(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065490
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、医用画像処理方法、及び医用画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20230502BHJP
G06T 15/08 20110101ALI20230502BHJP
G06T 19/00 20110101ALI20230502BHJP
【FI】
A61B6/03 360G
A61B6/03 360J
A61B6/03 377
G06T15/08
G06T19/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024571
(22)【出願日】2023-02-20
(62)【分割の表示】P 2019013563の分割
【原出願日】2019-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】500109320
【氏名又は名称】ザイオソフト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】長田 剛
(57)【要約】
【課題】結紮対象の組織が容易に視認可能となる医用画像処理装置を提供する。
【解決手段】組織を可視化する医用画像処理装置100であって、組織を含むボリュームデータを取得する機能を有する取得部と、ボリュームデータにおいて組織を切断する切断面F1を設定する切断面設定部166と、組織の可視化に関する処理を行う可視化処理部167と、を備える。可視化処理部167は、ボリュームデータに対して光線減衰を伴うレンダリングを行い、切断面F1によって切断された組織を含むレンダリング画像を生成し、切断面F1上の組織の輪郭が強調された、レンダリング画像を含む表示情報を表示部に表示させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
臓器と前記臓器に含まれる管状組織とを可視化する医用画像処理装置であって、
前記臓器を含むボリュームデータを取得する機能を有する取得部と、
手術において前記臓器を切断すると共に前記管状組織を結紮切離する切断面を前記ボリュームデータに対して設定する機能を有する切断面設定部と、
前記臓器と前記管状組織との可視化に関する処理を行う機能を有する可視化処理部と、を備え、
前記可視化処理部は、
前記ボリュームデータに対して光線減衰を伴うレンダリングを行い、前記切断面によって切断された前記臓器と結紮切離する前記管状組織とを含むレンダリング画像を生成する機能を有し、
前記切断面上の前記臓器の輪郭及び前記切断面上の前記管状組織の輪郭が強調された、前記レンダリング画像を含む表示情報を表示部に表示させる機能を有する、
医用画像処理装置。
【請求項2】
前記切断面設定部は、前記ボリュームデータに含まれる複数のボクセルのうち、レンダリング対象のボクセルを含むマスク領域と、前記レンダリング対象外のボクセルを含む非マスク領域と、の境界であるマスク境界面を基に、前記切断面を設定する機能を有し、
前記可視化処理部は、前記非マスク領域の各ボクセルのボクセル値を除外して、前記マスク領域に含まれる各ボクセルのボクセル値を基に、前記レンダリング画像を生成して表示させる機能を有する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記可視化処理部は、前記管状組織の方向を示して、前記レンダリング画像を含む表示情報を表示部に表示させる機能を有する、
請求項1又は2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記可視化処理部は、前記切断面における前記輪郭の内部を強調して、前記レンダリング画像を表示させる、
請求項1~3のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記レンダリング画像は、ボリュームレンダリング画像である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
臓器と前記臓器に含まれる管状組織とを可視化する医用画像処理方法であって、
前記臓器を含むボリュームデータを取得するステップと、
手術において前記臓器を切断すると共に前記管状組織を結紮切離する切断面を前記ボリュームデータに対して設定するステップと、
前記臓器と前記管状組織との可視化に関する処理を行うステップと、を有し、
前記可視化に関する処理を行うステップは、
前記ボリュームデータに対して光線減衰を伴うレンダリングを行い、前記切断面によって切断された前記臓器と結紮切離する前記管状組織とを含むレンダリング画像を生成するステップと、
前記切断面上の前記臓器の輪郭及び前記切断面上の前記管状組織の輪郭が強調された、前記レンダリング画像を含む表示情報を表示部に表示させるステップと、を含む、
医用画像処理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の医用画像処理方法をコンピュータに実行させるための医用画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医用画像処理装置、医用画像処理方法、及び医用画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
臓器を切除するときは血管を含む管状組織を結紮切離する。結紮切離する管状組織を術前検討したい。従来、管状組織を可視化する画像表示方法が知られている。この画像表示方法は、管状組織に対する画像表示を、管状組織の中心線を表現するパスに沿った切断面で切断して得られる領域の3次元画像処理と、切断面に対する2次元画像処理とにより実行する。3次元画像処理は、レイキャスト法による画像処理である。2次元画像処理は、
MPR法による画像処理である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、組織の切断面を可視化することができる。しかし、レイキャスト法でボリュームレンダリングして画像を生成した場合、画像において管状組織の位置(例えば血管)がどこであるかを把握し難いことがある。さらに、画像における管状組織におけるどの位置に切断面が存在するかは、更に把握し難くなる。よって、画像において結紮対象の組織の視認が困難である。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みてされたものであって、結紮対象の組織が容易に視認可能となる医用画像処理装置、医用画像処理方法、及び医用画像処理プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、臓器と前記臓器に含まれる管状組織とを可視化する医用画像処理装置であって、前記臓器を含むボリュームデータを取得する機能を有する取得部と、手術において前記臓器を切断すると共に前記管状組織を結紮切離する切断面を前記ボリュームデータに対して設定する機能を有する切断面設定部と、前記臓器と前記管状組織との可視化に関する処理を行う機能を有する可視化処理部と、を備え、前記可視化処理部は、前記ボリュームデータに対して光線減衰を伴うレンダリングを行い、前記切断面によって切断された前記臓器と結紮切離する前記管状組織とを含むレンダリング画像を生成する機能を有し、前記切断面上の前記臓器の輪郭及び前記切断面上の前記管状組織の輪郭が強調された、前記レンダリング画像を含む表示情報を表示部に表示させる機能を有する、医用画像処理装置である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、結紮対象の組織が容易に視認可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態における医用画像処理装置のハードウェア構成例を示すブロック図
【
図2】医用画像処理装置の機能構成例を示すブロック図
【
図3A】従来のレイキャスト画像における結紮切離箇所を説明する図
【
図3B】従来のレイキャスト画像における結紮切離箇所を説明する図
【
図4A】従来の血管付近の断面の第1例を表現した図
【
図4B】従来の血管付近の断面の第2例を表現した図
【
図6A】切除前の肝静脈と門脈とを含むレイキャスト画像の一例を示す図
【
図6B】切除後において肝静脈と門脈との切断面が強調表示されていないレイキャスト画像の一例を示す図
【
図6C】切除後において肝静脈と門脈との切断面が強調表示されたレイキャスト画像の一例を示す図
【
図7A】レンダリング画像における各ボクセル値と血管の切断面の強調表示の第1例を説明する図
【
図7B】レンダリング画像における各ボクセル値と血管の切断面の強調表示の第2例を説明する図
【
図8A】レンダリング画像における各ボクセル値と血管の切断面の強調表示の第3例を説明する図
【
図8B】切断面が血管の走行方向に対して垂直でない場合における強調表示の一例を示す図
【
図9】切断面の強調表示をオフセットして行うことを説明する図
【
図10】サーフェスレンダリング画像における切断面の強調表示の一例を示す図
【
図11】ポリゴンメッシュで表現されたサーフィスレンダリング画像の一例を示す図
【
図12】
図11に示したサーフィスレンダリングの表示例を示す図
【
図13】臓器を切断する切断面の強調表示の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0010】
(本開示の一形態を得るに至った経緯)
図3A及び
図3Bは、従来のレイキャスト画像における結紮切離箇所を説明する図である。結紮切離では、例えば、血管を除いて臓器を切り、血管を結紮し、血管が結紮された状態で血管を切る。
図3Aは、臓器Z1Xを部分切除する切断面F1Xを示す図である。
図3Bは、切断面F1Xよりも矢印αX方向に位置する各ボクセルを基に生成された臓器Z1Xのレイキャスト画像を示す図である。よって、
図3Bでは、臓器Z1X内部が示されている。しかし、レイキャスト画像では陰影が不明瞭になることが多く、
図3Bでは、臓器Z1Xの表面と切断面F1Xの境界が明瞭ではない。また、例えば、
図3Bのレイキャスト画像に含まれる血管K1Xが、結紮切離すべき血管であるか、臓器Z1Xの奥側に折り返しているために結紮切離が不要な血管であるか、区別困難である。さらに、画像におけるノイズや石灰化は、ボクセル値が比較的大きくなるので、画像におけるノイズや石灰化と血管との区別も困難である。なお、血管を残したまま臓器の一部を切り離した後に、血管を結紮してもよい。
【0011】
図4Aは、従来の血管付近の断面の第1例を表現したものである。
図4Aでは、血管K2Xが平面的に表現されているが、実際には3次元空間のボクセルにより表現される(
図4Bも同様)。
図4Aにおいて右側に位置する領域は、マスク領域MR1Xである。
図4Aにおいて左側に位置する領域は、非マスク領域MR2Xである。
図4Aで記載された数値(例えば「0」「100」)は、ボクセル値を示す。
図4Aでは、血管の部分のボクセル値が100であり、血管ではない臓器の部分のボクセル値が0となっている。また、非マスク領域MR2Xが切除領域、マスク領域MR1Xが残存領域を表現している。
【0012】
視線方向(例えば
図4Aの紙面手前左側から奥右側へ向かう方向)を仮想光線の投射方向として、マスクを利用せずに、ボクセル値50以上のボクセルをボリュームレンダリング(例えばレイキャスティング)すると、等高面F3Xが可視化され、血管K2Xが描画される。つまり、
図4Aに示された血管K2Xの全体が可視化される。この場合、血管のどの位置を切除するか不明となる。
【0013】
図4Bは、従来の血管付近の断面の第2例を表現したものである。視線方向(例えば
図4Bの紙面手前左側から奥右側へ向かう方向)を仮想光線の投射方向として、マスクを利用して、ボクセル値50以上のボクセルをボリュームレンダリング(例えばレイキャスティング)すると、マスク領域MR1X内の血管K2Xが描画される。マスク領域MR1と非マスク領域MR2との境界には、切除される血管の先端K2X1が存在する。よって、
図4Bでは、切除された血管K2Xの残存部分が可視化される。また、血管の先端K2X1は、血管K2Xの一部として可視化される。そのため、血管K2Xの先端K2X1は、マスク領域MR1Xと非マスク領域MR2Xとの境界(マスク境界)が可視化されたものか、ボクセル値の等高面F3Xが可視化されたものであるか、判別困難である。また、実際の結紮切離すべき箇所は位置RXであるが、血管K2Xが結紮切離の対象であるか判別困難である。
【0014】
以下の実施形態では、結紮対象の組織が容易に視認可能となる医用画像処理装置、医用画像処理方法、及び医用画像処理プログラムについて説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における医用画像処理装置100の構成例を示すブロック図である。医用画像処理装置100は、ポート110、UI120、ディスプレイ130、プロセッサ140、及びメモリ150を備える。
【0016】
医用画像処理装置100には、CT装置200が接続される。医用画像処理装置100は、CT装置200からボリュームデータを取得し、取得されたボリュームデータに対して処理を行う。医用画像処理装置100は、PCとPCに搭載されたソフトウェアにより構成されてもよい。
【0017】
CT装置200は、被検体へX線を照射し、体内の組織によるX線の吸収の違いを利用して、画像(CT画像)を撮像する。被検体は、生体、人体、動物、等を含んでよい。CT装置200は、被検体内部の任意の箇所の情報を含むボリュームデータを生成する。CT装置200は、CT画像としてのボリュームデータを医用画像処理装置100へ、有線回線又は無線回線を介して送信する。CT画像の撮像には、CT撮像に関する撮像条件や造影剤の投与に関する造影条件が考慮されてよい。なお、造影は、臓器の動脈や静脈に対して行われてよい。造影は、臓器の特性に応じて異なるタイミングで複数回実施されてよい。
【0018】
医用画像処理装置100内のポート110は、通信ポートや外部装置接続ポート、組み込みデバイスへの接続ポートを含み、CT画像から得られたボリュームデータを取得する。取得されたボリュームデータは、直ぐにプロセッサ140に送られて各種処理されてもよいし、メモリ150において保管された後、必要時にプロセッサ140へ送られて各種処理されてもよい。また、ボリュームデータは、記録媒体や記録メディアを介して取得されてもよい。また、ボリュームデータは中間データ、圧縮データやシノグラムの形で取得されてもよい。また、ボリュームデータは医用画像処理装置100に取り付けられたセンサーデバイスからの情報から取得されてもよい。ポート110は、ボリュームデータ等の各種データを取得する取得部として機能する。
【0019】
UI120は、タッチパネル、ポインティングデバイス、キーボード、又はマイクロホンを含んでよい。UI120は、医用画像処理装置100のユーザから、任意の入力操作を受け付ける。ユーザは、医師、放射線技師、学生、又はその他医療従事者(Paramedic Staff)を含んでよい。
【0020】
UI120は、各種操作を受け付ける。例えば、ボリュームデータやボリュームデータに基づく画像(例えば後述する3次元画像、2次元画像)における、関心領域(ROI)の指定や輝度条件の設定等の操作を受け付ける。関心領域は、各種組織(例えば、血管、気管支、臓器、器官、骨、脳)の領域を含んでよい。組織は、病変組織、正常組織、腫瘍組織、等を含んでよい。
【0021】
ディスプレイ130は、例えばLCDを含んでよく、各種情報を表示する。各種情報は、ボリュームデータから得られる3次元画像や2次元画像を含んでよい。3次元画像は、ボリュームレンダリング画像、サーフェスレンダリング画像、仮想内視鏡画像、仮想超音波画像、CPR画像、等を含んでもよい。ボリュームレンダリング画像は、レイサム(RaySum)画像、MIP画像、MinIP画像、平均値画像、又はレイキャスト画像を含んでもよい。2次元画像は、アキシャル画像、サジタル画像、コロナル画像、MPR画像、等を含んでよい。
【0022】
メモリ150は、各種ROMやRAMの一次記憶装置を含む。メモリ150は、HDDやSSDの二次記憶装置を含んでもよい。メモリ150は、USBメモリやSDカードの三次記憶装置を含んでもよい。メモリ150は、各種情報やプログラムを記憶する。各種情報は、ポート110により取得されたボリュームデータ、プロセッサ140により生成された画像、プロセッサ140により設定された設定情報、各種プログラムを含んでもよい。メモリ150は、プログラムが記録される非一過性の記録媒体の一例である。
【0023】
プロセッサ140は、CPU、DSP、又はGPUを含んでもよい。プロセッサ140は、メモリ150に記憶された医用画像処理プログラムを実行することにより、各種処理や制御を行う処理部160として機能する。
【0024】
図2は、処理部160の機能構成例を示すブロック図である。
【0025】
処理部160は、ボリュームデータにおいて組織を切断する切断面を設定する切断面設定部166と、組織の可視化に関する処理を行う可視化処理部167と、を備える。切断面設定部166は、領域処理部161を備える。可視化処理部167は、画像生成部162、強調情報生成部163、及び表示制御部164を備える。処理部160は、医用画像処理装置100の各部を統括する。処理部160は、組織の可視化に関する処理を行う。なお、処理部160に含まれる各部は、1つのハードウェアにより異なる機能として実現されてもよいし、複数のハードウェアにより異なる機能として実現されてもよい。また、処理部160に含まれる各部は、専用のハードウェア部品により実現されてもよい。
【0026】
領域処理部161は、例えばポート110を介して、被検体のボリュームデータを取得する。領域処理部161は、ボリュームデータに含まれる任意の領域を抽出する。領域処理部161は、例えばボリュームデータのボクセル値に基づいて、自動で関心領域を指定し、関心領域を抽出してよい。領域処理部161は、例えばUI120を介して、手動で関心領域を指定し、関心領域を抽出してよい。関心領域は、肺、肝臓、気管支、肺動脈、肺静脈、門脈、肝静脈、等の領域を含んでよい。関心領域は、被検体から切除する臓器の少なくとも一部であってよい。
【0027】
領域処理部161は、被検体の臓器を区域によって分割してよい。区域は、解剖学的な区域と少なくとも大まかに一致してよい。臓器は、肺、肝臓、その他の臓器を含んでよい。区域は、複数の区域の組み合わせの少なくとも一部の領域であってもよい。区域は、区域よりも細かな範囲の単位である亜区域、亜々区域、等を含んでよい。
【0028】
領域処理部161は、組織を切断する切断面を設定してよい。この場合、UI120を介して切断面を手動で設定してもよいし、演算結果を基に切断面を自動で設定してもよい。例えば、肺の区域分割の際には、領域処理部161が肺の複数の区域を抽出し、複数の区域間の境界面を切断面として設定してよい。切断面は、平面でも曲面でもよい。切断面は、結紮切離箇所(結紮切離面)とおよそ一致してよい。
【0029】
画像生成部162は、各種画像を生成する。画像生成部162は、取得されたボリュームデータの少なくとも一部(例えば抽出された領域、区域のボリュームデータ)に基づいて、3次元画像や2次元画像を生成する。画像生成部162は、光線減衰を伴うレンダリング(例えばレイキャスティング、サーフィスレンダリング)を行って、画像を生成してよい。画像生成部162は、マスクを利用して画像を生成してよい。マスクを利用すると、マスク領域のボクセルに限定して画像内に描画され、非マスク領域のボクセルは、画像内に描画されない。また、マスクは領域毎に複数利用することが出来る。マスクを利用した画像生成については、例えば参考特許文献1に開示されている。
(参考特許文献1:特許第4188900号公報)
【0030】
強調情報生成部163は、切断面上の組織の輪郭や組織の切断面自体(輪郭の内側)を強調するための強調情報を生成する。強調情報は、切断面上の組織の輪郭を強調した輪郭強調情報を少なくとも含んでいる。
【0031】
輪郭強調情報は、切断面上の管状組織の輪郭に概ね沿って形成されるリング、等であってよい。例えば、輪郭強調情報は、切断面上の組織の輪郭のボクセルのボクセル値を、取得した実際の値より大きくした情報を含んでよい。輪郭強調情報は、切断面上の組織の輪郭線を太くした情報を含んでよい。輪郭強調情報は、輪郭線のボクセルをこの輪郭線に隣接する他ボクセルとは異なる色とした情報を含んでよい。
【0032】
強調情報は、切断面の輪郭より内部を強調した面強調情報を含んでよい。面強調情報は、切断面上の輪郭を示すリングの内部における模様、パターン、色、塗りつぶし、等であってよい。例えば、面強調情報は、切断面の面上のボクセルのボクセル値を、取得した実際の値より大きくした情報含んでよい。面強調情報は、切断面のボクセルの色を切断面に隣接する他ボクセルとは異なる色とした情報を含んでよい。
【0033】
切断面を有する組織は、結紮切離される組織でよい。この組織は、例えば管状組織でよい。管状組織は、血管、リンパ管、気管支、胆管、等を含んでよい。結紮切離は、臓器の腫瘍摘出、臓器の区域切除、臓器の楔形切除、等に伴って実施されてよい。また、管状組織は、臓器(例えば肺、肝臓)に含まれる組織でよい。強調情報は、管状組織の方向が可視化される情報でよい。強調情報は、管状組織のパスを基に生成されてよい。強調情報は、切断面からオフセットされて表示されてよい。
【0034】
表示制御部164は、各種データ、情報、画像をディスプレイ130に表示させる。画像は、画像生成部162で生成された画像を含む。また、表示制御部164は、レンダリング画像に強調情報を重畳して表示させる。
【0035】
図5は、結紮切離箇所を強調することを説明する図である。
図5では、気管支11と肺動脈12と肺静脈13とを含むレイキャスト画像GZ1が示されている。
図5では、気管支11と肺動脈12と肺静脈13とは、切断面F1を有する。気管支11と肺動脈12と肺静脈13は、ボリュームレンダリング(例えばレイキャスティング)で可視化されてよい。切断面F1は、サーフィスレンダリングで可視化されてよい。切断面F1は、結紮切離箇所と略一致してよい。
【0036】
切断面F1は、強調情報により強調表示される。強調情報は、輪郭強調情報M1及び面強調情報M2の少なくとも一方を含む。表示制御部164は、強調情報を基に、切断面F1上の可視化されるボクセルと、切断面F1に隣接する可視化されないボクセルとの、ボクセルの境界を強調して表示させる。ユーザは、この切断面F1の強調表示により、切断面F1に係るボクセルの境界を視認し易くなる。また、表示制御部164は、切断面F1上の可視化されるボクセルと、切断面F1に隣接する可視化されないボクセルとを、異なる表示態様(例えば異なる色)を用いるなどして、区別して表示させてよい。
【0037】
図6A、
図6B及び
図6Cは、切除前後のレンダリング画像の一例を示す図である。
図6Aは、切除前の肝静脈21と門脈22とを含むレイキャスト画像GZ21を示す。
図6Bは、切除後において肝静脈21と門脈22との切断面F1が強調表示されていないレイキャスト画像GZ22を示す。
図6Cは、切除後において肝静脈21と門脈22との切断面F1が強調情報を用いて強調表示されたレイキャスト画像GZ23を示す。
図6B及び
図6Cを比較すると、強調情報としての輪郭強調情報M1及び面強調情報M2により、単に途切れている血管(ここでは肝静脈21、門脈22)と、切断面F1で切断されている血管と、を区別し易いことが理解できる。よって、複雑に絡み合った肝静脈21と門脈22とが存在する部分を区域分割する場合でも、切断すべき箇所を明確に認識可能となる。例えば、切断面を区域分割の分割面に一致させるようにすることで、区域切除を行う手術時における細かな血管を結紮すべき箇所を視認し易くできる。
【0038】
図7Aは、レンダリング画像における各ボクセル値と血管K1の切断面F1の強調表示の第1例を示す図である。
図7Aでは、輪郭強調情報M1を用いて強調表示される。
図7Aでは、血管K1が平面的に表現されているが、実際には3次元空間のボクセルにより表現される(
図7B、
図8Aも同様)。また、輪郭強調情報M1は、3次元空間で環状の閉曲線で表現される。
図7Aにおいて右側に位置する領域は、マスク領域MR1である。
図7Aにおいてに左側に位置する領域は、非マスク領域MR2である。
図7Aで記載された数値(例えば「0」「100」)は、ボクセル値を示す。
図7Aでは、血管の部分のボクセル値が100であり、血管ではない臓器の部分のボクセル値が値0となっている。
【0039】
強調情報生成部163は、マスク領域MR1と非マスク領域MR2との境界面(マスク境界面F1A)と、ボクセル値0と100の境界を示す等高面F1Bと、の交点c1を算出する。この交点c1は、切断面F1上の組織(ここでは血管K1)の輪郭が
図7Aの面に投影された2点と一致する。組織の輪郭は、
図7Aの平面では2つの交点c1で示されるが、3次元のボリュームデータ上では、マスク境界面F1Aと等高面F1Bとの交線によって示される。この交線は、環状であり、設定された切断面F1上の組織の輪郭と一致する。なお、マスク境界面F1Aに対応して切断面F1が設定されるが、
図7Aでは切断面F1自体は可視化されていない。
【0040】
図7Bは、レンダリング画像における各ボクセル値と血管の切断面F1の強調表示の第2例を示す図である。
図7Bでは、輪郭強調情報M1及び面強調情報M2を用いて強調表示される。
図7Bでは、
図7Aと同様にマスク領域MR1、非マスク領域MR2、各ボクセルのボクセル値が示されている。交点c1により形成される環状の閉曲線の内に形成される面が、血管の切断面F1を表現する。また、輪郭強調情報M1は、3次元空間で環状の閉曲線に表現される。面強調情報M2は、平面でも曲面でもよい。表示制御部164は、切断面F1による面強調情報M2を、等高面F1Bとは異なる表示態様(例えば異なる色、パターン、線種)で強調表示させてよい。
【0041】
図8Aは、レンダリング画像における各ボクセル値と血管の切断面F1の強調表示の第3例を示す図である。
図8Aでは、
図7A及び
図7Bと同様に、マスク領域MR1、非マスク領域MR2、各ボクセルのボクセル値が示されている。
図8Aでは、血管K1の中心パスps1を加味して強調表示される。領域処理部161は、血管K1の領域を抽出し、血管K1の中心パスps1を算出してよい。強調情報生成部163は、中心パスps1とマスク境界面F1Aとの交点c2を中心として、切断面F1の輪郭を示すリングRGを生成する。表示制御部164は、レンダリング画像に輪郭強調情報M1(例えばリングRG)や面強調情報M2を重畳して、表示させる。リングRGは、輪郭強調情報M1の一例である。
【0042】
リングRGの向きは、調整可能である。例えば、強調情報生成部163は、血管K1の中心パスps1の方向を基に、リングRGの向きを決定してよい。この場合、交点c2の周辺の4×4×4=64個のボクセルのボクセル値を基に、リングRGの向きを決定してよい。リングRGの向きを調整することで、切断面F1が血管K1の走行方向(中心psパスが延びる方向)に対して垂直でない状態で、リングRGによって血管K1の走行方向に対して垂直に輪郭強調情報M1や面強調情報M2を用いた強調表示が実施できる(
図8B参照)。また、面強調情報M2は、リングRGの内面を等高面F1Bとは異なる表示態様(例えば異なる色、パターン、線種)で表示させることによって、強調表示されてよい。
【0043】
図9は、切断面F1の強調表示をオフセットして行うことを説明する図である。
図9では、血管K1が枝E1と枝E2に分岐している。切断面F1は、枝E1及び枝E2の双方を通り、枝E2に沿って設定されている。この場合、表示制御部164は、切断面F1に沿って延びる枝E2にリングRGを表示させずに、切断面F1に沿わずに延びる枝E1にリングRGを表示させてよい。この場合、表示制御部164は、切断面F1からオフセットされたオフセット面F2を設定してよい。オフセット面F2は、切断面F1と平行でも平行でなくてもよい。切断面F1及びオフセット面F2の双方を通過した血管1の枝E1の輪郭に、リングRGを表示させてよい。リングRGが描画される位置は、オフセット面F2を通る位置でも、オフセット面F2とは異なる位置でもよい。リングRGの向きは、切断面F1と平行でも平行でなくてもよい。
【0044】
なお、切断面F1とリングRGが表示される位置とのオフセットは、
図7A,
図7B,
図8Aの場合にも適用できる。例えば、
図7A,
図7B,
図8Aにおいて、マスク境界面F1Aが血管K1に沿って、図面左右方向に移動する(オフセットする)とする。この場合、表示制御部164は、オフセットされていないマスク境界面(切断面F1に対応するマスク境界面)とオフセットされたマスク境界面との双方を通る血管又は血管の枝について、切断面F1からオフセットされた任意の位置(例えばオフセットされたマスク境界面の位置)に、リングRGを表示させてよい。
【0045】
また、表示制御部164は、血管K1の切断面F1での断面に生じる図形に対して主成分分析してよい。主成分分析の結果、投影された図形が所定基準よりも円形に近い場合には、リングRGを表示させ、投影された図形が所定基準よりも円形でなく扁平な形状である場合には、リングRGを表示させなくてよい。また、投影された図形が所定基準よりも円形でなく扁平な形状である場合には、強調表示をオフセットしてよい。
【0046】
図10は、サーフェスレンダリング画像における切断面F1の強調表示の一例を示す図である。
図10では、気管支31と肺動脈32と肺静脈33とを含むサーフェスレンダリング画像GZ3が示されている。
図10では、切断面F1は、結紮切離箇所と同じ位置に設定される。肺動脈32及び肺静脈33には、切断面F1が存在し、切断面F1に対応して輪郭強調情報M1及び面強調情報M2が表示されている。なお、
図10では、切断面F1と無関係に途切れている肺静脈33の一部M3がうつっている。途切れている肺静脈33の一部M3は強調されていないので、そのように撮影された(肺静脈33が途切れている)とユーザは把握出来る。
【0047】
図11は、ポリゴンメッシュで表現されたサーフィスレンダリング画像GZ4の一例を示す図である。サーフィスレンダリング画像GZ4には、ポリゴンメッシュで表現された血管K2が含まれる。血管K2は、2つの枝を有し、それぞれ切断面F1を有する。この場合、画像生成部162は、切断面F1に沿ったポリゴンを分割し新たなポリゴンPGを形成する。ポリゴンメッシュを考慮したサーフィスレンダリング画像GZ4を用いて、各種画像処理が行われる。
【0048】
図12は、
図11に示したサーフィスレンダリング画像GZ5の表示例を示す図である。サーフィスレンダリング画像GZ5の表示では、通常、ポリゴンメッシュのワイヤーフレームは描画されない。一方、表示制御部164は、切断面F1のワイヤーフレームのみを描画し、表示させる。ここでは、切断面F1のワイヤーフレームが、輪郭強調情報M1となる。これにより、切断面F1上の血管K2が輪郭強調される。表示制御部164は、全てのワイヤーフレームを表示し、切断面F1のワイヤーフレームの色や太さを変更することによって輪郭強調してもよい。
【0049】
図13は、臓器Z1を切断する切断面F3の強調表示の一例を示す図である。強調情報生成部163は、切断面F3上の臓器Z1そのものを強調するための強調情報を生成してよい。この強調情報は、切断面F3上の臓器Z1の輪郭を強調した輪郭強調情報M11を少なくとも含んでいる。また、強調情報は、切断面F3の輪郭より内部を強調した面強調情報M12を含んでよい。
図13では、輪郭強調情報M1,M11を用いて、切断面F3上の臓器Z1の輪郭及び臓器Z1内に存在する1つ以上の血管K3の輪郭を強調して表示している。レイキャスト画像では、臓器Z1のどの部分を切断したかを把握し難いことがある。これに対し、切断面F3に係る臓器Z1と血管K3の強調表示により、臓器Z1のどの部分を切断したか、臓器Z1内の血管のどの部分を切断したかを、ユーザが同時に把握し易くなる。また、臓器Z1に対しては輪郭強調情報M11を表示し、血管K3に対しては輪郭強調情報M1、面強調情報M2を表示してよい。これにより、臓器の切断面と臓器の切断面上で結紮切離する箇所をユーザが同時に把握し易くなる。
図13では、臓器Z1に係る切断面F3に血管K3に係る切断面F1が含まれている。
【0050】
このように、医用画像処理装置100は、切断面F1を横断する血管について、結紮切離予定箇所において強調表示できる。これにより、ユーザは、手術計画時に、結紮切離する予定の血管を把握し易くなる。また、通常は把握し難い臓器内部の血管についても、ユーザが把握し易くなる。
【0051】
また、マスクを利用して切断面F1で組織を実際に切断しても、ボリュームデータを取得した時点では、組織は切断されていないので、切断されていない組織のボリュームデータが存在する。表示制御部164は、非マスク領域MR2を非表示にすることで、組織が切断されたように表示できる。マスクすると、マスク境界面に切断面F1があるのか単に組織が当初よりそのように撮影されたのか判別し難いことがあるが、切断面F1にリング等の強調情報により強調表示することで、切断面F1の位置が結紮切離箇所であることが明確となる。
【0052】
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0053】
例えば、血管の輪郭を算出するためのボクセル値の閾値th2(例えば等高面F1Bを導出するためのボクセル値50)と、ボリュームレンダリングにおける閾値th3(例えばレイキャスティングで用いる画素を不透明にするための閾値やMarching Cubes 法などでサーフィスを生成するための閾値)とは、一致しなくてよい。
【0054】
また、領域処理部161は、周囲のボクセル値との比較により閾値th2を用いて血管の輪郭を算出するのではなく、仮想光線の進行に伴う光線減衰量をシミュレーションして算出し、光線減衰量を基に血管の輪郭を算出してもよい。例えば、視点側から見て最初に光線減衰量が閾値th4以上となった位置を、血管の表面(輪郭に相当)としてよい。なお、各閾値は、固定値であっても可変値であってもよい。
【0055】
また、切断面F1は、領域処理部161によるマスク以外の方法で表現されてもよい。例えば、切断面設定部166は、切断面F1をボリュームデータに対する相対座標系で設定し、設定された切断面F1よりも視点側から見て奥側のボクセルに限定し、このボクセルのボクセル値を用いてボリュームレンダリングを生成してよい。この場合、切断面F1上に不透明とするボクセルがあると、それらのボクセルが可視化される。これにより、マスクを利用せずに、切断面F1を視認可能となる。
【0056】
また、領域処理部161は、臓器Z1の形状を表すマスク、血管K1,K2,K3の形状を表すマスク、を基に、切断面F1を表すマスク、をそれぞれ作成してよい。領域処理部161は、切断面F1を表すマスクの表面と、臓器Z1の形状を表すマスクと、血管K1,K2,K3の形状を表すマスクと、の表面の交わりを基に、強調情報を生成してよい。これにより、例えば、単に単一のマスクとして領域抽出された臓器や血管を基に切断面を強調する場合と比較すると、領域各マスクの作成の仕方に応じて、柔軟に結紮切離箇所が可視化できる。また、臓器Z1、血管K1,K2,K3のそれぞれに作成する輪郭について、それぞれオフセットの距離が異なってもよい。これによって、臓器の切断面F1と、その臓器に含まれる血管K1,K2,K3の結紮切離する箇所にずれが生じる様子をシミュレートできる。なお、血管K1,K2,K3は、血管K1、K2、K3のうちの少なくとも1つである。
【0057】
また、切断面F1は、臓器を完全に切断する断面でなくてよく、臓器の一部に切り込みを入れるための断面であってもよい。これにより、切断面F1の強調表示により、術中の途中状態を表現できる。また、肝細胞の増殖を期待して切れ込みを入れる場合にも、切断面F1の強調表示を適用できる。この場合、処理部160は、臓器の一部に切り込みをいれた後に一片を引っ張る肝臓の変形を加味して変形シミュレーションを行い、変形された切断面F1の強調表示を行ってよい。
【0058】
また、切断面F1の強調表示は、切断面F1からオフセットされて行われてよい。表示制御部164は、例えば、血管パスや切断面F1に対して、視線方向手前においてリングRG等を用いて強調表示させてよい。これは、手術において臓器を切開し、血管が露出したところで血管状の適切な位置で結紮切離するので、実際の結紮切離箇所が切断面F1の視線方向手前に位置したり、レンダリング画像とともに強調表示する際に強調表示が見やすくなったりすることがあるためである。
【0059】
また、レンダリング画像は、ボリュームレンダリングにより得られる画像部分とサーフィスレンダリングにより得られる画像部分との双方を含んでよい。例えば、臓器そのものの輪郭はサーフィスレンダリングにより可視化され、血管はボリュームレンダリングにより可視化されてよい。例えば、臓器の区域切除のシミュレートを行う場合に、臓器の区域はサーフィスレンダリングにより可視化され、血管はボリュームレンダリングにより可視化されてよい。
【0060】
また、ボリュームレンダリングには、レイキャスト法の亜種やレイキャスト法以外のレンダリング方法が含まれてよい。ボリュームレンダリングでは、光線減衰を伴うレンダリングに限定してよい。このレンダリングは、Stochastic Ratcast、Cinematic Volume Rendering Technique、ボリュームデータに対するレイトレーシング、等を含んでよい。また、レイキャスト法とMIP法を複合したレンダリングの場合、切断面F1が強調表示される組織は、レイキャスト法で可視化され、他の器官がMIP法で可視化されてよい。よって、MIP法で可視化された臓器に強調情報が重畳表示されていてもよい。また、レンダリングには、サーフィスレンダリングが含まれてよい。サーフィスレンダリングでは、切断面F1にレンダリングされるサーフィスが張られても張られなくてもよい。
【0061】
また、表示制御部164は、レンダリング後にレンダリング画像に強調情報を付すのではなく、レンダリングの段階で強調情報が付されているようにしてもよい。例えば、画像生成部162は、サーフィスレンダリングする場合、レンダリングの段階で輪郭を強調するよるためのレンダリング(輪郭強調レンダリング)を行うよう設定し、輪郭強調レンダリングを行ってよい。この輪郭の強調に、切断面上の組織の輪郭の強調が含まれてよい。なお、これは、サーフィスレンダリングに限らず、ボリュームレンダリングに適用されてもよい。
【0062】
また、医用画像処理装置100は、少なくともプロセッサ140及びメモリ150を備えてよい。ポート110、UI120、及びディスプレイ130は、医用画像処理装置100に対して外付けであってもよい。
【0063】
また、撮像されたCT画像としてのボリュームデータは、CT装置200から医用画像処理装置100へ送信されることを例示した。この代わりに、ボリュームデータが一旦蓄積されるように、ネットワーク上のサーバ(例えば画像データサーバ(PACS)(不図示))等へ送信され、保管されてもよい。この場合、必要時に医用画像処理装置100のポート110が、ボリュームデータを、有線回線又は無線回線を介してサーバ等から取得してもよいし、任意の記憶媒体(不図示)を介して取得してもよい。
【0064】
また、撮像されたCT画像としてのボリュームデータは、CT装置200から医用画像処理装置100へポート110を経由して送信されることを例示した。これは、実質的にCT装置200と医用画像処理装置100とを併せて一製品として成立している場合も含まれるものとする。また、医用画像処理装置100がCT装置200のコンソールとして扱われている場合も含む。
【0065】
また、CT装置200により画像を撮像し、被検体内部の情報を含むボリュームデータを生成することを例示したが、他の装置により画像を撮像し、ボリュームデータを生成してもよい。他の装置は、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、血管造影装置(Angiography装置)、又はその他のモダリティ装置を含む。また、PET装置は、他のモダリティ装置と組み合わせて用いられてもよい。
【0066】
また、医用画像処理装置100における動作が規定された医用画像処理方法として表現可能である。また、コンピュータに医用画像処理方法の各ステップを実行させるためのプログラムとして表現可能である。
【0067】
(上記実施形態の概要)
上記実施形態の一態様は、組織を可視化する医用画像処理装置100であって、組織を含むボリュームデータを取得する機能を有する取得部(例えばポート110)と、ボリュームデータにおいて組織を切断する切断面を設定する切断面設定部166と、組織の可視化に関する処理を行う機能を有する可視化処理部167と、を備えてよい。可視化処理部167は、ボリュームデータに対して光線減衰を伴うレンダリングを行い、切断面によって切断された組織を含むレンダリング画像を生成する機能を有してよい。可視化処理部167は、切断面上の組織の輪郭が強調された、レンダリング画像を含む表示情報を表示部(例えばディスプレイ130)に表示させる機能を有してよい。
【0068】
これにより、医用画像処理装置100は、組織全体における切断面がどこであるか、強調表示を確認することで容易に識別可能である。強調表示では、例えば、血管の枝が切断面の先にも延びているが、切断面よりも先端側は切除することを明示する印(強調情報の一例)を付すことができる。また、マスクを利用しない場合でも、ユーザは、強調表示を確認することで、組織のどの位置を切除するかを識別可能である。また、マスクを利用する場合でも、ユーザは、切断面の輪郭の強調表示の有無により、組織における切断面より根本側(非末端側)が可視化されたものか、ボクセル値の等高面が可視化されたものであるか、容易に判別できる。これによって、術前計画及び術中ナビゲーションにおいて、切除及び結紮切離する箇所をユーザが適切に把握出来るようになる。
【0069】
また、切断面設定部166は、ボリュームデータに含まれる複数のボクセルのうち、レンダリング対象のボクセルを含むマスク領域MR1と、レンダリング対象外のボクセルを含む非マスク領域MR2と、の境界であるマスク境界面F1Aを基に、切断面F1を設定する機能を有してよい。可視化処理部167は、非マスク領域MR2の各ボクセルのボクセル値を除外して、マスク領域MR1の各ボクセルのボクセル値を基に、レンダリング画像を生成して表示させる機能を有してよい。
【0070】
これにより、切断面よりも先端側の切除対象の組織の部分が非表示となる。よって、ユーザは、切断面によって組織が切断されることが、より直感的に理解できる。
【0071】
また、組織は、管状組織(例えば血管K1)でよい。これにより、ユーザは、臓器より小型であることが多い管状組織の切除箇所を視認し易くなる。
また、管状組織は、臓器Z1に含まれてよい。これにより、ユーザは、外観から確認できない臓器内部の管状組織の切断箇所を視認できる。
また、処理部160は、管状組織の方向を示して、レンダリング画像を表示させてよい。これにより、ユーザは、例えば管状組織をパスに対して斜めに切断する場合でも、管状組織の方向を加味して切除箇所を確認でき、実際の組織の切除をし易くなる。
【0072】
また、可視化処理部167は、切断面F1上の管状組織の輪郭を切断面F1からオフセットして強調して、レンダリング画像を表示させてよい。これにより、医用画像処理装置100は、医用画像処理装置100で設定した切断面F1と実際に手術で切断するであろう箇所が相違する場合に、切除箇所に対応する組織の箇所に強調情報を明示でき、また迅速に医用画像処理装置100で切断面F1を設定できる。また、臓器の切断面F3と、その臓器に含まれる管状組織の結紮切離する箇所にずれが生じる様子をシミュレートできる。
【0073】
また、組織は、臓器でよい。これにより、レンダリング画像において臓器を把握し辛い場合でも、臓器の輪郭が明示されるので、ユーザは、臓器を視認し易くなる。
また、可視化処理部167は、管状組織の切断面の強調に加え、その管状組織を含む臓器の切断面を強調して、レンダリング画像を表示させてよい。これにより、臓器の切断面F3と臓器の切断面F3上で結紮切離する箇所をユーザが同時に把握し易くなる。
また、可視化処理部167は、切断面における輪郭の内部を強調して、レンダリング画像を表示させてもよい。これにより、組織の切断面をユーザが適切に把握しやすくなる。
また、レンダリング画像は、ボリュームレンダリング画像でよい。ボリュームレンダリング画像は、3次元空間の組織の内部の状態を2次元平面で可視化するので、3次元空間における特定の位置を把握し難いことがあるが、上記の強調表示により、切除箇所を視認し易くできる。
【0074】
上記実施形態の一態様は、組織を可視化する医用画像処理方法であって、組織を含むボリュームデータを取得するステップと、ボリュームデータにおいて織を切断する切断面F1を設定するステップと、ボリュームデータに対して光線減衰を伴うレンダリングを行い、切断面によって切断された組織を含むレンダリング画像を生成するステップと、切断面上の組織の輪郭が強調された、レンダリング画像を含む表示情報を表示部に表示させるステップと、を有する医用画像処理方法でよい。
【0075】
本実施形態の一態様は、上記の医用画像処理方法をコンピュータに実行させるための医用画像処理プログラムでよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本開示は、結紮対象の組織が容易に視認可能となる医用画像処理装置、医用画像処理方法、及び医用画像処理プログラム等に有用である。
【符号の説明】
【0077】
100 医用画像処理装置
110 ポート
120 ユーザインタフェース(UI)
130 ディスプレイ
140 プロセッサ
150 メモリ
160 処理部
161 領域処理部
162 画像生成部
163 強調情報生成部
164 表示制御部
166 切断面設定部
167 可視化処理部
200 CT装置
C1 交点
F1 切断面
F1A マスク境界面
F1B 等高面
K1,K2 血管
M1 輪郭強調情報
M2 面強調情報
MR1 マスク領域
MR2 非マスク領域
ps1 中心パス
RG リング