(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065252
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】解析システム及び解析方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20230502BHJP
G01S 17/89 20200101ALI20230502BHJP
G06T 7/254 20170101ALI20230502BHJP
G06T 7/521 20170101ALI20230502BHJP
G06T 7/70 20170101ALI20230502BHJP
【FI】
G06T7/00 C
G01S17/89
G06T7/254 B
G06T7/521
G06T7/70 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175955
(22)【出願日】2021-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】599011687
【氏名又は名称】学校法人 中央大学
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100097238
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 治
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】新妻 実保子
(72)【発明者】
【氏名】西尾 拓海
【テーマコード(参考)】
5J084
5L096
【Fターム(参考)】
5J084AA04
5J084AB07
5J084AB20
5J084AC10
5J084BA03
5J084EA40
5L096AA09
5L096BA02
5L096CA18
5L096FA67
5L096FA69
5L096FA70
5L096GA08
5L096GA19
5L096GA51
5L096HA03
5L096MA07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】空間内の物体を人と人以外の物体とに区別する解析システム及び解析方法を提供する。
【解決手段】所定測定時間間隔毎に所定空間内の物体までの距離を測定して3次元の点群データを出力する測域センサと、処理部と、を備える解析システムであって、処理部は、所定初期背景抽出用期間内において測域センサから出力される点群データに基づいて静止物体を抽出し、所定空間を俯瞰視し格子状に細分化したセル配列において各静止物体を構成する各セルを、初期背景として登録する初期背景抽出処理S1と、所定初期背景抽出用期間の後の所定観察期間内において測域センサから出力される点群データから初期背景を差し引くことにより動物体を抽出する動物体抽出処理S2と、抽出した動物体から可動静止物体を抽出し、セル配列において各可動静止物体を構成する各セルを後定義背景として再定義する可動静止物体抽出処理S3と、を実行する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定測定時間間隔毎の各測定時刻に所定空間内における物体までの距離を測定して3次元の点群データを出力する、測域センサと、
処理部と、
を備えた、解析システムであって、
前記処理部は、
所定初期背景抽出用期間内において各前記測定時刻に前記測域センサから出力される前記点群データに基づいて、1つ又は複数の静止物体を抽出し、前記所定空間を俯瞰視し格子状に細分化することにより定義されるセル配列において各前記静止物体を構成する各セルを、初期背景として登録する、初期背景抽出処理と、
前記所定初期背景抽出用期間の後の所定観察期間内において前記測定時刻に前記測域センサから出力される前記点群データから前記初期背景を差し引くことにより、1つ又は複数の動物体を抽出する、動物体抽出処理と、
前記1つ又は複数の動物体から1つ又は複数の可動静止物体を抽出し、前記セル配列において各前記可動静止物体を構成する各セルを、後定義背景として再定義する、可動静止物体抽出処理と、
を行うように構成されている、解析システム。
【請求項2】
前記処理部は、前記初期背景抽出処理において、
前記所定初期背景抽出用期間内の前記測定時刻に前記測域センサから出力される前記点群データに基づいて、1つ又は複数の物体を抽出する、物体抽出処理と、
前記物体抽出処理によって抽出した前記1つ又は複数の物体のうち、それぞれ少なくとも一部が所定高さ以上の高さ位置にある1つ又は複数の第1物体を、それぞれ静止物体として抽出し、前記セル配列において各前記静止物体を構成する各セルを前記初期背景として登録する、高位置静止物体抽出処理と、
前記物体抽出処理によって抽出した前記1つ又は複数の物体のうち、前記高位置静止物体抽出処理によって抽出した前記1つ又は複数の第1物体以外の1つ又は複数の第2物体のそれぞれについて、物体の直線性の度合を表す第1直線性評価値を求め、当該第1直線性評価値が所定第1直線性評価値閾値を超えた1つ又は複数の前記第2物体をそれぞれ静止物体として抽出し、前記セル配列において各前記静止物体を構成する各セルを前記初期背景として登録する、直線型静止物体抽出処理と、
を行うように構成されている、請求項1に記載の解析システム。
【請求項3】
前記処理部は、前記可動静止物体抽出処理において、
前記1つ又は複数の動物体のうちの第1動物体が、座位状態から立位状態に遷移し、その後、前記動物体抽出処理により前記第1動物体の周辺に新たな動物体が抽出され、その後、以下の式(5)を最初に満たした時刻から所定新動物体監視時間内において、前記式(5)を継続的に満たす時間が所定継続時間閾値を超えた場合、前記新たな動物体を可動静止物体として抽出し、前記セル配列において当該可動静止物体を構成する各セルを後定義背景として再定義する、連動型可動静止物体抽出処理
を行うように構成されている、請求項1又は2に記載の解析システム。
【数1】
上記式(5)において、
h(k,t):前記新たな動物体の高さ(mm)
γ:0以上200以下の所定の実数
h
sit_ave(p,q):前記第1動物体の座位高さ平均値(mm)
【請求項4】
前記処理部は、前記可動静止物体抽出処理において、
前記初期背景に遮蔽領域が所定遮蔽領域監視時間にわたって同じ場所に生じた場合、前記1つ又は複数の動物体のうち、前記測域センサと前記遮蔽領域との間に位置する第2動物体を特定し、当該第2動物体について、物体の直線性の度合を表す第2直線性評価値を求め、当該第2直線性評価値が所定第2直線性評価値閾値を超えた場合、当該第2動物体を可動静止物体として抽出し、前記セル配列において当該可動静止物体を構成する各セルを後定義背景として再定義する、直線型可動静止物体抽出処理
を行うように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の解析システム。
【請求項5】
前記処理部は、前記可動静止物体抽出処理において、
前記1つ又は複数の動物体のうちの第3動物体の最高点が、所定最高点監視時間にわたってほぼ同じ位置に位置した場合、当該第3動物体を可動静止物体として抽出し、前記セル配列において当該可動静止物体を構成する各セルを後定義背景として再定義する、最高点微変動型可動静止物体抽出処理
を行うように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の解析システム。
【請求項6】
前記処理部は、前記可動静止物体抽出処理において、
前記1つ又は複数の動物体のうちの第4動物体が、所定ボクセル数監視時間内における当該第4動物体の動物体構成ボクセル数の変動の度合を表すボクセル数変動評価値が所定ボクセル数変動評価値閾値未満である場合、当該第4動物体を可動静止物体として抽出し、前記セル配列において当該可動静止物体を構成する各セルを後定義背景として再定義する、ボクセル数微変動型可動静止物体抽出処理
を行うように構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の解析システム。
【請求項7】
所定測定時間間隔毎の各測定時刻に所定空間内における物体までの距離を測定して3次元の点群データを出力する、測域センサと、
処理部と、
を備えた、解析システムを用いた、解析方法であって、
前記処理部が、所定初期背景抽出用期間内において各前記測定時刻に前記測域センサから出力される前記点群データに基づいて、1つ又は複数の静止物体を抽出し、前記所定空間を俯瞰視し格子状に細分化することにより定義されるセル配列において各前記静止物体を構成する各セルを、初期背景として登録する、初期背景抽出ステップと、
前記処理部が、前記所定初期背景抽出用期間の後の所定観察期間内において前記測定時刻に前記測域センサから出力される前記点群データから前記初期背景を差し引くことにより、1つ又は複数の動物体を抽出する、動物体抽出ステップと、
前記処理部が、前記1つ又は複数の動物体から1つ又は複数の可動静止物体を抽出し、前記セル配列において各前記可動静止物体を構成する各セルを、後定義背景として再定義する、可動静止物体抽出ステップと、
を含む、解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解析システム及び解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、センサを用いて環境地図を作成する技術がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、空間内の物体の位置や形状を把握できるに留まり、空間内の物体を人と人以外の物体とに区別するものではなかった。
【0005】
本発明は、空間内の物体を人と人以外の物体とに区別することが可能になる、解析システム及び解析方法を、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解析システムは、
所定測定時間間隔毎の各測定時刻に所定空間内における物体までの距離を測定して3次元の点群データを出力する、測域センサと、
処理部と、
を備えた、解析システムであって、
前記処理部は、
所定初期背景抽出用期間内において各前記測定時刻に前記測域センサから出力される前記点群データに基づいて、1つ又は複数の静止物体を抽出し、前記所定空間を俯瞰視し格子状に細分化することにより定義されるセル配列において各前記静止物体を構成する各セルを、初期背景として登録する、初期背景抽出処理と、
前記所定初期背景抽出用期間の後の所定観察期間内において前記測定時刻に前記測域センサから出力される前記点群データから前記初期背景を差し引くことにより、1つ又は複数の動物体を抽出する、動物体抽出処理と、
前記1つ又は複数の動物体から1つ又は複数の可動静止物体を抽出し、前記セル配列において各前記可動静止物体を構成する各セルを、後定義背景として再定義する、可動静止物体抽出処理と、
を行うように構成されている。
【0007】
本発明の解析システムにおいて、
前記処理部は、前記初期背景抽出処理において、
前記所定初期背景抽出用期間内の前記測定時刻に前記測域センサから出力される前記点群データに基づいて、1つ又は複数の物体を抽出する、物体抽出処理と、
前記物体抽出処理によって抽出した前記1つ又は複数の物体のうち、それぞれ少なくとも一部が所定高さ以上の高さ位置にある1つ又は複数の第1物体を、それぞれ静止物体として抽出し、前記セル配列において各前記静止物体を構成する各セルを前記初期背景として登録する、高位置静止物体抽出処理と、
前記物体抽出処理によって抽出した前記1つ又は複数の物体のうち、前記高位置静止物体抽出処理によって抽出した前記1つ又は複数の第1物体以外の1つ又は複数の第2物体のそれぞれについて、物体の直線性の度合を表す第1直線性評価値を求め、当該第1直線性評価値が所定第1直線性評価値閾値を超えた1つ又は複数の前記第2物体をそれぞれ静止物体として抽出し、前記セル配列において各前記静止物体を構成する各セルを前記初期背景として登録する、直線型静止物体抽出処理と、
を行うように構成されていると、好適である。
【0008】
本発明の解析システムにおいて、
前記処理部は、前記可動静止物体抽出処理において、
前記1つ又は複数の動物体のうちの第1動物体が、座位状態から立位状態に遷移し、その後、前記動物体抽出処理により前記第1動物体の周辺に新たな動物体が抽出され、その後、以下の式(5)を最初に満たした時刻から所定新動物体監視時間内において、前記式(5)を継続的に満たす時間が所定継続時間閾値を超えた場合、前記新たな動物体を可動静止物体として抽出し、前記セル配列において当該可動静止物体を構成する各セルを後定義背景として再定義する、連動型可動静止物体抽出処理
を行うように構成されていると、好適である。
【数1】
上記式(5)において、
h(k,t):前記新たな動物体の高さ(mm)
γ:0以上200以下の所定の実数
h
sit_ave(p,q):前記第1動物体の座位高さ平均値(mm)
【0009】
本発明の解析システムにおいて、
前記初期背景に遮蔽領域が所定遮蔽領域監視時間にわたって同じ場所に生じた場合、前記1つ又は複数の動物体のうち、前記測域センサと前記遮蔽領域との間に位置する第2動物体を特定し、当該第2動物体について、物体の直線性の度合を表す第2直線性評価値を求め、当該第2直線性評価値が所定第2直線性評価値閾値を超えた場合、当該第2動物体を可動静止物体として抽出し、前記セル配列において当該可動静止物体を構成する各セルを後定義背景として再定義する、直線型可動静止物体抽出処理
を行うように構成されていると、好適である。
【0010】
本発明の解析システムにおいて、
前記処理部は、前記可動静止物体抽出処理において、
前記1つ又は複数の動物体のうちの第3動物体の最高点が、所定最高点監視時間にわたってほぼ同じ位置に位置した場合、当該第3動物体を可動静止物体として抽出し、前記セル配列において当該可動静止物体を構成する各セルを後定義背景として再定義する、最高点微変動型可動静止物体抽出処理
を行うように構成されていると、好適である。
【0011】
本発明の解析システムにおいて、
前記処理部は、前記可動静止物体抽出処理において、
前記1つ又は複数の動物体のうちの第4動物体が、所定ボクセル数監視時間内における当該第4動物体の動物体構成ボクセル数の変動の度合を表すボクセル数変動評価値が所定ボクセル数変動評価値閾値未満である場合、当該第4動物体を可動静止物体として抽出し、前記セル配列において当該可動静止物体を構成する各セルを後定義背景として再定義する、ボクセル数微変動型可動静止物体抽出処理
を行うように構成されていると、好適である。
【0012】
本発明の解析方法は、
所定測定時間間隔毎の各測定時刻に所定空間内における物体までの距離を測定して3次元の点群データを出力する、測域センサと、
処理部と、
を備えた、解析システムを用いた、解析方法であって、
前記処理部が、所定初期背景抽出用期間内において各前記測定時刻に前記測域センサから出力される前記点群データに基づいて、1つ又は複数の静止物体を抽出し、前記所定空間を俯瞰視し格子状に細分化することにより定義されるセル配列において各前記静止物体を構成する各セルを、初期背景として登録する、初期背景抽出ステップと、
前記処理部が、前記所定初期背景抽出用期間の後の所定観察期間内において前記測定時刻に前記測域センサから出力される前記点群データから前記初期背景を差し引くことにより、1つ又は複数の動物体を抽出する、動物体抽出ステップと、
前記処理部が、前記1つ又は複数の動物体から1つ又は複数の可動静止物体を抽出し、前記セル配列において各前記可動静止物体を構成する各セルを、後定義背景として再定義する、可動静止物体抽出ステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、空間内の物体を人と人以外の物体とに区別することが可能になる、解析システム及び解析方法を、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る解析システムを概略的に示す、概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る解析方法の概略的なフローチャートである。
【
図4】解析対象の所定空間の一例とセル配列の一例とを説明するための図面である。
【
図5】所定初期背景抽出用期間内のある測定時刻における
図4の所定空間の点群データをセル配列に格納した状態の解析データを説明するための図面である。
【
図6】
図5の解析データに対して初期背景抽出処理を行った後に得られた解析データを説明するための図面である。
【
図7】所定観察期間内のある測定時刻における
図4の所定空間の点群データについて、動物体抽出処理を行った後に得られた解析データを説明するための図面である。
【
図8】連動型可動静止物体抽出処理を説明するための図面である。
【
図9】直線型可動静止物体抽出処理を説明するための図面である。
【
図10】直線型可動静止物体抽出処理を説明するための図面である。
【
図11】ボクセル数微変動型可動静止物体抽出処理を説明するための図面である。
【
図12】ボクセル数微変動型可動静止物体抽出処理を説明するための図面である。
【
図13】
図6の解析データに対して可動物体抽出処理を行った後に得られた解析データを説明するための図面である。
【
図14】環境地図の一例を説明するための図面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しつつ、本発明に係る解析システム及び解析方法の実施形態を例示説明する。
各図において共通する構成要素には同一の符号を付している。
【0016】
〔解析システム1〕
まず、
図1及び
図4を参照して、本発明の解析方法を使用し得る、本発明の一実施形態に係る解析システム1を説明する。
図1は、解析システム1の構成を概略的に示している。解析システム1は、所定空間S(
図4)の解析をするように構成されている。
図1に示すように、解析システム1は、測域センサ2と、解析装置3と、を備えている。
図4は、所定空間Sの一例を俯瞰視した様子を示している。
解析システム1の解析対象とする所定空間Sとしては、例えばオフィス内空間や学校内空間等、屋内空間であると好適である。
具体的に、解析システム1は、所定空間S内の物体を人と人以外の物体とに区別して、所定空間Sが人によってどのように使われるかを解析するように、構成されている。解析システム1のユーザは、例えば、所定空間Sの解析者、所有者、又は、使用者等が、挙げられる。
【0017】
ここで、
図3及び
図4を参照しつつ、所定空間S内の物体の分類について説明する。
図4に例示するように、所定空間S内にはあらゆる物体O(Oa~Og)が存在する。
図3に示すように、物体Oは、静止物体SOと動物体MOとに分類することができる。静止物体SOは、測域センサ2の測定期間中において全く動かない物体を指しており、例えば壁、ドア、机等が挙げられる。
図4の例においては、所定空間S内の物体Oa~Ogのうち、物体Oa~Ocが静止物体SOであり、そのうち、物体Oa~Obは壁であり、物体Ocは机である。動物体MOは、測域センサ2の測定期間中において少なくとも一時的に動く物体を指す。動物体MOは、人Pと可動静止物体MSOとに分類することができる。可動静止物体MSOは、測域センサ2の測定期間中において人Pとの関わりによって動く物体を指しており、例えば、椅子、机、ホワイトボード、観葉植物、ごみ箱等が挙げられる。
図4の例においては、所定空間S内の物体Oa~Ogのうち、物体Od~Ogが動物体であり、そのうち、物体Oeが人Pであり、物体Od、Of、Ogが可動静止物体MSOである。可動静止物体MSOとしての物体Od、Of、Ogは、物体Odが椅子であり、物体Ofが観葉植物であり、物体Ogがごみ箱である。
解析システム1は、所定空間S内の人Pを、人以外の物体である静止物体SOや可動静止物体MSOから区別するように、構成されている。
【0018】
所定空間Sには、xyz直交座標系が定義される。
図4に示すように、x軸及びy軸は、それぞれ、水平方向に平行である。z軸は、高さ方向に平行である。
後述するように、解析システム1の解析装置3は、2次元のセル配列CAを用いて所定空間Sを解析する。セル配列CAは、
図4に示すように、所定空間Sを俯瞰視し格子状に細分化することにより定義されるものである。セル配列CAは、xy平面に平行である。セル配列CAのセルCは、x軸及びy軸のそれぞれに沿って配列されている。セル配列CAの各セルCは、正方形をなしている。セルCの一辺の長さは、1つのセルC内に複数の物体Oの全体が入り込むのを抑制する観点から、13cm以下であると好適であり、11cm以下であるとより好適である。また、セルCの一辺の長さは、解析装置3の処理量の増大を抑制する観点から、7cm以上であると好適であり、9cm以上であるとより好適である。セルCの一辺の長さは、例えば10cmであると好適である。
なお、各セルCの座標は、xy直交座標系において、(p.q)として表される。ここで、p、qは、それぞれ、整数であると好適である。
【0019】
(測域センサ2)
測域センサ2は、所定測定期間にわたって、所定測定時間間隔(例えば0.1秒)毎の各測定時刻において、所定空間S内における物体Oまでの距離を測定して3次元の点群データを出力するように構成されている。測域センサ2は、例えば、レーザによって所定測定時間間隔毎に所定空間S内における物体Oまでの距離を測定して3次元の点群データを出力するように構成された、3D-LiDAR (3D Laser Imaging Detection and Ranging)又は3D-LRF (3D Laser Range Finder)から構成されると、好適である。3次元の点群データの各点は、xyz座標系によって表される。
測域センサ2は、3次元の点群データを出力するように構成されているので、仮に2次元の点群データを出力するように構成されている場合に比べて、高さ情報を含めることができ、死角が少ないので、より正確に物体Oの位置、形状、及び個数の解析が可能になる。また、一般的に、3次元の点群データを出力するように構成された測域センサ(3D-LiDAR等)は、2次元の点群データを出力するように構成された測域センサ(2D-LiDAR等)に比べて、測定範囲が広いため、測域センサの数を減らすことができるという利点もある。
測域センサ2の数は、1つであると好適であるが、複数であってもよい。複数の測域センサ2を用いる場合、解析装置3は、これら複数の測域センサ2からの点群データどうしを合同した点群データを使用するとよい。
所定測定期間の長さは、例えば、0.5~5時間等が挙げられる。
測域センサ2は、その検出範囲が所定空間Sの全体を含むように、設置される。
測域センサ2は、所定空間S内の人Pよりも少し高い高さに設置されることが好ましい。例えば、測域センサ2は、地面から1.75~1.90mの高さに設置されると好適であり、地面から1.80~1.85mの高さに設置されるとより好適である。
測域センサ2による点群データは、解析装置3に出力される。測域センサ2は、所定測定時間間隔毎の各測定時刻に、点群データを、リアルタイムで、解析装置3へ通信(有線通信及び/又は無線通信)により送信する。
【0020】
(解析装置3)
解析装置3は、
図1に示すように、処理部31と、通信部32と、記憶部33と、入力部34と、表示部35と、を有する。解析装置3は、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、携帯端末、専用装置等、任意のコンピュータから構成されることができる。解析装置3は、1つのコンピュータで構成されてもよいし、複数のコンピュータで構成されてもよい。
【0021】
処理部31は、例えば1つ又は複数のCPUから構成され、記憶部33に記憶された解析プログラム等のプログラムを実行することにより、通信部32、記憶部33、入力部34、及び表示部35を含む、解析装置3の全体を制御しながら、後述する初期背景抽出処理、動物体抽出処理、可動静止物体抽出処理、環境地図作成処理等の処理を実行する。処理部31による処理の詳細については、後に説明する。
【0022】
通信部32は、測域センサ2との間で通信(有線通信及び/又は無線通信)を行うように構成されている。解析装置3は、通信部32を介して、測域センサ2から点群データを受信する。
【0023】
記憶部33は、例えば1つ又は複数のROM、1つ又は複数のRAM、及び/又は、外部記憶装置(USB、SDカード等)等から構成され、処理部31が実行するための解析プログラム等のプログラム、測域センサ2からの点群データ、処理部31の算出結果等、様々な情報を記憶する。
【0024】
入力部34は、例えばキーボード、マウス、及び/又は、押しボタン等から構成され、ユーザからの入力を受け付ける。
表示部35は、例えば液晶パネル等から構成され、後述する環境地図(
図14)等、様々な情報を表示する。
入力部34及び表示部35は、タッチパネルを構成してもよい。
なお、解析装置3は、入力部34及び/又は表示部35を備えていなくてもよい。
【0025】
〔解析方法〕
つぎに、本発明の一実施形態に係る解析方法について、
図2、
図4~
図14を参照しつつ説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る解析方法の概略的なフローチャートである。以下では、上述した
図1の例の解析システム1を用いる場合について説明するが、
図1の例とは異なる解析システム1を用いて、本発明の解析方法を実施することもできる。
本実施形態に係る解析方法は、初期背景抽出ステップS1と、動物体抽出ステップS2と、可動静止物体抽出ステップS3と、環境地図作成ステップS4と、を含む。これらのステップS1~S4は、解析装置3の処理部31が、記憶部33に記憶された解析プログラムを実行することにより、行う。
測域センサ2は、所定測定時間間隔毎の各測定時刻に、点群データを、リアルタイムで、解析装置3へ通信(有線通信及び/又は無線通信)により送信し、解析装置3は、その間、ステップS1~S3をリアルタイムで行う。
以下、各ステップについて説明する。
【0026】
-初期背景抽出ステップ(S1)-
まず、初期背景抽出ステップS1において、処理部31は、所定初期背景抽出用期間内において所定測定時間間隔毎の各測定時刻に測域センサ2から出力される点群データに基づいて、1つ又は複数の静止物体SOを抽出し、セル配列CAにおいて各静止物体SOを構成する各セルCを、初期背景IBとして登録する、初期背景抽出処理を行う。
所定初期背景抽出用期間の長さは、例えば100~140秒に設定されると好適である。所定初期背景抽出用期間は、測域センサ2の所定測定期間のうち比較的始めのほうの期間に設定されると好適であり、例えば、測域センサ2の所定測定期間の開始時刻と所定初期背景抽出用期間の開始時刻とが一致するように設定されると好適である。
【0027】
図6は、
図5の解析データに対して初期背景抽出ステップS1(初期背景抽出処理)を行った後に得られた解析データを概略的に示している。
図6では、初期背景IBとして登録されたセルCを、グレーに着色して示している。
【0028】
初期背景抽出ステップS1は、例えば、物体抽出ステップS11と、高位置静止物体抽出ステップS12と、直線型静止物体抽出ステップS13と、を含む。
【0029】
<物体抽出ステップ(S11)>
物体抽出ステップS11において、処理部31は、所定初期背景抽出用期間内における測定時刻に測域センサ2から出力される点群データに基づいて、1つ又は複数の物体Oを抽出する、物体抽出処理を行う。
処理部31は、物体抽出ステップS11を、所定初期背景抽出用期間内の測定時刻毎に繰り返す。
具体的には、
図5に示すように、処理部31は、物体抽出ステップS11において、例えば、以下のステップS111~S112を行う。
【0030】
まず、処理部31は、所定初期背景抽出用期間内の直近の測定時刻において測域センサ2から出力された点群データを、セル配列CAに格納する(セル配列格納ステップS111)。ここで、処理部31は、点群データの各点のx座標及びy座標に基づいて、点群データの各点を、それぞれセル配列CAにおいて対応するセルC内に格納する。
つぎに、処理部31は、
図5に示すように、クラスタリングにより、互いに隣接する複数の点からなる点群を、1つの点群クラスターひいては物体Oとして抽出し、各物体Oに個別のIDを割り当てる(クラスタリングステップS112)。このとき、処理部31は、今回の測定時刻の点群データに基づいて抽出した物体OにIDを割り当てる際、当該物体Oを構成する各セルCが、前回の測定時刻の点群データに基づいて抽出したいずれか1つの物体Oを構成する各セルCと、少なくとも部分的に重複している場合は、前回の測定時刻の点群データに基づいて抽出した当該1つの物体Oに割り当てたIDを引き継ぐ。これにより、異なる測定時刻どうしの間での物体Oのトラッキングが可能になる。なお、「物体Oを構成する各セルC」とは、物体Oを構成する点群が存在する各セルCを指す。
クラスタリングの具体的な手法としては、任意の公知の手法を用いてよい。
図5では、参考のため、物体抽出ステップS11において抽出された各物体Oに割り当てられたIDを表記している。
以下では、物体Oに割り当てられたIDを、包括して「i」、「k」等と表記する場合がある。
【0031】
<高位置静止物体抽出ステップ(S12)>
高位置静止物体抽出ステップS12において、処理部31は、物体抽出ステップS11で抽出した1つ又は複数の物体Oのうち、それぞれ少なくとも一部が所定高さ以上の高さ位置にある1つ又は複数の物体O(以下、「第1物体O」という。)を、それぞれ静止物体SOとして抽出し、セル配列CAにおいて各静止物体SOを構成する各セルCを初期背景IBとして登録する、高位置静止物体抽出処理を行う。
処理部31は、高位置静止物体抽出ステップS12を、所定初期背景抽出用期間の最初の測定時刻の点群データに基づいて行われた物体抽出ステップS11の結果(1つ又は複数の物体O)を用いて1回のみ実施してもよいし、あるいは、物体抽出ステップS11が実施される度にそれぞれ物体抽出ステップS11の結果を用いて実施してもよい。
処理部31は、高位置静止物体抽出ステップS12において第1物体Oを静止物体SOとして抽出して初期背景IBとして登録する際、物体抽出ステップS11において当該第1物体Oに割り当てたIDを取り消す(
図6)。
ここで、所定高さは、所定空間S内の人Pよりも少し高い高さに設置されることが好ましく、例えば、地面から1.75~1.90mの高さに設定されると好適であり、地面から1.80~1.85mの高さに設定されるとより好適である。所定高さは、所定空間S内の人Pよりも少し高い高さに設置された測域センサ2の設置高さと同じ高さに設定されると、好適である。
高位置静止物体抽出ステップS12により、ある程度高い位置にある物体Oを静止物体SOとして定義することで、その分、以降の処理の対象とする点群を減らすことができ、ひいては、解析装置3の処理の効率やリアルタイム性を向上できる。
【0032】
<直線型静止物体抽出ステップ(S13)>
直線型静止物体抽出ステップS13において、処理部31は、物体抽出ステップS11によって抽出した1つ又は複数の物体Oのうち、高位置静止物体抽出ステップS12によって抽出した1つ又は複数の第1物体O以外の1つ又は複数の物体O(以下、「第2物体O」という。)のそれぞれについて、物体の直線性の度合を表す第1直線性評価値Ccluster(i)を求め、当該第1直線性評価値Ccluster(i)が所定第1直線性評価値閾値Cth_clusterを超えた1つ又は複数の第2物体Oをそれぞれ静止物体SOとして抽出し、セル配列CAにおいて各静止物体SOを構成する各セルCを初期背景IBとして登録する、直線型静止物体抽出処理を行う。
直線型静止物体抽出処理によって抽出される静止物体SOは、概して言えば、人Pに比べて、直線性が高い(直線成分が多い)表面形状を有するといえる。なお、静止物体SOの抽出方法として、所定初期背景抽出用期間において全く動かなかった物体Oを静止物体SOとして抽出することも考えられるが、その場合、所定初期背景抽出用期間において全く動かなかった人Pも静止物体SOとして抽出されるおそれがある。そこで、本例では、物体Oの動きに着目する代わりに、物体Oの表面形状の直線性に着目することにより、そのようなおそれを回避し、より正確に静止物体SOを抽出できる。
【0033】
具体的に、直線型静止物体抽出ステップS13において、処理部31は、各第2物体Oについて、例えば、以下のステップS131~S138を行う。
【0034】
まず、処理部31は、所定初期背景抽出用期間の直近の測定時刻における点群データから上述のようにして得られた第2物体Oの点群クラスターを、仮想的なボクセル配列VA(図示せず)に格納する。ここで、処理部31は、第2物体Oの点群クラスターの各点のx座標、y座標及びz座標に基づいて、第2物体Oの点群クラスターの各点を、それぞれボクセル配列VAにおいて対応するボクセルV内に格納する(ボクセル配列格納ステップ S131)。
ボクセル配列VAは、立方体状のボクセルV(図示せず)をx軸、y軸、及びz軸のそれぞれに沿って3次元的に配列してなるものである。ボクセルVの一辺の長さは、セル配列CAのセルCの一辺の長さと同じである。各ボクセルVの座標は、xyz直交座標系において、(p.q,r)として表される。ここで、p、q、rは、それぞれ、整数であると好適である。
【0035】
つぎに、処理部31は、第2物体Oを構成する各ボクセルVのうちいずれか1つのボクセルV(p,q,r)内に格納された点群のxy平面上の中心点 P
center=(P
center:x,P
center:y)を求める(中心点算出ステップS132)。中心点 P
centerは、具体的に、平均点又は重心点を意味する。ここで、「第2物体Oを構成する各ボクセルV」とは、第2物体Oを構成する点群が格納された各ボクセルVを指す。
つぎに、処理部31は、中心点 P
centerと当該ボクセル内に格納された各点 P
n=(P
n:x,P
n:y,P
n:z)とのxy平面方向のなす角θ
nを、それぞれつぎの式(1)により算出する(なす角算出ステップS133)。この角度θ
nは、一対の点P
center 、P
nどうしを結んだ線分をxy平面に投影してなる線分の、x軸に対するなす角度である。
【数2】
【0036】
つぎに、処理部31は、なす角θ
nとなす角θ
nの平均値θ
aveとを用いて、角度標準偏差σ
θ(p,q,r) を、つぎの式(2)により算出する(角度標準偏差算出ステップS134)。
【数3】
【0037】
つぎに、処理部31は、角度標準偏差σ
θ(p,q,r)を用いて、当該ボクセルVの背景重みω
BG(p,q,r)を、つぎの式(3)により求める(背景重み算出ステップS135)。
【数4】
式(3)において、α及びβは、0<α<βを満たす限り、それぞれ任意の値に設定されてよい。なお、本発明の発明者は、様々な解析を通して、一般的に、あるボクセルがσ
θ(p,q,r)<0.1を満たす場合、当該ボクセル内の点群は、静止物体SOを構成する傾向があり、また、あるボクセルが0.1≦σ
θ(p,q,r)<0.5を満たす場合、当該ボクセル内の点群は、動物体MOを構成する傾向がある、との知見を得た。この知見に鑑みて、αは、0.10であると好適であり、βは、0.50であると好適である。
【0038】
同様にして、処理部31は、第2物体Oを構成する各ボクセルVの全てに対して、ステップS132~S135を実施して、背景重みωBG(p,q,r)をそれぞれ求める。
【0039】
つぎに、処理部31は、第2物体Oについて求めた各背景重みωBG(p,q,r)の平均値ωBGave(p,q,r)を算出する(背景重み平均値算出ステップS136)。
同様にして、処理部31は、所定初期背景抽出用期間内の測定時刻毎に、ステップS131~S136を実施して、当該第2物体Oの各背景重みωBG(p,q,r)の平均値ωBGave(p,q,r)を算出する。
【0040】
つぎに、処理部31は、所定初期背景抽出用期間内の各測定時刻の点群データ毎の当該第2物体Oの各背景重みωBG(p,q,r)の平均値ωBGave(p,q,r)どうしを加算することにより、当該第2物体Oの第1直線性評価値Ccluster(i)を求める(第1直線性評価値算出ステップS137)。
第1直線性評価値Ccluster(i)は、第2物体Oの表面形状の直線性の度合を表しており、その値が高いほど、表面形状の直線性が高いことを意味する。Ccluster(i)のiは、第2物体OのIDを表している。
【0041】
つぎに、処理部31は、第1直線性評価値Ccluster(i)と所定第1直線性評価値閾値Cth_clusterとを比較し、第1直線性評価値Ccluster(i)が所定第1直線性評価値閾値Cth_clusterを超えた場合、当該第2物体Oをそれぞれ静止物体SOとして抽出し、セル配列CAにおいて各静止物体SOを構成する各セルCを初期背景IBとして登録する(初期背景登録ステップS138)。
所定第1直線性評価値閾値Cth_clusterは、例えば960であると好適である。
【0042】
処理部31は、直線型静止物体抽出ステップS13において第2物体Oを静止物体SOとして抽出して初期背景IBとして登録する際、物体抽出ステップS11において当該第2物体Oに割り当てたIDを取り消す(
図6)。
【0043】
なお、初期背景抽出ステップS1は、上述した高位置静止物体抽出ステップS12及び直線型静止物体抽出ステップS13のうち一方のみを含んでもよい。
また、初期背景抽出ステップS1は、処理部31は、上述した高位置静止物体抽出ステップS12や直線型静止物体抽出ステップS13とは異なる方法によって、物体Oを静止物体SOとして抽出してもよい。
【0044】
-動物体抽出ステップ(S2)-
動物体抽出ステップS2において、処理部31は、所定初期背景抽出用期間の後の所定観察期間内において測定時刻に測域センサ2から出力される点群データから、初期背景抽出ステップS1で登録した初期背景IBを差し引くことにより、1つ又は複数の動物体MOを抽出する、動物体抽出処理を行う。
所定観察期間は、測域センサ2の所定測定期間のうち、所定初期背景抽出用期間の後の期間のうちの任意の期間に設定されてよく、例えば、測域センサ2の所定測定期間のうち、所定初期背景抽出用期間の後の期間の全部に設定されると好適である。
処理部31は、動物体抽出ステップS2を、所定観察期間内の測定時刻毎に繰り返す。
図7は、所定観察期間内のある測定時刻における
図4の所定空間の点群データを概略的に示している。
具体的には、処理部31は、動物体抽出ステップS2において、以下のステップS21~S23を行う。
【0045】
まず、処理部31は、
図7に示すように、所定観察期間内の直近の測定時刻において測域センサ2から出力された点群データを、セル配列CAに格納する(セル配列格納ステップS21)。ここで、処理部31は、点群データの各点のx座標及びy座標に基づいて、点群データの各点を、それぞれセル配列CAにおいて対応するセルC内に格納する。
つぎに、処理部31は、当該点群データから、初期背景抽出ステップS1で登録した初期背景IBを差し引くことにより、初期背景IBのセルC以外のセルC内に格納された点群データのみを、以降の処理対象として残す(差し引きステップS22)。これらの残った点群データは、いずれも、動物体MOの点群データということになる。
つぎに、処理部31は、
図7に示すように、処理対象として残した点群データに対して、クラスタリングすることにより、当該点群データのうちの互いに隣接する複数の点からなる点群を、1つの点群クラスターひいては動物体MOとして抽出し、各動物体MOに個別のIDを割り当てる(クラスタリングステップS23)。このとき、処理部31は、今回の測定時刻の点群データに基づいて抽出した動物体MOにIDを割り当てる際、当該動物体MOを構成する各セルCが、前回の測定時刻の点群データに基づいて抽出したいずれか1つの動物体MOを構成する各セルCと、少なくとも部分的に重複している場合は、前回の測定時刻の点群データに基づいて抽出した当該1つの動物体MOに割り当てたIDを引き継ぐ。これにより、異なる測定時刻どうしの間での動物体MOのトラッキングが可能になる。
クラスタリングの具体的な手法としては、任意の公知の手法を用いてよい。
図7では、参考のため、動物体抽出ステップS2において抽出された各動物体MOに割り当てられたIDを表記している。
【0046】
-可動静止物体抽出ステップ(S3)-
可動静止物体抽出ステップS3において、処理部31は、動物体抽出ステップS2で抽出した1つ又は複数の動物体MOから1つ又は複数の可動静止物体MSOを抽出し、セル配列CAにおいて各可動静止物体MSOを構成する各セルCを、後定義背景LBとして再定義する、可動静止物体抽出処理を行う。
後定義背景LBとして再定義された動物体MOは、それ以降、後定義背景LBとして扱われ、動物体MOとしては扱われない。
処理部31は、可動静止物体抽出ステップS3を、動物体抽出ステップS2を行う度に(すなわち、所定観察期間内の測定時刻毎に)、実施する。
【0047】
図13は、
図7の解析データに対して可動静止物体抽出ステップS3(可動静止物体抽出処理)を行った後に得られた解析データを概略的に示している。
図13では、後定義背景LBとして再定義されたセルCを、グレーに着色して示している。
図13からわかるように、可動静止物体抽出ステップS3の後に、セル配列CAのうち初期背景IB及び後定義背景LBのセルC以外のセルCに格納された点群データからなる動物体MOは、いずれも、人Pということになる。このようにして、解析システム1は、所定空間S内の物体Oを人Pと人以外の物体とに区別することが可能になる。
【0048】
処理部31は、可動静止物体抽出ステップS3において動物体MOを可動静止物体MSOとして抽出して後定義背景LBとして再定義する際、動物体抽出ステップS2において当該動物体MOに割り当てたIDを取り消す(
図13)。
【0049】
可動静止物体抽出ステップS3は、例えば、連動型可動静止物体抽出ステップS31と、直線型可動静止物体抽出ステップS32と、微動型可動静止物体抽出ステップS34と、を含む。
【0050】
<連動型可動静止物体抽出ステップ(S31)>
一般的に、屋内空間に存在する可動静止物体MSOの中で、最も多いものは、椅子である。椅子は、人が、椅子に座り、立ち上がり、そして、椅子から離れる、といった一連の動作に連動して移動される傾向がある。そこで、連動型可動静止物体抽出ステップS31では、このような椅子及び人の動作を検出し、可動静止物体MSOとしての椅子の抽出を行う。
連動型可動静止物体抽出ステップS31において、処理部31は、動物体抽出ステップS2で抽出した1つ又は複数の動物体MOのうちの1つ又は複数の動物体MO(以下、「第1動物体MO」という。)が、座位状態から立位状態に遷移し、その後、動物体抽出ステップS2(動物体抽出処理)により第1動物体MOの周辺に新たな動物体MOが抽出され、その後、以下の式(5)を最初に満たした時刻から所定新動物体監視時間内において、式(5)を継続的に満たす時間T
chair(秒)が所定継続時間閾値を超えた場合、当該新たな動物体MOを可動静止物体MSOとして抽出し、セル配列CAにおいて当該可動静止物体MSOを構成する各セルCを後定義背景LBとして再定義する、連動型可動静止物体抽出処理を行う。
【数5】
上記式(5)において、
h(k,t):上記新たな動物体MOの高さ(mm)
γ:0以上200以下の所定の実数
h
sit_ave(p,q):第1動物体MOの座位高さ平均値(mm)
【0051】
具体的に、連動型可動静止物体抽出ステップS31において、処理部31は、例えば、以下のステップS311~S316を行う。
【0052】
まず、処理部31は、各動物体MOのそれぞれについて、座位状態にあるか否かを判定する(座位判定ステップS311)。ここで、座位状態とは、人が椅子に座っている状態を想定している。一方、立位状態とは、人が立っている状態を想定している。
処理部31は、座位判定ステップS311を、所定観察期間内の測定時刻毎に、実施する。
ここで、座位判定ステップS311の具体的な方法について説明する。動物体MOを構成する各セルCには,そのセルCに含まれる点群のうち最も高い位置にある点のz 座標値が保存されている。ある測定時刻tにおける動物体MO(IDを「i」とする。)の高さh(i,t)(mm)を、当該測定時刻tにおいて当該動物体MOを構成する各セルCの中で最も高い位置にある点のz 座標値と定義する。また、当該動物体MOの最大高さh
max(i)(mm)を、測定時刻tまでに獲得された当該動物体MOの高さh(i,t)の最大値とする。また、座位判定用閾値h
sit(i)(mm)を、つぎの式(4)により定義する。
【数6】
なお、
図8に示すように、座位判定用閾値h
sit(i)は、座位状態にある人の高さに相当する。式(4)において、0.55 h
max(i)(mm)は、人の座高に相当する。これは、厚生労働省の調べによると、日本人の座高は性別によらず平均で身長の約53~55%であることを、考慮して設定した。また、式(4)において、0.25 h
max(i)-10(mm)は、地面から椅子の座面までの高さに相当する。これは、人間工学に基づいた椅子の理想的な座面の高さが身長の25%から10mm低い値とされていることを、考慮して設定した。なお、人が歩き回るシチュエーションにおいて、人の最大高さh
max(i)は、人の身長に近似することから、式(4)では、人の身長としてh
max(i)を採用している。
座位判定ステップS311では、処理部31は、直近の測定時刻tにおける動物体MO(ID:i)がh(i,t)<h
sit(i)を満たす場合、その動物体MOは座位状態にあると判定し、それ以外の場合は、その動物体MOは立位状態にあると判定する。
【0053】
処理部31は、座位判定ステップS311において、各動物体MOのうちの1つ又は複数の動物体MO(以下、「第1動物体MO」という。)が座位状態にあると判定した場合、当該第1動物体MO(ID:i)の中心P(i)から半径50cm以内にある各セルCに、その時の当該第1動物体MOの高さh(i,t)を保存し、さらに、これまでこれらの各セルCに蓄積された高さh(i,t)の平均値hsit_ave(p,q)(以下、「座位高さ平均値hsit_ave(p,q)」という。)を算出する(座位高さ平均値算出ステップS312)。
ここで、「当該第1動物体MO(IDを「i」とする。)の中心P(i)」とは、xy座標系において、当該第1動物体MOを構成する点群の平均点又は重心点を意味する。
処理部31は、各動物体MOのそれぞれに対し、座位高さ平均値算出ステップS312を、座位判定ステップS311において当該動物体MOが座位状態にあると判定した度に実施する。
【0054】
また、処理部31は、座位判定ステップS311において、第1動物体MOが座位状態にあると判定した場合、その後もトラッキングにより当該第1動物体MOを監視し、その後に当該第1動物体MOが立位状態に遷移し(すなわち、その後の座位判定ステップS311で当該第1動物体MOが立位状態にあると判定され)、さらにその後、動物体抽出ステップS2において当該第1動物体MOの周辺に新たな動物体MO(IDを「k」とする。)が抽出されたか否かを判断する(監視ステップS313)。
ここで、「当該第1動物体MOの周辺」とは、具体的に、例えば、当該第1動物体MOの中心P(i)から半径50cm以内にある各セルCのそれぞれの中心から半径50cm以内の領域が挙げられる。
なお、動物体抽出ステップS2において当該第1動物体MOの周辺に新たな動物体MO(ID:k)が抽出された場合とは、椅子とこれに座っている又はこれの傍に立っている人とが合わさって1つの動物体MOとして検出されていた状態(すなわち、椅子及び人に対して1つのIDのみが割り振られていた状態。
図6参照。)から、人が椅子から離れたことによって椅子と人とが別々の動物体MOとして検出された状態(すなわち、IDが1つ増えることにより、椅子及び人に対して別々のIDが割り振られた状態。
図7参照。)に、遷移した場合を、想定している。
【0055】
処理部31は、監視ステップS313において、第1動物体MO(ID:i)が座位状態から立位状態に遷移し、さらにその後、動物体抽出ステップS2において当該第1動物体MOの周辺に新たな動物体MO(ID:k)が抽出されたと判断した場合、つぎの式(5)を満たすか否かを判断する(高さ判断ステップS314)。
【数7】
式(5)において、h(k,t)は、上記新たな動物体MOの高さ(mm)であり、h
sit_ave(p,q)は、直近の座位高さ平均値算出ステップS312で求めた上記第1動物体MO(ID:i)の座位高さ平均値h
sit_ave(p,q)である。式(5)において、γは、0(mm)以上の所定の実数であり、例えば0(mm)以上200(mm)以下に設定されると好適であり、50(mm)以上150(mm)以下に設定されるとより好適であり、例えば100(mm)に設定されると好適である。
なお、当該新たな動物体MOは、初期位置から移動した椅子であるか、あるいは、新たに椅子に座りに来た人である可能性がある。当該新たな動物体MOが椅子であるならば、当該新たな動物体MOの高さh(k,t)は、上記第1動物体MOの座位高さ平均値h
sit_ave(p,q)よりも低い可能性が高い。式(5)では、測域センサ2の誤差等を考慮し、より確実に当該新たな動物体MOが椅子か否かを判断できるように、当該新たな動物体MOの高さh(k,t)にγを加えた値を、第1動物体MOの座位高さ平均値h
sit_ave(p,q)と比較している。
【0056】
処理部31は、高さ判断ステップS314において、式(5)を満たすと判断した場合、当該新たな動物体MOを可動静止物体の候補として、式(5)を継続的に満たす時間Tchair(秒)の計測を行う(時間計測ステップS315)。
処理部31は、時間計測ステップS315において、式(5)を最初に満たした時刻から所定新動物体監視時間内において時間Tchairが所定継続時間閾値を超えた場合、当該新たな動物体MOを可動静止物体MSOとして抽出し、セル配列CAにおいて当該可動静止物体MSOを構成する各セルCを後定義背景LBとして再定義する(再定義ステップS316)。
なお、所定新動物体監視時間は、例えば、100~140秒が好適であり、例えば120秒が好適である。また、所定継続時間閾値は、例えば、5~20秒が好適であり、例えば12秒が好適である。
【0057】
処理部31は、再定義ステップS316において当該新たな動物体MOを可動静止物体MSOとして抽出して後定義背景LBとして再定義する際、動物体抽出ステップS2において当該新たな動物体MOに割り当てたIDを取り消す(
図13)。
【0058】
<直線型可動静止物体抽出ステップ(S32)>
一般的に、屋内空間に存在する可動静止物体MSOの中で、椅子の次に多いのは、ホワイトボードや机等である。これらの多くは、表面が平らであり,測域センサ2から得られる点群データでは、直線的な点の集合体として表現される。そこで直線型可動静止物体抽出ステップS32では、動物体MOの表面の直線形状を抽出し、それをもとにした第2直線性評価値を求め、第2直線性評価値に基づいて、可動静止物体MSOとしてのホワイトボードや机等の抽出を行う。
直線型可動静止物体抽出ステップS32において、処理部31は、初期背景IBに遮蔽領域SRが所定遮蔽領域監視時間にわたって同じ場所に生じた場合、動物体抽出ステップS2で抽出した1つ又は複数の動物体MOのうち、前記測域センサと前記遮蔽領域SRとの間に位置する動物体MO(以下、「第2動物体MO」という。)を特定し、当該第2動物体MOについて、物体の直線性の度合を表す第2直線性評価値CBG(t,i)を求め、当該第2直線性評価値CBG(t,i)が所定第2直線性評価値閾値Cth_BGを超えた場合、当該第2動物体MOを可動静止物体MSOとして抽出し、セル配列CAにおいて当該可動静止物体MSOを構成する各セルCを後定義背景LBとして再定義する、直線型可動静止物体抽出処理を行う。
【0059】
具体的に、直線型可動静止物体抽出ステップS32において、処理部31は、例えば、以下のステップS321~S331を行う。
【0060】
まず、処理部31は、セル配列CAに格納された点群データに基づいて、初期背景IBに遮蔽領域SRが所定遮蔽領域監視時間にわたって同じ場所に生じたか否かを判断する(遮蔽領域監視ステップS321)。
なお、所定観察期間中に可動静止物体MSOが人によって動かされた場合、セル配列CAにおける初期背景IBには、当該可動静止物体MSOによって、遮蔽領域SR(影)が生じる。遮蔽領域SRは、測域センサ2と当該遮蔽領域SRとの間に可動静止物体MSOがあることによって、測域センサ2によって検出されない領域であり、セル配列CAにおいて、点群が存在しない領域である。例えば、
図7の例では、所定観察期間中に可動静止物体MSO(ID:8)としてのホワイトボードが所定空間S内へ移動され、その結果、初期背景IBには、ホワイトボードによって、遮蔽領域SRが生じている。
処理部31は、具体的に、遮蔽領域監視ステップS321において、初期背景IBを構成する各セルCのうち、少なくとも1つのセルCが、所定遮蔽領域監視時間にわたって点群を含まなかった場合、初期背景IBに当該少なくとも1つのセルCからなる遮蔽領域SRが所定遮蔽領域監視時間にわたって同じ場所に生じたと判断する。
【0061】
処理部31は、遮蔽領域監視ステップS321において、初期背景IBに遮蔽領域SRが所定遮蔽領域監視時間にわたって同じ場所に生じたと判断した場合、各動物体MOのうち、測域センサ2と遮蔽領域SRとの間に位置する動物体MO(以下、「第2動物体MO」という。)を特定する(第2動物体特定ステップS322)。
なお、第2動物体MOは、遮蔽領域SRを生じさせた可動静止物体MSOである可能性があることになる。よって、第2動物体MOを可動静止物体MSOの候補とし、第2動物体MOに対して以降の処理を行う。
なお、処理部31は、ステップS321~S322によって、複数の遮蔽領域SRのそれぞれに対する複数の第2動物体MOを特定した場合は、各第2動物体MOのそれぞれに対して以降の処理を行う。
【0062】
つぎに、処理部31は、
図9に示すように、第2動物体MOを構成する各セルC(p,q)のそれぞれの中心点P
cellを求める(セル中心点算出ステップS323)。ここで、セルC(p,q)の中心点P
cellは、当該セルC内に格納された点群の平均点又は重心点を意味する。セル中心点算出ステップS323により、以降に処理対象とする点群の数を減らすことができ、処理の効率性やリアルタイム性を向上できる。
【0063】
つぎに、処理部31は、第2動物体MOを構成する複数の中心点P
cellを、中心点P
cellのx座標の昇順に並び替えた上で、互いに隣接する一対の中心点P
cellどうしのユークリッド距離d
n(
図9)を、互いに隣接する一対の中心点P
cellからなる対毎に求める(ユークリッド距離算出ステップS324)。
ユークリッド距離算出ステップS324において、処理部31は、例えば、第2動物体MOを構成する複数の中心点P
cellを、P
cellのx座標の昇順に並び替えて、そのうち一番端にある中心点 P
cell(最もx座標が小さいP
cell)から順に、ユークリッド距離d
n(当該中心点 P
cellと当該中心点 P
cellに最も隣接した他の中心点 P
cellとの間のユークリッド距離d
n)を求めると、好適である。この場合、1つの中心点P
cellに対して(中心点P
cell毎に)1つのユークリッド距離d
nのみが得られる。仮に同じx座標に複数の中心点P
cellが存在する場合は、それら複数の中心点P
cellを、中心点P
cellのy座標の昇順に並び替えた上で、y軸方向において互いに隣接する一対の中心点P
cellどうしのユークリッド距離d
nを、互いに隣接する一対の中心点P
cellからなる対毎に求める。なお、n(n=2,3...N)は、第2動物体MOを構成するセルCの数を示す。
【0064】
つぎに、処理部31は、第2動物体MOの各ユークリッド距離d
nの平均値d
n_aveを算出し、
図10に示すように、平均値d
n_aveによって、第2動物体MOを構成する複数の中心点P
cellを、2つの分割クラスターに分割する(クラスター分割ステップS325)。このとき、一方の分割クラスター(以下、「第1分割クラスター」という。)は、第2動物体MOを構成する複数の中心点P
cellのうち、平均値d
n_ave未満のユークリッド距離d
nに対応する中心点P
cellから構成され、他方の分割クラスター(以下、「第2分割クラスター」という。)は、第2動物体MOを構成する複数の中心点P
cellのうち、平均値d
n_ave以上のユークリッド距離d
nに対応する中心点P
cellから構成されるようにする。
なお、本発明の発明者は、様々な解析を通して、一般的に、直線性が高い表面形状を有する可動静止物体MSOのユークリッド距離d
nの分布は、
図10に示すように、2つの極大値(ピーク)を有することを、知見として得た。クラスター分割ステップS325は、この知見に基づいている。ここで、「ユークリッド距離d
nの分布」とは、
図10に例示するように、横軸をユークリッド距離d
nとし、縦軸を、d
nの総数に対する、それぞれの値を有するd
nの数の割合とした、グラフを意味する。
【0065】
つぎに、処理部31は、第1分割クラスター及び第2分割クラスターのそれぞれについて、それぞれの分割クラスターを構成する複数の中心点P
cellにおける、互いに隣接する一対の中心点P
cell=(P
cell,x:k,P
cell,y:k)、P
cell=(P
cell,x:k+1,P
cell,y:k+1)どうしの角度θ
m(
図11)を、つぎの式(6)により、互いに隣接する一対の中心点P
cellからなる対毎に求める(角度算出ステップS326)。この角度θ
mは、互いに隣接する一対の中心点P
cellどうしを結んだ線分の、x軸に対するなす角度である。
【数8】
ここで、m(m=1,2...M)は、その分割クラスターを構成するセルの番号を示し、Mは、その分割クラスターを構成するセルの数(すなわち、その分割クラスターを構成する中心点P
cellの数)を示す。
【0066】
つぎに、処理部31は、第1分割クラスター及び第2分割クラスターのそれぞれについて、角度算出ステップS326で求めた角度θ
mを用いて、つぎの式(7)により、直線度μ(度)を求める(直線度算出ステップS327)。
【数9】
直線度μは、0に近いほど、表面形状の直線性が高いことを示す。
【0067】
つぎに、処理部31は、第1分割クラスター及び第2分割クラスターのそれぞれについて、直線度算出ステップS327で求めた直線度μを用いて、つぎの式(8)により、形状スコアεを求める(形状スコア算出ステップS328)。
【数10】
式(8)において、α=-0.0006、β=5.0とする。式(8)からわかるように、形状スコアεは、2次関数で表される。直線度μの分布が反比例グラフに近似できるとの知見を得たことから、形状スコアεの式をこのように設定した。
【0068】
つぎに、処理部31は、第1分割クラスター及び第2分割クラスターのそれぞれについて形状スコア算出ステップS328で求めた形状スコアεのうち、大きいほうの形状スコアεを大形状スコアεmaxとし、小さいほうの形状スコアεを小形状スコアεminと決定する(大小形状スコア決定ステップS329)。
【0069】
つぎに、処理部31は、直近の測定時刻tにおける第2直線性評価値C
BG(t,i)を、以下の式(9)により算出する(第2直線性評価値算出ステップS330)。
【数11】
なお、本発明の発明者は、様々な解析を通して、一般的に、直線性の高い表面形状を有する可動静止物体MSOは、0<ε
max<2.0、0<ε
min<1.5となる傾向があり、人は、3.0<ε
max<5.0、2.0<ε
min<4.0となる傾向があるとの知見を得た。第2直線性評価値C
BG(t,i)の式(9)は、この知見に基づいて決定した。
第2直線性評価値C
BG(t,i)は、その値が高いほど、第2動物体MOの表面形状の直線性が高いこと、ひいては、第2動物体MOが可動静止物体MSOである可能性が高いことを意味する。
処理部31は、所定測定時間間隔毎に(すなわち、測定時刻t毎に)、上述したステップS323~S330を繰り返すことで、第2直線性評価値C
BG(t,i)を算出していく。
なお、処理部31は、これと並行して、第2動物体MOの速度を監視し、第2動物体MOの速度が1秒以上にわたって0.1 m/s以上となった場合は、第2動物体MOが人である可能性が高いことから、第2直線性評価値算出ステップS330において、式(9)で求められる第2直線性評価値C
BG(t,i)から、1.0減算するようにすると、好適である。
【0070】
処理部31は、第2動物体特定ステップS322で第2動物体MOを特定した時刻から所定第2直線性評価時間内に第2直線性評価値CBG(t,i)が所定第2直線性評価値閾値Cth_BGを超えた場合、第2動物体MOを可動静止物体MSOとして抽出し、セル配列CAにおいて当該可動静止物体MSOを構成する各セルCを後定義背景LBとして再定義する(再定義ステップS331)。
なお、所定第2直線性評価時間は、例えば、100~140秒が好適であり、例えば120秒が好適である。また、所定第2直線性評価値閾値Cth_BGは、例えば、960が好適である。
【0071】
処理部31は、再定義ステップS331において当該第2動物体MOを可動静止物体MSOとして抽出して後定義背景LBとして再定義する際、動物体抽出ステップS2において当該第2動物体MOに割り当てたIDを取り消す(
図13)。
【0072】
<微動型可動静止物体抽出ステップ(S34)>
一般的に、屋内における可動静止物体MSOとしては、上述の連動型可動静止物体抽出ステップS31や直線型可動静止物体抽出ステップS32で抽出の対象とした可動静止物体MSOの他に、観葉植物、ごみ箱、ノートパソコン等のような、環境によって形状が異なり、動かされるタイミングや条件が異なる可動静止物体MSOが存在する。これらの可動静止物体MSOと人との最大の差は、能動的動作の有無であるといえる。人は、能動的動作があり得るのに対し、これらの可動静止物体MSOは、能動的には動かないため、動きの量は微量となる。そこで、微動型可動静止物体抽出ステップS34では、動きが微量な動物体MOを可動静止物体MSOとして抽出する。
【0073】
微動型可動静止物体抽出ステップS34は、例えば、最高点微変動型可動静止物体抽出ステップS341と、ボクセル数微変動型可動静止物体抽出ステップS342と、を含む。
【0074】
<最高点微変動型可動静止物体抽出ステップ(S341)>
最高点微変動型可動静止物体抽出ステップS341では、動物体MOの最高点の動きの量(ひいては、最高点の位置分布)に着目して、動きが微量な動物体MOを可動静止物体MSOとして抽出する。
最高点微変動型可動静止物体抽出ステップS341において、処理部31は、動物体抽出ステップS2で抽出した1つ又は複数の動物体MOのうちの1つ又は複数の動物体MO(以下、「第3動物体MO」という。)の最高点が、所定最高点監視時間にわたってほぼ同じ位置に位置した場合、当該第3動物体MOを可動静止物体MSOとして抽出し、セル配列CAにおいて当該可動静止物体MSOを構成する各セルCを後定義背景LBとして再定義する、最高点微変動型可動静止物体抽出処理を行う。
【0075】
上記座位判定ステップS311の説明において上述したように、動物体MOを構成する各セルCには、そのセルCに含まれる点群のうち最も高い位置にある点(最高点)のz 座標値が保存されている。直近の測定時刻tにおける動物体MO(IDを「i」とする。)の高さh(i,t)(mm)を、当該測定時刻tにおいて当該動物体MOを構成する各セルCの中で最も高い位置にある点(最高点)のz座標値と定義する。
最高点微変動型可動静止物体抽出ステップS341において、処理部31は、例えば、以下のステップS3411~S3412を行う。
【0076】
まず、処理部31は、各動物体MOのそれぞれについて、動物体MOの高さh(i,t)(最高点)を持つ1つ又は複数のセルCの位置(p,q)を、所定最高点セル保存時間の間、保存していく(最高点セル保存ステップS3411)。
ここで、所定最高点セル保存時間は、例えば、100~140秒が好適であり、例えば120秒が好適である。
【0077】
つぎに、処理部31は、上記1つ又は複数の動物体MOのうちの1つ又は複数の動物体MO(以下、「第3動物体MO」という。)において、最高点セル保存ステップS3411で所定最高点セル保存時間にわたって常に保存され続けたセルCが1つ以上存在する場合、これらの第3動物体MOの最高点が所定最高点監視時間にわたってほぼ同じ位置に位置したと判断して、各第3動物体MOをそれぞれ可動静止物体MSOとして抽出し、セル配列CAにおいて当該可動静止物体MSOを構成する各セルCを後定義背景LBとして再定義する(再定義ステップS3412)。
【0078】
処理部31は、再定義ステップS3412において当該第3動物体MOを可動静止物体MSOとして抽出して後定義背景LBとして再定義する際、動物体抽出ステップS2において当該第3動物体MOに割り当てたIDを取り消す(
図13)。
【0079】
<ボクセル数微変動型可動静止物体抽出ステップ(S342)>
最高点微変動型可動静止物体抽出ステップS341で着目した動物体MOの最高点の位置分布は、最高点の位置がセルC同士の境目に存在する場合や、測域センサ2の誤差の影響等により、能動的動作がない可動静止物体MSOでもばらつく可能性がある。その場合においても可動静止物体MSOを抽出できるように、ボクセル数微変動型可動静止物体抽出ステップS342では、動物体MOの動物体構成ボクセル数の変動に着目して、動きが微量な動物体MOを可動静止物体MSOとして抽出する。
ボクセル数微変動型可動静止物体抽出ステップS342において、処理部31は、動物体抽出ステップS2で抽出した1つ又は複数の動物体MOのうちの1つ又は複数の動物体MO(以下、「第4動物体MO」という。)が、所定ボクセル数監視時間tth内における当該第4動物体MOの動物体構成ボクセル数V(i,t)の変動の度合を表すボクセル数変動評価値が所定ボクセル数変動評価値閾値未満である場合、当該第4動物体MOを可動静止物体MSOとして抽出し、セル配列CAにおいて当該可動静止物体MSOを構成する各セルCを後定義背景LBとして再定義する、ボクセル数微変動型可動静止物体抽出処理を行う。
【0080】
上記座位判定ステップS311の説明において上述したように、動物体MOを構成する各セルCには、そのセルCに含まれる点群のうち最も高い位置にある点(最高点)のz 座標値が保存されている。
ボクセル数微変動型可動静止物体抽出ステップS342において、処理部31は、例えば、以下のステップS3421~S3424を行う。
【0081】
まず、処理部31は、つぎの式(10)及び(11)により、直近の測定時刻tにおける動物体MOの動物体構成ボクセル数V(i,t)を、所定ボクセル数監視時間t
thにわたって、所定測定時間間隔毎に(すなわち、測定時刻t毎に)、算出する(動物体構成ボクセル数算出ステップS3421)。
動物体構成ボクセル数V(i,t)は、ボクセル配列VAにおいて動物体MOを構成すると推定されるボクセルVの数を表す。
ここで、所定ボクセル数監視時間t
thは、例えば、100~140秒が好適であり、例えば120秒が好適である。
【数12】
【数13】
式(11)において、V
cell(n,t)は、セル対応ボクセル数であり、セル配列CAにおいて動物体MOを構成する各セルC のうちいずれか1つのセルC(p,q)内の点群の最高点と地面との間に、点群の有無によらず、1辺l
thのボクセルVをz軸に沿って配列させたときの当該ボクセルVの数を表し、動物体MOを構成するセルC毎に与えられる値である。式(11)において、h
max(p,q)は、当該セルC (p,q)に含まれる点群の最大高さ(最高点の高さ)であり、l
thは、ボクセルVの1辺の長さであり、nは、セル配列CAにおいて動物体MO(ID:i)を構成するセルCの数である。ボクセルVの1辺の長さl
thは、セル配列CAのセルCの一辺の長さと同じとする。
式(10)及び(11)により定義される動物体構成ボクセル数V(i,t)は、セル配列CAにおいて動物体MOを構成する各セルCにそれぞれ保存されている最高点と地面との間に、点群の有無によらず、1辺l
thのボクセルVをz軸に沿って配列させたときの当該ボクセルVの数である。例えば、
図12にごく概略的に示す例において、動物体構成ボクセル数V(i,t)は、斜線ハッチングを施したボクセルVの数となる。
このように動物体構成ボクセル数V(i,t)を定義することにより、仮に測域センサ2からの点群データにおいて動物体MOの一部(例えば、下半分)の点群が欠損していた場合においても、疑似的に動物体MOの大きさをボクセルVで表現することが可能になる。
【0082】
つぎに、処理部31は、以下の式(12)により、ボクセル数変化量V
dif(i,t)を算出する(ボクセル数変化量算出ステップS3422)。
【数14】
ボクセル数変化量V
dif(i,t)は、所定ボクセル数監視時間t
thの間に動物体構成ボクセル数V(i,t)がどれだけ変動したかを表している。
式(12)において、V
mode(i)は、所定ボクセル数監視時間t
thの間に動物体構成ボクセル数算出ステップS3421によって算出された動物体構成ボクセル数V(i,t)の最頻値である。
ボクセル数変化量V
dif(i,t)を求めるにあたって、直前の動物体構成ボクセル数V(i,t)と比較するのはなく、式(12)のように、最頻値V
mode(i)との差分をとることにより、測域センサ2の誤差の影響を抑え、人の能動的動作による動物体構成ボクセル数V(i,t)の変動の度合をより明瞭に把握できる。
【0083】
つぎに、処理部31は、以下の式(13)により、所定ボクセル数監視時間t
th分のボクセル数変化量V
dif(i,t)の標準偏差であるボクセル数変動評価値σ
dif(i)を算出する(ボクセル数変動評価値算出ステップS3423)。
【数15】
式(13)において、V
dif_ave(i)は、ボクセル数変化量V
dif(i,t)の平均値である。
ボクセル数変動評価値σ
dif(i)は、所定ボクセル数監視時間t
th内における第4動物体MOの動物体構成ボクセル数V(i,t)の変動の度合を表し、その値が高いほど、動物体構成ボクセル数V(i,t)の変動の度合が高く、ひいては、第4動物体MOが人Pである可能性が高いことを表す。
【0084】
つぎに、処理部31は、ボクセル数変動評価値算出ステップS3423で算出したボクセル数変動評価値σdif(i)に基づいて、第4動物体MOが可動静止物体MSOであるか否かの判断を行い、第4動物体MOが可動静止物体MSOであると判断した場合に、第4動物体MOを可動静止物体MSOとして抽出し、セル配列CAにおいて当該可動静止物体MSOを構成する各セルCを後定義背景LBとして再定義する(再定義ステップS3424)。
再定義ステップS3424において、処理部31は、σdif(i)<5.0である場合に、第4動物体MOが可動静止物体MSOであると判断する。ここで、本例において、5.0は、上記所定ボクセル数変動評価値閾値に相当する。
再定義ステップS3424において、処理部31は、5.0≦σdif(i)<6.0の場合、所定ボクセル数監視時間tthの半分(tth/2)の分だけ上記のステップS3421~S3423を再度実施し、それにより再度得られたボクセル数変動評価値σdif(i)がσdif(i)<5.0を満たす場合のみ、第4動物体MOが可動静止物体MSOであると判断する。
再定義ステップS3424において、処理部31は、6.0≦σdif(i)である場合に、第4動物体MOが可動静止物体MSOではない(すなわち、人Pである)と判断する。
なお、本発明の発明者は、様々な解析を通して、σdif(i)<5.0である場合、動物体MOは可動静止物体MSOであり、6.0≦σdif(i)である場合、動物体MOは人Pであり、5.0≦σdif(i)<6.0の場合、動物体MOは、高確率で人Pだが、可動静止物体MSOの可能性もある、ということを知見として得た。上記再定義ステップS3424は、そのような知見に基づいて設定された。
【0085】
処理部31は、再定義ステップS3424において当該第4動物体MOを可動静止物体MSOとして抽出して後定義背景LBとして再定義する際、動物体抽出ステップS2において当該第4動物体MOに割り当てたIDを取り消す(
図13)。
【0086】
図13からわかるように、可動静止物体抽出ステップS3の後に、セル配列CAのうち初期背景IB及び後定義背景LBのセルC以外のセルCに格納された点群データからなる動物体MOは、いずれも、人Pということになる。可動静止物体抽出ステップS3の後、IDは、人Pのみに割り当てられた状態となる。このようにして、解析システム1は、所定空間S内の物体Oを人Pと人以外の物体とに区別することが可能になる。
【0087】
なお、処理の効率性やリアルタイム性の向上の観点から、可動静止物体抽出ステップS3は、連動型可動静止物体抽出ステップS31を最初に実施し、その後に直線型可動静止物体抽出ステップS32を実施し、その後に微動型可動静止物体抽出ステップS34を実施すると、好適である。
ただし、連動型可動静止物体抽出ステップS31と、直線型可動静止物体抽出ステップS32と、微動型可動静止物体抽出ステップS34とは、任意の順序で行ってもよいし、また、これらのうちの2つ又は3つを同時に並行して実施してもよい。
また、処理の効率性やリアルタイム性の向上の観点から、微動型可動静止物体抽出ステップS34は、最初に最高点微変動型可動静止物体抽出ステップS341を実施し、その後にボクセル数微変動型可動静止物体抽出ステップS342を実施すると、好適である。
ただし、最高点微変動型可動静止物体抽出ステップS341と、ボクセル数微変動型可動静止物体抽出ステップS342とは、その逆の順序で行ってもよいし、また、これらを同時に並行して実施してもよい。
【0088】
なお、可動静止物体抽出ステップS3は、上述した連動型可動静止物体抽出ステップS31と、直線型可動静止物体抽出ステップS32と、微動型可動静止物体抽出ステップS34と、のうち任意の1つ又は2つのみを含んでもよい。
また、微動型可動静止物体抽出ステップS34は、上述した最高点微変動型可動静止物体抽出ステップS341と、ボクセル数微変動型可動静止物体抽出ステップS342と、のうちのいずれか一方のみを含んでもよい。
また、可動静止物体抽出ステップS3において、処理部31は、上述した方法とは異なる方法によって、動物体MOを可動静止物体MSOとして抽出してもよい。
【0089】
-環境地図作成ステップ(S4)-
処理部31は、環境地図作成ステップS4において、可動静止物体抽出ステップS3で得られた所定観察期間内の測定時刻毎の点群データの解析結果に基づいて、環境地
図Kを作成する。
環境地図作成ステップS4は、可動静止物体抽出ステップS3の後に行ってもよいし、あるいは、可動静止物体抽出ステップS3と並行して行ってもよい。
環境地
図Kは、所定空間Sが人によってどのように使われるかを表すものであると、好適である。上述したステップS1~S3により、所定観察期間内の各測定時刻における人Pの数及び位置や、初期背景IBや後定義背景LBとして登録された人P以外の物体の位置及び形状を、簡単に把握できるので、所定空間Sが人によってどのように使われるかをより正確に表現することが可能になる。処理部31は、IDが割り振られた物体Oを、人Pとして認識する。
図14は、環境地
図Kの一例を概略的に示している。
図14に例示するように、環境地
図Kは、セル配列CAを用いて表現されると、好適である。また、セル配列CAにおいて、初期背景IB及び後定義背景LBのセルCは、その他のセルCとは、違う表記(色又はハッチング等)により表示されると、好適である。
例えば、環境地
図Kは、
図14の例のように、初期背景IB及び後定義背景LB以外の各セルCにおいて、当該セルCの空間が所定観察期間内においてどれだけ人Pによって活用されたか(活動度合い)を、任意の表記方法(例えば、色の濃さ又はハッチングの種類等)により表示するものであってもよい。
図14の例では、初期背景IB及び後定義背景LBが黒色で表示されており、初期背景IB及び後定義背景LB以外の各セルCにおいて、当該セルCの活動度合いが、活動度合いが高いほど濃いグレー色で表示されている。
その他、例えば、環境地
図Kは、初期背景IB及び後定義背景LB以外の各セルCにおいて、当該セルCの空間での、所定観察期間内における、人Pの移動方向、人Pの速度、又は、人Pの加速度等を、任意の表記方法(例えば、色の濃さ又はハッチングの種類等)により表示するものであってもよい。
環境地図作成ステップS4の具体的な方法としては、例えば、特願2020-038043号に記載の方法を用いてもよい。
【0090】
以上説明したように、上述した実施形態によれば、処理部31が、静止物体SOを抽出する初期背景抽出ステップS1(初期背景抽出処理)と、動物体MOを抽出する動物体抽出ステップS2(動物体抽出処理)と、可動静止物体MSOを抽出する可動静止物体抽出ステップS3(可動静止物体抽出処理)と、を行うので、空間S内の物体Oを人Pと人以外の物体(静止物体SO及び可動静止物体MSO)とに区別することが可能になる。
【0091】
また、上述した実施形態よれば、処理が効率化されているため、初期背景抽出ステップS1の処理や、動物体抽出ステップS2から可動静止物体抽出ステップS3までの処理を、所定測定時間間隔(例えば0.1秒)以内に実施することが可能であり、リアルタイムな処理が可能である。そのため、この解析システム及び解析方法を、移動ロボットナビゲーション等に好適に利用することもできる。
また、上述した実施形態によれば、初期背景抽出ステップS1や可動静止物体抽出ステップS3において、複数種類の物体に共通した特徴に着目して物体を抽出するようにしていることから、事前に個々に形状や動き方等が異なる人以外の物体のそれぞれについて機械学習をする必要がなく、様々な環境においてこの解析システム及び解析方法を使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の解析システム及び解析方法は、例えば、例えばオフィス内空間や学校内空間等、屋内空間を解析するために使用されると好適なものである。
【符号の説明】
【0093】
1 解析システム
2 測域センサ
3 解析装置
31 処理部
32 通信部
33 記憶部
34 入力部
35 表示部
CA セル配列
C セル
VA ボクセル配列
V ボクセル
O、Oa~Og 物体
SO 静止物体
MO 動物体
MSO 可動静止物体
P 人
S 所定空間
IB 初期背景
LB 後定義背景
SR 遮蔽領域
K 環境地図