(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065239
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】コンクリート養生マット
(51)【国際特許分類】
E04G 21/02 20060101AFI20230502BHJP
【FI】
E04G21/02 104
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175930
(22)【出願日】2021-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】塚本 康誉
【テーマコード(参考)】
2E172
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172EA02
(57)【要約】
【課題】乾燥の度合いを簡単に把握することのできるコンクリート養生マットを提供することを目的とする。
【解決手段】コンクリート養生マットは、少なくとも1つの貫通孔を有する基材マットと、その貫通孔に設けられた吸水膨張部材とを有し、吸水膨張部材が基材マットの第1面及び第1面と反対の第2面に露出するように設けられている。吸水膨張部材として水膨張ゴムが用いられる。基材マットを貫通するように吸水膨張部材が設けられコンクリート養生マットを用いることで、コンクリートを養生しながら乾燥度合いを簡単に把握することができ、水分を枯渇させないで適切な養生をすることができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの貫通孔を有する基材マットと、
前記少なくとも1つの貫通孔に設けられた吸水膨張部材と、
を有し、
前記吸水膨張部材が前記基材マットの第1面及び前記第1面と反対の第2面に露出することを特徴とするコンクリート養生マット。
【請求項2】
前記吸水膨張部材の乾燥時に、前記吸水膨張部材と前記少なくとも1つの貫通孔との間に隙間が形成されている、請求項1に記載のコンクリート養生マット。
【請求項3】
前記吸水膨張部材の前記第1面及び前記第2面の露出部に、前記基材マットに引っかかる突出部が設けられている、請求項1又は2に記載のコンクリート養生マット。
【請求項4】
前記少なくとも1つの貫通孔が複数の貫通孔から成り、
前記複数の貫通孔が前記基材マットに離隔して設けられ、
前記吸水膨張部材が前記複数の貫通孔のそれぞれに設けられている、請求項1乃至3のずれか一項に記載のコンクリート養生マット。
【請求項5】
前記吸水膨張部材が水膨張ゴムである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のコンクリート養生マット。
【請求項6】
前記吸水膨張部材の膨張方向が膨張異方性を有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のコンクリート養生マット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、コンクリートの養生に使用するコンクリート養生マットの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートはセメントと水との水和反応により強度が発現し骨材との繋ぎを形成する。コンクリートは、水和反応の際に風や気温の影響により水分が不足すると十分に反応が進まず期待した強度が得られないことやプラスチック収縮ひび割れが生じてしまうことがある。そのためコンクリートを打設した後に水分の逸散を抑えるため保湿するなどのコンクリートの硬化と強度発現を促す養生が重要となる。
【0003】
コンクリートを養生する際にはコンクリートの表面を覆う養生マットが使用される。コンクリート養生マットにはさまざまな種類があるが、例えば、コンクリート面への密着性を高め長期間に亘って水分を保持するために、基材のコンクリート面に水を吸収することによって膨潤する湿潤材が配置されたコンクリート養生マットが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるコンクリート養生マットは、コンクリート面側に配列される複数の湿潤材が水分を吸収して膨張し、隣接間の隙間を埋めるように変形することでコンクリートを長期にわたって養生することができるとされている。しかし、湿潤材は基材マットに覆われてしまうので外観に現れず、湿潤材の乾燥度合いを外観から簡単に判別できないという問題がある。
【0006】
このような問題に鑑み本発明の一実施形態は、乾燥の度合いを簡単に把握することのできるコンクリート養生マットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係るコンクリート養生マットは、少なくとも1つの貫通孔を有する基材マットと、その貫通孔に設けられた吸水膨張部材とを有し、吸水膨張部材が基材マットの第1面及び第1面と反対の第2面に露出するように設けられている。
【0008】
本発明の一実施形態において、吸水膨張部材の乾燥時に吸水膨張部材と少なくとも1つの貫通孔との間に隙間が形成されていてもよく、吸水膨張部材の第1面及び第2面の露出部に、基材マットに引っかかる突出部が設けられていてもよい。少なくとも1つの貫通孔は複数の貫通孔から成り、複数の貫通孔が基材マットに離隔して設けられ、吸水膨張部材が複数の貫通孔のそれぞれに設けられていてもよい。
【0009】
本発明の一実施形態において、吸水膨張部材が水膨張ゴムであってもよく、吸水膨張部材の膨張方向が膨張異方性を有していてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、基材マットを貫通するように吸水膨張部材が設けられることで、コンクリートを養生しながら乾燥度合いを簡単に把握することができ、水分を枯渇させないで適切な養生をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るコンクリート養生マットの平面図を示し、(A)は第1実施形態に係る構成を示し、(B)は第2実施形態に係る構成を示す。
【
図2】本発明の一実施形態に係るコンクリート養生マットの断面図を示し、(A)は
図1(A)に示すA-B間に対応する断面構造を示し、(B)は
図1(B)に示すC-D間に対応する断面構造を示す。
【
図3】本発明の一実施形態に係るコンクリート養生マットの断面構造を示し、(A)及び(B)は第1実施形態に係る構成を示し、(C)及び(D)は第2実施形態に係る構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面などを参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状などについて模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号(又は数字の後にA、B、又はa、bなどを付した符号)を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1」、「第2」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有しない。
【0013】
[第1実施形態]
図1(A)は、第1実施形態に係るコンクリート養生マット100Aの平面図を示す。コンクリート養生マット100Aは、基材マット102と吸水膨張部材106aとを含む。基材マット102は第1面10及び第1面10と反対側の第2面20を有し、コンクリート面に広げて敷く敷物である。基材マット102には第1面10から第2面20を貫通する少なくとも1つの貫通孔104を有する。少なくとも1つの貫通孔104には吸水膨張部材106aが設けられる。吸水膨張部材106aは、基材マット102の第1面10及び第2面20に露出するように設けられる。
【0014】
貫通孔104は、基材マット102に複数個設けられていることが好ましい。複数の貫通孔104は相互に離隔して基材マット102の面内全体に広がるように配置されていることが好ましい。そして、複数の貫通孔104のそれぞれには、前述のように吸水膨張部材106aが設けられていることが好ましい。
【0015】
基材マット102の寸法に限定はなく、縦900mm、横1800mmに裁断されたものを用いることができ、又はロール状に巻かれた状態で提供されてもよい。貫通孔104の大きさにも限定はなく、基材マット102の強度を損なわない範囲で適当な大きさに設けられる。例えば、貫通孔104は直径20mm~40mmの大きさの円形に形成される。基材マット102に設けられる貫通孔104の数(別言すれば吸水膨張部材の数)に特段の限定はないが、1平方メートル当たり10~100個程度設けられていることが好ましい。
【0016】
基材マット102の材質及び構造に特段の限定はない。基材マット102は、水分の蒸散抑制効果を得ることのできる素材で形成され、又は水分の蒸散抑制効果を得ることのできる構造を有していることが好ましい。例えば、基材マット102は、非通気性のシートと不織布又は織布とが積層されたマットを用いることができる。また、基材マット102は、コンクリート側の面となる第2面20に不織布又は織布が張られ、外面を向く第1面10に非通気性の樹脂製シートが張られ、両者の間に発泡樹脂シートが挟まれたマットを用いることができる。
【0017】
吸水膨張部材106aは、水を吸収することにより体積膨張する部材である。吸水膨張部材106aとしては、例えば、水膨張ゴムが用いられる。水膨張ゴムは、ゴム系の基本材料と吸水性材料を複合化したものであり、吸水性材料の種類、配合量の組み合わせで膨張の度合いを適宜調整することができ、任意の形状に成形することができる。
【0018】
図1(A)に示すA-B間の断面構造を
図2(A)に示す。
図2(A)は、吸水膨張部材106aが乾燥しているときのコンクリート養生マット100Aの部分断面構造を示す。前述のように、基材マット102には貫通孔104が設けられ、貫通孔104に嵌め込まれるように吸水膨張部材106aが取り付けられている。吸水膨張部材106aは、貫通孔104を貫通し、基材マット102の第1面10及び第2面20に露出するように取り付けられる。
【0019】
図2(A)に示すように、吸水膨張部材106aが乾燥しているよきは、貫通孔104との間に隙間ができていることが好ましい。吸水膨張部材106aは吸水により体積が膨張するので、乾燥時に貫通孔104との間に隙間がないと、吸水したときの体積膨張により基材マット102を変形させ、コンクリート面に平らに敷くことができなくなるおそれがある。そのため、吸水膨張部材106aの体積膨張を見込んで、乾燥時に貫通孔104との間に隙間を有するようにしておくことで体積膨張に伴う不具合を解消することができる。
【0020】
吸水膨張部材106aは、基材マット102の第1面10及び第2面20の両方に突出するように設けられ、その突出する部分に庇状の突出部108が設けられた形状を有していてもよい。突出部108は貫通孔104の外側に突出するので、吸水膨張部材106aが基材マット102から抜け落ちないようにすることができる。別言すれば、吸水膨張部材106aが断面形状においてH形(又は「エ」の字形)の形状を有し、突出部108となる部分が貫通孔104より大きく外側に突出することで、吸水膨張部材106aが基材マット102の貫通孔104に挿通された状態を維持することができる。
【0021】
図2(B)は、吸水膨張部材106aが吸水して膨張したときのコンクリート養生マット100Aの部分断面構造を示す。吸水膨張部材106aが吸水すると等方向に膨張し、吸水膨張部材106aが基材マット102から突出し外観においても変化を確認することができる。
【0022】
図3(A)及び(B)は、コンクリート部材200を養生するときに、コンクリート面にコンクリート養生マット100Aを敷いた状態を示す。
図3(A)は吸水膨張部材106aが乾燥している状態を示し、
図3(B)は吸水膨張部材106aが吸水により膨張している状態を示す。
【0023】
吸水膨張部材106aは、基材マット102の第1面10から第2面20を貫通するように取り付けられるため、コンクリート養生マット100Aをコンクリート部材200に敷いたとき、コンクリート面に直接接するように配置される。そして、コンクリート養生マット100Aは、
図3(A)に示すような吸水膨張部材106aが乾燥している状態から、散水により、またコンクリート部材200に含まれる水分を吸水することにより膨張し、
図3(B)に示すように吸水膨張部材106aが基材マット102から突き出るように変形した状態となる。吸水膨張部材106aは、吸水により膨張した後、コンクリート面が乾燥すると再び収縮し、
図3(A)に示すように元の大きさに戻る。
【0024】
コンクリート養生マット100Aは、コンクリート部材200の湿潤状態によって吸水膨張部材106aの形状が変化し、その変化の状態が外観に現れるので、目視によって湿潤養生対象箇所の乾燥度合いを把握することができる。吸水膨張部材106aが基材マット102の全面に離隔して配置されることにより、コンクリート部材200の湿潤養生対象箇所が広い領域に及んでも、乾燥度合いの偏りを視認することができる。それにより、施工者は散水等が必要な箇所を把握することができ、適切な処置を行うことができる。
【0025】
[第2実施形態]
図1(B)は、第2実施形態に係るコンクリート養生マット100Bの平面図を示す。第2実施形態に係るコンクリート養生マット100Bは、吸水膨張部材106bの特性が第1実施形態に示すものと異なっている。以下の説明では第1実施形態と異なる部分を中心に説明し、重複する説明は適宜省略するものとする。
【0026】
コンクリート養生マット100Bは、基材マット102と吸水膨張部材106bとを含む。基材マット102は貫通孔104が設けられ、吸水膨張部材106bは貫通孔104に露出するように取り付けられる。
【0027】
第2実施形態における吸水膨張部材106bは吸水したときの膨張方向に異方性を有する。すなわち、第1実施形態における吸水膨張部材106aは膨張方向に異方性がなく等方向に膨張するものあるが、第2実施形態における吸水膨張部材106bは特定方向の膨張率が他の方向の膨張率よりも大きい特性を有する。
【0028】
図1(B)に示すC-D間の断面構造を
図2(C)に示す。
図2(C)は、吸水膨張部材102bが乾燥しているときのコンクリート養生マット100Bの部分断面構造を示す。吸水膨張部材106bは基材マット102に設けられた貫通孔104に嵌合するように取り付けられる。このとき、吸水膨張部材106bは、貫通孔104と隙間なく嵌め込まれていてもよい。また、吸水膨張部材106bは、第1実施形態と同様にある程度の隙間が空いていてもよい。この場合、吸水膨張部材106bは接着剤などで基材マット102に接着されていてもよい。吸水膨張部材104bの形状は任意であるが、基材マット102の第2面20から貫通孔104に挿入され、乾燥時には上部が第1面10と略面一となる形状を有していてもよい。
【0029】
図2(D)は、吸水膨張部材106bが吸水して膨張したときのコンクリート養生マット100Bの部分断面構造を示す。吸水膨張部材106bが吸水すると、主として一方向(基材マット102の厚さ方向)に膨張し、吸水膨張部材106bの上部が基材マット102の第1面10から突出するように変形する。
【0030】
図3(C)及び(D)は、コンクリート部材200を養生するときに、コンクリート面にコンクリート養生マット100Bを敷いた状態を示す。
図3(C)は吸水膨張部材106bが乾燥している状態を示し、
図3(D)は吸水膨張部材106bが吸水により膨張している状態を示す。
【0031】
吸水膨張部材106bは、
図3(C)に示すように乾燥した状態から、コンクリート面への散水により、またコンクリート部材200に含まれる水分を吸収することにより一方向に膨張し、
図3(D)に示すように基材マット102から上部が突き出るように変形する。吸水膨張部材106bは、吸水により膨張した後、コンクリート面が乾燥すると再び収縮し、
図3(C)に示すように元の大きさに戻る。
【0032】
コンクリート養生マット100Bは、コンクリート部材200の湿潤状態によって吸水膨張部材106bの形状が一方向に変形し、その変形は基材マット102から突出する形状として外観に現れるので、目視によって湿潤養生対象箇所の乾燥度合いを把握することができる。吸水膨張部材106bが基材マット102の全面に離隔して配置されることにより、コンクリート部材200の湿潤養生対象箇所が広い領域に及んでも、乾燥度合いの偏りを視認することができる。それにより、施工者は散水等が必要な箇所を把握することができ、適切な処置を行うことができる。
【符号の説明】
【0033】
100A、100B:コンクリート養生マット、102:基材マット、104:貫通孔、106a、106b:吸水膨張部材、108:突出部、200:コンクリート部材