(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065300
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】接合構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/68 20060101AFI20230502BHJP
【FI】
E04B1/68 100Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137283
(22)【出願日】2022-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2021175945
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390018717
【氏名又は名称】旭化成建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100173794
【弁理士】
【氏名又は名称】色部 暁義
(72)【発明者】
【氏名】野田 研治
(72)【発明者】
【氏名】北川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 貴樹
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DA01
2E001FA03
2E001FA31
2E001HD13
2E001PA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】建築部材同士に相対的な変位が生じても防水性を確保し得る、接合構造を提供する。
【解決手段】本発明に係る接合構造は、第1の建築部材11と、第2の建築部材12と、前記第1の建築部材11と前記第2の建築部材12とを接合する板材と、を備え、前記板材は、前記第2の建築部材12に固定される固定面13a1を備え、前記板材の前記固定面13a1と前記第2の建築部材12との固定強度は、前記板材の前記固定面13a1と反対側の位置での前記第1の建築部材11との固定強度より大きく、前記板材は、前記固定面13a1と反対側の位置とは異なる位置で、前記第1の建築部材11に固定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の建築部材と、
第2の建築部材と、
前記第1の建築部材と前記第2の建築部材とを接合する板材と、を備え、
前記板材は、前記第2の建築部材に固定される固定面を備え、
前記板材の前記固定面と前記第2の建築部材との固定強度は、前記板材の前記固定面と反対側の位置での前記第1の建築部材との固定強度より大きく、
前記板材は、前記固定面と反対側の位置とは異なる位置で、前記第1の建築部材に固定されている、接合構造。
【請求項2】
前記第1の建築部材は、前記固定面と反対側の位置で前記板材に固定されていない、請求項1に記載の接合構造。
【請求項3】
前記板材は面外方向に変形する、請求項1又は2に記載の接合構造。
【請求項4】
前記板材は、前記第1の建築部材の端部を覆う、請求項1又は2に記載の接合構造。
【請求項5】
前記第1の建築部材は、断熱材を含む、請求項1又は2に記載の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築部材同士、例えば外壁と窓枠との間の防水性を確保するため、例えば非特許文献1に記載されるように、建築部材間に目地充填剤を設ける技術が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】東邦レオ株式会社、“エコサーム外張り断熱カタログ/木造用仕上げ一体型外張り断熱システム_カタログビュー”、[online]、[令和3年9月17日検索]、インターネット<https://www.catalabo.org/iportal/cv.do?c=31157330000&pg=1&v=CATALABO&d=link>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、非特許文献1に記載された技術では、地震や強風等によって建築部材間同士に相対的な変位が生じた場合、目地充填剤が建築部材から剥離して防水性が損なわれるおそれがあった。
【0005】
そこで本発明は、建築部材同士に相対的な変位が生じても防水性を確保し得る、接合構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様としての接合構造は、
(1)
第1の建築部材と、第2の建築部材と、前記第1の建築部材と前記第2の建築部材とを接合する板材と、を備え、前記板材は、前記第2の建築部材に固定される固定面を備え、前記板材の前記固定面と前記第2の建築部材との固定強度は、前記板材の前記固定面と反対側の位置での前記第1の建築部材との固定強度より大きく、前記板材は、前記固定面と反対側の位置とは異なる位置で、前記第1の建築部材に固定されている、接合構造である。
【0007】
本発明の1つの実施形態としての接合構造は、
(2)
前記第1の建築部材は、前記固定面と反対側の位置で前記板材に固定されていない、上記(1)に記載の接合構造、である。
【0008】
本発明の1つの実施形態としての接合構造は、
(3)
前記板材は面外方向に変形する、上記(1)又は(2)に記載の接合構造、である。
【0009】
本発明の1つの実施形態としての接合構造は、
(4)
前記板材は、前記第1建築部材の端部を覆う、上記(1)ないし(3)のいずれか1つに記載の接合構造、である。
【0010】
本発明の1つの実施形態としての接合構造は、
(5)
前記第1の建築部材は、断熱材を含む、上記(1)ないし(4)のいずれか1つに記載の接合構造、である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、建築部材同士に相対的な変位が生じても防水性を確保し得る、接合構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態としての接合構造の水平断面図である。
【
図2】
図1に示す接合構造の第1建築部材と第2建築部材とが離れる方向に変位が生じるときの挙動を示す図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態としての接合構造の水平断面図である。
【
図4】本発明の第3の実施形態としての接合構造の水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る接合構造の実施形態について図面を参照して例示説明する。各図において共通する構成には同一の符号を付している。
【0014】
図1は、本発明に係る接合構造の第1の実施形態としての接合構造10を示す図である。接合構造10は、第1の建築部材11と、第2の建築部材12と、第1の建築部材11と第2の建築部材12とを接合する板材13と、を備える。
【0015】
第1の建築部材11は、例えば建物の屋内空間と屋外空間とを区画する外壁の外装材であってよい。外装材は、軽量気泡コンクリート(ALC)で構成されてよい。外装材は、金属系や窯業系のサイディング、押出成形セメント板、木質系パネルなどであってよい。但し、第1の建築部材11は、外装材に限られない。第1の建築部材11は、特に限定されず、例えば、フェノールフォーム等の発泡樹脂系の断熱材など、別の建築部材であってよい。
【0016】
第2の建築部材12は、例えば建物の屋内空間と屋外空間とを区画する外壁の外装材であってよい。外装材は、軽量気泡コンクリート(ALC)で構成されてよい。外装材は、金属系や窯業系のサイディング、押出成形セメント板、木質系パネルなどであってよい。第2の建築部材12は、特に限定されず、例えばサッシ枠、シーリング材など、別の建築部材であってもよい。サッシ枠は、例えば、樹脂製又はアルミニウム製の枠体であってよい。シーリング材は、例えば、シリコン系、ウレタン系、アクリル系などの樹脂製の湿式の目地充填剤であってよい。
【0017】
板材13は、第2の建築部材12に固定される固定面13a1を備える。また、板材13の固定面13a1と第2の建築部材12との固定強度は、板材13の固定面13a1と反対側の位置での第1の建築部材11との固定強度より大きい。以下、説明の便宜上、板材13のうち固定面13a1と反対側の位置を「弱固定面13a2」と記載する。板材13は、弱固定面13a2とは異なる位置で、第1の建築部材11に固定されている。
【0018】
より具体的には、本実施形態では、板材13は、第1の建築部材11と第2の建築部材12との間に介在する介在板部13aと、介在板部13aから延設されている延設板部13bと、を備える。板材13は、例えばポリ塩化ビニルなどの樹脂製であってよい。介在板部13aは、第1の建築部材11と第2の建築部材12との間に介在している。延設板部13bは、
図1に示す断面視で、介在板部13aに対して垂直であり、第1の建築部材11のうち、第2の建築部材12と対向しない部分に沿って延在してよい。
【0019】
介在板部13aは、第2の建築部材12と対向する面に、上述の固定面13a1を備える。
【0020】
また、介在板部13aは、第1の建築部材11と対向する面のうち、固定面13a1の反対側の領域に、上述の弱固定面13a2を備える。
【0021】
ここで、弱固定面13a2の固定強度が、固定面13a1の固定強度よりも小さいとは、例えば第1の建築部材11と第2の建築部材12との間の距離が一定速度で、例えば1分間に5mmの速度で大きくなるように、第1の建築部材11と第2の建築部材12とを、固定面13a1及び弱固定面13a2と直交する方向に離間させるように引張るときに、第2の建築部材12と固定面13a1との間に隙間が発生する前に、第1の建築部材11と弱固定面13a2との間に隙間が発生することをいう。例えば、第1の建築部材11と弱固定面13a2とが固定され、かつ、第2の建築部材12と固定面13a1とが固定されている場合は、第1の建築部材11と弱固定面13a2との固定が、第2の建築部材12と固定面13a1との固定よりも先に破断することをいう。なお、後述する
図3の固定面23a1又は弱固定面23a2の固定についても同様である。さらに、
図4の固定面33a1又は弱固定面33a2の固定についても同様である。
【0022】
固定面13a1と第2の建築部材12との固定、及び、弱固定面13a2と第1の建築部材11との固定は、例えば接着剤14を用いた接着とすることができる。但し、介在板部13aの弱固定面13a2は、第1の建築部材11に固定されている構成に限られない。介在板部13aの弱固定面13a2は、当該領域においては、第1の建築部材11に固定されなくてよい。
【0023】
固定面13a1又は弱固定面13a2は、第1の建築部材11と第2の建築部材12との間に位置する。
【0024】
延設板部13bは、固定部13cで、第1の建築部材11に固定されている。当該固定は、例えば接着剤を用いた接着とすることができる。つまり、板材13は、弱固定面13a2を備える介在板部13aとは異なる位置で、第1の建築部材11に固定されている。当該固定は、雨水などの液体が板材13と第1の建築部材11との間に侵入することを防ぐことが可能なように構成されている。また当該固定の強度の大きさは、第1の建築部材11と第2の建築部材12とに相対的な変位が生じても固定が外れないように確保されている。
【0025】
以下、地震や強風等によって、第1の建築部材11と第2の建築部材12とに相対的な変位が生じるときの接合構造10の挙動を説明する。以下、特に、第1の建築部材11と第2の建築部材12との距離が大きくなる方向(
図1の左右方向)に変位が生じるときについて、
図2を参照して説明する。なお、以下説明する挙動は、後述する
図3に示す実施形態についても同様である。
【0026】
第1の建築部材11と第2の建築部材12との距離が大きくなる方向(
図1、
図2では左右方向)に変位が生じるときに、
図1に示す固定面13a1及び弱固定面13a2には引張荷重が加わる。ここで、弱固定面13a2の固定強度は、固定面13a1の固定強度よりも小さいため、
図2に示すように、弱固定面13a2の固定が外れ、板材13が第1の建築部材11から剥離する。一方で、固定面13a1における、板材13と第2の建築部材12との間の固定は維持される。この作用が確実に行われるために、弱固定面13a2の固定強度を、固定面13a1の固定強度よりも十分に小さくすることが好ましい。
【0027】
また、板材13は
図2のように面外方向に曲げ変形する。本実施形態では、介在板部13aが、介在板部13a及び延設板部13bのなす角度が大きくなるように、曲げ変形する。上述したように、固定部13cにおける延設板部13bと第1の建築部材11との固定の強度の大きさは、第1の建築部材11と第2の建築部材12とに相対的な変位が生じても固定が外れないように確保されている。そのため、延設板部13bは、第1の建築部材11に固定されたままである。
【0028】
このように、第1の建築部材11と第2の建築部材12とが相対的に離間するように変位が生じるときに、固定面13a1での固定が維持されており、固定面13a1の位置での建物の防水ラインは維持される。また、弱固定面13a2の固定が解除され、弱固定面13a2と第1の建築部材11との間に隙間が形成されても、延設板部13bは、固定部13cで、第1の建築部材11に固定されているため、延設板部13bと第1の建築部材11との間に水が侵入することは妨げられる。つまり、弱固定面13a2の位置での建物の防水ラインについても維持される。このように、接合構造10によれば、第1の建築部材11と第2の建築部材12との距離が大きくなる方向に変位が生じるときに、防水ラインを維持することができる。
【0029】
図3は、本発明に係る接合構造の第2の実施形態としての接合構造20を示す図である。より具体的に、
図3は、接合構造20を含む建物100の外壁101の詳細を示している。
図3は、建物100の外壁101の水平断面図である。詳細は後述するが、本実施形態の第1の建築部材11は、外壁101であり、第2の建築部材12は、シーリング材22aである。
【0030】
まず、建物100の概要について説明する。本実施形態の建物100は、例えば木造の軸組みを有する2階建ての戸建て住宅である。本実施形態の建物100は戸建て住宅であるが、例えば、複数の住戸を備える集合住宅であってもよい。また、建物100の階層数についても特に限定されない。建物100は、例えば、3階層以上の階層数を備えてもよい。
【0031】
本実施形態の建物100は、鉄筋コンクリート造の基礎と、柱や梁などの軸組部材で構成された軸組架構を有し、基礎に支持される上部構造体と、を備える。本実施形態の上部構造体は、木造の軸組架構を有するが、例えば、鉄骨造の軸組みを有してもよく、その構造は特に限定されない。
【0032】
より具体的に、本実施形態の建物100の上部構造体は、上述の軸組架構と、外壁101と、を備える。
【0033】
外壁101は、建物100の屋内空間と屋外空間とを区画する壁である。
図1に示すように、本実施形態の建物100の外壁101は、間柱21aと、下地材21bと、充填断熱材21cと、防水シート21dと、第1の建築部材11としての外張り断熱材21eと、を備える。
【0034】
間柱21aの屋外側に下地材21bが配置され、ネジ等の締結部材により、間柱21aに締結されている。充填断熱材21cは、下地材21bの屋内側で、間柱21a間の空間に充填されている。充填断熱材21cは、例えば、ロックウール、グラスウール等の繊維系の断熱材であってよい。
【0035】
また、
図3に示すように、防水シート21dが、下地材21bの屋外側に積層されていてもよい。外張り断熱材21eは、防水シート21dの屋外側に配置され、ネジ24等の締結部材により、間柱21aに締結されている。外張り断熱材21eは、フェノールフォーム等の発泡樹脂系のパネル状の断熱材である。外張り断熱材21eの屋外側には、例えば仕上塗材などにより、外壁101の外表層26が形成されている。外張り断熱材21eの幅方向(
図3では左右方向)の端部は、板材23に覆われている。この詳細は後述する。
【0036】
図3に示すように、外壁101には開口部101aが形成されている。外壁101の開口部101aとしては、例えば、窓や出入り口などが挙げられる。
図3に示す開口部101aは、一例として窓を示しているが、例えば、屋内空間と屋外空間とを行き来可能な出入り口であってもよい。
【0037】
外壁101の開口部101aには、サッシ枠1と、このサッシ枠1に嵌め込まれるパネル材2と、が配置されている。板材23とサッシ枠1との間には、円柱状のバックアップ材22bが挟み込まれている。バックアップ材22bの屋外側(
図3では上側)には、シーリング材22aが充填されている。上述したように、第2の建築部材12の構成は特に限定されるものではなく、本実施形態では、シーリング材22aが第2の建築部材12を構成する。
【0038】
サッシ枠1は、外壁101の開口部101aの内端面を覆うように取り付けられる。本実施形態のサッシ枠1には、パネル材2としての障子が嵌め込まれている。
【0039】
パネル材2としての障子は、三重にしたガラス板5と、このガラス板5の周縁部に取り付けられる框部6と、を含むが、この構成に限られない。パネル材2は、例えば、ガラス板5を備えない板材であってもよい。また、パネル材2は、例えば、サッシ枠1に対して移動しないように固定されているはめ殺し構造であってもよい。
【0040】
サッシ枠1は、アルミニウム製などの金属製であってもよく、樹脂製であってもよく、金属及び樹脂を含む複合サッシ枠であってもよい。
【0041】
図3に示すように、サッシ枠1は、例えばネジ27a、27b等の締結部材により、間柱21aに締結されている。
【0042】
上述したように、建物100の外壁101は、第1の建築部材11としての外張り断熱材21eを備える。また、建物100の外壁101は、第2の建築部材12としてのシーリング材22aを備える。更に、建物100の外壁101は、外張り断熱材21eとシーリング材22aとの間に介在する板材23を備える。
【0043】
板材23は、外張り断熱材21eとシーリング材22aとを接合する。より具体的に、板材23は、外張り断熱材21eとシーリング材22aとの間に介在する介在板部23aと、介在板部23aから延設されている延設板部23bと、を備える。板材23は、例えばポリ塩化ビニルなどの樹脂製であってよい。介在板部23aは、第1の建築部材11としての外張り断熱材21eの端面に沿って延在している。延設板部23bは、
図3に示す断面視で、介在板部23aに対して垂直であり、第1の建築部材11としての外張り断熱材21eの外面に沿って延在してよい。言い換えれば、板材23は、第1の建築部材11としての外張り断熱材21eの端面と外面との間の角を含む端部を覆う。これにより、当該端部が、接触等によって変形、破損することを抑制できる。
【0044】
延設板部23bが2つ設けられ、介在板部23aの両端部からそれぞれ延設されていてもよい。つまり、
図3に示す板材23は、水平断面において、断面L字形の外形を有するが、同断面において、断面コの字形の外形を有してもよい。かかる場合に、板材23の介在板部23aは、第1の建築部材11としての外張り断熱材21eの端面を覆う。また、一方の延設板部23bは、第1の建築部材11としての外張り断熱材21eの外面に沿って延在し、他方の延設板部23bは、第1の建築部材11としての外張り断熱材21eの内面に沿って延在する。このように、板材23は、第1の建築部材11としての外張り断熱材21eの端面と外面との間の角に加えて、第1の建築部材11としての外張り断熱材21eの端面と内面との間の角を覆っていてもよい。
【0045】
介在板部23aは、第2の建築部材12としてのシーリング材22aに対向する面の例えば全体である固定面23a1において、シーリング材22aに固定される。
【0046】
介在板部23aの、第1の建築部材11としての外張り断熱材21eと対向する面のうち、固定面23a1の反対側の領域は、固定面23a1の固定強度より小さい固定強度で、第1の建築部材11としての外張り断熱材21eに固定される弱固定面22a2を含む。
【0047】
固定面23a1又は弱固定面23a2の固定は、例えば接着剤を用いた接着とすることができる。固定面23a1は湿式のシーリング材22aと接着剤無しに接着される。つまり、固定面23a1は、シーリング材22aの粘性により、シーリング材22aと接着されてよい。介在板部23aの弱固定面23a2は、外張り断熱材21eに固定されている構成に限られない。介在板部23aの弱固定面22a2は、当該領域においては、第1の建築部材11としての外張り断熱材21eに固定されなくてよい。
【0048】
固定面22a1又は弱固定面22a2は、介在板部23a及びシーリング材22aの奥行方向(
図3の紙面に直交する方向)に沿って延びている。換言すれば、固定面23a1又は弱固定面23a2は、開口部101aの内端面に沿って延在している。
【0049】
延設板部23bは、固定部23cで、第1の建築部材11としての外張り断熱材21eに固定されている。当該固定は、例えば接着剤を用いた接着とすることができる。当該固定は、雨水などの液体が板材23と第1の建築部材11としての外張り断熱材21eとの間に侵入することを妨げてよい。
【0050】
図4は、本発明に係る接合構造の第3の実施形態としての接合構造30を示す図である。より具体的に、
図4は、接合構造30を含む建物100の外壁102の水平断面図である。なお、
図4に示す外壁102は、
図3に示す外壁101と同一の外壁であってもよい。
【0051】
詳細は後述するが、本実施形態の第1の建築部材11は外張り断熱材31eであり、第2の建築部材12はシーリング材32aである。
【0052】
外壁102は、建物100の屋内空間と屋外空間とを区画する壁である。本実施形態の外壁102は、下地材31bと、充填断熱材31cと、防水シート31dと、第1の建築部材11としての外張り断熱材31eと、を備える。
【0053】
充填断熱材31cは、下地材31bの屋内側に充填されている。充填断熱材31cは、例えば、ロックウール、グラスウール等の繊維系の断熱材であってよい。
【0054】
また、
図4に示すように、防水シート31dが、下地材31bの屋外側に積層されていてもよい。
【0055】
外張り断熱材31eは、防水シート31dの屋外側に配置され、ネジ等の締結部材により、間柱に締結されてよい。外張り断熱材31eは、フェノールフォーム等の発泡樹脂系のパネル状の断熱材である。外張り断熱材31eの屋外側には、例えば仕上塗材などにより、外壁102の外表層が形成されてよい。外張り断熱材31eの幅方向(
図4では上下方向)の端部は、板材33に覆われている。この詳細は後述する。
【0056】
図4に示すように、外壁102には開口部102aが形成されている。開口部102aは充填断熱材31cを貫通してよい。開口部102aをエアコンスリーブ、換気口等が通ってよい。
図4に示す開口部102aは、一例として設備開口部を示しているが、窓、出入り口、空調ダクト等であってよい。
【0057】
開口部102aの(
図4の紙面に直交する)断面は例えば円形状である。開口部102aの断面は矩形状等の他の形状であってよい。
【0058】
外壁102の開口部102aには、設備配管35が配置されている。設備配管35は外張り断熱材31eから突出してよい。設備配管35は円筒状であってよい。設備配管35は金属又は樹脂で構成されてよい。
【0059】
板材33と設備配管35との間には、例えば円環状のバックアップ材32bが挟み込まれている。バックアップ材32bの屋外側には、シーリング材32aが充填されている。上述したように、第2の建築部材12の構成は特に限定されるものではなく、本実施形態では、シーリング材32aが第2の建築部材12を構成する。
【0060】
設備配管35の外周面に、気密材38が取付けられてよい。気密材38は設備配管35と防水シート31dとの間を密封してもよい。気密材38はゴムで構成されてよい。
【0061】
上述したように、建物100の外壁102は、第1の建築部材11としての外張り断熱材31eを備える。また、建物100の外壁102は、第2の建築部材12としてのシーリング材32aを備える。更に、建物100の外壁102は、外張り断熱材31eとシーリング材32aとの間に介在する板材33を備える。
【0062】
板材33は、外張り断熱材31eとシーリング材32aとを接合する。より具体的に、板材33は、外張り断熱材31eとシーリング材32aとの間に介在する介在板部33aと、介在板部33aから延設されている延設板部33bと、を備える。板材33は、例えばポリ塩化ビニルなどの樹脂製であってよい。
【0063】
介在板部33aは、第1の建築部材11としての外張り断熱材31eの端面に沿って延在している。介在板部33aは、バックアップ材32bを越えて延在してよい。介在板部33aは平面視で長方形状であってよい。
【0064】
延設板部33bは、
図4に示す断面視で、介在板部33aに対して垂直であり、第1の建築部材11としての外張り断熱材31eの外面に沿って延在してよい。言い換えれば、板材33は、第1の建築部材11としての外張り断熱材31eの端面と外面との間の角を含む端部を覆う。これにより、当該端部が、接触等によって変形、破損することを抑制できる。延設板部33bは平面視で長方形状であってよい。
【0065】
図5に示すように、複数の板材33が開口部102aの周りに配置されてよい。板材33の延設板部33bと、板材33に隣接する板材332の延設板部332bとの間に、放射状に広がる隙間33sが形成されてよい。板材33の介在板部33aと、板材33に隣接する板材332の介在板部との間に隙間は存在しなくてよい。
【0066】
例えば開口部102aの断面が矩形状である場合、矩形のそれぞれの辺に縁に1つずつ板材33が配置されてもよい。
【0067】
図5を参照して、板材33の介在板部33a及び延設板部33bの少なくとも一方(本実施形態では両方)には、貫通孔33hが形成されてよい。貫通孔33hは円形状であってよい。貫通孔33hは水玉模様状に複数配置されてよい。特に、延設板部33bに貫通孔33hが形成されることによって、延設板部33bの外張り断熱材31eへの接着剤による固定(後述する。)が強固となる。
【0068】
図4を参照して、介在板部33aは、第2の建築部材12としてのシーリング材32aに対向する面の例えば全体である固定面33a1において、シーリング材32aに固定される。
【0069】
介在板部33aの、第1の建築部材11としての外張り断熱材31eと対向する面のうち、固定面33a1の反対側の領域は、固定面33a1の固定強度より小さい固定強度で、第1の建築部材11としての外張り断熱材31eに固定される弱固定面33a2を含む。
【0070】
介在板部33aのシーリング材32a及び外張り断熱材31eに対する固定方法の一例は以下のとおりである。硬化前のシーリング材32aが板材33の固定面33a1上に流される。シーリング材32aは板材33の貫通孔33hを通過して固定面33a1とは反対側の弱固定面33a2上に流れる。弱固定面33a2のシーリング材32aに対する接着性が、固定面33a1のシーリング材32aに対する接着性よりも小さいことで、弱固定面33a2の固定強度が固定面33a1よりも小さくなり得る。
【0071】
介在板部33aの弱固定面33a2は、外張り断熱材31eに固定されている構成に限られない。言い換えれば、介在板部33aの弱固定面33a2は、当該領域において、第1の建築部材11としての外張り断熱材31eに固定されなくてよい。
【0072】
固定面33a1又は弱固定面33a2は、介在板部33a及びシーリング材32aの奥行方向(
図4の紙面に直交する方向)に沿って延びている。換言すれば、固定面33a1又は弱固定面33a2は、開口部102aの内周面に沿って延在している。
【0073】
延設板部33bは、固定部33cで、第1の建築部材11としての外張り断熱材31eに固定されている。当該固定は、例えば接着剤を用いた接着とすることができる。当該固定は、雨水などの液体が板材33と第1の建築部材11としての外張り断熱材31eとの間に侵入することを妨げてよい。
【0074】
第1の建築部材11と第2の建築部材12とに相対的な変位が生じるときの接合構造30の挙動は、
図1から3に示す接合構造10又は20と同様である。相対的な変位は、地震、強風等によって生じ得る。また相対的な変位は、シーリング材32a又はバックアップ材32bが経年等により収縮することによっても生じ得る。
【符号の説明】
【0075】
1:サッシ枠
2:パネル材
5:ガラス板
6:框部
10,20,30:接合構造
100:建物
101:外壁
101a:開口部
11:第1の建築部材
12:第2の建築部材
13:板材
13a:介在板部
13a1,13a2:固定面
13b:延設板部
13c:固定部
14:接着剤
21a:間柱
21b,31b:下地材
21c,31c:充填断熱材
21d,31b:防水シート
21e,31e:外張り断熱材(第1の建築部材の一例)
22a,32a:シーリング材(第2の建築部材の一例)
22b,32b:バックアップ材
23,33,332:板材
23a,33a:介在板部
23a1,23a2,33a1,33a2:固定面
23b,33b:延設板部
23c,33c:固定部
24:ネジ
26:外表層
27:ネジ
33h:貫通孔
33s:隙間
35:設備配管
38:気密剤