(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065529
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】フェールセーフ式回転速度監視プロセスのための方法及びデバイス
(51)【国際特許分類】
H02P 27/08 20060101AFI20230502BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20230502BHJP
【FI】
H02P27/08
H02M7/48 M
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028407
(22)【出願日】2023-02-27
(62)【分割の表示】P 2021526415の分割
【原出願日】2019-11-25
(31)【優先権主張番号】18208372.5
(32)【優先日】2018-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】521204068
【氏名又は名称】ケーイービー オートメーション ケージー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】ムシオリク,ステファン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】センサレスの三相駆動装置の回転速度を監視するための、フェースセーフ監視プロセスの方法を提供する。
【解決手段】三相駆動装置(3)は、相U、V、Wの三相で、インバータ(7)を有する駆動電子機器システム(2)によって作動される。三相U、V、Wにおける電圧信号は、パルス幅変調信号としてもたらされる。駆動装置に適用されたインバータ(7)の出力周波数が確認され、駆動装置(3)の実際の回転速度(20)はそこから特定されて、実際の回転速度(20)は、明記された目標回転速度(21)と比較される。実際の回転速度(20)が、目標の回転速度(21)を超過した場合、駆動装置は停止される。インバータ(3)の出力周波数を確認するために、パルス変調信号のパルス幅のみが使用される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサレスの三相駆動装置(3)におけるフェールセーフ式回転速度監視のための方法であって、前記三相駆動装置(3)は相U、V、Wの三相において、インバータ(7)を備えた駆動電子機器(2)によって制御され、前記三相U、V、Wにおける電圧信号は、パルス幅変調発生器が発生するパルス幅変調信号として存在し、前記パルス幅変調信号に基づいて、前記駆動装置(3)に適用されたインバータ(7)の出力周波数が特定され、前記インバータ(7)の出力周波数に基づいて、駆動装置(3)の実際の回転速度(20)が特定され、前記実際の回転速度(20)は、予め設定可能な所望の回転速度(21)と比較され、前記実際の回転速度(20)が前記所望の回転速度(21)を超過した場合、前記駆動装置(3)はスイッチオフにされ、前記出力周波数は、2つのチャネルで特定され、前記パルス幅変調信号のパルス幅のみが、第1のチャネルにて前記インバータ(7)の出力周波数を特定するために使用され、
前記出力周波数は、一方では第1のマイクロ制御器(9)によって前記第1のチャネルにて特定され、他方では第2のマイクロ制御器(10)によって第2のチャネルにて特定され、前記第2のチャネルにおけるインバータ(7)の出力周波数の特定のために、前記パルス幅変調信号のパルス幅のみが同様に使用される、方法。
【請求項2】
前記パルス幅変調信号のパルス幅は、前記三相U、V、Wにおける電圧信号が3相2相変換された変換信号の位相角である変換角度を特定するために使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
固定子固定座標系において前記パルス幅変調信号のパルス幅が3相2相変換された変換パルス幅の比は、前記変換角度を特定するために使用されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
特定した前記変換角度の単位時間あたりの差分は、前記出力周波数を特定するために使用されることを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記パルス幅変調信号のパルス幅は、デッドタイム補償のために調整されることを特徴とする、請求項1~4のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記2つのマイクロ制御器(9、10)によって特定された出力周波数は、前記2つのマイクロ制御器(9、10)間の相互通信(16)を介して、交換及び比較されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記駆動装置(3)は、前記出力周波数が等しくない場合、スイッチオフにされることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
特に請求項1~7のうちいずれか一項に記載の方法を実行するための、センサレスの三相駆動装置(3)におけるフェールセーフ式回転速度監視のためのデバイスであって、
インバータ(7)を有し、それによって前記三相駆動装置(3)を、相U、V、Wを伴う三相において制御することができる、駆動電子機器(2)と、
電圧信号を三相におけるパルス幅変調信号として提供できる、パルス幅変調発生器と、
前記駆動装置(3)に適用された前記インバータ(7)の出力周波数を2つのチャネルで特定するための手段(9、10、13)と、
前記インバータの前記出力周波数に基づいて、前記駆動装置(3)の実際の回転速度(20)を特定するための、計算ユニット(13)と、
比較ユニット(22)と、
スイッチオフデバイス(18)と
を備え、
前記実際の回転速度(20)を、前記比較ユニット(22)を使用して予め設定可能な所望の回転速度(21)と比較することができ、
前記比較ユニット(22)は、前記実際の回転速度(20)が前記所望の回転速度(21)を超過した場合に、対応する信号(23)を生成して、前記信号(23)を、前記駆動装置(3)をスイッチオフすることができる前記スイッチオフデバイス(18)に送信し、
前記パルス幅変調信号のパルス幅を検出するための手段(9、10)を備え、
前記手段(9、10)は、前記インバータ(7)の前記出力周波数を特定するために、前記パルス幅変調信号のパルス幅のみを第1のチャネルで使用するように構成された第1のマイクロ制御器(9)と、前記インバータ(7)の前記出力周波数を特定するために、前記パルス幅変調信号のパルス幅のみを第2のチャネルで使用するように構成された第2のマイクロ制御器(10)とを備える、デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサレスの三相駆動装置におけるフェールセーフ式回転速度監視のための方法に関する。三相駆動は、インバータを備えた駆動電子機器によって、相U、V、Wの三相において制御され、これら三相U、V、Wにおける電圧信号は、パルス幅変調信号として存在する。本発明は、センサレスの三相駆動装置におけるフェールセーフ式回転速度監視のためのデバイス、詳細には本発明による方法を実行するためのデバイスにも関する。
【背景技術】
【0002】
このタイプの三相駆動装置は、機械ツール、ロボット、コンベアベルトなどを駆動するために、産業用途で使用される。それらは潜在的危険、詳細にはオペレータに対する潜在的危険を呈し、そのために適切な防護が必要とされる。特に電力駆動装置を防護するための考えられる方法は、EN61800-5-2の「Electrical power drive systems with adjustable rotational speed; Part 5-2; Requirements for safety - functional safety」に規準化されている。
【0003】
規準化された安全機能の1つは、所謂安全最大速度(SLS:Safely Limited Speed)に関係する。この安全機能によると、予め設定可能な最大速度、すなわち回転速度が、駆動装置側で超過されていないことが監視される。この目的のため、駆動装置の回転速度は監視され、予め設定可能な制限速度を超過すると、エラー反応が誘発される。考えられるエラー反応は、駆動装置への電力供給を直ちに遮ることであり、次に駆動装置は停止され、制御されなくなる(STO:Safe Torque Off)。
【0004】
とりわけ、規準によるSLS安全機能を実行するために、先行技術から、例えば回転速度特定などの外部センサを使用することが知られている。このようなセンサは同様に、EN61508などの対応した安全規準に従わなければならない。
【0005】
駆動装置の回転速度を測定するための、外部センサシステムの使用は、毎日の実際の使用においてそれ自体を立証しているが、不利点も存在する。一方では、外部センサシステムの使用はコストがかかり、特にこのような外部センサシステムに関する安全規準に追加的に従うことを必要とし、本質的に不利益である。他方では、EN61800-5-2などの関連の基準に従うために、重複して動作するセンサシステムを使用する必要がある場合があり、それはより高いコスト、さらにはより高い設置コストをもたらす。
【0006】
前述の不利点に対処するために、電流及び電圧が駆動電子機器からモータに伝えられた際の電流及び電圧曲線に基づき、モータの負荷速度を特定することが、独国特許出願公開第102009048944号明細書から知られている。この目的のため、検出した電流、検出した電圧、駆動によって予め決められた周波数、及びモータの特性マップデータに基づいて、負荷速度がオブザーバモデルを計算することによって特定される。
【0007】
独国特許出願公開第102009048944号明細書で知られている解決策は、外部センサを必要としないが、規準に従うために2チャネル電流及び/または電圧の検出を必要とし、対応した重複動作の計測デバイスを設けることを必要とする。それは複雑で、そのために高価である。電流計測に関して、モータ側の動作ポイント、または電流がゼロである場合の負荷事例が存在することも、考慮に入れなければならない。これらの事例において、駆動装置側の回転速度は特定することはできず、そのため機能的安全はこれらの場合において保証されない。これは特に、所謂サーボモータ及び同期リラクタンスモータの事例であり、そのために、これらのモータは一般的にSLS安全機能から除外される。
【0008】
欧州特許出願公開第1211774号明細書による先行技術では、障害が検出されたときに2チャネルのスイッチオフが生じる、センサレスの三相駆動装置のための安全速度監視も良く知られている。この目的のため、2つのほとんど重複したシステムにおいて、特定された固定子の周波数設定ポイントが限定され、及び2チャネルで監視され、ならびに、各システムにおける、インバータの電流バルブのためのそれぞれの制御設定信号が、これから抽出され、それが2つの監視電子機器において互いに対して比較される。重複するシステム設計により、この構成もコストがかかり、実行するために時間を浪費することが判っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第102009048944号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1211774号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記に基づき、本発明の目標は、先行技術に比べて容易に実行でき、その一方で同時に規準化された安全機能に従った、センサレスの三相駆動装置をフェールセーフ式回転速度監視する方法を提供することである。本発明は、この方法を実行するよう対応したデバイスを提供することも意図される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目標を実現するため、センサレスの三相駆動装置をフェールセーフ式回転速度監視する方法が提供される。この方法において、三相駆動装置は相U、V、Wの三相において、インバータを備えた駆動電子機器によって制御される。三相U、V、Wにおける電圧信号は、パルス幅変調信号として存在し、このパルス幅変調信号において、駆動装置に適用されたインバータの出力周波数は特定され、そこから実際の駆動装置の回転速度が特定される。実際の回転速度は、予め設定可能な所望の回転速度と比較され、実際の回転速度が所望の回転速度を超過した場合、駆動装置はスイッチオフにされる。パルス幅変調信号のパルス幅のみが、インバータの出力周波数を特定するために使用される。
【0012】
デバイス側において、目標を実現するため、特に上記の方法を実行するために、センサレスの三相駆動装置をフェールセーフ式回転速度監視するデバイスが提供される。このデバイスは、三相駆動装置を相U、V、Wの三相で制御することができるインバータと、電流及び電圧信号を、三相U、V、Wにおいてパルス幅変調信号として提供でき、駆動装置に適用されたインバータの出力周波数を特定する手段である、パルス幅変調発生器と、インバータの出力周波数に基づいて駆動装置の実際の回転速度を特定するための、計算ユニットと、比較ユニット及びスイッチオフデバイスであって、比較ユニットによって実際の回転速度を予め設定可能な所望の回転速度と比較可能で、実際の回転速度が所望の回転速度を超過した場合に、比較ユニットは対応した信号を生成して、それを、駆動装置をスイッチオフできるスイッチオフデバイスに送信する、比較ユニット及びスイッチオフユニットと、を含む駆動電子機器を備える。デバイスは、パルス幅変調信号のパルス幅を特定する手段を含み、駆動装置に適用されたインバータの出力周波数の特定が、パルス幅のみに基づいて可能である。
【0013】
本発明によると、使用中に必要に応じて、駆動装置に適用されたインバータの出力周波数を特定すること、及びこの出力周波数に基づいて、駆動装置の実際の回転速度を特定すること、が提供される。パルス幅変調信号のパルス幅のみが、出力周波数を特定するために使用される。先行技術とは対照的に、回転速度を特定するために、電流も電圧も計測されない。これは、方法の実行及びデバイスの構造を簡略化するだけではなく、用途の範囲も広げる。なぜなら、パルス幅の特定で特に有利なのは、それが完全なモータタイプをSLS安全機能から除外する必要がないことだからである。詳細には、サーボモータ及び同期リラクタンスモータも、本発明による方法または本発明によるデバイスを使用して、安全に動作させることができる。これらモータタイプに関して、これらのモータタイプ自体ではなく、先行技術によって必然的に提供されなければならない電流測定の事例のような、ほんの数か所の動作ポイントが除外されることになる。
【0014】
本発明の鍵は、予測に反して、電流及び/または電圧が三相駆動装置に送られる際に、電流及び/または電圧を記録することが重要ではない、という事実にある。本発明は、インバータ側の出力電圧を、インバータを提供する周波数変換器の中間回路電圧に基づいて特定できるという事実を利用する。中間回路電圧は、一定比率にある位相要素の電圧の特定に含まれ、これは、出力電圧と中間回路電圧の両方の具体的な計測を不要にする。本発明による設計によって、出力周波数、したがって回転速度が、パルス幅変調信号のパルス幅のみに基づいて特定される。例えば相U+、V+、W+のIGBTを制御するためのパルス幅は、特にパルス幅変調発生器と同じ解像度を伴うゲートによって特定することができる。
【0015】
いずれにせよパルス幅変調は提供されるので、信頼性のある回転速度の特定は、簡単な手段で、かつ追加のハードウェア機器無しで、本発明による方法またはデバイスによって実現できる。これは、外部センサシステムも、電流及び/または電圧計測のための追加の計測デバイスも必要ないことを意味する。
【0016】
このように、本発明による設計は、使用中に必要に応じて駆動装置の回転速度を特定することを提供する。特定された回線速度は、実際の回転速度として、予め設定可能な所望の回転速度と比較される。実際の速度が所望の速度を上回る場合、すなわち予め設定可能な制限速度が、駆動装置の実際の動作中に超過される場合、駆動装置は直ちにスイッチオフにされる。
【0017】
駆動装置の速度は、駆動装置に適用されたインバータ側における出力周波数に基づいて、計算される。次に、出力周波数は、パルス幅変調信号のパルス幅を使用して特定される。これは、PWM発生器と同じ解像度を伴うカウントゲートによって可能になり、非常に簡単に実行できる方法をもたらす。
【0018】
本発明の別の特徴によると、特定されたパルス幅は、変換角度を特定するために使用される。変換角度を特定するために、下記の式に示されるように、固定子固定座標系における変換パルス幅の比率が使用される。
【0019】
したがって、スイッチング周期CNTFSWITCHは、三相のパルス幅によって特定することができ、数式1、または、
CNTFSWITCH=Max(pU;pV;pW)+Min(pU;pV;pW)+2TOTKOMP
である。
ここで、
pU、pV、pWは、インバータバルブを制御するための、PWM信号のパルス幅である。
TOTKOMPは、インバータバルブのデッドタイムである。
【0020】
【0021】
パルス幅は、デッドタイム補償CNTTOTKOMPのために調整しなければならない。位相要素の電圧は、以下の数式2ように、スイッチング周期CNTFSWITCH及び中間回路電圧の瞬時値uICを用いて得られる。
ここで、
CNTTOTKOMP
U、CNTTOTKOMP
V、CNTTOTKOMP
Wは、三相U、V、Wそれぞれのデッドタイム補償の値である。
uU、uV、uWは、仮想スターポイントに関する相電圧の瞬時値である。
【0022】
【0023】
α/β座標系に変換され、得られた位相要素の電圧は、数式3である。変換角度は、次のように固定子固定座標系において変換された電圧から得られる。
φ=arctan(uβ/uα)
ここで、
uα、uβは、仮想スターポイントに関する相電圧の瞬時値をα/β座標系に変換した電圧成分の瞬時値である。
【0024】
【0025】
上記の式により、電圧の比率のみが変換角度を特定するために重要なので、計算のために、制御程度を直接使用することができる。それによって、中間回路電圧の特定、すなわち中間回路電圧の計測は必要ない。結果は以下の数式4のとおりである。
ここで、
pα、pβは、uα、uβに対応するPWM信号のパルス幅である。
【0026】
【0027】
したがって得られた変換角度は、
φ=arctan(pβ/pα)
である。
ここで、
φは、回転子位置(変換角度)である。
【0028】
次に、角度差は出力周波数をもたらす。
【0029】
【0030】
ここで、
φは、回転子位置(変換角度)である。
ω1は、出力電気角周波数[rad/s]である。
(φ(k)-φ(k-1))は、φの時系列値の差分である。
Δφは、単位時間:Δtあたりのφの差分である。
fCALCは、計算の頻度である。
【0031】
このように特定された電気角周波数に基づいて、三相駆動装置の機械的速度ω[rad/s]が、以下でより詳細に示されるように、特定することができる。
【0032】
本発明の別の特徴によると、出力周波数が2つのチャネルで特定される。すなわち、一方では第1のマイクロ制御器によって、及びこれに依拠して、他方では第2のマイクロ制御器によって特定される。出力周波数の重複する特定は、増加する安全要求を伴う規準化されたコンプライアンスの役割を担う。
【0033】
これに関連して、2つのマイクロ制御器によって特定された出力周波数が、2つのマイクロ制御器間の相互通信を介して、交換及び比較されることも好ましい。この比較の結果が等しくない場合、駆動装置は直ちにスイッチオフにされる。
【0034】
本発明によると、したがって2つのスイッチオフの状況間で、特徴付けをしなければならない。第1の状況によると、本発明によって設けられた2つのマイクロ制御器が、互いに異なる出力周波数を検出した場合、駆動装置は直ちにスイッチオフにされる。したがって駆動装置の実際の回転速度を特定することは、もはや重要ではない。マイクロ制御器が異なる出力周波数を特定するため、駆動装置はすでにスイッチオフにされている。規準化された許容範囲を提供することができ、それによって、マイクロ制御器によって特定された出力周波数間の逸脱は、特定の可能な予め設定可能な制限内で容認される。
【0035】
マイクロ制御器によって特定された出力周波数が、予め設定可能な許容範囲内で同じサイズである場合、駆動装置の実際の回転速度は、この特定に基づいて決定される。実際の回転速度が、予め設定可能な所望の回転速度を超過した場合、駆動装置は、駆動装置の実際の回転速度が高すぎる、すなわち許容できない高さであるこの事例において、スイッチオフにされる。したがって駆動装置は、実際の回転速度が所望の回転速度を下回る場合、スイッチオフにされない。許容範囲は、実際の回転速度と所望の回転速度との間の比較のためにも、提供され得る。
【0036】
駆動装置の実際の回転速度を、出力電気角周波数ω1に基づいて本来の公知の方法で特定することができる。機械的速度を特定するために、異なる駆動装置タイプ間で特徴付けをしなければならない。
【0037】
非同期駆動装置の結果は、例えば以下のとおりである。
ω=ω1・(1-s)/p
ここで、
ω1は、出力電気角周波数[rad/s]である。
ωは、機械的速度[rad/s]である。
sは、仕事損失である。
pは、磁極の数である。
【0038】
しかし同期駆動装置の結果は以下のとおりである。
ω=ω1/p
ここで、
ω1は、出力電気角周波数[rad/s]である。
ωは、機械的速度[rad/s]である。
【0039】
本発明を用い、プロセス側及びデバイス側の両方で、回転速度の信頼できる特定が、規準に従って可能になること、ならびに先行技術とは対照的に電流計測も電圧計測も実施されない、という利点が実現される。回転速度の信頼できる特定は、PWM信号の変調レベルのみに基づいて実行される。これは、プロセス及びデバイス設計を簡略化できるだけではなく、以前はSLS安全機能から除外された、サーボモータ及び同期リラクタンスモータなどの駆動装置タイプについて、安全速度特定を受けさせることを可能にする。
【0040】
本発明のさらなる特徴及び利点は、図面に基づいた以下の説明から明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明によるデバイスまたは方法の、概略回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、本発明による、センサレスの三相駆動装置3におけるフェールセーフ式回転速度監視のためのデバイス1の、概略回路図を示す。
【0043】
三相駆動装置3は、駆動電子機器2によって三相で、すなわちモータ相U、V、Wで制御される。駆動電子機器2は同様に、相L1、L2、L3を伴う三相供給ライン4によって供給される。
【0044】
非同期モータの形態の電気モータである三相駆動装置3を制御するために、例えば駆動電気機器2は周波数変換器5を有し、3つのモータ相U、V、Wにおける電圧信号が、パルス幅変調信号として存在する。
【0045】
本来知られている方法において、周波数変換器5は、整流器6及びインバータ7を有し、それらは中間回路8によって相互接続される。
【0046】
本発明によるデバイス1は、重複して配置された2つのマイクロ制御器9及び10を有し、それらによって、インバータ側の出力周波数は2つのチャネルで特定される。第1のチャネル11及び第2のチャネル12は、この目的のために設けられる。マイクロ制御器9は第1のチャネル11に接続され、マイクロ制御器10は第2のチャネル12に接続される。2つのマイクロ制御器9及び10は、相互通信16によって相互接続される。
【0047】
使用中に必要に応じて、三相駆動装置3に適用されたインバータ7の出力周波数は、方法側において特定される。パルス幅変調信号のパルス幅が、出力周波数を特定するために使用される。
【0048】
2つのマイクロ制御器9及び10によって特定された出力周波数は、相互通信16を介して互いに比較される。等しくない場合、駆動装置3は直ちにスイッチオフにされ、この目的のために、スイッチオフデバイス18が設けられる。スイッチオフデバイス18は、矢印19に従って駆動装置3と通信する。代替として、また好ましくは、スイッチオフデバイス19と周波数インバータ5との間の通信接続は、矢印24に従って設けられる。等しくない出力周波数が検出されると直ぐに、信号が矢印17に従ってスイッチオフデバイス18に送信される。それは、駆動装置3を、通信接続19を介して直接的か、または通信接続24を介した周波数インバータ5の割り込みによる間接的のいずれかで、直ちにスイッチオフするのを保証する。駆動装置3は、好ましくは例えば周波数変換器5を主電源から接続解除することで、適切な切り替えデバイスを作動させることによってスイッチオフされる。
【0049】
マイクロ制御器9及び10によって重複して特定された出力周波数が等しい場合、駆動装置3の実際の回転速度20は、これに基づいて特定される。この目的のため、本発明によるデバイス1は計算ユニット13を有する。計算ユニット13は、矢印14及び15に従ってマイクロ制御器9及び10に通信接続する。
【0050】
計算ユニット13によって特定された実際の回転速度20は、予め設定可能な所望の回転速度21と比較される。この目的のため、本発明によるデバイスは比較デバイス22を有する。実際の回転速度20が所望の回転速度21を超過した場合、駆動装置3は直ちにスイッチオフにされる。この目的のため、比較デバイス20は、矢印23に従ってスイッチオフデバイス18と通信接続する。
【0051】
2つのマイクロ制御器9及び10は、下記の角度差(数式6)に基づいて出力周波数を特定する。
【0052】
【0053】
ここで、回転子位置、すなわち変換角度φは以下のとおりである。
φ=arctan(pβ/pα)
ここで、数式7、
ここで、
pU、pV、pWは、インバータバルブを制御するための、PWM信号のパルス幅である。
φは、回転子位置(変換角度)である。
ω1は、出力電気角周波数[rad/s]である。
fCALCは、計算の頻度である。
【0054】
【0055】
上記の図から確認できるように、出力周波数は、本発明の方法を使用してPWM信号の変調レベルに基づいて直接的に特定することができる。出力電流、出力電圧、さらには中間回路電圧も、計測する必要はない。
【0056】
図1による概略表示は、説明目的のためのみであり、単なる例示である。詳細には、計算ユニット13、比較デバイス22、スイッチオフデバイス18、ならびにマイクロ制御器9及び10を、共通のデバイスに組み合わせることが可能である。マイクロ制御器9及び10が各々、計算ユニット13、スイッチオフデバイス18、及び/または比較デバイス22の機能を重複して引き継ぐようにも提供され得る。しかし、発明の本質的重要性は、単に回転速度の信頼できる特定が、PWM信号の制御程度のみに基づいてもたらされ、相互通信における不等性を検出する、2つのチャネルの特定が実施されることである。不等性を検出した場合、駆動装置3は直ちにスイッチオフにされる。加えて、駆動装置3は、特定された実際の回転速度が予め設定可能な所望の回転速度を上回った場合に、スイッチオフにされる。規準に順守するよう定義されなければならない許容範囲は、不等性及び/または速度超過の検出のために提供することができる。
【0057】
図2は、非同期駆動装置の等価回路図を示す。このような駆動装置の、実際の回転速度21は以下のとおりである。
ω=ω
1・(1-s)/p
なお、
X
1σ=ω
1L
1σ、X
2σ’=ω
1L
2σ’、及びX
h=ω
1L
hであり、
ここで、数式8、及び、数式9、である。
ここで、
R
1は、固定子抵抗である。
R
2’は、回転子抵抗である。
L
1σは、固定子リーケージインダクタンスである。
L
2σ’は、回転子リーケージインダクタンスである。
L
hは、メインインダクタンスである。
sは、仕事損失である。
【0058】
【0059】
【0060】
図3は、同期駆動装置の等価回路図を示す。これに関し、下記を適用する。
U
1=U
p+I
1(R
1+jX
1)
U
p=ω・ψ
P
速度結果は以下のとおりである。
ω=ω
1/p
ここで、
ψ
Pは、回転子磁束である。
R
1は、固定子抵抗である。
L
1dは、d方向の固定子インダクタンスである。
L
1qは、q方向の固定子インダクタンスである。
【符号の説明】
【0061】
1 デバイス
2 駆動電子機器
3 電気モータ(三相駆動装置)
4 供給ライン
5 周波数変換器
6 整流器
7 インバータ
8 中間回路
9 マイクロ制御器
10 マイクロ制御器
11 第1のチャネル
12 第2のチャネル
13 計算ユニット
14 矢印
15 矢印
16 相互通信
17 矢印
18 スイッチオフデバイス
19 矢印(通信接続)
20 実際の回転速度
21 所望の回転速度
22 比較ユニット
23 矢印(信号)
24 矢印(通信接続)
【手続補正書】
【提出日】2023-03-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
センサレスの三相駆動装置(3)におけるフェールセーフ式回転速度監視のための方法であって、前記三相駆動装置(3)は相U、V、Wの三相において、インバータ(7)を備えた駆動電子機器(2)によって制御され、前記三相U、V、Wにおける電圧信号は、パルス幅変調発生器が発生するパルス幅変調信号として存在し、前記パルス幅変調信号に基づいて、前記駆動装置(3)に適用されたインバータ(7)の出力周波数が特定され、前記インバータ(7)の出力周波数に基づいて、駆動装置(3)の実際の回転速度(20)が特定され、前記実際の回転速度(20)は、予め設定可能な所望の回転速度(21)と比較され、前記実際の回転速度(20)が前記所望の回転速度(21)を超過した場合、前記駆動装置(3)はスイッチオフにされ、前記出力周波数は、2つのチャネルで特定され、前記パルス幅変調信号のパルス幅のみが、第1のチャネルにて前記インバータ(7)の出力周波数を特定するために使用され、
前記出力周波数は、一方では第1のマイクロ制御器(9)によって前記第1のチャネルにて特定され、他方では第2のマイクロ制御器(10)によって第2のチャネルにて特定され、前記第2のチャネルにおけるインバータ(7)の出力周波数の特定のために、前記パルス幅変調信号のパルス幅のみが同様に使用され、
前記第1のチャネル及び前記第2のチャネルにおけるインバータ(7)の出力周波数の特定のために、前記三相駆動装置(3)に対する前記三相U、V、Wの電圧及び電流が測定されない、方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項8
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項8】
特に請求項1~7のうちいずれか一項に記載の方法を実行するための、センサレスの三相駆動装置(3)におけるフェールセーフ式回転速度監視のためのデバイスであって、
インバータ(7)を有し、それによって前記三相駆動装置(3)を、相U、V、Wを伴う三相において制御することができる、駆動電子機器(2)と、
電圧信号を三相におけるパルス幅変調信号として提供できる、パルス幅変調発生器と、
前記駆動装置(3)に適用された前記インバータ(7)の出力周波数を2つのチャネルで特定するための手段(9、10、13)と、
前記インバータの前記出力周波数に基づいて、前記駆動装置(3)の実際の回転速度(20)を特定するための、計算ユニット(13)と、
比較ユニット(22)と、
スイッチオフデバイス(18)と
を備え、
前記実際の回転速度(20)を、前記比較ユニット(22)を使用して予め設定可能な所望の回転速度(21)と比較することができ、
前記比較ユニット(22)は、前記実際の回転速度(20)が前記所望の回転速度(21)を超過した場合に、対応する信号(23)を生成して、前記信号(23)を、前記駆動装置(3)をスイッチオフすることができる前記スイッチオフデバイス(18)に送信し、
前記パルス幅変調信号のパルス幅を検出するための手段(9、10)を備え、
前記手段(9、10)は、前記インバータ(7)の前記出力周波数を特定するために、前記パルス幅変調信号のパルス幅のみを第1のチャネルで使用するように構成された第1のマイクロ制御器(9)と、前記インバータ(7)の前記出力周波数を特定するために、前記パルス幅変調信号のパルス幅のみを第2のチャネルで使用するように構成された第2のマイクロ制御器(10)とを備え、
前記第1のチャネル及び前記第2のチャネルでは、前記インバータ(7)の出力周波数の特定のために、前記三相駆動装置(3)に対する前記三相U、V、Wの電圧及び電流が測定されない、デバイス。