(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065427
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】白金耐性癌の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 31/517 20060101AFI20230502BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230502BHJP
A61K 31/502 20060101ALI20230502BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
A61K31/517
A61K45/00
A61K31/502
A61P35/00
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023018285
(22)【出願日】2023-02-09
(62)【分割の表示】P 2019562653の分割
【原出願日】2018-05-16
(31)【優先権主張番号】1707864.3
(32)【優先日】2017-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】62/513,627
(32)【優先日】2017-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507204420
【氏名又は名称】ビーティージー・インターナショナル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BTG International Limited
【住所又は居所原語表記】5 Fleet Place, London, EC4M 7RD,UK
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】バナージ、ウダイ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】特定の用量を特定の投与間隔で用いることを特徴とするがんを治療するための医薬組成物を提供する。
【解決手段】がんを治療するための医薬組成物は、式Iの化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはエステルを含有する。
(i)がんは、白金薬系療法に対して不応性もしくは耐性を有し、(ii)医薬組成物は、1回あたり、患者の体表面積あたり1~30mg/m
2の用量の化合物が投与されるように用いられる。医薬組成物を用いる治療方法及び新規剤形も提供される。特に、上皮性卵巣、ファロピウス管または腹膜のがんを含めた卵巣癌、特に、α-葉酸受容体が過剰発現しているものが治療される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんの治療のための式Iの化合物
【化6】
または薬学的に許容されるその塩もしくはエステル、
ここで、
(i)前記がんは、白金薬系療法に対して不応性もしくは耐性であるかまたはそうなる傾向にあるタイプであるという特徴を有するものであり、さらに
(ii)前記治療は投与1回あたり、患者の体表面積あたり1~30mg/m
2の化合物の用量によるものである。
【請求項2】
前記がんが白金不応性または耐性であることを特徴とする、請求項1に記載の治療のための化合物。
【請求項3】
前記がんが、卵巣、子宮内膜、中皮、非小細胞肺のがん、及びこれらのうちの1つから派生するがんから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の治療のための化合物。
【請求項4】
α-葉酸受容体(FR-α)が発現しているものから選択されることを特徴とする、請求項1、請求項2または請求項3に記載の治療のための化合物。
【請求項5】
前記がんがα-葉酸受容体をバックグラウンドの非がん性組織レベルよりも高く発現することを特徴とする、請求項4に記載の治療のための化合物。
【請求項6】
前記がんが卵巣癌であることを特徴とする、先行請求項のいずれか1項に記載の治療のための化合物。
【請求項7】
前記がんが上皮性卵巣、ファロピウス管または腹膜のがんであることを特徴とする、先行請求項のいずれか1項に記載の治療のための化合物。
【請求項8】
前記がんが漿液性卵巣癌であることを特徴とする、請求項6または請求項7に記載の治療のための化合物。
【請求項9】
前記がんが高異型度漿液性卵巣癌(HGSOC)であることを特徴とする、請求項8に記載の治療のための化合物。
【請求項10】
前記用量が腹腔内(IP)または静脈内(IV)に投与されることを特徴とする、先行請求項のいずれか1項に記載の治療のための化合物。
【請求項11】
前記用量が投与1回あたり、患者の体表面積あたり3~30mg/m2の化合物であることを特徴とする、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
【請求項12】
前記治療が、10~28日間隔の個々の輸注として各用量を投与するものであることを特徴とする、先行請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
前記輸注が10~21日間隔であることを特徴とする、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
前記輸注が約14日の投薬間隔で施されることを特徴とする、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
前記治療が、全ての前記輸注を通じて患者の体表面積あたり150mg/m2の累積最大量の化合物によるものであることを特徴とする、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
前記最大累積用量が144mg/m2であることを特徴とする、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
前記治療が投与1回あたり1~20mg/m2の輸注によるものであることを特徴とする、先行請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項18】
前記治療が投与1回あたり10~15mg/m2の輸注によるものであることを特徴とする、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
前記治療が投与1回あたり約12mg/m2の輸注によるものであることを特徴とする、請求項16に記載の化合物。
【請求項20】
前記用量が生理食塩水の点滴に添加されることを特徴とする、請求項1~19のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項21】
式IIの三ナトリウム塩
【化7】
であることを特徴とする、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
【請求項22】
白金薬系療法に対して不応性もしくは耐性であるかまたはそうなる傾向にあるタイプであるという特徴を有するがんを患っている患者を治療する方法であって、前記治療が投与1回あたり、患者の体表面積あたり1~30mg/m
2の化合物の用量の、がんの前記治療のための式Iの化合物
【化8】
または薬学的に許容されるその塩もしくはエステルによるものである、前記方法。
【請求項23】
前記治療が請求項1~21のいずれか1項に記載のものである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記式Iの前記化合物による前記治療が、治療的有効量の1つ以上のさらなる抗がん剤を投与する投薬計画と組み合わせて与えられる、請求項22または請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記治療が、前記式Iの前記化合物と前記1つ以上のさらなる抗がん剤とを含む組成物を投与することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記式Iの前記化合物と前記1つ以上のさらなる抗がん剤とが別々に投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記式Iの前記化合物の前記投与と、前記1つ以上のさらなる抗がん剤の前記投与とが12時間隔てられる、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記式Iの前記化合物の前記投与と、前記1つ以上のさらなる抗がん剤の前記投与とが24時間隔てられる、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記式Iの前記化合物の前記投与と、前記1つ以上のさらなる抗がん剤の前記投与とが36時間隔てられる、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記式Iの前記化合物の前記投与と、前記1つ以上のさらなる抗がん剤の前記投与とが38時間隔てられる、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記式Iの前記化合物の前記投与、及び前記1つ以上のさらなる抗がん剤の前記投与が、7日投薬スケジュールの交互の週に実施される、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
前記式Iの前記化合物の前記投与、及び前記1つ以上のさらなる抗がん剤の前記投与が、14日投薬スケジュールの交互の週に実施される、請求項24に記載の方法。
【請求項33】
この併用療法に使用される前記1つ以上のさらなる抗がん剤が、シスプラチン、カルボプラチン、ドキソルビシン、ベバシズマブ ゲムシタビン、トポテカン、パクリタキセル、ドセタキセル、エトポシド、ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル、Lynparza(オラパリブ)、Rubraca(ルカパリブ)、Zejula(ニラパリブ)、Tecentriq(アテゾリズマブ)、Bavercio(アベルマブ)から選択される、請求項24~32に記載の方法。
【請求項34】
前記治療が、ベバシズマブと、パクリタキセル、ペグ化リポソームドキソルビシンまたはトポテカンとを併用して投与する投薬計画と一緒に式Iの前記化合物を投与する組み合わせを含む、請求項24~32に記載の方法。
【請求項35】
式Iの化合物
【化9】
の剤形であって、
前記化合物または薬学的に許容されるその塩もしくはエステルを含有する単回投薬単位を含み、前記投薬単位中の前記化合物の量が0.5~40mgであることを特徴とする、前記剤形。
【請求項36】
0.5~40mgの式Iの前記化合物またはその塩もしくはエステルを含有する、請求項35に記載の剤形。
【請求項37】
1~30mgの式Iの前記化合物またはその塩もしくはエステルを含有する、請求項35または請求項36に記載の剤形。
【請求項38】
5~26mgの式Iの前記化合物またはその塩もしくはエステルを含有する、請求項35、請求項36、請求項37に記載の剤形。
【請求項39】
10~24mgの式Iの前記化合物または塩もしくはエステルを含有する、請求項35、請求項36、請求項37または請求項38に記載の剤形。
【請求項40】
式Iの前記化合物またはその塩もしくはエステルの容器を含むことを特徴とする、請求項35~39のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項41】
無菌固体または水溶液としてナトリウム塩を含むことを特徴とする、請求項40に記載の剤形。
【請求項42】
前記水溶液が、注射用水中または生理食塩水中の化合物の水溶液であることを特徴とする、請求項41に記載の剤形。
【請求項43】
前記化合物、塩またはエステルの水溶液が入ったバイアルであることを特徴とする、請求項35~42のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項44】
1~40mgの式Iの前記化合物またはその塩もしくはエステルを含有する、請求項43に記載の剤形。
【請求項45】
1~40mgの式Iの化合物またはその塩もしくはエステルが乾燥固体または水溶液の形態で入っているバイアルを含むことを特徴とする、請求項35~44のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項46】
5~30mgの式Iの前記化合物またはその塩もしくはエステルを含有する、請求項45に記載の剤形。
【請求項47】
5~30mgの式Iの化合物またはその塩もしくはエステルが乾燥固体または水溶液の形態で入っているバイアルを含むことを特徴とする、請求項35~46のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項48】
10~24mgの式Iの前記化合物またはその塩もしくはエステルを含有する、請求項47に記載の剤形。
【請求項49】
10~24mgの式Iの化合物またはその塩もしくはエステルが乾燥固体または水溶液の形態で入っているバイアルを含むことを特徴とする、請求項35~48のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項50】
がんの前記治療のための
式I
【化10】
、式II
【化11】
、及び
薬学的に許容されるその塩またはエステル
から選択される化合物であって、
(i)前記がんが、白金薬系療法に対して不応性または耐性であるかまたはそうなる傾向にあるタイプであるという特徴を有するものであり;
(ii)前記治療が投与1回あたり、患者の体表面積あたり1~30mg/m
2の化合物の用量によるものであり;
(iii)前記用量が腹腔内(IP)に投与される、
前記化合物。
【請求項51】
白金薬系療法に対して不応性もしくは耐性であるかまたはそうなる傾向にあるタイプであるという特徴を有するがんを患っている患者を治療する方法であって、前記治療が投与1回あたり、患者の体表面積あたり1~30mg/m
2の化合物の用量の、がんの前記治療のための式Iの化合物
【化12】
または薬学的に許容されるその塩もしくはエステルによるものであり、前記用量が腹腔内(IP)に投与される、前記方法。
【請求項52】
前記式Iの前記化合物による前記治療が、治療的有効量の1つ以上のさらなる抗がん剤を投与する投薬計画と組み合わせて与えられる、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
がんの前記治療のための
式I
【化13】
、
式II
【化14】
、及び
薬学的に許容されるその塩またはエステル
から選択される化合物であって、
(i)前記がんが、白金薬系療法に対して不応性または耐性であるかまたはそうなる傾向にあるタイプであるという特徴を有するものであり;
(ii)前記治療が投与1回あたり、患者の体表面積あたり1~30mg/m
2の化合物の用量によるものであり;
(iii)古典的チミジル酸合成酵素阻害薬またはアルファ葉酸受容体抗体薬複合体に関連する少なくとも1つの副作用が認められない、
前記化合物。
【請求項54】
前記少なくとも1つの副作用が好中球減少症、下痢、脱毛、霧視または吐き気から選択される、請求項53に記載の化合物。
【請求項55】
前記がんが卵巣、子宮内膜、中皮、非小細胞肺のがん、及びこれらのうちの1つから派生するがんから選択されることを特徴とする、請求項53または請求項54に記載の治療のための化合物。
【請求項56】
それが、α-葉酸受容体(FR-α)が発現しているものから選択されること
を特徴とする、請求項53、請求項54または請求項55に記載の治療のための化合物。
【請求項57】
前記がんがα-葉酸受容体をバックグラウンドの非がん性組織レベルよりも高く発現することを特徴とする、請求項56に記載の治療のための化合物。
【請求項58】
前記がんが卵巣癌であることを特徴とする、請求項53~57のいずれか1項に記載の治療のための化合物。
【請求項59】
前記がんが上皮性卵巣、ファロピウス管または腹膜のがんであることを特徴とする、請求項53~58のいずれか1項に記載の治療のための化合物。
【請求項60】
前記がんが漿液性卵巣癌であることを特徴とする、請求項58または請求項59に記載の治療のための化合物。
【請求項61】
前記がんが高異型度漿液性卵巣癌(HGSOC)であることを特徴とする、請求項60に記載の治療のための化合物。
【請求項62】
前記用量が腹腔内(IP)または静脈内(IV)に投与されることを特徴とする、請求項53~61のいずれか1項に記載の治療のための化合物。
【請求項63】
前記用量が投与1回あたり、患者の体表面積あたり3~30mg/m2の化合物であることを特徴とする、請求項53~62のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
【請求項64】
前記治療が各用量を10~28日間隔の個々の輸注として投与することを特徴とする、請求項53~63のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項65】
前記輸注が10~21日間隔であることを特徴とする、請求項64に記載の化合物。
【請求項66】
前記輸注が約14日の投薬間隔で施されることを特徴とする、請求項65に記載の化合物。
【請求項67】
前記治療が、全ての前記輸注を通じて患者の体表面積あたり150mg/m2の累積最大量の化合物によるものであることを特徴とする、請求項66に記載の化合物。
【請求項68】
前記最大累積用量が144mg/m2であることを特徴とする、請求項67に記載の化合物。
【請求項69】
前記治療が投与1回あたり1~20mg/m2の輸注によるものであることを特徴とする、請求項53~68のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項70】
前記治療が投与1回あたり10~15mg/m2の輸注によるものであることを特徴とする、請求項69に記載の化合物。
【請求項71】
前記治療が投与1回あたり約12mg/m2の輸注によるものであることを特徴とする、請求項68に記載の化合物。
【請求項72】
前記用量が生理食塩水の点滴に添加されることを特徴とする、請求項53~71のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項73】
式IIの三ナトリウム塩
【化15】
であることを特徴とする、請求項53~72のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
【請求項74】
がんの前記治療のための
式I
【化16】
、
式II
【化17】
、及び
薬学的に許容されるその塩またはエステル
から選択される化合物であって、
(i)前記がんが、白金薬系療法に対して不応性もしくは耐性であるかまたはそうなる傾向にあるタイプであるという特徴を有するものであり、
(ii)前記治療が、少なくとも72時間にわたって前記化合物の約0.5μM以上の濃度を達成する用量によるものである、
前記化合物。
【請求項75】
前記治療が、少なくとも36時間にわたって前記化合物の約0.7μM以上の濃度を達成する用量によるものである、請求項74に記載の化合物。
【請求項76】
前記治療が、少なくとも24時間にわたって前記化合物の約0.9μM以上の濃度を達成する用量によるものである、請求項74に記載の化合物。
【請求項77】
前記がんが卵巣、子宮内膜、中皮、非小細胞肺のがん、及びこれらのうちの1つから派生するがんから選択されることを特徴とする、請求項74、請求項75または請求項76に記載の治療のための化合物。
【請求項78】
それが、α-葉酸受容体(FR-α)が発現しているものから選択されることを特徴とする、請求項74、請求項75、請求項76または請求項77に記載の治療のための化合物。
【請求項79】
前記がんがα-葉酸受容体をバックグラウンドの非がん性組織レベルよりも高く発現することを特徴とする、請求項78に記載の治療のための化合物。
【請求項80】
前記がんが卵巣癌であることを特徴とする、請求項74~79のいずれか1項に記載の治療のための化合物。
【請求項81】
前記がんが上皮性卵巣、ファロピウス管または腹膜のがんであることを特徴とする、請求項74~80のいずれか1項に記載の治療のための化合物。
【請求項82】
前記がんが漿液性卵巣癌であることを特徴とする、請求項80または請求項81に記載の治療のための化合物。
【請求項83】
前記がんが高異型度漿液性卵巣癌(HGSOC)であることを特徴とする、請求項82に記載の治療のための化合物。
【請求項84】
前記用量が腹腔内(IP)または静脈内(IV)に投与されることを特徴とする、請求項74~83のいずれか1項に記載の治療のための化合物。
【請求項85】
前記用量が投与1回あたり、患者の体表面積あたり3~30mg/m2の化合物であることを特徴とする、請求項74~84のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
【請求項86】
前記治療が各用量を10~28日間隔の個々の輸注として投与することを特徴とする、請求項74~85のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項87】
前記輸注が10~21日間隔であることを特徴とする、請求項86に記載の化合物。
【請求項88】
前記輸注が約14日の投薬間隔で施されることを特徴とする、請求項87に記載の化合物。
【請求項89】
前記治療が、全ての前記輸注を通じて患者の体表面積あたり150mg/m2の累積最大量の化合物によるものであることを特徴とする、請求項88に記載の化合物。
【請求項90】
前記最大累積用量が144mg/m2であることを特徴とする、請求項89に記載の化合物。
【請求項91】
前記治療が投与1回あたり1~20mg/m2の輸注によるものであることを特徴とする、請求項74~90のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項92】
前記治療が投与1回あたり10~15mg/m2の輸注によるものであることを特徴とする、請求項91に記載の化合物。
【請求項93】
前記治療が投与1回あたり約12mg/m2の輸注によるものであることを特徴とする、請求項90に記載の化合物。
【請求項94】
前記用量が生理食塩水の点滴に添加されることを特徴とする、請求項74~93のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項95】
式IIの三ナトリウム塩
【化18】
であることを特徴とする、請求項74~94のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
【請求項96】
がんの前記治療のための医薬を製造するための式Iの化合物
【化19】
または薬学的に許容されるその塩もしくはエステルの使用であって、
(i)前記がんが、白金薬系療法に対して不応性もしくは耐性であるかまたはそうなる傾向にあるタイプであるという特徴を有するものであり、
(ii)前記治療が投与1回あたり、患者の体表面積あたり1~30mg/m
2の化合物の用量によるものである、
前記使用。
【請求項97】
前記治療が、
● 28日サイクルにおいて7日間隔で1、8、15及び22日目に投与される1~10mg/m2の用量、
● 28日サイクルにおいて14日間隔で1日目及び15日目に投与される6~14mg/m2の用量、
● 21日サイクルにおいて1日目に投与される10~30mg/m2の用量
の群から選択される投薬計画によるものである、請求項1に記載の化合物。
【請求項98】
前記投薬計画が、28日サイクルにおいて14日間隔で1日目及び15日目に投与される10~14mg/m2の用量である、請求項97に記載の化合物。
【請求項99】
前記投薬計画が、21日サイクルにおいて1日目に投与される10~14mg/m2の用量である、請求項97に記載の化合物。
【請求項100】
がんの前記治療のための式Iの化合物
【化20】
または薬学的に許容されるその塩もしくはエステル
を含む、がんの前記治療のための医薬組成物であって、
(i)前記がんが、白金薬系療法に対して不応性もしくは耐性であるかまたはそうなる傾向にあるタイプであるという特徴を有するものであり、
(ii)前記治療が投与1回あたり、患者の体表面積あたり1~30mg/m
2の化合物の用量によるものである、
前記医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん、より詳しくは白金系療法に対して耐性を示すかあるいは不応性であることが多いがんの、新規な治療に関する。治療されるがんとしては特に、卵巣、子宮内膜、中皮及び非小細胞肺(NSCL)のがん、ならびにこれらから派生するがんが挙げられる。より特段に好ましい治療は、卵巣から派生するがん、例えば、上皮性卵巣、ファロピウス管及び腹膜などのがんに対して提供される。
【背景技術】
【0002】
最も特段には、本発明は、α-葉酸受容体(FR-α)を保有するようながん、とりわけα-葉酸受容体をバックグラウンドの非がん性組織レベルよりも高く示しているもの、詳しくはその細胞膜表面にそういったFR-αを有しているものに対して、新規な治療を提供する。本発明の治療に適するがんにはまた、FR-αが発現している乳癌及び肺癌、特に三重陰性乳癌も含まれる。
【0003】
α-葉酸受容体は、多くの癌腫に過剰発現し、特に卵巣起源のものでは症例の90%において高度かつ一様に過剰発現する(非特許文献1)。さらに、高度のα-FR発現は進行性の白金耐性疾患及び不良な予後に関連している(非特許文献2,3)。β-アイソフォームは上皮及び非上皮起源の腫瘍に広く発現し、発現レベルが大抵それぞれ低度/中程度、及び高度であることが、非特許文献4に総説されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Cancer Res.51,5329-5338,1991(Campbell et al.,1991)
【非特許文献2】Int.J.Cancer 74,193-198,1997(Toffoli et al.)
【非特許文献3】Int.J.Cancer 79,121-126,1998(Toffoli et al.)
【非特許文献4】Critical Rev.Therap.in Drug Carrier Systems 15,587-627,1998(Reddy and Low)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、大変有益なことに、例えば寿命を延ばすことができる製品の未だ満たされていない大きな医学的必要性が存在している人命救助の場面において、高異型度漿液性卵巣癌(HGSOC)の患者のための治療を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
卵巣癌は、卵巣内に含有される様々なタイプの組織に起因する腫瘍の群に対する用語である。卵巣癌の最も一般的なタイプは卵巣表面の上皮細胞に起因し、多くの場合、ファロピウス管及び腹膜腔を含めた腹腔内のいかなる表面にも広がる可能性がある。ファロピウス管癌及び原発性腹膜癌は組織学的に上皮性卵巣癌と等価な疾患である。卵巣癌は、ステージIからステージIVまでに分類される。進行した卵巣癌はステージIII及びIVに該当し、ステージIIIは、局所的に進行しかつ骨盤外の腹腔に広がった疾患を表し、ステージIVは、他の肝臓及び肺などの身体臓器への遠隔転移が起こったことを表す。
【0007】
上皮性卵巣癌(EOC)は先進国において婦人科医学的悪性腫瘍による死亡の最も一般的な原因である。EOCは、漿液性(68%)、明細胞(13%)、類内膜(9%)及び粘液性(3%)の病理学的亜型を含めた新生物の異種混合群を含む。漿液性卵巣癌はさらに、低異型度(I型)及び高異型度(II型)漿液性卵巣癌(それぞれLGSOC及びHGSOC)に分かれる。ほとんどの死亡はHGSOCを原因としており、これはLGSOCに比べておよそ20倍、より一般的である。
【0008】
卵巣癌は初回白金化学療法に対する応答によって以下のとおりに分類される:
● 白金感受性-疾患は白金系療法に対して応答するが6ヶ月以上後に再発することがあり、これは、
○ 完全白金感受性-疾患は白金系療法に対して応答するが12ヶ月以上後に再発する、及び
○ 部分白金感受性-疾患は白金系療法に対して応答するが6~12ヶ月の間に再発するに細分することができる;ならびに
● 白金耐性-白金系化学療法の終了から6ヶ月以内に再発する疾患、ならびに
● 白金不応性-疾患は初回白金系化学療法に対して応答しない。
【0009】
かなりの割合の人々が、初回化学療法に応答する疾患を有しているが、これらのうちの55~75%は治療完了から2年以内に再発する。こういった状況に加えて、何名かの患者は白金系薬に耐えられず、このため、本発明の療法計画がこれから提供する白金に対する代替選択肢も必要となろう。
【0010】
HGSOCに対する最初の治療手法は通常、外科的腫瘍減量及びそれに続く化学療法である。巨視的残留疾患を伴わない最適な腫瘍減量は最も重要な予後指標である。しかしながら、HGSOCは初期において無症候であるためほとんどの患者は進行したステージの疾患を呈する。
【0011】
ほとんどのHGSOC(80%)は、最初は白金/タキサン療法に対して良好に応答し、その次の処置サイクルの間に薬物耐性が現れる。他方、HGSOCの少数の症例(20%)は白金系化学療法に対して提供時から不応性であるが、この薬物耐性の原理は分かっていない。本発明の治療にとって好ましい標的集団である疾患ステージIII及びIVは再発率が高い。
【0012】
ステージIIIの卵巣癌が最適に腫瘍減量(1cm以下)された患者は、最前線の外科手術の後に腹腔内(IP)化学療法を勧められるのが典型的である。現時点ではIP療法のための標準的な療法計画は存在していないが、パクリタキセル及びシスプラチンなどの薬物による投薬計画またはカルボプラチン投薬計画が用いられることがある。患者がIP送達に耐えることができない場合には、パクリタキセル及びカルボプラチン、またはドセタキセルとカルボプラチンなどの静注薬物が与えられることがある。
【0013】
通常、ステージIII及びIVの疾患の治療は化学療法によって行われ、治療選択は、前の白金含有化学療法が完全に奏効してから経過した時間によって左右される。リポソームドキソルビシンは良好な第1選択肢であるが、類似する有効性を有する薬剤は多く存在し、最終的な選択は個々の状況ならびに患者及び医師の好みによって左右される。使用可能な薬物のいくつかとしては、ゲムシタビン、トポテカン(Topetecan)、パクリタキセル、ドセタキセル、エトポシド及びナノ粒子アルブミン結合パクリタキセルが挙げられる。ベバシズマブを単独薬剤として、またはパクリタキセル、ペグ化リポソームドキソルビシンもしくはトポテカンと組み合わせて検討する場合もある。
【0014】
製薬会社のパイプラインにある他の可能な療法としては、PARP阻害薬、例えばLynparza(オラパリブ)及びRubraca(ルカパリブ)(どちらの商標もBRCA突然変異型に限定される)ならびにZejula(ニラパリブ);及びチェックポイント阻害薬、例えば、非BRCA突然変異型のためのTecentriq(アテゾリズマブ(atezoizumab))及びBavercio(アベルマブ)が挙げられる。しかしながら、多くの重要なオピニオンリーダー達は、全奏効率を向上させることができるためにはより明確に特定された集団を用いてそのような薬物を使用する必要があるという考えを表明した。Keytruda(ペンブロリズマブ)も、Tリンパ球上及び腫瘍上に高レベルのPD-1がみられる場合にいくらかの有効性を有することが発見された。
【0015】
いくつかのFR-α指向薬が治験に出されている。FR-α指向性モノクローナル抗体ファルレツズマブは、1,100名の患者の第III相治験においてパクリタキセル及びカルボプラチンと併用されて白金感受性上皮性卵巣癌の患者の無増悪生存率(PFS)を改善することができなかった。α-葉酸受容体指向性部分とビンブラスチンとの複合体であるビンタフォリドは、葉酸受容体陽性非小細胞肺癌(NSCLC)においてドセタキセルと併用されてPFSを改善するのにいくらかの成功を示し、卵巣癌ではペグ化リポソームドキソルビシン(PLD)と一緒に試用されたことがあるが、第III相治験は、試験の継続を可能にする予め規定されたPFSの基準を満たすことができなかった。抗体薬複合体IMGN853(ミルベツキシマブ・ソラブタンシン)も白金耐性上皮性卵巣癌での第I相治験を受け、3週間ごとの6mg/kgの用量でPFSを増加させる可能性がいくらか示され、3回以下の療法を先に受けた患者の39%においてPFSが6.7ヶ月であった。
【0016】
白金耐性の状況においてこれらの薬剤の併用が有用であると証明され得る可能性があるとはいえ、白金耐性癌、特にHGSOCなどの卵巣癌を治療することは必要とされ続けている、というのも、それは大抵の卵巣による死亡の原因となっており、何十年にもわたって全生存率に改善がほとんど示されてこなかったからである。免疫チェックポイント阻害薬などの潜在的大型薬は、メラノーマ及び非小細胞肺癌においてはおそらく例外的に高い突然変異負荷ゆえに目覚ましい臨床的奏効をもたらしたが、対照的に、HGSOCは突然変異負荷が中程度であり、新生抗原の数がより少ないことが推測される。(Bowtell et al.Nat Rev Cancer 2016 June)。現在の単剤HGSOC療法は全奏効率(ORR)が15~20%であり、無増悪生存率(PFS)がたったの3~4ヶ月である。
【0017】
さらなる薬物部類としては、チミジル酸合成酵素(TS)阻害薬CB3717、ZD1694(ラルチトレキセド)、LY231514 Alimta(ペメトレキセド)及びZD9331(プレビトレキセド)が挙げられる。これらのTS阻害薬は全て、様々な固形腫瘍において極めて明らかな臨床活性を有する(Cancer Treatment Reports,1986,70,1335 and Beale et al.,“Tomudex:Clinical Development”in Antifolate Drugs in Cancer Therapy(ed.Jackman),Humana Press,Totowa,New Jersey,USA,pp.177-181,1999を参照されたい)。ラルチトレキセド及びZD9331の副作用は主に消化管及び骨髄におけるTSの阻害に関係している。
【0018】
ラルチトレキセド及びペメトレキセドは、以下の特性によって定義される「古典的」TS阻害薬の例である:還元葉酸輸送体(RFC)が細胞内への主な輸送体である;ホリルポリグルタミン酸合成酵素(FPGS)の優れた基質であり、それゆえ組織/腫瘍において広範囲にわたってポリグルタミン酸化されて、効果的な細胞毒性薬種であるポリグルタミン酸になる;及び、血漿における半減期がかなり短い。これらの古典的阻害薬はポリグルタミン酸化のために組織から徐々に除去されるので、それらは細胞傷害性であることが多く、低頻度で短時間の例えば約15分の輸注による高投薬量の投薬計画で使用される。
【0019】
プレビトレキセドは、ポリグルタミン酸化がされず以下の特性を有するという点において「非古典的」TS阻害薬である:RFCが細胞内への主な輸送体である;FPGSの基質ではない;TS Kiが約0.4nMである、つまりラルチトレキセド(raltitexed)及びペメトレキセドのポリグルタメートに類似している;細胞から速やかに排出され、それゆえ組織/腫瘍にはあまり保持されない;ならびに、血漿中半減期が長い。
【0020】
ペメトレキセドは非小細胞肺癌及び胸膜中皮腫における使用が承認されているが、白金耐性卵巣癌の治療剤としても提案されている。例えば、この症状では21日サイクルにおいて500mg/m2のペメトレキセドが1日目に、そしてゲムシタビンが8日目に与えられ(Clin Transl.Oncol(2009)11:35-40)、また、900mg/m2が21日ごとに1回与えられた(J.Clin Oncol 27:2686-2691)。これら及びその他の治験についてのさらなる議論は、Expert Opin.Investig.Drugs(2012)21(4)、及びExpert Opin.Investig.Drugs(2013)22(9)に提供されており、後者は、600mg/m2の単剤ペメトレキセド用量が推奨されることを記している。この論文には、その当時、抗葉酸薬(TS阻害薬がそうである)が卵巣癌の治療のために承認されていなかったことも記されている。
【0021】
このTS阻害薬化合物群のさらなるサブセットは、特許出願WO-A-94/11354、WO-A-95/30673及びWO-A-03/020748に記載されているFR-α指向性シクロペンタ[g]キナゾリンである。US5789417、US5747499、US7250511、US7297701、US7528141、US7705006、US7863284、US8063056、US8486955及びUS8552016を米国特許権の目的のために参照により本明細書に援用する。これらの文献は、これらの化合物を患者の体面積1平方メートルあたり50~25000、特に50~5000mg(mg/m2)の範囲、すなわち、およそ1500mg/m2、特に1~100mg/kgの用量で投与することを教示している。より高い投薬量を採用することができるであろうこと、及び皮下輸注を用いる場合に用量範囲を1~1000mg/kg、好ましくは10~250mg/kg、特に30~150mg/kgに増やしてもよいことが教示されている。
【0022】
これらの阻害薬は、FR-αとは対照的にFR-βが発現している他の細胞、特に関節リウマチ及び急性骨髄性白血病に関係しているものに対しても使用され得る。この目的のためにUS8466111は50~25000mg/m2の範囲の用量を教示しているが、5~25000mg/m2も挙げており、しかし皮下投与のためには用量を1~1000mg/kgまたは0.1~10mg/kgに増やすことを明記している。0.1~10mg/kgの局所投与についての記述があり、1、10、50及び100mgの化合物を含有する口内錠が1、10及び50mg/mlの注射溶液と同様に開示されている。
【0023】
より高い投薬量の使用はラルチトレキセド及びペメトレキセドと一貫しており、TS阻害薬化合物のこのサブセットは、類似した特性、例えば、FRが主な輸送体である;FRを介した取込みがRFC介在による他の抗葉酸薬の取込みに比べてより遅く、より簡単に飽和に達することができる;FPGSの基質ではない;ならびに、TS Kiが約1.4nMでありこれがラルチトレキセド(raltitexed)及びペメトレキセドのポリグルタメートに類似している、という特性を共有している。しかしながら、化合物は組織/腫瘍に保持されず細胞から速やかに排出されるため、高投薬量は忍容されるはずであると教示された。
【0024】
典型的には、抗増殖作用を誘導するためにはTSは少なくとも24時間の阻害を要し、TS阻害薬が有効となるためには薬物への少なくとも2~3日の十分な細胞内曝露を頻繁に例えば毎週繰り返すことを要する。これは、短い血漿中半減期及び短い細胞外曝露を克服するラルチトレキセド及びペメトレキセドのポリグルタミン酸化によって成し遂げられる。例えば、プレビトレキセドによる長い細胞内曝露は、細胞外曝露の延長をもたらす並外れて長い血漿中最終半減期によって成し遂げられる。
【0025】
驚くべきことに、このより新しい部類のFR-α指向性TS阻害薬の先導化合物をヒトに投与すると半減期レベルが並外れて長くなることが判明した。この化合物ONX-0801(これ以降、BTG945)は、アルファ-葉酸受容体(FR-α)に対して高い親和性を有し、FR-α介在による輸送によって細胞に進入する。それは、改変されたグルタメートリガンドであるL-glu-y-D-gluジペプチドを有し、それゆえFPGSの基質ではない。それは、葉酸(FA)の70%の親和性でα-FRに結合し(Theti et al.,2003)、それは、類似した親和性でFR-βに結合し(van der Heijden et al.,2009)、さらにそれは、高濃度の場合を除けば遍在する還元葉酸輸送体(RFC)に対する親和性が無視できるほど小さいようである(Gibbs et al.,2005)。これは目的の濃度、及び試験管内での腫瘍細胞増殖の時間依存的な阻害につながることが見出された。
【0026】
細胞内に入った時点でBTG945は不可逆的にチミジル酸合成酵素の活性部位に結合し、次いでこれは、承認済みのTS阻害薬が同様に利用するDNA合成及び修復の肝要なステップであるチミジン一リン酸(dTMP)の生成において、その正常な役割の実施が妨害される。
【0027】
ONX801として識別されるBTG945の最初のヒト第I相治験は、21日サイクルでの1、8及び15日目の3時間輸注において腫瘍細胞成長を阻害するであろう忍容される用量を見出すことを目的として治験登録番号ISRCCTN79302332で2009年9月30日に開始された。しかしながら、2011年3月30日にこの治験は、可逆的でありなおかつ累積用量による増悪が考えられる器質化肺炎を伴う閉塞性細気管支炎(BOOP)の発生による、45mg/m2の予測治療的有効用量での毒性のために中止された。このことから、処置に好ましい最低用量として示されるよりもこの毒性用量が低かったため、前もって考えられた用量及び投薬計画で薬物を使用することはできないであろうという結論に至った。
【0028】
対象となる処置コホートの未だ満たされていない大きな必要性を考慮し、本発明者は、薬物BTG945を臨床上有用なものにすべくそれに適用され得る投薬計画を再評価した。未発表のヒト血漿中薬物レベルの分析から、毒性を回避するためにははるかに低い用量の薬物が必要であろうということが示唆された。本発明者及び出願人は、こういった安全と推定されるが非治療的用量であると予測される用量で新たな第I相治験EudraCT3941を開始し、目下、ヒト患者における白金耐性腫瘍、特にFR-α発現腫瘍に対する予期せぬ有効性が、以前に必要と考えられていたよりもはるかに低いレベルの薬物で、処置を制限するBOOPの発生を伴わずにもたらされることを発見した。この有効性は、α-葉酸受容体発現を示している卵巣癌患者のかなりの割合において特にそのような発現が腫瘍膜上の受容体を呈する場合にRECIST基準による部分奏効及び安定な疾患として発揮され、無増悪生存率の期間をもたらし、特に部分奏効及び/または客観的奏効率(ORR)をもたらした。
【0029】
それゆえ、BTG945は、単離された標的チミジン合成酵素に対してラルチトレキセド及びペメトレキセドに匹敵するKi(1.4nMに対して1.2nM)を有しながら、ヒトに有効性を有するために必要とされる用量が以前に予想されたよりもかなり低く、それにもかかわらず、FR-αが発現している好ましい対照群では化合物の有効性がTS阻害薬の部類の他のメンバーにみられるよりもはるかに優れているようである。
【0030】
特に驚くべき有益なことは、BTG945の副作用プロファイルが並外れて好ましいという発見である。BOOP以外の用量制限影響はみられなかったし、BOOP自体は、管理可能であると証明されたことがある、及び/または最適化された投薬計画によって例えば週に2回もしくは3回の投薬を用いて排除される可能性がある。チミジン合成酵素阻害薬に通常関連する副作用、例えば、好中球減少症、下痢及び脱毛は認められなかったし、α-葉酸受容体抗体複合体に関連する副作用、例えば、下痢、視朦及び吐き気も認められなかった。しかも、細胞毒性化学療法に関連する一般的毒性、例えば、骨髄毒性、腎毒性及び神経毒性は認められなかった。
【0031】
数名の治験患者のがんには、以下に概説する処置計画で1mg/m2という低さで奏効することが示された。この投薬計画を単独療法として、または本明細書中で毒性に重複がないことが教示される現在採用されている療法のいずれかと組み合わせて採用してもよいことが、今日までに判定された副作用から示唆される。臨床現場でのそのような知見はここに、未だ満たされていない必要性が残る患者群のPFSを延ばすことを約束しつつ単剤療法としてまたは他の利用可能な処置と組み合わせて用いることができる白金耐性癌の治療法を提供する。本発明の治療法と、第一選択治療剤、特に例えばパクリタキセルまたはカルボプラチンとの併用が利用可能となる。
【0032】
第1の態様では、本発明は、がんの治療のための式Iの化合物
【0033】
【0034】
または薬学的に許容されるその塩もしくはエステルを提供し、
ここで、(i)当該がんは、白金薬系療法に対して不応性もしくは耐性であるかまたはそうなる傾向にあるタイプであるという特徴を有するものであり、さらに(ii)当該治療は投与1回あたり、患者の体表面積あたり1~30mg/m2の化合物の用量によるものである。
【0035】
治療は好ましくは、少なくとも72時間にわたって薬物の血漿中濃度を0.5μM以上にする投薬計画によるものである。より好ましくは、投薬計画の結果として、薬物の投薬直後の血漿中濃度が72時間以下にわたって、好ましくは60時間以下にわたって1~5μMになる。最も好ましくは、投薬計画は処置サイクル期間の少なくとも50%にわたって薬物の0.1~2μMの血漿中濃度を維持する。
【0036】
治療は、好ましくは、
● 28日サイクルにおいて7日間隔で1、8、15及び22日目に投与される1~10mg/m2の用量、
● 28日サイクルにおいて14日間隔で1日目及び15日目に投与される6~14mg/m2の用量、
● 21日サイクルにおいて1日目に投与される10~30mg/m2の用量から選択される投薬計画によるものである。
【0037】
がんは好ましくは、白金に対して不応性または耐性のものである。好ましくは、がんは、卵巣、子宮内膜、中皮、非小細胞肺のがん、またはこれらのうちの1つから派生するがんから選択される。
【0038】
より好ましくは、がんは、α-葉酸受容体(FR-α)が発現しているもの、特に、α-葉酸受容体をバックグラウンドの非がん性組織レベルよりも高く示しているものから選択される。最も好ましくは、FR-αはがん細胞の表面膜上に発現している。最も好ましくは、がんは卵巣癌、例えば、上皮性卵巣、ファロピウス管または腹膜のがんであるが、乳癌または肺癌、例えば三重陰性乳癌または非小細胞肺癌であってもよい。治療される具体的に好ましいがんは、漿液性卵巣癌、例えばサルベージの状況で見つかる高異型度漿液性卵巣癌(HGSOC)である。
【0039】
誤解を避けるために記すと、白金薬系療法は、限定されないが薬物シスプラチンまたはカルボプラチンによるものを含む。
本発明の範囲には1~30mg/m2の用量による治療が含まれるが、好ましい用量は投与1回あたり、患者の体表面積あたり3~30mg/m2の化合物、より好ましくは投与1回あたり、患者の体表面積あたり5~20mg/m2の化合物の用量、よりいっそう好ましくは投与1回あたり、患者の体表面積あたり8~15mg/m2、最も好ましくは10~15mg/m2、特に約12mg/m2、例えば11.5~12.5mg/m2の化合物の用量である。
【0040】
用量は、腹腔内(IP)または静脈内(IV)に投与されることが好ましい。IP投与は、全身性の副作用、特にBOOPなどの肺に影響を与えるであろうもののリスクがより小さい投薬を可能にするであろう。典型的には静脈内に用量を投与する。
【0041】
本発明の1つの好ましい実施形態では、化合物を注射、特に単回注射として腹腔内(IP)に、mg/m2投薬要件を満たす適切な量の化合物を含有する適切な大きさ、例えば1~10ml、より好ましくは2~6mlの体積で投与する。典型的なそのような用量は、2、3、4または5mlの溶液であろう。典型的には、生理食塩水中または注射用水中のものであり得る水溶液である。ここでの化合物は「原薬」であり、「薬物製品」は、単回IP投与のための適切な容積を有するバイアルである。さらなる好ましい実施形態では多回IP注射を、適切なmgの原薬を含有する各々1~10ml、より好ましくは2~6mlの溶液として与える。典型的なそのような用量は、2、3、4または5mlの溶液であろう。各「薬物製品」は単回または多回IP注射を提供し、薬物製品は、栓及び栓を定位置に維持するための適切な器具、例えばアルミニウム製かしめ封止具を備えて原薬が入っているバイアル、例えばガラス製バイアル、例えば、透明ガラス製バイアルである。
【0042】
さらなる好ましい実施形態では、化合物は、供給元の製薬会社によって提供されたバイアルの内容物を生理食塩水の点滴の一部として無菌生理食塩水バッグ内に注射することによって簡便に投与される。典型的には、「薬物製品」は、固体形態の二水和物であることが好ましい三ナトリウム塩としての原薬BTG945の無菌水溶液である。薬物製品は、例えば栓及びアルミニウム製かしめ封止具を備えた1型透明ガラス製バイアルに収容される。ラベルに記された各バイアルの強度には、例えば、適切なmgの原薬を含有する2mL溶液が含まれる。便宜上、BTG945三ナトリウム塩薬物製品中の唯一の賦形剤を注射用無菌水とすることができる。医薬組成物では一般的であるその他の成分を提供しても勿論よい。
【0043】
典型的には薬物製品バイアルを低温で保存し、それらを使用前に解凍し、その後、無菌シリンジを使用して1本または複数本の栓付きバイアルから所望のアリコートを取り出す。その後、IPまたはIVの注射のための250mLの0.9%無菌生理食塩水(USP)でさらに希釈するためにこのアリコートを輸注バッグに直接加える。輸注バッグ内で希釈してすぐに、調製された溶液を好ましくは常温で24時間以内に患者に投与すべきである。投与前はバイアル及びバッグを光から守らねばならない。
【0044】
IP輸注のための1つの好ましい実施形態では、IP注射または輸注のための10ml、15ml、25mlまたは50mlの0.9%無菌生理食塩水(USP)でさらに希釈するためにアリコートを輸注バッグに直接加える。希釈してすぐにこれらのバッグを上記のとおりに取り扱う。
【0045】
より詳しくは、本発明は、輸注、特に静脈内輸注(IV)で、または単回もしくは多回注射として、上に提示したように10~28日間隔、より好ましくは10~21日間隔、最も好ましくは約14日または21日の投薬間隔で、上記算出用量によって治療する。よりいっそう好ましくは、IVに投与する場合に本発明は、全ての輸注を通じて患者の体表面積あたり150mg/m2の累積最大量の化合物によって治療する。より好ましくは、この限界はIP投薬にも当てはまる。より好ましくは、最大累積用量は144mg/m2である。
【0046】
本発明による治療は、好ましくは21日サイクルまたは28日サイクルにおける14日または21日間隔の輸注、最も好ましくは28日サイクルにおける1サイクルあたり1日目の1回と15日目の1回との2回の輸注において、化合物を提供する。これらのサイクルは、最大累積用量に到達するまで繰り返すことが好ましい。輸注は0.5~3時間にわたって行うことが好ましい。治療は1mg/m2という少なさで有効であり得るため、1時間の輸注速度で十分であろうことは理解されよう。したがって、0.5~1時間にわたって、1時間にわたって、但し3時間未満で、輸注が行われ得る。
【0047】
各投与、例えば輸注のためのより好ましい投薬量は、1~20mg/m2、好ましくは3~20mg/m2、より好ましくは6~18mg/m2、よりいっそう好ましくは8~16mg/m2、例えば、10~15mg/m2、及び10~12mg/m2である。最も好ましい用量は約12mg/m2である。28日サイクルにおいて14日に1回与える12mg/m2の用量では、6ヶ月のちょうど手前で最大累積推奨用量に到達するであろうことが分かる。さらに好ましい用量は、21日サイクルにおいて21日に1回与える12mg/m2の用量である。担当の臨床医が不可逆的BOOPまたは類似する副作用を監視しているならば、さらなる投薬が考えられ得る。患者がBOOPの兆候を示すとき、例えばCTスキャンで炎症性細胞滲出物(AICE)の蓄積の証拠がある場合、薬物化合物の用量を減らさねばならない。薬物投与を短期間、例えば2週間または4週間中断し、その後、より低い好ましい用量で再開することが賢明である場合もある。ACIEは放射線学的スキャンで観察されたことがあり、12mg/m2での投薬を2週間休止してその後、144mg/m2の最大累積用量が達成されるまで6mg/m2で再開することによって、症状の進行が止まった、及び軽減されたことが分かっている。
【0048】
特に好ましい実施形態では、好ましい投薬量を投与することで、少なくとも72時間にわたって約0.5μM以上の化合物の血中濃度が達成され、好ましくは2.0μM未満、より好ましくは約0.7μM以上が少なくとも36時間にわたって達成され、またはよりいっそう好ましくは約0.9μM以上、より好ましくは約1.5μM未満が少なくとも24時間にわたって達成される。このレベルはIV投与の場合に特に好ましい。薬物の血漿中レベルは1μMを超えて72時間より長く残らないことが好ましい。最も好ましくは、投薬計画は処置サイクル期間の少なくとも50%にわたって薬物の0.1~2μMの血漿中濃度を維持する。より好ましくは、前記期間の50%にわたって0.1~1μM。
【0049】
本発明の治療に適するがんの、1つの特に好ましいコホートは、進行した高リスク(FIGOステージIII~IV)のBRCA突然変異型の高異型度漿液性及び高異型度類内膜卵巣癌、原発性腹膜癌、及び/またはファロピウス管癌が新しく診断され組織学的に裏付けられた女性患者のコホートである。
【0050】
ステージIII患者は、最適な腫瘍減量手術(事前及び中途の腫瘍減量)の試みを1回受けたことがあることが好ましい。ステージIV患者は生検及び/または事前もしくは中途の腫瘍減量手術のいずれかを受けたことがあることが好ましい。
【0051】
特に好ましいのは、(静脈内または腹腔内への)第一選択の白金(例えばカルボプラチンまたはシスプラチン)療法を完了した患者のがんである。
本発明の治療によって最も効果的に治療されるのは、α-葉酸受容体が発現しているがん、特に、がんの細胞の少なくとも25%の膜及び/または細胞質にα-葉酸受容体が発現しているがんである。より効果的に治療されるのは、がんの細胞上または細胞内の少なくとも50%にα-葉酸受容体が発現しているがんであり、最も効果的には、がんの細胞上または細胞内の少なくとも75%にα-葉酸受容体が発現しているがんである。そのようなレベルは、当技術分野で知られているような可視化剤と結合したα-葉酸特異的抗体を使用して生検組織の組織学的研究によって決定され得る。有効性が最大限になるがんは、FR-αが細胞膜上に発現しているがんである。
【0052】
細胞膜上及び細胞質中におけるα-葉酸受容体発現を評価する方法の一例は、境界悪性腫瘍を含めた合計164例のEOCについて特異的抗体NCL-L-FRアルファ(クローンBN3.2、Leica Biosystems,UK)を使用してFFPE(ホルマリン固定パラフィン包埋された)検体における腫瘍FR-α発現を研究したKurosaki et al(2016)Int.J.Cancer:138,1994-2002 VC 2015 UICCに記載されている。BenchMark XT自動スライド染色機及びiView DAB検出キットを製造者の説明書に従って使用して(Ventana Medical Systems,Tucson,AZ)、全切片スライドに対して免疫組織化学染色が実施された。切片を脱パラフィンし、水和させ、Cell Conditioning Solution1(Ventana Medical Systems)を使用して抗原を回復させ、その後、マウスモノクローナル抗FRA抗体(1:40希釈)と共に30分間インキュベートした。陽性染色は腫瘍細胞における膜染色または膜及び細胞質の染色の存在として定義した。陽性腫瘍細胞染色<1%を陰性、1~25%の陽性腫瘍細胞染色を弱(11)、25~75%の染色を中(21)、そして75%超の染色を強(31)としてスライドを採点した。FR-α染色の採点は、2名の独立した観察者によって盲検様式で評価された。不一致があれば双頭型顕微鏡による共同での再検討によって決定された。
【0053】
本発明を用いる治療に対する患者の適合性を非侵襲的に確認する代替方法は、血中のα-葉酸受容体を検査する。そのようなアッセイは例えば、少なくとも卵巣癌に関してBasal et al(2009)PLoS ONE 4(7):e6292.Doi:10.1371/journal.pone.0006292に記載されている。α-葉酸受容体が膜上にみられる場合、それは血清などの循環生理流体中に排出され得る。当チームは、卵巣癌の症例において、卵巣癌を有する患者の循環α-葉酸受容体(FRα)のレベルが上昇していることを発見した。このことは、がんがその初期段階にある場合にさえ当てはまることが判明した。
【0054】
Kurosaki et al(2016)Int.J.Cancer:138,1994-2002はさらに、血清α-葉酸受容体レベルを上皮起源の卵巣癌の診断に適用することができることを裏付けており、高い血清中FR-αとより短いPFSとを相関させた。
【0055】
上に明記する卵巣組織から派生するがんの他にも、本発明の方法及び投薬計画による治療に適するFR-α過剰発現癌には、子宮、中皮、腎臓、胃、肺、結腸、脈絡叢及び脳のがんも含まれる。最も高いレベルの過剰発現は、90%超の患者の腫瘍がFR-αの過剰発現を呈する非粘液性卵巣癌において検出されたが(Toffoli et al.,1998)、高いレベルは乳頭状漿液性子宮内膜癌(Allard et al.,2007)、腎細胞癌及びNSCLC(Parker et al.,2005)においても示された。加えて、乳癌、原発性CNS、結腸癌及び胃癌は様々な度合いの発現を示す(Low and Kularatne,2009)。
【0056】
表1:選択された腫瘍におけるアルファ-葉酸受容体発現(Weitman 1994、Garin-Chesa 1993、Bueno 2001)
【0057】
【0058】
本発明に使用する化合物は、N-{N-{4-[N-((6S)-2-ヒドロキシメチル-4-オキソ-3,4,7,8-テトラヒドロ-6H-シクロペンタ[g]キナゾリン-6-イル)-N-(プロピ-2-ニル)アミノ]ベンゾイル}-L-γ-グルタミル}-D-グルタミン酸のIUPAC名を有するかまたはその塩であり、本明細書中ではBTG945と呼び、その三ナトリウム塩は一般式II
【0059】
【0060】
を有する。
別名は、D-グルタミン酸,N-[4-[2-プロピン-1-イル-[(6S)-4,6,7,8-テトラヒドロ-2-(ヒドロキシメチル)-4-オキソ-3H-シクロペンタ[g]キナゾリン-6-イル]アミノ]ベンゾイル]-L-ガンマ-グルタミル-,ナトリウム塩である。
【0061】
(6RS)ラセミ体も、描かれているように活性(6S)を含有する活性型であることが知られている。ラセミ体を使用する場合、それは(6S)型を50%しか含有しないので、用量を記載されている範囲の高い方の端点とする必要があり得ることは理解されよう。
【0062】
化合物がエステルとして提供される場合、これは、エステルでなければ上記式中のナトリウム結合部位となっているあろうカルボキシレート部分のうちの1つ以上と結合している単純なアルコールのエステルであり得る。結果として得られるアルキルエステルは、調節目的において親化合物と等価である任意のものであってよい。本発明の治療に適するシクロペンタ[g]キナゾリンの薬学的に許容されるエステル形態は、例えば、炭素原子6つ以下の脂肪族アルコールとのエステル、例えば、メチル、エチルまたはtert-ブチルエステルである。3つのカルボキシル基が存在するため、塩またはエステルは、一酸二塩またはエステルであってもよいし、二酸一塩またはエステルであってもよいし、もっと言えば三塩またはエステルを使用してもよい。
【0063】
本発明の治療に適する、化合物の薬学的に許容される塩形態は例えば、無機もしくは有機酸、例えば、塩酸、臭化水素、トリフルオロ酢酸もしくはマレイン酸との酸付加塩;またはアルカリ金属、例えば、ナトリウム、アルカリ土類金属、例えばカルシウムもしくはアンモニウム、例えばテトラ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムの塩である。最も好ましいのは三ナトリウム塩である。
【0064】
本発明の治療において教示されるシクロペンタ[g]キナゾリンまたは塩は、酵素チミジル酸合成酵素を阻害するその能力ゆえに、部分的に少なくとも抗がん剤として機能すると考えられる。
【0065】
シクロペンタ[g]キナゾリンまたは塩の組成物は、経口使用に適する形態、例えば、錠剤、カプセル剤、水性もしくは油性溶液、懸濁液もしくはエマルジョン;局所使用に適する形態、例えば、クリーム剤、軟膏、ゲル剤もしくは、水性もしくは油性溶液、もしくは懸濁液;鼻腔内使用に適する形態、例えば、嗅ぎ薬、鼻腔用スプレーもしくは点鼻薬;膣内もしくは直腸内使用に適する形態、例えば坐剤;吸入による投与に適する形態、例えば、微粉、例えば、乾燥粉末、微結晶形態もしくは液体エアゾール;舌下もしくは頬側使用に適する形態、例えば錠剤もしくはカプセル;または非経口使用(静脈内、皮下、筋肉内、脈管内または輸注使用を含む)に適する形態、例えば、無菌水性もしくは油性溶液、エマルジョンもしくは懸濁液であり得る。総じて上記組成物は、従来の賦形剤を使用して従来の方法で調製され得る。
【0066】
化合物の好ましい形態は、非経口投与のための形態である。特に好ましいのは、輸注用の化合物であり、この場合、化合物は好ましくは生理食塩水または注射用水を使用して製剤化される。あるいはそれは、上記水または生理食塩水とすぐに混合することができる固体状態で提供される。例えば三ナトリウム塩の二水和物である。
【0067】
組成物は、本発明に使用されるシクロペンタ[g]キナゾリンに加えて、例えば他の代謝拮抗薬、DNA相互作用剤、免疫腫瘍学的薬剤、腫瘍血管阻害剤またはシグナル伝達阻害剤、または腫瘍の調節解除された経路のその他の阻害剤から選択される1つ以上の他の抗がん物質または苦痛緩和物質を含有してもよい。
【0068】
しかしながら、当業者であれば、そのような組み合わせを投与の場への治療訪問時に合わせつつも別個に投与することがより簡便であることを理解するであろう。
本発明の一態様のがんの治療のための化合物と共に採用することが好ましい特定の投薬計画は、シスプラチン、カルボプラチン、ドキソルビシン、ベバシズマブ、ゲムシタビン、トポテカン(Topetecan)、パクリタキセル、ドセタキセル、エトポシド、ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル、Lynparza(オラパリブ)、Rubraca(ルカパリブ)、Zejula(ニラパリブ)、Tecentriq(アテゾリズマブ(atezoizumab))、Bavercio(アベルマブ)から選択される1つ以上のさらなる抗がん剤によるものである。
【0069】
多剤併用は、ベバシズマブと、パクリタキセル、ペグ化リポソームドキソルビシンまたはトポテカンとの併用を含んでもよい。さらなるそのような併用例は以下の実施例で例示されている。
【0070】
特に好都合なことに、本発明の第1の態様は、これらの併用薬に採用する用量が、現在処方されているものよりも低い。これは特に、BTG945に対する耐性が他のこれらの薬物に対する耐性に関して交叉耐性でないことが見出されたこと、及び標的がん細胞に対する所望の毒性作用が多くの場合において累積的となるであろうことによる。かくして、本明細書において実施例の中で提供される例示的な投薬計画に加えて、追加薬物のより低い用量またはより頻度の低い用量が採用され得る。
【0071】
本発明の第2の態様では、白金薬系療法に対して不応性もしくは耐性であるかまたはそうなる傾向にあるタイプであるという特徴を有するがんを患っている患者を治療する方法が提供され、ここで、当該治療は投与1回あたり、患者の体表面積あたり1~30mg/m2の化合物の用量の、がんの治療のための式Iの化合物
【0072】
【0073】
または薬学的に許容されるその塩もしくはエステルによるものである。
治療されるがんは、本発明の第1の態様について上述したとおりである。方法は好ましくは、化合物、塩またはエステルを腹腔内(IP)または静脈内(IV)に投与することによって治療する。
【0074】
治療は好ましくは、少なくとも72時間にわたって薬物の血漿中濃度を0.5μM以上にする投薬計画によるものである。より好ましくは、投薬計画の結果として、薬物の投薬直後の血漿中濃度が72時間以下にわたって、好ましくは60時間以下にわたって1~5μMになる。最も好ましくは、投薬計画は処置サイクル期間の少なくとも50%にわたって薬物の0.1~2μMの血漿中濃度を維持する。
【0075】
治療は、好ましくは、
● 28日サイクルにおいて7日間隔で1、8、15及び22日目に投与される1~10mg/m2の用量、
● 28日サイクルにおいて14日間隔で1日目及び15日目に投与される6~14mg/m2の用量、
● 21日サイクルにおいて1日目に投与される10~30mg/m2の用量から選択される投薬計画によるものである。
【0076】
1~30mg/m2の用量による治療は本発明の範囲に含まれるが、好ましい用量は投与1回あたり、患者の体表面積あたり3~30mg/m2の化合物、より好ましくは投与1回あたり、患者の体表面積あたり5~20mg/m2の化合物の用量、よりいっそう好ましくは投与1回あたり、患者の体表面積あたり6~18mg/m2の化合物、さらにもっと好ましくは投与1回あたり、患者の体表面積あたり8~15mg/m2、最も好ましくは10~15mg/m2、特に約12mg/m2、例えば11.5~12.5mg/m2の化合物の用量である。
【0077】
より好ましく、詳しくは、方法は10~28日間隔、より好ましくは10~21日間隔、最も好ましくは約14または21日の投薬間隔での用量の輸注によって治療する。よりいっそう好ましくは、IVに投与する場合に本発明は、全ての輸注を計算に入れて患者の体表面積あたり150mg/m2の累積最大量の化合物によって治療する。より好ましくは、この限界はIP投薬にも当てはまる。より好ましくは、最大累積用量は144mg/m2である。
【0078】
本発明に係る方法は、好ましくは21日サイクルまたは28日サイクルにおける14日または21日間隔の輸注、最も好ましくは28日サイクルの輸注として、化合物を提供する。これらのサイクルは、最大累積用量に到達するまで繰り返すことが好ましい。輸注は0.5~3時間にわたって行うことが好ましい。輸注は0.5~1時間、1時間、または1~3時間未満にわたって行われ得る。治療は1mg/m2または3mg/m2という少なさで有効であり得るため、1時間の輸注速度で十分であろうことは理解されよう。
【0079】
各輸注のためのより好ましい投薬量は、1~20mg/m2、より好ましくは10~15mg/m2である。最も好ましい用量は約12mg/m2である。28日サイクルにおいて14日に1回与える12mg/m2用量では、6ヶ月のちょうど手前で最大累積推奨用量に到達するであろうことが分かる。これは、144mg/m2の累積総量を提供する12回の12mg/m2の化合物の輸注からなる。さらに好ましい投薬スケジュールは、21日サイクルにおいて21日に1回与える12mg/m2用量である。好ましくは担当の臨床医が不可逆的BOOPまたは類似する副作用を監視してさえいるならば、さらなる投薬が考えられ得る。
【0080】
本発明の第2の態様の方法はさらに、治療有効量の1つ以上のさらなる抗がん剤を併用した式Iの化合物による治療を提供する。
この併用療法において使用される1つ以上のさらなる抗がん剤は、シスプラチン、カルボプラチン、ドキソルビシン、ベバシズマブ、ゲムシタビン、トポテカン(Topetecan)、パクリタキセル、ドセタキセル、エトポシド、ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル、Lynparza(オラパリブ)、Rubraca(ルカパリブ)、Zejula(ニラパリブ)、Tecentriq(アテゾリズマブ(atezoizumab))、Bavercio(アベルマブ)及びKeytruda(ペンブロリズマブ)から選択されることが好ましい。
【0081】
多剤併用は、ベバシズマブと、パクリタキセル、ペグ化リポソームドキソルビシンまたはトポテカンとの併用を含んでもよい。さらなるそのような併用例は以下の実施例で例示されている。
【0082】
パクリタキセルもしくはカルボプラチンまたはその両方との併用が好ましい。
失敗した治験で肺にみられた副作用の性質を考慮して、本発明者はさらに、本発明の投薬計画に肺の炎症を緩和するステロイドの投与を組み込んでもよいことを企図する。
【0083】
本発明の第3の態様は、白金薬系療法に対して不応性もしくは耐性であるかまたはそうなる傾向にあるタイプであるという特徴を有するがんを患っている患者を治療する方法を提供し、ここで、当該治療は、抗炎症コルチコステロイドと併用して投与1回あたり、患者の体表面積あたり1~30mg/m2の化合物の用量の式Iの化合物
【0084】
【0085】
または薬学的に許容されるその塩もしくはエステルによるものである。好ましいコルチコステロイドは、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン及びプレドニゾロン及びヒドロコルチゾンからなる群から選択される。
【0086】
本発明の第4の態様では、式Iの化合物
【0087】
【0088】
の新規な剤形であって、
上記化合物または薬学的に許容されるその塩もしくはエステルを含有する単回投薬単位を含み、投薬単位中の上記化合物の量が0.5~40mgであることを特徴とする、当該剤形が提供される。
【0089】
より好ましくは、本発明の投薬単位は1~30mgの式Iの化合物またはその塩もしくはエステルを含有する。よりいっそう好ましくは、投薬単位は5~26mgの式Iの化合物を含有する。最も好ましくは、投薬単位は10~24mgの式Iの化合物または塩またはエステルを含有する。
【0090】
好ましい剤形は、無菌固体または、注射用水もしくは生理食塩水などの媒体中の水溶液としての、式Iの化合物またはその塩もしくはエステル、より好ましくはナトリウム塩の容器であろう。無菌固体は好ましくは、他の材料を含まないBTG945またはその塩もしくはエステルである。そのような容器は、中に入っている液体、または固体状態が提供される場合にそれに添加される液体を、1~30mg/m2の所要用量を移入させるように患者の体表面積に適した量でシリンジ内に採取することができるようになっているであろう。
【0091】
好ましくは、バイアル内の水溶液として用量を提供する。そのような剤形または製剤は好ましくは、治療のための化合物の水溶液が1~30ml、より好ましくは1~20ml、よりいっそう好ましくは1~10ml、最も好ましくは2~6ml入っているバイアルであろう。あるいは、液体なしで、治療のための化合物の固体形態として用量を提供する。このように、本発明の好ましいバイアルは、1~30mlの水溶液中に0.5~40mgの化合物、よりいっそう好ましくは1~20mlの水溶液中に5~26mg、最も好ましくは1~10mlの水溶液中に10~24mg、例えば2~6mlの水溶液中に約6mgまたは12mgを含有するであろう。
【0092】
当業者であれば、医薬品が高価な商品であり、所与の治療に必要でない化合物を無駄遣いしないことが望ましいことを理解するであろう。BTG945は、いま教示した用量を超えると潜在的に毒性であるため、臨床現場で必要以上に提供されることは不適切であろう。したがって、患者の単位表面積あたりの好ましい用量が6mg/m2または12mg/m2であり、先進国において患者は典型的には1~2.5m2の表面積を有し、並外れて高いBMIを有する患者は2m2を上限に定められることが多いことから、新規な好ましい使用可能なバイアル含有量は、乾燥固体であろうと溶液形態であろうと、6~24mgの薬物化合物、より好ましくは10~24mgの薬物化合物であろう。したがって、薬物含有量6mg、8mg、10mg、12mg、14mg、16mg、18mg、20mg及び24mgのバイアルが本発明の新規実施形態として開示される。特に、薬物が乾燥BTG945塩及び/またはその脱水和物、または注射用の水中もしくは生理食塩水中のその単純な溶液の形態であるものが開示される。
【0093】
本発明の治療のための化合物は、前述の特許出願の中に記載されているとおりに、またはより最近の特許US8809526(Onyx)及び特許出願US2013/0345423(Onyx)に示されているとおりに合成され得る。
【0094】
図1~5は、ヒトにおける本発明の治療による治験の臨床結果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【
図1】実施例1の治験の用量漸増段階での患者のRECIST基準による腫瘍の変化%を示す。毎週のスケジュールを星印で表し、α-葉酸発現腫瘍を十字記号で表す。
【
図2】実施例1の治験の漸増段階においてCA125レベルによって測定した腫瘍の変化%を示す。数字は用量mg/m2を表し、文字は毎週(w)であるか2週間ごと(f)であるかを表し、α-葉酸発現腫瘍は十字記号で表される。
【
図3】28日サイクルにおいて12mg/m
2用量を14日に1回使用する実施例1の治験の拡張段階での患者のRECIST基準による腫瘍の変化%を示す。α-葉酸発現腫瘍を十字記号で表す。
【
図4】28日サイクルにおいて12mg/m
2用量を14日に1回使用する実施例1の治験の拡張段階において患者のCA125レベルを用いて測定した腫瘍の変化%を示す。α-葉酸発現腫瘍を十字記号で表す。
【
図5】拡張用量を選択する前の治験の漸増段階で、異なる用量の投薬計画の下での患者の時間(時数)に対する化合物ONX-0801/BTG945の平均血中濃度(μM)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0096】
(実施例)
以下の非限定的な実施例によって本発明をここに例説することにする。当業者であればこれらに鑑みてさらなる実施形態を考え付くであろう。
【0097】
以下の実施例の投薬計画によって治療するのに好ましい標的がんは、以下を有する患者のものであろう:
● 組織学的に裏付けられた上皮性卵巣、ファロピウス管または腹膜のがん。
【0098】
● 白金療法の用量を最後に投与した後180日以内の疾患進行(耐性)、または白金系療法をつい最近受けている間の応答の欠如もしくは疾患進行(不応性)としてそれぞれ定義される、白金耐性/不応性疾患。
【0099】
● 白金感受性疾患のための3回以下の化学療法を受け、つい最近のものが白金を含有していたこと、及び白金耐性疾患のための療法を以前に受けていないこと。
実施例1:単剤療法としての1~12mg/m2のBTG945(三ナトリウム塩形態の式IIの化合物)による患者の処置。
【0100】
方法:3+3用量漸増デザインを用い、2つのIVスケジュールを調査した。スケジュールAは毎週の投薬(QW)であり、スケジュールBは2週間に1回の投薬(Q2W)であった。サイクルは4週間からなり、どちらのスケジュールにおいても6サイクル後に処置を終わりにした。FR-αを過剰発現している高異型度漿液性卵巣癌(HGSOC)を有する患者の臨床活性を評価するための拡張コホートを開始した。
【0101】
結果:それぞれ1~6mg/m2及び2~12mg/m2の範囲の用量を調査するスケジュールA及びBにおいて各々21名の患者を処置した。スケジュールAでの用量制限毒性はG3の蜂窩織炎であり、スケジュールBでは用量制限毒性はみられなかった。最も一般的な毒性は倦怠感15/42(36%)、吐き気9/42(21%)、及び味覚障害5/42(12%)であった。4mg/m2でのスケジュールAの中で2名の患者はそれぞれサイクル5及びサイクル6において肺機能試験で疑いのある薬物関連変化を発症した(Dlcoの低下>15%)。スケジュールBにおいて処置された患者では疑いのある薬物関連のDlcoの低下の症例は認められなかった。グレード3~4の下痢、粘膜炎または好中球減少症はどちらのコホートにおいてもみられなかった。12mg/m2でのCmax、AUC及び半減期はそれぞれ4952ng/mL、85170時・ng/mL、及び26時間であった。前臨床PK-PDモデリングは0.05~1μMの濃度を達成することを目的としていたが、これは、4mg/m2以上の用量で48時間の期間にわたって達成された。
【0102】
0.5μMより高い濃度は、6mg/m2より高い用量で72時間にわたって達成された。チミジル酸合成酵素阻害の証拠はFLT PET撮像法を用いて観察された。Cancer Res 68.3827-3834.2008(Pillai et al)を参照されたい。
【0103】
安全性及びPKに基づけばBTG945(ONX801であった)の推奨第II相用量(RP2D)は12mg/m
2Q2Wであり、HGSOCを有する患者の拡張を開始した。HGSOCを有する5名の患者は用量漸増コホートにおいて部分奏効(PR)があった。HGSOCを有する患者の拡張コホートでは、この出願の日までに5/11名の患者にPRがあった。拡張コホート内の8/11名の患者からの保管試料を分析した。それぞれBTG945による処置の後に4/4名のAFR+veにはPRがあったが4/4のAFR-ve患者にはPRがなかった。RECIST及びCA125応答を
図1~4に示す。
【0104】
結論:BTG945のRP2Dは12mg/m2 Q2Wである。RP2DではAFR過剰発現HGSOCを有する複数の患者にPRがあり、バイオマーカーで予め規定されるさらなる無作為化第II相治験が保証される。実施例2:BTG945と他の抗がん療法とによる併用療法。
【0105】
28日サイクルの1日目及び15日目に12mg/m2のBTG945を注射用生理食塩水中に入った状態でIVに1時間掛けて最長6サイクル目まで投与する。この処置と一緒に以下の例示的な投薬計画のうちの1つ以上を以下のとおりに施す:
実施例2.1 30分掛けてIVにリポソームドキソルビシンを40~50mg/m2;21日ごと
実施例2.2 1日目及び8日目に30分掛けてIVにゲムシタビンを1000mg/m2;21日ごと
実施例2.3 1~5日目に30分掛けてIVにトポテカンを1.25~1.5mg/m2;21日ごと
実施例2.4 毎週1時間掛けてIVにパクリタキセルを80mg/m2
実施例2.5 21日ごとに1時間掛けてIVにドセタキセルを75~100mg/m2
実施例2.6 28日ごとに21日間にわたってPOでエトポシドを50mg/m2/日
実施例2.7 28日ごとに毎週(1、8及び15日目)30分掛けてIVにナノ粒子アルブミン結合パクリタキセルを100mg/m2を与える
実施例2.8 任意の回の化学療法において3週間ごとにIVに945と共にKeytrudaを200mg。
【0106】
実施例3:白金感受性がんのためのBTG945と他の抗がん療法とによる併用療法。
28日サイクルの1日目及び15日目に12mg/m2のBTG945を注射用生理食塩水中に入った状態でIVに1時間掛けて最長6サイクル目まで投与する。この処置と一緒に以下の例示的な投薬計画のうちの1つ以上を以下のとおりに施す:
実施例3.1 疾患が応答性であることを条件として6サイクル以上にわたって、1日目に24時間掛けてIVにパクリタキセルを135mg/m2と、2日目にシスプラチンをIPに100mg/m2(用量を75mg/m2に減らしてもよい)と、8日目にパクリタキセルをIPに60mg/m2。2日目のシスプラチン用量は75mg/m2 IPに減らしてもよい。臨床医によっては、3時間掛けてIVに135mg/m2のパクリタキセルを与え、続いてIPに75mg/m2のシスプラチンを与えることを両方とも1日目に外来患者基準で行う
実施例3.2 カルボプラチン処置。卵巣癌の処置のためのカルボプラチンAUCの正常範囲は5~7.5である。大がかりな化学療法または放射線を先に受けたことがある患者はAUC<5から始めなければならない。
【0107】
実施例4:患者がIP投与に耐えることができない白金感受性がんのためのBTG945と他の抗がん療法とによる併用療法。
28日サイクルの1日目及び15日目に12mg/m2のBTG945を注射用生理食塩水中に入った状態でIVに1時間掛けて最長6サイクル目まで投与する。この処置と一緒に以下の例示的な投薬計画のうちの1つ以上を以下のとおりに施す:
実施例4.1 IVに3時間掛けてパクリタキセルを175mg/m2と、1日目にIVに1時間掛けてカルボプラチンをAUC7.5;6サイクルにわたって21日ごと、または
実施例4.2 1日目に、IVに1時間掛けてドセタキセルを75mg/m2と、IVに1時間掛けてカルボプラチンをAUC5;6サイクルにわたって21日ごと。
【0108】
実施例5:白金感受性ステージIII及びIV白金感受性再発がんのためのBTG945と他の抗がん療法とによる併用療法。
白金感受性再発:白金含有化学療法に対する最初またはその次の完全臨床奏効から6ヶ月超経って再発が起こる場合、28日サイクルの1日目及び15日目にIVに1時間掛けて最長6サイクル目まで投与される注射用生理食塩水中の12mg/m2のBTG945と併せて、以下のIV白金含有併用療法計画のうちの1つによって患者を処置せねばならない。選択は既存の併存症、以前の毒性ならびに医師及び患者の好みなどの因子によって左右される。投薬計画を以下のとおりである:
実施例5.1 AUC5のカルボプラチンのIVと、IVに30分掛けてリポソームドキソルビシンを30mg/m2;6サイクルにわたって28日ごと
実施例5.2 IVに3時間掛けてパクリタキセルを175mg/m2と、IVに1時間掛けてAUC5のカルボプラチン(Calvert);6サイクルにわたって21日ごと
実施例5.3 毎週1、8及び15日目に1時間掛けてIVにパクリタキセルを80mg/m2と、1日目に1時間掛けてIVにカルボプラチンをAUC6;6サイクルにわたって21日ごと
実施例5.4 1時間掛けてIVにドセタキセルを75mg/m2と、1時間掛けてIVにカルボプラチンをAUC5;6サイクルにわたって21日ごと
実施例5.5 1日目及び8日目に30分掛けてIVにゲムシタビンを1000mg/m2と、1日目に1時間掛けてIVにカルボプラチンをAUC4;6サイクルにわたって21日ごと。
【0109】
実施例6:白金感受性ステージIII及びIV白金感受性再発がんのためのBTG945と他の抗がん療法とによる併用療法
ベバシズマブが単独で、またはカルボプラチン/ゲムシタビンと共に考慮され得るが、この薬剤の使用は未だ議論の的になっている。白金感受性再発:白金含有化学療法に対する最初またはその次の完全臨床奏効から6ヶ月超経って再発が起こる場合、28日サイクルの1日目及び15日目にIVに1時間掛けて最長6サイクル目まで投与される注射用生理食塩水中の12mg/m2のBTG945と併せて、以下のIV白金含有併用療法計画のうちの1つで患者を処置せねばならない。
【0110】
実施例6.1 ベバシズマブをIVに15mg/kg(最初は90分掛けて、その後60分掛けて、そして最後に次の輸注のために30分掛けて);先の白金奏効にかかわらず疾患進行まで21日ごと
実施例6.2 疾患進行または許容されない毒性があるまで、1日目及び8日目にゲムシタビンをIVに30分掛けて1000mg/m2と、1日目にAUC4のカルボプラチンを静注;6~10サイクルにわたって21日ごと、さらに、ゲムシタビン及びカルボプラチンに先立って1日目にIVに15mg/kgのベバシズマブ
実施例6.3 14日ごとのIVへの10mg/kgのベバシズマブと併用して以下のIV化学療法計画のうちの1つ:パクリタキセル、ペグ化リポソームドキソルビシンまたはトポテカン(トポテカンは週に1回与える)
実施例6.4 21日ごとのIVへの15mg/kgのベバシズマブと併用してトポテカン(21日ごと)
実施例6.5 IVに15mg/kgのベバシズマブ(最初は90分掛けて、その後60分掛けて、そして最後に次の輸注のために30分掛けて);疾患進行まで21日ごと
実施例6.6 28日ごとに、1日目及び15日目にIVに10mg/kgのベバシズマブと、1、8及び15日目にIVに4mg/m2のトポテカン。
【0111】
実施例7:BTG945による併用療法、及び白金感受性または耐性または不応性BRCA突然変異型ステージIII及びIV白金感受性再発がん
先に3回以上の化学療法で処置された患者の中で、BRCA突然変異型(FDA承認済みの試験、BRACAnalysis CDxTMによって検出される)と診断された患者に対して:28日周期の1日目及び15日目に注射用生理食塩水中に入った状態で1時間掛けてIVに12mg/m2のBTG945を最長6サイクルまで投与すると同時に、400mgのオラパリブをPOで1日2回連続的に投与する。
【0112】
欧州連合ではPOでの1日2回の400mgのオラパリブは、白金感受性再発BRCA突然変異型(生殖細胞系及び/または体性)高異型度漿液性上皮性、ファロピウス管または原発性腹膜癌を有し白金系化学療法に対して(完全及び部分)奏効を示している成人患者の維持療法のための単剤療法として承認されている。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんを治療するための医薬組成物において、
前記医薬組成物は、式Iの化合物、
【化21】
または薬学的に許容されるその塩もしくはエステルを含有しており、
前記がんは、白金薬系療法に対して不応性または耐性を有するがんであり、
前記化合物または薬学的に許容されるその塩もしくはエステルは、前記医薬組成物中に治療有効量で存在しており、前記治療有効量は、28日サイクルにおいて14日間隔で投与される前記医薬組成物の投与1回あたり、患者の体表面積あたり6mg/m
2
~14mg/m
2
の用量であることを特徴とする、医薬組成物。
【請求項2】
前記投与は、前記28日サイクルの1日目に第1の用量で行われ、且つ前記28日サイクルの15日目に第2の用量で行われるように用いられることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
治療有効量の1つ以上のさらなる抗がん剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
治療有効量の1つ以上のさらなる抗がん剤をさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
PARP阻害剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記PARP阻害剤が、オラパリブ、ルカパリブ、及びニラパリブから選択されることを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
PARP阻害剤をさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記PARP阻害剤が、オラパリブ、ルカパリブ、及びニラパリブから選択されることを特徴とする、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記がんが、α-葉酸受容体(FR-α)が発現しているがんから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記がんが、卵巣がんであることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記がんが、上皮性卵巣、ファロピウス管または腹膜のがんであることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記がんが、漿液性卵巣癌であることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記がんが、高異型度漿液性卵巣癌(HGSOC)であることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記用量の投与が腹腔内(IP)輸注または静脈内(IV)輸注で行われるように用いられることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項15】
1回あたり、患者の体表面積あたり11.5~12.5mg/m
2
の用量の前記化合物または薬学的に許容されるその塩もしくはエステルが輸注されるように用いられることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項16】
1回あたり、患者の体表面積あたり12mg/m
2
の用量の前記化合物または薬学的に許容されるその塩もしくはエステルが輸注されるように用いられることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記化合物または薬学的に許容されるその塩もしくはエステルの最大累積用量が、全ての前記投与を通じて患者の体表面積あたり150mg/m
2
であるように用いられることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記化合物は、式IIの三ナトリウム塩
【化22】
であることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項19】
PARP阻害剤をさらに含むことを特徴とする、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記PARP阻害剤が、オラパリブ、ルカパリブ、及びニラパリブから選択されることを特徴とする、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記式IIの三ナトリウム塩および前記PARP阻害剤が、別個に投与されるように用いられることを特徴とする、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記式IIの三ナトリウム塩、ならびにオラパリブ、ルカパリブ、及びニラパリブから選択される前記PARP阻害剤が、別個に投与されるように用いられることを特徴とする、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記化合物または薬学的に許容されるその塩もしくはエステルの最大累積用量が、全ての前記投与を通じて患者の体表面積あたり150mg/m
2
であるように用いられることを特徴とする、請求項18に記載の医薬組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0072
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0072】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0084
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0084】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0087
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0087】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0112
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0112】
欧州連合ではPOでの1日2回の400mgのオラパリブは、白金感受性再発BRCA突然変異型(生殖細胞系及び/または体性)高異型度漿液性上皮性、ファロピウス管または原発性腹膜癌を有し白金系化学療法に対して(完全及び部分)奏効を示している成人患者の維持療法のための単剤療法として承認されている。
(付記)
(付記1)
がんの治療のための式Iの化合物
【化6】
または薬学的に許容されるその塩もしくはエステル、
ここで、
(i)前記がんは、白金薬系療法に対して不応性もしくは耐性であるかまたはそうなる傾向にあるタイプであるという特徴を有するものであり、さらに
(ii)前記治療は投与1回あたり、患者の体表面積あたり1~30mg/m
2
の化合物の用量によるものである。
(付記2)
前記がんが白金不応性または耐性であることを特徴とする、付記1に記載の治療のための化合物。
(付記3)
前記がんが、卵巣、子宮内膜、中皮、非小細胞肺のがん、及びこれらのうちの1つから派生するがんから選択されることを特徴とする、付記1に記載の治療のための化合物。
(付記4)
α-葉酸受容体(FR-α)が発現しているものから選択されることを特徴とする、付記1、付記2または付記3に記載の治療のための化合物。
(付記5)
前記がんがα-葉酸受容体をバックグラウンドの非がん性組織レベルよりも高く発現することを特徴とする、付記4に記載の治療のための化合物。
(付記6)
前記がんが卵巣癌であることを特徴とする、先行付記のいずれか1項に記載の治療のための化合物。
(付記7)
前記がんが上皮性卵巣、ファロピウス管または腹膜のがんであることを特徴とする、先行付記のいずれか1つに記載の治療のための化合物。
(付記8)
前記がんが漿液性卵巣癌であることを特徴とする、付記6または付記7に記載の治療のための化合物。
(付記9)
前記がんが高異型度漿液性卵巣癌(HGSOC)であることを特徴とする、付記8に記載の治療のための化合物。
(付記10)
前記用量が腹腔内(IP)または静脈内(IV)に投与されることを特徴とする、先行付記のいずれか1つに記載の治療のための化合物。
(付記11)
前記用量が投与1回あたり、患者の体表面積あたり3~30mg/m
2
の化合物であることを特徴とする、先行付記のいずれか1つに記載の使用のための化合物。
(付記12)
前記治療が、10~28日間隔の個々の輸注として各用量を投与するものであることを特徴とする、先行付記のいずれか1つに記載の化合物。
(付記13)
前記輸注が10~21日間隔であることを特徴とする、付記12に記載の化合物。
(付記14)
前記輸注が約14日の投薬間隔で施されることを特徴とする、付記13に記載の化合物。
(付記15)
前記治療が、全ての前記輸注を通じて患者の体表面積あたり150mg/m
2
の累積最大量の化合物によるものであることを特徴とする、付記14に記載の化合物。
(付記16)
前記最大累積用量が144mg/m
2
であることを特徴とする、付記15に記載の化合物。
(付記17)
前記治療が投与1回あたり1~20mg/m
2
の輸注によるものであることを特徴とする、先行付記のいずれか1つに記載の化合物。
(付記18)
前記治療が投与1回あたり10~15mg/m
2
の輸注によるものであることを特徴とする、付記17に記載の化合物。
(付記19)
前記治療が投与1回あたり約12mg/m
2
の輸注によるものであることを特徴とする、付記16に記載の化合物。
(付記20)
前記用量が生理食塩水の点滴に添加されることを特徴とする、付記1~19のいずれか1つに記載の化合物。
(付記21)
式IIの三ナトリウム塩
【化7】
であることを特徴とする、先行付記のいずれか1つに記載の使用のための化合物。
(付記22)
白金薬系療法に対して不応性もしくは耐性であるかまたはそうなる傾向にあるタイプであるという特徴を有するがんを患っている患者を治療する方法であって、前記治療が投与1回あたり、患者の体表面積あたり1~30mg/m
2
の化合物の用量の、がんの前記治療のための式Iの化合物
【化8】
または薬学的に許容されるその塩もしくはエステルによるものである、前記方法。
(付記23)
前記治療が付記1~21のいずれか1つに記載のものである、付記22に記載の方法。
(付記24)
前記式Iの前記化合物による前記治療が、治療的有効量の1つ以上のさらなる抗がん剤を投与する投薬計画と組み合わせて与えられる、付記22または付記23に記載の方法。
(付記25)
前記治療が、前記式Iの前記化合物と前記1つ以上のさらなる抗がん剤とを含む組成物を投与することを含む、付記24に記載の方法。
(付記26)
前記式Iの前記化合物と前記1つ以上のさらなる抗がん剤とが別々に投与される、付記24に記載の方法。
(付記27)
前記式Iの前記化合物の前記投与と、前記1つ以上のさらなる抗がん剤の前記投与とが12時間隔てられる、付記24に記載の方法。
(付記28)
前記式Iの前記化合物の前記投与と、前記1つ以上のさらなる抗がん剤の前記投与とが24時間隔てられる、付記24に記載の方法。
(付記29)
前記式Iの前記化合物の前記投与と、前記1つ以上のさらなる抗がん剤の前記投与とが36時間隔てられる、付記24に記載の方法。
(付記30)
前記式Iの前記化合物の前記投与と、前記1つ以上のさらなる抗がん剤の前記投与とが38時間隔てられる、付記24に記載の方法。
(付記31)
前記式Iの前記化合物の前記投与、及び前記1つ以上のさらなる抗がん剤の前記投与が、7日投薬スケジュールの交互の週に実施される、付記24に記載の方法。
(付記32)
前記式Iの前記化合物の前記投与、及び前記1つ以上のさらなる抗がん剤の前記投与が、14日投薬スケジュールの交互の週に実施される、付記24に記載の方法。
(付記33)
この併用療法に使用される前記1つ以上のさらなる抗がん剤が、シスプラチン、カルボプラチン、ドキソルビシン、ベバシズマブ ゲムシタビン、トポテカン、パクリタキセル、ドセタキセル、エトポシド、ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル、Lynparza(オラパリブ)、Rubraca(ルカパリブ)、Zejula(ニラパリブ)、Tecentriq(アテゾリズマブ)、Bavercio(アベルマブ)から選択される、付記24~32に記載の方法。
(付記34)
前記治療が、ベバシズマブと、パクリタキセル、ペグ化リポソームドキソルビシンまたはトポテカンとを併用して投与する投薬計画と一緒に式Iの前記化合物を投与する組み合わせを含む、付記24~32に記載の方法。
(付記35)
式Iの化合物
【化9】
の剤形であって、
前記化合物または薬学的に許容されるその塩もしくはエステルを含有する単回投薬単位を含み、前記投薬単位中の前記化合物の量が0.5~40mgであることを特徴とする、前記剤形。
(付記36)
0.5~40mgの式Iの前記化合物またはその塩もしくはエステルを含有する、付記35に記載の剤形。
(付記37)
1~30mgの式Iの前記化合物またはその塩もしくはエステルを含有する、付記35または付記36に記載の剤形。
(付記38)
5~26mgの式Iの前記化合物またはその塩もしくはエステルを含有する、付記35、付記36、付記37に記載の剤形。
(付記39)
10~24mgの式Iの前記化合物または塩もしくはエステルを含有する、付記35、付記36、付記37または付記38に記載の剤形。
(付記40)
式Iの前記化合物またはその塩もしくはエステルの容器を含むことを特徴とする、付記35~39のいずれか1つに記載の剤形。
(付記41)
無菌固体または水溶液としてナトリウム塩を含むことを特徴とする、付記40に記載の剤形。
(付記42)
前記水溶液が、注射用水中または生理食塩水中の化合物の水溶液であることを特徴とする、付記41に記載の剤形。
(付記43)
前記化合物、塩またはエステルの水溶液が入ったバイアルであることを特徴とする、付記35~42のいずれか1つに記載の剤形。
(付記44)
1~40mgの式Iの前記化合物またはその塩もしくはエステルを含有する、付記43に記載の剤形。
(付記45)
1~40mgの式Iの化合物またはその塩もしくはエステルが乾燥固体または水溶液の形態で入っているバイアルを含むことを特徴とする、付記35~44のいずれか1つに記載の剤形。
(付記46)
5~30mgの式Iの前記化合物またはその塩もしくはエステルを含有する、付記45に記載の剤形。
(付記47)
5~30mgの式Iの化合物またはその塩もしくはエステルが乾燥固体または水溶液の形態で入っているバイアルを含むことを特徴とする、付記35~46のいずれか1つに記載の剤形。
(付記48)
10~24mgの式Iの前記化合物またはその塩もしくはエステルを含有する、付記47に記載の剤形。
(付記49)
10~24mgの式Iの化合物またはその塩もしくはエステルが乾燥固体または水溶液の形態で入っているバイアルを含むことを特徴とする、付記35~48のいずれか1つに記載の剤形。
(付記50)
がんの前記治療のための
式I
【化10】
、式II
【化11】
、及び
薬学的に許容されるその塩またはエステルから選択される化合物であって、
(i)前記がんが、白金薬系療法に対して不応性または耐性であるかまたはそうなる傾向にあるタイプであるという特徴を有するものであり;
(ii)前記治療が投与1回あたり、患者の体表面積あたり1~30mg/m
2
の化合物の用量によるものであり;
(iii)前記用量が腹腔内(IP)に投与される、前記化合物。
(付記51)
白金薬系療法に対して不応性もしくは耐性であるかまたはそうなる傾向にあるタイプであるという特徴を有するがんを患っている患者を治療する方法であって、前記治療が投与1回あたり、患者の体表面積あたり1~30mg/m
2
の化合物の用量の、がんの前記治療のための式Iの化合物
【化12】
または薬学的に許容されるその塩もしくはエステルによるものであり、前記用量が腹腔内(IP)に投与される、前記方法。
(付記52)
前記式Iの前記化合物による前記治療が、治療的有効量の1つ以上のさらなる抗がん剤を投与する投薬計画と組み合わせて与えられる、付記51に記載の方法。
(付記53)
がんの前記治療のための
式I
【化13】
、式II
【化14】
、及び
薬学的に許容されるその塩またはエステルから選択される化合物であって、
(i)前記がんが、白金薬系療法に対して不応性または耐性であるかまたはそうなる傾向にあるタイプであるという特徴を有するものであり;
(ii)前記治療が投与1回あたり、患者の体表面積あたり1~30mg/m
2
の化合物の用量によるものであり;
(iii)古典的チミジル酸合成酵素阻害薬またはアルファ葉酸受容体抗体薬複合体に関連する少なくとも1つの副作用が認められない、前記化合物。
(付記54)
前記少なくとも1つの副作用が好中球減少症、下痢、脱毛、霧視または吐き気から選択される、付記53に記載の化合物。
(付記55)
前記がんが卵巣、子宮内膜、中皮、非小細胞肺のがん、及びこれらのうちの1つから派生するがんから選択されることを特徴とする、付記53または付記54に記載の治療のための化合物。
(付記56)
それが、α-葉酸受容体(FR-α)が発現しているものから選択されることを特徴とする、付記53、付記54または付記55に記載の治療のための化合物。
(付記57)
前記がんがα-葉酸受容体をバックグラウンドの非がん性組織レベルよりも高く発現することを特徴とする、付記56に記載の治療のための化合物。
(付記58)
前記がんが卵巣癌であることを特徴とする、付記53~57のいずれか1つに記載の治療のための化合物。
(付記59)
前記がんが上皮性卵巣、ファロピウス管または腹膜のがんであることを特徴とする、付記53~58のいずれか1つに記載の治療のための化合物。
(付記60)
前記がんが漿液性卵巣癌であることを特徴とする、付記58または付記59に記載の治療のための化合物。
(付記61)
前記がんが高異型度漿液性卵巣癌(HGSOC)であることを特徴とする、付記60に記載の治療のための化合物。
(付記62)
前記用量が腹腔内(IP)または静脈内(IV)に投与されることを特徴とする、付記53~61のいずれか1つに記載の治療のための化合物。
(付記63)
前記用量が投与1回あたり、患者の体表面積あたり3~30mg/m
2
の化合物であることを特徴とする、付記53~62のいずれか1つに記載の使用のための化合物。
(付記64)
前記治療が各用量を10~28日間隔の個々の輸注として投与することを特徴とする、付記53~63のいずれか1つに記載の化合物。
(付記65)
前記輸注が10~21日間隔であることを特徴とする、付記64に記載の化合物。
(付記66)
前記輸注が約14日の投薬間隔で施されることを特徴とする、付記65に記載の化合物。
(付記67)
前記治療が、全ての前記輸注を通じて患者の体表面積あたり150mg/m
2
の累積最大量の化合物によるものであることを特徴とする、付記66に記載の化合物。
(付記68)
前記最大累積用量が144mg/m
2
であることを特徴とする、付記67に記載の化合物。
(付記69)
前記治療が投与1回あたり1~20mg/m
2
の輸注によるものであることを特徴とする、付記53~68のいずれか1つに記載の化合物。
(付記70)
前記治療が投与1回あたり10~15mg/m
2
の輸注によるものであることを特徴とする、付記69に記載の化合物。
(付記71)
前記治療が投与1回あたり約12mg/m
2
の輸注によるものであることを特徴とする、付記68に記載の化合物。
(付記72)
前記用量が生理食塩水の点滴に添加されることを特徴とする、付記53~71のいずれか1つに記載の化合物。
(付記73)
式IIの三ナトリウム塩
【化15】
であることを特徴とする、付記53~72のいずれか1つに記載の使用のための化合物。
(付記74)
がんの前記治療のための
式I
【化16】
、式II
【化17】
、及び薬学的に許容されるその塩またはエステルから選択される化合物であって、
(i)前記がんが、白金薬系療法に対して不応性もしくは耐性であるかまたはそうなる傾向にあるタイプであるという特徴を有するものであり、
(ii)前記治療が、少なくとも72時間にわたって前記化合物の約0.5μM以上の濃度を達成する用量によるものである、前記化合物。
(付記75)
前記治療が、少なくとも36時間にわたって前記化合物の約0.7μM以上の濃度を達成する用量によるものである、付記74に記載の化合物。
(付記76)
前記治療が、少なくとも24時間にわたって前記化合物の約0.9μM以上の濃度を達成する用量によるものである、付記74に記載の化合物。
(付記77)
前記がんが卵巣、子宮内膜、中皮、非小細胞肺のがん、及びこれらのうちの1つから派生するがんから選択されることを特徴とする、付記74、付記75または付記76に記載の治療のための化合物。
(付記78)
それが、α-葉酸受容体(FR-α)が発現しているものから選択されることを特徴とする、付記74、付記75、付記76または付記77に記載の治療のための化合物。
(付記79)
前記がんがα-葉酸受容体をバックグラウンドの非がん性組織レベルよりも高く発現することを特徴とする、付記78に記載の治療のための化合物。
(付記80)
前記がんが卵巣癌であることを特徴とする、付記74~79のいずれか1つに記載の治療のための化合物。
(付記81)
前記がんが上皮性卵巣、ファロピウス管または腹膜のがんであることを特徴とする、付記74~80のいずれか1つに記載の治療のための化合物。
(付記82)
前記がんが漿液性卵巣癌であることを特徴とする、付記80または付記81に記載の治療のための化合物。
(付記83)
前記がんが高異型度漿液性卵巣癌(HGSOC)であることを特徴とする、付記82に記載の治療のための化合物。
(付記84)
前記用量が腹腔内(IP)または静脈内(IV)に投与されることを特徴とする、付記74~83のいずれか1つに記載の治療のための化合物。
(付記85)
前記用量が投与1回あたり、患者の体表面積あたり3~30mg/m
2
の化合物であることを特徴とする、付記74~84のいずれか1つに記載の使用のための化合物。
(付記86)
前記治療が各用量を10~28日間隔の個々の輸注として投与することを特徴とする、付記74~85のいずれか1つに記載の化合物。
(付記87)
前記輸注が10~21日間隔であることを特徴とする、付記86に記載の化合物。
(付記88)
前記輸注が約14日の投薬間隔で施されることを特徴とする、付記87に記載の化合物。
(付記89)
前記治療が、全ての前記輸注を通じて患者の体表面積あたり150mg/m
2
の累積最大量の化合物によるものであることを特徴とする、付記88に記載の化合物。
(付記90)
前記最大累積用量が144mg/m
2
であることを特徴とする、付記89に記載の化合物。
(付記91)
前記治療が投与1回あたり1~20mg/m
2
の輸注によるものであることを特徴とする、付記74~90のいずれか1つに記載の化合物。
(付記92)
前記治療が投与1回あたり10~15mg/m
2
の輸注によるものであることを特徴とする、付記91に記載の化合物。
(付記93)
前記治療が投与1回あたり約12mg/m
2
の輸注によるものであることを特徴とする、付記90に記載の化合物。
(付記94)
前記用量が生理食塩水の点滴に添加されることを特徴とする、付記74~93のいずれか1つに記載の化合物。
(付記95)
式IIの三ナトリウム塩
【化18】
であることを特徴とする、付記74~94のいずれか1つに記載の使用のための化合物。
(付記96)
がんの前記治療のための医薬を製造するための式Iの化合物
【化19】
または薬学的に許容されるその塩もしくはエステルの使用であって、
(i)前記がんが、白金薬系療法に対して不応性もしくは耐性であるかまたはそうなる傾向にあるタイプであるという特徴を有するものであり、
(ii)前記治療が投与1回あたり、患者の体表面積あたり1~30mg/m
2
の化合物の用量によるものである、前記使用。
(付記97)
前記治療が、
● 28日サイクルにおいて7日間隔で1、8、15及び22日目に投与される1~10mg/m
2
の用量、
● 28日サイクルにおいて14日間隔で1日目及び15日目に投与される6~14mg/m
2
の用量、
● 21日サイクルにおいて1日目に投与される10~30mg/m
2
の用量の群から選択される投薬計画によるものである、付記1に記載の化合物。
(付記98)
前記投薬計画が、28日サイクルにおいて14日間隔で1日目及び15日目に投与される10~14mg/m
2
の用量である、付記97に記載の化合物。
(付記99)
前記投薬計画が、21日サイクルにおいて1日目に投与される10~14mg/m
2
の用量である、付記97に記載の化合物。
(付記100)
がんの前記治療のための式Iの化合物
【化20】
または薬学的に許容されるその塩もしくはエステルを含む、がんの前記治療のための医薬組成物であって、
(i)前記がんが、白金薬系療法に対して不応性もしくは耐性であるかまたはそうなる傾向にあるタイプであるという特徴を有するものであり、
(ii)前記治療が投与1回あたり、患者の体表面積あたり1~30mg/m
2
の化合物の用量によるものである、前記医薬組成物。
【外国語明細書】