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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065341
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】電動自動車
(51)【国際特許分類】
   B60L 7/26 20060101AFI20230502BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20230502BHJP
   B62M 7/12 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
B60L7/26
B60L15/20 J
B62M7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022172360
(22)【出願日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】A 50850/2021
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(71)【出願人】
【識別番号】597083976
【氏名又は名称】アー・ファウ・エル・リスト・ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】AVL LIST GMBH
【住所又は居所原語表記】HANS-LIST-PLATZ 1,A-8020 GRAZ,AUSTRIA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】パウル・カプス
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・カストナー
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AB03
5H125BA00
5H125CA01
5H125CA15
5H125CB02
5H125DD16
5H125EE41
5H125EE42
(57)【要約】
【課題】操舵用の手動ハンドルバー(1)を有する電動自動車、特に電動二輪車の走行性と走行安全性とを高める。
【解決手段】本発明は少なくとも一つの電気駆動モータの回転数(n)および/または回転トルク(M)を制御するためのスロットルレバー(4)と少なくとも一つの電気駆動モータの回転数(n)および/または回転トルク(M)を少なくとも一つの第一の作動範囲(A)において調整するための分離レバー(6)とを有する操舵用の手動ハンドルバー(1)を有する電動自動車に関する。特にモータ制動作動において走行性と走行安全性とを高めるため、自動車が少なくとも一つの第二の作動領域(R)において回生作動可能であり、少なくとも一つの第二の作動領域(R)において分離レバー(6)によって少なくとも一つの電気駆動モータの回生出力または回生トルク(M)が調整可能および/または制限可能であるように設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの電気駆動モータの回転数(n)および/または回転トルク(M)を制御するためのスロットルレバー(4)と前記少なくとも一つの電気駆動モータの前記回転数(n)および/または前記回転トルク(M)を少なくとも一つの第一の作動範囲(A)において調整するための分離レバー(6)とを有する操舵用の手動ハンドルバー(1)を有する電動自動車、特に電動二輪車において、前記自動車が少なくとも一つの第二の作動領域(R)において回生作動可能であり、前記少なくとも一つの第二の作動領域(R)において前記分離レバー(6)によって前記少なくとも一つの電気駆動モータの回生出力または回生トルク(M)が調整可能および/または制限可能であることを特徴とする電動自動車。
【請求項2】
前記回生出力または前記回生トルク(M)は、前記分離レバー(6)を引くことによって低下可能および/または制限可能であることを特徴とする、請求項1に記載の電動自動車。
【請求項3】
最小の偏向に割り当てられる、前記分離レバー(6)の第一のトグルレバー位置において前記回生出力または前記回生トルク(M)が最大であり、最大の偏向に割り当てられる、前記分離レバー(6)の第二のトグルレバー位置において前記回生出力または前記回生トルク(M)が最小であり、好ましくは前記第一のトグルレバー位置と前記第二のトグルレバー位置との間における中間位置において前記回生出力または前記回生トルク(M)が無段式または不連続の各ステップにおいて調整可能であることを特徴とする、請求項1または2に記載の電動自動車。
【請求項4】
前記回生出力または前記回生トルク(M)は、前記スロットルレバー(4)の操作によっても調整可能であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の電動自動車。
【請求項5】
最小の偏向に割り当てられる、前記スロットルレバー(4)の第一のレバー回転位置において前記回生出力または前記回生トルク(M)が最大であり、最大の偏向に割り当てられる、前記スロットルレバー(4)の第二のレバー回転位置において前記回生出力または前記回生トルク(M)が最小であり、好ましくは前記第一のレバー回転位置と前記第二のレバー回転位置との間における中間位置において前記回生出力または前記回生トルク(M)が無段式または不連続の各ステップにおいて調整可能であることを特徴とする、請求項4に記載の電動自動車。
【請求項6】
手動ハンドルバー(1)を介して操舵される電動自動車、特に電動二輪車を作動するための方法であって、前記自動車の少なくとも一つの電気駆動モータの回転数(n)および/または回転トルク(M)がスロットルレバー(4)を介して制御され、少なくとも一つの第一の作動範囲(A)において分離レバー(6)を介して調整される方法において、前記自動車が少なくとも一つの第二の作動領域(R)において回生作動され、前記自動車の前記少なくとも一つの第二の作動領域(R)において前記分離レバー(6)によって前記少なくとも一つの電気駆動モータの回生出力または回生トルク(M)が調整および/または制限されることを特徴とする方法。
【請求項7】
前記回生出力または前記回生トルク(M)は、前記分離レバー(6)を引くことによって低下および/または制限されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
最小の偏向に割り当てられる、前記分離レバー(6)の第一のトグルレバー位置において前記回生出力または前記回生トルク(M)が最大になり、最大の偏向に割り当てられる、前記分離レバー(6)の第二のトグルレバー位置において前記回生出力または前記回生トルク(M)が最小になり、好ましくは前記第一のトグルレバー位置と前記第二のトグルレバー位置との間における中間位置において前記回生出力または前記回生トルク(M)が無段式または不連続の各ステップにおいて調整されることを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記回生出力または前記回生トルク(M)は、前記スロットルレバー(4)の操作によっても調整され、好ましくは前記スロットルレバー(4)によって定格回生出力または定格回生トルク(MR4)が予め設定されることを特徴とする、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
最小の偏向に割り当てられる、前記スロットルレバー(4)の第一のレバー回転位置において前記回生出力または前記回生トルク(M)が最大になり、最大の偏向に割り当てられる、前記スロットルレバー(4)の第二のレバー回転位置において前記回生出力または前記回生トルク(M)が最小になり、好ましくは前記第一のレバー回転位置と前記第二のレバー回転位置との間における中間位置において前記回生出力または前記回生トルク(M)が無段式または不連続の各ステップにおいて調整されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
予め定義された前記定格回生出力または予め設定された前記定格回生トルク(MR4)からスタートして前記分離レバー(6)によって前記少なくとも一つの電気駆動モータの前記回生出力または前記回生トルク(M)が期待回生出力または期待回生トルク(MR6)に低下されることを特徴とする、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記自動車の少なくとも一つの後輪の実効スリップ値と予め定義された目標スリップ値とを比較し、目標スリップ値を超える場合、前記期待回生出力または前記期待回生トルク(MR6)からスタートして前記実効スリップ値が前記目標スリップ値に一致するまで前記回生出力または前記回生トルク(M)が低下されることにより後輪スリップ調整が実施されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも一つの第一の作動領域(A)において前記自動車が駆動作動され、前記自動車の前記少なくとも一つの第一の作動領域(A)において前記分離レバー(6)によって前記少なくとも一つの電気駆動モータの駆動出力または駆動トルク(M)が調整されることを特徴とする、請求項6~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記駆動出力または前記駆動トルク(M)は、前記分離レバー(6)を引くことによって低下および/または制限されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
最小の偏向に割り当てられる、前記分離レバー(6)の第一のトグルレバー位置において前記駆動出力または前記駆動トルク(M)が最大になり、最大の偏向に割り当てられる、前記分離レバー(6)の第二のトグルレバー位置において前記駆動出力または前記駆動トルク(M)が最小になり、好ましくは前記第一のトグルレバー位置と前記第二のトグルレバー位置との間における中間位置において前記駆動出力または前記駆動トルク(M)が無段式または不連続の各ステップにおいて調整されることを特徴とする、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記駆動出力または前記駆動トルク(M)は、前記スロットルレバー(4)の操作によっても調整され、好ましくは前記スロットルレバー(4)によって定格駆動出力または定格駆動トルク(MA4)が予め設定されることを特徴とする、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
最小の偏向に割り当てられる、前記スロットルレバー(4)の第一のレバー回転位置において前記駆動出力または前記駆動トルク(M)が最大になり、最大の偏向に割り当てられる、前記スロットルレバー(4)の第二のレバー回転位置において前記駆動出力または前記駆動トルク(M)が最小になり、好ましくは前記第一のレバー回転位置と前記第二のレバー回転位置との間における中間位置において前記駆動出力または前記駆動トルク(M)が無段式または不連続の各ステップにおいて調整されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
予め定義された前記定格駆動出力または予め設定された前記定格駆動トルク(MA4)からスタートして前記分離レバー(6)によって前記少なくとも一つの電気駆動モータの前記駆動出力または前記駆動トルク(M)が期待駆動出力または期待駆動トルク(MA6)に低下されることを特徴とする、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記自動車の少なくとも一つの後輪の実効スリップ値と予め定義された目標スリップ値とを比較し、目標スリップ値を超える場合、前記期待駆動出力または前記期待駆動トルク(MA6)からスタートして前記実効スリップ値が前記目標スリップ値に一致するまで前記駆動出力または前記駆動トルク(M)が低下されることにより後輪スリップ調整が実施されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つの電気駆動モータの回転数および/または回転トルクを制御するためのスロットルレバー(throttle lever)と少なくとも一つの電気駆動モータの回転数および/または回転トルクを少なくとも一つの第一の作動範囲において調整するための分離レバー(disconnect lever)とを有する操舵用の手動ハンドルバーを有する電動自動車、特に電動二輪車に関する。さらに本発明は、手動ハンドルバーを介して操舵される電動自動車、特に電動二輪車を作動するための方法に関し、電気駆動モータの回転数および/または回転トルクがスロットルレバーを介して制御されて分離レバーを介して調整される。
【背景技術】
【0002】
内燃機関駆動の二輪車やその他の手動ハンドルバーを介して操舵される(すなわちハンドル制御される)自動車は、一般に回転数の制御のための、ハンドルの右側にスロットルレバーと、前輪ブレーキを操作するための、ハンドルの右側に配置されるブレーキレバーと、ドライブトレインにおける分離クラッチを操作するための、ハンドルの左側に配置される分離レバー(いわゆるクラッチレバー)を有する。左側の分離レバーは、内燃機関駆動の二輪車において通常はドライブトレインにおいて分離クラッチをクラッチ係合またはクラッチ解除するためと起動回転トルクの調量とに使用される。
【0003】
いわゆるオフロードバイク、すなわちダートバイクにおいて時々難しいオフロードにおいてスロットルレバーがフルスロットルに保持されたままスリップクラッチを介して出力が調整されることがある。その理由はオフロードにおいてドライバがつかまる必要があるため、多くの場合ドライバがスロットルレバーを回すすべがないためである。
【0004】
電気二輪車はクラッチを有しないため、クラッチレバーを介した出力低下を実施するすべがない。同様のことが回生についても該当する。
【0005】
電動二輪車が分離レバーを有しなくとも特に電気作動されるオフロードバイクにおいてオフロードにおける走行安全性および走行性にとってドライバの手首で回転動作を実施するためにドライバが自身のグリップを緩める必要がなく左側の分離レバーを介して電気駆動装置の出力と駆動回転トルクとを容易且つ迅速に低下させ得ることは有利である。
【0006】
米国特許出願公開第2011/048832号明細書よりハンドル制御される電動自動車のための制御装置が公知であり、当該制御装置はハンドルの右側に配置された、モータ回転数を制御するためのスロットルレバーを有する。スロットルレバーによってバッテリーから電気モータに対して供給される電気エネルギーの量が制御される。さらに前記ハンドル制御される自動車は、ハンドルの左側に配置された分離レバーを有し、当該分離レバーによってドライバは分離レバーを引くことにより電気モータの駆動回転数をレバー位置に応じて調整することが可能である。左側の分離レバーによる回生の調整は設けられていない。よって回生出力の変更が(通常通り)スロットルレバーを介してのみ変更可能であるため、ドライバの安定した姿勢が保証されないという欠点が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/048832号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、ハンドル制御される自動車において走行性と走行安全性とを(特にモータ制動作動において)高めて回生制動時における回生出力または回生トルクの容易な調整を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると当該課題は、自動車が少なくとも一つの第二の作動領域において回生作動可能であり、少なくとも一つの第二の作動領域において分離レバーによって少なくとも一つの電気駆動モータの回生出力または回生トルクが調整可能および/または制限可能であるということにより解消される。
【0010】
これにより回生制動における回生出力または回生トルクを容易に調整することが可能となる。
【0011】
分離トグルレバー(disconnect toggle lever)は、回生出力の低下のみならず駆動出力の低下にも使用され得る。
【0012】
分離トグルレバーは、回生出力の制限のみならず駆動出力の制限にも使用され得る。
【0013】
ここでいう回生とは、自動車の減速工程におけるエネルギー回収を称する。この際、回生トルクは、回生制動時に利用可能な制動トルクである。回生出力は、回生トルクと電気駆動モータの回転数とから得られる。
【0014】
回生出力または回生トルクが分離レバーを引くことによって低下可能および/または制限可能であるように設けられることが好ましい。
【0015】
本発明の変形実施形態では、最小の偏向に割り当てられる、分離レバーの第一のトグルレバー位置において回生出力または回生トルクが最大であり、最大の偏向に割り当てられる、分離レバーの第二のトグルレバー位置において回生出力または回生トルクが最小であり、好ましくは第一のトグルレバー位置と第二のトグルレバー位置との間における中間位置において回生出力または回生トルクが無段式または不連続の各ステップにおいて調整可能であるように設けられる。
【0016】
本発明の別の実施形態において回生出力または回生トルクがスロットルレバーの操作によっても調整可能であるように設けられる。好ましくは、最小の偏向に割り当てられる、スロットルレバーの第一のレバー回転位置において回生出力または回生トルクが最大であり、最大の偏向に割り当てられる、スロットルレバーの第二のレバー回転位置において回生出力または回生トルクが最小である。有利には第一のレバー回転位置と第二のレバー回転位置との間における中間位置において回生出力または回生トルクが無段式または不連続の各ステップにおいて調整可能であるように設けられる。
【0017】
特に駆動出力のみならず回生出力もがスロットルレバーを介してのみ設定される(いわゆる「ワンペダル」調整)電動二輪車においては、スロットルレバーを動かすことなく回生出力または回生トルクを容易に操作される分離レバーを介して迅速に低下させ得ることが特に有利である。この際、(自動車が少なくとも一つの第二の作動領域において回生的に作動される場合)、回生出力または回生トルクが分離レバーを引くことによって低下および/または制限されることにより、分離レバーによって少なくとも一つの電気駆動モータの回生出力または回生トルクが調整される。
【0018】
本発明の変形実施形態では、回生出力または回生トルクのみならず駆動出力または駆動トルクもがスロットルレバーを操作することによって調整され、スロットルレバーによって定格回生出力または定格回生トルクあるいは定格駆動出力または定格駆動トルクが予め設定されるようにされる。予め定義された定格回生出力または予め設定された定格回生トルクあるいは定格駆動出力または定格駆動トルクからスタートして有利な形で分離レバーによって少なくとも一つの電気駆動モータの回生出力または回生トルクあるいは駆動出力または駆動トルクを期待回生出力または期待回生トルクあるいは期待駆動出力または期待駆動トルクに低下させるかあるいはゼロに低下させるおよび/または制限することが可能である。
【0019】
本発明の範囲内において、さらに自動車の少なくとも一つの後輪の実効スリップ値と予め定義された目標スリップ値とが比較され、目標スリップ値を超える場合、(期待回生出力または期待回生トルクあるいは期待駆動出力または期待駆動トルクからスタートして)実効スリップ値が目標スリップ値に一致するまで回生出力または回生トルクあるいは駆動出力または駆動トルクが低下および/または制限されることによって後輪スリップ調整が実施されるように設けられる。期待回生トルクまたは期待駆動トルクが後輪におけるスリップ限界を超えると、駆動モータの回転数が低下および/または制限される。電気駆動モータの回転数低下により電気駆動モータによって回生されるまたは駆動のために供給される出力の大幅な低下が生じる。これにより自動車の走行性と静止摩擦とを向上して作動範囲を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下において本発明を制限するものではない各図面を参照しつつ詳細に説明する。概略的に図示されているのは以下の通りである。
【0021】
図1】本発明による自動車のハンドルバーである。
図2】当該自動車の回転トルク―回転数の線図である。
図3】ドライバの介入による車輪トルクの調整である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、例えば電動二輪車、電動三輪車、電動四輪車などのハンドル制御される(すなわちハンドルバー1を介して操縦される)電気作動される自動車のハンドルバー1を概略的に図示している。この種のハンドルバー1は、一つまたは複数の直線状または湾曲した管から構成され得、一般に第一の側面2(例えば走行方向から見て右側)においてスロットルレバー4を有し、当該スロットルレバーによって駆動モータの回転数および/または回転トルクが調整される。さらに第一の側面2において例えばトグルレバーとして形成された、例えば前輪ブレーキを操作するためのブレーキレバー5が配置されている。車両長手方向軸10に対して第一の側面2に対向するように配置された第二の側面3において例えばトグルレバーとして形成された分離レバー6が位置されており、当該分離レバーは、内燃機関およびギアボックスが設けられた、ハンドル制御される自動車の場合において例えばドライブトレインにおいて分離クラッチを開くためのクラッチレバーとして形成されている。
【0023】
自動車は、少なくとも一つの第一の作動領域Aと少なくとも一つの第二の作動領域Rとにおいて作動され得、第一の作動領域Aにおいて自動車は駆動、例えば加速され、また第二の作動領域Rにおいて減速、例えば回生制動されるように作動される。
【0024】
内燃機関駆動の、ハンドル制御される自動車と同様、ここで説明される電動自動車においても分離レバー6が駆動または駆動モータによるモータ制動工程の低下または中断に使用される。
【0025】
第二の作動領域Rでは回生作動において電動自動車が電気駆動モータによって制動されて電気駆動モータが発電作動される。
【0026】
本発明によると当該分離レバー6は、電動自動車の少なくとも一つの減速作動領域において回生出力または回生トルクMが分離レバー6を図1において矢印Pの方向に操作、すなわち引くことにより調整され、すなわち低下および/または制限され得るように形成されている。分離レバー6の静止位置に割り当てられた、図示される、偏向が最小(例えばゼロ)である第一のトグルレバー位置において、回生出力または回生トルクMは、予め設定された定格回生出力または予め設定された定格回生トルクMR4に相応する。定格回生出力または定格回生トルクMR4は、「ワンペダル」調整の場合は例えばスロットルレバー4を介してドライバによって予め設定される。この際、分離レバー6の作用様式は、内燃機関駆動の二輪車におけるクラッチレバーと同様に実施される:分離レバー6をどんどん矢印Pの方向に引くことによって回生出力または回生トルクMが直接レバー移動に比例してだんだんゼロになるまで低下される。当該回生出力または回生トルクMの低下は、線形または所定の関数に従って連続したまたは不連続の各ステップによって実施され得る。
【0027】
別の実施形態においては、自動車が電気駆動モータによって駆動される第一の作動領域Aにおいても分離レバー6が電気駆動モータの駆動出力または駆動トルクMの調整のために使用されるように設けられる。自動車の少なくとも一つの加速作動領域において駆動出力または駆動トルクMが分離レバー6を操作、すなわち引くことによって調整、すなわち低下および/または制限され得る。分離レバー6の静止位置に割り当てられた、分離レバー6の偏向が最小(例えばゼロ)である第一トグルレバー位置において、駆動出力または駆動トルクMが予め設定された定格駆動出力または定格駆動トルクMA4に相応する。定格駆動出力および定格駆動トルクMA4は、ドライバによってスロットルレバー4を介して設定される。ここでも分離レバー6の作用様式は、内燃機関駆動の二輪車におけるクラッチレバーと同様に実施される:分離レバー6をどんどん引くことによって駆動出力または駆動トルクMが直接レバー移動に比例してだんだんゼロになるまで低下される。駆動出力または駆動トルクMの当該低下も同様に線形または所定の関数に従って連続してまたは不連続の各ステップによって実施され得る。
【0028】
図2は、電動自動車の電気駆動モータの回転トルクM―回転数nの線図を図示している。矢印P0は、分離レバー6の操作時における(加速または減速作動における)回転トルクMの低下を示す。
【0029】
こうすることで電気作動され、ハンドル制御される自動車においても(内燃機関駆動の二輪車と同様に)極度のオフロードにおいて使用される場合(内燃機関駆動の二輪車におけるクラッチレバーに相応する)分離レバー6を介して出力を調整する一方、スロットルレバー4を例えば(駆動作動において)「フルスロットル」あるいは最大駆動出力に、また(減速作動において)「ゼロスロットル」または最大回生出力に保持することが可能である。これによりスロットルレバー4を出力調整のために同時に回転させる必要がなく、ドライバがオフロードにおいてハンドルバー1につかまることが可能となる。分離レバー6の操作は、ハンドルバー1につかまることに悪影響を与えることなく個々のあるいは少数の指を介して実施され得る。
【0030】
これにより分離レバー6の操作により、スロットルレバー4を動かすことなく回生出力および/または駆動出力を低下させることが可能である。こうすることにより内燃機関駆動の、ハンドル制御される自動車におけるクラッチレバーの挙動をハンドル制御される電動自動車において真似ることが可能である。
【0031】
良好な走行性のために二輪車のようなハンドル制御される自動車においても多くはいわゆる「ワンペダル」調整が採用される。
【0032】
この際、回生はスロットルレバー4をわずかに偏向させることにより実施される。
【0033】
例えばブレーキレバー5を介して操作されるブレーキ(例えば前輪ブレーキ)は、純粋に油圧式に作用するか回生出力の一部を担うことが可能である。回生の一部を担う場合、ブレーキ出力が「ブレンドされ」、後輪における回生と油圧式ブレーキとの間に連続的な移行が生じる。そのためにはブレーキレバー5においてブレーキレバー5の位置またはブレーキレバー5における制動力を決定するリニアセンサが必要となる。
【0034】
しかしながら地面がすべりやすい場合またはコーナリング時あるいは傾斜した状態では一つまたは複数の後輪が伝達できる制動出力(回生出力)は少ない。それでも(最大の作動範囲と良好な走行性とに鑑みて)常に最大可能な回生を利用するために後輪スリップ調整を採用することが可能である。
【0035】
この際、少なくとも一つの場合によっては設けられているABSセンサ(ABS=アンチロック・ブレーキ・システム)を後輪においてエンコーダとして採用することが可能である。制御装置において様々な走行条件(速度、減速、コーナー傾斜位置、路面状況など)に応じて異なる各目標スリップ値が記憶されている。目標スリップ値を超える場合、目標スリップ値が得られるまで回生が低下される。ABSセンサの別法として車速に対する駆動モータの速度勾配を採用することも可能である。これは特にハンドル制御される電動自動車の後輪をベルト駆動する場合に特に有利に機能する。
【0036】
当該調整は、加速する場合にも採用できる。
【0037】
分離レバー6を介して駆動出力または駆動トルクMあるいは回生出力または回生トルクMを手動で調整することにより、後輪スリップ調整のための最大フレームが予め定義される。スロットルレバー4の位置によって分離レバー6による調整のための最大フレームが予め与えられる。
【0038】
後輪スリップ調整は、電気駆動モータの回生出力または回生トルクMあるいは駆動出力または駆動トルクMの出力調整(MPPT:最大電力点追従機能)を介して実現され得る。
【0039】
入力変数として期待回生出力または期待回生トルクMR6がドライバによってスロットルレバー4および/または分離レバー6を介して予め与えられる。期待回生トルクMR6が後輪におけるスリップ限界を超えると、電気駆動モータの回転数が低下することにより電気駆動モータによって回生される出力が大幅に低下する。
【0040】
当該効果が制御装置によって検出されると直ちに回生トルクMが再び最大値になるまで期待回生トルクMR6が制限される。
【0041】
ここで回生において再び出力低下が検知されるまで回生トルクMが段階的に増加されることにより、また新たなサイクルが始まる。
【0042】
図3は、加速または駆動中の第一の作動領域Aと減速または回生中の第二の作動領域Rにおける、自動車の少なくとも一つの駆動輪における駆動トルクMあるいは回生トルクMの調整を概略的に図示している。スロットルレバー4の位置S4によって定格回生トルクMR4または定格駆動トルクMA4が予め与えられる。分離レバー6を介して定格回生トルクMR4または定格駆動トルクMA4が後輪スリップ調整のための最大フレームを表す期待回生トルクMR6または期待駆動トルクMA6に低下される。
【0043】
期待回生トルクMR6および期待駆動トルクMA6の各曲線によって表される定格回生トルクMR4または定格駆動トルクMA4の低下の別法として、回生トルクMを分離レバー6によって最大回生トルクMRmaxに、あるいは駆動トルクMを分離レバー6を介して最大駆動トルクMAmaxに制限することが可能である。最大回生トルクMRmaxまたは最大駆動トルクMAmaxは、極端な場合ゼロでもあり得る。定格回生トルクMR4または定格駆動トルクMA4を低下させる場合と異なり、当該制限は、スロットルレバー4の定義された下限位置S4Rmax以下および/または定義された上限位置S4Amax以上においてのみ作用する。
【0044】
自動車の少なくとも一つの駆動輪の駆動トルクMあるいは回生トルクMのゼロ点0付近の調整は、引くから押す(あるいはその逆)への滑らかな移行が実施されるように行われることが好ましい。このことは、図3に図示される線図において各接線tが定格回生トルクMR4および定格駆動トルクMA4のゼロ点0を中心とした延伸の曲線に概ね「水平」、すなわち横軸(スロットルレバー4の位置S4)に対して概ね平行に延伸する場合に得られる。図示される例において接線tと横軸(スロットルレバー4の位置S4)との間における角αが最大約3°である。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-03-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの電気駆動モータの回転数(n)および/または回転トルク(M)を制御するためのスロットルレバー(4)と前記少なくとも一つの電気駆動モータの前記回転数(n)および/または前記回転トルク(M)を少なくとも一つの第一の作動範囲(A)において調整するための分離レバー(6)とを有する操舵用の手動ハンドルバー(1)を有する電動自動車、特に電動二輪車において、前記自動車が少なくとも一つの第二の作動領域(R)において回生作動可能であり、前記少なくとも一つの第二の作動領域(R)において前記分離レバー(6)によって前記少なくとも一つの電気駆動モータの回生出力または回生トルク(M)が調整可能および/または制限可能であることを特徴とする電動自動車。
【請求項2】
前記回生出力または前記回生トルク(M)は、前記分離レバー(6)を引くことによって低下可能および/または制限可能であることを特徴とする、請求項1に記載の電動自動車。
【請求項3】
最小の偏向に割り当てられる、前記分離レバー(6)の第一のトグルレバー位置において前記回生出力または前記回生トルク(M)が最大であり、最大の偏向に割り当てられる、前記分離レバー(6)の第二のトグルレバー位置において前記回生出力または前記回生トルク(M)が最小であり、好ましくは前記第一のトグルレバー位置と前記第二のトグルレバー位置との間における中間位置において前記回生出力または前記回生トルク(M)が無段式または不連続の各ステップにおいて調整可能であることを特徴とする、請求項1または2に記載の電動自動車。
【請求項4】
前記回生出力または前記回生トルク(M)は、前記スロットルレバー(4)の操作によっても調整可能であることを特徴とする、請求項1または2に記載の電動自動車。
【請求項5】
最小の偏向に割り当てられる、前記スロットルレバー(4)の第一のレバー回転位置において前記回生出力または前記回生トルク(M)が最大であり、最大の偏向に割り当てられる、前記スロットルレバー(4)の第二のレバー回転位置において前記回生出力または前記回生トルク(M)が最小であり、好ましくは前記第一のレバー回転位置と前記第二のレバー回転位置との間における中間位置において前記回生出力または前記回生トルク(M)が無段式または不連続の各ステップにおいて調整可能であることを特徴とする、請求項4に記載の電動自動車。
【請求項6】
手動ハンドルバー(1)を介して操舵される電動自動車、特に電動二輪車を作動するための方法であって、前記自動車の少なくとも一つの電気駆動モータの回転数(n)および/または回転トルク(M)がスロットルレバー(4)を介して制御され、少なくとも一つの第一の作動範囲(A)において分離レバー(6)を介して調整される方法において、前記自動車が少なくとも一つの第二の作動領域(R)において回生作動され、前記自動車の前記少なくとも一つの第二の作動領域(R)において前記分離レバー(6)によって前記少なくとも一つの電気駆動モータの回生出力または回生トルク(M)が調整および/または制限されることを特徴とする方法。
【請求項7】
前記回生出力または前記回生トルク(M)は、前記分離レバー(6)を引くことによって低下および/または制限されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
最小の偏向に割り当てられる、前記分離レバー(6)の第一のトグルレバー位置において前記回生出力または前記回生トルク(M)が最大になり、最大の偏向に割り当てられる、前記分離レバー(6)の第二のトグルレバー位置において前記回生出力または前記回生トルク(M)が最小になり、好ましくは前記第一のトグルレバー位置と前記第二のトグルレバー位置との間における中間位置において前記回生出力または前記回生トルク(M)が無段式または不連続の各ステップにおいて調整されることを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記回生出力または前記回生トルク(M)は、前記スロットルレバー(4)の操作によっても調整され、好ましくは前記スロットルレバー(4)によって定格回生出力または定格回生トルク(MR4)が予め設定されることを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項10】
最小の偏向に割り当てられる、前記スロットルレバー(4)の第一のレバー回転位置において前記回生出力または前記回生トルク(M)が最大になり、最大の偏向に割り当てられる、前記スロットルレバー(4)の第二のレバー回転位置において前記回生出力または前記回生トルク(M)が最小になり、好ましくは前記第一のレバー回転位置と前記第二のレバー回転位置との間における中間位置において前記回生出力または前記回生トルク(M)が無段式または不連続の各ステップにおいて調整されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
予め定義された前記定格回生出力または予め設定された前記定格回生トルク(MR4)からスタートして前記分離レバー(6)によって前記少なくとも一つの電気駆動モータの前記回生出力または前記回生トルク(M)が期待回生出力または期待回生トルク(MR6)に低下されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記自動車の少なくとも一つの後輪の実効スリップ値と予め定義された目標スリップ値とを比較し、目標スリップ値を超える場合、前記期待回生出力または前記期待回生トルク(MR6)からスタートして前記実効スリップ値が前記目標スリップ値に一致するまで前記回生出力または前記回生トルク(M)が低下されることにより後輪スリップ調整が実施されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも一つの第一の作動領域(A)において前記自動車が駆動作動され、前記自動車の前記少なくとも一つの第一の作動領域(A)において前記分離レバー(6)によって前記少なくとも一つの電気駆動モータの駆動出力または駆動トルク(M)が調整されることを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項14】
前記駆動出力または前記駆動トルク(M)は、前記分離レバー(6)を引くことによって低下および/または制限されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
最小の偏向に割り当てられる、前記分離レバー(6)の第一のトグルレバー位置において前記駆動出力または前記駆動トルク(M)が最大になり、最大の偏向に割り当てられる、前記分離レバー(6)の第二のトグルレバー位置において前記駆動出力または前記駆動トルク(M)が最小になり、好ましくは前記第一のトグルレバー位置と前記第二のトグルレバー位置との間における中間位置において前記駆動出力または前記駆動トルク(M)が無段式または不連続の各ステップにおいて調整されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記駆動出力または前記駆動トルク(M)は、前記スロットルレバー(4)の操作によっても調整され、好ましくは前記スロットルレバー(4)によって定格駆動出力または定格駆動トルク(MA4)が予め設定されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
最小の偏向に割り当てられる、前記スロットルレバー(4)の第一のレバー回転位置において前記駆動出力または前記駆動トルク(M)が最大になり、最大の偏向に割り当てられる、前記スロットルレバー(4)の第二のレバー回転位置において前記駆動出力または前記駆動トルク(M)が最小になり、好ましくは前記第一のレバー回転位置と前記第二のレバー回転位置との間における中間位置において前記駆動出力または前記駆動トルク(M)が無段式または不連続の各ステップにおいて調整されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
予め定義された前記定格駆動出力または予め設定された前記定格駆動トルク(MA4)からスタートして前記分離レバー(6)によって前記少なくとも一つの電気駆動モータの前記駆動出力または前記駆動トルク(M)が期待駆動出力または期待駆動トルク(MA6)に低下されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記自動車の少なくとも一つの後輪の実効スリップ値と予め定義された目標スリップ値とを比較し、目標スリップ値を超える場合、前記期待駆動出力または前記期待駆動トルク(MA6)からスタートして前記実効スリップ値が前記目標スリップ値に一致するまで前記駆動出力または前記駆動トルク(M)が低下されることにより後輪スリップ調整が実施されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【外国語明細書】