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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065521
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】癌の診断および治療
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/574 20060101AFI20230502BHJP
   A61K 38/03 20060101ALI20230502BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230502BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230502BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20230502BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
G01N33/574 A
A61K38/03
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61P35/00
C12Q1/6876 Z
G01N33/53 D
G01N33/53 Y
G01N33/53 M
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027235
(22)【出願日】2023-02-24
(62)【分割の表示】P 2020520844の分割
【原出願日】2018-06-22
(31)【優先権主張番号】62/524,116
(32)【優先日】2017-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519455623
【氏名又は名称】ヴェイエルガング,アネット
(71)【出願人】
【識別番号】519455634
【氏名又は名称】ベルスタ,マリア,エブ
(71)【出願人】
【識別番号】519455645
【氏名又は名称】ベルグ,クリスティアン
(71)【出願人】
【識別番号】519455656
【氏名又は名称】エンゲブレッテン,オラヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ヴェイエルガング,アネット
(72)【発明者】
【氏名】ベルスタ,マリア,エブ
(72)【発明者】
【氏名】ベルグ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】エンゲブレッテン,オラヴ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】癌治療(癌バイオマーカーを利用する治療を含むがこれに限定されない)のための組成物および方法に関し、特に、癌治療への対象の応答を予測するための組成物および方法を提供する。
【解決手段】いくつかの実施形態において、抗体薬物複合体または抗体毒素複合体を用いた方法を提供する。方法は、a)該患者からの生物学的サンプル中における、抗体薬物複合体または抗体毒素複合体の抗体成分の受容体、並びに、Rab5、Rab4、Rab11およびHSP90から選択される少なくとも1つのさらなるタンパク質マーカーの、正規化タンパク質の発現レベルを決定すること;b)該受容体および該マーカーのタンパク質の発現レベルの化合物発現指数を生成すること;c)該化合物発現指数に基づいて、該患者を該抗体薬物複合体または抗体毒素複合体で処置すること、を含む。いくつかの実施形態において、受容体はHER2、HER3またはEGFRである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RAB5の発現レベルを検出するための試薬を含むキットであって、
RAB5が、任意に、RAB5A、RAB5BおよびRAB5Cからなる群より選択される、キット。
【請求項2】
(a)前記試薬が、プローブ、増幅オリゴヌクレオチド、および抗体からなる群より選択される、
(b)検出するための前記試薬が、癌細胞においてRAB5タンパク質の前記レベルを測定する、
(c)RAB5の発現レベルを検出するための前記試薬が抗体であり、任意に、前記抗体がモノクローナル抗体である、
(d)前記キットが、免疫分析によって前記RAB5の発現レベルを検出するためのものである、および/または
(e)前記キットが、免疫組織化学によって前記RAB5の発現レベルを検出するためのものであり、任意に、1以上の可視化試薬をさらに含む、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記キットが、
(a)検出試薬、
(b)適切なコントロール試薬、
(c)少なくとも1つの細胞表面マーカーのタンパク質の発現レベルを検出する試薬であり、任意に、前記細胞表面マーカーが、HER2、HER3、EGFR、CD3ε、CD19、CD22、CD25、CD30、CD33、CD56、CEA(CD66e)、CD74、CD79a、CD138、NaPi2b、gpNMB、TROP-2、GUCY2C、Nectin-4、SC-16、STEAP1、FRα、IL-2R、EpCAMおよびMSLNからなる群より選択される、試薬、
(d)RAB4、RAB11および/またはHSP90から選択されるマーカーを検出するための試薬、および/または
(e)検出するための前記試薬の使用によって生成された生データを臨床医の予測値のデータに翻訳するためのコンピュータベースの分析プログラムをさらに含む、請求項1または2に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
<関連出願への相互参照>
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2017年6月23日に出願された米国仮出願第62/524,116号の優先権および利益を主張する。
【0002】
<技術分野>
本発明は癌マーカーを含むがこれに限定されない、癌診断、研究および治療のための組成物および方法に関する。特に、本発明は、癌治療に対する対象の応答を予測するための組成物および方法に関する。
【0003】
<背景技術>
個人用医薬品への注目が増加していることは、癌生物学に関する我々の知識の増加と共に、癌治療におけるバイオマーカーの高い可能性を明らかにしている。異なるバイオマーカーのスペクトルは患者の生存を予測するため、治療効果を評価するため、または疾患の進行をモニターするために、臨床実務に既に組み込まれている(Bailey et al, Discovery medicine,2014,17:101-114)。高コストの標的癌治療薬は、治療から利益を得る可能性が最も高い患者を選択するためのバイオマーカーの開発にとって強力な推進力である。この目的のために、規制当局は、臨床評価中の新しい治療のための予測バイオマーカーの組み込みをますます必要とする(Marton & Weiner,Biomed Res Int. 2013; 2013:891391.)。
【0004】
乳がんは、米国において女性では2番目に多くみられるがんの形態であり、女性では2番目に多いがん死因である。1980年代には乳癌の新規症例数が急増したが、現在ではその数は安定しているように思われる。乳癌による死亡率の低下は、おそらく、より多くの女性がマンモグラフィーを受けているという事実によるものである。早期に発見されると、乳癌の治療が成功する機会が大幅に改善される。
【0005】
乳癌は手術、放射線療法、化学療法、およびホルモン療法によって治療されるが、初期段階で検出された場合に最もしばしば治癒可能である。マンモグラフィーは、乳癌の早期発見のための最も重要なスクリーニング様式である。乳癌は種々のサブタイプに分類されるが、これらのうちのほんの少数が現在、予後または治療の選択に影響を及ぼすことが知られている。最初に乳がんの疑いを認めた患者の管理としては一般に、診断の確定、病期の評価、治療法の選択を行う。診断は、吸引細胞診、触知できない病変に対する定位または超音波技術を用いたコアニードル生検、または切開または切除生検によって確認することができる。
【0006】
予後は、患者の年齢、疾患の段階、腫瘍壊死の存在を含む原発腫瘍の病理学的特性、腫瘍組織中のエストロゲン受容体(ER)およびプロゲステロン受容体(PR)レベル、HER2過剰発現状態および増殖能の測定、ならびに閉経状態および全身健康に影響される。過体重患者はより不良な予後を有し得る(Bastarrachea et al, Annals of Internal Medicine,120: 18[1994])。予後はまた、人種によって、黒人によって、およびより少ない程度で、白色よりも不良な予後を有するヒスパニック系統によって変化し得る(Elledge et al, Journal of National Cancer Institute 86: 705[1994]; Edwards et al, Journal of Clinical Oncology 16: 2693[1998])。
【0007】
乳癌に対する3つの主要な治療は、手術、放射線、および薬物療法である。全ての患者に適合する治療はなく、しばしば、2つ以上が必要とされる。この選択は患者の年齢および閉経状態、癌の型(例えば、管対小葉)、その病期、腫瘍がホルモン受容性であるか否か、およびその浸潤性のレベルを含む、多くの因子によって決定される。
【0008】
乳癌治療は、局所的または全身的として定義される。手術および放射線療法は、腫瘍、乳房、リンパ節、または他の特定の領域を直接治療するため、局所療法とみなされる。薬物療法は、その効果が広範囲に及ぶため、全身療法と呼ばれる。薬物療法には、古典的な化学療法薬、ホルモン遮断治療(例えば、アロマターゼ阻害剤、選択的エストロゲン受容体モジュレーター、およびエストロゲン受容体ダウンレギュレーター)、およびモノクローナル抗体治療(例えば、HER2に対する)が含まれる。それらは、別々に、またはほとんどの場合、異なる組み合わせで使用されてもよい。
【0009】
HER2(ERBB2)は乳癌における有効なバイオマーカーであり、HER2遺伝子増幅またはタンパク質過剰発現は新たに診断された乳癌患者の約20%において見出される(Slamon et al, Science,1989,244,707-712; Hernandez-Blanquistt et al, Breast(Edinburgh, Scotland),2016,29,170-177)。HER2は、HER2標的化モノクローナル抗体(mAb)(トラスツズマブおよびペルツズマブ)およびチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)(ラパチニブおよびアファチニブ)(Hernandez-Blanquistt, et al., Breast(Edinburgh, Scotland),2016,29,170-177)での処置のための治療バイオマーカーとして利用される。HER2標的化mAbおよびTKIの薬理学的効果は薬物-標的相互作用の直接的な結果であり、そして抗体仲介細胞傷害性(ADCC)(mAb)、HER2ダウンレギュレーションおよび成長促進信号の阻害を含む(Rimawi et al, Annual review of medicing,2015,66,111-128; Clynes et al, Nature medicine,2000,6,443-446;
Harbeck et al, Breast care,2013,8,49-55)。HER2が受容体仲介エンドサイトーシスを受ける能力はまた、この膜貫通タンパク質を、癌細胞への細胞毒素物質の送達のための候補にする。これは、実際に、2013年に転移性乳癌の治療のためのFDA承認を受けた抗体-薬物結合体(ADC)トラスツズマブエムタシン(T-DM1)(Lewis Phillips et al, cancer research,2008,68,9280-9290; Verma et al, The New England journal of medicine,2012,367,1783-1791; Barok et al, Breast Cancer research,2011,13,R46)によって例示されている。
【0010】
T-DM1はチオエーテル(N-マレイミドメチルシクロヘキサン-1-カルボキシレート(MCC))によって高度に細胞毒性のメイタンシン由来薬物DM-1に連結されたトラスツズマブからなる(Baron et al, Journal of oncology pharmacy practice,2015, 21,132-142)。投与すると、T-DM1はHER2に結合し、HER2仲介エンドサイト
ーシスによって細胞内に取り込まれる。エンド/リソソーム経路内のトラスツズマブ構成要素のタンパク質分解は続いて微小管不安定化および細胞死を誘導するDM1の細胞質ゾル放出のメカニズムとして仮定される(Erickson et al, Cancer research,2006,66,4426-4433; Martinez et al, Critical reviews in oncology/hematology,2016,97,96-106)。従って、T-DM1は、そのトラスツズマブ構成要素によって生じる薬理学的効果に加えて、細胞内での作用の細胞毒性メカニズムを誘導する。
【0011】
薬物輸送体としてHER2を利用する別のさらに実験的なアプローチはI型リボソーム不活性化タンパク質毒素ゲロニンに遺伝的に融合されたHER2結合一本鎖可変断片MH3-B1からなる、MH3-B1/rGelなどのHER2標的融合毒素の使用によるものである(Cao et al, Cancer Res.,2009,69,8987-8995; Cao et al, Mol.Cancer Ther.,2012,11,143-153)。MH3-B1/rGelはHER2仲介エンドサイトーシスを介して取り込まれ、続いて細胞質ゾル中に放出され、そこでリボソームに結合し、翻訳を阻害する(Stirpe et al, J Biol.Chem.,1980,255,6947-6953)。従って、MH3-B1/rGelはまた、HER2に対するその結合効果に加えて、細胞内の細胞毒性効果を誘導する。
【0012】
細胞内作用点を有するHER2結合薬物のメカニズムはHER2標的化mAbおよびTKIと比較して明らかにより複雑であり、これは、薬物応答を予測するために使用されるバイオマーカーに反映されるべきである(Ritchie et al, mAbs,2013,5,13-21)。しかし、T-DM1有効性のバイオマーカーの評価はHER3に加えてHER2およびその下流シグナル伝達に焦点が当てられており(Baselga et al, Clinical cancer research,2016,22,3755-3763; Kim et al, Int J Cancer,2016,139,2336-2342)、エンドサイトーシス、エンドサイトーシス小胞輸送およびエキソサイトーシスに関与するタンパク質の影響についてはほとんど知られていない。HER2および他の標的化受容体を標的とする抗体薬物複合体および免疫毒素の予測値を改善するためのさらなるバイオマーカーが必要とされている。本研究は、Rab GTPaseファミリーのタンパク質(Stenmark, Nature
reviews.Molecular cell biology,2009,10,513-525)ならびにHER2エンドサイトーシスに特異的に関与するタンパク質を、HER2標的ADCおよび免疫毒素の治療効果のための可能性のあるバイオマーカーとして評価することを目的とした。
【0013】
<発明の概要>
本発明は、癌バイオマーカーを利用する治療を含むがこれに限定されない癌治療のための組成物および方法に関する。特に、本発明は、癌治療に対する対象の応答を予測するための組成物および方法に関する。
【0014】
標的となる治療は、患者が利益を得る可能性が最も高い治療を選択するために、検証されたバイオマーカーに強く依存する。HER2は、既に、いくつかのチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)およびHER2に対するモノクローナル抗体(mAb)のための治療バイオマーカーとして役立っている。しかし、HER2は、また、例えば、HER2標的抗体薬物複合体(ADC)および抗体毒素複合体(免疫毒素)のような細胞毒素物質を、細胞質ゾルに運搬するための輸送ゲートとしても利用され得る。このような薬物の治療バイオマーカーは、標的として作用するバイオマーカーに加えて、薬物取り込みおよび細胞内作用のメカニズムを反映し得るので、TKIおよびmAbのバイオマーカーと比較してより複雑であり得る。
【0015】
本研究では、HER2陽性乳癌細胞株および卵巣癌細胞株のパネルを、ADCトラスツズマブ-エムタンシン(T-DM1)および抗体毒素複合体MH3-B1/rGelの2つのHER2標的薬物に対する感受性に関して、評価した。薬物感受性は、HER3およびEGFRと組み合わせたHER2の発現レベルと相関し、これは、エンドサイトーシス輸送に関与するRab4、Rab5、Rab11およびHSP90と同様に、毒性部分の薬理学に影響を及ぼし得ると共に、薬物の標的部分の薬理学に影響を及ぼし得る。初期エンドソームマーカーRab5および初期リサイクリングマーカーRab4は、T-DM1およびMH3-B1/rGelの両方に対する治療バイオマーカーである可能性が示された。さらに、MH3-B1/rGelの毒性は、HSP90およびRab11(逆)に依存することが示された。本結果は、初めて、HER2標的ADCおよび抗体毒素複合体、ならびにADCおよび標的抗体毒素複合体一般のための、可能性のあるバイオマーカーとしての、エンドサイトーシス輸送に関与するタンパク質の概要を説明する。さらに、バイオマーカーと多様な寄与係数との組み合わせを検証するために、数学的アプローチを提供する。
【0016】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、癌と診断された患者を処置するための、抗体薬物複合体または抗体毒素複合体を用いた方法を提供する。当該方法は、a)該患者からの生物学的サンプル中における、抗体薬物複合体または抗体毒素複合体の抗体成分の受容体、並びに、Rab5、Rab4、Rab11およびHSP90から選択される少なくとも1つのさらなるタンパク質マーカーの、正規化タンパク質の発現レベルを決定すること;b)該受容体および該マーカーのタンパク質の発現レベルの化合物発現指数を生成すること;ならびにc)該化合物発現指数に基づいて、該患者を該抗体薬物複合体または抗体毒素複合体で処置すること、を含む。いくつかの実施形態において、受容体はHER2、HER3またはEGFRである。
【0017】
いくつかの実施形態において、この方法は、RAB5に加えてHER2のタンパク質発現のレベルが増加した発現指数を決定した場合に、抗体薬物複合体または抗体毒素複合体を投与することを包む。いくつかの実施形態において、この方法は、Rab5およびRab4に加えてHER2のタンパク質の発現レベルが増加した発現指数を決定した場合に、抗体薬物複合体または抗体毒素複合体を投与することを包む。いくつかの実施形態において、この方法は、Rab5およびRab4に加えてHER2のタンパク質の発現レベルが増加した発現指数を決定した場合に、抗体薬物複合体または抗体毒素複合体を投与することを包む。いくつかの実施形態において、この方法は、RAB5、RAB4およびHSP90に加えてHER2のタンパク質の発現レベルが増加した発現指数を決定した場合に、抗体薬物複合体または抗体毒素複合体を投与する工程を包含する。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記患者からの生物学的サンプルが外科腫瘍サンプル、生検サンプル、または血液サンプルである。いくつかの実施形態において、癌は乳癌、結腸直腸癌、肺癌、前立腺癌、黒色腫、神経膠芽腫、膵癌、腎細胞癌、卵巣癌、膀胱癌、胃腸癌、中皮腫、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、および非ホジキンリンパ腫である。
【0019】
いくつかの実施形態において、抗体薬物複合体は、トラスツズマブエムタンシン(T-DM1、Kadcyla)、ブレンツキシマブベドチン(SGN-35)、イノツズマブオゾガマイシン(CMC-544)、ピナツズマブベドチン(RG-7593)、ポラツズマブベドチン(RG-7596)、リファスツズマブベドチン(DNIB0600A、RG-7599)、グレンバツズマブラブタンシン(Glembatuzumab ravtansine)(CDX-011)、コルツキシマブラブタンシン(SAR3419)、ロルボツズマブメルタンシン(IMGN-901)、インダツキシマブラブタンシン(BT-062)、サシツズマブゴビチカン(sacitizumab govitican)(IMMU-132)、ラベツズマブゴビチカン(labetuzumab govitican)(IMMU-130)、ミラツズマブドキソルビシン(IMMU-110)、インデュサツマブベドチン(MLN-0264)、バダスツキシマブタリリン(SGN-CD33A)、デニンツズマブマホドチン(SGN-CD19A)、エンホルツマブベドチン(ASG-22ME)、ロバルピツズマブテシリン(SC16LD6.5)、バンドルツズマブベドチン(DSTP3086S、RG7450)、ミルベツキシマブソラブタンシン(IMGN853)、ABT-414、IMGN289、またはAMG595である。
【0020】
いくつかの実施形態において、抗体毒素複合体は、MH3-B1/rGel、デニロイキンディフティトックス(DAB389IL2)、モキセツモマブパスドトクス(CAT-8015)、オポルツズマブモノトキス(oportuzumab monotox)(VB4-845)、レジミューン(resimmune)、LMB-2、DT2219ARL、HuM195/rGel、RG7787、MOC31PEまたはD2C7-ITである。いくつかの実施形態において、決定することは、免疫分析を含む。
【0021】
さらなる実施形態は、治療計画を決定する方法を提供する。当該方法は、a)前記患者由来の生物学的サンプル中の、抗体薬物複合体または抗体毒素複合体の抗体成分の受容体、ならびに、RAB5、RAB4、RAB11およびHSP90から選択される少なくとも1つのさらなるマーカーの、正規化タンパク質の発現レベルを決定すること;b)前記受容体および前記マーカーのタンパク質の発現レベルの化合物発現指数を生成すること;およびc)前記化合物発現指数に基づいて治療計画を推薦することを含む。
【0022】
さらなる実施形態は、癌を診断された患者由来の生物学的サンプル中の化合物発現指数を決定するための方法を提供する。当該方法は、a)患者由来の生物学的サンプル中の、抗体薬物複合体または抗体毒素複合体の抗体成分のリガンド、ならびに、例えば、RAB5、RAB4、RAB11およびHSP90から選択される少なくとも1つのさらなるマーカーの、正規化タンパク質の発現レベルを決定すること、および、b)リガンドおよびマーカーのタンパク質の発現レベルの化合物発現指数を生成すること、を含む。
【0023】
さらに他の実施形態は、キットを提供する。当該キットは、例えばHER2、HER3、およびEGFRから選択される少なくとも1つの第1のマーカーのタンパク質の発現レベルを検出するための少なくとも1つの第1の試薬と、例えばRAB5、RAB4、RAB11、またはHSP90から選択される少なくとも1つの第2のマーカーの発現レベルを検出するための少なくとも1つの第2の試薬と、を含む。いくつかの実施形態において、試薬は抗体である。
【0024】
さらなる実施形態は、システムを提供する。当該システムは、a)例えばHER2、HER3、およびEGFRから選択される少なくとも1つの第1のマーカーの発現レベルを検出するための少なくとも1つの第1の試薬、ならびに、例えばRAB5、RAB4、RAB11、またはHSP90から選択される少なくとも1つの第2のマーカーの発現レベルを検出するための少なくとも1つの第2の試薬、および、b)発現レベルに基づいて化合物発現指数を計算するためのコンピュータプロセッサおよびコンピュータソフトウェアを含む。
【0025】
さらに他の実施形態において、本発明は、患者における癌を治療する方法を提供する。当該方法は、患者から癌細胞を得ること、in vitroでの分析によって癌細胞中のRAB5の発現レベルを測定すること、癌細胞サンプル中のRAB5の発現レベルが所定の基準レベルと比較して増加する場合には、癌細胞の表面抗原を標的とする免疫複合体の有効量を投与し、癌細胞サンプル中のRAB5の発現レベルが所定の基準レベルと比較して低下している場合には、薬物または毒素を含まない抗原結合タンパク質を投与すること、を含む。
【0026】
いくつかの好ましい実施形態において、癌細胞におけるRAB5の発現レベルを測定することは、RAB5 mRNAのレベルを測定することを含む。いくつかの好ましい実施形態において、癌細胞におけるRAB5の発現レベルを測定することは、RAB5タンパク質のレベルを測定することを含む。いくつかの好ましい実施形態において、RAB5はRAB5Aである。いくつかの好ましい実施形態において、RAB5はRAB5Bである。いくつかの好ましい実施形態において、RAB5はRAB5Cである。
【0027】
いくつかの好ましい実施形態において、本方法は、RAB4、RAB11またはHSP90のうちの1つ以上の発現レベルを分析する工程をさらに含む。いくつかの好ましい実施形態において、この方法は、RAB4、RAB11またはHSP90のうちの1つ以上の発現レベルを、RAB5発現レベルと共に発現指数に組み込む工程、および、発現指数が所定の基準レベルと比較して増加する場合には、癌細胞の表面抗原を標的とする免疫複合体の有効量を投与する工程をさらに包含する。
【0028】
いくつかの好ましい実施形態において、癌細胞は、外科腫瘍サンプル、生検サンプルまたは血液サンプルから得られる。
【0029】
いくつかの好ましい実施形態において、免疫複合体は、HER2、HER3、EGFR、CD3ε、CD19、CD22、CD25、CD30、CD33、CD56、CEA(CD66e)、CD74、CD79a、CD138、NaPi2b、gpNMB、TROP-2、GUCY2C、Nectin-4、SC-16、STEAP1、FRα、IL-2R、EpCAM、およびMSLNからなる群より選択される抗原に結合する。いくつかの好ましい実施形態において、免疫複合体は、トラスツズマブエムタンシン、ブレンツキシマブベドチン、イノツズマブオゾガミシン、ピナツズマブベドチン、ポラツズマブベドチン、リファスツズマブベドチン、グレンバツズマブベドチン(glembatuzumab vedotin)、コルツキシマブラブタンシン)、ロルボツズマブメルタンシン、インダツキシマブラブタンシン、サシツズマブゴビチカン(sacitizumab govitican)、ラベツズマブゴビチカン(labetuzumab govitican)、ミラツズマブドキソルビシン、インデュサツマブベドチン、バダスツキシマブタリリン、デニンツズマブマホドチン、エンホルツマブベドチン、ロバルピツズマブテシリン、バンドルツズマブベドチン、ミルベツキシマブソラブタンシン、ABT-414、IMGN289、およびAMG595からなる群より選択される抗体薬物複合体である。いくつかの好ましい実施形態においては、免疫複合体は、MH3-B1/rGel、デニロイキンディフティトックス、モキセツモマブパスドトクス、オポルツズマブモノトキス(oportuzumab monotox)、レジミューン(resimmune)、LMB-2、DT2219ARL、HuM195/rGel、RG7787、MOC31PE、およびD2C7-ITからなる群より選択される免疫毒素である。
【0030】
いくつかの好ましい実施形態において、癌細胞は、乳癌細胞、結腸直腸癌細胞、肺癌細胞、前立腺癌細胞、黒色腫細胞、神経膠芽腫細胞、膵癌細胞、腎細胞癌細胞、卵巣癌細胞、膀胱癌細胞、子宮内膜癌細胞、胃腸癌細胞、中皮腫細胞、多発性骨髄腫細胞、急性骨髄性白血病細胞、急性リンパ芽球性白血病細胞、および非ホジキンリンパ腫からなる群より選択される。
【0031】
いくつかの好ましい実施形態において、本方法は、癌細胞上の表面抗原の発現を分析する工程をさらに含む。
【0032】
いくつかの特に好ましい実施形態において、癌細胞は乳癌細胞である。いくつかの好ましい実施形態において、表面抗原は、表皮成長因子受容体(HER1)、HER2、HER3、およびそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つからなる群から選択され、免疫複合体は前記表面抗原に標的とされる。いくつかの好ましい実施形態において、抗体薬物複合体または免疫毒素は、トラスツズマブエムタンシン(T-DM1)、ABT-414、IMGN289、AMG595、およびAMG595からなる群より選択される。いくつかの好ましい実施形態において、表面抗原はHER2である。いくつかの好ましい実施形態において、免疫複合体はトラスツズマブエムタンシン(T-DM1)である。
【0033】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明は、患者における癌の治療のための方法において使用するための、表面抗原を標的とする免疫複合体を提供し、ここで、該患者由来の癌細胞は該抗原を発現し、そして、in vitroでの発現分析によって分析されるような、所定の基準レベルと比較して増加したRAB5の発現レベルを示す。他の好ましい実施形態において、本発明は、患者における癌の治療のための方法において使用するための、薬物または毒素に結合していない抗原結合タンパク質を提供し、ここで、該患者由来の癌細胞は該抗原を発現し、そして、in vitroでの発現分析によって分析されるような、所定の基準レベルと比較して低下したRAB5の発現レベルを示す。
【0034】
いくつかの好ましい実施形態において、in vitroでの発現分析は、RAB5 mRNA分析である。いくつかの好ましい実施形態において、in vitroでの発現分析、RAB5タンパク質の分析である。いくつかの好ましい実施形態において、RAB5は、RAB5Aである。いくつかの好ましい実施形態において、RAB5は、RAB5Bである。いくつかの好ましい実施形態において、RAB5は、RAB5Cである。
【0035】
いくつかの好ましい実施形態において、免疫複合体は、HER2、HER3、EGFR、CD3ε、CD19、CD22、CD25、CD30、CD33、CD56、CEA(CD66e)、CD74、CD79a、CD138、NaPi2b、gpNMB、TROP-2、GUCY2C、Nectin-4、SC-16、STEAP1、FRα、IL-2R、EpCAM、およびMSLNからなる群より選択される抗原に結合する。いくつかの好ましい実施形態において、免疫複合体は、トラスツズマブエムタンシン、ブレンツキシマブベドチン、イノツズマブオゾガマイシン、ピナツズマブベドチン、ポラツズマブベドチン、リファスツズマブベドチン、グレンバツズマブベドチン(glembatuzumab vedotin)、コルツキシマブラブタンシン、ロルボツズマブメルタンシン、インダツキシマブラブタンシン、サシツズマブゴビチカン(sacitizumab govitican)、ラベツズマブゴビチカン(labetuzumab govitican)、ミラツズマブドキソルビシン、インデュサツマブベドチン、バダスツキシマブタリリン、デニンツズマブマホドチン、エンホルツマブベドチン、ロバルピツズマブテシリン、バンドルツズマブベドチン、ミルベツキシマブソラブタンシン、ABT-414、IMGN289およびAMG595からなる群より選択される抗体薬物複合体である。いくつかの好ましい実施形態において、免疫複合体は、MH3-B1/rGel、デニロイキンディフティトックス、モキセツモマブパスドトクス、オポルツズマブモノトキス(oportuzumab monotox)、レジミューン(resimmune)、LMB-2、DT2219ARL、HuM195/rGel、RG7787、MOC31PEおよびD2C7-ITからなる群より選択される。
【0036】
いくつかの好ましい実施形態において、癌細胞は、乳癌細胞、結腸直腸癌細胞、肺癌細胞、前立腺癌細胞、黒色腫細胞、神経膠芽腫細胞、膵癌細胞、腎細胞癌細胞、卵巣癌細胞、膀胱癌細胞、子宮内膜癌細胞、胃腸癌細胞、中皮腫細胞、多発性骨髄腫細胞、急性骨髄性白血病細胞、急性リンパ芽球性白血病細胞、および非ホジキンリンパ腫からなる群より選択される。
【0037】
いくつかの好ましい実施において、癌細胞は乳癌細胞である。いくつかの好ましい実施形態において、表面抗原は、上皮成長因子受容体(HER1)、HER2、HER3、およびそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つからなる群から選択され、抗体薬物複合体または免疫毒素は、該表面抗原に標的とされる。いくつかの好ましい実施形態において、抗体薬物複合体または免疫毒素は、トラスツズマブエムタンシン(T-DM1)、ABT-414、IMGN289、AMG595、およびAMG595からなる群より選択される。いくつかの好ましい実施において、表面抗原はHER2である。いくつかの好ましい実施形態において、免疫複合体は、トラスツズマブエムタンシン(T-DM1)である。
【0038】
なおさらなる好ましい実施形態において、本発明は、ヒト癌細胞が癌細胞上の表面抗原を標的とする免疫複合体に応答性であるかどうかを決定するための、in vitroの方法を提供する。この方法は、患者から癌細胞を含むサンプルを得ること;およびin vitroでの発現分析によって癌細胞中のRAB5の発現レベルを測定することを含み、ここで、所定の基準レベルと比較して増加したRAB5発現レベルが、前記免疫複合体に対する応答性を示す。
【0039】
いくつかの好ましい実施形態において、in vitroでの発現分析は、RAB5 mRNA分析である。いくつかの好ましい実施形態において、in vitroでの発現分析は、RAB5タンパク質分析である。いくつかの好ましい実施形態において、RAB5は、RAB5Aである。いくつかの好ましい実施形態において、RAB5は、RAB5Bである。いくつかの好ましい実施形態において、RAB5は、RAB5Cである。いくつかの好ましい実施形態において、本方法は、RAB4、RAB11またはHSP90のうちの1つ以上の発現レベルを分析する工程をさらに含む。いくつかの好ましい実施形態において、本方法は、RAB4、RAB11またはHSP90のうちの1つ以上の発現レベルを、RAB5発現レベルと共に発現指数に組み込む工程をさらに含む。
【0040】
いくつかの好ましい実施形態において、癌細胞は、外科腫瘍サンプル、生検サンプルまたは血液サンプルから得られる。いくつかの好ましい実施形態において、癌細胞は、乳癌細胞、結腸直腸癌細胞、肺癌細胞、前立腺癌細胞、黒色腫細胞、神経膠芽腫細胞、膵癌細胞、腎細胞癌細胞、卵巣癌細胞、膀胱癌細胞、子宮内膜癌細胞、胃腸癌細胞、中皮腫細胞、多発性骨髄腫細胞、急性骨髄性白血病細胞、急性リンパ芽球性白血病細胞、および非ホジキンリンパ腫からなる群より選択される。
【0041】
いくつかの好ましい実施において、癌細胞は乳癌細胞である。いくつかの好ましい実施形態において、本方法は、癌細胞の表面抗原の発現を分析する工程をさらに含む。いくつかの好ましい実施形態において、表面抗原は、上皮成長因子受容体(HER1)、HER2、HER3、およびそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つからなる群から選択され、抗体薬物複合体または免疫毒素は、上皮成長因子受容体(HER1)、HER2、およびHER3のうちの1つを標的とする。いくつかの特に好ましい実施形態において、表面抗原は、HER2である。
【0042】
いくつかの好ましい実施形態において、本方法は、RAB5の基準の発現レベルと比較して増加する場合に、対象に免疫複合体を投与する工程をさらに含む。
【0043】
いくつかの好ましい実施形態において、本方法は、RAB5の発現レベルがRAB5の基準の発現レベルと比較して低下する場合に、薬物または毒素を含まない抗体を対象に投与する工程をさらに含む。
【0044】
追加の実施形態を本明細書に記載する。
【0045】
<図面の簡単な説明>
図1のAは、SK-BR-3、SKOV-3、HCC1954、AU-565、MDA-MB-435およびMDA-MB-231細胞におけるHER2およびγ-チューブリンの発現のウエスタンブロットの結果である。図1のBは、SK-BR-3、SKOV-3、AU-565、HCC1954およびMDA-MB-435の、各薬物による72時間の治療後の相対的生存率(MTT)を示す。T-DM1にはS字曲線適合モデルa/(1+exp(-(x-x)/b))を用いた。データの値(%)は、3つの独立した実験(トラスツズマブ、エラーバー:SE)の平均、または少なくとも3つの別々の実験(T-DM1およびMH3-B1/rGel、エラーバー:SD)のうち1つの結果を代表して表している。
【0046】
図2のAは、細胞内作用性の標的治療薬であるトラスツズマブおよびHER2への細胞感受性の模式図である。図2のBは、SK-BR-3、SKOV-3、AU-565、HCC1954およびMDA-MB-435細胞のうち、トラスツズマブ、T-DM1およびMH3-B1/rGelへの細胞感受性を示す。IC50は、細胞の50%の生存率を阻害する薬物濃度を示す。TIは、IC50(rGel)/IC50(MH3-B1/rGel)である。SK-BR-3、SKOV-3、AU-565、HCC1954およびMDA-MB-435細胞における、HER2(D1)、HER3(D2)、EGFR(D3)およびγ-チューブリン発現の、ウエスタンブロット(n=2)による代表の結果(C)および発現量の結果(D)を示す。また、HER2とT-DM1感度(1/IC50(T-DM1))(E1)またはMH3-B1/Gel感度(TI)(E2)との線形回帰解析曲線を示す。
【0047】
図3は、T-DM1感受性(AおよびB)およびMH3-B1/rGel感受性(C、DおよびE)に対するHER3およびEGFR発現のHER2を伴う影響を示す。図3のAおよびBについて、左の図は、5つの細胞株におけるHER3(A1)またはEGFR(B1)発現とT-DM1感受性との線形回帰分析曲線を示す。中央の図は、5つの細胞株におけるT-DM1感受性に対するHER2発現に加え、HER3(A2)またはEGFR(B2)発現からの寄与係数の機能として、線形回帰によるR値を示す。A3は最適化された線形回帰分析曲線を表し、ここで、T-DM1感度は、HER2およびHER3発現の両方に、線形相関がみられた(寄与係数:0.2)。B3は、5つの細胞株におけるT-DM1感受性に対するHER2発現およびHER3発現(寄与係数0.2)に加えて、EGFR発現からの影響係数の機能として、線形回帰によるR値を示す。図3のCおよびDについて、左の図は、5つの細胞株におけるHER3(C1)またはEGFR(D1)発現とMH3-B1/rGel感受性との間の線形回帰分析曲線を示す。中央の図は、5つの細胞株におけるMH3-B1/rGel感受性に対するHER2発現のものに加えて、HER3(C2)またはEGFR(D2)発現の影響の機能として、線形回帰によるR値を示す。右の図は、MH3-B1/rGel感度がHER2およびHER3発現(寄与係数:0.4)(C3)またはHER2およびEGFR発現(寄与係数:0.3)(D3)の両方に線形相関する、最適化された線形回帰分析曲線を表す。E1は、5つの細胞株におけるMH3-B1/rGel感受性に対するHER2およびEGFR発現(寄与係数0.3)に加えて、HER3発現からの影響係数の機能として、線形回帰によるR値を示す。E2は、MH3-B1/rGel感度がHER2、EGFR(寄与係数0.3)およびHER3発現(寄与係数0.4)に線形相関する、最適化された線形回帰分析曲線を表す。
【0048】
図4は、SK-BR-3、SKOV-3、AU-565、HCC1954およびMDA-MB-435細胞におけるRab5、Rab4、HSP90、Rab11およびγ-チューブリン発現のウエスタンブロット(n=2)による代表の結果(A)および発現量の結果(B-E)を示す。
【0049】
図5は、T-DM1感受性に対するRab5、Rab4、HSP90およびRab11発現のHER2を伴う影響を示す。左の図は、5つの細胞株におけるRab5(A1)、Rab4(B1)、HSP90(C1)またはRab11(D1)発現とT-DM1感受性との間の線形回帰分析曲線を示す。中央の図は、5つの細胞株におけるT-DM1感受性に対するHER2発現のものに加えて、Rab5(A2)、Rab4(B2)、HSP90(C2)または1/Rab11(D2)発現からの影響係数の機能として、線形回帰によるR値を示す。右の図は、T-DM1感度がHER2およびRab5(寄与係数:0.3)(A3)、Rab4(寄与係数:0.4)(B3)または1/Rab11(寄与係数:0.2)(D3)発現の両方に線形相関する最適化された線形回帰分析曲線を表す。
【0050】
図6は、MH3-B1/rGel感受性に対するRab5、Rab4、HSP90およびRab11発現のHER2を伴う影響を示す。左の図は、5つの細胞株におけるRab5(A1)、Rab4(B1)、HSP90(C1)またはRab11(D1)発現とMH3-B1/rGel感受性との間の線形回帰分析曲線を示す。中央の図は、5つの細胞株におけるMH3-B1/rGel感受性に対するHER2発現のものに加えて、Rab5(A2)、Rab4(B2)、HSP90(C2)または1/Rab11(D2)発現からの影響係数の機能として、線形回帰によるR値を示す。右の図は、MH3-B1/rGel感度がHER2およびRab5(寄与係数:0.3)(A3)、Rab4(寄与係数:0.6)(B3)、HSP90(寄与係数:1)(C3)または1/Rab11(寄与係数:1)(D3)発現の両方に線形相関する、最適化された線形回帰分析曲線を表す。
【0051】
図7は、MH3-B1/rGel感受性に対するRab5、Rab4およびHSP90または1/Rab11発現のHER2を伴う影響を示す。A1は、5つの細胞株におけるMH3-B1/rGel感受性に対するHER2およびRab5発現(寄与係数0.3)に加えて、Rab4発現からの影響係数の機能として、線形回帰によるR値を示す。A2は、MH3-B1/rGel感度がHER2、Rab5(寄与係数0.3)およびRab4発現(寄与係数0.6)に線形相関する最適化された線形回帰分析曲線を表す。B1は、5つの細胞株におけるMH3-B1/rGel感受性に対するHER2、Rab5(寄与係数0.3)、およびRab4(寄与係数0.6)に加えて、HSP90発現からの影響係数の機能として、線形回帰によるR値を示す。B2は、MH3-B1/rGel感度がHER2、Rab5(寄与係数0.3)、Rab4発現(寄与係数0.6)およびHSP90発現(寄与係数0.8)に線形相関する最適化された線形回帰分析曲線を表す。C1は、5つの細胞株におけるMH3-B1/rGel感受性に対するHER2、Rab5(寄与係数0.3)、Rab4(寄与係数0.6)およびHSP90(寄与係数0.8)に加えて、1/Rab11発現からの影響係数の機能として、線形回帰によるR値を示す。C2は、MH3-B1/rGel感度がHER2、Rab5(寄与係数0.3)、Rab4発現(寄与係数0.6)、HSP90発現(寄与係数0.8)および1/Rab11発現(寄与係数0.4)に線形相関する最適化された線形回帰分析曲線を表す。
【0052】
図8は、T-DM1(A)またはMH3-B1/rGel感受性(B)に対する、HER3およびEGFRの組み合わせ(A1、B1)、または、Rab5、Rab4、HSP90および1/Rab11の組み合わせの発現(A2、B2)のHER2を伴う影響を示す。提示された結果は図5、6および7に示したものと同じであるが、ここでは同じ図面に組み込まれる。先に示した(C)における、T-DM1およびMH3-B1/Ger感受性のバイオマーカーを模式的に示している。矢印はそのバイオマーカーによって示唆された薬物を示し、矢印の幅は、薬物感受性に対するタンパク質の影響を示す。丸は、組み合わせについて示す2つのプールされたバイオマーカーを示す。
【0053】
図9は、バイオマーカーx処置相互作用のp値を最小化する閾値を決定するためのモンテカルロ2倍交差検定手順の結果を示す。
【0054】
図10は、RAB5A発現に関連するベイズpCR確率曲線を示す。
【0055】
<定義>
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語および表現を下記とおり定義する。
【0056】
本明細書中で使用される場合、用語「抗原結合タンパク質」は、抗原に結合する部分、および必要に応じて、抗原結合部分が、抗原結合タンパク質の抗原への結合を促進するコンホメーションをとることを可能にする、足場またはフレームワーク部分を含むタンパク質をいう。抗原結合タンパク質の例としては、抗体、抗体フラグメント(例えば、抗体の抗原結合部分)、抗体誘導体、および抗体アナログが挙げられる。抗原結合タンパク質は、例えば、代替のタンパク質足場、または移植されたCDRもしくはCDR誘導体を有する人工足場を含み得る。このような足場には、例えば、抗原結合タンパク質の三次元構造を安定化するために導入された突然変異を含む抗体由来足場、ならびに、例えば、生体適合性ポリマーを含む完全合成足場が含まれるが、これらに限定されない。抗原結合タンパク質の例としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体、ミニボディ、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、一本鎖Fvフラグメントなどを含むが、これらに限定されない。
【0057】
本明細書中で使用される場合、用語「免疫複合体」は、薬物または毒素のような別の薬剤に、例えば化学結合またはペプチドリンカーによって連結または結合する抗原結合タンパク質を含む分子をいう。用語「免疫複合体」は、抗体薬物複合体、免疫毒素、およびアフィニティトキシン(affinity toxins)を包含する。この分子の抗原結合タンパク質部分は、免疫グロブリンまたはその抗原結合断片もしくは抗原結合誘導体であり、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体、ミニボディ、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、一本鎖Fvフラグメントなどであり得る。抗原結合タンパク質部分は、また、細胞表面抗原に結合することができるタンパク質リガンドであってもよい。例えば、EGFは、細胞表面に発現したEGF受容体を標的とすることができる。
【0058】
本明細書中で使用される場合、用語「抗体薬物複合体(ADC)」は、薬物分子に、通常は化学結合を介して連結されるか、またはそうでなければ結合する、抗原結合タンパク質を含む分子に関する。
【0059】
本明細書中で使用される場合、用語「免疫毒素」は、毒素分子に、通常はペプチドリンカーを介して連結されるか、またはそうでなければ結合する抗原結合タンパク質を含む分子に関する。
【0060】
本明細書中で使用される場合、用語「親和性毒素」は、細胞表面抗原に結合することができるタンパク質リガンドを含む分子に関し、ここで、タンパク質リガンドは、毒素分子に、通常はペプチドリンカーを介して連結されるか、またはそうでなければ結合する。
【0061】
本明細書中で使用される場合、癌細胞は、細胞と免疫複合体との接触の際に測定可能な毒素反応が検出され得る場合に、免疫複合体に対して「応答性」である。
【0062】
本明細書中で使用される場合、用語「検出する」、「検出されている」、または「検出」は、組成物を発見もしくは識別する一般的な行為、または、特定の観察のいずれかを表し得る。
【0063】
本明細書中で使用される場合、用語「核酸分子」はDNAまたはRNAを含むがこれらに限定されない、任意の核酸含有分子に関する。この用語は、4-アセチルシトシン、8-ヒドロキシ-N6-メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、プソイドイソシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルアデニン、1-メチルプソイドウラシル、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-メチルアデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、ベータ-D-マンノシルケオシン、5’-メトキシカルボニルメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、オキシブトキソシン、プソイドウラシル、ケオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、N-ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、プソイドウラシル、ケオシン、2-チオシトシン、および2,6-ジアミノプリンを含むが、これらに限定されない、DNAおよびRNAの既知の塩基類似体のいずれかを含む。
【0064】
本明細書中で使用される場合、用語「増幅オリゴヌクレオチド」は、標的核酸またはその相補体にハイブリダイズし、そして核酸増幅反応に関与するオリゴヌクレオチドに関する。増幅オリゴヌクレオチドの例は、増幅プロセスにおいて、テンプレート核酸にハイブリダイズし、ポリメラーゼによって伸長される3’OH端部を含む「プライマー」である。増幅オリゴヌクレオチドの別の例は、ポリメラーゼによって伸長されないが(例えば、3’ブロック末端を有するため)、増幅に関与するか、または増幅を促進するオリゴヌクレオチドである。増幅オリゴヌクレオチドは、任意選択で、増幅反応に関与するが標的核酸に相補的ではないか、または標的核酸に含まれない、修飾ヌクレオチドもしくはアナログ、または追加のヌクレオチドを含むことができる。増幅オリゴヌクレオチドは、標的またはテンプレート配列に相補的でない配列を含み得る。例えば、プライマーの5’領域は、標的核酸に非相補的であるプロモーター配列(「プロモーター-プライマー」と呼ばれる)を含み得る。当業者は、プライマーとして機能する増幅オリゴヌクレオチドが5’プロモーター配列を含むように改変され得、したがって、プロモーター-プライマーとして機能し得ることを理解する。同様に、プロモーター-プライマーは、プロモーター配列を除去するように改変されてもよく、また、プロモーター配列を有さないように合成されてもよく、それでもなおプライマーとして機能する。3’ブロック増幅オリゴヌクレオチドは、プロモーター配列を提供し得、そして重合のためのテンプレート(「プロモーター-提供者」と呼ばれる)として役立ち得る。
【0065】
本明細書中で使用される場合、用語「プライマー」は、オリゴヌクレオチドに関し、精製された制限消化物として天然に存在するか、または合成的に生成されるかに関わらず、核酸鎖に相補的であるプライマー伸長産物の合成が誘導される条件下(例えば、ヌクレオチドおよびDNAポリメラーゼのような誘導剤の存在下、そして適切な温度およびpH環境下)に置かれた場合に、合成の開始点として作用し得る。プライマーは増幅における効率を最大化するために、好ましくは一本鎖であるが、代わりに二本鎖であってもよい。二本鎖の場合、プライマーは伸長産物を調製するために使用される前に、最初にその鎖を分離するように処理される。好ましくは、プライマーがオリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマーは、誘導剤の存在下で伸長産物の合成を開始するのに十分な長さであるべきである。プライマーの正確な長さは、温度、プライマーの供給源、および方法の使用を含む多くの因子に依存する。
【0066】
本明細書中で使用される場合、用語「プローブ」は、オリゴヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)に関し、精製された制限消化物として天然に存在するか、または合成的に、組換え的に、またはPCR増幅によって生成されたかに関わらず、目的の別のオリゴヌクレオチドの少なくとも一部にハイブリダイズし得る。プローブは、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。プローブは、特定の遺伝子配列の検出、同定および単離に有用である。本発明において使用される任意のプローブは、任意の「レポーター分子」で標識され、その結果、酵素(例えば、ELISA、ならびに酵素に基づく組織化学分析)、蛍光系、放射性系、および発光系を含むがこれらに限定されない、任意の検出系において検出可能であることが意図される。本発明を、任意の特定の検出システムまたは標識に限定することは意図しない。いくつかの実施形態において、レポーター分子は「外因性のレポーター分子」である。
【0067】
用語「外因性のレポーター分子」は、検出試薬(例えば、プローブ、核酸、または抗体)に関連した、天然に見出されないレポーター分子または標識に関する。その例として、酵素レポーター分子、蛍光レポーター分子、放射性レポーター分子、または発光レポーター分子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
「単離された」という用語は、核酸に関して使用する場合、「単離されたオリゴヌクレオチド」または「単離されたポリヌクレオチド」というように、その天然の供給源において通常関連する少なくとも1つの構成要素または汚染物質から同定および分離される核酸配列に関する。単離された核酸は、天然に見出されるものとは異なる形態または設定で存在する。対照的に、DNAおよびRNAのような核酸のような単離されていない核酸は、それらが天然に存在する状態で見出される。例えば、所定のDNA配列(例えば、遺伝子)は宿主細胞染色体上で隣接する遺伝子の近傍に見出され;特定のタンパク質をコードする特異的mRNA配列のようなRNA配列は、多数のタンパク質をコードする多数の他のmRNAとの混合物として細胞内に見出される。しかしながら、所定のタンパク質をコードする単離された核酸は、例として、核酸が天然細胞の染色体位置とは異なる染色体位置にあるか、または天然に見出されるものとは異なる核酸配列によって隣接される、所与のタンパク質を通常発現する細胞中のそのような核酸を含む。単離された核酸、オリゴヌクレオチド、またはポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖の形態で存在し得る。単離された核酸、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを利用してタンパク質を発現させる場合、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、最小限のセンス鎖またはコード鎖を含有するが(すなわち、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは一本鎖であってもよい)、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方を含有する可能性がある(すなわち、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは二本鎖であってもよい)。
【0069】
本明細書中で使用される場合、用語「精製された」または「精製する」は、サンプルからの成分(例えば、汚染物質)の除去に関する。例えば、抗体は、混入している非免疫グロブリンタンパク質の除去によって精製され、それらはまた、標的分子に結合しない免疫グロブリンの除去によって精製される。非免疫グロブリンタンパク質の除去および/または標的分子に結合しない免疫グロブリンの除去は、サンプル中の免疫グロブリンの標的反応性比率の増加をもたらす。別の例では、組換えポリペプチドを細菌宿主細胞中で発現させ、宿主細胞タンパク質の除去によってポリペプチドを精製し、それによってサンプル中の組換えポリペプチドの比率を増加させる。
【0070】
本明細書において使用される用語「サンプル」は、その最も広範な意味で使用される。1つの意味では、生物学的サンプルおよび環境サンプルと同様に、任意の供給源から得られた標本または培養物を含むことを意味する。生物学的サンプルは、動物(ヒトを含む)から得られ、液体、固体、組織、および気体を包含する。生物学的サンプルは、血漿、血清などのような血液産物を含む。環境サンプルは、地表物質、土壌、水、結晶および産業サンプルのような環境材料を含む。しかしながら、このような例は、本発明に適用可能なサンプルの種類を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0071】
<発明の詳細な説明>
本発明は、癌バイオマーカーを利用する治療を含むがこれに限定されない、癌治療のための組成物および方法に関する。特に、本発明は、癌治療に対する対象の反応を予測するための組成物および方法に関する。
【0072】
個人専用医薬品への焦点の拡大は、癌生物学に関する我々の知識の増加と共に、癌治療におけるバイオマーカーの使用の大きな可能性を明らかにした。患者の生存を予測し、治療効果を評価し、または疾患進行をモニタリングするために、様々なバイオマーカーのスペクトルが臨床診療にすでに組み込まれている。予測バイオマーカーは、患者による、特定の治療から利益を得る可能性が最も高い注意深い選択を可能にし、したがって、このような知識は、現在および将来の高コスト標的癌治療を合理的に活用するために極めて重要である。
【0073】
したがって、ここで提供するのは、1つ以上のタンパク質マーカーの発現に基づいて、癌(例えば、乳癌)を有する対象に対する処置を決定する、推薦する、および/または投与するためのシステムおよび方法である。本発明は、特定のマーカーに限定されない。いくつかの実施形態において、抗体(例えば、HER2、HER3、EGFR)に対する抗原と、1つ以上のさらなるマーカー(例えば、RAB5(好ましくはRAB5A)、RAB4、RAB11およびHSP90またはHER3およびEGFR)との組み合わせは、単独でまたは組み合わせて検出される。いくつかの実施形態において、前記組み合わせ物または複数のマーカーの発現レベルを組み合わせて、化合物発現指数を生成する。
【0074】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明は、患者における癌を治療するための方法を提供する。当該方法は、患者から癌細胞を得ること、in vitroでの発現分析によって癌細胞中のRAB5の発現レベルを測定すること、ならびに、癌細胞サンプル中のRAB5の発現レベルが所定の基準レベルと比較して増加する場合、癌細胞の表面抗原を標的とする免疫複合体の有効量を投与すること、または、癌細胞サンプル中のRAB5の発現レベルが所定の基準レベルと比較して低下する場合、薬物または毒素を含まない抗原結合タンパク質を投与すること、を含む。RAB5A、RAB5B、もしくはRAB5C、またはそれらの組み合わせのいずれか1つの発現を分析してもよい。いくつかの特に好ましい実施形態において、RAB5Aの発現を分析する。
【0075】
上述したように、いくつかの好ましい実施形態において、免疫複合体または毒素または薬物に結合されていない抗原結合タンパク質を投与するかどうかの決定は、所定の基準レベルまたは閾値レベルと比較した、患者サンプル中のRAB5、好ましくはRAB5Aの測定された発現の比較に基づく。当業者は、基準レベルまたは閾値レベルが適切な患者集団から得られた発現データを適用した統計的手順によって決定され得ることを認識する。適切な統計的方法論は実施例において提供するが、当業者は他の統計的手順もまた利用できることを認識する。さらに、異なる統計的手順または同じ手順が異なるまたは拡張されたデータセットを実行し、異なる基準レベルまたは閾値レベルを生成し得ることは認識される。したがって、本発明は、任意の特定のマーカー(例えば、RAB5A)またはマーカーの組み合わせの発現のための、任意の特定の基準レベルまたは閾値レベルの使用に限定されない。この点に関して、いくつかの実施形態において、本発明の方法は、RAB4、RAB11またはHSP90のうちの1つ以上の発現レベルを分析することをさらに含む。いくつかの好ましい実施形態において、RAB4、RAB11、またはHSP90のうちの1つ以上のサンプル中の発現レベルは、RAB5の発現レベル、好ましくはRAB5Aの発現レベルを有する発現指数に組み込まれ、発現指数が所定の基準レベルと比較して増加する場合、癌細胞の表面抗原を標的とする免疫複合体の有効量を投与する。
【0076】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の方法において使用する患者サンプルは癌細胞を含む。細胞を含む適切なサンプルは、生検、手術からのサンプル、および採血からのサンプルを含むがこれらに限定されない、種々の方法によって得ることができる。いくつかの好ましい実施形態において、サンプルは、1つ以上の細胞表面抗原の存在について予め分析されている。いくつかの実施形態において、本方法は、サンプルが以前に特徴付けられていない場合、1つ以上の細胞表面抗原の発現について、サンプルを分析することをさらに含む。本発明は、任意の特定の細胞表面抗原の分析に限定されないが、内在化しやすい(例えば、エンドサイトーシスによって)細胞表面抗原が好ましい。内在化しやすい細胞表面抗原の例として、HER2、HER3、EGFR、CD3ε、CD19、CD22、CD25、CD30、CD33、CD56、CEA(CD66e)、CD74、CD79a、CD138、NaPi2b、gpNMB、TROP-2、GUCY2C、Nectin-4、SC-16、STEAP1、FRα、IL-2R、EpCAM、およびMSLNが挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
いくつかの特に好ましい実施形態において、サンプルは、乳癌細胞を含む。これらの実施形態において、乳癌細胞は、好ましくは、上皮成長因子受容体(HER1)、HER2、および/またはHER3の発現について特徴付けられる。さらにより好ましい実施形態において、サンプルをHER2受容体について分析するか、または、サンプルを以前に分析し、そしてHER2受容体を有すると同定している。
【0078】
上述したように、いくつかの実施形態において、化合物発現指数を本発明の方法において利用する。本発明は、任意の特定の化合物発現指数の使用に限定されない。適切な化合物発現指数の例を以下に示す。
【0079】
いくつかの実施形態において、化合物発現指数は、相対的なHER2発現×(1-(1-相対的なRAB5発現)×0.3)×(1-(1-相対的なRAB4発現)×0.6)×(1-(1-相対的なHSP90発現)×0.8)/(1-(1-(1/相対的なRAB11発現))×0.4である。
【0080】
いくつかの実施形態において、化合物発現指数は、相対的なHER2発現×(1-(1-相対的なRAB4発現)×0.6)×(1-(1-相対的なRAB5発現)×0.3)×(1-(1-相対的なHSP90発現)×0.8)である。
【0081】
いくつかの実施形態において、化合物発現指数は、相対的なHER2発現×(1-(1-相対的なRAB4発現)×0.6)×(1-(1-相対的なRAB5発現)×0.2)×(1-(1-相対的なHSP90発現)×0.6)である。
【0082】
いくつかの実施形態において、化合物発現指数は、相対的なHER2発現×(1-(1-相対的なRAB4発現)×0.4)×(1-(1-相対的なRAB5発現)×0.2)である。
【0083】
いくつかの実施形態では、化合物発現指数は、相対的なHER2発現×(1-(1-相対的なRAB5発現)×0.3)×(1-(1-相対的なRAB4発現)×0.6)である。
【0084】
いくつかの実施形態において、化合物発現指数は、相対的なHER2発現×(1-(1-相対的なRAB5発現)×0.3)である。
【0085】
いくつかの実施形態において、化合物発現指数は、相対的なHER2発現×(1-(1-相対的なRAB4発現)×0.4)である。
【0086】
いくつかの実施形態において、化合物発現指数は、相対的なHER2発現×(1-(1-相対的なRAB4発現)×0.6)である。
【0087】
いくつかの実施形態において、化合物発現指数は、相対的なHER2発現×(1-(1-相対的なRAB11発現)×0.2)である。
【0088】
いくつかの実施形態において、化合物発現指数は、相対的なHER2発現×(1-(1-相対的なHSP90発現)である。
【0089】
いくつかの実施形態において、発現はタンパク質発現である。いくつかの実施形態において、決定する工程は免疫分析を含む。いくつかの実施形態において、発現はmRNA発現である。いくつかの実施形態において、決定する工程は、cDNAを提供するためのmRNAの逆転写、および、バイオマーカーに特異的なプライマーを用いたcDNAの増幅を含む。いくつかの実施形態において、検出技術はRT-PCRである。
【0090】
本発明において利用される発現分析は、RAB5Aのような単一のバイオマーカー、またはバイオマーカーのパネル(例えば、RAB5AおよびRAB4、RAB11またはHSP90のうちの1つ以上;RAB5AおよびHER2;RAB5A、HER2およびRAB4、RAB11またはHSP90のうちの1つ以上)を利用し得る。いくつかの実施形態において、本発明のパネルまたは分析は、100、75、50、25、20、15、10、または5未満のバイオマーカー、または、他の好ましい実施形態では合計で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または20までのバイオマーカーを含む。
【0091】
いくつかの実施形態において、タンパク質発現のレベルを、対象由来のサンプルにおいて検出する。いくつかの実施形態において、対象は癌(例えば、乳癌)と診断されている。いくつかの実施形態において、サンプルは、組織(例えば、生検組織)、血液、血清、尿などである。
【0092】
タンパク質マーカーを検出する例示的な方法を以下に提供する。しかしながら、腫瘍マーカータンパク質を検出する任意の適切な方法が利用され得る。
【0093】
免疫分析の限定されない例としては以下が挙げられるが、これらに限定されない;免疫沈降、ウエスタンブロット、ELISA、免疫組織化学、免疫サイトメトリー、フローサイトメトリー、および免疫-PCR。当業者に公知の種々の技術(例えば、比色、蛍光、化学発光または放射性)を使用して検出可能に標識されたポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体は、免疫分析における使用に適している。
【0094】
免疫沈降は、その抗原に特異的な抗体を用いて、抗原を溶出して沈降させる技術である。このプロセスは、複合体中に存在すると考えられるタンパク質を標的とすることによって、細胞抽出物中に存在するタンパク質複合体を同定するために使用され得る。プロテインAおよびプロテインGのように、細菌から最初に単離された不溶性抗体結合タンパク質によって、複合体を溶出する。溶出物から容易に単離することができるセファロースビーズに抗体を結合させることもできる。洗浄後、沈降物を、質量分析、ウエスタンブロット、または複合体中の成分を同定するための任意の数の他の方法を使用して分析してもよい。
【0095】
ウエスタンブロットまたは免疫ブロットは、組織ホモジネートまたは抽出物の所定のサンプル中のタンパク質を検出するための方法である。この方法においては、ゲル電気泳動を使用して、変性タンパク質を質量によって分離する。次いで、タンパク質をゲルから膜(典型的にはポリビニルジフルオリドまたはニトロセルロース)上に転写し、そこで目的のタンパク質に特異的な抗体を用いて標識する。結果として、研究者は所定のサンプル中のタンパク質の量を試験し、いくつかの群間でレベルを比較することができる。
【0096】
酵素結合免疫吸着分析の略であるELISAは、サンプル中の抗体または抗原の存在を検出するための生化学的技術である。この技術は、少なくとも2つの抗体を利用し、その一方は抗原に特異的であり、他方は酵素に結合している。第2の抗体は、発色基質または蛍光基質に信号を生成させる。ELISAの変法には、サンドイッチELISA、競合ELISA、およびELISPOTが含まれる。ELISAは、サンプル中の抗原の存在または抗体の存在のいずれかを評価するために実施され得るので、血清抗体濃度を決定するため、および抗原の存在を検出するための両方に有用なツールである。
【0097】
免疫組織化学および免疫細胞化学は、それぞれの抗体に結合する組織または細胞中の抗原の原理を介して、それぞれ組織切片または細胞中のタンパク質を局在化するプロセスに関する。可視化は、発色または蛍光タグで抗体をタグ付けすることによって可能になる。発色タグの典型的な例として、ホースラディッシュペルオキシダーゼおよびアルカリホスファターゼが挙げられるが、これらに限定されない。蛍光タグの典型的な例として、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)またはフィコエリトリン(PE)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
フローサイトメトリーは、流体の流れ中に懸濁した微細粒子を計数し、試験し、そして選別するための技術である。この技術は、光学/電子検出装置を通って流れる単一細胞の物理的および/または化学的特性の同時マルチパラメトリック分析を可能にする。単一の周波数または色の光のビーム(例えば、レーザ)を、流体力学的に集束した流体の流れに向ける。いくつかの検出器は、ストリームが光ビームを通過する点に向けられ、1つは光ビームと一列に並んでおり(前方散乱またはFSC)、いくつかはそれに垂直である(側方散乱(SSC)および1つ以上の蛍光検出器)。ビームを通過する各懸濁粒子は何らかの方法で光を散乱させ、粒子中の蛍光化学物質は励起されて、光源よりも低い周波数で光を放出することができる。散乱光と蛍光との組み合わせは、検出器によって検出され、各検出器における輝度の変動を、各蛍光発光ピークに対して1つずつ分析することによって、個々の粒子のそれぞれの物理的および化学的構造に関する様々な事実を推定することが可能である。FSCは細胞体積と相関し、SSCは粒子の密度または内側複雑性(例えば、核の形状、細胞質顆粒の量およびタイプ、または膜粗さ)と相関する。
【0099】
免疫ポリメラーゼ連鎖反応(IPCR)は、抗体ベースの免疫分析におけるシグナル生成を増加させるために、核酸増幅技術を利用する。PCRのタンパク質等価性が存在しないため、すなわち、核酸がPCRの間に複製されるのと同じ様式でタンパク質を複製することができないため、検出感度を増加させる唯一の方法は、シグナル増幅によるものである。標的タンパク質は、オリゴヌクレオチドに直接または間接的に結合する抗体に結合する。結合していない抗体は洗い流され、残りの結合した抗体は増幅したオリゴヌクレオチドを有する。タンパク質検出は、リアルタイム法を含む標準的な核酸検出法を用いて増幅されたオリゴヌクレオチドを検出することによって行われる。
【0100】
いくつかの実施形態において、免疫磁気検出が利用される。いくつかの実施形態において、検出は自動化される。例示的な免疫磁気検出方法にはVeridex(Raritan、NJ)から市販されているものが含まれるが、これらに限定されない。
【0101】
いくつかの実施形態において、コンピュータベースの分析プログラムを使用して、検出分析によって生成した生データ(例えば、マーカー発現の存在、非存在、または量)を、臨床医の予測値のデータ(例えば、癌治療または化合物発現指数の選択)に翻訳する。臨床医は、任意の適切な手段を使用して予測データにアクセスすることができる。したがって、いくつかの好ましい実施形態において、遺伝子または分子生物学において訓練される可能性が低い臨床医が生データを理解する必要がないというさらなる利益を、本発明は提供する。データは、最も有用な形態で臨床医に直接提示される。次いで、臨床医は対象の治療を最適化するために、情報を直ちに利用することができる。
【0102】
本発明は、分析を実施する研究施設、情報提供者、医療関係者、および対象からまたはこれらに対して情報を受信、処理、および送信することができる任意の方法を検討する。例えば、本発明のいくつかの実施形態において、サンプル(例えば、生検または血液または血清サンプル)は対象から得られ、そして、生データを生成するために、世界の任意の場所(例えば、対象が存在する国または情報が最終的に使用される国とは異なる国)に位置するプロファイリングサービス(例えば、医療施設における臨床研究所、ゲノムプロファイリングビジネスなど)に提出される。サンプルが組織または他の生物学的サンプルを含む場合、対象は医療センターを訪れて、サンプルを得てプロファイリングセンターに送ることができ、または対象はサンプル自体(例えば、尿サンプル)を収集し、それをプロファイリングセンターに直接送ることができる。サンプルが事前に決定された生物学的情報を含む場合、情報は対象によってプロファイリングサービスに直接送られてもよい(例えば、情報を含む情報カードはコンピュータによってスキャンされてもよく、データは電子通信システムを使用してプロファイリングセンターのコンピュータに送信されてもよい)。プロファイリングサービスによって受信されると、サンプルは処理され、対象が所望する診断または予後情報に特異的なプロファイルが生成される(すなわち、発現データ)。
【0103】
次いで、プロファイルデータを、治療する臨床医による解釈に適したフォーマットで準備する。例えば、生データを提供するのではなく、準備されたフォーマットは、特定の治療選択肢に対する水栓と共に、対象に対する診断またはリスク評価(例えば、癌治療が成功する可能性または化合物発現指数)を表してもよい。データは、任意の適切な方法によって臨床医に表示されてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、プロファイリングサービスは、臨床医のために(例えば、治療の時点で)印刷することができ、またはコンピュータモニタ上で臨床医に表示することができるレポートを生成する。
【0104】
いくつかの実施形態において、情報は、最初にケアの時点でまたは地域施設で、分析される。次いで、生データをさらなる分析のために、および/または生データを臨床医または患者に有用な情報に変換するために、中央処理施設に送る。中央処理施設は、プライバシー(全てのデータが均一なセキュリティプロトコルで中央施設に記憶される)、速度、及びデータ分析の均一性の利点を提供する。次いで、中央処理施設は、対象の治療後のデータの運命を制御することができる。例えば、電子通信システムを使用して、中央施設は、臨床医、対象、または研究者にデータを提供することができる。
【0105】
いくつかの実施形態において、対象は、電子通信システムを使用してデータに直接アクセスすることができる。対象は、結果に基づいてさらなる介入またはカウンセリングを選択することができる。いくつかの実施形態において、データは研究用途に使用される。例えば、このデータは、特定の状態または疾患の段階の有用な指標としてマーカーの包含または排除をさらに最適化するために使用され得る。
【0106】
本発明の診断、予後、および治療方法において使用する組成物には、プローブ、増幅オリゴヌクレオチド、および抗体が含まれるがこれらに限定されない。特に好ましい組成物は、サンプル中のマーカーの発現レベルの存在を検出する。
【0107】
これらの組成物のいずれかは、単独で、または本発明の他の組成物と組み合わせて、キットの形成で提供され得る。例えば、単一標識プローブおよび一対の増幅オリゴヌクレオチドまたは抗体、ならびに免疫分析の構成要素は、マーカーの増幅および検出のためのキットにおいて提供され得る。キットは、適切なコントロール試薬および/または検出試薬をさらに含み得る。
【0108】
本発明のプローブおよび抗体組成物はまた、アレイまたはパネルアッセイの形態で提供され得る。
【0109】
いくつかの実施形態において、本発明は、治療計画を決定および実施するためのシステム、キットおよび方法を提供する。
【0110】
本発明の方法は、種々の癌の治療における使用を見出す。本発明に従って処置され得る癌としては、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、前立腺癌、黒色腫、神経膠芽腫、膵臓癌、腎細胞癌、卵巣癌、膀胱癌、子宮内膜癌、胃腸癌、中皮腫、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、および非ホジキンリンパ腫が挙げられるが、これらに限定されない。上記のように、バイオマーカーまたはバイオマーカーの組み合わせの発現レベルが、基準または閾値レベルあるいは化合物発現指数と比較して、患者サンプルにおいて増加する好ましい実施形態においては、その後、患者に免疫複合体を投与するための呼び出しがなされる。同様に、バイオマーカーまたはバイオマーカーの組み合わせの発現レベルが、基準もしくは閾値発現レベルあるいは化合物発現指数と比較して、患者サンプルにおいて低下する他の好ましい実施形態において、その後、薬物または毒素に結合されていない抗原結合タンパク質を患者に投与するための呼び出しがなされる。免疫複合体の投与が必要とされる実施形態では、次いで、患者の腫瘍または癌細胞に発現する表面抗原に結合する免疫複合体が選択される。免疫複合体が向けられ得る適切な表面抗原としては、HER2、HER3、EGFR、CD3ε、CD19、CD22、CD25、CD30、CD33、CD56、CEA(CD66e)、CD74、CD79a、CD138、NaPi2b、gpNMB、TROP-2、GUCY2C、Nectin-4、SC-16、STEAP1、FRα、IL-2R、EpCAM、およびMSLNが挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
いくつかの実施形態では、免疫複合体は、抗体薬物複合体である。適切な抗体薬物複合体には、トラスツズマブエムタンシン(T-DM1、Kadcyla)、ブレンツキシマブベドチン(SGN-35)、イノツズマブオゾガマイシン(CMC-544)、ピナツズマブベドチン(RG-7593)、ポラツズマブベドチン(RG-7596)、リファスツズマブベドチン(DNIB0600A、RG-7599)、グレンバツズマブベドチン(glembatuzumab vedotin)(CDX-011)、コルツキシマブラブタンシン(SAR3419)、ロルボツズマブメルタンシン(IMGN-901)、インダツキシマブラブタンシン(BT-062)、サシツズマブゴビチカン(sacitizumab govitican)(IMMU-132)、ラベツズマブゴビチカン(labetuzumab govitican)(IMMU-130)、ミラツズマブドキソルビシン(IMMU-110)、インデュサツマブベドチン(MLN-0264)、バダスツキシマブタリリン(SGN-CD33A)、デニンツズマブマホドチン(SGN-CD19A)、エンホルツマブベドチン(ASG-22ME)、ロバルピツズマブテシリン(SC16LD6.5)、バンドルツズマブベドチン(DSTP3086S、RG7450)、ミルベツキシマブソラブタンシン(IMGN853)、ABT-414、IMGN289、またはAMG595が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、抗体毒素複合体は、MH3-B1/rGel、デニロイキンジフチトクス(DAB389IL2)、モキセツモマブパスウドトクス(CAT-8015)、オポルツズマブモノトックス(VB4-845)、レジミューン(resimmune)、LMB-2、DT2219ARL、HuM195/rGel、RG7787、MOC31PEまたはD2C7-ITである。上述したように、本発明の方法において使用する抗体薬物複合体の選択は、対象における癌細胞に発現する特異的表面抗原に依存する。
【0112】
いくつかの実施形態では、免疫複合体は免疫毒素である。適切な免疫毒素としては、MH3-B1/rGel、デニレウキンジフチトックス、(DAB389IL2)、モキセツモマブパスドトクス(CAT-8015)、オポルツズマブモノトックス(VB4-845)、レジミューン(resimmune)、LMB-2、DT2219ARL、HuM195/rGel、RG7787、MOC31PEまたはD2C7-ITが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、上述したように、本発明の方法において使用する免疫毒素の選択は、対象における癌細胞によって発現される特定の表面抗原に依存する。
【0113】
<実施例>
以下の実施例は本発明の特定の実施形態を実証し、さらに例示するために提供され、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0114】
〔実施例1〕
(材料及び方法)
細胞および培養:
本研究では、乳癌細胞株SK-BR-3、AU-565(CRL-2351)、HCC1954(CRL-2338)およびMDA-MB-453(HTB-131)および卵巣がん細胞株SKOV-3(HTB-77)という5つのHER2発現性ヒト細胞株を用いた。HER2陰性のヒト乳癌細胞株MDA-MB-231を、HER2発現のネガティブコントロールとして使用した。すべての細胞株は、ノルウェー、オスロの癌研究所の生化学部門ノルウェーラジウム病院、オスロ大学病院から提供されたSK-BR-3を除き、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)(Manassas、VA、USA)から入手した。時間経過による細胞株の特性の変化を回避するために、全ての細胞株を継代数3~25の間で使用し、細胞をマイコプラズマ感染について常時にチェックした。SK-BR-3およびSKOV-3細胞を、McCoy 5A培地中で、AU-565、HCC1954およびMDA-MB-231細胞をRPMI-1640培地中(両方とも、Sigma-Aldrich, St. Louis、MO、USAから入手)で培養し、一方、MDA-MB-453を、Leibovitz’s L-15培地(Lonza, Verviers, Belgium)中で培養した。全ての培地は、文献19にしたがって補給した。
【0115】
細胞毒性実験:
96ウェルプレート(Nunc、ロスキルデ、デンマーク)に8×10(SK-BR-3)、1.8×10(SKOV-3)、6×10(AU-565)、4×10(HCC1954)または1×10細胞/ウェル(MDA-MB-453)で細胞を播種し、一晩付着させた。次いで、細胞を、72時間、濃度を増加させながらトラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標)、ロシュ、バーゼル、スイス)、T-DM1(ado-トラスツズマブエムタンシン、カドサイラ(登録商標)、ジェネンテック、カリフォルニア州サンフランシスコ、米国カリフォルニア州サンフランシスコ)、MH3-B1/rGelまたはrGel(文献13、20に従って発現および精製)とインキュベートし、その後、文献21に従い、MTTアッセイにより細胞生存率を評価した。IC50値をS字曲線から計算した(適合モデル:a/(1+exp(-(x-x)/b)。
【0116】
ウエスタンブロット分析法:
全細胞抽出物を得て、文献19に記載したようにウエスタンブロットにより分析した。タンパク質のブロット転写は、Trans-Blot(登録商標)Turbo(商標)Transfer System(Bio-Rad Laboratories、CA、USA)を用いて行った。細胞タンパク質発現を、Cell Signaling Technology(Danvers, MA, USA)から得たEGFR(#4267)、HER2(#2165)、HER3(#12708)、HSP90(#4877)抗体、BD Biosciences(San Jose, CA, USA)から得たRab5(610281)およびRab11(610656)抗体、ならびにRab4(R5780)抗体(Sigma-Aldrich)を使用して検出した。タンパク質の発現は、抗原(#T6557)(Sigma-Aldrich)によって検出されたγ-チューブリンと相関していた。Supersignal West Dura Extended duration Substrate(Thermo Scientific, Rockford, IL,
USA)およびChemiDoc(商標)デンシトメーター(Bio-Rad)を膜上のタンパク質バンドの検出に使用した。ImageLab 4.1(Bio-Radのソフトウェア)を、タンパク質発現の定量のために使用した。各タンパク質の発現を、最高発現細胞株に対して計算した。
【0117】
相関分析:
細胞株におけるHER2、HER3、EGFR、Rab4、Rab5、Rab11およびHSP90の相対的発現を、1/IC50(T-DM1)またはターゲティング指数(TI)(MH3-B1/rGel)によって測定した2つのHER2標的治療薬に対する細胞株感受性に対してプロットし、線形回帰を評価した。いくつかのタンパク質は、HER2と共にT-DM1またはMH3-B1/rGelに毒性に影響を及ぼし得る。しかしながら、HER2と比較した場合の影響のレベルは変化し得る。ここでは、HER2と線形相関する1/IC50(T-DM1)またはTI(MH3-B1/rGel)によって得られたR値が他のタンパク質(HER3、EGFR、Rab4、Rab5、Rab11およびHSP90)の相対的発現を回帰に組み込むことによって増加し得るかどうかを計算した。これらの回帰曲線は、以下の式を用いて、HER2と共に各タンパク質について1~0の範囲の寄与係数を減少させて確立した;
正の勾配を有する曲線についてはHER2×(1-(1-タンパク質)×F)、および
負の勾配を有する曲線についてはHER2/(1-(1-タンパク質)×F)であり、ここで、HER2はHER2の相対的発現であり、タンパク質は目的のタンパク質の相対的発現であり、Fは1~0の寄与係数である。
【0118】
値は、それぞれのタンパク質の寄与係数の関数としてプロットした。HER2単独で得られたものと比較してRの増加をもたらす寄与係数に属するタンパク質を、T-DM1およびMH3-B1/rGel感受性についての最終回帰曲線に組み込み、Rによって測定したT-DM1-およびMH3-B1/rGel感受性に最も高い相関を有する発現パラメーターの組合せを設定した。
【0119】
(結果)
T-DM1およびMH3-B1/rGelの有効性はトラスツズマブ感受性と相関していなかった。HER2陰性として報告されているMDA-MB-231における低発現と比較して、本研究で使用した5つのHER2発現細胞株において、強いHER2発現が立証された(図1のA)(文献22)。HER2を標的としたmAbトラスツズマブおよび細胞内作用性HER2を標的とした治療薬T-DM1およびMH3-B1/rGelの抗増殖効果は、5つのHER2陽性細胞株において確立された(図1のB)。細胞をトラスツズマブ、T-DM1またはMH3-B1/rGelで72時間処理すると、SK-BR-3およびAU-565細胞は3つの治療薬すべてに高感受性であることが明らかになったが、逆に、SKOV-3細胞はトラスツズマブに非応答性であることが見出され、T-DM1およびMH3-B1/rGelに対して低感受性であったことが、それぞれ1.2μg/mLという比較的高いIC50および2.4という低いTI50によって実証された(図1および図2のB)。HCC1954およびMDA-MB-453細胞はいずれもトラスツズマブ治療に対して低感受性から中感受性であることが見出されたが、細胞内作用性HER2標的治療薬に対しては異なる反応を示し、HCC1954細胞はT-DM1およびMH3-B1/rGelの両方に対して高感受性を示したが、MDA-MB-453細胞はこれら2つの薬物に対して低感受性を示した(図1および図2のB)。したがって、トラスツズマブ感受性とT-DM1およびMH3-B1/rGelに対する感受性との間には、5つの細胞株間で明確な関連性は認められなかった(図1および図2のB)。T-DM1およびMH3-B1/rGelは細胞内で明確に異なる作用点を有するが、細胞株の間でこれらの2つの治療薬に対する感受性の間に一貫性が明らかにされ、ここで、2つの治療薬の一方に対する高/低応答は他方に対する同様の高/低応答を予測させるように思われた。
【0120】
これらの知見に基づき、細胞株を3つのカテゴリーに分類した;(i)トラスツズマブ、T-DM1およびMH3-B1/rGelに対する高感受性(SK-BR-3およびAU-565)、(ii)トラスツズマブ、T-DM1およびMH3-B1/rGelに対する低/中等度感受性(SKOV-3およびMDA-MB-453)、(iii)トラスツズマブに対する低/中等度感受性であるが、T-DM1およびMH3-B1/rGelに対する高感受性(HCC1954)(図2A)。
【0121】
HER2発現とT-DM1毒性との相関は、MH3-B1/rGel毒性について観察されるものよりも強い。HER2発現は、T-DM1およびMH3-B1/rGel毒性の両方に必須である。しかし、発現レベルは細胞間の薬物処理(例えば、取り込み、細胞内輸送および細胞内薬物標的との相互作用)の差異に起因して、薬物感受性に必ずしも直接相関しない可能性がある。5つの細胞株におけるHER2発現の定量はAU-565がHER2の最高発現レベルを有することを示し、HCC1954(0.9)およびSK-BR-3(0.8)がそれに接近して続いた(図2CおよびD1)。AU-565に比べてSKOV-3細胞では50%低いHER2発現が認められ、パネルでHER2発現が最も低い(0.4)細胞株としてMDA-MB-453が示された(図2CおよびD1)。本稿で報告したHER2発現量は、最近の報告と一致している(文献22、23)。さらに、HER2発現とT-DM1およびMH3-B1/rGel感受性との間に直線的な関連性が認められ、その結果、T-DM1では0.926、MH3-B1/rGelでは0.800のR値が得られた(図2E1およびE2)。
【0122】
HER3は、T-DM1感受性についてのHER2に対するさらなるバイオマーカーとして役立ち得る。HER2は、EGFRファミリーの他のメンバーと複合体を形成することが知られている。従って、HER3およびEGFRを定量して、T-DM1とMH3-B1/rGel毒性とEGFRファミリーのこれら2つのメンバーの発現との間の関係を調べた。細胞株の選択されたパネルは、HER3およびEGFR発現の両方のレベルにおいて実質的に変化することが見出された(図2C、2D2および2D3)。しかし、HER3またはEGFRのレベルと、T-DM1(図3A1およびB1)またはMH3-B1/rGel(図3C1およびD1)に対する感受性との間には明らかな相関は見られなかった。EGFRおよびHER3がHER2と共にT-DM1-およびMH3-B1/rGel感受性と相関するかどうかをさらに評価した。1/IC50(T-DM1)およびHER2とHER3の線形回帰のR値を、寄与係数の増加と共に確立することは、HER2を単独で使用した場合(R=0.926、図2E1)と比較して、HER3発現が0.2の寄与係数で相関解析に含まれた場合(図3A2および3A3)、0.953のより大きなRを実証した。T-DM1感受性とHER2発現との間の回帰分析に影響係数の増加を伴うEGFRを組み込むことによって、線形相関の増加は検出されなかった(図3B2)。T-DM1とHER2×HER3との間の回帰におけるEGFR発現の影響(寄与係数0.2)も評価した。また、ここでは、EGFRの寄与係数の増加に伴うR値はすべて、HER2およびHER3(寄与係数0.2)のみで観察されたものよりも少ないことが見出された(図3B3)。
【0123】
HER3およびEGFRは、MH3-B1/rGel感受性についてのHER2に対するさらなるバイオマーカーとして役立ち得る。MH3-B1/rGel感受性とHER2発現との間の回帰分析にEGFRとHER3の寄与を組み込むと、HER2発現のみによって得られたものと比較して、R値が増加した(寄与係数0.4を有するHER2×HER3についてはR=0.970、寄与係数0.3を有するHER2×EGFRについてはR=0.826)(図2E2、3C2、3C3、3D2および3D3)。HER2とEGFR(寄与係数0.3)とMH3-B1/rGel感受性との間の回帰に寄与係数の増加に伴うHER3発現の影響を加えると、HER3寄与係数0.4で観測された最高値でのR値の増加によって測定されるように、相関の増加が示された(R=0.997、図3E1および3E2)。
【0124】
HER2発現細胞株は、エンドサイトーシス輸送に関与するタンパク質の発現レベルが異なる。T-DM1およびMH3B1/rGelは細胞内移行および細胞内輸送に依存し、それらの細胞内作用機構を発揮するので、エンドサイトーシス機構に関与するタンパク質をパネル細胞株で定量した。これらのタンパク質には細胞膜から初期のエンドソームへの積み荷の運搬と、エンドソーム融合に関与するRab5(図4AおよびB)、初期のエンドソームからの再利用に関与するRab4(図4AおよびC)、HER2リサイクリングを調節していると報告されているHSP90(図4AおよびD)、および核周囲のリサイクリングエンドソームおよび細胞膜-ゴルジ輸送を介した再利用に関与しているRab11(図4AおよびE)が含まれていた(文献24、25)。細胞株間のこれらのタンパク質の発現レベルは大きな差異を示し、発現レベル間で単純な関係は見出されなかった。
【0125】
Rab5およびRab4は、T-DM1感受性を予測するためのHER2に対するさらなるバイオマーカーとして機能し得る。エンドサイトーシス機構に関与する調査されたタンパク質(図4)が、細胞株間のT-DM1感受性に影響を及ぼすかどうかをさらに評価した。2.5~3倍高いRab5の発現レベルが、パネル中の他の細胞株と比較して、高T-DM1感受性SK-BR-3およびAU-565細胞において見出された(図4AおよびB)。T-DM1毒性とRab5発現との間には比較的弱い相関が認められた(R=0.643)(図5A1)。Rab5発現の寄与係数の増加を伴うT-DM1毒性およびHER2発現についての線形回帰曲線の確立は、Rab5がHER2と共にT-DM1毒性に影響を及ぼすことを示した(図5A2)。HER2およびRab5の最大Rは、Rab5を0.3の寄与係数で添加した場合に見出され(図5A2)、Rab5からの30%の寄与を含めることによって0.926から0.986に増加した(図5A3)。Rab4発現とT-DM1感受性との間に線形相関は見られなかった(R2=0.088、図5B1)。T-DM1感受性がHER2と相関し、Rab4からの寄与係数が0.4であった場合、R値のわずかな増加が見られた(図5B2および5B3)。Rab4がHER2とT-DM1感受性と逆相関するかどうかも調べた。しかし、1/Rab4発現を回帰式に組み込んだ場合、HER2単独で得られたものと比較して、Rの増加は見られなかった(データは示さず)。HSP90発現とT-DM1感受性の線形回帰は、R値0.266という不良な相関を示し(図5C1)、HER2単独で得られたものと比較して、HSP90の影響をHER2での回帰式に組み込むことによって、R値の増大は観察されなかった(図5C2)。Rab11発現とT-DM1感受性との間に逆線形相関(R=0.459)が見られた(図5D1)。1/Rab11発現の増加する寄与係数を伴うT-DM1感受性とHER2との間の線形回帰は、HER2単独で得られたものと比較して、R値の増加をほとんど示さなかった(0.929対0.926、図5D2および5D3)。
【0126】
図5に示すように、Rab5およびRab4の発現レベルは、HER2と共にT-DM1感受性の可能性のあるバイオマーカーとして1つずつ示された。次に、Rab5およびRab4をHER2と組み合わせると、T-DM1感度との相関がさらに増加するかどうかを評価した。しかし、回帰式にRab4の影響を組み込んだ場合、HER2×0.3 Rab5で観察されたものと比較して、Rの増加は見られなかった(データは示さず)。総合すると、T-DM1感受性に対する最良の線形相関は、HER2とRab5との組み合わせで0.3の影響係数でのみ見出された(R=0.986、図5A3)。
【0127】
Rab5、Rab4、HSP90およびRab11はすべて、MH3-B1/rGel感受性についてのHER2に対するさらなるバイオマーカーとして機能し得る。Rab5、Rab4、HSP90およびRab11の細胞発現レベル(図4)も、TIによって測定したMH3-B1/rGel感受性に対してプロットした(図6)。Rab5とTIの線形相関が細胞株間で検出された(R=0.486、図6A1)。HER2およびMH3-B1/rGel毒性の確立された線形回帰曲線に寄与係数を増加させたRab5を組み込むことは、HER2のみを用いた回帰と比較してR値の増加によって可視化されるように(R=0.800、図2E2)、MH3-B1/rGel毒性に影響を及ぼすRab5をHER2と一緒に示した(図6A2)。0.856という最も高いRはT-DM1相関(図5A3)についても観察されるように、Rab5からの30%の寄与を含めることによって見られた(図6A2および6A3)。Rab4発現とMH3B1/rGel感受性との間に相関は見られなかった(R=0.024、図6B1)。しかし、HER2に対するさらなるバイオマーカーとして影響係数が増加するRab4発現を利用すると、HER2のみと比較してTIとの線形相関が強化された。0.930の最大Rは、HER2およびTI回帰分析に0.6の影響係数を有するRab4を加えることによって得られた(図6B1および6B2)。HSP90および1/Rab11はまた、それほど強くはないがMH3B1/rGel感受性と相関することが示された(HSP90についてはR2=0.552、1/Rab11については0.406、図6C1およびD1)。HSP90および1/Rab11はさらに、HER2発現とMH3B1/rGel感受性との関連性を増大させることが1つずつ示され、両タンパク質の寄与係数1で最大Rが得られた(図6C2、C3、D2およびD3)。
【0128】
図6に示すように、Rab5、Rab4、HSP90および1/Rab11はすべて、MH3B1/rGel感受性についてHER2と共に、可能性のあるバイオマーカーとして1つずつ示された。これらの4つのバイオマーカーとHER2との組み合わせが、MH3B1/rGel感受性に対する相関をさらに増加させるかどうかをさらに研究した。異なるタンパク質を回帰式に組み合わせる順番はRab5(エンドサイトーシス)で開始し、次いでRab4(初期リサイクリング)、HSP90(初期リサイクリング)および1/Rab11(後期リサイクリング)が加わるエンドサイトーシスおよび輸送の経路に基づいた。図6A3に示すように、Rab5(影響係数0.3)はHER2と共にMH3B1/rGel感受性とよく相関した(R=0.856)。しかし、回帰分析に影響係数を増加させたRab4発現を加えると、R値が増加した。Rab4をHER2および0.3×Rab5の寄与係数に対して0.6の寄与係数で添加した場合、0.938の最大Rに達した(図7A1およびA2)。HSP90発現を、HER2、Rab5およびRab4を用いた回帰分析にさらに組み込んだ。MH3B1/rGel感受性とHER2、Rab5(寄与係数0.3)およびRab4(寄与係数0.6)との間の回帰分析にHSP90からの80%の寄与を含めることによって、0.974の最大Rが得られた(図7B)。図6Dに示すように、1/Rab11は、HER2と共にMH3B1/rGel感受性とよく相関することが示された(R=0.894)。MH3B1/rGel感受性とHER2、Rab5、Rab4およびHSP90発現との間の回帰分析に1/Rab11発現の影響を加えると、図7C1に示すようにRも増加した。MH3B1/rGel感受性がHER2、Rab5(寄与係数0.3)、Rab4(寄与係数0.6)、HSP90(寄与係数0.8)と相関した場合、1/Rab11発現と他のタンパク質およびMH3B1/rGel感受性との最大相関は0.4(図7C2)であり、最大Rは0.993であった(図7C2)。回帰分析はまた、MH3B1/rGel感受性と相関させた場合に得られたR値に大きな影響を及ぼすことなく、非生物学的注文で種々のタンパク質の寄与を加えることによって行った(データは示さず)。全般的に、種々のタンパク質の寄与を加えた場合に確立されたMH3-B1/rGel毒性とタンパク質の発現レベルとの間の最良の相関は、TIが以下に対してプロットされた場合に、生物学的理論的順番(R=0.993)(図7C2)で見いだされた;
相対的HER2発現×
(1-(1-Rab5発現)×0.3)×
(1-(1-Rab4発現)×0.6)×
(1-(1-相対的HSP90発現)×0.8)/
(1-(1-(1/相対的Rab11発現))×0.4)
バイオマーカー主導の個人用癌治療の分野は、臨床的に承認された標的化抗癌治療剤の数が増加することにつれて急速に成長している。全体として、薬物ベースの個別化された癌治療の効力は、予後、応答および/または耐性を予測するための選択されたバイオマーカーの信頼性に依存する。HER2標的mAbトラスツズマブの開発は、HER2陽性(全乳癌の約20%)に分類される乳癌患者としてのバイオマーカー主導の個別化がん治療の分野で、治療の一環としてトラスツズマブをルーチン投与することに成功した話である(文献26)。他の例としては、イマチニブの使用のための慢性骨髄性白血病(CML)におけるBCR-ABL融合、または大腸癌の治療におけるセツキシマブの使用のためのEGFRおよびRAS野生型発現の評価がある(文献27)。
【0129】
癌の治療のために現在承認されている標的化薬物の大部分はmAbまたは小分子阻害剤であり、そのための薬物標的はまた、作用のメカニズムの標的を示す。標的自体は、耐性または低い忍容性を経験する可能性が高い患者を除くために追加のバイオマーカーが必要とされ得るにもかかわらず、これらの薬物による治療のための明確なバイオマーカーを示す。しかしながら、癌治療における薬物開発は現在、標的化部分および細胞毒性成分(例えば、細胞増殖抑制薬(ADC)または毒素(標的化毒素))の両方からなる、より複合な標的化治療に移行している。これらの多機能治療薬については、細胞内伝達および/または細胞毒性作用機序に関連する他のバイオマーカーが治療成績に影響を及ぼす可能性が高い(文献15)。これは、ここではHER2陽性細胞株の選択されたパネルにおけるトラスツズマブとT-DM1/MH3-B1/rGel感受性との間の一貫性の欠如によって示される。
【0130】
ここでは、細胞のHER2発現とT-DM1に対する応答との間に強い線形相関が報告されている(図2E1)。これは、HER2mRNAレベルが中央値を上回る患者では中央値を下回るサブグループの患者と比較してT-DM1の奏効率が高いことを実証したいくつかの臨床研究と一致している(文献16、17、28)。薬物活性とHER2発現との間の相関はここではR値によって測定されるように、MH3-B1/rGelと比較してT-DM1についてより強く示され(図2E2)、これは、これらの薬物の細胞毒性成分の差異によって引き起こされ得る。T-DM1の細胞毒性成分(DM1)は比較的小さく親油性の薬物であり、エンドサイトーシス小胞中のトラスツズマブ成分から放出されると、エンドサイトーシス膜を横切って細胞質ゾル中に拡散することができ、そこで微小管にその効果を及ぼす。これはMH3-B1/rGelの細胞傷害性部分(28kDaの親水性I型リボソーム不活性化タンパク質毒素(ゲロニン)であり、これは細胞質ゾルに入るための有効な輸送機構を欠くが、依然として未知の機構によって細胞質ゾルに入ることをある程度可能にする)とは非常に対照的である。MH3-B1/rGelおよびHER2発現と比較して、T-DM1およびHER2発現の相関解析により得られたより高いRはおそらく、これら2つの薬物間のエンドサイトーシス逃避のメカニズムの差異を反映しており、ここで、より多くの障害がゲロニン経路について示される。DM1と比較してより複雑なゲロニンの細胞内放出経路もまた、T-DM1についてのRab5およびRab4と比較して、MH3-B1/rGel感受性に影響を及ぼす調査されたタンパク質(Rab5、Rab4、HSP90およびRab11)の重要性に反映される。
【0131】
T-DM1とMH3-B1/rGelの両方に対する細胞感受性は、ここではHER2に加えてHER3と相関することが示された。第III相臨床試験におけるT-DM1の治療効果は、HER3発現サブグループで同様であることがこれまでに報告されている(文献17)。これは、HER3発現のみとT-DM1感受性との間に相関が見られない、本書に示されるデータと一致する(図3A1)。しかしながら、本発明は、バイオマーカーを異なる寄与係数と組み合わせるための数学的アプローチに焦点を当てている。これらの計算は、HER2と組み合わせたHER3がHER2単独と比較して、T-DM1応答についてのより良好なバイオマーカーとして役立ち得ることを示す。HER3はHER2の好ましい二量体化パートナーとして認識されており、ヘテロ二量体は高活性チロシンキナーゼシグナル伝達を誘導することが報告されている(文献29)。したがって、T-DM1と、MH3-B1/rGel感受性と、HER2と一緒のHER3発現との相関は、トラスツズマブおよびMH3-B1がHER2に結合した際のこれらのヘテロ二量体の間接的阻害を反映している可能性がある。T-DM1中の全長抗体トラスツズマブと比較して、MH3-B1/rGelは一本鎖fv断片からなる。したがって、ヘテロ二量体の一部としてのMH3-B1のHER2への結合は除外できない(HER2/HER3およびHER2/EGFRの両方)。これはさらに、MH-3B1/rGel感受性(Rは0.800から0.970に増加した)とHER2に加えてHER3発現(図8B1)との間の明らかに強い相関(Rは0.926から0.953に増加した、図8A1)、ならびにMH3-B1/rGel感受性がHER2およびHER3に加えてEGFRと相関した場合のRのわずかな増加によって示されるが、T-DM1についてはこのような相関は見られなかった(図8A1およびB1)。
【0132】
Rab5は初期エンドソームに局在し、エンドサイトーシスとクラスリン被覆小胞のエンドソーム融合の両方を制御する(文献18)。T-DM1およびMH3-B1/rGel感受性の両方がここでは、HER2に加えて0.3の寄与係数でRab5に依存することが示された(図5A3および6A3)。両方のHER2標的化治療薬に対するRab5の同様の影響はおそらく、エンドサイトーシスおよびその後のエンドサイトーシス輸送におけるRab5の初期の機能に関連しており、ここで、2つの薬物は、エンドサイトーシスのための同じHER2仲介経路に従う可能性が高い。また、Rab4は初期エンドソームからのリサイクリングを制御することによってエンドサイトーシス経路の初期に作用し、HER2とともにT-DM1およびMH3-B1/rGel感受性と相関することが示された(図5B3および6B3)(文献30)。HER2の迅速なリサイクリングは細胞の薬物取り込みを増加させ得るが、また、細胞内の初期エンドソームにおいて薬物を受動的に局在化される。
【0133】
HER2と共にRab4を組み込んだ場合の0.830から0.930へのRの増大(図8B2)は、MH3-B1/rGelの細胞質ゾル放出のメカニズムとして、初期エンドソームからのサイトゾルトランスロケーションを示している。T-DM1感受性に対する、HER2に加えたRab4の寄与がわずかであること(Rは0.926から0.944に上昇、図8A2)はエムタンシンもある程度初期エンドソームから放出されることを示しており、これまでの報告(文献7、10)で示唆されているように、エムタンシンのサイトゾルトランスロケーションはT-DM1のトラスツズマブ部分のリソソーム隔離のみに依存しているわけではないことを示している。これまでに、Rab5発現は乳癌患者の予後不良を予測し、Rab5/Rab4リサイクリングは細胞外マトリックス浸潤と転移を促進することが示されている(文献31)。したがって、本結果は、Rab5/Rab4およびHER2陽性乳癌患者がT-DM1およびMH3-B1/rGelベースの治療の最有力候補であることを示している。
【0134】
HSP90はHER2シャペロンであり、急速再利用を含むいくつかのメカニズムによってHER2分解を阻害すると主張されている(文献32、33)。HSP90はここではHER2と共にMH3-B1/rGel毒性と相関することが示されているが(図8B2)、T-DM1とは対照的に、このような相関は見られなかった(図8A2)。Rab4依存性の違いについて述べたように、これらの薬物の細胞毒性に対するHSP90の影響の違いは、サイトゾルトランスロケーションのメカニズムの違いを反映している可能性がある。この差異はまた、これらの薬物間の異なるHER2標的化部分の結果であり得る。一方、Rab11はエンドサイトーシスリサイクリングコンパートメント(ERC)に局在し、後に結合物を再利用して細胞膜に戻すことによりエンドサイトーシス過程で作用する(文献34)。MH3-B1/rGel有効度とRab11発現との間に負の相関が見られ(図6B)、MH3-B1/rGel有効度を阻害するためのリサイクリングおよびその後のエキソサイトーシスを示した。T-DM1毒性に対するHER2と共にRab11の影響の欠如(図5D)は、おそらく、T-DM1およびMH3-B1/rGelがそれらの細胞傷害性部分の化学的特性に沿って異なる細胞内経路をたどることを示している。DM1は例えば、Rab11正リサイクリングエンドソームに蓄積する前に、エンドサイトーシス小胞から逃れることができる可能性が高い。
【0135】
合計で、6つのタンパク質を、MH3-B1/rGelおよびT-DM1応答について、HER2と共に潜在的なバイオマーカーとして本書で試験した。試験したバイオマーカーを、ここでは、HER2標的化薬物(EGFRおよびHER3)の標的化部分または薬物の細胞内輸送成分(Rab5、Rab4、HSP90およびRab11)のいずれかを反映する2つの群に分けた(図8)。薬物感受性に対する最良の相関はこれらの群内のバイオマーカーをプールすることによって得られ、薬物感受性に対する増加した相関はバイオマーカーのこれらの2つの群を組み合わせることによって示されなかった(データは示さず)。これらの結果は2つの群のタンパク質が完全に独立していないことを示し、これは、薬物のエンドサイトーシス輸送が細胞結合およびエンドサイトーシスに明らかに依存するので、驚くべきことではない。従って、バイオマーカーとしてのHER2はT-DM1およびMH3-B1/rGelに対する細胞感受性を予測するために、HER3およびEGFRまたはRab4、Rab5、HSP90および1/Rab11のいずれかと組み合わせるべきである(図8)。図3、5、6および7は、HER2の寄与係数に対する寄与係数の増加を伴うバイオマーカーとしての6つのタンパク質の添加の影響を示す。しかし、異なるタンパク質の重要性は図8Aおよび8Bに例示されるように比較され得、バイオマーカーの両方の群についてのR2相関データは同じ図に組み込まれる。薬物感受性に対する増大した相関はバイオマーカーとしてのHER2の発現に細胞外タンパク質HER3または細胞内タンパク質Rab5およびRab4の発現を加えることによってHER2標的化薬物の両方について見出されたが、図8A、BおよびCに可視化されるように、R値への様々な影響を伴って、MH3-B1/rGel感受性はまた、HER2およびHER3に加えてEGFR発現に依存し、HSP90および1/Rab11発現にHER2、Rab5およびRab4に依存することがある程度示された。T-DM1と比較してMH3-B1/rGel感受性に相関するバイオマーカーのより複雑なプールはT-DM1と比較してMH3-B1/rGelのサイトゾルトランスロケーション経路がより障害されていることによって引き起こされる可能性があり、これらの薬物間のHER2標的化部分の差を反映している可能性もある。
【0136】
結論として、本報告は、エンドサイトーシス輸送に関与するタンパク質がHER2に加えて、細胞内作用点を有するHER2標的化治療薬に対する応答を予測するために使用され得ることを初めて示す。しかし、異なるタンパク質の影響は、HER2標的化部分および薬物の細胞内作用成分の両方、ならびにその後のエンドサイトーシス輸送および細胞質ゾル放出の機構に関連するように思われる。ADCならびに細胞内作用メカニズムを有する他の標的化薬物の将来の開発はバイオマーカーの薬物依存性プールを組み込むべきであり、そして今日最も使用されている標的化および耐性のマーカーに加えて、取り込みおよび細胞輸送のためのマーカーを含むべきである。本明細書中で使用されるような数学的アプローチは、予後的ならびに治療的に使用される異なる寄与係数を有するバイオマーカーのプールを確立するために使用され得る。
【0137】
ここで述べる一般的な発明概念は、すべての抗体薬物複合体(ADC)および抗体毒物複合体(免疫毒素)に適用可能である。この方法に従って投与され得るいくつかの好ましい薬物は、表1(ADC)および表2(免疫毒素)に提示される。
【0138】
【表1】
【0139】
【表2】
【0140】
〔実施例2〕
患者集団:
治療前発現および病理学的完全奏効(pCR)データはT-DM1+ペルツズマブ(TDM1+P)群の52人の患者について利用可能であり、トラスツズマブ制御(TH)群の31人の患者について分析のために利用可能であった。進行した患者、同意を撤回した患者、治療施設を離れた患者、または手術前に非プロトコール療法を受けた患者は、この分析のために非pCRとみなされる。以下の表は、各アーム内のHRサブタイプによるpCR速度を示す;
【0141】
【表3】
【0142】
TH発現データ:
すべてのI-SPY2サンプルは、Agilentの2つのカスタムアレイ(15746および32627デザイン)のいずれかに分析される。TDM1+Pアーム中の全てのサンプルを32627アレイ上でアッセイし、一方、THアームをプラットフォーム間で分割し、古い15746プラットフォーム上の22サンプルおよび32627アレイ上の9サンプルを用いた。2つの設計にわたるデータを組み合わせるために、15746プラットフォームのプローブアノテーションを更新し(2016年9月)、各プラットフォームについて、複数のプローブによって表される遺伝子がプローブにわたる平均として計算されるように、平均化することによって正規化された発現データを崩壊させた。次に、ComBatアルゴリズムを適用して、プラットフォームバイアスを調整し、2つのプラットフォームからのデータを組み合わせた。この手順は、実験群にかかわらず、最初の880人のI-SPY 2患者の治療前データについて行われた。THおよびTDM1+Pアームからの組み合わされたプラットフォーム調整されたデータは32627および更新された15746アレイ設計のためのアノテーションファイルとともに、この送達に含まれる。
【0143】
バイオマーカー分析の適格性確認:
RAB5A、RAB4A、RAB11A、およびHSP90AA1の正規化され、プラットフォーム補正された治療前発現レベルを、最初に、適格バイオマーカー評価(QBE)計画に従って、TDM1+Pに対する応答の特定バイオマーカーとして個別に試験した。
【0144】
=ステップ1 TDM1+Pに対する応答の特定予測因子としてバイオマーカーを評価する=
・モデル1A:TDM1+PアームにおけるpCR~バイオマーカー
・モデル1B:THアームにおけるpCR~バイオマーカー
・モデル1C:pCR~治療+バイオマーカー+治療xバイオマーカー
・モデル1D:pCR~治療+バイオマーカー+治療xバイオマーカー+HRステータス
評価されたバイオマーカーのうち、RAB5Aのみが、TDM1+pアーム(尤度比(LR)試験p=0.012)での応答と関連しているが、対照アーム(LR試験p=0.242)では関連していない。
【0145】
【表4】
【0146】
RAB5A発現と治療との間の相互作用についてのp値は0.024であり、これは、HR状態について調整した後に<0.05のままである。以下の表は、評価された4つのバイオマーカーについての結果を要約する。
【0147】
RAB5Aは連続的な適格バイオマーカーとして成功し、QBE工程2で評価される。
【0148】
=ステップ2 二分しきい値を識別する=
本発明者らはバイオマーカーx処置相互作用のp値を最小化する閾値を同定するために、モンテカルロ2倍交差検定手順を使用した。具体的には100回の反復について、本発明者らは本発明者らの訓練セットとして、治療群とpCR状態とのバランスをとって、症例の半分を無作為に選択した。我々は10パーセンタイルと90パーセンタイルとの間のあらゆる値を、トレーニングセットを「高」対「低」RAB5A発現群に二分するための潜在的閾値として考慮し、一連のロジスティック回帰モデルに適合させて、バイオマーカーx処置相互作用を評価した(モデル1C)。本発明者らはトレーニングセット中の相互作用項についてのLR試験p値を最小にする閾値を選択し、それを使用して試験セットを二分し、試験セット中のバイオマーカーx処置相互作用の有意性を評価した。次に、ロジット方法を用いて100個の試験セットにわたってLRp値結合し、最小結合LR試験p値生じる閾値を選択した。
【0149】
この手順を用いて、9.76の閾値を選択した。図9を参照されたい。二分可変として、高いRAB5Aレベルを有することはまた、TDM1+p(OR=5.99(95%CI:1.23~40.27)、サーモフィッシャーサイエンティフィックの正確検定p=0.01)における応答と関連するが、対照群(OR:0(95%CI:0~1.74)、サーモフィッシャーサイエンティフィックの正確検定p=0.06)とは関連せず、LRp=0.001を有するバイオマーカーx処置相互作用タームを有する。
【0150】
9.76がこの手順で同定された最適閾値であったが、RAB5A値が9.76未満の患者はTHアームで2例のみであった。これは部分的にはTHおよびTDM1+PアームにおけるRAB5A発現の差異に起因し得、ここで、RAB5AレベルはTDM1+PアームよりもTHアームにおいて有意に高い。アレイ設計は、この差に寄与し得る。我々はTDM1+Pアームのみでバイオマーカーの性能を評価することを検討することを望むかもしれない(分析計画で事前に指定されたように、バイオマーカー×治療相互作用を評価するモデルを使用するのではなく)。上述したものと同様のモンテカルロ法(ただし、TDM1+Pのみにモデル1Aを当てはめる)を用い、選択される最適閾値は、9.76のままであった。
【0151】
=ステップ3 HER2+段階的シグネチャーの文脈におけるRAB5A群内のベイズ推定pCR速度=
・モデル2:pCR~HR+RAB5A+治療+HRx処置+RAB5Ax処置
患者をRAB5A-高(>=9.76)群とRAB5A-低(<9.76)群に二分するために同定した最適閾値(9.76)を適用した場合、ベイズ推定pCR確率は、RAB5A-高の患者の対照群の24%に対してTDM1+P群で68%であった。対照的に、推定pCR確率はTDM1+PアームにおけるRAB5A-低サブセットにおいて28%であり、THアームにおいて42%である。比較のために、同じモデルを用いて、HER2+群全体の推定pCR確率は、TDM1+P群で61%、TH群で27%である。ベイズpCR確率曲線を図10に示す。
【0152】
〔実施例3〕
本実施例は、1-SPY2試験におけるTH-およびT-DM1+P群のHSP90、Rab11a、Rab4AおよびRab5a発現プロファイルと治療成績との相関の評価を示す。1-SPY-2データからのRNA発現プロファイルを、T-トラスツズマブ+化学療法(TH)またはトラスツズマブ-エムタシン+ペルツズマブ+化学療法(TDM1+P)を受けた2つの治療群において、pCRとHSP90、Rab11A、Rab4AおよびRab5aの発現レベルとの間の相関について評価した。T-DM1+Pアームにおいて、pCR0群とpCR1群との間でRab5Aの発現レベルに有意差がある。2つのアームのいずれにおいても、他のタンパク質のいずれについても有意差は見出されなかった。
【0153】
【表5】
【0154】
【表6】
【0155】
<参考文献一覧>
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上記明細書に記載された全ての刊行物、特許、特許出願およびアクセッション番号は、その全体が参照により本明細書に援用される。本発明は、特定の実施形態に関して開示されているが、特許請求の範囲に記載された本発明がそのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことは、理解されるべきである。実際、本発明に記載された組成物および方法の種々の改変および変形は当業者にとって明らかであり、以下の特許請求の範囲に示した範囲に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0156】
図1A】SK-BR-3、SKOV-3、HCC1954、AU-565、MDA-MB-435およびMDA-MB-231細胞におけるHER2およびγ-チューブリンの発現のウエスタンブロットの結果である。
図1B】SK-BR-3、SKOV-3、AU-565、HCC1954およびMDA-MB-435の、各薬物による72時間の治療後の相対的生存率(MTT)を示す。
図2A】細胞内作用性の標的治療薬であるトラスツズマブおよびHER2に対する細胞感受性の模式図である。
図2B】SK-BR-3、SKOV-3、AU-565、HCC1954およびMDA-MB-435細胞のうち、トラスツズマブ、T-DM1およびMH3-B1/rGelに対する細胞感受性を示す。
図2C】SK-BR-3、SKOV-3、AU-565、HCC1954およびMDA-MB-435細胞における、HER2(D1)、HER3(D2)、EGFR(D3)およびγ-チューブリン発現の、ウエスタンブロット(n=2)による代表の結果を示す。
図2D】SK-BR-3、SKOV-3、AU-565、HCC1954およびMDA-MB-435細胞における、HER2(D1)、HER3(D2)、EGFR(D3)およびγ-チューブリン発現の、ウエスタンブロット(n=2)による発現量の結果を示す。
図2E】HER2とT-DM1感度(1/IC50(T-DM1))(E1)またはMH3-B1/Gel感度(TI)(E2)との線形回帰解析曲線を示す。
図3A】T-DM1感受性に対するHER3およびEGFR発現のHER2を伴う影響を示す。
図3B】T-DM1感受性に対するHER3およびEGFR発現のHER2を伴う影響を示す。
図3C】MH3-B1/rGel感受性に対するHER3およびEGFR発現のHER2を伴う影響を示す。
図3D】MH3-B1/rGel感受性に対するHER3およびEGFR発現のHER2を伴う影響を示す。
図3E】MH3-B1/rGel感受性に対するHER3およびEGFR発現のHER2を伴う影響を示す。
図4A】SK-BR-3、SKOV-3、AU-565、HCC1954およびMDA-MB-435細胞におけるRab5、Rab4、HSP90、Rab11およびγ-チューブリン発現のウエスタンブロット(n=2)による代表の結果を示す。
図4B】SK-BR-3、SKOV-3、AU-565、HCC1954およびMDA-MB-435細胞におけるRab5、Rab4、HSP90、Rab11およびγ-チューブリン発現のウエスタンブロット(n=2)による発現量の結果を示す。
図4C】SK-BR-3、SKOV-3、AU-565、HCC1954およびMDA-MB-435細胞におけるRab5、Rab4、HSP90、Rab11およびγ-チューブリン発現のウエスタンブロット(n=2)による発現量の結果を示す。
図4D】SK-BR-3、SKOV-3、AU-565、HCC1954およびMDA-MB-435細胞におけるRab5、Rab4、HSP90、Rab11およびγ-チューブリン発現のウエスタンブロット(n=2)による発現量の結果を示す。
図4E】SK-BR-3、SKOV-3、AU-565、HCC1954およびMDA-MB-435細胞におけるRab5、Rab4、HSP90、Rab11およびγ-チューブリン発現のウエスタンブロット(n=2)による発現量の結果を示す。
図5】T-DM1感受性に対するRab5、Rab4、HSP90およびRab11発現のHER2を伴う影響を示す。
図6】MH3-B1/rGel感受性に対するRab5、Rab4、HSP90およびRab11発現のHER2を伴う影響を示す。
図7】MH3-B1/rGel感受性に対するRab5、Rab4およびHSP90または1/Rab11発現のHER2を伴う影響を示す。
図8】T-DM1(A)またはMH3-B1/rGel感受性(B)に対する、HER3およびEGFRの組み合わせ(A1、B1)、または、Rab5、Rab4、HSP90および1/Rab11の組み合わせの発現(A2、B2)のHER2を伴う影響を示す。
図9】バイオマーカーx処置相互作用のp値を最小化する閾値を決定するためのモンテカルロ2倍交差検定手順の結果を示す。
図10】RAB5A発現に関連するベイズpCR確率曲線を示す。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-03-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ras関連結合(RAB)タンパク質5(RAB5)の発現レベルを検出するための試薬を含むキット。
【請求項2】
前記検出するための試薬が、癌細胞においてRAB5タンパク質の前記レベルを測定するための試薬である、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記RAB5が、RAB5A、RAB5BおよびRAB5Cからなる群から選択される、請求項1または2に記載のキット。
【請求項4】
前記RAB5がRAB5Aである、請求項1~3のいずれか1項に記載のキット。
【請求項5】
前記試薬が、プローブ、増幅オリゴヌクレオチド、および抗体からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載のキット。
【請求項6】
前記RAB5の発現レベルを検出するための試薬が抗体である、請求項1~5のいずれか1項に記載のキット。
【請求項7】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項6に記載のキット。
【請求項8】
前記キットが、免疫分析によってRAB5の発現レベルを検出するためのものである、請求項1~7のいずれか1項に記載のキット。
【請求項9】
前記免疫分析が免疫組織化学分析である、請求項8に記載のキット。
【請求項10】
可視化試薬、検出試薬および/または適切なコントロール試薬を1つ以上さらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のキット。
【請求項11】
少なくとも1つの細胞表面マーカーのタンパク質発現レベルを検出するための試薬をさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のキット。
【請求項12】
前記細胞表面マーカーが、ヒト表皮成長因子受容体(HER)1、HER2、HER3、分化抗原群(CD)3ε、CD19、CD22、CD25、CD30、CD33、CD56、CEA(CD66e)、CD74、CD79a、CD138、ナトリウム依存性リン酸輸送タンパク質2b(NaPi2b)、糖タンパク質非転移性メラノーマタンパク質B(gpNMB)、トロホブラスト細胞表面抗原(TROP)-2、グアニル酸シクラーゼ2C(GUCY2C)、Nectin-4、前立腺の6回膜貫通上皮抗原1(STEAP1)、葉酸受容体α(FRα)、インターロイキン(IL)-2R、上皮細胞接着分子(EpCAM)、およびメソテリン(MSLN)からなる群から選択される、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
前記細胞表面マーカーがHER1である、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
前記細胞表面マーカーがHER2である、請求項12に記載のキット。
【請求項15】
RAB4、RAB11および/またはヒートショックタンパク質(HSP)90から選択されるマーカーを検出するための試薬をさらに含む、請求項1~14のいずれか1項に記載のキット。
【請求項16】
検出するための前記試薬の使用によって生成された生データを臨床医の予測値のデータに翻訳するためのコンピュータベースの分析プログラムをさらに含む、請求項1~15のいずれか1項に記載のキット。