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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006553
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】内視鏡
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/12 20060101AFI20230111BHJP
   A61B 1/012 20060101ALI20230111BHJP
   A61B 1/015 20060101ALI20230111BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
A61B1/12 531
A61B1/012 511
A61B1/015 511
A61B1/00 731
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021109212
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 俊貴
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161FF38
4C161FF39
4C161FF40
4C161FF42
4C161HH04
(57)【要約】
【課題】ノズルから観察窓に噴射される流体の噴射力の低下を防止できる内視鏡を提供する。
【解決手段】観察窓22に向けて流体の噴射を行う複数のノズル23,24と、ノズル23,24による流体の噴射を操作する操作部とを備える内視鏡において、前記操作部から各ノズル23,24まで流体を供給する複数の流体管路213,214,215が夫々独立して設けられており、各ノズル23,24が非同時に噴射を行うことを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察窓に向けて流体の噴射を行う複数のノズルと、前記ノズルによる流体の噴射を操作する操作部とを備える内視鏡において、
前記操作部から各ノズルまで流体を供給する複数の流体管路が夫々独立して設けられており、
各ノズルが非同時に噴射を行うことを特徴とする内視鏡。
【請求項2】
各ノズルの噴射範囲は、前記観察窓の中心を含む前記観察窓の一部表面であり、
全ノズルの噴射範囲の和は、前記観察窓の全表面よりも広いことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
各ノズルの噴射向きは、前記観察窓の中心からオフセットしており、
前記複数のノズルは噴射向きが平行であることを特徴とする請求項1又は2に記載の内視鏡。
【請求項4】
各ノズルの噴射向きは、前記観察窓の中心からオフセットしており、
前記複数のノズルは噴射向きが交差することを特徴とする請求項1又は2に記載の内視鏡。
【請求項5】
前記観察窓は凸形状であり、
前記複数のノズルは、噴射向きが前記観察窓の中心に向かう第1ノズルと、噴射向きが前記観察窓の中心からオフセットしている第2ノズルとを含み、
前記観察窓における前記第1ノズル側の表面に向けて前記第1ノズルが噴射を行い、
前記表面と反対側表面に向けて、前記第2ノズルが噴射を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の内視鏡。
【請求項6】
前記第1ノズルの噴射範囲は前記第2ノズルの噴射範囲よりも広いことを特徴とする請求項5に記載の内視鏡。
【請求項7】
前記第1ノズルの流体管路の径は前記第2ノズルの流体管路の径よりも大きいことを特徴とする請求項5又は6に記載の内視鏡。
【請求項8】
前記複数の流体管路は、
一のノズルに、水を供給する第1流体管路及び空気を供給する第2流体管路と、
他のノズルに、水を供給する第3流体管路とを含み、
前記第1から第3流体管路は、互いに連通することなく、前記操作部と前記ノズルとを直結している請求項1から7のいずれか一項に記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から内視鏡においては、体内へ挿入する挿入部の先端に、被検体を観察するための観察窓が設けられている。斯かる観察窓の表面には、粘液、血液及び残渣等の汚れが付着し易い。このように、観察窓に汚れ等が付着していると被検体の明確な画像を撮りにくい。
【0003】
これに対して、特許文献1には、挿入部の先端に2つのノズルを備え、斯かる2つのノズルが同時に流体(空気又は水)を噴射することができる内視鏡が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、2段押し構造を有する操作部を備えており、ユーザが該操作部を適宜操作することにより、挿入部先端のノズルへ流体を供給する際、空気及び水を切り替えることができる内視鏡が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-230673号公報
【特許文献2】特開2005-270216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2の内視鏡においては、ノズルまで空気又は水を送る流体管路が途中で分岐又は合流する構成を有しており、空気圧又は水圧が低下して、ノズルから観察窓に噴射される空気又は水の噴射力が減少することにより、洗浄力の低下をもたらすおそれがある。
【0007】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ノズルから観察窓に噴射される流体の噴射力の低下を防止できる内視鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る内視鏡は、観察窓に向けて流体の噴射を行う複数のノズルと、前記ノズルによる流体の噴射を操作する操作部とを備える内視鏡において、前記操作部から各ノズルまで流体を供給する複数の流体管路が夫々独立して設けられており、各ノズルが非同時に噴射を行うことを特徴とする。
【0009】
本発明にあっては、前記操作部から各ノズルまで流体を供給する複数の流体管路が、途中で分岐又は合流することなく、夫々独立して設けられているので、ノズルから観察窓に噴射される流体の噴射力の低下を防止できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ノズルから観察窓に噴射される流体の噴射力の低下を防止できる内視鏡を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る内視鏡の外観図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る内視鏡の先端部の先端面を示す図である。
図3図2のIII-III線による断面図である。
図4】本発明の実施の形態1に係る内視鏡の送気送水ノズルの断面図である。
図5】本発明の実施の形態1に係る内視鏡の操作部が有する送気・送水バルブの構成を示す断面図である。
図6】空気・水の噴射を調整する為のボタンの操作方法を説明する図である。
図7】本発明の実施の形態2に係る内視鏡の先端部の先端面を示す図である。
図8】本発明の実施の形態3に係る内視鏡の先端部の先端面を示す図である。
図9図8のIX-IX線による断面図である。
図10】本発明の実施の形態3に係る内視鏡の送気送水ノズルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態に係る内視鏡について、図面に基づいて詳述する。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態に係る内視鏡の外観図である。
内視鏡1は、上部消化管又は下部消化管向けの軟性鏡である。内視鏡1は、操作部11、コネクタ部12、及び挿入部2を備えている。挿入部2と操作部11との間には折れ止め部13が設けられている。
【0014】
操作部11は、略円筒形状のケース115を備えている。ケース115の一端部には、ユーザの操作を受け付ける操作ノブ111及びボタン114が設けられ、他端部にはチャンネル入口113が設けられている。また、チャンネル入口113には鉗子栓112が設けられている。
【0015】
コネクタ部12は、ユニバーサルコード121を介して操作部11に接続されている。コネクタ部12は内視鏡用プロセッサ、光源装置、表示装置及び送気送水装置等(図示せず)に接続される。ユニバーサルコード121、操作部11、折れ止め部13及び挿入部2の内部を通して、コネクタ部12から挿入部2に亘る、図示しない洗浄用の流体(空気又は水)の流体管路、電力線及び信号線が配線されている。ユーザが操作部11を適宜操作することによって、コネクタ部12を介して送られてきた流体が、操作部11及び折れ止め部13を介して挿入部2に送られる。
【0016】
折れ止め部13は、操作部11の他端部に連通しており、挿入部2側に向けて縮径する円筒形状をなしている。
挿入部2は、細長い管状をなしており、先端側から順に、先端部201、湾曲部202、及び軟性部203を有する。先端部201は最も短く、硬質である。湾曲部202は可撓性を有する。軟性部203は最も長く、柔軟である。
【0017】
図2は、本発明の実施の形態1に係る内視鏡1の先端部201の先端面21を示す図であり、図3は、図2のIII-III線による断面図であり、図4は、本発明の実施の形態1に係る内視鏡1の送気送水ノズル23の断面図である。
【0018】
先端部201は断面視略楕円であり、先端が略円錐状に突出している(図3参照)。先端部201の先端面21には、観察窓22、送気送水ノズル23,24、チャンネル出口25及び照明26等が設けられている。送気送水ノズル23,24、チャンネル出口25は、観察窓22に隣接して設けられている。
【0019】
先端部201の先端面21の略中心部には、先端部201を挿入部2の長手方向に貫通する貫通孔223が形成されており、観察窓22が貫通孔223に内嵌されている。観察窓22は露出された一面が凸形状である対物レンズであり、観察窓22の他面側には複数のレンズを有するレンズユニット221が先端部201の軸心に沿って配置されている。また、レンズユニット221よりも湾曲部202側には、観察窓22及びレンズユニット221を介して被検体の像光を取り込んで撮像を行う撮像素子222が設けられている。
【0020】
先端部201の先端面21は、貫通孔223の縁部から、観察窓22の接線方向に傾斜している傾斜面であり、斯かる傾斜面に送気送水ノズル23,24及びチャンネル出口25が形成されている。
【0021】
送気送水ノズル23,24は、観察窓22に対して両側に設けられている。即ち、送気送水ノズル23,24は、観察窓22に対して互いに反対側に設けられているものの、観察窓22の径方向において対向していない。
【0022】
図4に示すように、送気送水ノズル23は、有底円筒形状を成している。送気送水ノズル23は底側の端部の周壁に噴射口231が形成されている。噴射口231は、例えば、送気送水ノズル23の周方向に延びる長円形状であり、観察窓22に向けて開口している。また、噴射口231は、送気送水ノズル23の軸心に対して斜めに開口している。即ち、噴射口231は、内側縁よりも、外側縁が底寄りに形成されている。送気送水ノズル24は、送気送水ノズル23と同じ形状であり、詳しい説明を省略する。
【0023】
図3に示すように、先端面21において観察窓22の近傍には、先端部201を軸心方向に貫通する、断面視円形の貫通孔211が形成されている。貫通孔211は、両端部にて径が拡張している。貫通孔211の先端面21側の一端側には送気送水ノズル23の一部が内嵌され、貫通孔211の他端側には流体管路213の一端が内嵌されている。流体管路213は、挿入部2内を通して、後述する操作部11の送気・送水バルブ3まで延びている。
【0024】
また、先端面21において観察窓22の近傍には、先端部201を軸心方向に貫通する、断面視円形の貫通孔212が形成されている。貫通孔212は、先端面21側の一端側の径が拡張している。貫通孔212の一端側には送気送水ノズル24の一部が内嵌されている。貫通孔212の他端側は第1端212Aと、第2端212Bとに分けられている。第1端212A及び第2端212Bには、流体管路214,215の一端が夫々内嵌されている。流体管路214,215は、挿入部2内を通して、操作部11の送気・送水バルブ3まで延びている。
【0025】
即ち、流体管路213の一端は送気送水ノズル23に接続しており、他端は送気・送水バルブ3に接続している。また、流体管路214,215の一端は送気送水ノズル24に接続しており、他端は送気・送水バルブ3に接続している。流体管路213,214,215は、夫々独立して設けられている。即ち、送気送水ノズル23,24及び送気・送水バルブ3の間において、流体管路213,214,215には、分岐も合流も生じていない。
【0026】
上述の如く、前記送気送水装置からコネクタ部12を介して供給される流体は、送気・送水バルブ3を経て、流体管路213,214,215を通して送気送水ノズル23,24に送られる。例えば、流体管路213,214は送水用であり、流体管路215は送気用である。送気送水ノズル23,24に供給された空気・水は、観察窓22に向けて噴射される。
【0027】
図2において、破線は、各送気送水ノズル23,24における流体の噴射範囲を示しており、一点鎖線は、各送気送水ノズル23,24における噴射向きを示している。換言すれば、噴射向きは、噴射範囲を2等分する線の向きである。
図2に示すように、各送気送水ノズル23,24の噴射範囲(破線参照)は、観察窓22の中心を含む観察窓22の一部表面である。そして、各送気送水ノズル23,24の噴射向き(一点鎖線参照)は、観察窓22の中心からオフセットしている。即ち、各送気送水ノズル23,24の噴射範囲を2等分する一点鎖線は、観察窓22の中心からオフセットしている。そして、送気送水ノズル23の噴射向きは、送気送水ノズル24の噴射向きと交差しており、送気送水ノズル23,24の合わせた噴射範囲は少なくとも観察窓22の全表面に及び、全送気送水ノズル23,24の噴射範囲の和は観察窓22の全表面よりも広い。
【0028】
操作部11は、2つのボタン114を有しており、一方は送水・送気用であり、他方は吸引操作用である。詳しくは、操作部11は送水・送気バルブ3及び吸引バルブを有しており、送水・送気バルブ3及び吸引バルブはボタン114によって操作される。送水・送気バルブ3は、流体管路213,214,215への流体の供給を調整する。また、吸引バルブは、残渣等を吸引して体外に出す。
【0029】
図5は、本発明の実施の形態1に係る内視鏡1の操作部11が有する送気・送水バルブ3の構成を示す断面図である。
送気・送水バルブ3は、シリンダ31とピストン32含む。シリンダ31は一端に底を有する円筒形状を成し、ピストン32は略丸棒形状を成す。ピストン32は、シリンダ31内に挿入され、シリンダ31の軸心方向に、シリンダ31の内周面を摺動し、ピストン32の一端寄りの出没部321がシリンダ31から出没する。
【0030】
シリンダ31は、ケース115に取り付けられており、他端部がケース115から露出されている。シリンダ31には、流体管路213,214,215の他端が接続されている。また、シリンダ31には、流体管路213,214,215に対応する上流管路213A,214A,215Aの一端が接続されている。上流管路213A,214A,215Aは、他端がコネクタ部12に接続されており、コネクタ部12を介して前記送気送水装置から供給される流体を送気・送水バルブ3まで送る。上流管路213A,214A,215Aは夫々流体管路213,214,215に対応している。即ち、上流管路213A,214Aを介して送水が送られ、上流管路215A介して空気が送られる。
【0031】
シリンダ31の前記一端部を覆うように、ボタン受け33が設けられている。ボタン受け33は、略円筒形状をなしており、ボタン受け33の一端側から、有底円筒形状のボタン114が挿入される。ボタン受け33は、外側円筒壁と、該外側円筒壁と同一軸心上に配置された内側円筒壁とを有しており、外側円筒壁は内側円筒壁と所定間隔を隔てて配置されている。内側円筒壁の一端部は内側に張り出ており、外側円筒壁及び内側円筒壁は他端にてのみ連結されている。ボタン受け33の軸心方方向における外側円筒壁の寸法は内側円筒壁よりも長い。また、外側円筒壁の内径は、ボタン114の外径よりも少し大きく、ボタン114が外側円筒壁の内周面に案内されて軸心方向に摺動する。内側円筒壁の内径は、シリンダ31の外径よりも少し大きく、シリンダ31の一端部が内側円筒壁に内嵌されている。
外側円筒壁と内側円筒壁との間には、ボタン114と当接する円環部材331と、該円環部材331をボタン114側に付勢するスプリング332とが挿入されている。即ち、円環部材331及びスプリング332が内側円筒壁に外嵌されている。
【0032】
ピストン32は、軸心を貫通する貫通孔322を有しており、出没部321で径が縮小している。出没部321はボタン受け33の軸心方向に、内側円筒壁の内側を通して、延びている。出没部321には、スプリング325が外嵌されている。出没部321は一端の外周面に段差が設けられており、スプリング325との間に間隔が形成されている。
【0033】
ピストン32において出没部321を除く他の部分(以下、出没部321の他部と称する)は、常にシリンダ31内に挿入されている。出没部321の他部では、外周面に5つのOリング324が設けられている。出没部321の他部では、ピストン32の軸心方向に略等間隔を隔てて、周方向に沿って凹部が形成されており、Oリング324が各凹部に収容されている。
【0034】
また、出没部321の他部においては、出没部321側から1番目及び2番目のOリング324の間、及び、3番目及び4番目のOリング324の間に、周方向に沿って切り欠き323が夫々形成されている。
【0035】
ボタン114においては、ピストン32の貫通孔322に対応する位置にボタン114の底を貫通する貫通孔Hが形成されており、貫通孔Hの縁には、ボタン114の軸心方向へ内側に延びる嵌合円筒が周設されている。ボタン114の斯かる嵌合円筒が、出没部321の前記一端の外周面に外嵌される。即ち、ボタン114の前記嵌合円筒は、出没部321とスプリング325との間に介在している。
【0036】
以上のような構成を有することにより、本発明の実施の形態1に係る内視鏡1においては、操作部11(ボタン114)を用いて、送気送水ノズル23,24における空気・水の噴射を独立的に調整することができる。よって、内視鏡1においては、送気送水ノズル23,24における空気・水の噴射が同時に行われることを防止できる。
【0037】
図6は、空気・水の噴射を調整する為のボタン114の操作方法を説明する図である。図5は、操作開始前を示しており、図5に示すピストン32の位置を原位置とする。
【0038】
図5に示すように、ピストン32が原位置にある場合、ピストン32によって上流管路213A,214Aは塞がっており、上流管路215Aのみが開放されている。よって、上流管路215Aを通して流れてくる空気がシリンダ31内に流れ込む。しかし、上述の如く、貫通孔322がボタン114の貫通孔Hを介して外部に開放されているので、シリンダ31に流れ込んだ空気は、貫通孔322を介して、ボタン114の貫通孔Hから外部にリークされる。
【0039】
一方、図6Aに示すように、ユーザが指先をボタン114に載置し、貫通孔Hを塞いだ場合、上流管路215Aからシリンダ31内に流れ込む空気はリークされず、流体管路215内に流れ込み、送気送水ノズル24に供給される。
【0040】
次いで、図6Bに示すように、スプリング325が圧縮されてボタン114がボタン受け33の円環部材331と当接するまで、ユーザがボタン114を押圧した場合(以下、第1段階操作と称する)、ピストン32が移動し、ピストン32によって上流管路213Aが塞がっており、上流管路214A,215Aのみがシリンダ31内に開放されている。しかし、ピストン32が上流管路215Aに対応する流体管路215を塞いでいる。よって、流体管路213,215を介した流体の供給は出来ない。
一方、上流管路214Aは、ピストン32の切り欠き323と連通しており、斯かる切り欠き323はピストン32の全周に形成されている。よって、上流管路214Aは切り欠き323を介して流体管路214と連通する。上流管路214Aから流れ込む水は切り欠き323を通して流体管路214内に流れ込み、送気送水ノズル24に供給される。
【0041】
そして、図6Cに示すように、スプリング332が圧縮されて円環部材331がボタン受け33の他端側まで移動するよう、ユーザがボタン114を更に押圧した場合(以下、第2段階操作と称する)、ピストン32が移動し、上流管路215Aがシリンダ31内に開放し、上流管路213A,214Aはピストン32の切り欠き323と連通する。しかし、ピストン32が上流管路214A,215Aに対応する流体管路214,215を塞いでいる。よって、流体管路214,215を介した流体の供給は出来ない。
一方、上流管路213Aは、ピストン32の切り欠き323と連通しており、斯かる切り欠き323はピストン32の全周に形成されている。よって、上流管路213Aは切り欠き323を介して流体管路213と連通する。上流管路213Aから流れ込む水は切り欠き323を通して流体管路213内に流れ込み、送気送水ノズル23に供給される。
【0042】
このように、本発明の実施の形態1に係る内視鏡1においては、送気送水ノズル23,24からの観察窓22に対する流体の噴射が非同時的に、順次的に行われる。よって、送気送水ノズル23,24から噴射された流体同士が衝突し合って相殺されることにより、観察窓22の洗浄効果が低減されることを未然に防止できる。
【0043】
また、図6Bの第1段階操作の場合、送気送水ノズル24から噴射される水は、図2に示すように、観察窓22の中心部を含む観察窓22の略半分の表面を洗浄する。そして、図6Cの第2段階操作の場合、送気送水ノズル23から噴射される水は、図2に示すように、残りの表面に加えて観察窓22の中心部を含む略半分の表面を洗浄する。よって、観察窓22の全表面が洗浄される。
【0044】
従って、本発明の実施の形態1に係る内視鏡1においては、噴射範囲が観察窓22の全表面よりも狭い送気送水ノズル23,24を用いて観察窓22の全表面を効果的に洗浄することができる。更に、噴射範囲が狭い送気送水ノズル23,24を用いるので、流体管路213,214及び上流管路213A,214Aの径を大きくする必要が無く、内視鏡1をコンパクト化できる。
【0045】
そして、本発明の実施の形態1に係る内視鏡1においては、上述の如く、送気送水ノズル23,24及び送気・送水バルブ3の間において、流体管路213,214,215が、分岐も合流もされず、夫々独立している。従って、送気送水ノズル23,24における流体の噴射力の低下を防止できる。
【0046】
以上においては、ユーザがボタン114を手動で操作する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ユーザによるボタン114の貫通孔Hの封鎖、前記第1段階操作、及び前記第2階段操作と自動制御されるように構成しても良い。
【0047】
また、以上においては、内視鏡1が2つの送気送水ノズル23,24を有する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。送気送水ノズルは3つ以上であっても良く、全送気送水ノズルの噴射範囲の和が観察窓22の全表面よりも広ければ良い。
【0048】
また、以上においては、送気送水ノズル23,24の噴射範囲の広さが略同じである場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。送気送水ノズル23,24は噴射範囲の広さが同じでなくても良く、全送気送水ノズルの噴射範囲の和が観察窓22の全表面よりも広ければ良い。
【0049】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2に係る内視鏡1の先端部201の先端面21を示す図である。図7において、破線は、各送気送水ノズル23,24における流体の噴射範囲を示しており、一点鎖線は、各送気送水ノズル23,24における噴射向きを示している。
【0050】
先端部201の先端面21には、観察窓22、送気送水ノズル23,24、チャンネル出口25及び照明26等が設けられている。送気送水ノズル23,24、チャンネル出口25は、観察窓22に隣接して設けられている。また、送気送水ノズル23,24は互いに隣接している。
【0051】
実施の形態2においても、実施の形態1と同様に、各送気送水ノズル23,24の噴射範囲(破線参照)は、観察窓22の中心を含む観察窓22の一部表面である。そして、各送気送水ノズル23,24の噴射向き(一点鎖線参照)は、観察窓22の中心からオフセットしている。即ち、即ち、各送気送水ノズル23,24の噴射範囲を2等分する一点鎖線は、観察窓22の中心からオフセットしている。そして、送気送水ノズル23の噴射向きは、送気送水ノズル24の噴射向きと平行であり、全送気送水ノズル23,24の噴射範囲の和は、少なくとも観察窓22の全表面に及ぶ。
【0052】
本発明の実施の形態2に係る内視鏡1においても、実施の形態1と同様に、ユーザがボタン114の第1段階操作及び第2段階操作を行うことにより、送気送水ノズル23,24からの観察窓22に対する流体の噴射が非同時的に、順次的に行われる。よって、送気送水ノズル23,24から噴射された流体同士が衝突し合って相殺されることにより、観察窓22の洗浄効果が低減されることを未然に防止できる。
【0053】
また、第1段階操作の場合に送気送水ノズル24から噴射される水は、観察窓22の中心部を含む観察窓22の略半分の表面を洗浄し、第2段階操作の場合に送気送水ノズル23から噴射される水は、残りの表面に加えて観察窓22の中心部を含む略半分の表面を洗浄する。よって、噴射範囲が観察窓22の全表面よりも狭い送気送水ノズル23,24を用いて観察窓22の全表面を効果的に洗浄することができる。また、噴射範囲が狭い送気送水ノズル23,24を用いるので、流体管路213,214及び上流管路213A,214Aの径を大きくする必要が無く、内視鏡1をコンパクト化できる。
【0054】
実施の形態1と同様の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0055】
(実施の形態3)
図8は、本発明の実施の形態3に係る内視鏡1の先端部201の先端面21を示す図であり、図9は、図8のIX-IX線による断面図であり、図10は、本発明の実施の形態3に係る内視鏡1の送気送水ノズル24Aの断面図である。図8において、破線は、各送気送水ノズル23,24Aにおける流体の噴射範囲を示しており、一点鎖線は、各送気送水ノズル23,24Aにおける噴射向きを示している。
【0056】
先端部201の先端面21には、観察窓22、送気送水ノズル23(第2ノズル)、送気送水ノズル24A(第1ノズル)、チャンネル出口25及び照明26等が設けられている。送気送水ノズル23、送気送水ノズル24A及びチャンネル出口25は、観察窓22に隣接して設けられている。
【0057】
送気送水ノズル23及び送気送水ノズル24Aは、観察窓22に対して両側に設けられている。即ち、送気送水ノズル23及び送気送水ノズル24Aは、観察窓22に対して互いに反対側に設けられているものの、観察窓22の径方向において対向していない。図8に示すように、送気送水ノズル24Aの噴射範囲は送気送水ノズル23の噴射範囲よりも広い。また、送気送水ノズル23の噴射向きは、送気送水ノズル24Aの噴射向きと交差している。
【0058】
送気送水ノズル24Aは、空気又は水が出射される出射口241を有する。空気及び水は出射口241を介して観察窓22に向けて出射される。出射口241は略長円形状である。送気送水ノズル24Aは一部が貫通孔212に内嵌されている。
【0059】
送気送水ノズル24Aは、筒部246と、筒部246の一方の開口端を封じる蓋部245とを有する。蓋部245及び筒部246は一体形成されている。出射口241は送気送水ノズル24Aにおいて蓋部245側に設けられている。
筒部246の内側には、連結部244及び小径部242が設けられており、連結部244及び小径部242の間には縮径部243が形成されている。即ち、小径部242は、連結部244よりも下流側に設けられており、連結部244よりも小径である。連結部244、縮径部243及び小径部242は同一軸を中心として設けられている。
【0060】
連結部244は、筒部246の軸長方向に沿って延びており、流体管路214,215を通して送られてくる空気及び水が連結部244に流れ込み、小径部242を介して出射口241に送られる。
【0061】
上述したように、連結部244よりも下流側であって、小径部242よりも上流側に、縮径部243が形成されている。縮径部243は、連結部244及び小径部242を連結しており、テーパ状又は漏斗形状である。即ち、縮径部243では、連結部244から小径部242に向けて徐々に縮径している。従って、縮径部243を経て小径部242に流れ込む空気又は水は圧力が増加して流速が速くなる。
【0062】
蓋部245は所定の厚みを有する円板状であり、厚み方向が、連結部244、縮径部243及び小径部242の並設方向に対して斜めになるように設けられている。蓋部245は内部に案内路247が形成されている。案内路247は扁平な直方体形状に切り欠いた空洞であり、小径部242から流れ込んだ空気又は水を出射口241に案内する。
【0063】
このような構成を有することから、送気送水ノズル24Aは広い範囲にて高速の空気又は水を観察窓22に向けて噴射することができる。
なお、送気送水ノズル23については既に説明しており、詳しい説明は省略する。
【0064】
送気送水ノズル24Aは、観察窓22の表面のうち、送気送水ノズル24A側の表面(以下、部分表面と称する)に向けて水の噴射を行う。送気送水ノズル24Aの噴射向き(一点鎖線参照)は、観察窓22の中心を通り、送気送水ノズル24Aの噴射範囲(破線参照)は、観察窓22の中心を含む観察窓22の全表面に及ぶ。
【0065】
一方、送気送水ノズル23は、観察窓22の表面のうち、前記部分表面と反対側表面に向けて水の噴射を行う。送気送水ノズル23の噴射範囲(破線参照)は、観察窓22の中心を含まない、観察窓22の一部表面であり、送気送水ノズル23の噴射向き(一点鎖線参照)は、観察窓22の中心からオフセットしている。特に、送気送水ノズル23は観察窓22の縁部を含む部分に向けて水を噴射する。
【0066】
本発明の実施の形態3に係る内視鏡1においても、実施の形態1と同様に、ユーザがボタン114の第1段階操作及び第2段階操作を行うことにより、送気送水ノズル23,24Aからの観察窓22に対する流体の噴射が非同時的に、順次的に行われる。よって、送気送水ノズル23,24Aから噴射された流体同士が衝突し合って相殺されることにより、観察窓22の洗浄効果が低減されることを未然に防止できる。
【0067】
また、第1段階操作の場合に送気送水ノズル24Aから観察窓22の前記部分表面に向けて水が噴射される。一般に、壁面付近を流れる流体は、流体粘性の効果によって壁面に引き寄せられる(コアンダ効果と言う。)。このようなコアンダ効果により、送気送水ノズル24Aから噴射された水は、観察窓22の前記部分表面に沿って流れ始め、前記部分表面の反対側まで流れ、観察窓22の表面を洗浄する。
【0068】
そして、第2段階操作の場合に送気送水ノズル23から噴射される水は、観察窓22における前記部分表面の反対側であって観察窓22の縁部を含む部分を流れ、観察窓22の表面を洗浄する。
【0069】
よって、送気送水ノズル23,24Aを用いて観察窓22の全表面を効果的に洗浄することができる。特に、送気送水ノズル24Aからの水の噴射によって観察窓22を洗浄する際、水が届かないおそれがある、前記部分表面の反対側の観察窓22の縁部を、送気送水ノズル23が洗浄するので、観察窓22を満遍なく洗浄することができる。
【0070】
そして、本発明の実施の形態3に係る内視鏡1においても、送気送水ノズル23,24A及び送気・送水バルブ3の間において、流体管路213,214,215が夫々独立している。従って、送気送水ノズル23,24Aにおける流体の噴射力の低下を防止できる。
【0071】
本実施の形態に係る内視鏡1は以上の記載に限定されるものではない。送気送水ノズル23よりも噴射範囲の広い送気送水ノズル24Aの流体管路214,215の径を、送気送水ノズル23の流体管路213よりも大きくしても良い。
【0072】
実施の形態1と同様の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【符号の説明】
【0073】
1 内視鏡
11 操作部
22 観察窓
23 送気送水ノズル(第2ノズル)
24 送気送水ノズル
24A 送気送水ノズル(第1ノズル)
213,214,215 流体管路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10