(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065398
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】リルゾールの舌下製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/428 20060101AFI20230502BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20230502BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20230502BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20230502BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230502BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20230502BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20230502BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20230502BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20230502BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20230502BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230502BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20230502BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20230502BHJP
A61P 25/36 20060101ALI20230502BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20230502BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230502BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20230502BHJP
C07D 277/82 20060101ALN20230502BHJP
【FI】
A61K31/428
A61K9/20
A61K9/19
A61K47/42
A61K47/26
A61K47/20
A61P25/22
A61P25/04
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/28
A61P25/24
A61P25/18
A61P25/36
A61P27/16
A61P25/00
A61P1/02
C07D277/82
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023015640
(22)【出願日】2023-02-03
(62)【分割の表示】P 2020139429の分割
【原出願日】2015-11-17
(31)【優先権主張番号】62/083,094
(32)【優先日】2014-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517178900
【氏名又は名称】バイオヘイブン・ファーマシューティカル・ホールディング・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biohaven Pharmaceutical Holding Company Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ウラディミール・コリック
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・エム・バーマン
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド・サミュエル・ウラディカ
(72)【発明者】
【氏名】アムガド・サレシュ
(72)【発明者】
【氏名】ダニー・ユー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】リルゾールの舌下投与の阻害要因を取り除く、舌下製剤および疾患を治療する方法を提供する。
【解決手段】本発明で提供される舌下製剤は、リルゾール、またはその医薬的に許容される塩、溶媒和物、アノマー、エナンチオマー、水和物、もしくはプロドラッグの有効量を含む。該製剤は、比較的高用量で舌下製剤に取り込まれ、舌下送達される十分な溶解性のリルゾールを提供する。該製剤は、好ましくは改良されたリルゾールの口腔内崩壊製剤である。賦形剤、例えばマンニトールおよびゼラチンを混合し、水で可溶化し、脱気し、独立して粉砕した医薬品有効成分(または「API」)のリルゾールと混合する。APIの粒子サイズ(D50)は約2ミクロン未満である。混合物を瞬間凍結し、次いで凍結乾燥することによって凍結乾燥する。該製剤は、経口嗜好性が良好である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リルゾール、またはその医薬的に許容される塩、溶媒和物、アノマー、エナンチオマー、水和物、もしくはプロドラッグの有効量を含む舌下製剤であって、錠剤結合剤、充填剤、および可溶化剤をさらに含む製剤。
【請求項2】
香味剤をさらに含む、請求項1に記載の舌下製剤。
【請求項3】
甘味料をさらに含む、請求項1に記載の舌下製剤。
【請求項4】
製剤が凍結乾燥に付されたものである、請求項1に記載の舌下製剤。
【請求項5】
リルゾールがリルゾールプロドラッグを含む、請求項1に記載の舌下製剤。
【請求項6】
該錠剤結合剤がゼラチンを含む、請求項1に記載の舌下製剤。
【請求項7】
該充填剤がマンニトールおよびソルビトールからなる群から選択される糖アルコールである、請求項1に記載の舌下製剤。
【請求項8】
該可溶化剤がドクサートナトリウムを含む、請求項1に記載の舌下製剤。
【請求項9】
該甘味料がスクラロースを含む請求項3に記載の方法。
【請求項10】
リルゾールの舌下吸収が達成される請求項1に記載の舌下製剤。
【請求項11】
請求項1に記載の舌下製剤の有効量を対象に投与することによって該対象の疾患を治療する方法。
【請求項12】
対象がヒトである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
疾患が精神神経疾患または精神神経症状である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
精神神経疾患が不安症、気分障害、神経変性障害、疼痛性障害、ALS、認知障害、ハンチントン病、パーキンソン病、核上性麻痺、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、せん妄、アルツハイマー病、軽度認知障害、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害、運動失調症、遺伝性運動失調症、うつ病、躁病、注意欠陥障害、薬物依存症、認知症、激越、感情鈍麻、不安、精神病、心的外傷後ストレス障害、被刺激性、脱抑制、学習障害、記憶喪失、精神遅滞、レット症候群、耳鳴、パーソナリティ障害、双極性障害、強迫性障害、摂食障害、DSM-5における素行障害、および/またはその組み合わせである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
精神神経症状が不安症、うつ病、ストレス、疲労、パニックの感情、恐怖、不安、睡眠障害、冷えた、もしくは汗ばんだ手および/もしくは足、気分変調(mood liability)、躁病、集中力もしくは注意力の低下、認知的問題、強迫観念、強迫衝動、反復行動、攻撃性、社会恐怖症もしくは社会性障害、舞台恐怖症、息切れ、心臓の動悸、静かに落ち着くことができないこと、口内乾燥、手もしくは足のしびれもしくは刺痛、悪心、筋緊張、めまい 感情鈍麻、高揚感、脱抑制、被刺激性、徘徊、過敏性腸、腹痛、腹部の不快感、下痢、排便習慣の変化、腹部膨満、腹部ガス、腹部膨満、便秘、またはその組み合わせである、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
治療量を達成するための舌下製剤用のリルゾールの有効量が経口投与されるリルゾールの有効量よりも少ない量である、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
リルゾールの舌下製剤の有効用量が経口投与されるリルゾールの有効用量の約1~95%である、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
リルゾールの舌下製剤が数分以内に迅速な治療作用の発現をもたらす、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
リルゾールの舌下製剤が最小限の口内しびれしかもたらさないか、もしくは口内しびれをもたらさず、または該口内しびれが30分未満のうちに消失する、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
舌下製剤がより高用量の経口投与されるリルゾールと類似の暴露(AUC)を送達する、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
リルゾールの肝機能異常副作用が経口投与されるリルゾールと関連する肝機能異常副作用と比較して減弱する、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
舌下製剤が約50mg/日以下で投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項23】
舌下製剤が約35mg/日以下で投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項24】
舌下製剤が約17.5mg/日以下で投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項25】
舌下製剤が約10mg/日以下で投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項26】
請求項1に記載の舌下製剤の有効量を口腔内に投与することによって対象の口腔痛を緩和または軽減する方法。
【請求項27】
口腔痛の治療部位が舌の上面、唇、頬側部分、喉の奥、口腔内全体、またはその組み合わせを含む口腔内全体にわたる、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
治療される口腔痛が感染、炎症、熱傷、切り傷、歯痛、歯肉痛、口内炎、歯列矯正装置、簡単な歯科処置、義歯による刺激、口腔手術、神経障害、粘膜の障害、口腔潰瘍、化学療法剤、またはその組み合わせに起因する、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
舌下製剤が経口投与されるリルゾールの同一用量よりも大きなCmaxを有する、請求項1に記載の舌下製剤。
【請求項30】
舌下製剤が経口投与されるリルゾールの同一用量より早いまたはより小さなTmaxを有する、請求項1に記載の舌下製剤。
【請求項31】
舌下製剤が経口投与されるリルゾールの同一用量よりも大きなリルゾール1ミリグラム当たりのAUCを有する、請求項1に記載の舌下製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への参照
本出願は2014年11月21日に出願された米国仮出願第62/083,094号の一部継続出願であり、その開示はその全体において本明細書に取り込まれる。
【0002】
技術分野
本発明はリルゾールの舌下投与およびリルゾールの舌下製剤を用いる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
リルゾール(6-(トリフルオロメトキシ)ベンゾチアゾール-2-アミン)は筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療に用いられている医薬である。近年、リルゾールが他の臨床的利点を有することが示されている。例えば、総用量100mgで1日2回投与される経口投与されるリルゾールは精神神経症状および精神神経疾患、例えば気分、不安症、難治性うつ病、および強迫性不安等を緩和または治療しうる。
【0004】
しかしながら、現在の経口投与を介したそのような精神神経治療効果は投与後数日または数週間まで、100mg/日の用量ではっきりとは分からない。現在の経口投与は、現在、難溶性、吸収のばらつき、肝機能異常の増加を含む望ましくない忍容性、および高用量を要する広範な初回通過代謝によって制限されている。ALS用に認可され、精神神経疾患において広範に研究され、20年以上にわたって市販されているにもかかわらず、リルゾールの臨床的に望ましくない効果は克服されておらず、その使用が制限されている。該薬物自体の内在特性がリルゾールの舌下投与の阻害要因となっている。リルゾールは非常に低い水溶性、低い経口嗜好性、pH依存性の化学的安定性、および口腔内全体にわたる激しくて持続するしびれまたは灼熱感を有する。これらの望ましくない効果を軽減することを目的とする技術、例えばキレート剤の使用は、舌下吸収をもたらすよりむしろ経口嚥下および胃吸収を促進するのみである。リルゾールの新規投与およびその効果は治療用途、特に精神神経治療における治療用途の改善に対処するものではなく、または望ましくない有害作用を減弱するものでもない。舌下リルゾールの使用のさらなる阻害要因としては、舌下投与経路はマイクログラム範囲から10mgまでの用量の送達に制限されている。
【0005】
それゆえ、広範な治療用途および臨床用途のためにリルゾールを投与する代替的経路が望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は:1)それを必要とする対象、特にヒトへのリルゾールの新規舌下投与方法、2)望ましい精神神経効果を含む疾患適応症にわたって治療効果を有する予想外に低用量のリルゾール、および3)舌下製剤において予想されるリルゾールの用量よりも大きな効果を提供する能力を提供する。
【0007】
本発明で提供される舌下製剤は、リルゾール、またはその医薬的に許容される塩、溶媒和物、アノマー、エナンチオマー、水和物、もしくはプロドラッグの有効量を含む。該製剤は、比較的高用量で舌下製剤に取り込まれ、舌下送達される十分な溶解性のリルゾールを提供する。該製剤は、好ましくは改良されたリルゾールの口腔内崩壊製剤である。賦形剤、例えばマンニトールおよびゼラチンを混合し、水で可溶化し、脱気し、独立して粉砕した医薬品有効成分(または「API」)のリルゾールと混合する。APIの粒子サイズ(D50)は約2ミクロン未満である。混合物を瞬間凍結し、次いで凍結乾燥することによって凍結乾燥する。該製剤は、経口嗜好性が良好である。
【0008】
別の態様では、舌下製剤を投与することによって対象の疾患を治療する方法が提供される。該方法は、本明細書に記載されている製造方法を用いて製造されるリルゾール、またはその医薬的に許容される塩、溶媒和物、アノマー、エナンチオマー、水和物、もしくはプロドラッグの有効量を有する舌下製剤を提供し、疾患状態を治療するために対象に該製剤を投与することを含む。該リルゾールは好ましくは1日1回様式で送達されるが、必要に応じて、1日2回以上の用量が用いられてよい。
【0009】
対象はヒトであってよい。
【0010】
疾患は精神神経疾患または精神神経症状であってよい。特に、精神神経疾患は不安症、全般性不安症、パニック障害、社会不安、気分障害、認知障害、統合失調症、認知症、激越、感情鈍麻、不安、精神病、心的外傷後ストレス障害、被刺激性、脱抑制、学習障害、記憶喪失、パーソナリティ障害、双極性障害、強迫性障害、自閉症、レット症候群、摂食障害、DSM-5における素行障害、および/またはその組み合わせであってよい。疾患状態は神経変性障害、疼痛性障害、ALS、小脳性運動失調症、他の運動失調症、ハンチントン病、パーキンソン病、核上性麻痺、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、せん妄、アルツハイマー病、軽度認知障害、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害、薬物依存症、耳鳴、および精神遅滞も含んでよい。
【0011】
さらに、精神神経症状は不安症、うつ病、ストレス、疲労、パニックの感情、恐怖、不安、睡眠障害、冷えた、もしくは汗ばんだ手および/もしくは足、気分変調(mood liability)、躁病、集中力もしくは注意力の低下、認知的問題、強迫観念、強迫衝動、反復行動、攻撃性、社会恐怖症もしくは社会性障害、舞台恐怖症、息切れ、心臓の動悸、静かに落ち着くことができないこと、口内乾燥、手もしくは足のしびれもしくは刺痛、悪心、筋緊張、めまい 感情鈍麻、高揚感、脱抑制、被刺激性、徘徊、過敏性腸、腹痛、腹部の不快感、下痢、排便習慣の変化、腹部膨満、腹部ガス、腹部膨満、便秘、またはその組み合わせであってよい。
【0012】
より低治療量を達成するための本発明の舌下製剤用のリルゾールの有効量は、経口投与されるリルゾールの有効量よりも少ない量であってよい。さらに、リルゾールの舌下製剤の有効用量は、経口投与されるリルゾールの有効用量の約1~95%であってよい。
【0013】
リルゾールの舌下製剤は数分以内に迅速に治療作用を発現してよく、または経口嚥下される用量よりも迅速に治療作用を発現してもよい。さらに、リルゾールの舌下製剤は最小限の口内しびれしかもたらさないか、もしくは口内しびれをもたらさない。舌下吸収をもたらしながら、嗜好性も優れている。
【0014】
本発明によると、舌下製剤を投与することによって対象の疾患を治療する方法は、経口投与されるリルゾールと関連する肝機能異常を減弱することを含むリルゾールの副作用の減少をもたらしうる。本発明によると、舌下製剤を投与することによって対象の疾患を治療する方法は、治療効果をもたらすために必要な総薬物負荷を減少しうる。該製剤のより少ない舌下用量は、より大きな経口用量と比較して類似の効果またはより大きな経口用量と比較してさらに優れた効果を送達しうる。
【0015】
精神神経疾患または精神神経症状を治療するための舌下製剤は約200mg/日以下、約150mg/日以下、約100mg/日以下、約70mg/日以下、約60mg/日以下、約50mg/日以下、約42.5mg/日以下、約37.5mg/日以下、約35mg/日以下、約20mg/日以下、約17.5mg/日以下、約15mg/日以下、約10mg/日以下、約5mg/日以下、または約1mg/日以下で投与されてよい。
【0016】
本発明の方法によると、治療効果は、投与後約30分以内、投与後約20分以内、投与後約15分以内、投与後約10分以内、投与後約5分以内、投与後約4分以内、投与後約3分以内、投与後約2分以内、または投与後約1分以内に始まりうる。
【0017】
舌下製剤を投与することによって対象の疾患を治療する方法は、リルゾールと関連する知覚異常またはしびれを最小化するために役立ちうるリルゾールプロドラッグを含む舌下製剤を用いることをさらに含んでよい。
【0018】
さらに別の態様では、対象の口腔痛を緩和または軽減する方法が提供される。該方法はリルゾール、またはその医薬的に許容される塩、溶媒和物、アノマー、水和物、もしくはプロドラッグの有効量を口腔内に投与することを含んでよい。あるいは、リルゾール、またはその医薬的に許容される塩、溶媒和物、アノマー、水和物、もしくはプロドラッグの有効量を含む舌下製剤を投与することによって対象の口腔痛を緩和または軽減する方法が提供される。
【0019】
舌下製剤はしびれまたは知覚異常をもたらしうるが、その効果は通常わずかであり、耐容性良好である。
【0020】
口腔痛の治療部位は、舌の上面、唇、頬側部分、喉の奥、口腔内全体、またはその組み合わせを含む口腔内全体にわたっていてよい。さらに、治療される口腔痛は感染、炎症、熱傷、切り傷、歯痛、歯肉痛、口内炎、歯列矯正装置、簡単な歯科処置、義歯による刺激、口腔手術、神経障害、粘膜の障害、口腔潰瘍、化学療法剤、またはその組み合わせに起因する。
【0021】
治療効果は投与後約30分以内、投与後20分以内、投与後約15分以内、投与後約10分以内、投与後約5分以内、投与後約4分以内、投与後約3分以内、投与後約2分以内、または投与後約1分以内に始まる。
【0022】
口腔痛を治療するための舌下製剤は約200mg/日以下、約100mg/日以下、約70mg/日以下、約50mg/日以下、約42.5mg/日以下、約37.5mg/日以下、約35mg/日以下、約20mg/日以下、約15mg/日以下、約10mg/日以下、または約5mg/日以下で投与されてよい。
【0023】
様々な例示的実施態様によると、舌下製剤は経口投与されるリルゾールより大きなCmaxまたはより大きな用量正規化したCmaxを有し、治療に有益な効果を提供してよい。さらに、本発明の舌下製剤は経口投与されるリルゾールより小さなまたはより早いTmaxを有し、治療に有益な効果を提供してよい。さらに、舌下製剤は経口投与されるリルゾールよりも大きなリルゾール1ミリグラム当たりのAUCを有してよい。経口投与されるリルゾールよりも大きな1ミリグラム当たりのAUCは、部分的AUC0-0.5h、AUC0-1h、AUC0-2h、AUC0-12h、AUCo-t、またはAUC0-infで測定されてよい。
【0024】
本発明は、過敏性腸症候群を治療するための、リルゾール、またはその医薬的に許容される塩、溶媒和物、アノマー、エナンチオマー、水和物、もしくはプロドラッグの有効量を含んでよい舌下または徐放性製剤も提供する。本発明は、神経膠腫、神経膠芽腫、またはメラノーマなどの癌を治療するための、リルゾール、またはその医薬的に許容される塩、溶媒和物、アノマー、エナンチオマー、水和物、もしくはプロドラッグの有効量を含んでよい舌下または徐放性製剤も提供する。本発明は、免疫療法と組み合わせて癌を治療するための、リルゾール、またはその医薬的に許容される塩、溶媒和物、アノマー、エナンチオマー、水和物、もしくはプロドラッグの有効量を含んでよい舌下または徐放性製剤も提供する(単独、またはワクチン、抗PD1、抗PDL1、抗CTLA4、もしくは以下を含む他の免疫療法もしくはチェックポイント阻害剤ターゲットとの組み合わせを含む:CTLA4、細胞傷害性Tリンパ球抗原4;Ig、免疫グロブリン;LAG3、リンパ球活性化遺伝子3;mAbs、モノクローナル抗体;PD1、プログラム細胞死タンパク質1;PDL、PD1リガンド;TIM3、T細胞膜タンパク質3、CD40L、A2aR、アデノシンA2a受容体;B7RP1、B7関連タンパク質1;BTLA、BおよびTリンパ球アテニュエーター;GAL9、ガレクチン9;HVEM、ヘルペスウイルス侵入メディエーター;ICOS、誘導性T細胞共刺激分子;IL、インターロイキン;KIR、キラー細胞免疫グロブリン様受容体;LAG3、リンパ球活性化遺伝子3;PD1、プログラム細胞死タンパク質1;PDL、PD1リガンド;TGFβ、トランスフォーミング増殖因子β;TIM3、T細胞膜タンパク質3;CD27)。
【0025】
本発明の他の態様は本明細書に開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な記載
以下は、当業者が本発明を実施する際に助けとなるために提供される詳細な記載である。当業者は、本開示の趣旨または範囲から逸脱することなく、本明細書に記載されている実施態様に修正および変化を加えてよい。特に定義しない限り、本明細書で用いられている全ての技術的および科学的用語は、本開示が属する当業者によって通常理解されている意味と同一意味を有する。本明細書で用いられている専門用語は、特定の実施態様を記載するために提供されているにすぎず、本願発明を限定することは意図していない。本明細書で言及されている全ての出版物、特許出願、特許、図面、および他の参考文献は、それらの全体において参照することによって明示的に取り込まれる。
【0027】
以下の用語は本発明を記載するために用いられている。用語が本明細書で具体的に定義されていない場合、その用語は当該技術分野で当業者が認識している意味を有し、その用語が本発明を記載するための文脈での使用のために適用されている。
【0028】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられている冠詞「a」および「an」は、文脈で明確に特段の記載がない限り、1または2以上(すなわち、少なくとも1)の該冠詞の文法対象を指すよう本明細書で用いられている。例として、「an element」は1つのelementまたは2つ以上のelementを意味する。
【0029】
本明細書で用いられている用語「リルゾール」は、以下の化学構造を有する薬物を指す。それは現在RILUTEK(登録出願)として市場で入手できる。用語「リルゾール」は全てのプロドラッグ、エナンチオマー、または誘導体、およびその医薬的に許容される塩も指す。
【化1】
6-(トリフルオロメトキシ)ベンゾチアゾール-2-アミン
【0030】
本明細書で用いられている用語「舌下投与」は、化学薬品または薬物を対象の舌下に置くことによって投与する経路を指す。
【0031】
本明細書で用いられている用語「プロドラッグ」は、変化した形態または活性が低い形態で投与されてよい薬物の前駆体である。プロドラッグは加水分解または他の代謝経路によって生理環境内で活性薬物型に変換されてよい。
【0032】
用語「リルゾールプロドラッグ」は、リルゾールを修正した誘導体である化合物を指す。リルゾールプロドラッグは、体によってリルゾールの活性型に代謝される化合物も指してよい。
【0033】
本明細書で用いられている用語「ALS」は、筋萎縮性側索硬化症を意味する。
【0034】
本明細書で用いられている用語「精神神経疾患」は、神経系と関連する精神病性障害または神経障害である。例えば、精神神経疾患は不安症、気分障害、神経変性障害、神経発達障害、自閉症、広汎性発達障害、疼痛性障害、神経障害性疼痛、ALS、認知障害、ハンチントン病、パーキンソン病、核上性麻痺、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、せん妄、アルツハイマー病、軽度認知障害、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害、うつ病、躁病、注意欠陥障害、薬物依存症、認知症、激越、感情鈍麻、不安、精神病、心的外傷後ストレス障害、被刺激性、脱抑制、学習障害、記憶喪失、精神遅滞、認知症、パーソナリティ障害、双極性障害、双極性うつ病、全般性不安症、パニック障害、強迫性障害、抜毛症、および摂食障害等を含んでよい。より具体的には、精神神経疾患は精神病性障害の診断と統計マニュアル(アメリカ精神医学会、第5版)に記載されているものを含む:神経発達障害、知的障害、知的障害(知的発達障害)、全般性発達遅延、特定不能の知的障害(知的発達障害)、コミュニケーション障害、言語障害、語音障害、小児期発症流暢障害(吃音)、社会的(実用的)コミュニケーション障害、特定不能のコミュニケーション障害、自閉症スペクトラム障害、レット症候群、注意欠陥多動性障害(ADHD)、特定不能の注意欠陥障害/多動性障害、限局性学習障害、運動障害、発達性協調運動障害、常同運動障害、チック障害、トゥレット障害、持続性(慢性)運動または音声チック障害、一時的チック障害、他の特定されるチック障害、特定不能のチック障害、他の神経発達障害、特定不能の神経発達障害、統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害、妄想性障害、短期精神病性障害、統合失調症様障害、統合失調症、統合失調感情障害、統合失調症の初発症状と同時に発生する大うつ病または躁病気分障害、物質/薬剤誘発精神病性障害、別の医学的状態に起因する精神病性障害、緊張病、他の特定される統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害、特定不能の統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害、双極性障害および関連障害、不安症、強迫性障害および関連障害、心的外傷およびストレス要因関連障害、反応性アタッチメント障害、脱抑制型対人交流障害、心的外傷後ストレス障害、急性ストレス障害、適応障害、他の特定される心的外傷およびストレス要因関連障害、特定不能の心的外傷およびストレス要因関連障害、解離性障害、解離性同一性障害、解離性健忘、離人症性障害/現実感喪失障害、身体症状障害、遺糞、他の排泄障害、DSM-5における秩序破壊的・衝動制御・素行障害、反抗的行為障害、間欠性爆発性障害、素行障害、他の特定される秩序破壊的、素行障害、特定不能の秩序破壊的・素行障害、物質関連および嗜癖障害、物質関連障害、アルコール関連障害、アルコール使用障害、アルコール離脱、大麻関連障害、大麻使用障害、ギャンブリング障害、クラスターAパーソナリティ障害、妄想性パーソナリティ障害、スキゾイドパーソナリティ障害、統合失調症型パーソナリティ障害、クラスターBパーソナリティ障害、反社会性パーソナリティ障害、境界性パーソナリティ障害、演技性パーソナリティ障害、自己愛性パーソナリティ障害、クラスターCパーソナリティ障害、回避性パーソナリティ障害、依存性パーソナリティ障害、強迫性パーソナリティ障害、および性嗜好障害。
【0035】
用語「DSM」は、アメリカ精神医学会(APA)の分類および診断ツールとして提供されている精神病性障害の診断と統計マニュアルを指す。精神病性障害の診断と統計マニュアル第5版(DSM-5またはDSM-V)は2013年に更新され、DSM-Vの例示的障害は添付物件Aに記載されている。さらに、DSM-Vは、障害、状態、および問題を示す広範なカテゴリーおよび下位診断(subdiagnoses)を含む構造を有する。
【0036】
「精神神経障害」は以下を含む神経変性または神経障害も含んでよい:アルツハイマー病、認知症、血管性認知症、混合型認知症、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、情動調節障害、アルツハイマー病の激越、小脳性運動失調症、遺伝性運動失調症、多発性硬化症、進行性核上性麻痺、疼痛性障害、神経障害性疼痛、神経障害、脳卒中、発作、脆弱X、耳鳴、および類似の状態。
【0037】
精神神経症状は不安症、うつ病、ストレス、疲労、パニックの感情、恐怖、不安、睡眠障害、冷えた、もしくは汗ばんだ手および/もしくは足、息切れ、心臓の動悸、社会恐怖症、パブリック・スピーキングの恐怖、静かに落ち着くことができないこと、口内乾燥、手もしくは足のしびれもしくは刺痛、悪心、筋緊張、めまい 感情鈍麻、高揚感、脱抑制、被刺激性、および徘徊等を含んでよい。さらに、精神神経症状は以下を含んでよい:妄想、幻覚、支離滅裂な思考または会話、重要なトピック(focal topic)または弛緩した連想(loose associations)の脱線、支離滅裂、著しく混乱したまたは異常な運動行動(緊張病を含む)、陰性症状-感情表現の低下、意欲消失、アロギー、快感消失症、反社会性(associality)、ジスキネジア(遅発性ジスキネジアを含む)、快感消失症および不快、怒りおよび攻撃性、および解離の症状、ならびにこれらのいくつかの組み合わせ。
【0038】
他の治療される障害は癌を含んでよい(急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質癌、小児癌、AIDS関連癌、カポジ肉腫、AIDS関連リンパ腫、原発性CNSリンパ腫、肛門癌、星状細胞腫、非定型奇形腫様腫瘍/ラブドイド腫瘍、基底細胞癌、皮膚癌(非黒色腫性)、胆管癌、膀胱癌、骨癌、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、骨肉腫および悪性線維性組織球腫、脳幹神経膠腫、非定型奇形腫様腫瘍/ラブドイド腫瘍、胚芽腫、胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣腫、乳癌、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、カルチノイド腫瘍、消化器癌、心臓腫瘍(心腫瘍)、原発性リンパ腫、子宮頸癌、胆管細胞癌、脊索腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性腫瘍、結腸癌、結腸直腸癌、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞リンパ腫、菌状息肉腫およびセザリー症候群、非浸潤性乳管癌(DCIS)、胚芽腫、子宮体癌、上衣腫、食道癌、鼻腔神経芽細胞腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、眼癌、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、卵管癌、骨の線維性組織球腫、悪性、および骨肉腫、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍、卵巣、精巣、妊娠性絨毛性疾患、神経膠腫、有毛細胞白血病、頭頸部癌、肝細胞(肝)癌、組織球増殖症、ランゲルハンス細胞、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、島細胞腫、膵神経内分泌腫瘍、カポジ肉腫、腎臓、腎細胞、ウィルムス腫瘍、ランゲルハンス細胞組織球増殖症、喉頭癌、白血病、急性リンパ芽球性(ALL)、急性骨髄性(AML)、慢性リンパ性(CLL)、慢性骨髄性(CML)、有毛細胞、口唇および口腔癌、肝癌(原発性)、肺癌、非小細胞、小細胞、リンパ腫、ホジキン、非ホジキン、マクログロブリン血症、ワルデンストレーム、男性乳癌、メラノーマ、メルケル細胞癌、中皮腫、原発不明の転移性頸部扁平上皮癌、NUT遺伝子が関連する正中線管癌、口腔癌(Mouth Cancer)、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍、骨髄性白血病、慢性(CML)、骨髄性白血病、急性(AML)骨髄腫、多発性、骨髄増殖性腫瘍、鼻腔および副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、口腔癌(Oral Cancer)、口腔癌(Oral Cavity Cancer)、口唇および中咽頭癌、骨肉腫および悪性骨の線維性組織球腫、卵巣癌、低悪性度腫瘍、膵臓癌、膵神経内分泌腫瘍(島細胞腫)、乳頭腫症、傍神経節腫、副鼻腔および鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、下垂体部腫瘍、形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、妊娠および乳癌、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、原発性腹膜癌、前立腺癌、直腸癌、腎細胞(腎臓)癌、腎盂および尿管、移行上皮癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、横紋筋肉腫、子宮、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、原発不明の頸部扁平上皮癌、転移性、胃癌、T細胞リンパ腫、精巣癌、咽喉癌、胸腺腫および胸腺癌、甲状腺癌、腎盂および尿管の移行上皮癌、原発不明、尿管および腎盂、移行上皮癌、尿道癌、子宮癌、子宮内膜、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、ワルデンストレームマクログロブリン血症、ならびにウィルムス腫瘍を含む)。
【0039】
本明細書で用いられている用語「治療」は、対象、特にヒトの状態または疾患のいずれかの治療を含み、以下を含んでよい:(i)疾患にかかりやすい素因を持っていてよいが、まだ疾患にかかっていると診断されていない対象に疾患または状態が生じることを予防すること;(ii)疾患または状態を阻害すること、すなわち、その発生を止めること;疾患または状態を緩和すること、すなわち該状態の退行をもたらすこと;または(iii)疾患に起因する状態、すなわち疾患の症状を改善または緩和すること。本明細書で用いられている「治療」は、他の標準的な治療と組み合わせて、または単独で用いられてよい。
【0040】
用語「効果的な」は、その意図した使用の文脈内で用いられた場合に、意図した結果を達成する化合物、組成物、または成分の量を記載するために用いられている。
【0041】
用語「有効量」は、治療を必要とする対象に投与された場合に、本明細書で定義されている該治療を達成するために十分な量を指す。有効量は治療される対象および疾患状態、苦痛の重症度、ならびに投与様式に依存して変動し、当業者によってルーチン的に決定されてよい。
【0042】
用語「医薬的に許容される塩」は、適用可能な場合、化合物の溶解およびバイオアベイラビリティを促進するために、患者の消化管の胃液または消化管分泌液への化合物の溶解性を増加させるために提示される、本明細書に記載されている1つ以上の化合物またはプロドラッグの塩形態を記載するために本明細書を通じて用いられている。医薬的に許容される塩は、適用可能な場合、医薬的に許容される無機または有機の塩基および酸に由来する塩を含む。医薬分野で周知の多数の他の酸および塩基の中で、適切な塩はカリウムおよびナトリウム等のアルカリ金属、ならびにカルシウムおよびマグネシウム等のアルカリ土類金属に由来する塩、ならびにアンモニウム塩を含む。本発明では、リン酸塩の中和塩として、ナトリウムおよびカリウム塩が特に好ましい。好ましい実施態様では、本明細書は、親化合物の生物学的有効性および特性を保持し、投与される用量で生物学的であろうとなかろうと有害ではない、本明細書に記載されている修飾ペプチドの医薬的に許容される塩を提供する。本発明の化合物は、それぞれアミノ基およびカルボキシ基の存在により、酸塩および塩基塩の両方を形成することができる。
【0043】
本明細書で用いられている用語「Cmax」は、第1用量の投与と第2用量の投与の間の対象の血液、血清、特定の部分、または試験部位内の薬物の最大濃度を指す。特定している場合、用語Cmaxは用量正規化した比率も指してよい。
【0044】
本明細書で用いられている用語「Tmax」は、対象の血液、血清、特定の部分、または試験部位内で最大濃度(Cmax)に達した薬物投与後の時間または期間を指す。
【0045】
本明細書で用いられている用語「AUC」(曲線下面積)は、対象に吸収または暴露された薬物の総量を指す。一般的に、AUCは濃度が無視できるまでの時間にわたる対象における薬物濃度の図において数学的方法で得られてよい。用語「AUC」(曲線下面積)は特定の時間間隔での部分的AUCも指してよい(舌下吸収の場合はより早い時間間隔でAUCが増加する)。
【0046】
リルゾールの舌下製剤
本発明はリルゾールの舌下製剤に関する。舌下製剤は有効量にてそれを必要とする対象に投与されてよい。対象は動物またはヒトであってよい。
【0047】
本発明では、リルゾールまたはその医薬的に許容される塩は、舌下投与に適切な医薬組成物に製剤化されてよい。
【0048】
リルゾールおよびその医薬的に許容される塩は、当該技術分野で周知の医薬的に許容される担体を用いて舌下または頬側投与に適切な剤形に製剤化されてよい。該担体は舌下投与用リルゾールが治療される対象によって舌下吸収されるよう、錠剤、粉末、丸剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、および懸濁剤等の剤形に製剤化されることを可能にする。これらの担体は、限定されるものではないが、糖、デンプン、セルロースおよびその誘導体、麦芽、ゼラチン、タルク、硫酸カルシウム、植物油、合成油、ポリオール、アルギン酸、リン酸緩衝液、乳化剤、等張生理食塩水、パイロジェンフリー水、ならびにその組み合わせから選択されてよい。特に、唾液に容易に溶解する限り、あらゆる形態の物質が舌下投与に許容されてよい。
【0049】
舌下投与される化学薬品または薬物は、舌下の粘膜を通じて毛細血管に拡散し、次いで対象の静脈循環に入ることができる。それゆえ、舌下投与は消化管内での分解および肝臓内での薬物代謝による変化等のリスクがなく静脈循環への直接的またはより迅速な侵入を可能にするため、経口投与に対する利点を有しうる。様々な市販の薬物が舌下投与用に設計されている。リルゾールは一般的に筋萎縮性側索硬化症(ALS)を治療するために用いられる。しかしながら、他の用途が発見され、特に、リルゾール、リルゾールのプロドラッグ、またはその医薬的に許容される塩は精神神経疾患の治療のための舌下投与に付される。舌下投与は他の精神神経疾患、または疼痛を緩和もしくは軽減するために用いられてもよい。いくつかの場合、好ましい効果は口腔痛に対する効果である。
【0050】
医薬組成物はそれらの意図した目的を達成するために、認可されている医薬成分、すなわちリルゾールを有効量にて含んでよい。例えば、対象に舌下投与されるリルゾールの用量は、時間をかけて対象に症状の軽減等の有益な反応を提供するのに十分な量でなければならない。
【0051】
投与されるリルゾールの量は、その年齢、性別、体重、および一般的健康状態を含む治療される対象に依存してよい。この点について、投与する薬剤の的確な量は、専門家の判断に依存する。精神神経症状および精神神経疾患と関連する状態を治療または軽減するために投与されるリルゾールの有効量を決定する際、医師は症状の重症度または障害の進行を含む臨床学的因子を評価してよい。状態によっては、急速なリルゾールの吸収が所望となりうる。いずれにしても、当業者であれば、本発明の化学薬品の適切な用量を容易に決定することができる。
【0052】
医薬組成物は他の医薬的に許容される担体および/または賦形剤、例えば結合剤、滑沢剤、希釈剤、コーティング剤、崩壊剤、障壁層成分、流動促進剤、着色剤、溶解促進剤、ゲル化剤、充填剤、タンパク質、補助因子、乳化剤、可溶化剤、懸濁剤、およびその混合物等も含む。当業者であれば、どのような他の医薬的に許容される担体および/または賦形剤が本発明の製剤に含まれてよいかを知っているであろう。賦形剤の選択は、組成物の特徴および製剤内の他の薬理活性化合物の性質に依存するであろう。適切な賦形剤は当業者に知られており(Handbook Of Pharmaceutical Excipients、第5版、2005年Roweら編著、McGraw Hill参照)、予想外の特性を有する新規舌下製剤を製造するために利用されている。
【0053】
さらに、舌下使用のための医薬組成物は、治療される対象によって舌下吸収されるよう、認可されている医薬成分、すなわちリルゾールとさらに賦形剤を組み合わせ、任意に加工して錠剤、粉末、丸剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、および懸濁剤等の剤形とすることによって得ることができる。適切な賦形剤は、限定されるものではないが、充填剤、例えば糖、例えばラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトール;セルロース製剤、例えばトウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)であってよい。所望により、崩壊剤も併用してよく、例となる崩壊剤は、限定されるものではないが、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムであってよい。組成物は薬学のいずれかの方法によって製造されてよいが、全ての方法は上記の1つ以上の化学薬品と1つ以上の必要な成分を構成する担体を会合させる工程を含む。一般的に、本発明の医薬組成物は当該技術分野で知られている通常の方法で製造されてよく、例えば通常の混合、溶解、顆粒化、糖衣形成、粉末化(levigating)、乳化、カプセル化、封入、および凍結乾燥工程等によって製造されてよい。
【0054】
本発明の舌下製剤は、口腔内溶解または崩壊錠(ODT)の形態に製造されてよい。本明細書で用いられているODTは、リルゾールと水溶性希釈剤を混合し、錠剤に圧縮することによって製造されてよい。適切な賦形剤と共にリルゾールを含む懸濁剤が製造されてよく、リルゾール懸濁剤をブリスターパックに分注し、凍結乾燥してよい。リルゾールODT用に用いられてよい例示的な凍結乾燥製剤プラットフォームは、ZYDIS(登録商標)(キャタレント社、サマセット、ニュージャージー州、米国)製剤である。具体的には、水を含む賦形剤を混合し、独立してリルゾールを粉砕して大きさを整え、賦形剤と混合する。次いで懸濁剤を瞬間凍結および凍結乾燥によって凍結乾燥する。ODTを製造する他の方法が限定されることなく用いられてよく、その一般的方法の詳細な記載は、例えば米国特許第5,631,023号;第5,837,287号;第6,149,938号;第6,212,791号;第6,284,270号;第6,316,029号;第6,465,010号;第6,471,992号;第6,471,992号;第6,509,040号;第6,814,978号;第6,908,626号;第6,908,626号;第6,982,25l号;第7,282,217号;第7,425,341号;第7,939,105号;第7,993,674号;第8,048,449号;第8,127,516号;第8,158,152号;第8,221,480号;第8,256,233号;および第8,313,768号に開示されており、そのそれぞれはその全体において参照することによって本明細書に取り込まれる。
【0055】
本発明の舌下製剤は、リルゾールまたはリルゾールプロドラッグの有効量を含んでよい。リルゾールプロドラッグは、リルゾールと類似またはそれ以下の活性を有する形態であってよい。リルゾールプロドラッグは、舌下投与された場合に、改善された生理化学的、生理的、薬物動態的、または治療的特徴を有してよい。リルゾールプロドラッグは経口または舌下投与された場合に副作用を減少しうる。特に、リルゾールを経口または舌下投与した場合に生じうるしびれまたは知覚異常は、リルゾールの代わりにリルゾールプロドラッグを用いることによって減少または除去されうる。
【0056】
舌下用に製剤化されたリルゾールの臨床または治療効果は、標準的な試験パラメーターによって測定される医薬品についての改善された薬物動態プロファイルを有してよい。リルゾールを舌下投与する場合、薬物のTmax、Cmax、およびAUCは経口投与されるリルゾールの同一用量と比較して改善されうる。例えば、リルゾールの舌下製剤は経口投与されるリルゾールよりも大きなCmaxを有し、治療に有益な効果を提供してよい。リルゾールの舌下製剤は経口投与されるリルゾールより早いまたはより小さなTmaxを有し、治療に有益な効果を提供してよく、いくつかの場合には、より迅速な治療効果を提供してよい。あるいは、リルゾールの舌下製剤は、経口投与されるリルゾールよりも大きなリルゾール1ミリグラム当たりのAUCを有してよい。
【0057】
疾患を治療する方法
本発明は疾患を治療する方法も提供する。該方法は、リルゾールまたはその医薬的に許容される塩の有効量を、それを必要とする対象に舌下投与することを含む。
【0058】
該治療を必要とする対象を同定することは、対象または医療関係者の判断の範疇にあってよく、主観的(例えば、意見)または客観的(例えば、試験もしくは診断方法によって測定可能)であってよい。同定された対象はそれを必要とする動物またはヒトであってよく、特にヒトであってよい。該治療は疾患に苦しむ対象、特にヒトに適切に投与される。
【0059】
対象が苦しみうる疾患は、精神神経疾患または精神神経症状であってよい。例示的な精神神経疾患は不安症、気分障害、神経変性障害、疼痛性障害、ALS、認知障害、ハンチントン病、パーキンソン病、核上性麻痺、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、せん妄、アルツハイマー病、軽度認知障害、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害、うつ病、躁病、注意欠陥障害、薬物依存症、認知症、激越、感情鈍麻、不安、精神病、心的外傷後ストレス障害、被刺激性、脱抑制、学習障害、記憶喪失、精神遅滞、認知症、パーソナリティ障害、双極性障害、強迫性障害、および摂食障害等であってよい。例示的な精神神経症状は、不安症、うつ病、ストレス、疲労、パニックの感情、恐怖、不安、睡眠障害、冷えた、もしくは汗ばんだ手および/もしくは足、息切れ、心臓の動悸、静かに落ち着くことができないこと、口内乾燥、手もしくは足のしびれもしくは刺痛、悪心、筋緊張、めまい 感情鈍麻、高揚感、脱抑制、被刺激性、徘徊、またはその組み合わせであってよい。
【0060】
リルゾールの有効量は治療効果、例えば抗不安、抗うつ、精神安定、ストレス回復性もしくはストレス緩和、抗疼痛、またはその組み合わせの程度によって決定されてよい。さらに、リルゾールの舌下投与の効果は、限定されるものではないが、以下を含む予想外かつ新規の特性によって示されてもよい:a)経口投与と比較して減弱または改善された副作用または忍容性プロファイル;b)治療効果の迅速な発現;c)肝機能異常の減少;d)経口投与と比較した特有の薬物動態プロファイル;e)典型的な経口投与と比較した低治療量;f)1日1回投与;およびg)経口知覚異常またはしびれの最小化または不存在。
【0061】
有効量は治療される対象および疾患状態、苦痛の重症度、ならびに投与様式に依存して変動し、当業者によってルーチン的に決定されてよい。
【0062】
リルゾールの治療効果が生じたことは、その舌下投与後約数分~約1時間以内に明らかになりうる。特に、治療効果は、投与後約1分以内、約2分以内、約3分以内、約4分以内、約5分以内、約6分以内、約7分以内、約8分以内、約9分以内、約10分以内、約11分以内、約12分以内、約13分以内、約14分以内、約15分以内、約16分以内、約17分以内、約18分以内、約20分以内、約60分以内、または約90分以内に始まりうる。
【0063】
リルゾールの効果は、その舌下投与後、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約12時間、約14時間、約16時間、約18時間、約20時間、約22時間、約24時間、約2日間、または約3日間以上維持されてよい。
【0064】
舌下投与用のリルゾールの有効量または用量は、経口投与されるリルゾールの有効量または用量よりも少ない量であってよい。具体的には、リルゾールの舌下投与の有効用量は、経口投与されるリルゾールの用量の約1~95%であってよい。
【0065】
精神神経疾患の治療のための舌下投与におけるリルゾールまたはその医薬的に許容される塩の有効量は、約200mg/日以下、約150mg/日以下、約100mg/日以下、約90mg/日以下、約80mg/日以下、約70mg/日以下、約60mg/日以下、約50mg/日以下、約40mg/日以下、約37.5mg/日以下、約35mg/日以下、約30mg/日以下、約20mg/日以下、約17.5mg/日以下、約15mg/日以下、約10mg/日以下、約9mg/日以下、約8mg/日以下、約7mg/日以下、約6mg/日以下、約5mg/日以下、約4mg/日以下、約3mg/日以下、約2mg/日以下、または約1mg/日以下で投与されてよい。
【0066】
任意の投与頻度は、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日おきに1回、週1回、週2回、週3回、週4回、2週間に1回、および月1回または2回等を含む。
【0067】
舌下用に製剤化され、精神神経疾患または精神神経症状のために投与されるリルゾールの臨床または治療効果は、標準的な試験パラメーターによって測定される医薬品についての改善された薬物動態プロファイルを有してよい。リルゾールを舌下投与する場合、薬物のTmax、Cmax、またはAUCは経口投与されるリルゾールの同一用量と比較して改善されうる。例えば、リルゾールの舌下投与は経口投与されるリルゾールよりも大きなCmaxを有し、治療に有益な効果を提供してよい。リルゾールの舌下投与は経口投与されるリルゾールよりも小さなTmaxを有し、治療に有益な効果を提供してよい。あるいは、リルゾールの舌下投与は、経口投与されるリルゾールよりも大きなリルゾール1ミリグラム当たりのAUCを有してよい。
【0068】
いくつかの実施態様では、口腔内崩壊製剤は、舌下投与または経口分散し得、次いで嚥下され、増強された薬物動態特性を有するプロドラッグである。
【0069】
口腔痛用の舌下製剤
本発明はさらに、他の所望の効果を生じるために、リルゾールを対象に舌下投与する方法を含む。
【0070】
リルゾールの舌下投与によって口腔痛を緩和または軽減する方法を提供する。該方法は、リルゾールの有効量を有する舌下製剤を、それを必要とする対象に投与することを含む。特定の実施態様では、対象は動物またはヒトであってよい。
【0071】
特定の実施態様では、舌下製剤は、その沈着部位からしびれを誘発しうる。しびれは口腔痛を減少または緩和するために効果的となり得、粘膜接触を通じて拡散しうる。しびれのレベルは、対象にとって許容できる範囲内でありうる。
【0072】
口腔痛の治療部位は、限定されるものではないが、口腔内全体にわたっていてよく、例えば舌の上面、唇、頬側部分、喉の奥、および口腔内全体等を含む。治療される口腔痛は、感染、ウイルス、炎症、熱傷、切り傷、歯痛、歯肉痛、口内炎、歯列矯正装置、簡単な歯科処置、義歯による刺激、口腔手術、神経障害、もしくは粘膜の障害に起因し得、または有痛性の口腔潰瘍を誘発することが知られている他の薬物(例えば化学療法剤等)に起因しうる。
【0073】
口腔痛を軽減する効果は、1分以内または約数分~約1時間で生じうる。特に、しびれは約1分以内、約2分以内、約3分以内、約4分以内、約5分以内、約6分以内、約7分以内、約8分以内、約9分以内、約10分以内、約11分以内、約12分以内、約13分以内、約14分以内、約15分以内、約16分以内、約17分以内、約18分以内、約19分以内、または投与後約20分以内に始まりうる。
【0074】
口腔痛を緩和または軽減する効果は、その舌下投与後、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約12時間、約14時間、約16時間、約18時間、約20時間、約22時間、約24時間、約2日間、または約3日間維持されてよい。
【0075】
口腔痛を緩和または軽減するためのリルゾールの舌下投与は、約200mg/日以下、約150mg/日以下、約100mg/日以下、約90mg/日以下、約80mg/日以下、約70mg/日以下、約60mg/日以下、約50mg/日以下、約40mg/日以下、約35mg/日以下、約30mg/日以下、約20mg/日以下、約17.5mg/日以下、約10mg/日以下、約9mg/日以下、約8mg/日以下、約7mg/日以下、約6mg/日以下、約5mg/日以下、約4mg/日以下、約3mg/日以下、約2mg/日以下、または約1mg/日以下で投与されてよい。
【0076】
任意の投与頻度は、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、週1回、週2回、週3回、週4回、2週間に1回、および月1回または2回等を含む。
【0077】
口腔痛を緩和または軽減するための製剤は、リルゾールの有効量およびその医薬的に許容される担体を含んでよい。医薬組成物は、治療される部位で十分な吸収速度を提供するために、錠剤、粉末、丸剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、軟膏剤、シロップ剤、スラリー剤、および懸濁剤等として製剤化されてよい。疼痛緩和の効果的かつ増強された効果のために、追加の生物活性剤または他の薬物が医薬組成物に添加されてよい。いくつかの実施態様では、製剤は口腔内または頬側粘膜に局所投与されてよい。
【実施例0078】
以下の実施例は本発明を説明するが、本発明の範囲を限定することは意図していない。
【0079】
実施例1
51歳の男性にリルゾールを4回投与した。
(1)リルゾールの経口投与を比較として用いた。標準的な50mgリルゾール錠剤(本発明の錠剤ではない)を微粉砕し、口腔内に40秒間投与し、経粘膜および/または経口吸収させた。これは舌下または頬側投与ではなかった。精神神経領域に急性または慢性効果はなかった。より具体的には、気分、不安、または行動に対する効果はなかった。顕著な口内しびれが認められた。最初の1分間で、しびれの感覚が舌の上面および唇を含む口腔内全体に広がり、口囲の錯感覚をもたらした。効果は中等度で、4分以内にピークに達した。効果は80分まで持続した。効果は15分後に弱まり始め、40分後に軽度になり、80分後に最小になることが認められた。全ての効果は、上記の局所的な口内関連の感覚に制限されていた。
【0080】
(2)独立して、本発明の製剤の第1の舌下投与を実施した。約70mgのリルゾールの舌下製剤を対象の舌下に置き、しっかりと適切な位置に維持した。予想外にも、舌下投与の直後に対象は急性の向精神効果を感じた。舌下投与からおよそ40分以内に、対象は気分が増強または改善された感覚を感じた。対象は幸福の感覚を認識し、ベースラインの気分の状態からの変化を表す楽観的な感覚を伝えた。気分の状態の変化は、少なくとも4時間持続すると評価した。
【0081】
舌下投与から1分以内に舌のしびれが発症し、4分後、しびれが唇全体および咽頭の奥にまで広がった。しびれは16分で中等度レベルに達し、20分までに軽度レベルまで和らぎ、その後1時間にわたって完全に消失した。舌下投与と関連するしびれは、前記の微粉砕した薬物を拡散させる経口投与と比較して有意に減弱した。舌下製剤は、限局性の軽度かつ厄介ではないしびれのみをもたらした(より激しく、厄介で、全身性のしびれをもたらす微粉砕リルゾール錠剤と比較して)。
【0082】
(3)第2の舌下投与を別の日に行った。約70mgのリルゾールの舌下製剤を完全に溶解するまで約95秒間対象の舌下に置いた。再度、対象は類似の気分の改善を感じた。対象は楽観および幸福の感覚を報告した。これらの感情は40分までにピークに達した。25分後、対象はリラックスした(不安が軽減した)感覚、および注意力レベルの増加を報告した。対象はその夜の改善された睡眠状態および鮮明な夢を報告した。
【0083】
約4分後に舌および唇のしびれが認められ、6分後にピークに達して中等度レベルのしびれとなり、その後約24分までに軽度レベルまで減弱した。この時点で、口内しびれは非常に軽度~最小限であった。再度、口内しびれは、微粉砕した標準的なリルゾール錠剤を拡散させて経口投与した場合と比較して減弱した。鎮静作用は認められなかった。
【0084】
(4)第3の舌下投与はより低用量の舌下製剤で試みた。約30mgのリルゾールの舌下製剤を対象の舌下に置いた。再度、舌下リルゾール投与の急性効果(25分以内)が観察され、対象はリラックスした感覚を有し、幸福、楽観、および注意力が高まった感覚を有した。前記の舌下投与と類似の口内しびれが報告されたが、経口投与と比較して減弱した。
【0085】
実施例2
43歳の男性にリルゾールを2回投与した。
(1)経口投与:約50mgの微粉砕していないリルゾール錠剤(本発明の製剤ではない)を対象の舌の上に置いた。精神活性効果は報告されなかったが、適用直後、対象は適用した局所部位におけるしびれ、およびしびれが口腔内全体に急速に広がったことを報告した。しびれは20分を過ぎても持続した。気分または行動の感覚は報告されなかった。しびれは激しく、厄介であった。
【0086】
(2)舌下投与:約20mgのリルゾールの舌下製剤を対象の舌下に約30秒間置いた。約20分以内に、対象はリラックスし、落ち着いた、かつ不安が軽減した感覚を含む有益な精神活性効果の発現を報告した。対象は注意力が高まった感覚も報告した。これらの精神活性効果または感情は約90分間持続した。対象は彼の胃および腸が「落ち着いた」ことを感じ、前記の胃の不調が和らいだことを認識した。対象はその夜の改善された睡眠状態を報告した。
【0087】
適用から1分以内に、対象は舌および口内のしびれが約7分までにピークに達し、中等度の効果になったことを報告した。しびれは約18分後に有意に減弱し始め、約24分までに非常に軽度になった。この対象では、舌下投与と関連するしびれは、経口投与と比較して減弱していることが認められた。全体的に見て、微粉砕した標準的なリルゾール(激しく、厄介で、全身性で、かつ口内嗜好性が不良である)と比較して、しびれは非常に軽度であり、厄介ではなく、口内嗜好性は良好であった。
【0088】
実施例3
50歳の男性にリルゾールの舌下製剤を投与した。
約5mgのリルゾールの舌下製剤を、製剤が完全に溶解するまで約20秒間対象の舌下に置いた。再度、舌下投与を受けた他の対象と同様に、投与後すぐに以前は予想外の向精神効果があった。20~30分以内に、対象は有益な精神活性効果の発現を報告し、リラックスし、落ち着いた感覚を報告した。
【0089】
投与から約7分後、対象は口蓋および舌の上にしびれを報告し、それが約7分でピークに達し、次いで約21分後に完全に消えたことを報告した。
【0090】
実施例4
57歳の男性にリルゾールの舌下製剤を投与した。
約70mgのリルゾールの舌下製剤を約74秒間対象の舌下に置いた。約24分以内に、対象は約1時間持続するリラックスした感覚および注意力の向上によって特徴付けられる精神活性効果を報告した。対象は非常にリラックスした感覚があったため、のんびりとうたた寝をしたことを報告した。対象は彼の胃がリラックスした感覚があることも報告した。
【0091】
投与から2分後、対象は舌の上にしびれの感覚を報告した。約4分後に口内しびれのピークに達し、約15分後にしびれが軽度レベルまで減弱した。再度、リルゾールの経口投与を受けた対象と比較して、舌下投与は口内しびれおよび知覚異常の減弱をもたらした。
【0092】
実施例5
多数の異なるが、関連するリルゾールの舌下投与用製剤を製造した。10mg、17.5mg、および35mgの製剤を全て製造し、精神活性効果を提供するのに効果的であることが分かった。製剤は、同一材料を用いたが配合比率が少し異なる点で関連するものであった。
【0093】
各製剤は、錠剤結合剤、好ましくはゼラチン;充填剤、例えばマンニトールまたはソルビトール;可溶化剤、例えばドクサートナトリウム;風味付けを提供する香味剤、例えばミント、スペアミント、オレンジ、またはサクランボ等;甘味料、例えばスクラロース;および溶媒としての精製または蒸留水を含んだ。香味剤および甘味料は単に味付け目的で配合されるに過ぎないため、除外してもよい。錠剤を加工するために、錠剤結合剤、充填剤、可溶化剤、ならびになんらかの甘味料および香味剤を混合し、精製水で可溶化する。錠剤結合剤は混合物(リルゾールおよび水を含む)の重量の約1~10%、好ましくは3~5%、最も好ましくは4~4.5%であり;充填剤は混合物の約2~4%、好ましくは約3%であり;可溶化剤は混合物の約0.01~0.5%、好ましくは混合物の約0.1~0.2%;香味剤(用いられる場合)は混合物の約0.1~1.0%、好ましくは約0.3~0.5%;および甘味料(用いられる場合)は混合物の約0.1~1.0%、好ましくは混合物の約0.5%である。リルゾールは混合物の約5~25%、好ましくは約5~20%、より好ましくは混合物の7~18%である。リルゾールはD50粒子サイズが好ましくは2ミクロン未満になるように独立して粉砕され、次いで他の可溶化された材料に添加される。リルゾールの量は通常、高用量のものよりも低用量のものについては、パーセンテージがより低い。混合物の残部は精製または脱イオン水である。全ての重量は、ほとんどの水が除去される凍結乾燥前のものである。凍結乾燥は錠剤形態の生じた混合物を瞬間凍結し、次いで凍結乾燥することによって行われる。
【0094】
実施例6
この実施例では、実施例5に記載されている3つのリルゾールの舌下製剤について、市販されている50mgのリルゾール錠剤に対する薬物動態特性を試験した。部分的AUC値、AUC
0-0.5、AUC
0-1、AUC0- 、およびAUC
0-12(該用量を与えた0.5時間後、1時間後、2時間後、および12時間後に測定されたAUC値)を測定し、50mg経口用量に対する試験物質についての値の比率を決定した。下記表から分かるように、全ての用量について、特により早い時点で、舌下製剤由来の値は、体重による調節をした経口投与の値よりも高かった。予想される比率(舌下および経口製剤が同一速度で血液循環に達すると仮定して)は、10mgバージョンについて20%、17.5mgバージョンについて35%、および35mgバージョンについて70%である。
【表1】
【0095】
上記表から明らかなように、舌下製剤はより早い時点で予想されるよりもはるかに高いAUC値を達成し、重量パーセント比率で値が近くなる(依然として高いが)のは12時間の時点のみである。これは、舌下製剤が単に嚥下されるだけではなく吸着されることを示している。
【0096】
本明細書で引用された全ての特許、公開された特許出願、および他の参考文献の全ての内容は、参照することによってそれらの全てにおいて本明細書に明示的に取り込まれる。
【0097】
当業者であれば、単なる通常の実験を用いて、本明細書に記載されている特定の手順に対する多数の均等物を認識または確認することができるであろう。該均等物は、本発明の範囲内にあり、添付の特許請求の範囲に含まれると見なされる。
【0098】
アルツハイマー病およびアルツハイマー病に起因する軽度認知障害から選択される精神神経疾患の治療に使用するための、唯一の医薬品有効成分としてのリルゾールと少なくとも1つの医薬的に許容される担体を組み合わせて含む医薬剤形であって、リルゾールの舌下吸収を提供する製剤の形態の医薬剤形であり、リルゾールの舌下吸収を提供する製剤が凍結乾燥された医薬組成物である、医薬剤形。
医薬組成物がリルゾール、またはその医薬的に許容される塩、溶媒和物、もしくは水和物の医薬的有効量を含む、請求項1に記載の医薬剤形であって、該製剤が錠剤結合剤としてのゼラチン、充填剤としてのマンニトールまたはソルビトール、および可溶化剤としてのドクサートナトリウムをさらに含む医薬剤形。
請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬剤形であって、35mgの用量で、50mg用量の経口錠剤製剤のAUCの110%~180%のAUC(該AUCは投与後0.5時間後、1時間後、または2時間後に測定したものである)を提供する、医薬剤形。