにより乾燥させて、コーティング層が形成された基材フィルムを得た。次に、UV照射機(岩崎電気株式会社製、H03M-L21を用いて、1000mJ~2000mJ/cm2のUV光を照射して、連続搬送されている基材フィルムに形成されたコーティング層を硬化させて、積層フィルムを得た。積層フィルムの外観を下記評価方法により評価した。結果を表1に示す。
【0073】
(実施例2~16)
表1に示すように、凹凸溝の単位断面積Aおよび凹凸溝の傾斜角度を変えた回転体A~Dを用いて、表1に記載された速度比Vrとなるように回転体の回転速度を調整し、基材フィルムの搬送方向に対して逆方向に回転させた他は、実施例1と同様の製造方法により、積層フィルムを得た。積層フィルムの外観を下記評価方法により評価した。結果を表1に示す。
【0074】
(比較例1~4)
実施例13~16で用いた回転体Dを用いて、表1に記載された速度比Vrとなるように回転体の回転速度を調整し、回転体の回転方向を表2に示す回転方向(基材フィルムの搬送方向に対して順方向または無回転)とした他は、実施例1と同様の製造方法により、積層フィルムを得た。積層フィルムの外観を下記評価方法により評価した。結果を表2に示す。
【0075】
(比較例5~11)
回転体について、表2に示すように、凹凸溝の単位断面積A、凹凸溝の傾斜角度を変えた回転体E(ワイヤー回転体)とFを使用し、表1に記載された速度比Vrとなるように回転体の回転速度を調整し、回転体の配転方向を基材フィルムの搬送方向に対して順方向とした他は、実施例1と同様の製造方法により、積層フィルムを得た。積層フィルムの外観を下記評価方法により評価した。結果を表2に示す。
【0076】
(積層フィルムの外観評価方法)
暗室内で、白色スクリーンから140cm離れた位置に、外観検査照明(日本技術センター製「S-light SA」)を配置し、照明および白色スクリーンから等距離(それぞれからの距離が70cm)の位置に、ハードコートフィルムを配置した。照明からの光をハードコートフィルムに照射して、その投影光を白色スクリーンに映し、搬送方向に延在するスジ状の影(スジ)、および幅方向に延在する段状のムラ(段ムラ)の有無を確認した。積層フィルムの外観を以下の基準で、目視にて評価した。
【0077】
<外観評価基準>
1:MDスジはなく、他の外観欠陥もない
2:MDスジはあるが、とても薄いかまたは数が少なく、他の外観欠陥がない
3:MDスジはあるが、薄く、他の外観欠陥がほとんどない
4:濃いMDスジがある、および/または多くの他の外観欠陥がある、および/またはコーティング膜の膜厚が減少する
【0078】
【0079】
【0080】
実施例1~16により、本発明に係る製造方法により得られた積層フィルムは、MDスジの発生が低減され、他の外観欠陥も低減された結果、優れた外観欠陥解消効果が得られた。特に、実施例1,2,5,6,9,10,11,13~16は、得られた積層フィルムのMDスジの発生が大きく低減され、段ムラ(搬送方向に対して垂直な方向に発生するムラ)等の他の外観欠陥も防止できたため、優れた外観欠陥の解消効果が得られることがわかった。特に、実施例6および実施例11では、MDスジが全く発生することなく、他の外観欠陥もない極めて優れた外観を有する積層フィルムが得られた。
これに対し、Aが小さくて順回転で回転体を用いた比較例1と、Aが小さくて無回転で回転体を用いた比較例2で得られた積層フィルムは、外観状態は比較的良好であったが、コーティング膜の膜厚が大きく減少して0.004mmとなり、所望の膜厚(0.05mm)が得られなかった。比較例3~11の製造方法で得られた積層フィルムは、MDスジの発生が低減できず、他の外観欠陥が生じた。
【0081】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明の一実施形態は、外観および透明性に優れる、積層体フィルムを提供することができる。そのため、本発明の一実施形態によって得られた積層フィルムは、ガラス代替フィルムとして、例えば、パソコン、スマートフォンおよびタブレット等の前面板、自動車等の窓ガラス等に好適に使用できる。