(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065236
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】被介護者用装着品
(51)【国際特許分類】
A61F 5/44 20060101AFI20230502BHJP
A61F 13/68 20060101ALI20230502BHJP
A61F 13/70 20060101ALI20230502BHJP
A61F 13/74 20060101ALI20230502BHJP
A61F 13/80 20060101ALI20230502BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
A61F5/44 H
A61F13/68 100
A61F13/70
A61F13/74
A61F13/80
A61F13/15 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175919
(22)【出願日】2021-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】521471752
【氏名又は名称】松山 七恵
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松山 七恵
【テーマコード(参考)】
3B200
4C098
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA13
3B200BB11
3B200CB01
3B200CB07
3B200CB13
3B200DF08
3B200EA18
4C098AA09
4C098CC03
4C098CC12
4C098CC16
4C098CD01
4C098CE06
4C098CE14
(57)【要約】
【課題】両脚を床に付けた状態のままで装着することができる被介護者用装着品を提供する。
【解決手段】
シートカバー2と、シートカバー2に一体的に設けられる第1吸収シート3と、シートカバー2の左腰回り部4・右腰回り部5と、左腰回り部4・右腰回り部5の先端部又はその近傍にそれぞれ設けられる左係合部6・右係合部7と、係止部8とを有し、第1吸収シート3に重ねるように配置される第2吸収シート9が着脱可能に取り付けられるシート取付部10を備えた可動部材11と、シートカバー2に設けられ、可動部材11をスライド可能に挿通させる挿通部12と、可動部材11に備えられる把持部13とを有し、被介護者Mが被介護者用装着品1を下半身に装着した状態で把持部13を把持して上方へ引き上げ操作することにより、被介護者Mの股間に対する第2吸収シート9の密着度を調整可能とした被介護者用装着品1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被介護者が失禁時の対策として使用するシートカバーと、
前記シートカバーに装着可能な各種の吸収シートを把持する把持部と、
を具備することにより、
当該被介護者が前記吸収シートの位置や密着度を自在に調整できる
ことを特徴とする被介護者用装着品。
【請求項2】
請求項1記載の被介護者用装着品において、
前記シートカバーは、
長手方向の一方側の端部を被介護者の背面腰部に位置させ、前記一方側端部から前記長手方向の他方側へ向かって、前記背面腰部から前記被介護者の臀部及び股間を経て当該被介護者の前面腰部へと巻回され、
前記吸収シートは、
前記シートカバーのうち前記股間に対応する部位に一体的に設けられる第1吸収シートを含み、
かつ、前記被介護者用装着品は、
前記シートカバーの前記一方側端部及びその近傍より、前記被介護者の左側・右側それぞれへと延設され、当該被介護者の左腰部及び右腰部を経て前記前面腰部へと配設される、左・右腰回り部と、
前記左・右腰回り部の先端部又はその近傍にそれぞれ設けられ、前記被介護者の前記前面腰部において互いに係合可能な左・右係合部と、
前記シートカバーの前記他方側の端部に設けられ、前記左・右係合部により互いに係合された状態の前記左・右腰回り部に対し係止される係止部と、
前記第1吸収シートの前記股間側に重ねるように配置され前記第1吸収シートとは異なるもう1つの前記吸収シートとしての第2吸収シートが着脱可能に取り付けられるシート取付部を前記長手方向他方側の端部に備えた、可動部材と、
前記シートカバーに設けられ、前記可動部材を前記長手方向にスライド可能に挿通させる挿通部と、
を有し、
前記把持部は、
前記可動部材の前記長手方向一方側の端部に備えられ、当該可動部材の他の部位よりも高い剛性を有して前記被介護者による把持に用いられ、
前記被介護者が前記被介護者用装着品を下半身に装着した状態で前記把持部を把持して上方へ引き上げ操作することにより、当該被介護者の股間に対する前記第2吸収シートの密着度を調整可能とした
ことを特徴とする被介護者用装着品。
【請求項3】
請求項2記載の被介護者用装着品において、
前記可動部材の前記把持部は、
前記シートカバーに設けられた前記挿通部に前記可動部材が挿通された状態で前記被介護者に装着されたとき、当該シートカバーの前記一方側端部よりなる上縁部よりも、上方へ突出している
ことを特徴とする被介護者用装着品。
【請求項4】
請求項3記載の被介護者用装着品において、
前記可動部材は、
前記把持部と前記シート取付部との間に位置し、前記挿通部に挿通される被挿通部をさらに備え、
前記把持部及び前記シート取付部の、前記長手方向に直交する短手方向における寸法よりも、前記被挿通部の当該短手方向における寸法が小さい
ことを特徴とする被介護者用装着品。
【請求項5】
請求項4記載の被介護者用装着品において、
前記挿通部は、
前記シートカバーに対し着脱自在な別体として設けられている
ことを特徴とする被介護者用装着品。
【請求項6】
請求項5記載の被介護者用装着品において、
前記シートカバーのうち前記着脱自在な挿通部が装着される挿通部取付領域は、前記短手方向に伸縮自在に構成されており、
前記着脱自在な挿通部は、
前記短手方向に伸縮自在に構成されている
ことを特徴とする被介護者用装着品。
【請求項7】
請求項6記載の被介護者用装着品において、
前記挿通部が前記シートカバーから取り外されている状態で、前記可動部材は、前記短手方向に2つ折りされて前記挿通部に挿通されており、
前記挿通部は、前記2つ折りされた前記可動部材を挿通しつつ、前記短手方向に2つ折りされて所定の梱包材により梱包されている
ことを特徴とする被介護者用装着品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被介護者用装着品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、失禁に備えて特に高齢者が着用する失禁パンツが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の
図1、
図2等には男性用の失禁パンツについて記載され、この従来技術の失禁パンツが、パンツ本体に取り外し可能に取り付けられる失禁パッドを具備することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術の失禁パンツは、通常のパンツタイプであるため、被介護者は、両脚を床に付けた状態のままで装着することは不可能で、脚を床から上げて片脚ずつ履いて装着する必要がある。さらに、これらの失禁パンツに具備されるべき従来技術の失禁パッドは、被介護者との密着度が低く、また被介護者の排泄をカバーできる正常な位置に装着されにくくなっている。また、日常動作等における障がいを有する被介護者あるいはパーキンソン病・悪性関節リューマチ等の進行性神経難病を患っている高齢者は、手や足の動作に著しい困難を伴うため、上記のような片脚ずつの装着動作に加え、排泄の都度失禁パッドの位置の調整を行うことが非常に困難であった。
【0005】
本発明の目的は、脚を床から上げて片脚ずつ履いて装着するのではなく、両脚を床に付けた状態のままで装着することができ、且つ、本来失禁パンツに具備される失禁パッドの位置及びパッドの密着度の調整を可能とする、被介護者用装着品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明は、被介護者が失禁時の対策として使用するシートカバーと、前記シートカバーに装着可能な各種の吸収シートを把持する把持部と、を具備することにより、当該被介護者が前記吸収シートの位置や密着度を自在に調整できることを特徴としている。
また上記目的を達成するために、本願発明は、長手方向の一方側の端部を被介護者の背面腰部に位置させ、前記一方側端部から前記長手方向の他方側へ向かって、前記背面腰部から前記被介護者の臀部及び股間を経て当該被介護者の前面腰部へと巻回されるシートカバーと、前記シートカバーのうち前記股間に対応する部位に一体的に設けられる第1吸収シートと、前記シートカバーの前記一方側端部及びその近傍より、前記被介護者の左側・右側それぞれへと延設され、当該被介護者の左腰部及び右腰部を経て前記前面腰部へと配設される、左・右腰回り部と、前記左・右腰回り部の先端部又はその近傍にそれぞれ設けられ、前記被介護者の前記前面腰部において互いに係合可能な左・右係合部と、前記シートカバーの前記他方側の端部に設けられ、前記左・右係合部により互いに係合された状態の前記左・右腰回り部に対し係止される係止部と、を有する被介護者用装着品であって、前記第1吸収シートの前記股間側に重ねるように配置される第2吸収シートが着脱可能に取り付けられるシート取付部を前記長手方向他方側の端部に備えた、可動部材と、前記シートカバーに設けられ、前記可動部材を前記長手方向にスライド可能に挿通させる挿通部と、前記可動部材の前記長手方向一方側の端部に備えられ、当該可動部材の他の部位よりも高い剛性を有し、前記被介護者による把持に用いられる把持部と、を有し、前記被介護者が前記被介護者用装着品を下半身に装着した状態で前記把持部を把持して上方へ引き上げ操作することにより、当該被介護者の股間に対する前記第2吸収シートの密着度を調整可能とした被介護者用装着品であることを特徴としている。
【0007】
本願発明の被介護者用装着品は、通常のこの種の装着品のように、被介護者が脚を床から上げて片脚ずつ履いて装着する必要はなく、両脚を床に付けた状態のままで装着することができる。すなわち、被介護者が装着する際には、まずシートカバーの長手方向の一方側端部を背面腰部にあてがい、そのあてがった状態で左腰回り部を左腰部を経て前面腰部へと引き回すとともに右腰回り部を右腰部を経て前面腰部へと引き回し、それら左・右腰回り部の先端部(又はその近傍)に設けられた左・右係合部を互いに係合させる。これにより、シートカバーは、その一方側端部が被介護者の背中側に保持された状態で、反対側である長手方向の他方側は被介護者の背中側にてだらんと垂れ下がった状態となる。
【0008】
この状態から、被介護者は、股間越しにその向こう側(すなわち背中側)に垂れ下がっているシートカバーの他方側を手でつかみ、股間から前面側(お腹側)へと引っ張りだし、シートカバーの他方側部分を自らの前面腰部へとあてがう。これにより、シートカバーは、その上記一方側端部から上記他方側端部へ向かって、被介護者の背面腰部→臀部→股間→前面腰部へと巻回されることとなる。この結果、シートカバーに一体的に設けられている吸収シート(第1吸収シート)が被介護者の股間に対応する部位に位置することとなる。
【0009】
このとき、本願発明の被介護者用装着品では特に、第1吸収シート上にさらに別の吸収シート(第2吸収シート)を重ねて使用できるようになっており、そのためにシートカバーが挿通部を備え、その挿通部に可動部材が挿通される。すなわち、シートカバーの挿通部に挿通される可動部材の上記長手方向の他方側の端部には、シート取付部が設けられており、このシート取付部に対し、第2吸収シートが着脱可能に取り付けられる。これにより、第2吸収シートは、可動部材のシート取付部及び挿通部を介しシートカバーに保持され、第1吸収シートと同等の位置、すなわち被介護者の股間に対応する部位に位置決めされる。この結果、被介護者の股間には、第2吸収シートと第1吸収シートとが二重にあてがわれ、その状態でシートカバー内に配置されることとなる。
【0010】
なおこのとき、自由端となる、第2吸収シートのうちの前記シート取付部への取付部位とは反対側の端部を、前述のように互いに係合された状態の左・右腰回り部の内側(=左・右腰回り部とお腹との間の隙間)に差し込んで保持すれば、より安定的に第2吸収シートを保持できる。また、その差し込み具合を調整することで、第2吸収シートを好みの位置に概略位置決めすることもできる。
【0011】
以上のようにして第1吸収シート及び第2吸収シートを股間に位置させた状態としたら、被介護者は、前面腰部まで巻回したシートカバーの上記長手方向他方側の端部に設けられ係止部を、前述のように互いに係合された状態の左・右腰回り部に対し係止する。これにより、2つの吸収シートを股間にあてがって被介護者用装着品の装着を完了することができ、その際にいずれの脚も床に付けたままの状態で装着を行える。したがって、日常動作における障がいを有する被介護者や、手や脚の動作に著しい困難を伴うパーキンソン病・悪性関節リューマチを患っている高齢者であっても、自力で被介護者用装着品の装着や取り外しをスムーズに行うことができる。この結果、そのような障がいを有する被介護者や進行性の難病を患う高齢者においても自力で失禁対応をとることができるので、排泄における自力度を高めてADL(日常生活動作)の低下を防ぎ、施設への入所を遅らせて在宅生活の活性化及び延長を図ることができる。また訪問介護等のサービスを利用する際において介護者の負担を軽減することもできる。また、上記のようにして一度装着してしまえば、左・右係合部の係合や係止部の係止を解くことなくそのまま上げ下げしてトイレを利用することも可能である。
【0012】
そしてさらに、本願発明の被介護者用装着品によれば、前述のように第2吸収シートを長手方向他方側の端部に取り付けた可動部材が、挿通部において長手方向にスライド可能に挿通されている。これにより、上記のようにして被介護者用装着品の装着が完了した状態において、被介護者自身が、背中側に手をまわして可動部材の長手方向一方側端部にある把持部を把持して適宜に可動部材を引っ張ることで、第2吸収シートを当該長手方向一方側に変位させることができる。すなわち、第2吸収シートの位置を微調整することができるので、第2吸収シートの股間への当接具合やフィット感を好みの態様に調整することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の被介護者用装着品によれば、脚を床から上げて片脚ずつ履いて装着するのではなく、両脚を床に付けた状態のままで装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係る被介護者用装着品と第2吸収シートの平面図である。
【
図2】
図1の第2吸収シートを被介護者用装着品に取り付けた状態を表す平面図である。
【
図3】
図2の被介護者用装着品を裏面から見た平面図である。
【
図4】可動部材を表面及び裏面から見た平面図である。
【
図5】被介護者用装着品の装着手順の前半を示す概念図である。
【
図6】被介護者用装着品の装着手順の後半を示す概念図である。
【
図7】第2実施形態に係るシートカバーの平面図である。
【
図8】第2実施形態に係る被介護者用装着品と第2吸収シートの平面図である。
【
図9】第2実施形態の可動部材及び挿通部を表面及び裏面から見た平面図である。
【
図10】可動部材及び挿通部の折り畳み手順の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態を
図1~
図6により説明する。
【0016】
図1に第1実施形態に係る被介護者用装着品1の平面図を示す。被介護者用装着品1は、この図のY方向で示される長手方向の一方側の端部を被介護者の背面腰部に位置させ、前記一方側端部から前記長手方向の他方側へ向かって、前記背面腰部から前記被介護者の臀部及び股間を経て当該被介護者の前面腰部へと巻回されるシートカバー2を有する。シートカバー2の素材は例えば薄手の樹脂素材、紙又は布等、通常このような介護用品に用いられる公知の素材を用いることができる。
【0017】
被介護者装着品1はシートカバー2のうち前記股間に対応する部位に一体的に設けられる第1吸収シート3を有する。第1吸収シート3の素材及び構成としては公知の吸収シートの素材及び構成を適用することができる。
【0018】
被介護者用装着品1はシートカバー2の前記一方側端部及びその近傍より、前記被介護者の左側・右側それぞれへと延設され、当該被介護者の左腰部及び右腰部を経て前記前面腰部へと配設される、左腰回り部4及び右腰回り部5を有する。
【0019】
被介護者用装着品1は、左腰回り部4及び右腰回り部5の先端部又はその近傍にそれぞれ設けられ、前記被介護者の前記前面腰部において互いに係合可能な左係合部6及び右係合部7と、シートカバー2の前記他方側の端部に設けられ、左係合部6及び右係合部7により互いに係合された状態の前記左腰回り部4及び右腰回り部5に対し係止される係止部8とを有する。
【0020】
左係合部6及び右係合部7は例えば面ファスナーで構成される。左係合部6または右係合部7の一方が面ファスナー受け部でありもう一方が面ファスナー止め部となっている。係止部8は例えば面ファスナー止め部で形成される。
【0021】
被介護者用装着品1は、第1吸収シート3の前記股間側に重ねるように配置される第2吸収シート9が着脱可能に取り付けられるシート取付部10を前記長手方向他方側の端部に備えた、可動部材11を有する。
【0022】
被介護者用装着品1は、シートカバー2に設けられ、可動部材11を前記長手方向にスライド可能に挿通させる挿通部12を有する。挿通部12は、シートカバー2に一体的に取り付けられている。この図では、1本の帯状の挿通部12が2箇所の縫製部14にてシートカバー2に縫い付けられている。挿通部12の素材は例えば薄手の樹脂素材、紙、布等であってひだを有するシャーリングあるいはギャザー構成を備え、適度な伸縮性を備えるようになっている。
【0023】
被介護者用装着品1は、可動部材11の前記長手方向一方側の端部に備えられ、可動部材11の他の部位よりも高い剛性を有し、前記被介護者による把持に用いられる把持部13を有する。把持部13は例えば他の部位よりも硬めの紙や布などで構成されている。この図では、高齢者等が把持部13を認識しやすいように、把持部13の被介護者側の面が、例えば赤色等で着色されている。
【0024】
被介護者用装着品1は、前記被介護者が被介護者用装着品1を下半身に装着した状態で把持部13を把持して上方へ引き上げ操作することにより、当該被介護者の股間に対する第2吸収シート9の密着度を調整可能となっている。
【0025】
図2に、
図1の第2吸収シート9を被介護者用装着品1に取り付けた状態を表す平面図を示す。この図では、被介護者用装着品1の挿通部12に挿通させた可動部材11のシート取り付け部10には、面ファスナー15が取り付けられており、面ファスナー15を第2吸収シート9の表面に係合させて着脱可能に取り付けている。面ファスナー15のかわりに、他の公知の方法により、第2吸収シート9をシート取り付け部に取り付けてもよい。第2吸収シート9は第1吸収シート3を覆うように取り付けられるようになっている。前記他の公知の方法として例えば大型のホック等がある。ホックの使用に際しては、オス、メスの取り付けが必要であるため、シート取り付け部10は、ホックの大きさに準じて2枚仕立てになる。
【0026】
図3に、第2吸収シート9を被介護者用装着品1に取り付けた状態を裏面から見た平面図を示す。被介護者用装着品1の第1吸収シート3が配置される領域は被介護者の身体に合わせて立体的にふくらみが持たせられ、吸水加工がなされている。
【0027】
図4に、可動部材11の詳細構造を表す平面図を示す。
図4(a)は可動部材11の表面(被介護者装着時に被介護者側の面)から見た平面図であり、
図4(b)は可動部材11を裏面(被介護者装着時に被介護者側と逆の面)から見た平面図である。
【0028】
可動部材11は、把持部13とシート取付部10との間に位置し、挿通部12に挿通される被挿通部16をさらに備え、把持部13及びシート取付部10の、Y方向で示される長手方向に直交する短手方向における寸法よりも、被挿通部16の当該短手方向における寸法が小さくなっている。
【0029】
可動部材11は、例えば紙素材または布素材等で形成されている。この図では、可動部材11の把持部13の表面には例えば赤色の紙又は布等が縫い付けられている。可動部材11のシート取り付け部10の裏面には面ファスナー15が取り付けられている。把持部13及びシート取り付け部10と被挿通部16との間は曲線状の形状で構成されているが、このような形状に限定されず、例えば直線を含む形状であってもよい。
【0030】
図5及び
図6に被介護者用装着品1の装着手順の一例を説明する概念図を示す。装着手順の前半を
図5(A)~(F)にて説明し、後半を
図6(A)~(F)にて説明する。なお、
図5及び
図6に示す方角は、被介護者Mから見た上下方向、左右方向、前後方向であり、これらは互いに直交する方向である。
【0031】
図5(A)及び(B)は被介護者Mが、被介護者用装着品1に第2吸収シート9を取り付けた状態で、シートカバー2の長手方向の一方側端部(この図の上方向側端部)を背面腰部にあてがっている状態を説明している。第2吸収シート9は、シートカバー2と一体化した挿通部12に挿通された可動部材11のシート取り付け部10に取り付けられている。
【0032】
図5(C)及び
図5(D)はシートカバー2の前記一方側端部を被介護者Mの背面腰部にあてがった状態で左腰回り部4を左腰部を経て前面腰部へと引き回すとともに右腰回り部5を右腰部を経て前面腰部へと引き回し、それら左腰回り部4、右腰回り部5の先端部(又はその近傍)に設けられた左係合部6及び右係合部7を互いに係合させる手順を示している。これにより、シートカバー2は、長手方向の一方側端部が被介護者Mの背中側に保持された状態で、反対側である長手方向の他方側は被介護者Mの背中側にてだらんと垂れ下がった状態となる。この時、第2吸収シート9も第1吸収シート3に重なって介護者Mの背中側に垂れ下がっている。
【0033】
図5(E)において、第2吸収シート9のうちのシート取付部10への取付部位とは反対側の端部Tを持ち上げ、
図5(F)において互いに係合された状態の左腰回り部4と右腰回り部5の内側(=左腰回り部4及び右腰回り部とお腹との間の隙間)に第2吸収シート9の前記端部Tを差し込んで保持する。その後適宜差し込み具合を調整する。
【0034】
図6(A)は上述の手順により第2吸収シート9が被介護者Mの股間に対応する部位に位置決めされた状態を示す。
【0035】
次いで、
図6(B)では、被介護者Mが、股間越しにその向こう側(すなわち背中側)に垂れ下がっているシートカバ2ーの他方側を手でつかみ、股間から前面側(お腹側)へと引っ張りだし、
図6(C)では、シートカバー2の他方側部分を自らの前面腰部へとあてがう手順を示している。
【0036】
図6(D)において、上述の手順により、シートカバー2は、上記一方側端部から上記他方側端部へ向かって、被介護者Mの背面腰部→臀部→股間→前面腰部へと巻回されることとなる。この結果、第1吸収シート3も被介護者Mの股間に対応する部位に位置決めされる。被介護者Mは、シートカバー2の係止部8を、互いに係合された左腰回り部4及び右腰回り部5に対して係止し、被介護者用装着品1を装着する。
【0037】
図6(E)に示すように、可動部材11の把持部13は、シートカバー2に設けられた挿通部12に可動部材11が挿通された状態で被介護者Mに装着されたとき、シートカバー2の前記一方側端部よりなる上縁部Jよりも、上方へ突出するようになっている。
【0038】
図6(F)において、被介護者Mはこの把持部13をつかんで上方向に引き上げ、体にフィットさせられるようになっている。この操作は、例えば被介護者用装着品1を装着してしばらく時間がたった時、被介護者用装着品1がずり落ちてきた時などにも行う事ができる。
【0039】
ここに示した手順は、被介護者Mの自立(半自立)を促すため、被介護者M自身が行うことを想定しているが、実際の介護において、このような手順の一部を介護者が補助してもかまわない。
【0040】
<第1実施形態の効果>
第1実施形態の被介護者用装着品1は、通常のこの種の装着品のように、被介護者Mが脚を床から上げて片脚ずつ履いて装着する必要はなく、両脚を床に付けた状態のままで装着することができる。
【0041】
すなわち、被介護者Mが装着する際には、まずシートカバー2の長手方向の一方側端部を背面腰部にあてがい、そのあてがった状態で左腰回り部4を左腰部を経て前面腰部へと引き回すとともに右腰回り部5を右腰部を経て前面腰部へと引き回し、それら左腰回り部4、右腰回り部5の先端部(又はその近傍)に設けられた左係合部6及び右係合部7を互いに係合させる。これにより、シートカバー2は、その一方側端部が被介護者Mの背中側に保持された状態で、反対側である長手方向の他方側は被介護者Mの背中側にてだらんと垂れ下がった状態となる。
【0042】
この状態から、被介護者Mは、股間越しにその向こう側(すなわち背中側)に垂れ下がっているシートカバー2の他方側を手でつかみ、股間から前面側(お腹側)へと引っ張りだし、シートカバー2の他方側部分を自らの前面腰部へとあてがう。これにより、シートカバー2は、その上記一方側端部から上記他方側端部へ向かって、被介護者Mの背面腰部→臀部→股間→前面腰部へと巻回されることとなる。
【0043】
この結果、シートカバー2に一体的に設けられている吸収シート(第1吸収シート3)が被介護者の股間に対応する部位に位置することとなる。
【0044】
このとき、被介護者用装着品1では特に、第1吸収シート3上にさらに別の吸収シート(第2吸収シート9)を重ねて使用できるようになっており、そのためにシートカバー2が挿通部12を備え、その挿通部12に可動部材11が挿通される。すなわち、シートカバー2の挿通部12に挿通される可動部材11の上記長手方向の他方側の端部には、シート取付部10が設けられており、このシート取付部10に対し、第2吸収シート9が着脱可能に取り付けられる。
【0045】
これにより、第2吸収シート9は、可動部材11のシート取付部10及び挿通部12を介しシートカバー2に保持され、第1吸収シート3と同等の位置、すなわち被介護者Mの股間に対応する部位に位置決めされる。この結果、被介護者Mの股間には、第2吸収シート9と第1吸収シート3とが二重にあてがわれ、その状態でシートカバー2内に配置されることとなる。
【0046】
なおこのとき、自由端となる、第2吸収シート9のうちのシート取付部10への取付部位とは反対側の端部Tを、前述のように互いに係合された状態の左腰回り部4及び右腰回り部5の内側(=左・右腰回り部とお腹との間の隙間)に差し込んで保持すれば、より安定的に第2吸収シート9を保持できる。また、その差し込み具合を調整することで、第2吸収シート9を好みの位置に概略位置決めすることもできる。
【0047】
以上のようにして第1吸収シート3及び第2吸収シート9を股間に位置させた状態としたら、被介護者Mは、前面腰部まで巻回したシートカバー2の上記長手方向他方側の端部に設けられた係止部8を、前述のように互いに係合された状態の左腰回り部4、右腰回り部5に対し係止する。これにより、2つの吸収シートを股間にあてがって被介護者用装着品1の装着を完了することができ、その際にいずれの脚も床に付けたままの状態で装着を行える。
【0048】
したがって、障がいを有する被介護者や、手や脚の動作に著しい困難を伴うパーキンソン病・悪性関節リューマチを患っている高齢者であっても、自力で被介護者用装着品1の装着や取り外しをスムーズに行うことができる。この結果、そのような障がいを有する被介護者や進行性の難病を患う高齢者においても自力で失禁対応をとることができるので、排泄における自力度を高めてADL(日常生活動作)の低下を防ぎ、施設への入所を遅らせて在宅生活の活性化及び延長を図ることができる。また訪問介護等のサービスを利用する際において介護者の負担を軽減することもできる。また、上記のようにして一度装着してしまえば、左係合部6及び右係合部7の係合や係止部8の係止を解くことなくそのまま上げ下げしてトイレを利用することも可能である。また、左係合部6及び右係合部7の係合や係止部8の係止を解くことなく第2吸収シート9のみ交換して、被介護者用装着品1については第2吸収シート9を何度か交換する間(例えば一日間)装着し続けることができる。
【0049】
そしてさらに、被介護者用装着品1によれば、前述のように第2吸収シート9を長手方向他方側の端部に取り付けた可動部材11が、挿通部12において長手方向にスライド可能に挿通されている。これにより、上記のようにして被介護者用装着品1の装着が完了した状態において、被介護者M自身が、背中側に手をまわして可動部材11の長手方向一方側端部にある把持部13を把持して適宜に可動部材11を引っ張ることで、第2吸収シート9を当該長手方向一方側に変位させることができる。すなわち、第2吸収シートの位置9を微調整することができるので、第2吸収シート9の股間への当接具合やフィット感(密着度)を好みの態様に調整することができる。
【0050】
また、本実施形態では特に、把持部13がシートカバー2の上縁部Jよりも突出していることにより、被介護者M自身が背中側に手をまわして把持部13を把持する際に、容易に把持することができる。
【0051】
また、本実施形態では特に、可動部材11のうち挿通部12に挿通される被挿通部16の寸法を短くすることにより、挿通部12における可動部材11の円滑なスライド移動を確保することができる。
【0052】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態を
図7~
図10により説明する。
【0053】
図7に第2実施形態に係るシートカバー2′の平面図を示す。シートカバー2′は、挿通部12が一体的に取り付けられていない点で、第1実施形態のシートカバー2と異なる。シートカバー2′は、
図8及び
図9で後述する着脱自在な挿通部12′を装着するための挿通部取付領域18を有する。挿通部取付領域18はシートカバー2′の短手方向(シートカバー2′の長手方向と平行なY方向に直交する方向)に伸縮自在に構成されている。すなわち、ゴム素材や、ギャザー構成、シャーリング構成の紙や布など、前記短手方向に伸び縮みする素材で形成されていたり、素材に折りひだをつけて構成されている。
【0054】
図8に第2実施形態に係る被介護者用装着品1′と第2吸収シート9の平面図を示す。被介護者装着品1′において、挿通部12′は、シートカバー2′に対し着脱自在な別体として設けられている。この図では、挿通部12′は、挿通部12′の裏面に配置された2箇所の面ファスナー17により、シートカバー2′に着脱可能に取り付けられている。この時、
図7で示した挿通部取付領域18に挿通部12′は取り付けられる。第2吸収シート9は、第1実施形態と同様の構成である。
【0055】
図9に第2実施形態の可動部材11及び挿通部12′を表面(a)及び裏面(b)から見た平面図を示す。
【0056】
挿通部12′は、前記短手方向に伸縮自在に構成されている。前記伸縮自在に構成されているとは、少なくともその一部が、例えばゴム素材、ギャザー構成、シャーリング構成など、伸び縮みする素材で形成されていたり、素材に折りひだをつけて構成されることを指す。この図では、挿通部12′に備えられた3本の ギャザー構成の紙または布で構成される伸縮帯19に、可動部材11の被挿通部 16が挿通されている。被介護者の肌当たりを考慮し、伸縮帯19の3本のうち前面上下2本の下に被挿通部16を挿通する、あるいは前面中央1本の下に被挿通部16を挿通する、いずれの順序でも機能するものとする。可動部材11は第1実施形態と同様の構成である。
【0057】
被介護者用装着品1′において、挿通部12′及び可動部材11を携帯する場合等には、挿通部12′がシートカバー2′から取り外されている状態で、可動部材11は、前記短手方向に2つ折りされて挿通部12′に挿通されており、挿通部12′は、前記2つ折りされた可動部材11を挿通しつつ、前記短手方向に2つ折りされて所定の梱包材により梱包されている。前記梱包材は例えばアクリル袋等である。第2実施形態の挿通部12′及び可動部材11は毎回交換して使い捨てすることが容易なので、このような状態で使用者が携帯したり、あるいは生産者が販売することができる。
【0058】
図10に、可動部材11及び挿通部12′の折り畳み手順の一例を説明する概念図を示す。
図10に示す方角は、折り畳み手順を説明するために便宜的に定義した前後方向、左右方向、上下方向でありこれらは互いに直交する。
【0059】
図10(a)において、可動部材11の上部を山折りし、さらに山折り線Iにより可動部材11の短手方向(この図の左右方向)に2つ折りすると、
図10(b)の状態になる。さらに可動部材11の下部を山折りすると図(c)の状態となる。これを挿通部12′に差し込んだ状態が
図10(d)である。
【0060】
可動部材11の短手方向で2つ折りした状態で挿通部12′に差し込んでおくことにより、被介護者Mがこれを梱包から取り出してシートカバー2′に取り付ける時に、取り付けが行いやすく、かつ、山折り線Iの折り目が取り付け位置の目安となる。すなわち、山折り線Iの折り目がシートカバー2′の短手方向の中心あるいは被介護者Mの背中の中心にくるように取り付けることで、被介護者Mが簡単に可動部材11及び挿通部12′を取り付けられるようになっている。その後挿通部12′についても左右方向の中心を山折り線I″にて山折りし、左右方向の端部付近もそれぞれ山折りする。
【0061】
このようにして折り畳んだ状態が
図10(e)となる。さらに
図10(f)の山折り線で可動部材11の上下部分をさらに折り畳むと
図10(g)の状態となる。例えばこの状態で梱包する。
【0062】
なお、挿通部12′に備えられた3本の伸縮帯19は、ギャザー状にひだや皺が寄っている為、実際にはこの図のような直線状の長方形状となっておらず、左右方向に縮んだ状態で折り畳まれていてもかまわない。
【0063】
<第2実施形態の効果>
第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を有する。また、第2実施形態においては、挿通部12′をシートカバー2′に対し着脱自在とすることにより、挿通部12′及び可動部材11をシートカバー2′から分離した状態で取り扱うことができ、取り扱い性を向上できる。また、挿通部12′や可動部材11が汚損・破損したとき、シートカバー2′から取り外してそれらのみを選択したり取り替えたりすることが可能となる。
【0064】
また、脚上げ動作が可能な障がいを有する被介護者・高齢者において第2吸収シート9の股間への当接具合・フィット感の向上のみを目的とする場合に、片脚ずつ履いて装着する通常の被介護者用装着品に対して上記挿通部12′及び可動部材11のセットを取り付け、前述と同様に装着後に第2吸収シート9を被介護者の所望の態様に調整することもできる。
【0065】
また、本実施形態では特に、シートカバー2′のうち挿通部12′が装着される挿通部取付領域18が伸縮自在に構成されている。被介護者Mの背面腰部にあたる挿通部取付領域18を伸縮自在とすることで、被介護者Mそれぞれの体型の違いに対応し、シートカバー2′を体形に整合させることができる。
【0066】
そしてこれに対応して、伸縮自在な挿通部取付領域18に装着される挿通部12′も伸縮自在に構成されていることにより、挿通部12′を取り付けたときに挿通部取付領域18の伸縮性が阻害されることがなく、上記した体型の違いへの整合機能を維持することができる。
【0067】
また、本実施形態では特に、前述のように挿通部12′及び可動部材11をシートカバー2′から分離した状態で取り扱う場合、大きさが小さく、また例えば布やゴム素材で構成され厚みが薄いことから、いわゆる腰がなく、取り扱い性の面で難がある場合がある。
【0068】
本実施形態においては、可動部材11が2つ折りの状態で挿通部12′に挿通され、さらに挿通部12′が2つ折りされて所定の梱包材により梱包される。これにより、上記の難点を解消し、良好な取り扱い性を実現することができる。
【0069】
なお、以上の説明において、「垂直」「平行」「平面」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「垂直」「平行」「平面」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に平面」という意味である。
【0070】
なお、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0071】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0072】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0073】
1、1′ 被介護者用装着品
2、2′ シートカバー
3 第1吸収シート
4 左腰回り部
5 右腰回り部
6 左係合部
7 右係合部
8 係止部
9 第2吸収シート
10 シート取り付け部
11 可動部材
12、12′ 挿通部
13 把持部
14 縫製部
15、17 面ファスナー
16 被挿通部
18 挿通部取付領域
19 伸縮帯