(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065494
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】撮影装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20230502BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20230502BHJP
B60R 1/20 20220101ALI20230502BHJP
B60R 1/24 20220101ALI20230502BHJP
【FI】
H04N7/18 J
H04N23/60 500
B60R1/20 100
B60R1/24
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025103
(22)【出願日】2023-02-21
(62)【分割の表示】P 2021047069の分割
【原出願日】2015-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】国丸 敬高
(72)【発明者】
【氏名】中根 昌夫
(57)【要約】
【課題】撮影方向が変更された場合であっても、カメラの角度調整をすることなく適切な範囲を映した画像を取得することが可能な撮影装置を提供する。
【解決手段】ドライブレコーダ1は、車両の前方風景を撮影する前方撮影カメラ4と、制御部19とを備える。制御部19は、前方撮影カメラ4により撮影された前方画像Imの一部の範囲を切り出し画像Imcとして切り出す。制御部19は、前方撮影カメラ4の撮影方向が変化した可能性の有無を判定する。そして、制御部19は、前方撮影カメラ4の撮影方向が変化した可能性があると判定した際に、当該可能性があると判定された後の切り出し画像Imc中の特徴物の位置が、その可能性があると判定される前の切り出し画像Imc中の位置と略一致するように、切り出し画像Imcの切り出し位置を決定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される撮影装置であって、
前記車両の前方を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段により撮影された画像の一部の範囲を切り出し画像として切り出す画像制御手段と、
前記撮影手段の撮影方向の変化可能性の有無を判定する判定手段と、
を備え、
前記画像制御手段は、前記判定手段が前記変化可能性有りと判定後の前記切り出し画像中の第1対象物の位置が、前記判定手段が前記変化可能性有りと判定前の前記切り出し画像中の前記第1対象物の位置と略一致するように、切り出す範囲を調整することを特徴とする撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両から撮影した前方画像を切り出して表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ルームミラー等に取り付け可能なドライブレコーダが知られている。例えば、特許文献1には、ハーフミラー、液晶ディスプレイ、及び車両前方を撮影するカメラユニットを備え、ルームミラーに対して取り付け自在なドライブレコーダが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、運転者が変わる等の理由によりルームミラーの角度が変更されると、カメラの撮影方向も変化してしまうため、ルームミラーの角度調整を行った場合には、カメラの角度についても調整する必要がある。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、撮影方向が変更された場合であっても、カメラの角度調整をすることなく適切な範囲を映した画像を取得することが可能な撮影装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項に記載の発明は、車両に搭載されて前方風景を撮影する撮影装置であって、前記前方風景を撮影する撮影手段と、前記撮影手段により撮影された画像の一部の範囲を切り出し画像として切り出す画像制御手段と、前記撮影手段の撮影方向が変化した可能性の有無を判定する判定手段と、を備え、前記画像制御手段は、前記判定手段により前記撮影手段の撮影方向が変化した可能性があると判定された際に、前記可能性があると判定された後の切り出し画像中の対象物の位置が、前記可能性があると判定される前の切り出し画像中の位置と略一致するように、前記可能性があると判定された後の切り出し画像を切り出すことを特徴とする。
【0007】
また、請求項に記載の発明は、車両に搭載されて前方風景を撮影する撮影手段を有する撮影装置が実行する制御方法であって、前記撮影手段により撮影された画像の一部の範囲を切り出し画像として切り出す画像制御工程と、前記撮影手段の撮影方向が変化した可能性の有無を判定する判定工程と、を有し、前記画像制御工程は、前記判定工程により前記撮影手段の撮影方向が変化した可能性があると判定された際に、前記可能性があると判定された後の切り出し画像中の対象物の位置が、前記可能性があると判定される前の切り出し画像中の位置と略一致するように、前記可能性があると判定された後の切り出し画像を切り出すことを特徴とする。
【0008】
また、請求項に記載の発明は、車両に搭載されて前方風景を撮影する撮影手段と電気的に接続するコンピュータが実行するプログラムであって、前記撮影手段により撮影された画像の一部の範囲を切り出し画像として切り出す画像制御手段と、前記撮影手段の撮影方向が変化した可能性の有無を判定する判定手段として前記コンピュータを機能させ、前記画像制御手段は、前記判定手段により前記撮影手段の撮影方向が変化した可能性があると判定された際に、前記可能性があると判定された後の切り出し画像中の対象物の位置が、前記可能性があると判定される前の切り出し画像中の位置と略一致するように、前記可能性があると判定された後の切り出し画像を切り出すことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】ドライブレコーダの背面図及び上面図である。
【
図4】前方画像の切り出し位置の調整処理の概要を示すフローチャートである。
【
図5】切り出し位置調整処理の手順を示すフローチャートである。
【
図6】前方画像の切り出し位置の調整方法の具体例を示す。
【
図7】変形例に係る前方画像の切り出し位置の調整処理を示すフローチャートである。
【
図8】変形例に係るドライブレコーダの正面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の1つの好適な実施形態では、車両に搭載されて前方風景を撮影する撮影装置であって、前記前方風景を撮影する撮影手段と、前記撮影手段により撮影された画像の一部の範囲を切り出し画像として切り出す画像制御手段と、前記撮影手段の撮影方向が変化した可能性の有無を判定する判定手段と、を備え、前記画像制御手段は、前記判定手段により前記撮影手段の撮影方向が変化した可能性があると判定された際に、前記可能性があると判定された後の切り出し画像中の対象物の位置が、前記可能性があると判定される前の切り出し画像中の位置と略一致するように、前記可能性があると判定された後の切り出し画像を切り出す。
【0011】
上記撮影装置は、車両の前方風景を撮影する撮影手段と、画像制御手段と、判定手段とを備える。画像制御手段は、撮影手段により撮影された画像の一部の範囲を切り出し画像として切り出す。判定手段は、撮影手段の撮影方向が変化した可能性の有無を判定する。画像制御手段は、判定手段により撮影手段の撮影方向が変化した可能性があると判定された際に、当該可能性があると判定された後の切り出し画像中の対象物の位置が、その可能性があると判定される前の切り出し画像中の位置と略一致するように、撮影方向変化の可能性があると判定された後の切り出し画像を切り出す。このようにすることで、撮影装置は、撮影手段の角度調整をすることなく、撮影手段の撮影方向が変化する前と同一の表示範囲となる画像を取得することができる。また、撮影装置は、撮影手段の撮影方向が変化した可能性がある場合にのみ切り出し位置を変更することで、通常時の処理負荷を好適に低減させることができる。
【0012】
上記撮影装置の一態様では、前記画像制御手段は、前記判定手段により前記撮影手段の撮影方向が変化した可能性があると判定され、かつ前記車両が停車中である際に、前記可能性があると判定された後の切り出し画像中の対象物の位置が、前記可能性があると判定される前の切り出し画像中の位置と略一致するように、前記可能性があると判定された後の切り出し画像を切り出す。この態様により、撮影装置は、撮影手段の撮影方向が変化する前後での撮影手段の画像の対応関係を好適に把握して切り出し位置を調整することができる。
【0013】
上記撮影装置の他の一態様では、撮影装置は、前記撮影装置への接触を検出する接触センサにより前記撮影装置への接触が検出された場合に、前記撮影手段の撮影方向が変化した可能性があると判定する。この態様により、撮影装置は、撮影手段の撮影方向が変化した可能性の有無を好適に判定することができる。
【0014】
上記撮影装置の他の一態様では、撮影装置は、前記撮影装置の状態を作動状態と非作動状態とで切り換える切り換え手段をさらに備え、前記判定手段は、前記切り換え手段により前記撮影装置の状態が作動状態から非作動状態を経て再び作動状態に切り換えられた場合に、前記撮影手段の撮影方向が変化した可能性があると判定する。この態様によっても、撮影装置は、撮影手段の撮影方向が変化した可能性の有無を好適に判定することができる。
【0015】
上記撮影装置の他の一態様では、撮影装置は、前記車両の運転席を撮影する第2撮影手段を備え、前記判定手段は、前記第2撮影手段により撮影された画像に基づいて運転者が変わった、または運転者が変わった可能性があると判定した場合に、前記撮影手段の撮影方向が変化した可能性があると判定する。この態様によっても、撮影装置は、撮影手段の撮影方向が変化した又はその可能性がある場合に限定して画像の切り出し位置の調整を行うことができる。
【0016】
上記撮影装置の他の一態様では、前記判定手段は、前記車両の運転席における着席、またはシートベルト装着の情報を取得する取得手段を備え、前記判定手段は、前記取得手段により取得された情報に基づいて運転者が変わった可能性があると判定した場合に、前記撮影手段の撮影方向が変化した可能性があると判定する。この態様によっても、撮影装置は、撮影手段の撮影方向が変化した可能性の有無を好適に判定することができる。
【0017】
上記撮影装置の他の一態様では、撮影装置は、前記車両のルームミラーに内蔵され、またはルームミラーに取り付けられる。この場合、ルームミラーの角度調整操作により撮影手段の撮影方向が変更される。この場合であっても、撮影装置は、切り出し位置を調整し、適切な範囲を映した画像を切り出し画像として取得することができる。
【0018】
本発明に係る他の実施形態では、車両に搭載されて前方風景を撮影する撮影手段を有する撮影装置が実行する制御方法であって、前記撮影手段により撮影された画像の一部の範囲を切り出し画像として切り出す画像制御工程と、前記撮影手段の撮影方向が変化した可能性の有無を判定する判定工程と、を有し、前記画像制御工程は、前記判定工程により前記撮影手段の撮影方向が変化した可能性があると判定された際に、前記可能性があると判定された後の切り出し画像中の対象物の位置が、前記可能性があると判定される前の切り出し画像中の位置と略一致するように、前記可能性があると判定された後の切り出し画像を切り出す。撮影装置は、この制御方法を実行することで、撮影手段の角度調整をすることなく、撮影手段の撮影方向が変化する前と同一の表示範囲となる画像を取得することができる。また、撮影装置は、撮影手段の撮影方向が変化した可能性がある場合にのみ切り出し位置を変更することで、通常時の処理負荷を好適に低減させることができる。
【0019】
本発明に係る他の実施形態では、車両に搭載されて前方風景を撮影する撮影手段と電気的に接続するコンピュータが実行するプログラムであって、前記撮影手段により撮影された画像の一部の範囲を切り出し画像として切り出す画像制御手段と、前記撮影手段の撮影方向が変化した可能性の有無を判定する判定手段として前記コンピュータを機能させ、前記画像制御手段は、前記判定手段により前記撮影手段の撮影方向が変化した可能性があると判定された際に、前記可能性があると判定された後の切り出し画像中の対象物の位置が、前記可能性があると判定される前の切り出し画像中の位置と略一致するように、前記可能性があると判定された後の切り出し画像を切り出す。コンピュータは、このプログラムを実行することで、撮影手段の角度調整をすることなく、撮影手段の撮影方向が変化する前と同一の表示範囲となる画像を取得することができる。また、撮影手段の撮影方向が変化した可能性がある場合にのみ切り出し位置を変更することで、通常時の処理負荷を好適に低減させることができる。好適には、上記プログラムは、記憶媒体に記憶される。
【実施例0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。以後において、「撮影方向」とは、カメラの正面となる方向であって、カメラの視野(撮影範囲)の中心を通る方向を指すものとする。
【0021】
[ドライブレコーダの構成]
図1及び
図2は、実施例に係るドライブレコーダ1の構成を示す。具体的には、
図1は、ドライブレコーダ1が車室内のルームミラー12に装着された状態(単に「装着状態」とも呼ぶ。)における正面図を示す。また、
図2(A)は、装着状態におけるドライブレコーダ1の背面図を示し、
図2(B)は、装着状態におけるドライブレコーダ1の上面図を示す。以後では、ドライブレコーダ1の長手方向を「Y軸方向」、ドライブレコーダ1の短手方向を「X軸方向」、Y軸及びX軸と垂直な方向を「Z軸方向」とし、各正方向を図のように定める。
【0022】
ドライブレコーダ1は、内蔵二次電池により駆動され、主に、ミラー部13と、前方撮影カメラ4と、ミラー部13の背面に存在するディスプレイ(表示手段)10と、挟持部14A~14Dとを有する。そして、ドライブレコーダ1は、装着状態において、挟持部14A~14Dがルームミラー12を挟持することでルームミラー12に対して固定される。そして、ドライブレコーダ1の装着状態では、ルームミラー12の鏡面と、ドライブレコーダ1の背面とが重なる。ドライブレコーダ1は、本発明における「撮影装置」の一例である。
【0023】
前方撮影カメラ4は、車両の前方を撮影した画像(「前方画像Im」とも呼ぶ。)を生成するためのカメラであり、ドライブレコーダ1の装着状態において、ルームミラー12と重ならないドライブレコーダ1の背面部分に配置される。前方撮影カメラ4は、水平方向において広い画角を有する広角カメラである。また、前方撮影カメラ4は、ナビゲーション装置1の筺体内に回転可能に収容されており、図示しないリモートコントローラ等への操作に基づき、撮影方向が調整可能である。前方撮影カメラ4は、本発明における「撮影手段」の一例である。
【0024】
ミラー部13は、例えばハーフミラーであって、入射した一部の光を透過させ、その他の光を反射させる。これにより、ミラー部13は、背面にあるディスプレイ10が非発光状態では車両の後方風景を映す通常のミラーとして機能し、ディスプレイ10が発光状態では、ディスプレイ10から出射された光を透過させることで、運転者にディスプレイ10の表示内容を視認させる。
【0025】
ディスプレイ10は、前方画像Imから切り出された画像(「切り出し画像Imc」とも呼ぶ。)を表示する。切り出し画像Imcは、後述するように、車両の正面方向にある前方風景が画像の中心になるように前方画像Imから切り出された画像であり、前方画像Imよりも縦横の画素数が少ない。また、ディスプレイ10は、切り出し画像Imcに、運転者を案内するための文字や図形などを表す画像(「案内画像」とも呼ぶ。)を重畳させて表示する。
図1では、ディスプレイ10は、車速を表す案内画像と、点灯した信号灯を強調した四角枠の案内画像とを、切り出し画像Imcに重畳して表示している。
【0026】
図3は、ドライブレコーダ1の機能ブロック図である。
図3に示すように、ドライブレコーダ1は、車両情報取得部3と、前方撮影カメラ4と、接触センサ5と、加速度センサ6と、操作部9と、ディスプレイ10と、RAM11と、不揮発性メモリ15と、制御部19とを備える。
【0027】
車両情報取得部3は、車両のECU(Electronic Control Unit)と有線または無線により通信接続し、車両の走行速度、運転席に設けられた図示しない重量センサからの出力に基づく運転者の着席の有無に関する着席情報、運転席のシートベルトの装着の有無に関する装着情報などを取得する。車両情報取得部3は、本発明における「取得手段」の一例である。
【0028】
接触センサ5は、ドライブレコーダ1への接触を検知した場合に、検知信号を制御部19へ供給する。接触センサ5は、ルームミラー12のミラー面上に設けられたタッチパネルであってもよいし、搭乗者がルームミラー12の角度を変更する際に接触するドライブレコーダ1のハウジング等に設けられた感圧スイッチなどであってもよい。
【0029】
操作部9は、ドライブレコーダ1に対する各種操作を受け付けるためのインターフェースであり、例えば、操作ボタン、ルームミラー12と重なるミラー部13に設けられたタッチパネル、リモートコントローラ、ドライブレコーダ1の電源オン及びオフを切り替える電源スイッチなどを含む。
【0030】
RAM11は、制御部19により前方画像Imから切り出された切り出し画像Imcを一時的に記憶する画像バッファ等として機能する記憶領域である。
【0031】
不揮発性メモリ15は、例えばSDカードなどの記憶媒体であり、事故等に起因した衝撃が発生した場合に、制御部19により、RAM11に記憶された衝撃発生前の所定時間分の画像が書き込まれる。さらに、不揮発性メモリ15には、車両が停車中にルームミラー12の角度が変更された可能性があると制御部19が判定した場合に、当該判定直前に生成されてRAM11に記憶された前方画像Imが制御部19により書き込まれる。
【0032】
制御部19は、CPUなどであり、前方画像Imから一部を切り出して切り出し画像Imcを生成し、切り出し画像Imcをディスプレイ10に表示させる。また、制御部19は、ディスプレイ10に表示した切り出し画像ImcをRAM11に書き込むことで、所定時間分の切り出し画像ImcをRAM11に記憶させる。ここで、制御部19は、初期状態では、切り出し画像Imcの中心と前方画像Imの中心とが一致するように、前方画像Im内での切り出し位置を設定している。なお、初期状態では、前方撮影カメラ4の撮影方向は、車両の正面(進行)方向を向くように、ユーザの操作等に基づき調整されているものとする。
【0033】
また、制御部19は、加速度センサ6により基準値以上の加速度(即ち衝撃)を検出した場合に、RAM11に保存した所定時間分(概ね10~100秒程度)の切り出し画像Imcを不揮発性メモリ15に書き込む。さらに、本実施例では、制御部19は、接触センサ5の出力と、車両情報取得部3が取得した車両の走行速度とに基づいて、車両停車中にルームミラー12の角度が変更された可能性があるか否かの判定を行う。そして、制御部19は、車両停車中にルームミラー12の角度が変更された可能性がある場合に、前方画像Imから切り出し画像Imcを切り出す位置の調整を行う。制御部19は、本発明における「判定手段」、「画像制御手段」及びプログラムを実行する「コンピュータ」の一例である。
【0034】
[切り出し位置の調整]
次に、切り出し画像Imcの切り出す位置の調整方法について具体的に説明する。
【0035】
(1)
調整タイミング
図4は、切り出し画像Imcの切り出し位置の調整処理の実行タイミングを示すフローチャートである。概略的には、制御部19は、車両停車中であって、かつ、ドライブレコーダ1への接触を検知した場合に、切り出し画像Imcの切り出し位置の調整を行う。制御部19は、
図4に示すフローチャートの処理を繰り返し実行する。
【0036】
まず、制御部19は、ドライブレコーダ1を搭載する車両が停車中であるか否か判定する(ステップS101)。この場合、制御部19は、車両情報取得部3が取得した車両の走行情報に基づき、車両が停車中であるか否か判定する。そして、制御部19は、車両が停車中でない場合(ステップS101;No)、引き続き、車両が停車中となるか否かを監視する。車両が動作中の場合には、前方画像Imに表示される車両の前方風景が変わるため、切り出し画像Imcの切り出し位置の調整を適切に実行できない。よって、制御部19は、車両が停車中の場合に限り切り出し画像Imcの切り出し位置の調整を行う。
【0037】
制御部19は、車両が停車中であると判断した場合(ステップS101;Yes)、接触センサ5の出力に基づき、ドライブレコーダ1への接触があったか否かを判定する(ステップS102)。これにより、制御部19は、前方撮影カメラ4の撮影方向が変更された可能性の有無を判定する。そして、制御部19は、接触センサ5によりドライブレコーダ1への接触が検知できない場合(ステップS102;No)、前方撮影カメラ4の撮影方向が変更された可能性はないと判断し、再びステップS101へ処理を戻す。
【0038】
一方、制御部19は、接触センサ5の出力に基づきドライブレコーダ1への接触があったと判定した場合(ステップS102;Yes)、前方撮影カメラ4の撮影方向が変更された可能性があると判断する。よって、この場合、制御部19は、接触を検知する直前の切り出し画像Imcを不揮発性メモリ15に記憶させる(ステップS103)。具体的には、制御部19は、接触の検知時にRAM11に記憶されていた所定時間分の切り出し画像Imcのうち、最新の画像を、不揮発性メモリ15に書き込む。そして、制御部19は、接触センサ5の出力を継続して監視し、ドライブレコーダ1への接触がなくなったか否か判定する(ステップS104)。
【0039】
そして、制御部19は、接触センサ5の出力に基づきドライブレコーダ1への接触がなくなったと判断した場合(ステップS104;Yes)、ルームミラー12の角度調整が終わってドライブレコーダ1からユーザの手が離れたと判断する。よって、この場合、制御部19は、
図5で後述する切り出し位置調整処理を実行する(ステップS105)。一方、接触センサ5がドライブレコーダ1への接触を継続して検知している場合(ステップS104;No)、制御部19は、引き続き、ステップS104でドライブレコーダ1への接触がなくなるタイミングを監視する。
【0040】
(2)
切り出し位置調整処理
図5は、
図4のステップS105で実行すべき切り出し位置調整処理の手順を示すフローチャートである。概略的には、制御部19は、
図4のステップS103で不揮発性メモリ15に記憶した切り出し画像Imcと現在撮影される前方画像Imとで共通に映っている特徴物の位置に基づき、切り出し画像Imcの切り出し位置を決定する。
【0041】
まず、制御部19は、
図4のステップS103で不揮発性メモリ15に記憶したドライブレコーダ1への接触前の切り出し画像Imcに表示されている特徴物を、公知の画像認識処理等に基づき検出する(ステップS201)。ここで、「特徴物」は、目印となる物体等であって、例えば道路上の白線、看板、交通標識、建物、木などの地物である。この場合、好適には、制御部19は、対象の切り出し画像Imcを二値化した二値化画像を対象に、特徴物の検出を行うとよい。また、制御部19は、特徴物となり得る候補となる物体の特徴情報を予め記憶し、当該特徴情報を参照して特徴物を検出してもよい。
【0042】
次に、制御部19は、前方撮影カメラ4から即時に取得した前方画像Imから、即ちステップS104で接触を検知しなくなった後に生成された前方画像Imから、特徴物を検出する(ステップS202)。この場合、好適には、制御部19は、対象の前方画像Imを二値化した二値化画像を対象に、特徴物の検出を行うとよい。
【0043】
そして、制御部19は、ステップS201で検出した特徴物と同一の特徴物(「共通特徴物」とも呼ぶ。)がステップS202で検出されたか否か判定する(ステップS203)。例えば、この場合、制御部19は、ステップS201及びステップS202で検出した各特徴物の色情報や形状情報を表す特徴量を算出し、当該特徴量を比較することで、共通特徴物が存在するか否か判定する。この場合、制御部19は、特徴物同士の一致度をスコア化し、所定値以上のスコアとなった特徴物の組を、共通特徴物であるとみなしてもよい。
【0044】
そして、制御部19は、共通特徴物が存在すると判断した場合(ステップS203;Yes)、接触検知前の切り出し画像Imc内での共通特徴物の位置に基づき、切り出し画像Imcの切り出し位置を変更する(ステップS204)。具体的には、制御部19は、接触検知前の切り出し画像Imc内での共通特徴物の位置と、新たな切り出し位置に基づく切り出し画像Imc内での共通特徴物の位置とが一致するように、切り出し位置を変更する。この場合、制御部19は、接触を検知する前後での前方画像Im上での共通特徴物の移動量を算出し、当該移動量だけ切り出し画像Imcの切り出し位置を移動させてもよい。
【0045】
一方、制御部19は、共通特徴物が存在しないと判断した場合(ステップS203;No)、フローチャートの処理を終了する。即ち、この場合、制御部19は、不揮発性メモリ15に記憶した切り出し画像Imcと現在の前方画像Imとの対応関係を把握することができないと判断し、フローチャートの処理を終了する。
【0046】
(3)
具体例
次に、
図4及び
図5に基づく切り出し画像Imcの切り出し位置の調整方法の具体例について、
図6を参照して説明する。
【0047】
図6(A)は、ルームミラー12の角度調整が行われる直前に生成された前方画像Im及び切り出し画像Imcの切り出し位置を示す。
図6(A)の例では、前方撮影カメラ4の撮影方向は、車両の進行方向を向いており、前方画像Imの中心と切り出し画像Imcの中心とが一致している。
【0048】
図6(B)は、車両の停車時にルームミラー12の角度を運転者が調整した後の前方画像Imを示す。
図6(B)の例では、運転者は、ルームミラー12の角度変更操作に伴い、前方撮影カメラ4の撮影方向が右上方向に移動している。この場合、制御部19は、接触センサ5によりドライブレコーダ1への接触を検知し(
図4のステップS102参照)、ルームミラー12の角度を変更する直前に撮影されてRAM11に記憶された切り出し画像Imcを不揮発性メモリ15に書き込む(ステップS103参照)。
【0049】
図6(C)は、
図6(B)の場合に設定される切り出し画像Imcの切り出し位置を示す。制御部19は、接触センサ5によるドライブレコーダ1への接触を検知しなくなった場合(ステップS104参照)、不揮発性メモリ15に書き込んだ切り出し画像Imc(
図6(A)参照)を読み出す。そして、制御部19は、読み出した切り出し画像Imcと、前方撮影カメラ4から即時に取得した前方画像Im(
図6(B)参照)とのそれぞれについて、特徴物の検出を行う(
図5のステップS201、S202参照)。ここでは、制御部19は、信号機を共通特徴物として検出する(ステップS203参照)。
【0050】
そして、制御部19は、共通特徴物である信号機の位置に基づき、
図6(B)の前方画像Im中で
図6(A)の切り出し画像Imcと対応する範囲を認識し、当該範囲を切り出し画像Imcの切り出し位置として定める(ステップS204参照)。この場合、
図6(A)に示す切り出し画像Imcと、
図6(C)に示す切り出し画像Imcとは、表示する範囲が略同一となっている。これにより、
図6(C)に示す切り出し画像Imcの表示範囲は、ルームミラー12の角度を変更した後であっても、車両の正面方向を中心とした範囲となっている。このように、制御部19は、車両の正面方向を映した切り出し画像Imcを好適に取得することができる。
【0051】
以上説明したように、本実施例に係るドライブレコーダ1は、車両の前方風景を撮影する前方撮影カメラ4と、制御部19とを備える。制御部19は、前方撮影カメラ4により撮影された前方画像Imの一部の範囲を切り出し画像Imcとして切り出す。制御部19は、前方撮影カメラ4の撮影方向が変化した可能性の有無を判定する。そして、制御部19は、前方撮影カメラ4の撮影方向が変化した可能性があると判定した際に、当該可能性があると判定された後の切り出し画像Imc中の特徴物の位置が、その可能性があると判定される前の切り出し画像Imc中の位置と略一致するように、切り出し画像Imcの切り出し位置を決定する。このようにすることで、ドライブレコーダ1は、前方撮影カメラ4の角度調整をすることなく、前方撮影カメラ4の撮影方向が変化する前と同一の撮影範囲となる切り出し画像Imcを表示したり記憶したりすることができる。また、ドライブレコーダ1は、前方撮影カメラ4の撮影方向が変化した可能性がある場合にのみ切り出し位置を変更することで、通常時の処理負荷を好適に低減させることができる。
【0052】
[変形例]
以下、上述の実施例に好適な変形例について説明する。以下の変形例は、任意に組み合わせて上述の実施例に適用してもよい。
【0053】
(変形例1)
制御部19は、接触センサ5がドライブレコーダ1への接触を検知した場合に、切り出し画像Imcの切り出し位置の調整を行った。しかし、本発明が適用可能な場合は、これに限定されない。
【0054】
例えば、制御部19は、接触センサ5の出力に基づき切り出し位置の調整の要否を決定するのに加え、又はこれに代えて、ドライブレコーダ1の電源状態に基づき切り出し位置の調整の要否を決定してもよい。この例では、制御部19は、停車中にドライブレコーダ1の電源がオフ(即ち非作動状態)になって再び電源がオン(即ち作動状態)となった場合に、前方撮影カメラ4の撮影方向が変更された可能性があると判断し、切り出し画像Imcの切り出し位置の調整を行う。これにより、制御部19は、接触センサ5によるドライブレコーダ1への接触を検知できないドライブレコーダ1の電源オフ中にルームミラー12の角度が変更された場合であっても、適切に切り出し画像Imcの切り出し位置を設定する。
【0055】
図7は、変形例1に係る切り出し画像Imcの切り出し位置の調整処理の手順を示すフローチャートである。制御部19は、
図7に示すフローチャートの処理を、繰り返し実行する。
【0056】
まず、制御部19は、ドライブレコーダ1の電源オフを受け付けたか否か判定する(ステップS301)。例えば、制御部19は、操作部9である電源スイッチへの入力を検出することで、ドライブレコーダ1の電源オフを受け付けたか否か判定する。そして、制御部19は、ドライブレコーダ1の電源オフを受け付けていない場合(ステップS301;No)、引き続きステップS301を実行する。
【0057】
そして、ドライブレコーダ1の電源オフを受け付けた場合(ステップS301;Yes)、制御部19は、車両が停車中であるか否か判定する(ステップS302)。そして、制御部19は、車両が停車中の場合(ステップS302;Yes)、ステップS303へ処理を進める。一方、制御部19は、車両が停車中でない場合(ステップS302;No)、切り出し画像Imcの切り出し位置の調整はできないと判断し、フローチャートの処理を終了する。
【0058】
次に、制御部19は、車両が停車中であることが確認された場合に、ドライブレコーダ1が電源オフとなる直前の切り出し画像Imcを不揮発性メモリ15に記憶させる(ステップS303)。即ち、制御部19は、RAM11に記憶された最新の切り出し画像Imcを不揮発性メモリ15に書き込む。その後、ドライブレコーダ1は電源オフの状態に移行する。
【0059】
次に、制御部19は、ドライブレコーダ1の電源オンを受け付けたか否か判定する(ステップS304)。そして、制御部19は、ドライブレコーダ1の電源オンを受け付けた場合(ステップS304;Yes)、車両が停車中であるか否か判定する(ステップS305)。そして、車両が停車中である場合(ステップS305;Yes)、制御部19は、電源オフ直前に不揮発性メモリ15に記憶した切り出し画像Imcと前方撮影カメラ4から現在供給される前方画像Imとに基づき、切り出し画像Imcの前方画像Imにおける切り出し位置を決定する(ステップS306)。この場合、制御部19は、
図5の切り出し位置調整処理と同様、各画像に共通する共通特徴物を検出し、各画像内における共通特徴物の位置に基づき、切り出し画像Imcの切り出し位置を調整する。一方、制御部19は、車両が停車中でないと判断した場合(ステップS305;No)、切り出し画像Imcの切り出し位置の調整を行うことなく、フローチャートの処理を終了する。
【0060】
図7の処理によれば、接触センサ5によるドライブレコーダ1への接触を検知できないドライブレコーダ1の電源オフ中にルームミラー12の角度が変更された場合であっても、適切に切り出し画像Imcの切り出し位置を設定することができる。なお、
図7の例では、制御部19は、本発明における「切り換え手段」の一例である。
【0061】
切り出し位置の調整タイミングに関する他の例では、制御部19は、車両情報取得部3が取得する運転席の着席情報又はシートベルトの装着情報に基づき、切り出し位置の調整の要否を判断してもよい。
【0062】
例えば、運転席の着席情報を用いる場合、制御部19は、運転席からの離席を検出し、さらに運転席への着席を検出した場合に、運転者が替わってルームミラー12の角度調整(即ち前方撮影カメラ4の撮影方向の変更)が行われた可能性があると判断する。よって、この場合、制御部19は、運転席の離席直前の切り出し画像Imcと、運転席への再着席時の前方画像Imとを比較して、切り出し画像Imcの切り出し位置を調整する。
【0063】
また、シートベルトの装着情報を用いる場合、制御部19は、運転席のシートベルトが外され、再び運転席のシートベルトが装着されたことを検知した場合に、運転者が変わってルームミラー12の角度調整が行われた可能性があると判断する。よって、この場合、制御部19は、シートベルトが外される直前の切り出し画像Imcと、シートベルトの再装着時の前方画像Imとを比較して、切り出し画像Imcの切り出し位置を調整する。
【0064】
(変形例2)
前方撮影カメラ4は、撮影方向が固定されたカメラであってもよい。この場合、例えば、制御部19は、操作部9への操作に基づき、切り出し画像Imcの切り出し位置の調整を受け付け、初期状態で切り出し画像Imcの中心が車両の進行方向上の位置と一致するように調整しておく。この場合であっても、制御部19は、車両の停車時にルームミラー12の角度が初期状態から変更された場合に、切り出し画像Imcの切り出し位置を好適に自動調整することができる。
【0065】
(変形例3)
ドライブレコーダ1は、運転席を撮影するカメラをさらに備え、当該カメラの撮影画像に基づき、切り出し位置の調整の要否を判断してもよい。
【0066】
図8は、本変形例に係るドライブレコーダ1Aの正面図を示す。
図8に示すように、ドライブレコーダ1Aは、前方撮影カメラ4と反対方向のZ軸正方向に向けられた後方撮影カメラ4Rが設けられている。この場合、後方撮影カメラ4Rの撮影範囲には運転席が含まれる。後方撮影カメラ4Rは、本発明における「第2撮影手段」の一例である。
【0067】
この場合、第1の例では、制御部19は、後方撮影カメラ4Rが撮影した画像(「運転席カメラ画像」とも呼ぶ。)に基づき、運転席に人が座っているか否か判定する。そして、制御部19は、運転席カメラ画像に人が映っている状態から映っていない状態に遷移し、再び人が映っている状態となった場合に、運転者が変わった可能性があると判断する。よって、この場合、制御部19は、運転席から人が離席する直前の切り出し画像Imcと、運転席に人が再び着席した後の前方画像Imとを比較して、切り出し画像Imcの切り出し位置を調整する。
【0068】
第2の例では、制御部19は、運転席カメラ画像に基づき、運転席に座っている人の顔(人相)を公知の画像認識技術により識別し、前回着席していた人と異なる人が運転席に着席したと判断した場合に、切り出し画像Imcの切り出し位置を調整してもよい。この場合、制御部19は、運転席カメラ画像に基づき、運転席に着席する人の顔を検出すると共に、検出した顔の特徴を示す所定の特徴情報を抽出することで、着席者の顔を識別する。
【0069】
(変形例4)
ドライブレコーダ1は、車両情報取得部3により、車両のアクセサリー電源のオン及びオフの情報を取得し、車両のアクセサリー電源の状態に連動して、電源のオン及びオフが切り替わるものであってもよい。
【0070】
この場合、制御部19は、
図5のステップS201では、車両情報取得部3から取得した情報に基づき、車両のアクセサリー電源がオンからオフに切り替わったと判断した場合に、ドライブレコーダ1の電源オフを受け付けたと判断する。同様に、制御部19は、ステップS204では、車両情報取得部3から取得した情報に基づき、車両のアクセサリー電源がオフからオンに切り替わったと判断した場合に、ドライブレコーダ1の電源オンを受け付けたと判断する。そして、ドライブレコーダ1は、その後、車両が停車である場合に、切り出し画像Imcの切り出し位置の調整を行う。
【0071】
(変形例5)
上記実施例では、ドライブレコーダ1は、車両に付属する純正のルームミラー12にドライブレコーダ1を挟み込んで保持するための挟持部14A~14Dを備えた。これに代えて、ドライブレコーダ1は、挟持部14A~14Dを備えず、ルームミラーに内蔵され、車両に付属する純正のルームミラーと交換できるものであってもよい。
【0072】
別の例では、ドライブレコーダ1は、事故発生時の切り出し画像Imcを不揮発性メモリ15に記憶する機能を有しないナビゲーション装置であってもよい。この場合、ナビゲーション装置は、切り出し画像Imcを対象とした画像認識処理により、車線、信号機の点灯状態、先行車両などを検知し、検知結果に基づくテキスト画像や図形画像などを切り出し画像Imcに重ねてディスプレイ10に表示したり、音声情報を出力したりする。
【0073】
さらに別の例では、ドライブレコーダ1は、ルームミラーに取付または内蔵されるものに限定されず、車両のダッシュボード上に設置されたディスプレイと一体のナビゲーション装置であって、搭乗者によりディスプレイが視認しやすい向きに角度を変更されるものに適用されてもよい。