IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カネカの特許一覧

特開2023-65201トラックあおり板用のパネルの製造方法、およびその利用
<>
  • 特開-トラックあおり板用のパネルの製造方法、およびその利用 図1
  • 特開-トラックあおり板用のパネルの製造方法、およびその利用 図2
  • 特開-トラックあおり板用のパネルの製造方法、およびその利用 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065201
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】トラックあおり板用のパネルの製造方法、およびその利用
(51)【国際特許分類】
   B62D 33/023 20060101AFI20230502BHJP
   C08J 9/18 20060101ALI20230502BHJP
   B62D 33/02 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
B62D33/023 E
C08J9/18 CET
B62D33/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175865
(22)【出願日】2021-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】木村 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】田村 充宏
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA33A
4F074AB04
4F074BA38
4F074CA34
4F074CA38
4F074CA49
4F074DA35
(57)【要約】
【課題】発泡体を備えたあおり板を、より簡便に製造する。
【解決手段】本発明のトラックあおり板用のパネルの製造方法は、中空形材(1)の内部に熱可塑性樹脂予備発泡粒子(2a’)を充填する充填工程と、中空形材(1)を100℃~130℃の条件で加熱して、平均充填率が40%以上90%未満であり、かつ融着率が1%~70%となるように、中空形材(1)に充填された熱可塑性樹脂予備発泡粒子(2a’)を発泡させる発泡工程と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム製の中空形材と、当該中空形材に充填される発泡体と、を備えた、トラックあおり板用のパネルの製造方法であって、
前記中空形材の内部に、発泡性熱可塑性樹脂粒子を発泡させた熱可塑性樹脂予備発泡粒子を充填する充填工程と、
前記中空形材を100℃~130℃の条件で加熱して、平均充填率が40%以上90%未満であり、かつ融着率が1%~70%となるように、前記中空形材に充填された前記熱可塑性樹脂予備発泡粒子を発泡させる発泡工程と、を含む、トラックあおり板用のパネルの製造方法。
【請求項2】
アルミニウム製の中空形材と、
前記中空形材に充填される発泡体と、を備え、
前記発泡体は、熱可塑性樹脂予備発泡粒子を発泡したものであり、
前記発泡体は、平均充填率が40%以上90%未満であり、かつ融着率が1%~70%である、トラックあおり板用のパネル。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂予備発泡粒子を構成する基材樹脂は、ガラス転移温度が85℃~100℃である、請求項2に記載のトラックあおり板用のパネル。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂予備発泡粒子を構成する基材樹脂は、ポリスチレン系樹脂である、請求項2または3に記載のトラックあおり板用のパネル。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂予備発泡粒子を構成する基材樹脂は、スチレン系単量体に由来する構成単位と、アクリル酸エステル系単量体に由来する構成単位とを含む、請求項2~4の何れか1項に記載のトラックあおり板用のパネル。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂予備発泡粒子は、発泡性熱可塑性樹脂粒子を発泡させたものであり、
前記発泡性熱可塑性樹脂粒子は、基材樹脂と発泡剤とを含み、
前記基材樹脂は、90重量%~99重量%のスチレン系単量体に由来する構成単位と、1重量%~10重量%のアクリル酸エステル系単量体に由来する構成単位と、を含み(なお、スチレン系単量体に由来する構成単位およびアクリル酸エステル系単量体に由来する構成単位の合計量を100重量%とする)、
前記発泡剤は、ノルマルブタンおよびイソブタンを含むブタン組成物であり、ブタン組成物のブタン成分の総量を100重量%としたとき、イソブタンの比率が35重量%~70重量%であり、
前記ブタン組成物は、前記発泡性熱可塑性樹脂粒子に対して、3.0重量%~8.0重量%含む、請求項2~5の何れか1項に記載のトラックあおり板用のパネル。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂予備発泡粒子を構成する基材樹脂は、アクリル酸エステル系単量体に由来する構成単位を含み、
前記アクリル酸エステル系単量体は、アクリル酸ブチルである、請求項2~6の何れか1項に記載のトラックあおり板用のパネル。
【請求項8】
請求項2~7の何れか1項に記載のトラックあおり板用のパネルが複数連結してなる、トラックあおり板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラックあおり板用のパネルの製造方法、およびその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
トラック等の貨物自動車には、荷台が設けられており、荷台の床枠には、あおり丁番によってあおり板が回動自在に附設されている。
【0003】
あおり板本体であるパネルの断熱性を付与する観点から、例えば特許文献1には、一対のアルミニウム製の板の間に断熱材を発泡充填した断熱性サンドイッチパネル製のあおり本体を備えたあおり板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平1-83681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術には、あおり板の製造工程の面で改善の余地があった。
【0006】
本発明の一態様は、発泡体を備えたあおり板を、より簡便に製造し得るトラックあおり板用のパネルの製造方法、およびその利用を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るトラックあおり板用のパネルの製造方法は、アルミニウム製の中空形材と、当該中空形材に充填される発泡体と、を備えた、トラックあおり板用のパネルの製造方法であって、前記中空形材の内部に、発泡性熱可塑性樹脂粒子を発泡させた熱可塑性樹脂予備発泡粒子を充填する充填工程と、前記中空形材を100℃~130℃の条件で加熱して、平均充填率が40%以上90%未満であり、かつ融着率が1%~70%となるように、前記中空形材に充填された前記熱可塑性樹脂予備発泡粒子を発泡させる発泡工程と、を含む。
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るトラックあおり板用のパネルは、アルミニウム製の中空形材と、前記中空形材に充填される発泡体と、を備え、前記発泡体は、熱可塑性樹脂予備発泡粒子を発泡したものであり、前記発泡体は、平均充填率が40%以上90%未満であり、かつ融着率が1%~70%である。
【0009】
前記トラックあおり板用のパネルでは、前記熱可塑性樹脂予備発泡粒子を構成する基材樹脂は、ガラス転移温度が85℃~100℃であることが好ましい。
【0010】
前記トラックあおり板用のパネルでは、前記熱可塑性樹脂予備発泡粒子を構成する基材樹脂は、ポリスチレン系樹脂であることが好ましい。
【0011】
前記トラックあおり板用のパネルでは、前記熱可塑性樹脂予備発泡粒子を構成する基材樹脂は、スチレン系単量体に由来する構成単位と、アクリル酸エステル系単量体に由来する構成単位とを含むことが好ましい。
【0012】
前記トラックあおり板用のパネルでは、前記熱可塑性樹脂予備発泡粒子は、発泡性熱可塑性樹脂粒子を発泡させたものであり、前記発泡性熱可塑性樹脂粒子は、基材樹脂と発泡剤とを含み、前記基材樹脂は、90重量%~99重量%のスチレン系単量体に由来する構成単位と、1重量%~10重量%のアクリル酸エステル系単量体に由来する構成単位と、を含み(なお、スチレン系単量体に由来する構成単位およびアクリル酸エステル系単量体に由来する構成単位の合計量を100重量%とする)、前記発泡剤は、ノルマルブタンおよびイソブタンを含むブタン組成物であり、ブタン組成物のブタン成分の総量を100重量%としたとき、イソブタンの比率が35重量%~70重量%であり、前記ブタン組成物は、前記発泡性熱可塑性樹脂粒子に対して、3.0重量%~8.0重量%含むことが好ましい。
【0013】
前記トラックあおり板用のパネルでは、前記熱可塑性樹脂予備発泡粒子を構成する基材樹脂は、アクリル酸エステル系単量体に由来する構成単位を含み、前記アクリル酸エステル系単量体は、アクリル酸ブチルであることが好ましい。
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るトラックあおり板は、上述のトラックあおり板用のパネルが複数連結してなる構成である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、発泡体を備えたあおり板を、より簡便に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る本トラックあおり板用のパネルの概略構成を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るトラックあおり板の本体の構成を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係るトラックあおり板の概略構成を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。さらに、各図面は、以下の説明と併せて参照したときに分かり易いように示したものであり、必ずしも一定の比率の縮尺で描かれていない。
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。図1は、本実施形態に係るトラックあおり板用のパネル10の概略構成を示す斜視図である。
【0019】
〔トラックあおり板用のパネルの構成〕
図1に示されるように、本実施形態に係るトラックあおり板用のパネル10は、アルミニウム製の中空形材1と、発泡体2と、エンドポスト3と、を備えている。発泡体2は、中空形材1に充填されている。
【0020】
パネル本体である中空形材1は、矩形板状であり、発泡体2が充填される中空部を内部に有する。また、中空形材1の側面には、開口部1aが設けられている。そして、中空形材1において、開口部1aが設けられた側面と連結する一対の側面には、レール部1bが設けられている。ここで、中空形材1において、開口部1a側を前側とし、開口部1aと反対側を後側とする。また、上記のように規定した前後方向および中空形材1の厚さ方向の両方に垂直な方向を上下方向とする。レール部1bは、中空形材1において、上下方向で対向する2つの側面に設けられているといえる。レール部1bは、前後方向に延びる凹溝である。
【0021】
発泡体2は、複数の加熱発泡した発泡粒子2aが互いに融着した構成となっている。発泡粒子2aは、熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’が中空形材1内で加熱発泡したものである。パネル10を製造するに際し、熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’は、開口部1aから中空形材1の内部に充填される。そして、熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’は、中空形材1内で加熱発泡されて発泡体2となる。発泡体2は、平均充填率が40%以上90%未満であり、かつ融着率が1%~70%である。
【0022】
エンドポスト3は、厚さ方向および前後方向に平行な面で切断した断面形状がU字状(以下、断面U字状と称する場合がある)である。エンドポスト3は、中空形材1の開口部1aを閉塞する閉塞部材であり、開口部1aに嵌着する。図示されていないが、エンドポスト3は、断面U字状部分の内面の角隅部に、上下方向に伸びる溝条部を有する。そして、この溝条部にはシール材が装着されている。また、上記溝条部のサイズは、中空形材1の大きさに応じて決定される。ここで、上記シール材としては、固形状のパッキン、柔軟性を保持し得るペースト状物等が挙げられる。このように上記溝条部に上記シール材が装着されていることによって、中空形材1とエンドポスト3との間に雨水が浸入するのを防止できる。なお、エンドポスト3は、上記構成に限定されず、中空形材1の開口部1aを閉塞できるものであればよい。
【0023】
トラックの貨物室がアルミニウム製の板部材のみから構成されている場合、断熱性に乏しく、貨物室内の温度が上昇しやすくなり、積載商品の温度管理に影響があった。このため、貨物室内の温度上昇を抑えるべく、トラックの貨物室は、上記板部材の内側に保冷断熱材が貼着される構造となる。そして、保冷断熱材のスペース分だけ、貨物室のスペースを利用することができなかった。本実施形態に係るパネル10の構成によれば、断熱構造として、中空形材1の中空部に発泡体2が充填される構成を採用しているので、中空形材1の内側に保冷断熱材を貼着することなく、貨物室のスペースを有効利用できる。
【0024】
〔トラックあおり板用のパネルの製造方法〕
パネル10の製造方法の一例について説明する。本実施形態に係るパネル10の製造方法(以下、本製造方法と称する場合がある)は、アルミニウム製の中空形材1と、当該中空形材1に充填される発泡体2と、を備えた、トラックあおり板用のパネル10の製造方法である。
【0025】
本製造方法は、パネル本体である中空形材1の中空部に熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’を充填した後、熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’を二次発泡(加熱発泡)させて、加熱発泡した発泡粒子2aからなる断熱性の発泡体2を中空形材1内に形成することに特徴がある。本製造方法は、充填工程と、発泡工程と、を含む。上記充填工程では、中空形材1の内部に熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’を充填する。熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’は、発泡性熱可塑性樹脂粒子を発泡させたものである。また、上記発泡工程では、中空形材1を100℃~130℃の条件で加熱して、平均充填率が40%以上90%未満であり、かつ融着率が1%~70%となるように、中空形材1に充填された熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’を発泡させる。ここでいう、発泡性熱可塑性樹脂粒子は、熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’に予備発泡する前の、発泡剤を含有する熱可塑性樹脂粒子をいう。熱可塑性樹脂粒子に発泡剤が含有する形態は、予備発泡可能であれば、特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂粒子に発泡剤が含侵した形態が好ましい。
【0026】
より具体的には、上記充填工程では、中空形材1の開口部1aから中空部に、実質的に無加圧条件下で最大充填率まで熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’を充填する。そして、その後、中空形材1から熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’が漏れ出ないように、閉止部材により中空形材1の開口部1aを封止する。
【0027】
上記発泡工程では、中空形材1を100℃~130℃の条件で加熱して、中空形材1内に充填された熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’を二次発泡させる。上記発泡工程での加熱条件であれば、熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’は二次発泡する。上記発泡工程での加熱温度は、好ましくは、105℃~125℃、より好ましくは110℃~120℃である。また、熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’の過加熱による収縮を回避する観点で、熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’の加熱時間は、60分未満であることが好ましく、50分未満であることがより好ましい。さらに、異常なく熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’を二次発泡させる観点では、熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’の加熱時間は、10分以上であることが好ましく、15分以上であることがより好ましい。
【0028】
本製造方法によれば、上記充填工程にて中空形材1に熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’を充填し、さらに上記発泡工程にて加熱により中空形材1内に充填された熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’を発泡させ発泡体2とすることにより、パネル10が完成する。すなわち、基本的には、上記充填工程および上記発泡工程という2工程によってパネル10を製造することができる。
【0029】
さらに、本製造方法によれば、上記発泡工程での加熱温度が100℃~130℃であり、比較的低温である。それゆえ、130℃を超える高温で中空形材1を加熱しなくても発泡体2を得ることができる。このため、発泡工程での加熱に、特別な高温加熱装置を使用する必要がなく、一般的な乾燥機または加熱炉(オーブン)による加熱でも発泡体2を製造することが可能である。
【0030】
したがって、本製造方法によれば、従来技術と比較して、発泡体2を備えたあおり板を、より簡便に製造することができる。
【0031】
〔平均充填率〕
上記パネル10は、熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’の二次発泡体である発泡体2が中空形材1の中空部に充填された構成となっている。パネル10では、発泡体2の平均充填率が40%以上90%未満、好ましくは50%~90%、より好ましくは60%~90%となる。
【0032】
ここで、上記平均充填率は、次の方法によって測定された数値である。中空形材1の中空部に充填された発泡体2の任意の部分から、20mm角の立方体を切り出し水中に沈め、発泡体2を構成する発泡粒子2a間の空隙にある空気を十分追い出す。その後、空気を排除した発泡体2の体積V(mm)を求め、以下の式を用いて充填率を算出する。
充填率(%)=V/(20) × 100
なお、発泡体2の任意の3箇所から切り出した部分それぞれについて、充填率を算出し、算出された3か所での充填率の平均値を平均充填率(%)とする。
【0033】
〔融着率〕
パネル10では、発泡体2の融着率が1%~70%、好ましくは5%~50%、より好ましくは10%~50%とである。
【0034】
ここで、上記融着率は、次の方法によって測定された数値である。発泡体2の表面にナイフで約5mmの深さのクラックを入れた後、このクラックに沿って発泡体2を割る。そして、発泡体2を割った破断面を観察し、発泡粒子2aの全個数に対する発泡粒子2a自体が破壊した粒子数の割合を以下の式を用いて求めることにより、(粒子間)融着率Yを算出した。
【0035】
Y=〔(N1)/(N1+N2)〕×100
N1:発泡体2の破断面に露出した50個の発泡粒子2aについて、発泡粒子2a内部まで破壊している粒子数
N2:発泡粒子2a内部が破壊されず発泡粒子表面が露出している粒子数
Y :発泡体2の粒子間融着率(%)。
【0036】
一般に、発泡体2の融着率が70%を下回ると、発泡成形体として不良品であるという評価がなされていた。しかし、本実施形態に係るパネル10では、発泡体2は、所定の充填率を有し、中空形材1の中空部にて断熱材として機能するだけでよい。すなわち、発泡体2は、一般的な発泡成形体としての評価と異なり、発泡体2を構成する発泡粒子2aが適度な融着率を有し、かつ中空形材1内にて加熱発泡した発泡粒子2aが崩壊することなく所定の形状を成していれば十分である。このため、発泡体2の融着率は、1%~70%であればよい。
【0037】
本発明者らが融着率1%~70%の発泡体2の物性強度を測定すると、発泡体2は、比較的融着率が低いにも関わらず、省エネルギー性(後述)および断熱性において、十分な物性を有する。さらには、発泡体2は、省エネルギー性および断熱性に加え、中空形材1から取り出すことが可能である。それゆえ、パネル10は、発泡体2をリサイクルできる点で優れた効果がある。これにより、持続可能な開発目標(SDGs)の目標12の達成に貢献できる。
【0038】
〔トラックあおり板〕
本実施形態に係るトラックあおり板について、図2および図3を参照して説明する。図2は、本実施形態に係るトラックあおり板の本体である、あおり板本体20の構成を示す斜視図である。図3は、本実施形態に係るトラックあおり板30の概略構成を示す分解斜視図である。
【0039】
図2に示すように、あおり板本体20は、図1に示すパネル10が前後方向に複数連結した構成となっている。あおり板本体20においては、個々の中空形材1のレール部1bが互いに連結するように、パネル10が前後方向に連結している。なお、図2に示される構成では、パネル10は3つ連結しているが、あおり板本体20におけるパネル10の数は、あおり板本体20の寸法に応じて適宜設定可能である。
【0040】
また、図3に示すように、本実施形態に係るトラックあおり板30は、あおり板本体20と、連結具4と、を備えている。連結具4は、レール部1bを構成する凹溝の幅以下の径を有する長尺の棒状部材である。連結具4の長さは、パネル10の連結体(あおり板本体20)の前後方向の寸法以上である。トラックあおり板30において、連結具4は、あおり板本体20の上側および下側の両側に配置されている。レール部1bは、連結具4に装着可能な構造である。トラックあおり板30は、レール部1bが連結具4に装着することにより、パネル10同士の連結状態が維持される構成となっている。
【0041】
なお、トラックあおり板30では、エンドポスト3は、パネル10の連結体において、最も前側に配されたパネル10の中空形材1の開口部1a及び後ろ側に配されたパネル10の中空形材1の開口部1a’それぞれに装着される。
【0042】
図3に示されるトラックあおり板30は、連結具4によりパネル10が複数連結した構成であった。しかし、本実施形態に係るトラックあおり板30は、図3に示す構成に限定されず、パネル10が複数連結可能な構成であればよい。例えば、トラックあおり板30は、複数のパネル10において、前後方向で隣り合う中空形材1の端部が相互に嵌合する構成であってもよい。
【0043】
〔発泡体2(以下、単に発泡体または2次発泡成形体を称する場合がある)〕
中空形材1の中空部に充填される発泡体2は、熱可塑性樹脂からなる複数の発泡粒子2aが互いに融着して構成されている。発泡粒子2aは、熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’を二次発泡(加熱発泡)したものである。
【0044】
上記二次発泡に使用される熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’は、熱可塑性樹脂粒子に発泡剤を含侵させた発泡性熱可塑性樹脂粒子を、水蒸気を用いて80℃~105℃程度で加熱する(以下、この操作を「予備発泡」と称することがある)ことにより得られる。熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’の平均粒径は、0.5mm~1.4mmであることが望ましい。この平均粒径の範囲であれば、中空形材1への熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’の充填性が良好であり、かつ加熱による熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’の均一発泡性に富む。その結果、加熱発泡した発泡粒子2a同士の融着性が良好になる。
【0045】
ここで、発泡粒子2a同士の良好な融着性を得るためには、熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’を中空形材1の中空部に充填した状態で加熱発泡し、次の(i)の必要性とともに(ii)の必要性がある。(i)乾燥機、オーブン等の比較的簡易な乾燥炉または加熱炉等を用いて、比較的低い加熱温度で加熱発泡させる必要性がある。(ii)熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’の使用期間(ビーズライフ)を維持するに適した発泡性熱可塑性樹脂粒子を用意する必要がある。
【0046】
このため、熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’は、(i)および(ii)の必要性を満たせば、特に限定されないが、熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’を構成する基材樹脂(上記発泡性熱可塑性樹脂粒子を構成する基材樹脂ともいえる)は、ガラス転移温度(Tg)が85℃~100℃であることが好ましく、90℃~100℃であることがさらに好ましい。さらには、上記基材樹脂は、ポリスチレン系樹脂であることが好ましい。
【0047】
基材樹脂のガラス転移温度が100℃を超えると、加熱に必要な設備が大掛かりになるため、簡易な加熱炉または乾燥炉を用いた加熱では熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’を中空形材1内で加熱発泡するには不十分となる傾向にある。一方で、トラック等の貨物自動車の荷台を構成する部材としての耐熱性を確保するためには、ガラス転移温度は85℃以上であることが好ましい。
【0048】
なお、熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’を構成する基材樹脂のガラス転移温度は以下の方法で求めることができる。具体的には、150メッシュの金網袋中に熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’のサンプル1.0gを入れる。次に、丸型フラスコ200mlにキシレン約200mlを入れ、ソックスレー抽出管に上記金網袋に入れたサンプルをセットする。マントルヒーターで8時間加熱し、ソックスレー抽出を行う。
【0049】
次いで、抽出したキシレン溶液をアセトン600mlへ投下し、デカンテーション、減圧蒸発乾固を行い、アセトン可溶分として熱可塑性樹脂(例えばスチレン系樹脂)を得る。得られた熱可塑性樹脂2~4mgについて、JIS K7121(1987年)に基づいて熱流束示差走査熱量測定を行う。そして、加熱速度10℃/分の条件で得られるDSC曲線の中間点ガラス転移温度を、ガラス転移温度(Tg)とすることができる。測定装置としては、ティ・エイ・インスツルメント社製の2010型DSC測定器などを用いることができる。
【0050】
また、熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’を構成する基材樹脂は、アクリル酸エステル共重合体からなるポリスチレン系樹脂であることが好ましい。当該ポリスチレン系樹脂は、スチレン系単量体とアクリル酸エステル単量体との共重合体である。すなわち、熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’を構成する基材樹脂は、構成単位として、スチレン系単量体に由来する構成単位と、アクリル酸エステル系単量体に由来する構成単位と、を含む。
【0051】
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、パラメチルスチレン、t-ブチルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン系誘導体が挙げられる。これらスチレン系単量体は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0052】
また、アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸アルキルエステルが挙げられる。これらアクリル酸エステル系単量体は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうちでも、スチレン系単量体と共重合し易く、成形性が良い点から、アクリル酸ブチルが好ましい。
【0053】
また、熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’を構成する基材樹脂は、90重量%~99重量%のスチレン系単量体に由来する構成単位と、1重量%~10重量%のアクリル酸エステル系単量体に由来する構成単位と、を含む(なお、スチレン系単量体に由来する構成単位およびアクリル酸エステル系単量体に由来する構成単位の合計量を100重量%とする)ことが好ましい。より好ましくは、スチレン系単量体に由来する構成単位は、94重量%~96重量%であり、アクリル酸エステル系単量体に由来する構成単位は、4重量%~6重量%である。
【0054】
上記基材樹脂において、アクリル酸エステル系単量体が10重量%超となると、特に高発泡化させた際に、発泡体2の収縮が起こりやすくなり、発泡体2の外観の見栄えが悪化する傾向がある。また、アクリル酸エステル系単量体が1重量%未満となると、低温での発泡が困難となる(目的とする発泡倍率の発泡粒子2aを得るために必要な加熱温度、および融着性に優れる発泡体2を得るのに必要な成形温度が高くなる)傾向がある。
【0055】
また、熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’に予備発泡する前の発泡性熱可塑性樹脂粒子中に含有される溶剤及び可塑剤の合計は、基材樹脂を100重量部とした場合に、0.1重量部未満である。なお、ここでいう溶剤は発泡剤と区別するため、沸点50℃以上のものをいう。
【0056】
上記溶剤としては、例えば、へキサン、ヘプタン等の炭素数が6以上の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロオクタン等の炭素数6以上の脂環族炭化水素、などが挙げられる。上記可塑剤としては、例えば、ジイソブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、グリセリントリステアレート、グリセリントリカプリレート、ヤシ油、パーム油、菜種油、などが挙げられる。これら溶剤及び可塑剤は、加熱において可塑効果により樹脂を軟化させ、更に気化膨張することで発泡成形に必要な内圧を保持する役割を有する。
【0057】
予備発泡及び加熱にて気化しない溶剤及び可塑剤についても、発泡体2の強度を低下させるか、あるいは、樹脂を軟化させ収縮の原因となるため、使用量を0.1重量%以下とすることが好ましい。
【0058】
また、上記発泡性熱可塑性樹脂粒子中に含有される未反応の単量体成分は、0.3重量%未満である。上記未反応の単量体成分は、中空形材1内で熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’を発泡して得られる2次発泡成形体(発泡体2)から揮発する傾向がある。特に上記未反応の単量体成分が0.3重量%以上である場合では、自動車や建築の部材向けには好ましくない。なお、上記未反応の単量体成分の量は、熱可塑性樹脂粒子を重合する際の開始剤の使用量と重合温度との組み合わせにより、制御することができる。
【0059】
また、上記発泡性熱可塑性樹脂粒子は、発泡剤を含む。発泡剤としては、特に限定されないが、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン等の脂肪族炭化水素、シクロブタン、シクロペンタン等の脂環族炭化水素、メチルクロライド、ジクロルジフルオロメタン、ジクロルテトラフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。これら発泡剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。これら発泡剤のうちでも、ブタンが、発泡力が良好である点から、必須である。
【0060】
また、発泡剤がブタンである場合、当該発泡剤は、ノルマルブタンおよびイソブタンを含むブタン組成物であることが好ましい。ブタン組成物のブタン成分の総量を100重量%としたとき、イソブタンの比率は、35重量%~70重量%が好ましく、より好ましくは、40重量%~60重量%である。イソブタンの比率が35重量%未満では、保管期間中にノルマルブタンが逸散しブタン成分の総量が減少することによって、発泡剤の使用期間が短くなる傾向がある。イソブタンの比率が70重量%超では、2次発泡成形体の粒子の間隙が埋まりにくくなり、表面美麗性を損なう傾向がある。
【0061】
上記ブタン組成物である発泡剤の含有量は、上記発泡性熱可塑性樹脂粒子を100重量%とした場合に、3.0重量%~8.0重量%であることが好ましく、4.0重量%~6.0重量%であることがより好ましい。発泡剤の含有量が3重量%未満では、予備発泡時間が長くなると共に、2次発泡成形時の融着率が低下する傾向があるので、製造コストが高くなり、経済的に不利である。発泡剤の含有量が8重量%を超えると、2次発泡成形体が収縮し、2次発泡成形体(発泡体2)の外観を損なう傾向がある。
【0062】
上記発泡性熱可塑性樹脂粒子の重量平均分子量Mwは、22万以上31万以下が好ましく、22万以上28万以下がより好ましい。重量平均分子量Mwが22万未満では、2次発泡成形体とした際の強度が低くなるばかりか、成形体の表面が溶融しやすく、外観を損なう傾向がある。また、重量平均分子量Mwが31万を超えると、発泡性熱可塑性樹脂粒子の発泡性が低くなり、成形性が悪化する(目的とする発泡倍率の発泡粒子2aを得るために必要な加熱温度、および融着性に優れる発泡体2を得るために必要な成形温度が高くなる)傾向がある。
【0063】
重量平均分子量Mwは、熱可塑性樹脂粒子を重合する際の開始剤の使用量および重合温度の組み合わせにより、制御することができる。例えば、開始剤の使用量を多くする、および/または、重合温度を高くすることにより、重量平均分子量Mwを低くすることができる。
【0064】
ここで、発泡性熱可塑性樹脂粒子が発泡性ポリスチレン系樹脂粒子である場合、重量平均分子量Mwは、ゲルパーミェーションクロマトグラフ(以下、「GPC」と略す場合がある)を用いて、以下の条件にて測定した値である。
【0065】
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に対して、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子0.02gをテトラヒドロフラン(以下、「THF」と略す場合がある)20mlに溶解させた後、ゲルパーミェーションクロマトグラフ(GPC)を用いて、以下の条件にてGPC測定を行い、GPC測定チャートおよび、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を得た。尚、得られた値はポリスチレン換算の相対値である。
測定装置:東ソー社製、高速GPC装置 HLC-8220
使用カラム:東ソー社製、SuperHZM-H×2本、SuperH-RC×2本
カラム温度:40℃、移動相:THF(テトラヒドロフラン)
流量:0.35ml/分、注入量:10μl
検出器:RI。
【0066】
また、発泡性熱可塑性樹脂粒子は、該発泡性熱可塑性樹脂粒子から得られる発泡体の切断面の気泡の平均弦長が70μm~120μmであることが好ましく、80μm~110μmであることがより好ましい。平均弦長が70μm未満では、発泡体を構成するセルの膜厚みが薄くなり、内部融着及び表面性が低下する傾向がある。平均弦長が120μm超では、破壊強度(例えば、JIS A9511の曲げ強度や箱状成形体底割強度など)の破断点変位が短くなり、脆い成形体となる傾向がある。
【0067】
発泡体の切断面の気泡の平均弦長は、造核剤量によって制御することができる。例えば、造核剤を多くすると平均弦長は小さくなり、造核剤を少なくすると平均弦長は大きくなる。
【0068】
上記造核剤としては、例えば、メタクリル酸メチル系共重合体、ポリエチレンワックス、タルク、脂肪酸ビスアマイド、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、等が挙げられる。脂肪酸ビスアマイドの具体的例としては、メチレンビスステアリルアマイド、エチレンビスステアリルアマイド、ヘキサメチレンビスパルミチン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイド等である。
【0069】
また、発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法は、従来公知の方法を採用することができ、例えば、水性媒体中にて懸濁重合法により得られる熱可塑性樹脂粒子に発泡剤を含浸する方法、水性媒体中にて塊状重合等により製造された熱可塑性樹脂ペレットに発泡剤を含浸する方法、押出機を用いて、熱可塑性樹脂と発泡剤とを溶融混練し、溶融樹脂を未発泡状態で押し出てペレット化する方法が挙げられる。
【0070】
熱可塑性樹脂粒子の重合に際し、添加可能な添加物として外添剤、難燃剤、難燃助剤、等を、本実施形態の効果を阻害しない範囲で使用してもよい。
【0071】
上記難燃剤および難燃助剤としては、公知慣用のものが使用できる。
【0072】
上記難燃剤の具体例としては、例えば、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモブタン、ヘキサブロモシクロヘキサン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系化合物、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールF、2,4,6-トリブロモフェノール等の臭素化フェノール類、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA-ジグリシジルエーテル、2,2-ビス[4'(2”,3”-ジブロモアルコキシ)-3',5'-ジブロモフェニル]-プロパン等の臭素化フェノール誘導体、臭素化スチレン・ブタジエンブロック共重合体、臭素化ランダムスチレン・ブタジエン共重合体、臭素化スチレン・ブタジエングラフと共重合体などの臭素化ブタジエン・ビニル芳香族炭化水素共重合体(例えば、Chemtura社製EMERALD3000、及び、特表2009-516019号公報に開示されている)などが挙げられる。これら難燃剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0073】
また、上記難燃助剤の具体例としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、2,3-ジメチルー2,3-ジフェニルブタン等の開始剤が挙げられる。
【0074】
また、上記外添剤及び添付剤としては、公知慣用のものが使用できる。
【0075】
上記外添剤及び添付剤の具体例としては、例えば、ラウリン酸トリグリセライド、ステアリン酸トリグリセライド、リノール酸トリグリセライドなどの脂肪酸トリグリセライド、ラウリン酸ジグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、リノール酸ジグリセライドなどの脂肪酸ジグリセライド、ラウリン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド、リノール酸モノグリセライドなどの脂肪酸モノグリセライド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンパルミテート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンオレエート等の非イオン界面活性剤などが挙げられる。これら外添剤及び添付剤は単独で用いても良いし、2種以上を混合しても良い。また、これら外添剤及び添付剤は、熱可塑性樹脂粒子に発泡剤を含浸するに際し、熱可塑性樹脂粒子を含む水系組成物に添加してもよいし、水系組成物の脱水後に若しくは乾燥後の粒子に添加し被覆してもよい。当該粒子への外添剤及び添付剤の添加・被覆方法は、特に限定されないが、好ましくは、乾燥後に外添剤及び添付剤を添加し、混合撹拌することにより被覆する方法である。
【0076】
熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’として、とりわけポリスチレン系樹脂予備発泡粒子は帯電しやすいため、静電気による着火の危険性がある。また、ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を中空形材1に充填する際に、ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子は、静電気により充填用機具などにまとわり付き、ハンドリング性(生産性)が悪くなる。そのため、得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面に帯電防止剤を塗布し、ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子の表面に帯電防止剤を存在させるのが望ましい。
【0077】
上記帯電防止剤としては、一般的に使用される、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシアルキル)アミン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)ドデシルアミン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)テトラデシルアミン等の1アミノ2ヒドロキシ化合物、グリセリン、脂肪酸モノグリセライド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどがあり、これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上併用しても良い。
【0078】
この中で、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシアルキル)アミンは、帯電防止性能が最も良好であるため、帯電防止剤として好ましい。特にステアリン酸マグネシウムを添加する場合においては、ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子が帯電し易くなるため、N-ヒドロキシエチル-N-(2-ヒドロキシアルキル)アミンを使用すれば帯電を防止できるようになる。
【0079】
帯電防止剤の塗布方法としては、攪拌機中で帯電防止剤とともに発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を攪拌する方法が好ましい。また、攪拌機としては、ナウターミキサー、スーパーミキサー、ユニバーサルミキサー、タンブラーミキサー、レディゲミキサーなどが用いられる。
【0080】
また、発泡性熱可塑性樹脂粒子の更なる流動性改善のため、発泡性熱可塑性樹脂粒子に流動促進剤を添加することができる。流動促進剤の添加方法としては、攪拌機中にて流動促進剤および帯電防止剤とともに発泡性熱可塑性樹脂粒子を攪拌することが好ましい。また、攪拌機としては、ナウターミキサー、スーパーミキサー、ユニバーサルミキサー、タンブラーミキサー、レディゲミキサーなどが用いられる。
【0081】
前記流動促進剤としては、特に限定されないが、ステアリン酸亜鉛を用いることができる。発泡性熱可塑性樹脂粒子に対するステアリン酸亜鉛の添加量は、発泡性熱可塑性樹脂粒子100重量部に対して、0.5重量部~1.2重量部が好ましい。ステアリン酸亜鉛の添加量が0.5重量部未満であると、発泡性熱可塑性樹脂粒子の流動性が十分ではなく、2次発泡操作時に発泡性熱可塑性樹脂粒子同士の結合が起こりやすい。また、ステアリン酸亜鉛の添加量が1.2重量部を超えると、発泡性熱可塑性樹脂粒子上に残るステアリン酸亜鉛が1.0重量部を超える。このため、空気輸送中にステアリン酸亜鉛が発泡性熱可塑性樹脂粒子から剥離しやすくなり、配管の閉塞の原因となる。
【0082】
その他の流動促進剤として、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩をステアリン酸亜鉛と併用してもよい。
【0083】
(予備発泡)
本製造方法で使用される熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’は、発泡性熱可塑性樹脂粒子を予備発泡することにより得られる。得られた熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’は、中空形材1に充填され、加熱炉、乾燥機等により加熱発泡され、2次発泡体として発泡体2となる。
【0084】
発泡性熱可塑性樹脂粒子の予備発泡方法としては、例えば、円筒形の予備発泡装置を用いて、蒸気等で加熱して発泡させる等の、通常の方法を採用することができる。
【0085】
予備発泡時の発泡温度(缶内温度)は、吹き込み蒸気圧及びエアー量により適宜調整されるものであるが、通常101~105℃程度である。本製造方法に使用される熱可塑性樹脂予備発泡粒子の製造においては、予備発泡時の発泡温度が100℃以下の温度、例えば97~100℃程度の低温度であっても、予備発泡が可能となる。
【0086】
熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’を中空形材1内で加熱発泡成形させる方法としては、例えば、中空形材1内に熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’を充填し、蒸気等を吹き込んで加熱することにより発泡体2を得るという、いわゆる型内発泡成形法といった通常の方法を採用することができる。
【0087】
本製造方法においては、例えば、次の手順で発泡体2を得ている。まず、中空形材1の中空部に熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’を充填する(充填工程)。そして、オーブン、乾燥炉等の加熱装置を用いて、熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’が充填された中空形材1に熱風を送風し加熱することにより、熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’を加熱発泡(2次発泡)する(発泡工程)。これらの工程により、中空形材1の中空部を充填してなる断熱用の発泡体2を得ることができる。
【0088】
本製造方法においては、発泡工程での加工温度(2次発泡のための加熱温度)が100℃~130℃という低温であっても、熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’の発泡成形が可能となる。このため、本製造方法によれば、より省エネルギーで、かつ簡易な方法であおり板用の断熱発泡体を得ることができる。
【0089】
(あおり板用のパネルの製造システムについて)
本実施形態において、あおり板用のパネルの製造システム(以下、本製造システムと称する場合がある)は、本製造方法を実行可能なシステムをいう。本製造システムは、本製造方法を実行可能な装置構成であれば、特に限定されない。本製造システムは、熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’と、当該熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’を充填可能な中空形材と、当該中空形材を100℃~130℃の条件で加熱する加熱装置と、を備え、平均充填率が40%以上90%未満であり、かつ融着率が1%~70%となるように、上記中空形材に充填された上記熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’を発泡させるシステムである。
【0090】
本製造システムによれば、上記熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’が充填された中空形材を一般的なオーブンに入れて100℃~130℃の条件で加熱することによって、簡便に断熱用発泡体を製造できる。すなわち、熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’が充填された中空形材を高温に加熱しなくとも、ガラス転移温度が比較的低い基材樹脂からなる熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’を使用して低温で2次発泡している。このため、上記加熱装置は、特別な高温加熱装置がなくても、一般的なオーブンがあればよい。
【0091】
本製造システムの一例として、例えば、トラックあおり板用のパネルメーカーが他社より上記熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’を購入して、当該熱可塑性樹脂予備発泡粒子2a’を中空形材に充填してトラックあおり板用のパネルを製造するシステムが挙げられる。当該製造システムでは、上記加熱装置は、100℃~130℃の条件で中空形材を加熱可能な装置あればよいので、上記パネルメーカーが所有する加熱装置(一般的なオーブンなど)を用いて、トラックあおり板用のパネルを簡便に製造できる。
【0092】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0093】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明の一実施形態を更に詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0094】
実施例および比較例において、各種の評価方法に用いられた試験法および判定基準は次の通りである。
【0095】
<中空形材に充填された2次発泡体における発泡粒子の平均充填率>
発泡粒子の平均充填率は、中空形材の中空部に充填された二次発泡体の任意の部分から20mm角の立方体を切り出し水中に沈め、加熱発泡した発泡粒子間の空隙の空気を十分追い出した。その後、空気を排除した2次発泡体の体積V(mm)を求め、以下の式を用いて充填率を算出した。なお、2次発泡体の任意の3箇所から切り出した部分それぞれについて、充填率を算出し、算出された3か所での充填率の平均値を平均充填率(%)とした。
【0096】
充填率(%)=V/(20) × 100。
【0097】
<中空形材に充填された2次発泡体の融着率>
2次発泡体の融着率は、次のように測定した。まず、2次発泡体の表面にナイフで約5mmの深さのクラックを入れた後、このクラックに沿って2次発泡体を割った。そして、2次発泡体を割った破断面を観察し、加熱発泡した発泡粒子の全個数に対する加熱発泡した発泡粒子自体が破壊した粒子数の割合を以下の式を用いて求めた。
【0098】
Y=〔(N1)/(N1+N2)〕×100
N1:2次成形体の破断面に露出した加熱発泡した発泡粒子50個について、加熱発泡した発泡粒子内部まで破壊している粒子数
N2:加熱発泡した発泡粒子内部が破壊されず加熱発泡した発泡粒子表面が露出している粒子数
Y :2次成形体の粒子間融着率(%)。
【0099】
(実施例1)
<発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造>
撹拌機付属の6Lのオートクレーブに、純水100重量部、リン酸三カルシウム0.2重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.01重量部、造核剤としてポリエチレンワックス0.07重量部、並びに、開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.25重量部および1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.17重量部を仕込んだ。続いて、250回転/分で撹拌しながら、スチレン単量体95重量部、およびアクリル酸ブチル単量体5重量部を仕込んだ後、98℃まで昇温させた。引き続き、98℃にて4時間保持して、熱可塑性樹脂粒子を得た。
【0100】
次いで、発泡剤としてブタン7重量部をオートクレーブ中に圧入し、再び120℃まで昇温させた。その後、120℃にて2時間保温した後、室温まで冷却して、オートクレーブから重合スラリーを取り出した。取り出した重合スラリーを洗浄、および脱水・乾燥することにより、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子(ガラス転移温度95℃)を得た。
【0101】
<ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子の製造>
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を篩分けして、粒子径0.6mm~1.2mmの発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を分取した。
【0102】
分取した発泡性スチレン系樹脂粒子を、加圧式予備発泡機[大開工業製、BHP]を用いて、吹き込み蒸気圧0.8kgf/cmの条件にて嵩倍率30倍に予備発泡を実施した。この際、吹き込み蒸気にはエアーを切り込ませて、吹き込み蒸気温度を調節した。その後、常温下で1日放置して、養生乾燥を行い、ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を得た。
【0103】
<トラックあおり板用のパネルの製造>
アルミニウム製の中空形材(外寸;高さ22.5cm×長さ30cm×幅3.2cm、中空部;高さ17cm×長さ30cm×厚み2.8cm:中空部の体積1428cm)を準備した。
【0104】
中空形材の前後方向の2つの開口部のうち、一方の開口部をエンドポストで封止し、他方の開口部から上記ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を充填した。上記ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子は、中空形材の中空部の容積に対して目視で満量となるように充填した。上記ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を充填後、他方の開口部をエンドポストで封止し、パネル本体を作製した。
【0105】
このパネル本体を、設定温度120℃に保持された加熱炉(ヤマト製ファインオーブンDH62)に30分投入し、上記ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を加熱発泡させることによって、トラックあおり板用のパネルを作製した。
【0106】
トラックあおり板用のパネルにおける2つのエンドポストの一方を外し、中空部に形成されたポリスチレン系樹脂発泡体を取り出した。そして、当該ポリスチレン系樹脂発泡体の平均充填率、および発泡粒子の融着率を測定した。結果を表1に示した。
【0107】
(実施例2)
加熱条件120℃、15分とした以外は実施例1と同様の方法でトラックあおり板用のパネルを作製した。中空形材の中空部に形成されたポリスチレン系樹脂発泡体を取り出し、平均充填率、および発泡粒子の融着率を測定した。
【0108】
(実施例3)
加熱条件120℃、45分とした以外は実施例1と同様の方法でトラックあおり板用のパネルを作製した。中空形材の中空部に形成されたポリスチレン系樹脂発泡体を取り出し、平均充填率、および発泡粒子の融着率を測定した。
【0109】
(比較例1)
<発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造>において、重合開始時の単量体組成を、スチレン単量体100重量部とし、アクリル酸ブチル単量体を使用しないで発泡性ポリスチレン系樹脂粒子(ガラス転移温度101℃)を製造した以外は、実施例1と同様の方法でトラックあおり板用のパネルを作製した。中空形材の中空部に形成されたポリスチレン系樹脂発泡体を取り出し、平均充填率、および発泡粒子の融着率を測定した。
【0110】
(比較例2)
<発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造>において、アクリロニトリル共重合体からなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子(ガラス転移温度105℃)を用いた以外は、実施例1と同様の方法でトラックあおり板用のパネルを作製した。中空形材の中空部に形成されたポリスチレン系樹脂発泡体を取り出し、平均充填率、および発泡粒子の融着率を測定した。
【0111】
(比較例3)
<発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造>において、メタクリル酸メチル共重合体からなる発泡性樹脂粒子(ガラス転移温度115℃)を用いた以外は、実施例1と同様の方法でトラックあおり板用のパネルを作製した。中空形材の中空部に形成されたポリスチレン系樹脂発泡体を取り出し、平均充填率、および発泡粒子の融着率を測定した。
【0112】
(比較例4)
加熱条件を120℃、60分とした以外は、実施例1と同様の方法でトラックあおり板用のパネルを作製した。中空形材の中空部に形成されたポリスチレン系樹脂発泡体を取り出し、平均充填率、および発泡粒子の融着率を測定した。
【0113】
(比較例5)
加熱条件を90℃、30分とした以外は、実施例1と同様の方法でトラックあおり板用のパネルを作製した。中空形材の中空部に形成されたポリスチレン系樹脂発泡体を取り出し、平均充填率、および発泡粒子の融着率を測定した。
【0114】
【表1】
【0115】
比較例1および2では、ガラス転移温度が高い発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いたため、120℃で加熱しても十分に二次発泡しなかった。また、比較例3では、ガラス転移温度が高いメタクリル酸メチル共重合体からなる発泡性樹脂粒子用いたため、120℃で加熱しても十分に二次発泡しなかった。
【0116】
比較例4では、加熱時間が長いため、予備発泡粒子がオーバーヒートし、2次発泡体の外観は悪く、発泡粒子の破泡、収縮、または融解等が生じた。
【0117】
実施例1~3と比較例1~4の比較結果から、中空形材を100℃~130℃の条件で加熱して、平均充填率が40%以上90%未満であり、かつ融着率が1%~70%となるように、予備発泡粒子を発泡させれば、発泡体の外観に異常のない二次発泡を実現できることがわかった。
【符号の説明】
【0118】
1 中空形材
1a 開口部(前側)
1a’ 開口部(後側)
1b レール部
2 発泡体
2a 発泡粒子
2a’ 熱可塑性樹脂予備発泡粒子
10 パネル(トラックあおり板用のパネル)
30 トラックあおり板
図1
図2
図3