(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065592
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】養液供給装置、植物栽培システム、及び養液供給プログラム
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20230502BHJP
A01G 25/02 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
A01G31/00 601C
A01G25/02 602B
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031806
(22)【出願日】2023-03-02
(62)【分割の表示】P 2019033919の分割
【原出願日】2019-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】506212167
【氏名又は名称】株式会社スプレッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】浅井 義樹
(72)【発明者】
【氏名】宮本 司
(72)【発明者】
【氏名】茨木 亮多
(57)【要約】
【課題】本発明は、メンテナンスが容易な養液供給装置を提供することを目的とする。
【解決手段】噴霧装置(養液供給装置)100は、植物体のうち少なくとも根を内部に収容する栽培容器Rの開口部41を介して、栽培容器Rの内部に対して挿脱可能であり、栽培容器Rの内部に養液を噴霧する少なくとも1つのノズル115と、栽培容器Rの開口部41を介してノズル115を栽培容器Rの内部に対して挿脱する駆動部130と、ノズル115を栽培容器Rへ移動させる少なくとも1つの移動体140とを備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物体のうち少なくとも根を内部に収容する栽培容器の開口部を介して、前記栽培容器の内部に対して挿脱可能であり、前記栽培容器の内部に養液を噴霧する少なくとも1つのノズルと、
前記栽培容器の開口部を介して前記ノズルを前記栽培容器の内部に対して挿脱する駆動部と、
前記ノズルを前記栽培容器へ移動させる少なくとも1つの移動体と、
を備える養液供給装置。
【請求項2】
前記ノズルを前記栽培容器の内部で挿脱方向とは交差する方向に揺動させる揺動部を備える、請求項1に記載の養液供給装置。
【請求項3】
前記駆動部は、伸縮により前記ノズルを前記栽培容器の内部に対して挿脱する、請求項1又は2に記載の養液供給装置。
【請求項4】
前記栽培容器の開口部は蓋部により開閉される、請求項1~3のいずれか1項に記載の養液供給装置。
【請求項5】
少なくとも、前記移動体の制御、前記駆動部の制御、及び前記ノズルからの養液の噴霧制御を行う装置制御部を備え、
前記装置制御部は、
前記移動体を制御し、養液の噴霧対象の栽培容器に対して前記少なくとも1つのノズルを位置合わせする位置合わせ制御と、
前記駆動部を制御し、前記栽培容器の開口部と、前記開口部に対向する奥部との間において前記ノズルを往復させる挿脱制御と、
前記養液の供給量を制御する供給量制御、前記養液の供給日時を制御する供給日時制御、及び前記栽培容器に供給する前記養液の種類の養液種類制御の少なくともいずれかを行う、請求項1~4のいずれか1項に記載の養液供給装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の少なくとも1つの養液供給装置と、
植物体のうち少なくとも根を内部に収容し、前記ノズルが挿脱される開口部を有する複数の栽培容器が載置されている少なくとも1つの段を有する栽培棚と、
前記栽培棚が配置されている栽培室と、
前記栽培室内に配置され、前記植物体に光を照射する照明装置と、
前記栽培室の温度及び湿度の少なくともいずれかを調整する空調装置と、
を備える植物栽培システム。
【請求項7】
各栽培容器に対して前記植物体が概垂直方向に支持される状態で、各栽培容器が、概水平方向に沿った前記段の平面に沿って並んで載置されており、
各栽培棚では、前記栽培容器が載置されている複数の前記段が概垂直方向に積層されて配置されており、
前記栽培室では、複数の前記栽培棚が概水平方向に並んで配置されている、請求項6に記載の植物栽培システム。
【請求項8】
各栽培容器に対して前記植物体が概水平方向に支持される状態で、各栽培容器が、概垂直方向に沿った前記段の平面に沿って並んで載置されており、
各栽培棚では、前記栽培容器が載置されている複数の前記段が概垂直方向又は概水平方向に並んで配置されており、
前記栽培室では、複数の前記栽培棚が概水平方向に並んで配置されている、請求項6に記載の植物栽培システム。
【請求項9】
各栽培容器が略斜め方向に互いに概ね対称に対向する平面を有しており、前記略斜め方向の平面と交差する方向に前記植物体が支持されている、請求項6に記載の植物栽培システム。
【請求項10】
噴霧対象である少なくとも1つの前記栽培容器の内部に対して養液を噴霧する少なくとも1つの前記養液供給装置を、前記養液の種類、前記養液の残量及び前記栽培容器までの移動距離の少なくともいずれかに基づいて、複数の前記養液供給装置から特定するシステム制御部を備える、請求項6~9のいずれか1項に記載の植物栽培システム。
【請求項11】
請求項10に記載の植物栽培システムの前記システム制御部に実行させるための養液供給プログラムであって、
噴霧対象である少なくとも1つの前記栽培容器の内部に対して養液を噴霧する少なくとも1つの前記養液供給装置を、前記養液の種類、前記養液の残量及び前記栽培容器までの移動距離の少なくともいずれかに基づいて、複数の前記養液供給装置から特定するステップと、
前記噴霧対象である少なくとも1つの前記栽培容器に対応するように特定された前記養液供給装置を位置付けるステップと、
前記養液供給装置のノズルを当該栽培容器に挿入し、前記養液を当該栽培容器の内部に噴霧するステップと、
前記養液の噴霧が終了すると、当該栽培容器から前記ノズルを引き抜くステップと、
を実行させるための養液供給プログラム。
【請求項12】
前記栽培室の内部及び前記栽培容器の内部の少なくともいずれかにおける栽培環境の履歴である栽培記録データと、前記栽培容器での前記植物体の生産計画データと、前記養液供給装置の現在位置を含む装置データと、前記栽培容器に少なくとも根が収容されている前記植物体の生育状態データとの少なくともいずれかに基づいて、前記栽培室又は前記栽培容器の少なくともいずれかの栽培環境制御処理、及び、前記養液供給装置に対する装置制御処理の少なくともいずれかを含むステップを実行させるための請求項11に記載の養液供給プログラム。
【請求項13】
前記装置制御処理は、前記養液供給装置の養液の噴霧対象の栽培容器に対する位置合わせ制御、前記ノズルを往復させる挿脱制御、前記養液の供給量制御、前記養液の供給日時制御、及び前記養液の養液種類制御の少なくとも1つである、請求項12に記載の養液供給プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養液供給装置、植物栽培システム、及び養液供給プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
植物体の株(葉)を上方に根を下方に支持する板状支持部を収容しており、根に養液を供給するためのボックス状の栽培容器が知られている。従来の栽培容器では、その内部に養液を供給するための配管及びノズルを配置し、配管からノズルを介して根に養液を噴霧している。
特許文献1、2の栽培容器においても、その内部にノズルが配置されている。特許文献1では、栽培容器の内部の下部に養液が溜められており、ノズルは、溜められた養液を吸い上げて植物体の根に向けて養液を噴霧する。特許文献2では、ノズルから養液を根に向けて噴霧し、その風速で根を揺らして根の全面に養液を接触させて吸収させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-212699号公報
【特許文献2】特開2012-10651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1、2のような多数の栽培容器を用いて大規模に植物を栽培する設備では、栽培容器の内部にノズルが配置されているため、ノズルの点検及びノズルの詰まり発生時の修理等のメンテナンスが容易ではない。そこで、植物栽培用の液体を供給するノズルのメンテナンスが容易な技術が望まれている。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、メンテナンスが容易な養液供給装置、植物栽培システム、及び養液供給プログラムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[構成]
上記目的を達成するための本発明に係る養液供給装置の特徴構成は、
植物体のうち少なくとも根を内部に収容する栽培容器の開口部を介して、前記栽培容器の内部に対して挿脱可能であり、前記栽培容器の内部に養液を噴霧する少なくとも1つのノズルと、
前記栽培容器の開口部を介して前記ノズルを前記栽培容器の内部に対して挿脱する駆動部と、
前記ノズルを前記栽培容器へ移動させる少なくとも1つの移動体と、
を備える点にある。
【0007】
栽培容器内に収容された根に養液等の液体が噴霧される。根を養液(液体)に浸す場合に比べて、根による養液の吸収力が高まり、植物体の生育が促進される。上記特徴構成によれば、栽培容器内に養液を噴霧する養液供給装置を栽培容器とは別途設けている。栽培容器の内部に養液を噴霧する場合、ノズルを栽培容器まで移動させる。そして、養液供給装置のノズルを栽培容器の外部から内部に挿入し、養液を栽培容器の内部に噴霧させる。
これにより、根に養液を噴霧して植物体の生育を促進できる。
また、ノズルが、栽培容器の外部において栽培容器とは別の養液供給装置に設けられているため、ノズルの修理、点検及び交換等のメンテナンス作業を効率よくかつ精度よく行うことができる。
このように、上記特徴構成によれば、根に養液を噴霧して植物体の生育を促進させる方法を採用しつつ、栽培容器の外にノズルを設ける構成を採用してメンテナンス作業の効率化を図ることができる。
【0008】
[構成]
本発明に係る植物栽培システムの特徴構成は、
少なくとも1つの養液供給装置と、
植物体のうち少なくとも根を内部に収容し、前記ノズルが挿脱される開口部を有する複数の栽培容器が載置されている複数の段と、
前記複数の段が組み合わされた栽培棚と、
複数の前記栽培棚が配置されている栽培室と、
前記段に載置された栽培容器の上部に配置され、前記植物体に光を照射する照明装置と、
前記栽培室の温度及び湿度の少なくともいずれかを調整する空調装置と、
を備える点にある。
【0009】
[構成]
本発明に係る植物栽培システムのシステム制御部に実行させるための養液供給プログラムであって、
その特徴構成は、
噴霧対象である少なくとも1つの前記栽培容器の内部に対して養液を噴霧する少なくとも1つの前記養液供給装置を、前記養液の種類、前記養液の残量及び前記栽培容器までの移動距離の少なくともいずれかに基づいて、複数の前記養液供給装置から特定するステップと、
前記噴霧対象である少なくとも1つの前記栽培容器に対応するように特定された前記養液供給装置を位置付けるステップと、
前記養液供給装置のノズルを当該栽培容器に挿入し、前記養液を当該栽培容器の内部に噴霧するステップと、
前記養液の噴霧が終了すると、当該栽培容器から前記ノズルを引き抜くステップと、
を実行させる点にある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図7】噴霧装置と栽培容器との位置関係を示す模式図である。
【
図8】噴霧部及び駆動部の移動の様子を示す模式図である。
【
図10】栽培容器内でのノズル及び支持部材の移動の様子を示す模式図である。
【
図12】環境条件DB内の栽培室の環境条件の一例である。
【
図14】栽培記録DB内の栽培室の栽培記録の一例である。
【
図15】栽培記録DB内の栽培容器の栽培記録の一例である。
【
図16】栽培記録DB内の植物体の生育状態の一例である。
【
図17A】生産計画DB内の生産計画の一例である。
【
図17B】生産計画DB内の生産計画の一例である。
【
図18】噴霧装置DB内の噴霧装置の現在位置を含む情報の一例である。
【
図19】環境条件の制御処理の流れを示すフローチャートの一例である。
【
図20】噴霧条件の制御処理の流れを示すフローチャートの一例である。
【
図21】噴霧装置DB内の複数の噴霧装置の現在位置を含む情報の一例である。
【
図22】噴霧対象の栽培容器に養液を噴霧する噴霧装置を複数台の噴霧装置から特定する処理の流れを示すフローチャートの一例である。
【
図23】噴霧量制御処理の流れを示すフローチャートの一例である。
【
図24】仕切壁を有する一の栽培棚の平面図である。
【
図25】仕切壁を有する一の栽培棚の側面図である。
【
図26】変形例に係る噴霧装置及び栽培容器の平面図である。
【
図27】別の変形例に係る噴霧装置及び栽培容器の平面図である。
【
図28】
図27に示す噴霧装置の支持部材の伸長の様子を示す模式図である。
【
図29】シリンダ機構を用いたノズルの挿脱の様子を示す模式図である。
【
図30】変形例に係る植物栽培システムの正面図である。
【
図31】変形例に係る植物栽培システムの部分斜視図である。
【
図32】変形例に係る植物栽培システムの部分斜視図である。
【
図33】変形例に係る植物栽培システムの平面図である。
【
図34】上方から栽培容器内にノズル及び支持部材が挿入される様子を示す模式図である。
【
図35】
図34に示す栽培容器がZ方向に積層されている様子を示す模式図である。
【
図36】概ね三角錐状に構成された栽培容器を示す模式図である。
【
図38】養液タンク及び中継タンクを含む植物栽培システムの側面図である。
【
図43】栽培容器を開口部側からみた側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態〕
以下に図面を用いて本発明の噴霧装置(養液供給装置)を含む植物栽培システムについて説明する。
【0012】
(1)植物栽培システムの構成
(1-1)全体構成
図1~
図3に示すように、本実施形態の植物栽培システム1は、建屋の屋内である栽培室3内に設けられている。栽培室3内は、温度及び湿度等が管理されており、実質的に密室である。この栽培室3内では、レタス、キャベツ、ホウレンソウ及びセロリ等の葉菜類、イチゴ、トマト、キュウリ、カボチャ、トマト及びナス等の果菜類、ダイコン,カブ、ニンジン及びゴボウ等の根菜類を含む植物体50が栽培される。その他の葉菜類としては、フリルレタス、ロメインレタス、バタビアレタス、ロロビオンダ、ロロロッサ、バターヘッドレタス、またはオークリーフレタス等のリーフレタス;結球レタス;からし菜(わさび菜)、ミズナ、葉ダイコン、白菜非結球品種、白菜結球性ミニ品種、非結球性キャベツなどのアブラナ科の葉菜、フダンソウ(スイスチャード)、ホウレンソウ(主にサラダ用品種が好ましい)、またはシュンギク等が挙げられる。
【0013】
栽培室3内には、複数の栽培棚20(20A、20B、20C,20D)と、栽培棚20に後述の栽培容器Rを投入するための投入装置11と、栽培棚20から栽培容器Rを回収するための取出装置13と、後述の植物体50に栽培に必要な養液及び水分等の液体を貯蔵している養液タンク5と、栽培室3内の環境条件(栽培環境)を調整するために例えば照明装置であるLED7及び空調装置8とが備えられている。複数の栽培棚20は栽培室3内において並んで配置されている(
図1、
図3等)。各栽培棚20は複数の段S(S1、S2、S3、S4、S5)を有している(
図2等)。栽培容器Rについては後述する。
なお、以下では、植物体50に供給する液体の一例として、植物体50の生育を促進可能な養液を例に挙げて説明する。ただし、植物体50に供給する液体としては、水であってもよい。
【0014】
本実施形態では、栽培棚20の長手方向を-X及び+X方向とし、長手方向と直交する栽培棚20の短手方向を-Y及び+Y方向とする。-X及び+X方向と-Y及び+Y方向を含む水平面に直行する上下方向を-Z及び+Z方向とする。また、-X及び+X方向を総称する場合は単にX方向と称し、-Y及び+Y方向を総称する場合は単にY方向と称し、-Z及び+Z方向を総称する場合は単にZ方向と称する。
【0015】
植物栽培システム1の栽培室3内での各部の位置は、このXYZ座標によって特定することができる。XYZ座標の原点は、
図1、
図3中の例えば点Oとすることができる。栽培容器Rの栽培室3内での位置もまた、XYZ座標によって特定することができる。ただし、本実施形態では、簡単のため、栽培棚20の棚番号と、段Sの段番号と、栽培容器Rの-X方向側からの栽培容器番号とによって栽培容器Rの位置を表している。
【0016】
図1に示すように、栽培室3では、4つの栽培棚20が、X方向を長手方向として、Y方向に互いに間隔を有して平行に配置されている。よって、栽培棚20Aの+Y方向側と栽培室3との間、栽培棚20A、20B間、栽培棚20B、20C間、栽培棚20C、20D間、及び、栽培棚20Dの-Y方向側と栽培室3との間に空間が設けられている。
図2、
図3に示すように、各栽培棚20は、Z方向に5つの段S1~段S5を有しており、+Z方向に向かって段S1、段S2、段S3、段S4、段S5が互いに空間を有して順に配置されている。
本実施形態では、各栽培棚20それぞれにおいて段S1~S5の高さは同じである。例えば、一の栽培棚20の段S3の高さと別の栽培棚20の段S3の高さとは同一である。
【0017】
各段Sは栽培棚20と同様にX方向を長手方向としている。段S1~段S5は、Z方向に延びる縦支柱Vによって支持されている。縦支柱Vは、
図3に示すように各段SのY方向の両端を支持するとともに、
図1、
図2に示すようにX方向において所定の間隔で各段Sを支持している。
【0018】
各段Sには複数の栽培容器R1、R2・・・(R)が+X方向に向かって順に並んで配置されている。各段Sは、-X方向側から+X方向側に栽培容器Rを搬送する。段Sの始端である-X方向側には、栽培容器Rを各段Sに投入する投入装置11が配置されている。一方、段Sの終端である+X方向側には、栽培容器Rを各段Sから取り出す取出装置13が配置されている。よって、各段Sには投入装置11から新たな栽培容器Rが次々と段Sに配置される。段Sに新たな栽培容器Rが配置されるのに応じて、段Sに既に配置されている栽培容器Rは段S上を+X方向側に移動する。そして、最終の+X方向側に配置されている栽培容器Rは、新たな栽培容器Rが投入されるのに応じて取出装置13から回収される。このような段Sは、例えばベルトコンベア及びローラコンベア等の搬送装置から構成されており、ベルト及びローラ等が回転することで栽培容器Rを+X方向側に搬送可能である。栽培容器Rは、押し出される力によりベルトコンベア及びローラコンベア等の搬送装置上を摺動して搬送されてもよいし、電力の供給を受けてベルト及びローラ等が回転することで搬送されてもよい。
【0019】
隣接する栽培棚20の段S同士では、複数の栽培容器RがそれぞれY方向において対応する位置に載置されている。例えば、一の栽培棚20の一の段Sに20個の同じ栽培容器RがX方向に載置されている場合、一の栽培棚20に対してY方向に隣接する別の栽培棚20において、前記一の段Sと同じ高さの別の段Sにも20個の同じ栽培容器RがX方向に載置されている。そして、各段Sの20個の栽培容器RはX方向に同位置に配置されており、例えば一の段Sの-X方向側から10番目の栽培容器Rは、別の段Sの-X方向側から10番目の栽培容器Rと対向して載置されている。
【0020】
図2、
図3に示すように、各段Sに配置された栽培容器Rの上方には照明装置である複数のLED7が設けられている。後述の植物体50の株51(
図4)は、LED7から光を受けることができる。LED7からの光は、植物体50の生育を促進するように照射時間、色、強度及び波長等が調整される。
なお、LED7は、栽培容器Rの上方に配置される構成に限られず、栽培室3内において植物体50に光を照射可能な位置に配置されていればよい。例えば、LED7は、栽培容器Rから離れた位置において、植物体50に光を照射可能に位置に配置されていてもよい。
また、栽培室3の取出装置13側には空調装置8が設けられている。空調装置8は、温度、湿度及び風量等を調整可能であり、栽培室3内に所望の温度、湿度及び風量等の空気を供給する。これにより、栽培室3内の所望の栽培環境が制御される。
【0021】
栽培容器Rでは後述の植物体50(
図4)が栽培されている。栽培容器Rが段S上を搬送されている間に、栽培容器Rの内部Rs(以下、栽培容器内部Rsともいう)において栽培条件等の調整が行われ、植物体50が例えば栽培棚20への投入当初よりも生育した状態及び収穫可能な状態等に栽培される。そして、最終的に取出装置13によって取り出されて、植物体50の収穫、及び、別の栽培棚20への移動等が行われる。
【0022】
本実施形態の植物栽培システム1は、噴霧装置(養液供給装置)100と、噴霧装置100を走行可能とする移動機構60と、噴霧装置100及び移動機構60を制御するシステム制御装置200(
図11等)とを備えている。噴霧装置100は、植物体50の根53を収容している各栽培容器R(
図4等)内に、根53に養液を噴霧により供給する装置である。隣接する栽培棚20の間には空間が設けられているが、噴霧装置100は、当該空間をX方向に沿って走行可能である。これにより、隣接する栽培棚20の間の空間を噴霧装置100が走行する空間として有効に利用することができる。
【0023】
移動機構60は、段Sに対応してX方向に延びる走行レール61(
図6~
図8等)と、載置台62(
図1、
図2、
図8等)と、載置台62をZ方向に沿って移動させるための上下方向搬送部63(
図2、
図8等)と、載置台62をY方向に沿って移動させるための幅方向搬送部64(
図1等)と、上下方向搬送部63及び幅方向搬送部64及び各種駆動部に電力を供給する電力源65(
図2等)とを有している。
また、上下方向搬送部63の最下部には走行台車(図示せず)が連結されている。走行台車は、上下方向搬送部63が幅方向搬送部64に沿って移動するのに応じて移動する。
【0024】
ここで、噴霧装置100は、養液を栽培容器Rに噴霧する噴霧部110と、養液を貯蔵しているタンク装置120と、噴霧部110を栽培容器内部Rsに対して出し入れする駆動部130と、噴霧部110、タンク装置120及び駆動部130が載置される移動体140とを備えている。このような噴霧装置100は、隣接する栽培棚20間において走行レール61に沿ってX方向に走行する。よって、噴霧装置100は、栽培棚20A及び20B間の各段S1~S5、栽培棚20C及び20D間の各段S1~S5を、X方向に走行可能である。
【0025】
噴霧装置100において、噴霧部110及びタンク装置120と、駆動部130とは分離して走行可能である。よって、上下方向搬送部63及び幅方向搬送部64は、駆動部130とは別に、噴霧部110及びタンク装置120をZ方向及びY方向に移動させ、所定の段Sに搬送できる。なお後述の変形例に記載の通り、噴霧部110及びタンク装置120と、駆動部130とは一体であってもよい。
噴霧装置100の構成と、移動機構60の構成と、噴霧装置100の移動の様子については後述する。
【0026】
(1-2)栽培容器
次に栽培容器Rについて
図4及び
図5を用いて説明する。
栽培容器Rは、例えば、直方体状の箱である。但し、栽培容器Rの形状は直方体状に限定されず、例えば球形状及び円柱形状であってもよい。また、栽培容器内部Rsへの養液の噴霧を均一にする観点では、栽培容器Rの形状は球形状及び円柱形状であると好ましい。栽培容器Rは、Z方向の下部の下壁32と、下壁32から上方に延びる側壁33(33a~33d)とにより構成されている。側壁33は、Y方向に対向する一対の第1側壁33a及び第3側壁33cと、X方向に対向する一対の第2側壁33b及び第4側壁33dとを有する。
【0027】
栽培容器Rの第1側壁33aには、第1側壁33aを貫通する開口部41が形成されている。開口部41は、
図4に示すように後述のノズル115及び支持部材113が栽培容器内部Rsに挿入され及び栽培容器内部Rsから引き出されるための開口である。なお、ノズル115及び支持部材113は噴霧装置100に設けられており、駆動部130によって栽培容器Rに対してノズル115等が挿入及び引き出しされるように噴霧装置100が駆動される。
【0028】
開口部41は例えば円形状に形成されている。栽培容器Rには、この開口部41に対応して、開口部41を開閉可能な蓋部43が設けられている。蓋部43は、ノズル115が栽培容器Rに挿入されて引き出されるまでは開口部41を開いている。逆に、ノズル115が栽培容器Rに挿入されていない場合は、蓋部43は開口部41を塞いでいる。よって、ノズル115からの養液の噴霧が終了してノズル115が栽培容器内部Rsから引き出された後において、栽培容器内部Rsを概ね密閉状態に維持できる。これにより、栽培容器内部Rsの湿度の変動を抑制し、所望の湿度に維持可能である。なお、栽培容器Rの開口部41が解放されたままの場合は、栽培容器内部Rsに噴霧された養液が開口部41から外に流れ出て、栽培容器内部Rsの湿度の低下が促進されてしまう。
【0029】
本実施形態では、栽培容器Rは、開口部41が形成された第1側壁33aが、隣接する栽培棚20の間に形成された空間に面するように配置される。
図4の場合、開口部41が-Y方向に面するように栽培容器Rが栽培棚20に載置されている。
【0030】
なお、
図4の栽培容器Rの載置の向きは一例であり、栽培容器Rはいずれの栽培棚20の段Sに配置されるかによって配置の向きが異なる。よって、
図4の配置とは異なり、例えば開口部41が+Y方向側に面するように栽培容器Rが栽培棚20に載置される場合もある。
【0031】
栽培容器Rの側壁33(33a~33d)の上端には栽培パネル37を載置可能である。栽培パネル37は、植物体50を載置するための板状の部材である。栽培パネル37には、例えば平面視円形状の複数の支持孔39が栽培パネル37を貫通するように形成されている。支持孔39は、栽培パネル37の上面側において植物体50の株51側を支持し、下面側において植物体の根53を支持する。よって、栽培パネル37の上面側において株51が生育し、栽培パネル37の下面側において根53が生育する。栽培パネル37には、例えば
図4に示すようにX方向に4個及びY方向に6個の支持孔39がマトリクス状に配置されている。
なお、上記では、栽培パネル37には複数の支持孔39が設けられている。しかし、栽培パネル37における支持孔39の数は特に限定されず、例えば、各栽培パネル37それぞれに1つの支持孔39が形成される構成でもよい。これにより、1つの栽培容器Rに対して1つの植物体50を生育することができる。
【0032】
図4、
図5に示すように、栽培容器Rの上端に栽培パネル37が配置されていることで、栽培容器Rの外側に植物体50の上部である葉などの株51が位置している。また、栽培容器内部Rsに植物体50の下部である根53が位置している。後述の
図6、
図8、
図9等では説明を簡単にするために栽培パネル37に配置されている植物体50は省略している。
【0033】
なお、本実施形態では栽培パネル37には植物体50が直接に配置されているが、植物体50を収容したポットが栽培パネル37に配置されてもよい。
上記では、
図4に示すように、1つの栽培容器Rの上端には1つの栽培パネル37が載置されている。しかし、1つの栽培容器Rの上端には複数の栽培パネル37が配置されてもよい。この場合、複数の栽培パネル37は、栽培容器Rの上端にX方向に沿って並んで載置できる。つまり、1つの栽培パネル37のX方向の長さは、栽培容器RのX方向の長さよりも短い。さらに、栽培容器Rは段S上に固定されており、複数の栽培パネル37が栽培容器Rの上端に沿って順次に+X方向側に移動してもよい。ただし、複数の栽培パネル37が載置されている栽培容器Rが段S上を移動してもよい。
【0034】
このような栽培パネル37が載置された栽培容器Rが複数の段Sの水平面に沿ってそれぞれにX方向に並んで配置されている。そして、この複数の段Sを有する複数の栽培棚20が栽培室3に配置されている。植物体50の栽培環境(環境条件)の制御方法は、栽培室3全体で空調及び照明等の環境条件を制御する方法、栽培棚20毎に環境条件を制御する方法等様々挙げられる。本実施形態では、一例として栽培室3全体で環境条件を制御している。
【0035】
開口部41についてさらに説明する。開口部41は、第1側壁33aにおいて、X方向の中央部及びZ方向の中央部よりも下部に形成されている。
図5を参照すると、栽培容器Rの第1側壁33aのX方向の長さはL4であり、開口部41の中心Pは第1側壁33aのX方向の概ね中心に位置する。よって、X方向において、第2側壁33bと中心Pとの距離及び第4側壁33dと中心Pとの距離はL4/2である。また、開口部41の中心Pは第1側壁33aのZ方向の中心部より下方に位置する。よって、Z方向において、下壁32と中心Pとの距離L2はL1/2よりも小さい(L2<L1/2)。そして、開口部41の半径dはL2以下である(d<L2)。
【0036】
このようにノズル115が挿入される開口部41が栽培容器RのX方向の中央部及びZ方向の下部に設けられている。よって、栽培容器内部Rsに配置された複数の植物体50間のX方向の中央部において、かつ植物体50の根53の下方から養液を噴霧可能である。これにより、栽培容器内部Rsに概ね均一に養液を噴霧可能であり、また、養液を吸収する根53に向かって直接的に養液を噴霧可能である。よって、栽培容器内部Rsでの植物体50の生育の偏りを抑制し、生育を促進できる。
【0037】
円形状の開口部41の半径dは、ノズル115及び支持部材113が栽培容器内部Rsに挿入可能な大きさに応じて適切に設計されているのが好ましい。開口部41がノズル115及び支持部材113に対応した大きさに比べて大き過ぎると、開口部41を介して栽培容器内部Rsに噴霧された養液が外部に漏れだし、また、外部から開口部41に空気が入り込み易くなる。しかし、前記の通り開口部41の大きさをノズル115及び支持部材113が挿入可能な程度に抑えることで、噴霧された養液の漏洩及び外部からの空気の侵入を抑制し、栽培容器内部Rsの養液の湿度を所望程度に維持可能である。
【0038】
(1-3)移動機構
次に移動機構60について
図1、
図2、
図6~
図8等を用いて説明する。移動機構60は、前述したとおり、走行レール61と、載置台62と、上下方向搬送部63と、幅方向搬送部64と、電力源65とを有する。
【0039】
(a)電力源
電力源65(
図2等)は、走行レール61を走行する移動体140、上下方向搬送部63及び幅方向搬送部64等に電力を供給する。また、電力源65は、噴霧装置100の噴霧部110による噴霧、タンク装置120による噴霧部110への養液の供給、駆動部130による噴霧部110の移動等にも電力を供給可能であってもよい。
【0040】
(b)走行レール
図6~
図8に示すように、走行レール61は各段Sにおいて、栽培棚20と栽培棚20との間の空間に面している面Sa(
図7、
図10等)に段Sの長手方向に沿うように設けられている。走行レール61はU字状であり、U字の溝が栽培棚20と栽培棚20との間の空間側に開口している。このような走行レール61は、
図7、
図8等に示すように段Sそれぞれに設けられている。そして、Y方向に隣接する一対の走行レール61は、U字の溝が互いに向かうように、同じ高さ位置において段Sに取り付けられている。この一対の走行レール61の溝に噴霧装置100の後述の移動体140の端部が嵌め込まれている。
【0041】
移動体140の端部には、
図6~
図8、
図10に示すように、走行レール61に沿って走行可能な走行部142が設けられている。走行部142は、例えば回転可能な車輪等である。走行部142内にモータが配置されており、モータが電力源65から電力の供給を受け、走行部142が回転する。これにより、移動体140が走行レール61に沿ってX方向に移動する。そして、移動体140上に載置された噴霧部110、タンク装置120及び駆動部130が各段SをX方向に移動し、任意の栽培容器Rに対応する位置に停止可能となっている。ここでは、走行部142内にモータが設けられているが、走行部142とは別にモータが設けられていてもよい。このモータが電力源65から電力の供給を受けて回転し、この回転動力が走行部142に伝えられ、走行部142が回転してもよい。
【0042】
上記とは異なり、例えば走行レール61がコンベア等の搬送機構を有しており、当該搬送機構が電力源65からの電力の供給を受け、走行レール61に嵌め込まれた移動体140をX方向に移動させてもよい。この場合、移動体140には前述の走行部142は設けられていなくてもよい。
【0043】
(c)上下方向搬送部、載置台
載置台62は、噴霧装置100のうち、第1移動体141に載置された噴霧部110及びタンク装置120を載置する台である。
上下方向搬送部63は、
図2、
図8に示すように、例えば栽培室3において-X方向の端部においてZ方向に沿って設けられている。上下方向搬送部63は、段Sを-X方向の端部まで走行してきた第1移動体141を載置台62で受け取る。なお、第1移動体141上には、噴霧部110及びタンク装置120が載置されている。そして、上下方向搬送部63は、電力源65から電力の供給を受け、載置台62に載置された第1移動体141を、縦支柱Vに沿ってZ方向に移動させる。上下方向搬送部63は、Z方向に対象物を搬送する装置であり、例えばスタッカークレーン等を用いることができる。
【0044】
上記とは異なり、上下方向搬送部63は、縦支柱VにZ方向に沿って取り付けられたベルトコンベアであってもよい。この場合、ベルトコンベアである上下方向搬送部63が電力源65から電力の供給を受けて駆動し、載置台62をZ方向に移動させる。
【0045】
(d)幅方向搬送部
幅方向搬送部64は、
図1に示すように、栽培室3において-X方向の端部に、かつ例えば+Z方向の端部に設けられている。幅方向搬送部64は、電力源65から電力の供給を受け、載置台62に載置された第1移動体141、噴霧部110及びタンク装置120を、Y方向に沿って一の栽培棚20から別の栽培棚20に移動させる。幅方向搬送部64は、Y方向に対象物を搬送する装置であり、例えばスタッカークレーン等を用いることができる。
【0046】
例えば、幅方向搬送部64は、上下方向搬送部63により+Z方向の端部に搬送された載置台62を受け取り、載置台62をY方向に移動させて所定の栽培棚20に載置台62を位置付ける。次に、上下方向搬送部63は、幅方向搬送部64から載置台62を受け取り、載置台62をZ方向に移動させて所定の栽培棚20の所定の段Sに載置台62を位置付ける。そして、上下方向搬送部63は、載置台62から、第1移動体141、噴霧部110及びタンク装置120を走行レール61に移載する。
【0047】
上記とは異なり、幅方向搬送部64は、Y方向に延びる横桟(図示せず)に沿って取り付けられたベルトコンベアであってもよい。この場合、ベルトコンベアである幅方向搬送部64が電力源65から電力の供給を受けて駆動し、載置台62をY方向に移動させる。
【0048】
(1-4)噴霧装置
噴霧装置100は、噴霧部110、タンク装置120、駆動部130及び移動体140を有している。噴霧装置100の各部について
図6~
図10等を用いて説明する。
【0049】
(a)移動体
移動体140は、上面に噴霧装置100が載置される例えば板状部材である。隣接する段Sに面した移動体140の両端部は、走行レール61の溝に摺動可能に嵌め込まれる。
走行レール61の溝に嵌め込まれる移動体140のY方向の両端部には、
図6~
図8、
図10に示すように、前述の走行部142が設けられている。走行部142は前述の通り電力源65から電力の供給を受けて回転可能であり、これにより、移動体140が走行レール61に沿ってX方向に移動し、任意の栽培容器Rの位置に停止可能である。
移動体140は、第1移動体141と第2移動体143とを有している。第1移動体141と第2移動体143とは分離可能であり、別個独立に走行レール61を走行可能である。第1移動体141には、噴霧部110及びタンク装置120が載置されている。第2移動体143には、噴霧部110を移動させる駆動部130が載置されている。
【0050】
(b)噴霧部、タンク装置
噴霧部110は、栽培容器内部Rsに養液を噴霧するための装置である。本実施形態では、
図6~
図10等に示すように、噴霧装置100は、隣接する段Sに配置された互いに対向する栽培容器Rの両方に対して養液を噴霧可能である。つまり、噴霧装置100は、+Y方向側の段Sに配置された栽培容器Rに養液を噴霧する第1噴霧部110aと、噴霧装置100を挟んで当該栽培容器Rと対向する-Y方向側の段Sに配置された栽培容器Rに養液を噴霧する第2噴霧部110bとを有する。第1及び第2噴霧部110a、110bは、それぞれ対応する栽培容器Rに養液を噴霧するものであり、各構成部がX方向に対して対称である点を除いて互いに構成は同様である。よって、以下では第1噴霧部110aについて説明し、第2噴霧部110bについては説明を省略するか、簡単に説明する。
【0051】
なお、第1噴霧部110aの各構成部には符号番号に添え字“a”を付し、第2噴霧部110bにおいて第1噴霧部110aと同じ各構成部には同一の符号番号に添え字“b”を付している。また、第1及び第2噴霧部110a、110bを総称する場合は噴霧部110という場合があり、その他の構成部についても同様である。
【0052】
第1噴霧部110aは、養液を噴霧する第1ノズル115aと、第1ノズル115aを支持する長尺状の第1支持部材113aと、第1支持部材113aを栽培容器Rに対して挿入及び引き出すための(挿脱するための)第1支持本体111aとを有する。
【0053】
第1支持部材113aは、長尺状であり、中空の筒状部材(長尺部材)から形成されており、養液が貯蔵されたタンク装置120と接続されている。タンク装置120は、第1噴霧部110a及び第2噴霧部110bに供給する養液を貯蔵しているタンク本体121を有している。タンク本体121は、タンク本体121よりも大容量の養液タンク5から主ホース5aを介して養液の供給を受け、第1及び第2噴霧部110a、110bから噴霧する養液を一時的に貯蔵している。第1支持部材113aは、タンク装置120の第1ホース123aと接続されており、第1ホース123aを介してタンク本体121から養液の供給を受ける。第1支持部材113aの先端部である+Y方向側の端部は閉じられており、第1ホース123aを介してタンク本体121から供給された養液は、第1支持部材113aの中空部に行き亘る。
【0054】
第1ノズル115aは、第1支持部材113aの挿入方向の先端部である+Y方向の端部において+Z方向側に取り付けられている。第1ノズル115aが第1支持部材113aの挿入方向の先端部に設けられていることで、栽培容器Rと第1ノズル115aとの距離が近く、第1ノズル115aを栽培容器Rに容易に挿入可能である。
また、第1支持部材113aの挿入方向の先端側は、第1ノズル115aが栽培容器Rに挿入される際に、挿入側から奥側までに至るまでに亘って栽培容器内部Rsを移動する。よって、栽培容器内部Rsにおいて、挿入方向に第1ノズル115aが移動する過程の何れかの箇所において第1ノズル115aから養液を噴霧させることができる。さらには、挿入方向に移動している全過程に亘って第1ノズル115aから養液を噴霧させることで、栽培容器内部Rs全体に養液をより均一に噴霧可能である。
【0055】
同様に、第1支持部材113aの挿入方向の先端側に設けられた第1ノズル115aは、栽培容器内部Rsの奥側から挿入側に至る方向である後退方向に移動される。よって、後退方向の何れかの箇所において第1ノズル115aから養液をより均一に噴霧させることができる。さらには、後退方向に移動している全過程に亘って第1ノズル115aから養液を噴霧させることで、栽培容器内部Rs全体に養液をより均一に噴霧可能である。
【0056】
第1ノズル115aは、内部に中空部を有し、当該中空部と連通する複数の第1孔116aが表面に形成されている。複数の第1孔116aは、上方である+Z方向に向くように配置されている。第1ノズル115aの中空部は第1支持部材113aの中空部と連通しており、タンク装置120からの養液が所定の圧力で第1ノズル115aの中空部に供給される。よって、第1ノズル115aの複数の第1孔116aから、所定の圧力が加えられた養液が+Z方向に向かって噴霧される。本実施形態では、複数の第1孔116aからの養液の噴霧範囲は、Z方向に対して例えば約±90°に設定されている。
【0057】
先端部に第1ノズル115aを有する第1支持部材113aは、第1支持本体111aに支持されている。第1支持本体111aは、駆動部130と面する側に第1取手部117aを有している。第1支持本体111aは、後述の駆動部130により第1取手部117aを把持され、栽培容器Rに対して近接及び離間する方向、つまりY方向に移動される。これにより、第1支持本体111aに支持されている第1支持部材113a及びその先端部に設けられた第1ノズル115aが、栽培容器内部Rsに対して挿入され、及び栽培容器内部Rsから引き出される。
【0058】
支持部材113の長さについて
図4を用いて説明する。支持部材113は、栽培容器Rにおけるノズル115の挿入側の開口部41から奥側に至るまでのY方向の長さLb(第1長さ)を予め有している。長さLbは、栽培容器RのY方向の長さLaと同程度であるか、若干小さい。支持部材113が長さLb分だけ栽培容器Rに挿入された場合、支持部材113の先端部は概ね栽培容器RのY方向の終端部付近にまで到達している。このように支持部材113が予め栽培容器Rの奥側まで到達可能な長さLbを有しているため、駆動部130が支持部材113を栽培容器Rに押し込むことで、ノズル115を栽培容器Rの奥側に至るまで挿入できる。これにより、栽培容器Rの挿入側から奥側に至るまで養液を噴霧させて、栽培容器内部Rsに養液を均一に噴霧できる。
【0059】
これら噴霧部110及びタンク装置120は、第1移動体141に載置されている。よって、第1移動体141がX方向に移動することで、噴霧部110及びタンク装置120もまたX方向に移動する。よって、噴霧部110及びタンク装置120をX方向に並んだ任意の栽培容器Rの位置に停止可能である。
【0060】
なお、タンク装置120は第1移動体141に固定されていてもよい。本実施形態における噴霧部110は、後述の駆動部130により栽培容器Rに対して近接及び離反して移動可能に第1移動体141に取り付けられている。例えば、噴霧部110は、第1移動体141に固定されておらず単に載置されているだけでもよい。また、ノズル115及び支持部材113が栽培容器内部Rsに挿入され、また栽培容器内部Rsから引き出されるのに応じて支持本体111の一部が移動可能であり、支持本体111の残りが第1移動体141に固定されていてもよい。
【0061】
なお、噴霧装置100は、養液を収容するタンク装置120を備えているため、ノズル115に養液を供給する手段を噴霧装置100に組み込むことができる。よって、ノズル115に養液を供給する手段が別途に設けられている場合に比べて、噴霧装置100のコンパクト化及び可搬性等を向上できる。
【0062】
(c)駆動部
駆動部130は、支持本体111の取手部117を挟持し、支持本体111を栽培容器Rに対して近接及び離間する方向、つまりY方向に移動する。駆動部130は、第1噴霧部110aを駆動する第1駆動部130aと、第2噴霧部110bを駆動する第2駆動部130bとを有する。第1及び第2駆動部130a、130bは、各構成部がX方向に対して対称である点を除いて互いに構成は同様である。よって、以下では第1駆動部130aについて説明し、第2駆動部130bについては説明を省略するか、簡単に説明する。
なお、第1駆動部130aの各構成部には符号番号に添え字“a”を付し、第2駆動部130bにおいて第1駆動部130aと同じ各構成部には同一の符号番号に添え字“b”を付している。また、第1及び第2駆動部130a、130bを総称する場合は駆動部130という場合があり、その他の構成部についても同様である。
【0063】
第1駆動部130aは、いわゆるロボットアームであり、Y方向に揺動することで第1支持本体111aをY方向に移動する。第1駆動部130aは、第1固定部131aと、第1後アーム134aと、第1連結部135aと、第1前アーム133aと、第1挟持部137aとを有する。第1固定部131aは第1駆動部130aの揺動支点となる部分であり、第2移動体143の所定位置に固定されている。第1後アーム134aは第1固定部131aに連結された長尺部材であり、Z方向及びY方向に揺動可能に連結されている。第1前アーム133aは長尺部材である。第1連結部135aは、第1前アーム133a及び第1後アーム134aを互いに独立にZ方向及びY方向に揺動可能に連結している。第1挟持部137aは、第1取手部117aを挟持可能なように、二股に分かれた部材から構成されている。
【0064】
初期位置では、
図6等に示すように、第1前アーム133a及び第1後アーム134aは、第1連結部135aを頂点にして-Z方向に傾斜するように逆V字状に折れ曲がっている。なお、
図9等に示すように、第1前アーム133a及び第1後アーム134aは、初期位置から+Y方向側又は-Y方向側に搖動すると、Z方向に折れ曲がった状態から水平面に沿うように延びる。
【0065】
第1挟持部137aは、二股に分かれた部材が開いた状態から閉じた状態になることで、第1取手部117aを挟持する。第1駆動部130aは、第1挟持部137aが第1支持本体111aの第1取手部117aを挟持した状態で、第1固定部131aを支点としつつ、第1前アーム133a及び第1後アーム134aが第1連結部135aを介してZ方向及びY方向に揺動することで、第1支持本体111aをY方向に移動させる。
一方、第1挟持部137aは、二股に分かれた部材が開いた状態となることで、第1取手部117aを開放する。
このような駆動部130は第2移動体143に載置されている。
【0066】
(1-5)噴霧装置の移動及び噴霧の概要
次に、噴霧装置100の移動及び養液の噴霧の概要について説明する。噴霧装置100の移動及び養液の噴霧は、後述のシステム制御装置200により制御されている。
【0067】
複数の栽培棚20の複数の段Sそれぞれに複数の栽培容器Rが配置されている。噴霧装置100は、システム制御装置200の制御に応じて、当該栽培容器Rが載置された栽培棚20(栽培棚20A~20Dのいずれか)の段S(段S1~段S5のいずれか)に移動し、養液の噴霧対象である栽培容器Rが載置されている位置まで移動する。本実施形態では、噴霧装置100は、Y方向に対向して同位置に配置された2つの栽培容器Rが載置されている場所に移動する。
【0068】
この場合、本実施形態では、
図8に示すように、駆動部130は、第2移動体143に載置された状態で、+X方向側の取出装置13に隣接する退避位置に退避している。駆動部130は、退避位置では、固定部131に対して挟持部137が-X方向側を向いている。本実施形態では、例えば、複数の駆動部130が、各段Sそれぞれの退避位置に配置されている。
ただし、後述するが、一つの駆動部130のみが設けられていてもよい。この場合、駆動部130は、噴霧部110及びタンク装置120と一体となって移動体140に載置されて所定の栽培容器Rの位置まで移動してもよい。あるいは、駆動部130が載置された第2移動体143と、噴霧部110及びタンク装置120が載置された第1移動体141とが別々に所定の栽培容器Rの位置まで移動してもよい。
【0069】
また、噴霧部110及びタンク装置120が載置された第1移動体141は、載置台62(
図8等)に載置される。そして、
図1、
図8等に示すように、載置台62が幅方向搬送部64によりY方向に移動することで、所定の栽培容器Rが載置されている栽培棚20の位置に載置台62が移動される。次に、
図2、
図8等に示すように、載置台62が上下方向搬送部63によりZ方向に移動することで、所定の栽培容器Rが載置されている段Sの位置に移動される。
【0070】
次に、噴霧部110及びタンク装置120が載置された第1移動体141は、載置台62から、
図6~
図9等に示すように段Sの走行レール61に移動する。そして、第1移動体141は、一対の走行レール61の溝をX方向に移動する。第1移動体141は、Y方向に互いに対向する所定の栽培容器Rの位置に移動して停止する。また、当該所定の栽培容器Rが載置されている段Sの退避位置に退避している駆動部130は、当該所定の栽培容器Rの位置まで移動する。これにより、
図7、
図9等に示すように、噴霧部110、タンク装置120、駆動部130及び移動体140を備える噴霧装置100が、Y方向に互いに対向する当該所定の栽培容器Rの位置に位置付けられる。
【0071】
噴霧装置100は後述のシステム制御部210(システム制御装置200の一部)からの噴霧指令に応じて、Y方向に互いに対向する当該所定の栽培容器内部Rsに養液を噴霧する。噴霧指令には、当該栽培容器Rが載置されている栽培棚20の棚番号、段Sの段番号、栽培容器Rの栽培容器番号の他に、養液の噴霧量、養液の種類を特定した養液タイプ、設定湿度等の情報が含まれている。
【0072】
具体的に説明すると、
図9等に示すように、第1駆動部130aの第1挟持部137aは、第1支持本体111aの第1取手部117aを挟持する。このとき、
図6に示すように、第1駆動部130aの第1前アーム133a及び第1後アーム134aは、前述の通り第1連結部135aから逆V字状に折れ曲がった状態にある。
【0073】
次に、第1固定部131aを支点としつつ、第1前アーム133a及び第1後アーム134aが第1連結部135aを介して-Z方向及び+Y方向側に徐々に揺動することで、第1支持本体111aが+Y方向側に徐々に移動する。このとき、第1前アーム133a及び第1後アーム134aは+Y方向側に徐々に揺動するとともに、-Z方向に搖動するため、第1前アーム133aと第1後アーム134aとが形成する逆V字の角度が、移動体140の平面に沿うように徐々に広がる。これにより、
図9、
図10に示すように、+Y方向側の栽培容器Rの開口部41から奥側の方向(挿入方向)に向かって第1ノズル115a及び第1支持部材113aが栽培容器内部Rsに徐々に挿入される。第1ノズル115aが栽培容器Rに挿入され始めると、第1ノズル115aは養液を栽培容器内部Rsに噴霧する。第1ノズル115aは、第1ノズル115aが栽培容器Rの+Y方向側の奥側に至るまで養液の噴霧を継続する。
【0074】
図10に示すように第1ノズル115aからは上方に向かって養液が噴霧され、栽培容器内部Rsに霧状の養液が所定の湿度で充満する。第1ノズル115aから上方に向かって養液が噴霧されることで、植物体50の根53に養液が直接的に噴霧される場合もある。なお、第1ノズル115aからの養液の噴霧範囲に根53が位置するように、噴霧強度及び栽培容器内部Rsでの栽培パネル37の高さを適宜調整可能である。養液を直接的に供給された根53は、養液の直接的な供給がなくなった後は、栽培容器内部Rsに噴霧されて漂う養液をさらに吸収しようとし、吸収力が高まる。よって、植物体50の生育がさらに促進される。
【0075】
第1ノズル115aが栽培容器Rの奥側まで到達すると、次に、第1固定部131aを支点としつつ、第1前アーム133a及び第1後アーム134aが第1連結部135aを介して+Z方向及び-Y方向側に徐々に揺動し元の状態に戻る。よって、第1支持本体111aが-Y方向側に徐々に移動する。これにより、
図9、
図10に示すように、栽培容器Rの奥側から開口部41の方向(後退方向)に向かって第1ノズル115a及び第1支持部材113aが栽培容器内部Rsから徐々に引き出される方向に移動する。第1ノズル115aは、栽培容器Rの+Y方向側の奥側から開口部41の近傍に至るまで養液の噴霧を継続する。
【0076】
上述のように、第1ノズル115aが栽培容器Rの開口部41から奥側に至る挿入方向の過程と、栽培容器Rの奥側から開口部41に至るまでの後退方向の過程とのいずれにおいても、第1ノズル115aから養液を栽培容器Rに噴霧することで、栽培容器内部Rs全体に養液をより均一に噴霧可能である。
【0077】
最終的に第1駆動部130aが元の位置に戻ることで、第1支持本体111aは、移動前の初期位置に戻る。その後、第1駆動部130aの第1挟持部137aは、第1支持本体111aの第1取手部117aを開放する。
【0078】
X方向に対して対称の動作であるが、同様のタイミングで第2駆動部130bが第1駆動部130aと同様の動作を行う。第2ノズル115b及び第2支持部材113bは、-Y方向側の栽培容器Rの開口部41から奥側の方向(挿入方向)に向かって栽培容器Rに徐々に挿入される。そして、第2ノズル115bは、栽培容器内部Rsに挿入されてから奥側に至るまで養液を噴霧する。
逆に、第2ノズル115b及び第2支持部材113bは、栽培容器Rの奥側から開口部41の方向(後退方向)に向かって栽培容器内部Rsから徐々に引き出される方向に移動する。第2ノズル115bは、栽培容器Rの-Y方向側の奥側から開口部41の近傍に至るまで養液の噴霧を継続する。そして、最終的に第2支持本体111bが移動前の初期位置に戻り、第2取手部117bが開放される。
支持本体111が初期位置に戻ると、駆動部130は退避位置に戻る。
【0079】
(2)植物栽培システムの制御
次に、植物栽培システム1における栽培容器Rの環境条件の制御処理、噴霧装置100による噴霧条件の制御処理について説明する。これらの制御は、植物栽培システム1のシステム制御装置200(
図11)の制御により行われる。
【0080】
本実施形態では、システム制御装置200は植物栽培システム1に含まれており、噴霧装置100とは別途設けられている。よって、システム制御装置200は、例えば植物栽培システム1を制御する中央監視室等に設けられている。また、システム制御装置200は、植物栽培システム1を遠隔で制御する遠隔制御装置等に設けられていてもよい。なお、噴霧装置100は、システム制御装置200のシステム制御部210からの制御を解読して実行する別途の装置制御部300(
図11)を有している。
【0081】
(2-1)システム制御装置
図11に示すように、システム制御装置200は、栽培容器Rの環境条件の制御処理、噴霧装置100の噴霧条件の制御処理を行うシステム制御部210を備えている。また、システム制御装置200は、これらの制御を行うための情報を記憶する環境条件DB221、噴霧条件DB223、栽培記録DB240、生産計画DB250及び噴霧装置DB260を備えている。
システム制御装置200のうち、システム制御部210、環境条件DB221、噴霧条件DB223、栽培記録DB240、生産計画DB250及び噴霧装置DB260の少なくともいずれかは、噴霧装置100内の機能部として設けられていてもよい。あるいは、これらのいずれかは、植物栽培システム1を制御する指令室等に設けられていてもよい。
【0082】
(a)環境条件DB
図12に示すように、環境条件DB221には、栽培室3を所望の栽培環境に設定するための環境条件が記憶されている。
環境条件DB221には、環境条件として、
図12に示すように、温度と、湿度と、CO
2濃度と、pH値と、EC値(電気伝導率)と、光量(光合成光量子束密度(PPFD:Photosynthetic Photon Flux Density))と、光の波長と、風量とが1レコードに設定されている。LED7のON、OFF及び色等を制御することで所望の光量及び波長が調整可能である。また、温度、湿度、CO
2濃度、pH値、EC値及び風量等は空調装置8により調整可能である。
【0083】
なお、
図12では、環境条件として温度、湿度、CO
2濃度、pH値、EC値、光量、光の波長及び風量を挙げた。環境条件は、これらの全てでなくてもよく、例えば少なくとも1つであってもよい。また、環境条件はこれに限定されず、溶存酸素濃度等他の条件を含んでいてもよい。
また、
図12では栽培室3は時間に関係なく所定の環境条件で制御される。しかし、時間の経過に応じて環境条件が変化してもよい。例えば、栽培室3内での植物体50の成長に応じて環境条件を時間の経過に応じて変化してもよい。
【0084】
(b)噴霧条件DB
図13に示すように、噴霧条件DB223には、噴霧条件を制御する噴霧対象の栽培容器Rについて、噴霧条件を制御する日時と、当該栽培容器Rの位置を特定するための棚番号、段番号及び栽培容器番号と、養液の噴霧量と、養液の種類を特定した養液タイプと、維持すべき設定湿度とが1レコードに設定されている。本実施形態では、Y方向に対向して同位置に配置された2つの栽培容器Rに対して養液を噴霧する。よって、噴霧条件DB223では、隣接する栽培棚20について、同一の段番号及び同一の栽培容器番号の2つの栽培容器Rが同時に噴霧対象となっている。
【0085】
上記のように複数の栽培容器Rごとに養液の供給量及び供給日時等の噴霧条件が設定されることで、各栽培容器内部Rsを適切な栽培条件に保つことができる。特に、植物体50の生育状態に応じて養液の種類、供給量、供給日時等が異なる場合があり、生育状態に応じた適切な量の養液を適切な時に植物体50に供給でき、植物体50の生育を促進できる。
【0086】
なお、栽培容器Rは段Sにおいて時間の経過とともに+X方向に移動し、取出装置13により栽培室3から取り出される。噴霧条件DB223には、各栽培容器Rの+X方向への移動も考慮して、各棚番号、段番号及び栽培容器番号で特定される栽培容器Rへの噴霧条件が設定されている。
また、栽培容器Rに収容されている植物体50は、
図17Aの生産計画に示すように所定の日時で収穫される。よって、収穫対象の植物体50が収容されている栽培容器Rには養液の噴霧は不要である。そのため、噴霧条件DB223では、当該栽培容器Rは噴霧対象から除外されている。
また、ここでは、養液の噴霧継続時間及び噴霧強度等は各栽培容器Rで一定であるものとしている。しかし、噴霧条件DB223において、養液の噴霧継続時間及び噴霧強度等が栽培容器Rごとに設定されてもよい。
【0087】
(c)栽培記録DB
栽培記録DB240には、
図11に示す温度計231、湿度計232、CO
2センサ233、pHセンサ234、電気伝導率を測定するECメータ235、光量及び波長を検出する光検出センサ236及び風量センサ237等の測定器230から取得した栽培室3及び栽培容器内部Rsの状態、植物体50の生育状態等が栽培記録として記録されている。
図14に示すように、栽培記録DB240には、栽培室3の栽培記録を取得した日時ごとに前述の環境条件の各項目が1レコードに記録されている。
また、
図15に示すように、栽培記録DB240には、栽培容器Rごとに、当該栽培容器Rの位置を特定するための棚番号、段番号及び栽培容器番号と、日時と、温度、湿度、CO
2濃度、pH値及びEC値を含む栽培記録とが1レコードに記録されている。
【0088】
また、
図16に示すように、栽培記録DB240には、栽培容器Rごとに、当該栽培容器Rの位置を特定するための棚番号、段番号及び栽培容器番号と、日時と、植物体50の全体の長さと、葉である株51の直径及び長さと、根53の長さ及び色と、植物体50の現在の重量が1レコードに記録されている。これら生育状態(植物体50の全体の長さ、葉である株51の直径及び長さ、根53の長さ及び色等)は、例えば撮像カメラ等により植物体50を撮像した映像に基づいて取得される。
【0089】
(d)生産計画DB
生産計画DB250には、栽培室3においてどのような計画で植物体50を栽培して収穫するかに関する生産計画が記憶されている。
図17Aに示すように、生産計画DB250には、栽培容器Rごとに、当該栽培容器Rの位置を特定するための棚番号、段番号及び栽培容器番号と、植物体50の品種、栽培パネル37の栽培室3への投入日時、植物体50の収穫日時及び収穫時の植物体50の予定重量等が記憶されている。また、
図17Bに示すように、生産計画DB250には、各品種ごとの予定全収穫量が記憶されている。
(e)噴霧装置DB
噴霧装置DB260には、栽培室3における噴霧装置100の現在位置を含む情報が記憶されている。例えば植物栽培システム1内で駆動している噴霧装置100がdeviceAである場合、
図18に示すように、deviceAの現在位置がXYZ座標で特定された(XA、YA、ZA)として記憶されている。噴霧装置100の現在位置は、位置検出手段(図示せず)等により随時検出されており、噴霧装置100の移動とともに随時更新される。
なお、噴霧装置DB260には、deviceAである噴霧装置100の噴霧履歴として、養液を噴霧した日時、噴霧した養液タイプ、養液の残量、噴霧対象の栽培容器Rを特定する情報等が記憶されていてもよい。
【0090】
(2-2)制御の流れ
次に、システム制御部210での制御の流れについて説明する。
図11に示すように、システム制御部210は、複数の栽培容器Rそれぞれの環境条件の制御処理を行う環境制御部211と、複数の栽培容器Rそれぞれへの養液の噴霧条件の制御処理を行う噴霧制御部213とを含む。
【0091】
(a)環境条件の制御処理
まず
図19を用いて環境条件の制御処理の流れについて説明する。
ステップS1:環境制御部211は、
図12の環境条件DB221を参照し、設定されている環境条件に基づいて、LED7のON/OFF及び空調装置8等を制御することで、栽培室3の環境条件を制御する。
ステップS2:環境制御部211は、
図12で設定されている環境条件と、
図14で検出されている栽培室3の栽培記録とを比較する。環境制御部211は、栽培記録が環境条件からずれている場合は、環境条件に合うようにLED7及び空調装置8等を制御する。
環境制御部211は、環境条件の制御が終了したと判断すると(ステップS2においてYes)、環境条件の制御処理を終了する。そうでない場合(ステップS2においてNo)は、環境制御部211は、さらに栽培室3の環境条件の制御処理を継続する。
【0092】
また、環境制御部211は、
図16の植物体50の生育状態を参照し、生育を促進するようにLED7及び空調装置8を制御して栽培室3の温度等を制御してもよい。また、環境制御部211は、
図17A及び
図17Bの生産計画に適合するように栽培室3の温度等を制御してもよい。
このように環境制御部211が、栽培記録DB240に記録された栽培記録と、環境条件DB221での環境条件とが異なるか否かを随時判断して環境条件を制御することで、栽培室3内を設定された環境条件に維持できる。ひいては植物栽培システム1における植物体50の栽培の効率化を図ることができる。
【0093】
(b)噴霧条件の制御処理
次に
図20を用いて噴霧条件の制御処理の流れについて説明する。
ステップS21:噴霧制御部213は、養液を噴霧する対象の栽培容器Rが載置されている位置に噴霧装置100を移動するように制御する(位置合わせ制御)。
具体的には、噴霧制御部213は、
図13の噴霧条件DB223を参照し、噴霧対象の栽培容器Rの棚番号、段番号及び栽培容器番号を取得する。ここでは、前述した通り、隣接する栽培棚20の互いに対向する2つの栽培容器Rが噴霧対象として設定されている。
よって、噴霧制御部213は、例えば、棚番号20A、20Bと、段番号S1と、栽培容器番号R1とを取得する。この場合、隣接する栽培棚20A及び栽培棚20Bに載置され、互いにY方向に対向する段番号S1及び栽培容器番号R1の2つの栽培容器Rが噴霧対象である。
【0094】
噴霧制御部213は、噴霧装置DBから噴霧装置100の現在位置を取得し、噴霧装置100を現在位置から養液の噴霧対象の栽培容器Rまで移動させる。この場合、噴霧制御部213は、噴霧装置100の現在位置及び噴霧対象の栽培容器Rの位置に基づいて、上下方向搬送部63、幅方向搬送部64、第1移動体141を制御し、噴霧装置100を噴霧対象の栽培容器Rまで移動させる。
【0095】
噴霧装置100の移動は次のように行われる。噴霧制御部213は、噴霧部110及びタンク装置120が載置された第1移動体141を、載置台62(
図8等)に載置する。
噴霧制御部213は、例えば、幅方向搬送部64を駆動して載置台62をY方向に移動し、噴霧条件DB223から読み出した棚番号に対応する位置に載置台62を移動する。例えば、棚番号が20A及び20Bである場合、噴霧制御部213は、栽培棚20Aと栽培棚20Bとの間に載置台62を移動させる。
【0096】
次に、噴霧制御部213は、例えば、上下方向搬送部63を駆動して載置台62をZ方向に移動し、噴霧条件DB223から読みだした段番号に対応する位置に載置台62を移動する。例えば、段番号がS1である場合、噴霧制御部213は、段S1に載置台62を移動させる。
【0097】
さらに、噴霧制御部213は、載置台62から所定の段Sの走行レール61に第1移動体141を移動する。そして、噴霧制御部213は、第1移動体141を走行レール61の溝に沿ってX方向に移動し、読みだした栽培容器番号に対応する位置に第1移動体141を移動する。例えば、栽培容器番号がR1である場合、噴霧制御部213は、-X方向側から1番目の栽培容器R1に対応する位置に第1移動体141を移動する。これにより、噴霧部110及びタンク装置120が載置された第1移動体141を、噴霧対象である栽培容器Rが載置されている位置に対応付けることができる。
【0098】
本実施形態では、
図2、
図8に示すように、駆動部130は、第2移動体143に載置された状態で、+X方向側の取出装置13に隣接する退避位置に退避している。よって、噴霧制御部213は、噴霧対象の栽培容器Rの棚番号、段番号及び栽培容器番号を取得すると、当該棚番号及び段番号に対応する位置に退避している駆動部130が載置された第2移動体143を、噴霧対象の栽培容器Rが載置されている位置に移動する。例えば棚番号が20A、20B、段番号がS1、栽培容器番号がR1である場合、噴霧制御部213は、栽培棚20Aと栽培棚20Bとの間であり、段S1に対応して退避している駆動部130が載置された第2移動体143を、栽培容器R1の位置までX方向に沿って移動させる。
これらの操作により、噴霧制御部213は、噴霧対象の栽培容器Rの位置に、噴霧部110及びタンク装置120が載置された第1移動体141と、駆動部130が載置された第2移動体143とを位置付けることができる。
【0099】
ステップS12:噴霧制御部213は、噴霧部110、タンク装置120及び駆動部130を操作し、噴霧対象の互いに対向する2つの栽培容器内部Rsに養液を噴霧する(挿脱制御、供給量制御、供給日時制御、液体(養液)種類制御)。
具体的には、噴霧制御部213は、
図9に示すように、駆動部130の挟持部137により、支持本体111の取手部117を挟持させる。次に、噴霧制御部213は、前アーム133及び後アーム134を徐々に揺動させ、支持本体111を噴霧対象の栽培容器R側に徐々に移動する。これにより、
図9、
図10に示すように、2つの栽培容器Rの開口部41から奥側の方向(挿入方向)に向かってノズル115及び支持部材113が2つの栽培容器内部Rsに徐々に挿入される。噴霧制御部213は、ノズル115が2つの栽培容器内部Rsに挿入されている間、ノズル115から養液を噴霧させる。
【0100】
ノズル115が2つの栽培容器Rの奥側まで到達すると、噴霧制御部213は、前アーム133及び後アーム134を徐々に移動させ、支持本体111を噴霧対象の2つの栽培容器Rから離れる側に徐々に移動する。これにより、2つの栽培容器Rの奥側から開口部41の方向(後退方向)に向かってノズル115及び支持部材113が移動し、当該栽培容器内部Rsから徐々に引き出される。噴霧制御部213は、ノズル115が2つの栽培容器Rの奥側から開口部41の近傍に至るまでの間、ノズル115から養液を噴霧させる。
【0101】
噴霧制御部213は、ノズル115が開口部41に到達するとノズル115からの養液の噴霧を停止させる。そして、噴霧制御部213は、駆動部130を制御して2つの栽培容器内部Rsからノズル115を引き出す。また、噴霧制御部213は、挟持部137による取手部117の挟持を開放する。
その後、噴霧制御部213は、駆動部130を退避位置に戻す。
【0102】
ステップS13:噴霧制御部213は、噴霧条件DB223を参照し、次の噴霧対象の栽培容器Rが有る場合(ステップS13においてYes)はステップS11に処理を戻す。次の噴霧対象の栽培容器Rが無い場合(ステップS13においてNo)は噴霧制御部213はステップS14に処理を進める。
【0103】
ステップS14:噴霧制御部213は、
図15の栽培記録DB240に記録されている一の栽培容器Rの現時点の実際の湿度と、
図13で設定されている当該栽培容器Rの現時点の設定湿度とを比較する。そして、現時点の実際の湿度が設定湿度に満たない場合(ステップS14においてNo)は、噴霧制御部213は、当該栽培容器内部Rsに再度養液を噴霧するように噴霧装置100を制御する。一方、現時点の実際の湿度が設定湿度を満たしている場合(ステップS14においてYes)は、噴霧制御部213は処理を終了する。
【0104】
例えば、
図15を参照すると、現時点の時刻が2019/1/10 12:45であり、棚番号が20A、段番号がS1、栽培容器番号がR1における栽培容器R1では、現時点の実際の湿度が70%である。一方、
図13を参照すると、当該栽培容器R1(棚番号が20A、20B、段番号がS1、栽培容器番号がR1)においては、時刻が2019/1/10 12:00において設定湿度が90%である。よって、噴霧制御部213は、噴霧時点から時間が経過した現時点の実際の湿度70%が、噴霧時点の設定湿度90%よりも大きく下回っていると判定する。そこで、噴霧制御部213は、噴霧装置100を制御して当該栽培容器R1内に養液を噴霧し、設定湿度90%に近づける。
ここで、噴霧制御部213は、前述のように養液の噴霧を補充する閾値として、つまり、設定湿度に対する現時点の実際の湿度の差分の閾値として、例えば15%などの値を保持しているものとする。
なお、
図20において、ステップS13及びステップS14は順不同であってもよい。
【0105】
上記ステップS14では、栽培容器内部Rsの現在の湿度が設定湿度を満たしているか否かに基づいて噴霧装置100を制御する。しかし、噴霧装置100の制御はこれに限られず、
図16の植物体50の生育状態を参照し、生育を促進するように所望の栽培容器Rへの養液の噴霧量が調整されてもよい。同様に、
図17A及び
図17Bの生産計画に適合するように所望の栽培容器Rへの養液の噴霧量が調整されてもよい。例えば、植物体50の生育が生産計画よりも遅れている場合は、当該植物体50が収容されている栽培容器内部Rsへの養液の噴霧量を多くするように噴霧量が調整されてもよい。
【0106】
このように環境制御部211が、栽培記録DB240に記録された栽培記録、生産計画DB250の生産計画、噴霧装置DB260の噴霧装置の現在位置、環境条件DB221での環境条件、及び噴霧条件DB223の噴霧条件等に基づいて噴霧装置100を制御することで、植物栽培システム1における植物体50の栽培の効率化を図ることができる。
【0107】
上記実施形態において、栽培容器内部Rsに収容された植物体50の根53に養液が噴霧される。根53を養液に浸す場合に比べて、根53によるが養液の吸収力が高まり、植物体50の生育が促進される。そして、上記構成によれば、栽培容器Rに養液を噴霧する噴霧装置100を栽培容器Rとは別途設けている。栽培容器内部Rsに養液を噴霧する場合、ノズル115を栽培容器Rまで移動させる。そして、噴霧装置100のノズル115を栽培容器Rの外部から内部に挿入し、養液を栽培容器Rの内部Rsに噴霧させる。これにより、植物体50、特に根53に養液を噴霧して植物体50の生育を促進できる。
【0108】
また、ノズル115から養液を噴霧する場合には、一般的に高い圧力で養液を押し出す必要がある。そのため、ノズル115の詰まり及びノズル115の構成部品の劣化によって、養液を噴霧できない、及び所望の圧力で養液を噴霧できない等の不具合が発生する。
上記の通り、ノズル115が、栽培容器Rの外部において栽培容器Rとは別の噴霧装置100に設けられているため、栽培容器内部Rsからノズル115を取り出す等の作業をすることなく、ノズル115の修理、点検及び交換等のメンテナンス作業を効率よくかつ精度よく行うことができる。
【0109】
なお、栽培容器Rの内部にノズル115が設けられている場合には、例えば、栽培容器Rを開放し、栽培容器内部Rsのノズル115に工具等を適用し、場合によっては作業が困難な姿勢でメンテナンス作業を行う必要がある。よって、メンテナンス作業に時間がかかり、ノズル115の点検等を十分にできない。また、工具等の適用が困難である等の理由により、メンテナンス作業を効率よくかつ精度よく行うことができない。しかし、上記構成によれば栽培容器Rの外部の噴霧装置100にノズル115が設けられているため、このようなメンテナンス作業の困難性が抑制される。
【0110】
このように、上記構成によれば、根53に養液を噴霧して植物体50の生育を促進させる方法を採用しつつも、栽培容器Rの外にノズル115を設ける構成を採用してメンテナンス作業の効率化を図ることができる。
【0111】
さらには、ノズル115を栽培容器内部Rsに設ける場合には、栽培容器内部Rsのノズル115まで養液を供給するための配管を栽培容器内部Rsに敷設する必要がある。複数のノズル115を設ける場合には、配管の構成が複雑となる。上記構成によれば、栽培容器Rの外部にノズル115を設けるため、栽培容器内部Rsのノズル115に養液を供給するための配管を栽培容器内部Rsに敷設する必要がなく、配管敷設のコスト及び労力削減、配管のメンテナンス作業の削減等を達成できる。
【0112】
また、複数の栽培容器Rが一の配管で接続されている場合には、栽培容器Rごとに養液の供給量、供給時間及び種類等を変更するのが困難である。しかし、上記構成によれば、栽培容器R毎に、栽培容器Rに挿入したノズル115からの養液の供給量及び供給時間を容易に変更可能である。また、噴霧装置100のタンク装置120の養液の種類を異ならせることで、栽培容器Rに挿入したノズル115からの養液の種類を容易に変更可能である。
【0113】
また、栽培容器Rに対してノズル115を挿入及び引き出すため、栽培容器Rは静置されている。よって、栽培容器Rを移動させて養液の噴霧装置100まで移動させる場合に比べて、栽培容器Rが格納された空間の状態、つまり植物体50の栽培環境の変化を抑制できる。裁判環境が変化すると、例えば植物体50の生育の阻害、植物体50の枯死等を招く場合があるが、上記構成によれば噴霧装置100を移動させるため、環境の変化を抑制して植物体50の生育を促進できる。
【0114】
〔他の実施形態〕
なお上述の実施形態(他の実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【0115】
(1)上記実施形態では、植物栽培システム1には、1台の噴霧装置100のみが設けられている。よって、上記実施形態では、
図11、
図18に示すように、噴霧装置DB260は、1台の噴霧装置100の現在位置を記憶している。
しかし、植物栽培システム1には、複数台の噴霧装置100が設けられていてもよい。
この場合、噴霧装置DB260は、
図21に示すように複数の噴霧装置100の現在位置等を記憶する。
図21では、噴霧装置DB260は、複数の噴霧装置100であるdeviceA、deviceB、deviceCそれぞれについて、現在位置、使用可否、養液タイプ及び養液の残量等を1レコードに記憶している。例えば、deviceAの噴霧装置100は、現在位置が(XA、XB、XC)であり、故障がなく現在使用可能であるので“〇”であり、噴霧する養液タイプはTypeAであり、養液の残量が800mLである。
【0116】
植物栽培システム1が複数台の噴霧装置100を備える場合の噴霧処理の一例について
図22、
図23を用いて以下に説明する。
図22の処理では、噴霧対象の栽培容器Rに養液を噴霧する噴霧装置100を、複数台の噴霧装置100から特定する。
図23の処理では、噴霧量が不足している栽培容器Rを特定し、当該栽培容器Rへの養液の噴霧量を増加させる噴霧量制御処理が行われる。
【0117】
ステップS21:噴霧制御部213は、
図13の噴霧条件DB223を参照し、噴霧対象の栽培容器Rの養液タイプを取得する。例えば、噴霧制御部213は、現時点の時刻が2019/1/10 12:00である場合、噴霧対象の栽培容器R(棚番号20A、20B、段番号S1、栽培容器番号R1)の養液タイプとしてTypeAを取得する。
次に、噴霧制御部213は、
図21の噴霧装置DB260を参照し、先に取得したTypeAの養液を噴霧可能な複数の噴霧装置100を抽出する。例えば、噴霧制御部213は、TypeAに対応する噴霧装置100として、
図21からdeviceA、deviceC・・・を抽出する。さらに噴霧制御部213は、抽出した複数台の噴霧装置100それぞれについて
図21から現在位置を取得する。
【0118】
ステップS22:噴霧制御部213は、複数台の噴霧装置100の各現在位置に基づいて、各噴霧装置100から噴霧対象の栽培容器Rまでの移動距離を算出する。
なお、噴霧制御部213は、上下方向搬送部63、幅方向搬送部64、第1移動体141等を制御することにより各噴霧装置100を、噴霧対象の栽培容器Rまで移動させる。
つまり、各噴霧装置100は、X方向、Y方向及びZ方向の経路を通って移動する。よって、噴霧制御部213は、まず、複数台の噴霧装置100それぞれについて、噴霧対象の栽培容器Rまでの移動経路を特定する。噴霧制御部213は、例えば噴霧対象の栽培容器Rまで最短距離で到達できるような移動経路を特定する。
次に、噴霧制御部213は、各噴霧装置100の移動経路に基づいて、各噴霧装置100から噴霧対象の栽培容器Rまでの移動距離を算出する。
なお、各噴霧装置100の移動距離は、移動経路に関係なくXYZ座標での直線距離から求められてもよい。
【0119】
ステップS23:噴霧制御部213は、ステップS21で抽出した複数台の噴霧装置100のうち、噴霧対象の栽培容器Rに養液を噴霧する噴霧装置100を特定する。ここでは、噴霧制御部213は、ステップS22で取得した移動距離に基づいて、移動距離が最も短い噴霧装置100を、噴霧させる噴霧装置100として特定する。その他、噴霧制御部213は、
図21の例えばTypeAの養液の残量に基づいて、ステップS21で抽出した複数台の噴霧装置100のうち、残量が最も多い噴霧装置100を噴霧させる噴霧装置100として特定してもよい。
【0120】
ステップS24:噴霧制御部213は、特定した噴霧装置100に、噴霧対象の栽培容器Rへの養液の噴霧を指示する。つまり、上記実施形態と同様に、噴霧制御部213は、上下方向搬送部63、幅方向搬送部64、第1移動体141等を制御し、複数台の噴霧装置100のうち特定された所定の噴霧装置100を噴霧対象の栽培容器Rまで移動させる。また、噴霧制御部213は、駆動部130が載置されている第2移動体143を当該栽培容器Rまで移動させる。そして、上記と同様に、噴霧制御部213は、当該栽培容器内部Rsに所定の噴霧装置100から養液を噴霧させる。
【0121】
ステップS25:噴霧制御部213は、噴霧対象の栽培容器Rへの養液の噴霧が終了すれば(ステップS25においてYes)、処理を終了し、そうでない場合(ステップS25においてNo)は噴霧を継続する。なお、ステップS25において一の栽培容器Rへの噴霧処理が終了した後も、噴霧制御部213は、
図13の噴霧条件DB223を参照し、次の噴霧対象の栽培容器Rについて同様の処理を行う。
【0122】
なお、上記の噴霧処理では、1つの噴霧対象の栽培容器Rに対応して、複数の噴霧装置100の中から1つの噴霧装置100が抽出される。しかし、複数の噴霧対象の栽培容器Rそれぞれに対応する複数の噴霧装置100が抽出されてもよい。
【0123】
次に、噴霧量制御処理について
図23を用いて説明する。
図13の噴霧条件DB223では、栽培容器内部Rsへの養液の噴霧量が設定されている。噴霧量制御処理では、栽培容器Rに収容されている植物体50の生育状態及び栽培容器内部Rsの湿度等に基づいて噴霧量が制御される。
ステップS31:噴霧制御部213は、噴霧対象の栽培容器Rに収容されている植物体50の生育状態を取得する。
例えば、噴霧制御部213は、
図13の噴霧条件DB223を参照し、現時点の時刻が2019/1/10 12:00である場合、噴霧対象として、栽培容器R(棚番号20A、20B、段番号S1、栽培容器番号R1)を取得する。次に、噴霧制御部213は、現時点の時刻が2019/1/10 12:00において、栽培容器R(棚番号20A、20B、段番号S1、栽培容器番号R1)内に収容されている植物体50生育状態を、
図16の栽培記録DB240から取得する。ここでは、噴霧制御部213は、植物体50の長さが10cm、株51の直径が3cm及び長さが4cm、根53の長さが6cm及び色が白、植物体50の現在の重量が5gという情報を取得する。
【0124】
ステップS32、S33:次に、噴霧制御部213は、生育不足か否かを判断する。
例えば、噴霧制御部213は、
図17Aを参照し、当該栽培容器Rについて投入日時、収穫日時及び収穫時の植物体50の予定重量を参照し、生育不足か否かを判断する。ここでは、噴霧制御部213は、栽培容器R(棚番号20A、20B、段番号S1、栽培容器番号R1)について、投入日時が2019/1/1 12:00であり、収穫日時が2019/1/20 12:00であり、収穫時の予定重量が105gである情報を現在の生育状態として取得する。
噴霧制御部213は、ステップS31で取得した植物体50の現在の生育状態と、投入日時、収穫日時及び収穫時の植物体50の予定重量とを比較し、植物体50が生育不足か否かを判断する。
噴霧制御部213は、生育不足と判断すると(ステップS32においてYes)、ステップS33に処理を進め、当該栽培容器Rにおける養液の噴霧量を増加させる。これにより、例えば、
図13の噴霧条件DB223では、現時点の時刻である2019/1/10
12:00における当該栽培容器Rの噴霧量(1.0ml)が増加される。一方、噴霧制御部213は、生育不足ではないと判断すると(ステップS32においてNo)、ステップS34に処理を進める。
【0125】
ステップS34:噴霧制御部213は、当該栽培容器R(棚番号20A、20B、段番号S1、栽培容器番号R1)について、
図15の栽培記録DB240を参照し、現時点の時刻である2019/1/10 12:00における実際の湿度(60%)を取得する。
ステップS35、S36:噴霧制御部213は、当該栽培容器Rの実際の湿度が設定湿度よりも低いか否かを判断する。例えば、噴霧制御部213は、
図13の環境条件DB221を参照し、当該栽培容器Rの現時点(2019/1/10 12:00)の設定湿度(90%)を取得する。そして、噴霧制御部213は、当該栽培容器の現時点の実際の湿度(60%)と設定湿度(90%)と比較し、実際の湿度が設定湿度よりも低いと判断すると(ステップS35においてYes)、ステップS36に処理を進め、当該栽培容器Rにおける養液の噴霧量を増加させる。一方、噴霧制御部213は、実際の湿度が設定湿度以上であると判断すると(ステップS35においてNo)、処理を終了する。
【0126】
なお、噴霧制御部213は、栽培容器Rの湿度に加えて栽培室3の現時点(2019/1/10 12:00)の実際の湿度(55%)を、
図14の栽培記録DB240を参照して取得してもよい。そして、噴霧制御部213は、
図12の環境条件DB221を参照し、栽培室3の設定湿度(70%)と比較する。そして、噴霧制御部213は、栽培室3の実際の湿度(55%)と設定湿度(70%)と比較し、実際の湿度が設定湿度よりも低いと判断すると、空調装置8により設定湿度に近づけるように高湿に空気を栽培室3に供給するように制御する。
また、ステップS31~S33と、ステップS34~S36とは順序が逆でもよい。
【0127】
なお、上記の噴霧処理において、噴霧対象の栽培容器Rに対して、複数台の噴霧装置100のうち噴霧に用いる噴霧装置100を特定することがポイントである。よって、噴霧量制御処理は省略されてもよい。
一方、上記の噴霧量制御処理は、上記実施形態の
図20の噴霧条件の制御処理において行われてもよい。
上述のような制御により、上記実施形態と同様に植物栽培システム1における植物体50の栽培の効率化を図ることができる。
【0128】
(2)上記実施形態では、噴霧装置100は、+Y方向側の第1噴霧部110aと、タンク本体121を挟んで-Y方向側の第2噴霧部110bとを有する。そして、噴霧装置100は、第1噴霧部110a及び第2噴霧部110bによって、隣接する段Sに配置された互いに対向する栽培容器Rの両方に対して養液を噴霧可能である。
しかし、噴霧装置100は、1つの噴霧部110のみを有しており、1つの栽培容器内部Rsに養液を噴霧可能に構成されていてもよい。
【0129】
(3)上記実施形態では、栽培環境(環境条件)を
図12のように栽培室3全体で制御している。しかし、環境条件は例えば栽培棚20ごとに制御されてもよい。これについて以下に説明する。
各栽培棚20A、20B、20C、20Dはそれぞれに環境条件が制御可能なように、
図24、
図25に示すように仕切壁21より仕切られている。仕切壁21は、栽培棚20それぞれのY方向の両側にX方向に沿って設けられており、これにより各栽培棚20内の環境をそれぞれ制御可能である。具体的には、
図24、
図25に示すように、栽培棚20のY方向の両側において、各段Sの+Z方向側から-Z方向側へ、栽培容器Rに載置された栽培パネル37に対応する位置まで延びている。
【0130】
よって、段Sと段Sとの間には、栽培パネル37を境にして上部には仕切壁21が位置しており、栽培パネル37と仕切壁21と段Sとによって囲まれる空間には植物体50の株51が位置している。一方、段Sと段Sとの間のうち栽培パネル37を境にした下部は開口しており、栽培容器Rの開口部41が位置している。これにより、各栽培棚20に仕切壁21が設けられていても噴霧装置100のノズル115を開口部41に挿入可能である。
【0131】
栽培室3の取出装置13側には空調装置8が設けられている。空調装置8からは各栽培棚20ごとに異なる温度及び湿度等の空気を供給可能である。例えば、空調装置8から各栽培棚20に各ダクト(図示せず)が延びており、各栽培棚20それぞれに温度及び湿度等が調整された空気が各ダクトから各栽培棚20に供給される。空調装置8からダクトを通して供給された空気は、栽培棚20内を例えば+X方向側の空調装置8側から-X方向側に流れる。-X方向側に流れた空気は-X方向側から+X方向側に延びる排気路(図示せず)を通って空調装置8に戻る。空調装置8は、栽培棚20内を通った後の空気の温度及び湿度等を調整し、清浄化して再びダクトから排出する。
【0132】
上記のように仕切壁21を設け、栽培棚20ごとに環境条件を設定することで、各栽培棚20ごとに異なる環境条件で植物体50の生育を行うことができる。なお、上記のように仕切壁21の下部は開口しており、開口部41は露出しているため、噴霧装置100のノズル115を開口部41に対して挿入及び引き出し可能である。よって、栽培棚20ごとに異なる環境条件を設定しつつ、噴霧装置100により栽培容器内部Rsに養液を噴霧することができる。また、栽培棚20ごとに環境条件を制御可能とすることで、栽培室3よりも小さい単位の制御となるため、環境条件をより適切に制御可能である。
【0133】
なお、環境条件は栽培棚20毎ではなく、段Sごとに制御されてもよいし、栽培容器R毎に制御されてもよい。
【0134】
(4)上記実施形態では、噴霧装置100は、噴霧部110、タンク装置120、駆動部130、移動体140(第1移動体141、第2移動体143)を備えている。そして、噴霧部110及びタンク装置120が載置された第1移動体141と、駆動部130が載置された第2移動体143とは分離可能であり、別々に走行可能である。そして、噴霧部110及びタンク装置120が載置された第1移動体141が、載置台62に載置され上下方向搬送部63及び幅方向搬送部64により移動される。一方、駆動部130は段S毎に設けられており、使用されない時は退避位置に退避している。
【0135】
しかし、噴霧装置100の移動の態様はこれに限定されず、噴霧部110及びタンク装置120が載置された第1移動体141が載置台62に載置され、上下方向搬送部63及び幅方向搬送部64により、別の栽培棚20の段Sに移動されてもよい。同様に、駆動部130が載置された第2移動体143が載置台62に載置され、上下方向搬送部63及び幅方向搬送部64により、別の栽培棚20の段Sに移動されてもよい。この場合、駆動部130は段S毎に設ける必要がなく、その数を減らしてコスト削減を図ることができる。
さらに、複数の駆動部130のメンテナンスを回避し、また複数の駆動部130を制御することの煩雑さ等を抑制できる。
【0136】
また、噴霧装置100は、噴霧部110及びタンク装置120が載置された第1移動体141と、駆動部130が載置された第2移動体143とが一体に構成されていてもよい。そして、各部が一体の噴霧装置100が上下方向搬送部63及び幅方向搬送部64により、別の栽培棚20の段Sに移動される。この場合もまた、駆動部130は段S毎に設けられている必要はない。
【0137】
(5)上記実施形態では、
図11に示すように、システム制御装置200は、植物栽培システム1に含まれており、システム制御部210、環境条件DB221、噴霧条件DB223、栽培記録DB240、生産計画DB250、噴霧装置DB260を有している。
そして、噴霧装置100の装置制御部300は、システム制御装置200からの制御を解読して実行する。
しかし、
図11に示すシステム制御装置200のシステム制御部210、環境条件DB221、噴霧条件DB223、栽培記録DB240、生産計画DB250、噴霧装置DB260の少なくとも1つ機能部は、装置制御部300に含まれていてもよい。なお、これらの機能部の全てが装置制御部300に含まれている場合には、植物栽培システム1は、必ずしもシステム制御装置200を有している必要はない。
【0138】
(6)上記実施形態では、上下方向搬送部63は、
図2、
図8に示すように、例えば栽培室3において-X方向の端部においてZ方向に沿って設けられている。よって、噴霧部110及びタンク装置120が載置された第1移動体141は、-X方向の端部まで移動した後、上下方向搬送部63に移載される。しかし、上下方向搬送部63は、栽培棚20間の空間のいずれの位置に設けられていてもよい。この場合、上下方向搬送部63は、例えば
図2に示すいずれかの縦支柱Vに沿って設けることができる。そして、当該上下方向搬送部63の+Z方向の端部に対応して、幅方向搬送部64が設けられてもよい。
【0139】
(7)上記実施形態では、
図9等に示すように、噴霧装置100は、一対の栽培容器Rのうち一の栽培容器Rに養液を噴霧するための第1駆動部130a及び第1噴霧部110aと、他の栽培容器Rに養液を噴霧するための第2駆動部130b及び第2噴霧部110bとを備えている。しかし、
図26に示すように、噴霧装置1000は、一対の栽培容器Rに養液を噴霧するのに1つの駆動部1300と、1つの噴霧部1100とを備えていてもよい。
【0140】
図26に示すように、噴霧部1100は、養液を噴霧する第1及び第2ノズル115a、115bと、第1及び第2ノズル115a、115bそれぞれを支持する長尺状の第1及び第2支持部材113a、113bと、第1及び第2支持部材113a、113bを一対の栽培容器Rに対して挿入及び引き出すための支持本体111とを有する。
支持本体111は、初期位置として第1移動体141のY方向の中央部に配置されており、駆動部1300により取手部117が挟持されてY方向に搖動可能に構成されている。第1支持部材113aは、支持本体111の+Y方向側の側面から、+Y方向側に向かって延びている中空の長尺部材である。第2支持部材113bは、支持本体111の-Y方向側の側面から、-Y方向側に向かって延びている中空の長尺部材である。
【0141】
第1支持部材113aの+Y方向側の先端部には第1ノズル115aが取り付けられている。第2支持部材113bの-Y方向側の先端部には第2ノズル115bが取り付けられている。第1及び第2支持部材113a、113bには、タンク装置120のタンク本体121からホース123を介して養液が供給される。第1及び第2支持部材113a、113bに供給された養液は第1及び第2ノズル115a、115bから噴霧される。
【0142】
駆動部1300は、いわゆるロボットアームであり、噴霧部1100をY方向に駆動する。駆動部1300は、固定部131と、後アーム134と、連結部135と、前アーム133と、挟持部137とを有する。固定部131、後アーム134、連結部135、前アーム133及び挟持部137の構成は上記実施形態と同様であるので説明を詳細な説明を省略する。
【0143】
これらの噴霧部1100及び駆動部1300を有する噴霧装置1000は、上記実施形態と同様に、噴霧対象の栽培容器Rに対応する位置に移動される。よって、噴霧装置1000は、
図26に示すように、養液の噴霧対象としてY方向に対向する2つの栽培容器Rに対応して位置している。
駆動部1300は、支持本体111の取手部117を挟持部137により挟持し、初期位置から+Y方向側に支持本体111を移動させる。これにより、第1ノズル115a及び第1支持部材113aが+Y方向側に移動する。よって、
図26に示すように、+Y方向側の栽培容器Rの開口部41から奥側の方向(挿入方向)に向かって第1ノズル115a及び第1支持部材113aが栽培容器内部Rsに徐々に挿入される。逆に、駆動部1300が-Y方向側に支持本体111を移動させて初期位置に戻すと、第1ノズル115a及び第1支持部材113aが栽培容器内部Rsから引き出される。第1ノズル115aが栽培容器内部Rsに位置している間に養液の噴霧が行われる。
【0144】
また、駆動部1300は、初期位置から-Y方向側に支持本体111を移動させる。これにより、第2ノズル115b及び第2支持部材113bが-Y方向側に移動する。よって、
図26に示すように、-Y方向側の栽培容器Rの開口部41から奥側の方向(挿入方向)に向かって第2ノズル115b及び第2支持部材113bが栽培容器内部Rsに徐々に挿入される。逆に、駆動部1300が+Y方向側に支持本体111を移動させて初期位置に戻すと、第2ノズル115b及び第2支持部材113bが栽培容器内部Rsから引き出される。第2ノズル115bが栽培容器内部Rsに位置している間に養液の噴霧が行われる。
【0145】
(8)上記実施形態では、
図4等に示すように、噴霧部110の支持部材113は、栽培容器Rにおけるノズル115の挿入側の開口部41から奥側に至るまでのY方向の長さLb(第1長さ)を予め有している。そして、
図9等に示すように、いわゆるロボットアームである駆動部130が支持本体111をY方向に移動させることで、支持部材113及びノズル115を栽培容器内部Rsに挿入及び栽培容器内部Rsから引き出す。支持部材113及びノズル115の栽培容器内部Rsへの挿入及び引き出しが可能であればこの態様に限定されず、以下の態様も挙げることができる。
(a)
図27、
図28に示すように、支持部材1130が短縮状態の長さLcから、栽培容器Rにおけるノズル115の挿入側から奥側に至るまでの伸長状態の長さLbまで伸長可能に構成されていてもよい。
【0146】
上記実施形態のノズル115と同様に、支持本体111に支持部材1130が取り付けられている。
図28に示すように、支持本体111に取り付けられた支持部材1130は、例えば長尺状で中空の先端部材1130-1、長尺状で中空の中間部材1130-2、及び、長尺状で中空の後端部材1130-3の3つの部材から構成される。ただし、支持部材1130を構成する部材は3つに限られず、2つであってもよく、4つ以上であってもよい。
【0147】
図28に示すように、先端部材1130-1の先端部にノズル115が取り付けられている。先端部材1130-1は中間部材1130-2に挿入可能であり、中間部材1130-2は後端部材1130-3に挿入可能である。そして、先端部材1130-1は中間部材1130-2の先端まで引出可能であり、中間部材1130-2は後端部材1130-3の先端まで引出可能である。先端部材1130-1が中間部材1130-2の先端まで引き出され、中間部材1130-2が後端部材1130-3の先端まで引き出されて支持部材1130が最も長く伸長した場合、支持部材1130の全長はLbとなる。
図4に示すように、長さLbは、栽培容器Rの開口部41から第3側壁33cまでの長さLaと同程度であるか、若干小さい程度である。よって、支持部材1130を最も長く伸長した場合には、支持部材1130及びノズル115は、栽培容器Rの挿入側の開口部41から奥側に至るまで挿入可能である。これにより、栽培容器Rの挿入側から奥側に至るまで養液を噴霧させて、栽培容器内部Rsに養液を均一に噴霧できる。
【0148】
第1噴霧部1105aの第1支持部材1130aは、駆動部としての電源部1305から電力の供給を受け、
図27に示すように+Y方向側に伸長し、+Y方向側の栽培容器内部Rsに第1ノズル115aが挿入される。そして、第1ノズル115aから栽培容器内部Rsに養液が噴霧される。同様に、第2噴霧部1105bの第2支持部材1130bは、
図27に示すように-Y方向側に伸長し、-Y方向側の栽培容器内部Rsに第2ノズル115bが挿入される。そして、第2ノズル115bから栽培容器内部Rsに養液が噴霧される。
なお、ノズル115が栽培容器内部Rsから引き出される際は、支持部材1130が収縮する。
【0149】
このように伸長可能な支持部材1130を用いる場合、
図27に示すように、噴霧装置1005は、噴霧部1105、タンク装置120及び第1移動体141から構成される。
つまり、支持部材1130が栽培容器Rに向かって伸長するため、上記実施形態のように支持本体111を移動させる必要がない。よって、噴霧装置1005は、上記実施形態のロボットアームである駆動部130を備えておらず、噴霧装置100をコンパクト化できる。
【0150】
なお、先端部材1130-1及び中間部材1130-2が後端部材1130-3内に収容され、支持部材1130が最も短くなっている場合は、支持部材1130の全長はLcとなる。この場合、
図27に示すように、第1移動体141に搭載された噴霧装置1005がX方向に走行する際に、支持部材1130が栽培棚20及び段S等から干渉を受けない。
上記では、支持部材1130が電源部(駆動部)1305から電力の供給を受けて伸長及び短縮する構成であるが、支持部材1130は油圧の制御により伸長及び短縮する油圧シリンダ(駆動部)であってもよい。
【0151】
(b)また、
図9等に示すように、いわゆるロボットアームである駆動部130が支持本体111をY方向に移動させるのとは異なり、
図29に示すように、支持本体111がシリンダ土台(駆動部)112により移動されてもよい。この場合、ロボットアームである駆動部130は不要である。よって、噴霧装置100をコンパクト化できる。
図29に示すようにシリンダ機構を内部に備えるシリンダ土台112の上に支持本体111が取り付けられている。支持本体111は、シリンダ土台112のシリンダ機構の駆動によって、+Y方向及び-Y方向に移動可能である。そして、
図29の場合、支持本体111が+Y方向に移動することで、支持部材113及び支持部材113の先端のノズル115が栽培容器内部Rsに挿入される。一方、支持本体111が-Y方向に移動することで、支持部材113及びノズル115が栽培容器内部Rsから引き出される。なお、シリンダ土台112は第1移動体141に取り付けられている。
【0152】
(9)上記実施形態では、
図6~
図8等に示すように、噴霧装置100は、Y方向に隣接する段Sに設けられた走行レール61を移動体140が摺動することで、X方向に移動する。しかし、噴霧装置100のX方向の移動は走行レール61を用いた移動に限られない。例えば
図30、
図31に示すように、隣接する段S間に、移動機構60として、XY面に平行な板状の走行路66が設けられている。走行路66の上面は、例えば段Sの面と面一にすることができる。
【0153】
走行路66には、
図31に示すように一対の走行レール67が設けられている。また、噴霧装置100の移動体140の下面には、走行レール67を摺動可能なレール係合部144が設けられている。レール係合部144には回転駆動可能な車輪等の走行部(図示せず)が設けられている、そして、走行部が電力源65から電力の供給を受けて回転駆動することで、噴霧装置100は、走行レール67に沿ってX方向に移動可能である。
【0154】
また、
図32に示すように、噴霧装置100の移動体140の下面には車輪145が設けられており、板状面の走行路66上を噴霧装置100が自走して移動可能であってもよい。
【0155】
(10)上記実施形態では、
図2、
図6等に示すように、複数の栽培容器Rそれぞれは、Y方向に隣接する栽培棚20間の空間に面する開口部41を有している。しかし、開口部41が設けられる位置はこれに限定されない。例えば、
図33の植物栽培システム1の平面図に示すように、栽培容器Rの上部に開口部41及び蓋部43が設けられてもよい。
この場合、噴霧装置100の支持部材113及びノズル115は、
図34に示すように栽培容器Rの上方から下方に向かって挿入される。逆に、支持部材113及びノズル115は、栽培容器Rの下方から上方に向かって引き出される。なお、
図34に示すように、栽培容器内部Rsでは、Z方向に沿って栽培パネル37が配置される。栽培パネル37では、複数の植物体50がZ方向に沿って配置されている。そして、各植物体50は、株51及び根53がX方向に沿うように、かつ根53が支持部材113及びノズル115が挿入される側に位置するように栽培パネル37に配置される。
【0156】
また、上記実施形態では、
図4、
図7等に示すように、植物体50は+Z方向に葉である株51が位置し、-Z方向に根53が位置している。しかし、植物体50の配置はこれに限定されない。例えば、上記の
図34に示すように、各植物体50は、株51及び根53がX方向に沿うように、かつ根53が支持部材113及びノズル115が挿入される側に位置するように栽培パネル37に配置されてもよい。そして、
図34では、栽培容器Rの上方から支持部材113及びノズル115が栽培容器内部Rsに挿入される。なお、
図34の構成において栽培容器RのY方向側に開口部41が設けられており、Y方向側から支持部材113及びノズル115が栽培容器内部Rsに挿入されてもよい。
【0157】
図34に示す複数の栽培容器Rが、X方向又はY方向に概水平に並んで配置されて栽培棚20が構成されてもよい。また、
図34に示す複数の栽培容器Rが、Z方向に概垂直に並んで配置されて栽培棚20が構成されてもよい。
【0158】
さらに、
図34と同様に株51及び根53がX方向に沿うように配置され、さらに
図34とは異なりY方向側に開口部41を有するような複数の栽培容器Rが、
図35に示すようにZ方向に概垂直に積層して配置されて栽培棚20が構成されてもよい。この場合、
図34の栽培容器Rは開口部41がY方向に向いて積層されている。そして、各栽培容器Rに対して開口部41から支持部材113及びノズル115が挿入されて養液が噴霧される。なお、
図35に示す栽培容器Rが、X方向又はY方向に概水平に並んで配置されて栽培棚20が構成されてもよい。
【0159】
また、
図36に示すように、栽培容器Rは、一対の斜めに配置した板状の栽培パネル37と、XZ平面に沿った側壁38とから概ね三角錐状に構成されていてもよい。そして、栽培容器Rは、一対の対向した栽培パネル37の底部が段Sに支持されている。以下にさらに説明する。
一対の栽培パネル37は、段S上において、下方から上方に向けて傾いて配置され、頂部において重なっている。一対の栽培パネル37により概ね三角錐状の内部空間(栽培容器内部Rs)が形成されている。栽培パネル37には複数の支持孔39が設けられており、各支持孔39に植物体50が配置されている。植物体50は、栽培パネル37の外側に株51が位置し、三角錐状の内部空間内に根53が位置するように配置されている。栽培パネル37が傾斜しているため、植物体50もまた斜めに傾斜して支持孔39において支持されている。
【0160】
栽培パネル37が配置された部分以外の側面には側壁38が設けられており、側壁38には支持部材113及びノズル115を挿入及び引き出し可能な開口部41が形成されている。開口部41は蓋部43により開閉可能である。側壁38の開口部41を介してノズル115が挿入され、養液が三角錐状の内部空間に噴霧されることで、根53が養液を吸収し、植物体50の生育を促進可能である。
図36に示す複数の栽培容器Rが、X方向又はY方向に概水平に並んで配置されて栽培棚20が構成されてもよい。また、
図36に示す複数の栽培容器Rが、Z方向に概垂直に並んで配置されて栽培棚20が構成されてもよい。
【0161】
なお、三角錐状の栽培パネル37に囲まれた内部空間内の湿度が所望の湿度に維持可能であれば、側壁38は必ずしも設けられている必要はない。また、開口部41の形成位置も側壁38に限られず、例えば栽培パネル37に形成されてもよい。
【0162】
(11)上記実施形態では、栽培棚20の各段Sには複数の栽培容器Rが並んで配置されている。しかし、
図37に示すように、各段Sの大きさに対応した1つの栽培容器Rが配置されていてもよい。この場合、
図37に示すように、栽培容器Rには、栽培容器Rの-X方向側から+X方向側の端部まで至る、X方向に長い開口部341が形成されている。開口部341は、蓋部343により開閉される。
噴霧装置100により養液が噴霧される場合には、例えば、開口部341の-X方向側の端部から支持部材113及びノズル115が栽培容器内部Rsに挿入される。そして、支持部材113及びノズル115が栽培容器内部Rsに挿入された状態で、噴霧装置100が-X方向側から+X方向側に移動する。これにより、支持部材113及びノズル115は、開口部341の-X方向側の端部から+X方向側の端部まで、栽培容器内部Rsに挿入された状態で移動する。この移動の間にノズル115から栽培容器内部Rsに養液を噴霧することで、栽培容器内部Rs全体に養液を噴霧可能である。
【0163】
(12)上記実施形態では、
図6等に示すように、タンク装置120は養液タンク5から主ホース5aを介して養液の供給を受ける。しかし、
図38に示すように養液タンク5の養液は、各段Sに設けられた中継タンク6に一時的に貯蔵されてもよい。段S5の中継タンク6は養液タンク5から中継ホース5bを介して養液の供給を受ける。段S4~段S1の中継タンク6は互いにパイプ5cを介して連結されており、段S4~段S1の中継タンク6は段S5の中継タンク6から養液の供給を受けることができる。
【0164】
(13)上記実施形態では、開口部41は円形状であり、第1側壁33aのX方向の中央部及びZ方向の下部に設けられている。しかし、栽培容器内部Rsに養液を概ね均一に噴霧可能であり、根53側から養液を供給可能であれば、栽培容器Rにおける開口部41の形状、位置及び数等は上記に限定されない。
例えば、開口部41の形状は、楕円形状及び四角形状等であってもよい。
また、第1側壁33aに2つ以上の開口部41を設けてもよく、例えば第1側壁33aの4つの角部それぞれに1つずつ開口部41を設けてもよい。また、第1側壁33aの両端部に亘ってX方向に並ぶように複数の開口部41を設けてもよい。
また、例えば栽培容器内部Rsの根53の下方から養液を供給できるのであれば、第1側壁33aのZ方向の中央部に開口部41を設けることもできる。さらには、第1側壁33aのZ方向の上部に開口部41を設けることもできる。
【0165】
また、栽培パネル37の位置は、Z方向において開口部41よりも上方に位置していればよく、必ずしも栽培容器Rの上部に設けられている必要はない。
また、開口部41を開閉する蓋部43は、例えば複数本の板状のゴムが垂れ下がることで形成されていてもよい。そして、ノズル115及び支持部材113が栽培容器内部Rsに挿入される際は、ゴムが押し広げられる。逆に、ノズル115及び支持部材113が引き出された後は、ゴムが元の状態に復帰し、開口部41を閉じる。また、蓋部43は、放射状に切り欠かれたゴムであってもよい。前記と同様にノズル115及び支持部材113の挿入によりゴムが押し広げられ、引き出しにより元の状態に復帰する。
【0166】
(14)上記実施形態では、支持部材113の先端部に1個のノズル115が設けられている。しかし、ノズル115の個数は1個に限られず、2個以上であってもよい。
また、上記実施形態では、ノズル115からの養液の噴霧方向は、下方から+Z方向である上方であるが、栽培容器内部Rsに養液を適切な湿度で充満させることができればよく、噴霧方向は下方から上方に限定されない。ノズル115からの養液の噴霧方向としては、例えば斜め方向、水平方向(+X方向及び-X方向、及び+Y方向及び-Y方向を含むXY平面のあらゆる方向)等様々な方向が挙げられる。このノズル115からの養液の噴霧方向に応じて、ノズル115を支持部材113に取り付ける方向は適宜調整されてもよい。
また、ノズル115の設置位置は、栽培容器内部Rsに養液を噴霧可能であれば支持部材113の先端部に限られず、支持部材113のいずれの位置であってもよい。
【0167】
また、複数のノズル115は、支持部材113の外周の周方向に沿って設けることができる。また、複数のノズル115は、支持部材113の先端部の+Y方向側から根本の-Y方向側に向かって並んで設けることができる。
【0168】
また、上記実施形態では、ノズル115が支持部材113に固定され噴霧方向が固定されている。しかし、ノズル115からの養液の噴霧方向は切替可能であってもよい。例えば、ノズル115が栽培容器Rに挿入され養液を噴霧している間に、噴霧方向を自在に変更可能であってもよい。
また、上記実施形態では、ノズル115の複数の孔116は、概ね一方向に養液を噴霧させるようにノズル115の表面に形成されている。しかし、養液が多方向に噴霧されるように複数の孔116がノズル115の表面に形成されていてもよい。例えば、半円形状のノズル115の表面に放射状に複数の孔116が形成できる。
【0169】
(15)上記のノズル115の説明の通り、ノズル115からの養液の噴霧方向としては、例えば斜め方向、水平方向等様々な方向が挙げられる。このようなノズルの噴霧方向の制御の一例として、支持部材113の先端のノズル115が
図39に示すように揺動可能である構成について次に説明する。
図40及び
図41に示すように、前述した
図29と同様に、シリンダ機構を内部に備えるシリンダ土台112の上に支持本体111が取り付けられている。支持本体111は、シリンダ土台112のシリンダ機構の駆動によって、+Y方向及び-Y方向に移動可能である。
【0170】
支持本体111から延びる支持部材113の先端部には、ノズル115がノズル支持ユニット(揺動部)118を介して揺動可能に支持されている。ノズル支持ユニット118は、ノズル連結部材118aと、ノズル支持部118bと、長尺状の揺動伝達部材118cとを有している。ノズル支持部118bは、ノズル115の根本部分に接続されて延びる棒状部材であり、ノズル115を支持している。ノズル支持部118bは、ノズル連結部材118aを支点として揺動可能に支持部材113に連結されている。ノズル支持部118bのうちノズル115とは反対側の端部は、揺動伝達部材118cの一端と連結されている。揺動伝達部材118cの他端は後述の揺動部材119bと連結されている。
支持部材113の先端部とは反対の後端部には、ノズルシリンダ(揺動部)119が設けられている。ノズルシリンダ119は、収納部材119aと、揺動伝達部材118cと連結されている揺動部材119bとを有している。揺動部材119bは、駆動部(図示せず)により、収納部材119aに挿入され、又は収納部材119aから引き出される。
【0171】
このような構成により、
図40に示すように支持本体111が+Y方向に移動することで、支持部材113及びノズル115が栽培容器内部Rsに挿入される。そして、支持部材113及びノズル115が+Y方向に移動している最中は、ノズル115の先端は
図39及び
図40に示すように、+X方向に向いて傾けられている。例えば、
図39に示すように、ノズル115は、Z方向を基準として+θx=45°となるように傾いている。このとき、
図39及び
図40に示すように、ノズルシリンダ119において、揺動部材119bが収納部材119aから引き出されており、揺動伝達部材118cが-X方向に移動する。そして、揺動伝達部材118cに連結されたノズル支持部118bが、ノズル連結部材118aを支点として支持部材113に対して+X方向側に揺動する。これにより、ノズル115が前述の通りZ方向を基準として+X方向側に傾く。なお、ノズルシリンダ119は栽培容器内部Rsに挿入されない。
【0172】
逆に、
図41では支持本体111が-Y方向に移動することで、支持部材113及びノズル115が栽培容器内部Rsから引き出される。そして、支持部材113及びノズル115が-Y方向に移動している最中は、ノズル115の先端は
図39及び
図41に示すように、-X方向に向いて傾けられている。例えば、
図39に示すように、ノズル115は、Z方向を基準として-θx=45°となるように傾いている。ノズル115が栽培容器Rに挿入される際はZ方向を基準として+θx=45°となるように傾いているので、ノズル115を引き出す際は+θx=45°から-θx=45°まで2θx=90°回動させる。このとき、
図39及び
図41に示すように、ノズルシリンダ119において、収納部材119aから引き出されている揺動部材119bは、収納部材119aに収納される。これにより、揺動伝達部材118cが+X方向に移動する。そして、揺動伝達部材118cに連結されたノズル支持部118bが、ノズル連結部材118aを支点として支持部材113に対して-X方向側に揺動する。よって、ノズル115が前述の通りZ方向を基準として-X方向側に傾く。
【0173】
上記のようにノズル115を傾斜するように揺動させることで、栽培容器内部Rsに養液がより均一に噴霧される。ノズル115が、例えばある傾斜角度で揺動が停止した状態で養液を噴霧し、次に、別の傾斜角度で揺動が停止した状態で養液を噴霧するのを周期的に行うことが好ましい。これにより、栽培容器内部Rsに養液がより均一に噴霧され易い。ただし、ノズル115は傾斜しながら養液を噴霧してもよい。
【0174】
なお、ノズル115の傾く角度は一例であり、上記の角度に限定されない。また、上記では、ノズル115の挿入過程及び引き出し過程において、ノズル115は所定角度に傾いた状態を維持している。しかし、ノズル115は、挿入過程及び引き出し過程において随時揺動可能であってもよい。
また、上記ではノズル115は、ノズルシリンダ119によってYZ平面内において揺動する。しかし、ノズル115を支持する支持部材113がその周方向に回動することで、支持部材113の先端に取り付けられたノズル115がYZ平面内において揺動してもよい。この場合、支持部材113を回動させる回動機構を設ければ、支持部材113の回動に伴ってノズル115が回動する。よって、ノズルシリンダ119は不要である。
また、上記では支持本体111がシリンダ土台112上に配置されており、シリンダ機構によって支持本体111がY方向に移動する。しかし、上記実施形態と同様に、支持本体111はロボットアームである駆動部130によりY方向に移動されてもよい。
【0175】
(16)上記実施形態では、Y方向に互いに隣接する段Sにおいて、同じ大きさの栽培容器Rが同位置に配置されている。しかし、栽培容器Rの配置はこれに限定されず、各段Sそれぞれで任意の間隔で栽培容器Rが配置されてもよい。また、各段Sそれぞれで異なる大きさの栽培容器Rが配置されていてもよい。この場合、上記実施形態のようにY方向に隣接する栽培容器内部Rsに同時に養液を噴霧するのではなく、各栽培容器Rそれぞれに養液を噴霧することができる。
【0176】
(17)上記実施形態では、ノズル115からの養液の噴霧は、ノズル115が栽培容器Rの開口部41から奥側に至る挿入方向の過程と、栽培容器Rの奥側から開口部41に至るまでの後退方向の過程とのいずれにおいても行われている。しかし、養液の噴霧は、栽培容器内部Rsを所定の湿度で養液を充満できればよく、これらの2つの挿入方向の過程及び後退方向の過程のうちいずれかのみで行われてもよい。
【0177】
(18)上記実施形態では、栽培容器Rには植物体50の下部である根53が収容されているが、栽培容器Rには上部である株51及び根53の両方が収容されてもよい。例えば、
図42に示すように、栽培容器Rは、Z方向に対向する一対の上壁31及び下壁32と、上壁31及び下壁32間の側壁33(33a~33d)とに囲まれて構成されている。栽培容器Rの上部の開口を上壁31により覆って蓋をするように構成されている。上壁31は取り外し可能である。よって、上壁31を取り外し、栽培容器内部Rsに栽培パネル37を載置できる。そして、栽培容器内部Rsに栽培パネル37を載置した状態で第1~第4側壁33a~33dの上端に上壁31を載置することで、栽培容器Rを密閉可能である。逆に、上壁31を取り外し、栽培容器内部Rsに載置されている栽培パネル37を外に取り出すことも可能である。
【0178】
このように、栽培容器内部Rsには根53及び株51を含む植物体50が位置する。そして、栽培容器内部Rsに養液が噴霧されると、栽培容器内部Rsの根53が養液を吸収して生育する。
よって、植物体50が栽培容器Rに収容されている場合には、植物体50の根53が栽培容器Rに収容されている場合と、植物体50全体の株51及び根53が栽培容器Rに収容されている場合とが含まれてもよい。
なお、栽培パネル37は、
図43に示すように、栽培容器内部Rsにおいて上壁31に近い上部に配置されている。具体的には、栽培パネル37は、下壁32からのZ方向の距離L3の位置に配置されている。距離L3は、第1側壁33aのZ方向の長さL1よりも小さく、かつ下壁32と開口部41の中心Pとの距離L2よりも大きい(L1>L3>L2)。
【0179】
このような栽培容器内部Rsに植物体50が配置されている場合、栽培環境(環境条件)は、栽培容器Rごとに制御されてもよい。ただし、上記実施形態と同様に、栽培室3全体として環境条件が制御されてもよい。
【0180】
(19)上記実施形態では、栽培容器Rには、開口部41を開閉可能な蓋部43が設けられている。しかし、蓋部43は省略されてもよい。
【0181】
(20)上記実施形態では、噴霧装置100の移動方向はX方向、Y方向及びZ方向である。しかし、移動機構60の構成を変更することで、噴霧装置100の移動方向をX方向とY方向との間など斜め方向にできる。
【0182】
(21)上記実施形態では、
図1に示すように各栽培棚20は、それぞれY方向に間隔を有して配置されている。しかし、少なくとも噴霧装置100が走行可能な空間を有していればよく、各栽培棚20間に間隔が設けられている必要はない。例えば、上記実施形態では、栽培棚20A、20Bへの養液の噴霧は、栽培棚20A、20B間の間隔を噴霧装置100が走行することで行われる。また、栽培棚20C、20Dへの養液の噴霧は、栽培棚20C、20D間の間隔を噴霧装置100が走行することで行われる。よって、栽培棚20Aの+Y方向側の栽培室3との間隔、栽培棚20B、20C間の間隔、栽培棚20Dの-方向側の栽培室3との間隔は必ずしも設ける必要はない。
【0183】
(22)上記実施形態では、栽培室3には4個の栽培棚20が配置され、各栽培棚20は5個の段Sにより構成されている。しかし、栽培棚20の数及び段Sの数はこれに限定されない。栽培棚20の数は、例えば1個~3個であってもよく、5個以上であってもよい。また、段Sの数は、例えば1個~4個であってもよく、6個以上であってもよい。
また、栽培室3は、建屋の屋内に限られず、例えばビニールハウス内であってもよい。
【0184】
(23)上記実施形態では、栽培容器Rの上端には栽培パネル37が載置されている。
そして、栽培パネル37が載置された栽培容器Rが段S上を+X方向側に移動する。しかし、植物体50を支持している栽培パネル37のみが+X方向側に移動してもよい。この場合、栽培容器Rは段S上に固定されている。そして、栽培パネル37が順次に投入装置11から投入され、栽培容器R上に載置される。そして、栽培容器R上に載置された栽培パネル37は、栽培容器R上を順次に+X方向側に移動し、取出装置13から回収される。この場合、栽培パネル37は、例えば、隣接する栽培パネル37により+X方向側に押し出されることで移動する。
【0185】
(24)上記実施形態の環境条件の制御処理及び噴霧条件の制御処理等の各種処理は、プログラムを実行することにより実行されることができる。また、このようなプログラムはROM等の記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0186】
(25)上記実施形態では、照明装置としてLED7を用いている。しかし、照明装置としては、蛍光ランプ、メタルハライドランプ及び高圧ナトリウムランプ等を用いることができる。
【符号の説明】
【0187】
1 :植物栽培システム
3 :栽培室
7 :LED(照明装置)
8 :空調装置
20 :栽培棚
37 :栽培パネル
41 :開口部
43 :蓋部
50 :植物体
51 :株
53 :根
60 :移動機構
61 :走行レール
62 :載置台
63 :上下方向搬送部
64 :幅方向搬送部
100 :噴霧装置(養液供給装置)
110 :噴霧部
112 :シリンダ土台(駆動部)
113 :支持部材
115 :ノズル
118 :ノズル支持ユニット(揺動部)
119 :ノズルシリンダ(揺動部)
130 :駆動部
140 :移動体
200 :システム制御装置
210 :システム制御部
211 :環境制御部
213 :噴霧制御部
300 :装置制御部
221 :環境条件DB
223 :噴霧条件DB
240 :栽培記録DB
DB250 :生産計画
DB260 :噴霧装置
R :栽培容器
S :段
【手続補正書】
【提出日】2023-04-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物体のうち少なくとも根を内部に収容する栽培容器の内部に養液を噴霧する少なくとも1つのノズルと、
前記ノズルを前記栽培容器の内部に対して挿脱する駆動部と、
前記ノズルを前記栽培容器へ移動させる少なくとも1つの移動体と、
植物体の栽培に必要な養液が貯蔵されている養液タンクから養液の供給を受け、前記ノズルにより噴霧する養液を一時的に貯蔵するタンクと、
を備える養液供給装置。
【請求項2】
前記ノズルを前記栽培容器の内部で挿脱方向とは交差する方向に揺動させる揺動部を備える、請求項1に記載の養液供給装置。
【請求項3】
前記駆動部は、伸縮により前記ノズルを前記栽培容器の内部に対して挿脱する、請求項1又は2に記載の養液供給装置。
【請求項4】
前記ノズルを前記栽培容器に挿入し且つ前記栽培容器から引き出すための前記栽培容器の開口部は蓋部により開閉される、請求項1~3のいずれか1項に記載の養液供給装置。
【請求項5】
少なくとも、前記移動体の制御、前記駆動部の制御、及び前記ノズルからの養液の噴霧制御を行う装置制御部を備え、
前記装置制御部は、
前記移動体を制御し、養液の噴霧対象の栽培容器に対して前記少なくとも1つのノズルを位置合わせする位置合わせ制御と、
前記駆動部を制御し、前記ノズルを前記栽培容器に挿入し且つ前記栽培容器から引き出すための前記栽培容器の開口部と、前記開口部に対向する奥部との間において前記ノズルを往復させる挿脱制御と、
前記養液の供給量を制御する供給量制御、前記養液の供給日時を制御する供給日時制御、及び前記栽培容器に供給する前記養液の種類の養液種類制御の少なくともいずれかを行う、請求項1~4のいずれか1項に記載の養液供給装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の少なくとも1つの養液供給装置と、
植物体のうち少なくとも根を内部に収容し、前記ノズルが挿脱される開口部を有する複数の栽培容器が載置されている少なくとも1つの段を有する栽培棚と、
前記栽培棚が配置されている栽培室と、
前記栽培室内に配置され、前記植物体に光を照射する照明装置と、
前記栽培室の温度及び湿度の少なくともいずれかを調整する空調装置と、
を備える植物栽培システム。
【請求項7】
各栽培容器に対して前記植物体が概垂直方向に支持される状態で、各栽培容器が、概水平方向に沿った前記段の平面に沿って並んで載置されており、
各栽培棚では、前記栽培容器が載置されている複数の前記段が概垂直方向に積層されて配置されており、
前記栽培室では、複数の前記栽培棚が概水平方向に並んで配置されている、請求項6に記載の植物栽培システム。
【請求項8】
各栽培容器に対して前記植物体が概水平方向に支持される状態で、各栽培容器が、概垂直方向に沿った前記段の平面に沿って並んで載置されており、
各栽培棚では、前記栽培容器が載置されている複数の前記段が概垂直方向又は概水平方向に並んで配置されており、
前記栽培室では、複数の前記栽培棚が概水平方向に並んで配置されている、請求項6に記載の植物栽培システム。
【請求項9】
各栽培容器が略斜め方向に互いに概ね対称に対向する平面を有しており、前記略斜め方向の平面と交差する方向に前記植物体が支持されている、請求項6に記載の植物栽培システム。
【請求項10】
噴霧対象である少なくとも1つの前記栽培容器の内部に対して養液を噴霧する少なくとも1つの前記養液供給装置を、前記養液の種類、前記養液の残量及び前記栽培容器までの移動距離の少なくともいずれかに基づいて、複数の前記養液供給装置から特定するシステム制御部を備える、請求項6~9のいずれか1項に記載の植物栽培システム。
【請求項11】
請求項10に記載の植物栽培システムの前記システム制御部に実行させるための養液供給プログラムであって、
噴霧対象である少なくとも1つの前記栽培容器の内部に対して養液を噴霧する少なくとも1つの前記養液供給装置を、前記養液の種類、前記養液の残量及び前記栽培容器までの移動距離の少なくともいずれかに基づいて、複数の前記養液供給装置から特定するステップと、
前記噴霧対象である少なくとも1つの前記栽培容器に対応するように特定された前記養液供給装置を位置付けるステップと、
前記養液供給装置のノズルを当該栽培容器に挿入し、前記養液を当該栽培容器の内部に噴霧するステップと、
前記養液の噴霧が終了すると、当該栽培容器から前記ノズルを引き抜くステップと、
を実行させるための養液供給プログラム。
【請求項12】
前記栽培室の内部及び前記栽培容器の内部の少なくともいずれかにおける栽培環境の履歴である栽培記録データと、前記栽培容器での前記植物体の生産計画データと、前記養液供給装置の現在位置を含む装置データと、前記栽培容器に少なくとも根が収容されている前記植物体の生育状態データとの少なくともいずれかに基づいて、前記栽培室又は前記栽培容器の少なくともいずれかの栽培環境制御処理、及び、前記養液供給装置に対する装置制御処理の少なくともいずれかを含むステップを実行させるための請求項11に記載の養液供給プログラム。
【請求項13】
前記装置制御処理は、前記養液供給装置の養液の噴霧対象の栽培容器に対する位置合わせ制御、前記ノズルを往復させる挿脱制御、前記養液の供給量制御、前記養液の供給日時制御、及び前記養液の養液種類制御の少なくとも1つである、請求項12に記載の養液供給プログラム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
[構成]
上記目的を達成するための本発明に係る養液供給装置の特徴構成は、
植物体のうち少なくとも根を内部に収容する栽培容器の内部に養液を噴霧する少なくとも1つのノズルと、
前記ノズルを前記栽培容器の内部に対して挿脱する駆動部と、
前記ノズルを前記栽培容器へ移動させる少なくとも1つの移動体と、
植物体の栽培に必要な養液が貯蔵されている養液タンクから養液の供給を受け、前記ノズルにより噴霧する養液を一時的に貯蔵するタンクと、
を備える点にある。