(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065339
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】電極の製造方法及びその触媒層
(51)【国際特許分類】
C25B 11/037 20210101AFI20230502BHJP
C25B 11/032 20210101ALI20230502BHJP
C25B 11/052 20210101ALI20230502BHJP
C25B 11/061 20210101ALI20230502BHJP
C25B 11/079 20210101ALI20230502BHJP
C25B 1/02 20060101ALI20230502BHJP
C25B 9/40 20210101ALI20230502BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20230502BHJP
B01J 37/00 20060101ALI20230502BHJP
B01J 31/32 20060101ALI20230502BHJP
C01B 13/02 20060101ALI20230502BHJP
B01J 23/34 20060101ALN20230502BHJP
【FI】
C25B11/037
C25B11/032
C25B11/052
C25B11/061
C25B11/079
C25B1/02
C25B9/40
B01J37/04 102
B01J37/00 C
B01J31/32 M
C01B13/02 B
B01J23/34 M
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022172166
(22)【出願日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】110139951
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】518099893
【氏名又は名称】タイワン・カーボン・ナノ・テクノロジー・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】李 光哲
(72)【発明者】
【氏名】李 家宏
(72)【発明者】
【氏名】黄 健曜
(72)【発明者】
【氏名】蔡 群賢
(72)【発明者】
【氏名】李 庭鵑
(72)【発明者】
【氏名】蔡 群榮
【テーマコード(参考)】
4G042
4G169
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4G042BA10
4G042BA28
4G042BB04
4G169AA03
4G169AA08
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4K011BA04
4K011BA11
4K011DA11
4K021AA01
4K021BA02
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4K021BB03
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4K021CA08
4K021CA09
4K021DA09
4K021DA13
4K021DC01
4K021EA03
4K021EA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電極触媒層の構造を改善し、反応面積を増大させ、酸素生成効率を向上させる電極の製造方法を提供する。
【解決手段】方法は、第一平均粒径を有する第一触媒と、第二平均粒径を有する第二触媒と、第一導電剤と、第一接着剤と、溶媒とを混合して第一混合物を形成する工程であって、前記第一触媒と前記第一触媒との重量比は、5:1~1:5である、前記工程と、前記第一混合物を攪拌して第二混合物を得る工程と、前記第二混合物を触媒層に圧延する工程と、前記触媒層、導電性集電体及びガス拡散膜を積層して電極を得る工程とを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、電極の製造方法。
第一平均粒径を有する第一触媒と、第二平均粒径を有する第二触媒と、第一導電剤と、第一接着剤と、溶媒とを混合して第一混合物を形成する工程であって、前記第一触媒と前記第一触媒との重量比は、5:1~1:5である、前記工程;
前記第一混合物を攪拌して第二混合物を得る工程;
前記第二混合物を触媒層に圧延する工程;並びに
前記触媒層、導電性集電体及びガス拡散膜を積層して電極を得る工程;
【請求項2】
前記ガス拡散膜は、第二導電剤と第二接着剤とを含み、
前記第一触媒及び前記第二触媒のいずれかは、二酸化ルテニウム、二酸化イリジウム、二酸化マンガン、酸化コバルト、四酸化コバルト、水酸化ニッケル、酸化ニッケル、酸化鉄、三酸化タングステン、五酸化バナジウム及び酸化パラジウムからなる群から選択される材料を有し、
前記第一導電剤及び前記第二導電剤のいずれかは、カーボンブラック、アセチレンブラック及びカーボンナノファイバーからなる群から選択される材料を有し、
前記第一接着剤及び前記第二接着剤のいずれかは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロエチレンプロピレンコポリマー(FEP)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群から選択される材料を有し、
前記溶媒は、水、アルコール、又はそれらの組み合わせであり、
前記導電性集電体は、ステンレス鋼、ニッケル、チタン及び銅からなる群から選択される材料を有する金属メッシュ又は発泡体である、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項3】
前記混合工程及び前記攪拌工程のいずれかにおける回転速度が100~2000rpmであり、
前記攪拌工程は、重力遠心攪拌工程及びブレードせん断攪拌工程の少なくとも一方を含み、
前記積層工程は、ローラー装置を使用し、圧延速度が30rpm未満、温度が150℃未満の条件を有する、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項4】
前記第一平均粒径が150~270μmの範囲であり、前記第二平均粒径が5~50μmの範囲であり、前記第一平均粒径が前記第二平均粒径の3~54倍である、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項5】
以下の工程を含む、電極の製造方法。
触媒、第一導電剤、第一接着剤及び溶媒を混合して第一混合物を形成する工程であって、前記触媒は、比較的大きな粒径触媒及び比較的小さな粒径触媒を含む、前記工程;
前記第一混合物を攪拌して第二混合物を得る工程;
前記第二混合物を触媒層に圧延する工程;並びに
前記触媒層、導電性集電体及びガス拡散膜を積層して電極を得る工程;
【請求項6】
前記ガス拡散膜は、第二導電剤と第二接着剤とを含み、
前記比較的大きな粒径触媒及び前記比較的小さな粒径触媒のいずれかは、二酸化ルテニウム、二酸化イリジウム、二酸化マンガン、酸化コバルト、四酸化コバルト、水酸化ニッケル、酸化ニッケル、酸化鉄、三酸化タングステン、五酸化バナジウム及び酸化パラジウムからなる群から選択される材料を有し、
前記第一導電剤及び前記第二導電剤のいずれかは、カーボンブラック、アセチレンブラック及びカーボンナノファイバーからなる群から選択される材料を有し、
前記第一接着剤及び前記第二接着剤のいずれかは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロエチレンプロピレンコポリマー(FEP)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群から選択される材料を有し、
前記溶媒は、水、アルコール、又はそれらの組み合わせであり、
前記導電性集電体は、ステンレス鋼、ニッケル、チタン及び銅からなる群から選択される材料を有する金属メッシュ又は発泡体である、請求項5に記載の電極の製造方法。
【請求項7】
前記混合工程及び前記攪拌工程のいずれかにおける回転速度が100~2000rpmであり、
前記攪拌工程は、重力遠心攪拌工程及びブレードせん断攪拌工程の少なくとも一方を含み、
前記積層工程の圧延速度が30rpm未満、温度が150℃未満の条件を有する、請求項5に記載の電極の製造方法。
【請求項8】
前記比較的大きな粒径触媒は、平均粒径が150~270μmであり、
前記比較的小さな粒径触媒は、平均粒径が5~50μmであり、
前記比較的大きな粒径触媒の平均粒径は、前記比較的小さな粒径触媒の平均粒径の3~54倍である、請求項5に記載の電極の製造方法。
【請求項9】
電極の触媒層であって、
比較的大きな粒径触媒、比較的小さい粒径触媒、導電剤及び接着剤を含み、
前記比較的大きな粒径触媒は、第一平均粒径を有し、
前記比較的小さい粒径触媒は、第二平均粒径を有し、
前記第一平均粒径は、前記第二平均粒径よりも大きい、前記電極の触媒層。
【請求項10】
前記電極の触媒層は、電極を製造するために使用され、
前記第一平均粒径が150~270μmであり、
前記第二平均粒径が5~50μmであり、
前記第一平均粒径が前記第二平均粒径の3~54倍であり、
前記比較的大きな粒径触媒と前記比較的小さい粒径触媒の重量比は5:1~1:5である、請求項9に記載の電極の触媒層。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極の製造方法及びその触媒層に関する。特に、本発明は、酸素発生用電極電極の製造方法及びその触媒層に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な酸素発生器は、連続酸素供給装置である。酸素発生器は、電気モーター(又は空気圧縮機)を使用して、分子ふるいを通して大気環境からの空気を入力し、空気中の酸素と窒素を分離し、これにより高濃度の酸素が得られる。酸素発生器は、金属と空気の電気化学セルの原理に基づいて電極で酸化還元反応を行うため、陰極で外気からの酸素が消費されると酸素の生成効率が低下する。従って、電極の材料及びその製造方法は、酸素生成効率に影響を与える重要な要素である。
【0003】
より効率的な酸化還元反応を行うために、どの触媒を電極の触媒層の材料として選択するかは、触媒の活性が空気電極の性能に大きな影響を与えるから、当業者の研究の焦点となっている。 一般に、空気電極は、触媒を含む触媒層、導電性集電体及びガス拡散膜から構成される。本発明の発明者は、酸素発生器の酸素生成効率を改善するために、触媒層材料をどのように選択して利用するかに焦点を当てている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、電極触媒層の構造を改善し、反応面積を増大させ、酸素生成効率を向上させる電極の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の構想に従って、電極の製造方法を提案した。前記方法は、第一平均粒径を有する第一触媒と、第二平均粒径を有する第二触媒と、第一導電剤と、第一接着剤と、溶媒とを混合して第一混合物を形成する工程であって、前記第一触媒と前記第一触媒との重量比は、5:1~1:5である、前記工程と、前記第一混合物を攪拌して第二混合物を得る工程と、前記第二混合物を触媒層に圧延する工程と、前記触媒層、導電性集電体及びガス拡散膜を積層して電極を得る工程とを含む。
【0006】
更に上記の構想に従って、電極の製造方法を提案した。前記方法は、触媒、第一導電剤、第一接着剤及び溶媒を混合して第一混合物を形成する工程であって、前記触媒は、比較的大きな粒径触媒及び比較的小さな粒径触媒を含む、前記工程と、前記第一混合物を攪拌して第二混合物を得る工程と、前記第二混合物を触媒層に圧延する工程と、前記触媒層、導電性集電体及びガス拡散膜を積層して電極を得る工程とを含む。
【0007】
上記の構想に従って、電極の触媒層を提案した。電極の触媒層は、比較的大きな粒径触媒、比較的小さい粒径触媒、導電剤及び接着剤を含み、前記比較的大きな粒径触媒は、第一平均粒径を有し、前記比較的小さい粒径触媒は、第二平均粒径を有し、前記第一平均粒径は、前記第二平均粒径よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の上記の実施形態及び利点は、以下の詳細な説明及び添付の図面を検討した後に、当業者にはより容易に明らかになるであろう。
【
図1】本発明の一実施形態に係る電極の触媒層の構造を拡大して示す模式図である。
【
図2】本発明の実施形態における触媒層を含む電極の製造を示すフローチャートである。
【
図3A】本発明の一実施形態に係る電極構造を示す概略図である。
【
図3B】本発明の別の実施形態に係る電極構造を示す概略図である。
【
図4】本発明の実施例1~5及び比較例の電極を用いて試験を行った酸素発生装置の構造を示す模式図である。
【
図5】本発明の実施例1~5と比較例の単位面積当たりの電流密度の時間に対する変化を示す折れ線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の詳細な説明を読むときは、本発明のすべての図を参照する。本発明のすべての図は、例を示すことによって本発明の異なる実施形態を示し、当業者が本発明を実施する方法を理解するのに役立つ。本実施例は、本発明の精神を実証するのに十分な実施形態を提供し、各実施形態は他の実施形態と矛盾せず、新しい実施形態は、それらの任意の組み合わせを通じて実施することができる。すなわち、本発明は、本明細書に開示された実施形態に限定されない。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係るカソードの触媒層の構造を拡大して示す模式図である。
図1において、触媒層100は、主に、導電剤101、接着剤102、大粒径触媒103及び小粒径触媒104を含む。導電剤101は、接着剤102中並びに大粒径触媒103及び小粒径触媒104の表面に均一に分布している。接着剤102はまた、大粒径触媒103と小粒径触媒104とを一緒に固定するが、触媒層100内、大粒径触媒103との間、小粒径触媒104との間及び大粒径触媒103と小粒径触媒104との間に流体チャネル105が存在する。流体チャネル105もより大きい又はより小さいサイズをそれぞれ有する。本発明の実施形態に係る触媒層100は、大粒径触媒103と小粒径触媒104とが混在した構造を有する。大きな流体チャネル105は、大粒径触媒103によって形成され、小さな流体チャネル105は、粒径触媒104によって形成されるので、流体チャネル105は、触媒層内に密に分布し、触媒の表面積を増加させ、反応効率を向上させて酸素生成効率を向上させることができる。
【0011】
本発明の実施形態に係る触媒層100において、主成分としての触媒は、大粒径触媒103と小粒径触媒104とを含み、「粒径」は「平均粒径」を意味する。「平均粒径」は、当業者で知られているレーザー粒径分析器によって計算される算術平均又はD50値(すなわち、粒径分布の中央値)を指す。「平均粒径」は、当業者が必要に応じて決定することができる。例えば、製品の品質を安定に保つために、適切な粒径の触媒粒子は、要件に応じて特定のメッシュを有する篩で篩にかけられる。また、触媒粒子の形状は一定ではないため、粒径は粒子の比較的長い直径に基づいて計算される。本発明の大粒径触媒103の平均粒径範囲は150~270μmであり、小粒径触媒104の平均粒径範囲は5~50μmである。大粒径触媒103の平均粒径は、小粒径触媒104の平均粒径よりも3~54倍大きい。
【0012】
本発明の実施形態に係る触媒層100において、大粒径触媒103及び小粒径触媒104のいずれかは、二酸化ルテニウム、二酸化イリジウム、二酸化マンガン、酸化コバルト、四三酸化コバルト、水酸化ニッケル、酸化ニッケル、酸化鉄、三酸化タングステン、五酸化バナジウム及び酸化パラジウムからなる群から選択される材料を有する。
【0013】
接着剤102は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロエチレンプロピレン共重合体(FEP)、及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群から選択される材料を有する。導電剤101は、カーボンブラック、アセチレンブラック及びカーボンナノファイバーからなる群から選択される材料を有する。
【0014】
図2は、本発明の実施形態に係る触媒層100を含む電極の製造を示すフローチャートである。工程(S1)は、大粒径触媒103、小粒径触媒104、導電剤101、接着剤102及び溶媒を混合して第一混合物を形成する。工程(S2)は、第一混合物を攪拌して第二混合物を得る。工程(S3)は、第二混合物を触媒層に圧延して、触媒層100を得る。溶媒は、水、アルコール又はそれらの組み合わせである。次に、触媒層100を電極に製造するために、電極製造プロセス中に溶媒が蒸発して排出されることによって、触媒層100内に細孔などの流体チャネル105を生成しやすくなる。この製造方法は、触媒層100、導電性集電体及びガス拡散膜を積層して電極を得る工程(S4)を更に含む。
【0015】
上記工程(S1)で添加される導電剤101の量は、第一混合物の総重量の半分を超えず、好ましくは20~50%の範囲内、より好ましくは28~46%の範囲内である。導電剤101は、電極の導電性を高めることができる。導電剤101の添加量が多すぎると、触媒の含有量が減少し、反応能力が低下する。上記工程(S1)で添加する触媒は、大粒径触媒と小粒径触媒の重量比が10:1~1:10、好ましくは5:1~1:5である。
【0016】
混合工程(S1)と攪拌工程(S2)との違いは、工程(S1)は粗混合であり、高い均一性を必要としないのに対し、工程(S2)は混合物の高い均一性を達成するために実施されることである。従って、混合工程(S1)において、回転数を50~800rpm、好ましくは100~700rpm、より好ましくは150~600rpmとしてもよい。第一混合物の製造には、当業者が通常使用する混合機(ブレード剪断ミキサー)を使用することができる。攪拌工程(S2)は、プラネタリーミキサー(自重遠心式ミキサーともいう)を用いることができ、回転数は200~2000rpm、好ましくは400~1900rpm、より好ましくは500~1400rpmの範囲で設定し、第二混合物を製造する。また、工程(S2)は、プラネタリーミキサーの使用に限定されず、材料を均一に分散させるという目的を達成できる限り、ブレード剪断ミキサーによって行うこともできる。
【0017】
圧延工程(S3)は、当業者が通常使用する圧延機を使用することができ、回転速度は、1~30rpm、好ましくは2~28rpm、より好ましくは4~26rpmの範囲で設定され、ローラーの温度は150℃未満、好ましくは15~100℃、より好ましくは20~80℃に設定される。
【0018】
図3Aは、本発明の一実施形態に係る電極構造を示す概略図である。
図3Bは、本発明の別の実施形態に係る電極構造を示す概略図である。
図3Aに示すように、カソード113は、触媒層100上に導電性集電体112を積層し、導電性集電体112上にガス拡散膜111を積層することによって形成される。また、
図3Bに示すように、触媒層100上に第一ガス拡散膜111aを積層し、続いて第一ガス拡散膜111a上に導電性集電体112を積層し、最後に第二ガス拡散膜111bを積層し、導電性集電体112上に積層される。4層構造の電極は、ガス拡散膜111と導電性集電体112との結合性が良好であるため、3層構造よりも安定した反応を得ることができる。
【0019】
導電性集電体112の機能は、電流を集中させ、触媒層を固定し、電極構造を支持することである。導電性集電体112は、ステンレス鋼、ニッケル、チタン及び銅からなる群から選択される材料を有する金属メッシュ又は発泡体である。ガス拡散膜111、111a、111bの機能は、酸素を透過させ、電解液の流出を防止することである。ガス拡散膜111、111a、111bは、導電剤101や接着剤102と同じ材料からなる。すなわち、ガス拡散膜111、111a、111bは、導電剤と接着剤とからなる。導電剤は、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック及びカーボンナノファイバーのうちの一つ又は少なくとも一つから選択される。接着剤は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロエチレンプロピレンコポリマー(FEP)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)のうちの一つから選択される。ガス拡散膜111、111a、111bは、混合、攪拌、圧延により製造される。ガス拡散膜111、111a、111bの製造工程は、触媒を添加しない以外、工程S1~S3と同様であり、必要に応じて当業者が混合比を調整することができる。導電剤101の比率は、接着剤102の比率よりも高いことが好ましい。ガス拡散膜111において、接着剤102の比率は、触媒層100の比率よりも高い。
【0020】
上述した本発明の触媒層100の製造方法に基づいて、関連する実施例を次のように提案する。
【0021】
【0022】
本発明の実施例1について、上記表1の比率に従って調製した。具体的には、45gの平均粒径270μmのMnO2、9gの平均粒径5μmのMnO2、103.5gのXC72R、67.5gのPTFEを112gの95%エタノールと665gの水と混合し、DLH DCミキサー(YOTEC社製、MRB-3500L)で200rpmで10分間攪拌し、十分に混合した後、ゼラチン状の第一混合物を生成した。次に、ゼラチン状の第一混合物をプラネタリーミキサー(THINKY社製)で1900rpmで5分間攪拌し、集積した第二合物を得た。次いで、集積した第二混合物を、ローラー圧縮機(EKTRON TEK社製、EKT-2100SLM)を25℃及び50rpmで使用して、厚さ0.78mmの触媒層に圧延した。最後に、触媒層を導電性集電体及びガス拡散膜(厚さ1.2mm)と積層して、厚さ1.87mmの電極又はカソード)を得た。
【0023】
【0024】
本発明の実施例2について、上記表2の比率に従って調製した。具体的には、78.75gの平均粒径270μmのMnO2、15.75gの平均粒径50μmのMnO2、56.25gのXC72R、6.75gのVGCF-H、67.5gのPTFEを112gの95%エタノールと665gの水と混合し、DLH DCミキサー(YOTEC社製、MRB-3500L)で200rpmで10分間攪拌し、十分に混合した後、ゼラチン状の第一混合物を生成した。次に、ゼラチン状の第一混合物をプラネタリーミキサー(THINKY社製)で1900rpmで5分間攪拌し、集積した第二合物を得た。次いで、集積した第二混合物を、ローラー圧縮機(EKTRON TEK社製、EKT-2100SLM)を25℃及び50rpmで使用して、厚さ0.78mmの触媒層に圧延した。最後に、触媒層を導電性集電体及びガス拡散膜(厚さ1.2mm)と積層して、厚さ1.87mmの電極又はカソード)を得た。
【0025】
【0026】
本発明の実施例3について、上記表3の比率に従って調製した。具体的には、78.75gの平均粒径150μmのMnO2、15.75gの平均粒径5μmのMnO2、85.5gのXC72R 、45gのPTFEを114gの95%エタノールと662gの水と混合し、DLH DCミキサー(YOTEC社製、MRB-3500L)で200rpmで10分間攪拌し、十分に混合した後、ゼラチン状の第一混合物を生成した。次に、ゼラチン状の第一混合物をプラネタリーミキサー(THINKY社製)で1900rpmで5分間攪拌し、集積した第二合物を得た。次いで、集積した第二混合物を、ローラー圧縮機(EKTRON TEK社製、EKT-2100SLM)を25℃及び50rpmで使用して、厚さ0.78mmの触媒層に圧延した。最後に、触媒層を導電性集電体及びガス拡散膜(厚さ1.2mm)と積層して、厚さ1.87mmの電極又はカソード)を得た。
【0027】
【0028】
本発明の実施例4について、上記表4の比率に従って調製した。具体的には、67.5gの平均粒径150μmのMnO2、13.5gの平均粒径50μmのMnO2、99gのXC72R、45gのPTFEを114gの95%エタノールと662gの水と混合し、DLH DCミキサー(YOTEC社製、MRB-3500L)で200rpmで10分間攪拌し、十分に混合した後、ゼラチン状の第一混合物を生成した。次に、ゼラチン状の第一混合物をプラネタリーミキサー(THINKY社製)で1900rpmで5分間攪拌し、集積した第二合物を得た。次いで、集積した第二混合物を、ローラー圧縮機(EKTRON TEK社製、EKT-2100SLM)を25℃及び50rpmで使用して、厚さ0.78mmの触媒層に圧延した。最後に、触媒層を導電性集電体及びガス拡散膜(厚さ1.2mm)と積層して、厚さ1.87mmの電極又はカソード)を得た。
【0029】
【0030】
本発明の実施例5について、上記表5の比率に従って調製した。具体的には、13.5gの平均粒径150μmのMnO2、67.5gの平均粒径50μmのMnO2、69.75gのXC72R、6.75gのVGCF-H、67.5gのPTFEを112gの95%エタノールと665gの水と混合し、DLH DCミキサー(YOTEC社製、MRB-3500L)で200rpmで10分間攪拌し、十分に混合した後、ゼラチン状の第一混合物を生成した。次に、ゼラチン状の第一混合物をプラネタリーミキサー(THINKY社製)で1900rpmで5分間攪拌し、集積した第二合物を得た。次いで、集積した第二混合物を、ローラー圧縮機(EKTRON TEK社製、EKT-2100SLM)を25℃及び50rpmで使用して、厚さ0.78mmの触媒層に圧延した。最後に、触媒層を導電性集電体及びガス拡散膜(厚さ1.2mm)と積層して、厚さ1.87mmの電極又はカソード)を得た。
【0031】
【0032】
本発明の単一平均粒子径の比較例については、上記表6の比率に従って調製した。具体的には、45.0gの単一の平均粒径150μmのMnO2(上記実施例1~5と同様、単一の平均粒径とは、当該技術分野で公知のレーザー粒度分析装置により算出されるD50値をいう)、 112.5gのXC72R、67.5gのPTFE、112gの95%エタノール及び665gの水をDLH DCミキサー(YOTEC社製、MRB-3500L)にて200rpmで10分間混合し、十分に混合した後、ゼラチン状の第一混合物を作製した。次に、ゼラチン状の第1混合物をプラネタリーミキサー(株式会社THINKY)で1900rpmで5分間攪拌し、集積した第二混合物を得た。次いで、集積した第二混合物を、ローラー圧縮機(EKTRON TEK社製、EKT-2100SLM)を25℃と50rpmで使用して、厚さ0.78mmの触媒層に圧延した。最後に、触媒層に導電性集電体及びガス拡散膜(厚さ1.2mm)を積層して、厚さ1.87mmの電極(又はカソード)を得た。
【0033】
図4は、実施例1~5及び比較例の電極を用いて試験を行った酸素発生装置の構成を示す模式図である。異なる材料で作られた電極の効果を試験するために、単純化された酸素発生装置200が提案される。
図4に示すように、電解液115(30%水酸化ナトリウム)を有する容器116において、カソード113の一部を上記実施例及び比較例の製造工程に従って製造し、アノード114として使用されるニッケルメッシュは、容器116の内側に配置される。容器116において、カソード113の触媒層100とアノード114が電解質115に浸されている。カソード113のガス拡散層111は容器116の外側に配置され、触媒層100は容器116の内側にあるため、雰囲気中の酸素はガス拡散層111を通って容器116に入ることができる。酸素発生装置200は、電圧が印加されると、触媒層100とアノード114との電気化学反応により、大気中の酸素から高濃度の酸素を発生させ、酸素発生装置200において、大気中のわずか19%の酸素を80%以上の酸素に濃縮することができる。カソード113及びアノード114の表面積は100cm
2であり、携帯用酸素発生装置に使用することができる。試験中、電極に1Vの電圧を印加して電流値を測定し、電流値を面積で除して電流密度値を得た。結果を
図5に示す。
【0034】
図5は、本発明の実施例1~5と比較例の単位面積当たりの電流密度と時間との関係の変化を示す折れ線グラフである。単位面積当たりの電流密度が高いほど、電気化学反応能力が高く、したがって、本発明の実施形態の電極の酸素生成効率を評価することができる。この試験は、実施形態1~5のカソードを水酸化カリウム電解質及びアノードNiメッシュと組み合わせることによって実施された。
図5において、本発明の二つの平均粒径を有する触媒によって得られた実施形態1~5における単位面積当たりの電流密度は、比較例における単一の平均粒径を有する触媒によって得られた電流密度よりも全て大きいことが分かる。実施例1の効果について、最初の1時間には比較例ほど良くないが、1時間後には効果が徐々に増加し、3時間後には実施例4と5の効果に近づいている。つまり、接着剤と触媒の比率が異なるため、各実施形態の開始値も異なるが、最終結果は単一の平均粒径範囲の触媒よりも優れている。
図5から、実施例3の効果が明らかに最良であることが分かる。
【0035】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加え得ることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0036】
100 触媒層
101 導電剤
102 接着剤
103 大粒径触媒
104 小粒径触媒
105 流体チャネル
111 ガス拡散層
111a 第一ガス拡散膜
111b 第二ガス拡散膜
112 導電性集電体
113 カソード
114 アノード
115 電解液
116 容器
200 酸素発生装置
S1~S4 工程
【手続補正書】
【提出日】2023-02-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、電極の製造方法。
第一平均粒径を有する第一触媒と、第二平均粒径を有する第二触媒と、第一導電剤と、第一接着剤と、溶媒とを混合して第一混合物を形成する工程であって、前記第一触媒と前記第一触媒との重量比は、5:1~1:5である、前記工程;
前記第一混合物を攪拌して第二混合物を得る工程;
前記第二混合物を触媒層に圧延する工程;並びに
前記触媒層、導電性集電体及びガス拡散膜を積層して電極を得る工程;
【請求項2】
前記ガス拡散膜は、第二導電剤と第二接着剤とを含み、
前記第一触媒及び前記第二触媒のいずれかは、二酸化ルテニウム、二酸化イリジウム、二酸化マンガン、酸化コバルト、四酸化コバルト、水酸化ニッケル、酸化ニッケル、酸化鉄、三酸化タングステン、五酸化バナジウム及び酸化パラジウムからなる群から選択される材料を有し、
前記第一導電剤及び前記第二導電剤のいずれかは、カーボンブラック、アセチレンブラック及びカーボンナノファイバーからなる群から選択される材料を有し、
前記第一接着剤及び前記第二接着剤のいずれかは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロエチレンプロピレンコポリマー(FEP)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群から選択される材料を有し、
前記溶媒は、水、アルコール、又はそれらの組み合わせであり、
前記導電性集電体は、ステンレス鋼、ニッケル、チタン及び銅からなる群から選択される材料を有する金属メッシュ又は発泡体である、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項3】
前記混合工程及び前記攪拌工程のいずれかにおける回転速度が100~2000rpmであり、
前記攪拌工程は、重力遠心攪拌工程及びブレードせん断攪拌工程の少なくとも一方を含み、
前記積層工程は、ローラー装置を使用し、圧延速度が30rpm未満、温度が150℃未満の条件を有する、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項4】
前記第一平均粒径が150~270μmの範囲であり、前記第二平均粒径が5~50μmの範囲であり、前記第一平均粒径が前記第二平均粒径の3~54倍である、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項5】
以下の工程を含む、電極の製造方法。
触媒、第一導電剤、第一接着剤及び溶媒を混合して第一混合物を形成する工程であって、前記触媒は、比較的大きな粒径触媒及び比較的小さな粒径触媒を含む、前記工程;
前記第一混合物を攪拌して第二混合物を得る工程;
前記第二混合物を触媒層に圧延する工程;並びに
前記触媒層、導電性集電体及びガス拡散膜を積層して電極を得る工程;
【請求項6】
前記ガス拡散膜は、第二導電剤と第二接着剤とを含み、
前記比較的大きな粒径触媒及び前記比較的小さな粒径触媒のいずれかは、二酸化ルテニウム、二酸化イリジウム、二酸化マンガン、酸化コバルト、四酸化コバルト、水酸化ニッケル、酸化ニッケル、酸化鉄、三酸化タングステン、五酸化バナジウム及び酸化パラジウムからなる群から選択される材料を有し、
前記第一導電剤及び前記第二導電剤のいずれかは、カーボンブラック、アセチレンブラック及びカーボンナノファイバーからなる群から選択される材料を有し、
前記第一接着剤及び前記第二接着剤のいずれかは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロエチレンプロピレンコポリマー(FEP)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群から選択される材料を有し、
前記溶媒は、水、アルコール、又はそれらの組み合わせであり、
前記導電性集電体は、ステンレス鋼、ニッケル、チタン及び銅からなる群から選択される材料を有する金属メッシュ又は発泡体である、請求項5に記載の電極の製造方法。
【請求項7】
前記混合工程及び前記攪拌工程のいずれかにおける回転速度が100~2000rpmであり、
前記攪拌工程は、重力遠心攪拌工程及びブレードせん断攪拌工程の少なくとも一方を含み、
前記積層工程の圧延速度が30rpm未満、温度が150℃未満の条件を有する、請求項5に記載の電極の製造方法。
【請求項8】
前記比較的大きな粒径触媒は、平均粒径が150~270μmであり、
前記比較的小さな粒径触媒は、平均粒径が5~50μmであり、
前記比較的大きな粒径触媒の平均粒径は、前記比較的小さな粒径触媒の平均粒径の3~54倍である、請求項5に記載の電極の製造方法。
【請求項9】
電極の触媒層であって、
比較的大きな粒径触媒、比較的小さい粒径触媒、導電剤及び接着剤を含み、
前記比較的大きな粒径触媒は、第一平均粒径を有し、
前記比較的小さい粒径触媒は、第二平均粒径を有し、
前記第一平均粒径は、前記第二平均粒径よりも大きい、前記電極の触媒層。
【請求項10】
前記第一平均粒径が150~270μmであり、
前記第二平均粒径が5~50μmであり、
前記第一平均粒径が前記第二平均粒径の3~54倍であり、
前記比較的大きな粒径触媒と前記比較的小さい粒径触媒の重量比は5:1~1:5であり、
前記比較的大きな粒径触媒及び前記比較的小さな粒径触媒のいずれかは、二酸化ルテニウム、二酸化イリジウム、二酸化マンガン、酸化コバルト、四酸化コバルト、水酸化ニッケル、酸化ニッケル、酸化鉄、三酸化タングステン、五酸化バナジウム及び酸化パラジウムからなる群から選択される材料を有し、
前記導電剤は、カーボンブラック、アセチレンブラック及びカーボンナノファイバーからなる群から選択される材料を有し、
前記接着剤は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロエチレンプロピレンコポリマー(FEP)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群から選択される材料を有する、請求項9に記載の電極の触媒層。
【外国語明細書】