(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000655
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】金属溶解炉
(51)【国際特許分類】
F27B 3/20 20060101AFI20221222BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
F27B3/20
F27D17/00 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101603
(22)【出願日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】592240909
【氏名又は名称】株式会社メイチュー
(74)【代理人】
【識別番号】100079050
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 憲秋
(74)【代理人】
【識別番号】100201879
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】中島 光謙
【テーマコード(参考)】
4K045
4K056
【Fターム(参考)】
4K045AA04
4K045BA03
4K045DA01
4K045RA12
4K045RB12
4K045RB20
4K045RB22
4K056AA05
4K056BA02
4K056BB01
4K056CA04
4K056DA02
4K056DA27
4K056DA29
4K056DA33
4K056FA03
4K056FA06
(57)【要約】
【課題】より効果的に溶解材料の溶解や溶湯の保温を行うことにより従来に比して燃費を低減させるとともに、炉体構造の小型化を図ることが可能な金属溶解炉を提案する。
【解決手段】炉床部30上の溶解材料を溶解バーナー35により溶解する溶解室20と、溶解室20で溶解された溶湯Mが流入して貯留される溶湯貯留室40と、溶湯貯留室40で貯留された溶湯Mを保温する溶湯保持室60とを有する金属溶解炉10において、溶湯貯留室40の溶湯Mは溶解室20の炉床部30下部に形成された加熱連通部50を介して溶湯保持室40に流入するとともに、炉床部30は溶解バーナー35により加熱伝熱される伝熱ブロック体Bを含み、加熱連通部50を流通する溶湯Mが炉床部30裏面部31に接触して熱せられて溶湯保持室60へ流入するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉床部上の溶解材料を溶解バーナーにより溶解する溶解室と、前記溶解室で溶解された溶湯が流入して貯留される溶湯貯留室と、前記溶湯貯留室で貯留された溶湯を保温する溶湯保持室とを有する金属溶解炉において、
前記溶湯貯留室の溶湯は前記溶解室の炉床部下部に形成された加熱連通部を介して前記溶湯保持室に流入するとともに、
前記炉床部は前記溶解バーナーにより加熱伝熱される伝熱ブロック体を含み、前記加熱連通部を流通する溶湯が前記炉床部の裏面部に接触して熱せられて前記溶湯保持室へ流入するように構成されている
ことを特徴とする金属溶解炉。
【請求項2】
前記伝熱ブロック体は、プレキャストブロックと窒化珪素質レンガとを含む請求項1に記載の金属溶解炉。
【請求項3】
請求項3の発明は、前記加熱連通部の開口断面の大きさが縦200~250mm、横300~600mm、長さが800~1200mmである請求項1又は2に記載の金属溶解炉。
【請求項4】
前記溶解室の前側に前記溶湯貯留室が配置され、前記溶解バーナーが前記溶湯貯留室の上部から前記溶解室の前記炉床部に向けて配置されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の金属溶解炉。
【請求項5】
前記溶湯保持室に溶湯を保温する保持バーナーが配置されているとともに、前記溶解室の炉壁部に前記溶解室と前記溶湯保持室とを連通させて前記保持バーナーの排ガスを前記溶解室内へ流入させる排ガス流通部が形成されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の金属溶解炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉床部上の溶解材料を溶解バーナーにより溶解する溶解室と、溶解室で溶解された溶湯が流入して貯留される溶湯貯留室と、溶湯貯留室で貯留された溶湯を保温する溶湯保持室とを有する金属溶解炉に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、先に、
図8,9に図示の金属溶解炉100を提案した。この金属溶解炉100は、上部に材料投入部121及び煙道122を有する溶解室120を備え、溶解室120の下側に溶解バーナー135を備えた燃焼室130が形成されており、燃焼室130の上部に加熱板140が配置されるとともに、燃焼室130からの排ガス流路125が溶解室120に開口するように形成され、溶解バーナー135により加熱板140を介して材料投入部121から投入された溶解材料を溶解してその溶湯Mを溶湯保持部150に流入させるように構成される(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図において、符号111は炉壁、112は該炉壁111に形成された作業点検口、113はその扉、114は加熱板140上で溶解された溶湯の流下部、115は材料投入部121に配置された溶解材料保持部材、116は溶解材料保持部材115の上部に設けられたフランジ部、152は溶湯保持部150の作業点検口、153はその扉、160は溶湯保持部150に隔壁部165によって区画された溶湯処理部、166は隔壁部165下部に形成された溶湯連通部、167は隔壁部165上部に形成された排ガス流路、170は溶湯汲出部である。
【0004】
しかるに、この種の金属溶解炉100では、溶解材料の溶解や溶湯の保温に際して使用される各種バーナーの燃費が溶解コストに大きく影響を及ぼしている。そこで、より効率よく溶解材料の溶解や溶湯の保温を行うことにより、従来に比して燃費を低減させることが強く要望されていた。また、同時に炉体構造の小型化も要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、より効果的に溶解材料の溶解や溶湯の保温を行うことにより従来に比して燃費を低減させるとともに、炉体構造の小型化を図ることが可能な金属溶解炉を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、請求項1の発明は、炉床部上の溶解材料を溶解バーナーにより溶解する溶解室と、前記溶解室で溶解された溶湯が流入して貯留される溶湯貯留室と、前記溶湯貯留室で貯留された溶湯を保温する溶湯保持室とを有する金属溶解炉において、前記溶湯貯留室の溶湯は前記溶解室の炉床部下部に形成された加熱連通部を介して前記溶湯保持室に流入するとともに、前記炉床部は前記溶解バーナーにより加熱伝熱される伝熱ブロック体を含み、前記加熱連通部を流通する溶湯が前記炉床部裏面部に接触して熱せられて前記溶湯保持室へ流入するように構成されていることを特徴とする金属溶解炉に係る。
【0008】
請求項2の発明は、前記伝熱ブロック体は、プレキャストブロックと窒化珪素質レンガとを含む請求項1に記載の金属溶解炉に係る。
【0009】
請求項3の発明は、前記加熱連通部の開口断面の大きさが縦200~250mm、横300~600mm、長さが800~1200mmである請求項1又は2に記載の金属溶解炉に係る。
【0010】
請求項4の発明は、前記溶解室の前側に前記溶湯貯留室が配置され、前記溶解バーナーが前記溶湯貯留室の上部から前記溶解室炉床部に向けて配置されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の金属溶解炉に係る。
【0011】
請求項5の発明は、前記溶湯保持室に溶湯を保温する保持バーナーが配置されているとともに、前記溶解室壁部に前記溶解室と前記溶湯保持室とを連通させて前記保持バーナーの排ガスを前記溶解室内へ流入させる排ガス流通部が形成されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の金属溶解炉に係る。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明に係る金属溶解炉によれば、炉床部上の溶解材料を溶解バーナーにより溶解する溶解室と、前記溶解室で溶解された溶湯が流入して貯留される溶湯貯留室と、前記溶湯貯留室で貯留された溶湯を保温する溶湯保持室とを有する金属溶解炉において、前記溶湯貯留室の溶湯は前記溶解室の炉床部下部に形成された加熱連通部を介して前記溶湯保持室に流入するとともに、前記炉床部は前記溶解バーナーにより加熱伝熱される伝熱ブロック体を含み、前記加熱連通部を流通する溶湯が前記炉床部裏面部に接触して熱せられて前記溶湯保持室へ流入するように構成されていることより、以下のような効果を有する。
(イ)まず、溶解室の炉床部が前記溶解バーナーにより加熱伝熱される伝熱ブロック体を含むので、溶解室自体の加熱温度が高くなり溶解材料に対する溶解効率が向上する。
(ロ)また、溶解室で溶解された溶湯を流入し貯留する溶湯貯留室と溶湯貯留室で貯留された溶湯を保温する溶湯保持室とが、溶解室の炉床部下部に形成された加熱連通部を介して連通されて、加熱連通部を流通する溶湯が炉床部の裏面部に接触して熱せられるので溶湯の保温、昇温効果が高く、燃費を低減させることができる。
(ハ)同時に、溶湯貯留室の溶湯は溶湯保持室に連通する加熱連通部を介して溶解室の炉床部裏面側に全面接触して流入するので、溶湯表面の不純物を溶湯保持室に流入させることなく溶湯の清浄度を高品質に保持することができクリーンな溶湯を提供することができ、あわせて不純物の除去作業が不要となる。
(ニ)さらに、溶解された溶湯が溶湯貯留室から溶解室の炉床部下部に形成された加熱連通部を介して溶湯保持室に流入するように構成されているので、炉体構造がコンパクトとなり、特に炉体高さを低くすることができ炉体放熱も少なくなり、メンテナンスが容易で、炉体の耐久性も向上する。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載の金属溶解炉において、前記伝熱ブロック体は、プレキャストブロックと窒化珪素質レンガとを含むものであるから、熱伝導率及び強度のさらに高い炉床部を簡単かつ容易に得ることができる。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の金属溶解炉において、前記加熱連通部の開口断面の大きさが縦200~250mm、横300~600mm、長さが800~1200mmであることより、一般的な手許溶解炉の加熱連通部として、通過する溶湯の保持、昇温ならびにクリーン効果を確実かつ効率よく高めることができる。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の金属溶解炉において、前記溶解室の前側に前記溶湯貯留室が配置され、前記溶解バーナーが前記溶湯貯留室の上部から溶解室炉床部に向けて配置されていることより、溶解の熱効率が向上するばかりか、溶解バーナーの熱が溶湯貯留室にも充満して溶湯貯留室内の溶湯も効率よく加熱することができる。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の金属溶解炉において、前記溶解室壁部に前記溶解室と前記溶湯保持室とを連通させて前記保持バーナーの排ガスを前記溶解室内へ流入させる排ガス流通部が形成されていることより、保持バーナーの排ガスによる溶解室の熱効率を大きく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施例に係る金属溶解炉の全体概略横断面図である。
【
図5】溶解室の一部を断面にして示した炉床部平面図である。
【
図8】従来の金属溶解炉の一例を示す全体概略縦断面図である。
【
図9】
図8の金属溶解炉の全体概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1~
図4に示す本発明の一実施例に係る金属溶解炉10は、アルミ鋳造用のアルミ溶湯を溶解して保持するいわゆる手許溶解炉であって、一般に乾燥炉床溶解炉(dry hearth furnace)と称されるものである。この金属溶解炉10は、溶解室20と、溶湯貯留室40と、加熱連通部50と、溶湯保持室60と、汲出部70とを有する。図において、符号11は炉体本体、12は炉体本体11に形成された作業点検口、13はその扉、Mは溶解材料が溶解された溶湯を表す。
【0019】
溶解室20は、投入された溶解材料を溶解するための空間であり、図示のように、材料投入部21の直下に炉床部30を有し、炉床部30上の溶解材料を加熱溶解するための溶解バーナー35が配置される。実施例では、炉床部30の周囲を炉壁部25で囲んで、一側が後述の溶湯貯留室40に開放された空間Vとされ、炉床部30で溶解された溶湯Mが空間V側から溶湯貯留室40へ流下される。図において、符号26は溶解された溶湯Mを溶湯貯留室40側へ流下させやすくする傾斜部である。
【0020】
炉床部30は、溶解室壁面の炉壁部25から傾斜部26を介して水平方向に連接形成された面状部であり、溶解バーナー35により加熱伝熱される伝熱ブロック体Bを含む。伝熱ブロック体Bは、熱伝導率の高い適宜の材料からなる部材である。伝熱ブロック体Bとしては、例えば、不定形キャスタブルによるプレキャストブロックB1を使用することができる。実施例のプレキャストブロックB1は、SiCを約60%含有し、熱伝導率は8.5w/mk、強度は約130MPで、溶解バーナー35により800~900℃に加熱される。ちなみに一般レンガ(Al2O3、SiO2)の熱伝導率は2~3w/mkである。なお、プレキャストブロックB1は、溶解室20の炉壁部25にも使用される。
【0021】
また、伝熱ブロック体Bでは、
図5及び
図6に詳しく示したように、プレキャストブロックB1と窒化珪素質レンガB2とを含むことが好ましい。窒化珪素(Si
3N
4)質レンガB2は、プレキャストブロックB1より伝熱性及び強度がさらに優れている。実施例の窒化珪素質レンガB2は、Si
3N
4を約22%、SiCを約73%含み、熱伝導率は14w/mk、強度は約180MPである。この窒化珪素質レンガB2は、炉床部30のほぼ全体を構成するプレキャストブロックB1に、部分的に、特に溶解バーナー35の直撃を受ける位置に配置するのが好ましい。このように窒化珪素質レンガB2を用いることにより、熱伝導率がよく耐熱性に優れた溶解効率の高い炉床部材を簡単かつ容易に得ることができる。実施例の炉床部30は、
図1,3に示すように、溶解室20の下側の炉体本体11a上にプレキャストブロックB1を載置するとともに、プレキャストブロックB1の一部に凹部を設けて窒化珪素質レンガB2が配置される。
【0022】
炉床部30では、
図5~7に示すように、必要に応じて炉床部30のクラック等を防止するために伝熱ブロック体Bに補強部材32を設けてもよい。補強部材32としては、エクスパンドメタル等の適宜の金属製の部材等を使用することができる。
図7に示す実施例の補強部材32は、厚み3mm、縦525mm、横721mm、メッシュ寸法34mm×76mmのエクスパンドメタルである。
【0023】
溶解バーナー35は、炉床部30上の溶解材料を加熱溶解可能な適宜の位置に配置される。実施例の溶解バーナー35は、
図1に示すように、溶湯貯留室40の上部にバーナー先端を炉床部30に向けて配置され、溶解室20の一側が開放された空間Vを介して炉床部30上の溶解材料を加熱するように構成される。このように配置すると、溶解の熱効率が向上するばかりか、溶解バーナー35の熱が溶湯貯留室40にも充満して溶湯貯留室40内の溶湯も加熱することができ効率的である。
【0024】
溶湯貯留室40は、溶解室20で溶解された溶湯Mが流入して貯留される空間であり、溶解室20の前側(空間V側)に配置される。この溶湯貯留室40では、溶湯Mを後述の溶湯保持室60に直接流入させずに一旦蓄積して、クリーンな溶湯Mのみを溶湯保持室60へ流入させる。
【0025】
本発明の金属溶解炉10では、
図1,3に示すように、溶湯貯留室40の溶湯Mが溶解室20の炉床部30の下部に形成された加熱連通部50を介して溶湯保持室60に流入するとともに、加熱連通部50を流通する溶湯Mが炉床部30の裏面部31に接触して熱せられて溶湯保持室60へ流入するように構成される。
【0026】
加熱連通部50は、流通する溶湯Mが炉床部30の裏面部31に接触するように溶湯貯留室40と溶湯保持室60とを連通させる適宜の形状からなる流路である。溶湯Mが加熱連通部50を流通する際には、溶解バーナー35によって炉床部30が加熱状態とされていることから、溶湯Mが炉床部30の裏面部31と接触して熱せられる。そのため、溶湯貯留室40から溶湯保持室60へ流入される間の溶湯Mを保温することができる。のみならず、同時に、溶湯貯留室40の溶湯Mは溶湯保持室60に連通する加熱連通部50を介して溶解室20の炉床部30下部31に全面接触して流入するので、溶湯Mの表面に浮遊する酸化物等の不純物を溶湯保持室60に流入させることがない。このように、加熱連通部50を介した溶湯Mの流通は、溶湯Mの保温、昇温効果が高くなることに加え、、溶湯Mの清浄度を高品質に保持することができクリーンな溶湯Mを提供することができ、あわせて不純物の除去作業が不要となるという、この種手許溶解炉における大きな実用的効果を有する。
【0027】
実施例の加熱連通部50は、炉床部30(プレキャストブロックB1)が載置される溶解室20の下側の炉体本体11aに形成された凹溝部からなり、開口断面の大きさが縦200mm、横400mm、長さ980mmである。これにより、加熱連通部50を通過する溶湯の保持、昇温ならびにクリーン効果を確実かつ効率よく高めることができる。ちなみに、炉床部30と溶湯Mとの接触部分は、裏面部31に加えて、溶湯貯留室40内の溶湯が接触する溶湯貯留室40側の側面33の一部や、溶湯保持室60内の溶湯が接触する溶湯保持室60側の側面34の一部も含み、実施例の接触面積は、炉床部30前後の端面の接触高さ幅150mm×横幅400mm×長さ980mmである。なお、加熱連通部50の大きさは機種によって当然相違するが、実施例の手許溶解炉にあっては概ね縦200~250mm、横300~600mm、長さが800~1200mmのサイズのものの効率がよい。
【0028】
溶湯保持室60は、溶湯貯留室40から流入した溶湯Mを貯留し、保持バーナー65により溶湯Mを所定温度に保温する空間である。この溶湯保持室60は、
図1に示すように、溶解室20に炉壁部25を介して隣接され、保持バーナー65が溶解室20の炉壁部25方向に傾斜して配置されている。そのため、保持バーナー65が溶湯保持室60内の溶湯Mを加温保持するとともに、溶解室20の炉壁部25を加熱してその伝熱効果により溶解室20内の予熱効果を高めることができる。
【0029】
また、溶湯保持室60では、
図1,4に図示したように、溶湯保持室60に隣接する溶解室20の炉壁部25に溶解室20と溶湯保持室60とを連通する排ガス流通部61を形成することが好ましい。排ガス流通部61を介して保持バーナー65の排ガスを溶解室20内へ流入させることにより、溶解室20の熱効率をより大きく向上させることができる。
【0030】
溶湯保持室60内の溶湯Mは、
図2,4に示すように、溶湯保持室60に隣接して連通する汲出部70に流入されて、溶湯Mが適宜汲み出し可能となる。この汲出部70では、溶湯保持室60との炉体隔壁部71の下部に汲出連通部72を形成することにより、溶湯Mの表面に集積される溶湯中の酸化物等の不純物が炉体隔壁部71に遮られて溶湯M表面の不純物を汲出部70に流入されることがなく、溶湯Mのクリーン度をさらに高めその清浄度をより高品質に保持することができる。なお、汲出部70には、必要に応じて溶湯Mを保温するための補助ヒーターを設けてもよい。補助ヒーターとしては、燃焼熱を利用せずに溶湯Mを保温可能な公知の侵漬ヒーターが好適に使用される。補助ヒーターを用いて溶湯Mを保温することにより、溶湯Mを燃焼させずに保温可能となるため、溶湯Mの酸化が抑制されてメタルロスを減少させることができる。
【0031】
以上図示し説明したように、本発明の金属溶解炉は、溶湯貯留室の溶湯が溶解室の炉床部下部に形成された加熱連通部を介して溶湯保持室に流入するとともに、炉床部が溶解バーナーにより加熱伝熱される伝熱ブロック体を含み、加熱連通部を流通する溶湯が炉床部の裏面部に接触して熱せられて溶湯保持室へ流入するように構成されたものである。そこで、溶解室の炉床部に伝熱ブロック体を含むことから、溶解室自体の加熱温度が高くなり溶解材料に対する溶解効率が向上する。
【0032】
また、溶湯貯留室と溶湯保持室とが溶解室の炉床部下部に形成された加熱連通部を介して連通されており、加熱連通部を流通する溶湯が炉床部の裏面部に接触して熱せられるので、溶湯の保温、昇温効果が高く、燃費を低減させることができる。同時に、溶湯貯留室の溶湯は溶湯保持室に連通する加熱連通部を介して溶解室の炉床部裏面側に全面接触して流入するので、溶湯表面の不純物を溶湯保持室に流入させることなく溶湯の清浄度を高品質に保持することができクリーンな溶湯を提供することができ、あわせて不純物の除去作業が不要となる。
【0033】
さらに、溶解された溶湯が溶湯貯留室から溶解室の炉床部下部に形成された加熱連通部を介して溶湯保持室に流入するように構成されているので、炉体構造がコンパクトとなり、特に炉体高さを低くすることができ炉体放熱も少なくなり、メンテナンスが容易で、炉体の耐久性も向上する。
【0034】
なお、本発明の金属溶解炉は、上記実施例で述べた構成に限るものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を付加して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上の通り、本発明の金属溶解炉では、溶解室の炉床部下部に溶湯貯留室と溶湯保持室とを連通する加熱連通部が形成されて、より効果的に溶解材料の溶解や溶湯の保温が可能で燃費を低減させるとともに、炉体構造の小型化を図ることができる。そのため、従来の金属溶解炉の代替品として有望である。
【符号の説明】
【0036】
10 金属溶解炉
11,11a 炉体本体
12 作業点検口
13 作業点検口の扉
20 溶解室
21 材料投入部
22 煙道
25 炉壁部
26 傾斜部
30 炉床部
31 炉床部の裏面部
32 補強部材
33,34 炉床部の側面
35 溶解バーナー
40 溶湯貯留室
50 加熱連通部
60 溶湯保持室
61 排ガス流通部
65 保持バーナー
70 汲出部
71 炉体隔壁部
72 汲出連通部
B 伝熱ブロック体
B1 プレキャストブロック
B2 窒化珪素質レンガ
M 溶湯
V 空間