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特開2023-65599医療用センサシステム、特に、連続グルコースモニタリングシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065599
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】医療用センサシステム、特に、連続グルコースモニタリングシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1473 20060101AFI20230502BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
A61B5/1473
A61B5/11 100
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023032191
(22)【出願日】2023-03-02
(62)【分割の表示】P 2021109289の分割
【原出願日】2018-04-04
(31)【優先権主張番号】17164834.8
(32)【優先日】2017-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ブルートゥース
(71)【出願人】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン-ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クーベ、オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルター、ヘルムート
(72)【発明者】
【氏名】ポッゲンウィッシュ、アレキサンダー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】長期の着用能力および着用快適性を可能にする設計を提供する。
【解決手段】本発明は、医療用センサシステム10に関し、医療用センサシステム10は、ユーザーの皮膚18の下に埋め込み可能なセンサ14と、埋め込み可能なセンサ14の領域で皮膚18に取り付け可能な身体上モジュール12とを備え、身体上モジュール12は、短距離無線接続を介して埋め込み可能なセンサ14とデータを交換するように動作可能な第1の送信機28を含む自己接着型の可撓性電子パッチ20を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用センサシステムであって、ユーザーの皮膚(18)の下に埋め込み可能なセンサ(14)と、埋め込み可能なセンサ(14)の領域で皮膚(18)に取り付け可能な身体上モジュール(12)とを備え、前記身体上モジュール(12)は、短距離無線接続(30)を介して前記埋め込み可能なセンサ(14)とデータを交換するように動作可能な第1の送信機(28)を含む自己接着型の可撓性電子パッチ(20)を有し、データ交換は、近距離無線通信(NFC)プロトコルに基づいており、前記可撓性電子パッチ(20)が、少なくとも2つの方向に、少なくとも20%の伸縮性を有し、前記第1の送信機(28)は、前記センサ(14)から測定値を受け取り、最終的に前記センサ(14)に較正データを送信するように動作可能であり、前記可撓性電子パッチ(20)は、絶縁箔基板(22)上に設けられる可撓性プリント回路(26)を備える、システム。
【請求項2】
前記医療用センサシステムは、連続グルコースモニタリングシステム(10)である、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記絶縁箔基板(22)は、10~250ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項1または2記載のシステム。
【請求項4】
前記絶縁箔基板(22)は、50~100ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項1または2記載のシステム。
【請求項5】
前記絶縁箔基板(22)は、60~90ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項1または2記載のシステム。
【請求項6】
前記絶縁箔基板(22)は、70~80ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項1または2記載のシステム。
【請求項7】
前記可撓性プリント回路(26)は、変形可能な構成要素として、導電経路、抵抗器、コンデンサ、およびバッテリのうちの少なくとも1つを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記可撓性電子パッチ(20)は、集積回路チップ、プロセッサ、記憶媒体、アンテナ、およびバッテリのうちの少なくとも1つを、電子パッチ(20)が変形可能なままであるように分配される剛性または半剛性構成要素(27)として備える、請求項1~7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記短距離無線接続(30)は、電磁誘導により結合される一対のアンテナを介して確立される、請求項1~8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記身体上モジュール(12)は、非接触伝送によって前記センサ(14)にエネルギーを供給するように構成されるパッチ装着エネルギー供給部(32)をさらに備える、請求項1~9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記可撓性電子パッチ(20)は、可撓性基板上にプリントされた機能性材料により構成されるプリントバッテリを備える、請求項1~10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記身体上モジュール(12)は、パッチ(20)と一体化され、遠距離領域に位置する外部データ取得装置(16)との無線データ交換のために動作可能な第2の送信機(36)をさらに備える、請求項1~11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記センサ(14)で達成された測定結果に応答して、インスリンなどの所定の用量の薬剤をユーザーの身体(42)に送達するための身体装着ポンプ(40)をさらに備える、請求項1~12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記身体上モジュール(12)は、ユーザーが遠隔制御なしでシステムを操作できるようにするために、前記可撓性パッチ(20)に直接取り付けられるコントローラ(46)、スイッチ、およびディスプレイのうちの少なくとも1つを備える、請求項1~13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
身体領域に分配され、ネットワーク(48)で前記身体上モジュール(12)に接続される複数のセンサ(14)をさらに備え、前記複数のセンサ(14)は、グルコース、温度、体動、震え、心拍数、汗の群から選択される少なくとも1つのパラメータを測定するように構成される、請求項1~14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
少なくとも1つの体液中の少なくとも1つの検体の連続モニタリングのための方法であって、前記方法は、請求項1~15のいずれか1項に記載の少なくとも1つの医療用センサシステムを使用することを含み、前記方法は、以下の
i)自己接着型の可撓性電子パッチ(20)を使用して、ユーザーの皮膚(18)の下に埋め込まれたセンサ(14)の領域で、ユーザーの皮膚(18)に身体上モジュール(12)を取り付けるステップであって、前記自己接着型の可撓性電子パッチ(20)は、第1の送信機(28)を含む、ステップと、
ii)短距離無線接続(30)を介して、埋め込み可能なセンサ(14)と、前記自己接着型の可撓性電子パッチ(20)の第1の送信機(28)との間でデータを交換するステップと
を含み、前記第1の送信機(28)は、前記センサ(14)から測定値を受け取り、最終的に前記センサ(14)に較正データを送信するように動作可能である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザーの皮膚の下に埋め込み可能なセンサと、埋め込み可能なセンサの領域で皮膚に取り付け可能な身体上モジュールとを備える医療用センサシステム、特に、連続グルコースモニタリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
そのようなシステムは、特定の検体または薬剤、具体的には血液または間質液などの体液中のグルコースまたは乳酸を、全体または部分的に埋め込まれたセンサ、特に電気化学センサの読取値によってモニタリングするために利用可能である。皮下に埋め込まれたセンサは、数週間までの間、長期間にわたって間質組織に留まる。そして、生体内で検出された測定信号は、検体、たとえば、被験者の血液中のグルコースを示し得る。モニタリングは、サンプルの取り扱いや同様のユーザーの相互作用なしで検体値を頻繁に提供/更新するためのほぼリアルタイムの連続的または準連続的または定期的なアプローチである。
【0003】
現在の実施において、連続グルコースモニタリング(CGM)システムは、センサと電気的に結合された電子ユニットが取り付けられる剛性ハウジング部分または取り付けプラットフォームを備える、いわゆるボディマウントをパッチとして含む。人体は比較的柔らかくて柔軟であるため、センサに関連する剛性のハウジングまたはプラットフォームは、たわみや伸びに追従できず、その結果、皮膚からのボディマウントの早期剥離につながるせん断力が生じる。さらに、身体上のプラットフォームは、その下に湿気が蓄積するように、通気性を低下させているだけであり、それはまた、可能な着用時間を望ましくなく短縮する。さらなる問題として、皮膚を通る開口路は炎症および身体感染を引き起こす可能性がある。
【0004】
特許文献1には、個体内での長期使用に適合した1つまたは複数の指示電極を有する検体感知装置が記載されている。参照電極と連結された指示電極は、個体の真皮内または真皮下に挿入され、外部センサユニットに電気的に連結され得る。
【0005】
特許文献2には、センサまたは流体輸送構造または流体輸送構造センサの組み合わせなどの装置をたとえば哺乳類の皮膚に送達し、センサなどの装置からの信号を受信、分析、および表示するための装置、システム、および方法が記載されている。システムは、送信機、マイクロコントローラ、およびハウジングを含む再利用可能なセンサアセンブリに加えて、バイオセンサの遠位端を受け入れる開口部を有するハウジングを含む使い捨て可能なセンサアセンブリと、センサ挿入誘導構造と、センサから受信した信号を、外部の電子モニタリングユニットに送信するための再利用可能なセンサアセンブリに送信する送信装置とを含む。
【0006】
特許文献3には、ホスト内の検体の連続測定のためのシステムおよび方法が記載されている。システムは一般的に、ホスト内の検体の濃度を連続的に測定するように構成された連続検体センサと、センサ使用中に連続検体センサに物理的に接続されるセンサ電子モジュールとを含み、センサ電子モジュールは、表示可能なセンサ情報を複数の異なるタイプの表示装置に直接無線通信するようにさらに構成されている。
【0007】
特許文献4には、連続グルコースモニタリングのための光学センサ、システム、および方法が記載されている。いくつかの実施形態では、層状光学センサを調製する方法が開示されている。光学センサは、複数のシートを一緒に積層して最終センサを形成することにより形成され得る。いくつかの実施形態では、センサチップは、酸素導管、酵素層、および感知層を備える。いくつかの実施形態では、センサは、酸素感知ポリマーなどのターゲット材料へ、およびターゲット材料から光を向けるように構成された複数の導波路を含む。システムは、光学センサ-送信機システムを取り付けるための接着システムについても開示されている。センサ挿入システムのための方法およびシステムも開示されている。挿入器は、ランセットチップの第1の表面に取り付けられた凸状の特徴部を含むランセットチップを含み得る。
【0008】
特許文献5には、電解ポリマー舗装およびシーリング(ePEPS)のための方法、材料、装置、およびシステムが記載されている。方法は、舗装材料を、血管の内部表面、組織内腔または他の中空空間に送達することと、表面に電子構成要素を送達することと、舗装材料および集積電子構成要素を含む共形装置を形成することとを含む。集積電子構成要素は、ポリマー材料の上部、中間部、および/または底部など、材料内に均一または不均一に分配され得る。装置は、生体適合性であり、好ましくは生分解性または生侵食性である。装置は、1つまたは複数の検体、信号もしくは状態の感知または検出のために、信号の送信または生成のために、または、治療薬、予防薬、もしくは診断薬の放出のために役立つ電気特性を一体化している。任意で、装置は、ローカル条件の変化に応答するフィードバックおよびロジック手段を含むスマートデバイスである。
【0009】
特許文献6には、ユーザーの体液中の少なくとも1つの検体の濃度を判定するためのキットが記載されている。キットは、a)センサモジュールであって、センサモジュールは、(i)検体の濃度を判定するように適合された少なくとも1つのセンサ素子であって、センサ要素は、ユーザーの身体組織に少なくとも部分的に埋め込み可能である、センサ要素、および、(ii)センサ素子に接続された少なくとも1つの制御装置であって、制御装置は、センサ素子を使用して取得された測定データを収集するように適合された少なくとも1つのデータ収集装置を備え、制御装置は、測定データを送信するように適合された少なくとも1つの無線近距離通信装置をさらに備え、センサモジュールが、センサモジュール機械式インターフェースを備える、少なくとも1つの制御装置を備えるセンサモジュールと、b)無線近距離通信を介してセンサモジュールによって送信された測定データを受信するように適合された少なくとも1つのデータリーダーモジュールであって、データリーダーモジュールが、少なくとも1つのデータ記憶装置を備え、測定データを記憶するように適合される、少なくとも1つのデータリーダーモジュールと、c)無線近距離通信を介してセンサモジュールによって送信された測定データを受信するように適合された少なくとも1つのデータ送信モジュールであって、データ送信モジュールが、少なくとも1つの無線遠距離通信装置を備え、無線遠距離通信装置が、無線遠距離通信を介して、測定データの少なくとも一部を外部装置に送信するように適合される、少なくとも1つのデータ送信モジュールとを備える。データリーダーモジュールとデータ送信モジュールはそれぞれ、センサモジュール機械式インターフェースと可逆的に係合するように適合された機械式インターフェースを備え、それによって、センサモジュールとデータリーダーモジュールとの間、またはセンサモジュールとデータ送信モジュールとの間に、固定の空間関係を択一的に生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2010/056624号
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/161656号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2011/009727号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2017/055906号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2016/051735号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第3138489号明細書
【発明の概要】
【0011】
これに基づいて、本発明の目的は、既知のシステムをさらに改善し、長期の着用能力および着用快適性を可能にする設計を提供することである。
【0012】
独立請求項に記載されている特徴の組み合わせは、この目的を達成するために提案される。本発明の有利な実施形態およびさらなる発展は、従属請求項から導かれる。
【0013】
本発明は、平坦な身体上モジュールからセンサを物理的に分離するという考えに基づいている。したがって、身体上モジュールが、短距離無線接続を介して、分離された埋め込み可能なセンサとデータを交換するように動作可能な第1の送信機を単に含む自己接着型の可撓性電子パッチを有することが提案される。本明細書で使用されるとき、「第1の送信機を含む」という用語は、電子パッチが第1の送信機のみを備える実施形態と、電子パッチが追加の構成要素、特に、以下に概説する追加の電子構成要素を備える実施形態とを指す。本明細書で使用されるとき、「パッチ」という用語は、ユーザーの皮膚に直接、すなわち追加のまたはさらなる留め要素を使用せずに直接取り付けられるように構成された少なくとも1つの任意の形状の留め要素を指す。本明細書で使用されるとき、「自己接着」という用語は、皮膚にパッチを取り付ける、および/または装着するように構成された少なくとも1つの取り付け面、たとえば底面を含むパッチを指し、取り付け面は、少なくとも1つの接着剤を含む、および/または少なくとも1つの接着剤被膜で被覆されている。本明細書で使用されるとき、「電子パッチ」という用語は、少なくとも1つの電子要素を備えるパッチを指す。本明細書で使用されるとき、「可撓性電子パッチ」という用語は、電子パッチが、皮膚の輪郭に追従するように屈曲可能および/または伸縮可能であるような柔軟な特性を有するという事実を指す。パッチは、少なくとも2つの方向に、好ましくはすべての方向に、少なくとも20%の伸縮性を有してもよい。本明細書で使用されるとき、「少なくとも20%の伸縮性」とは、たとえば10cm(センチメートル)の長さを有するパッチが、少なくとも12cm(センチメートル)の長さまで伸長され得ることを指す。可撓性パッチは、剛性のあるプラットフォームの欠点を回避すると同時に、皮膚を介したデータ交換を可能にする一方で、センサは、無菌に保たれ、パッチと一緒に交換する必要がない。したがって、全体の操作サイクルが延長され、ユーザーの利便性が大幅に向上し得る。
【0014】
医療用センサシステムは、埋め込み可能なセンサの領域の皮膚に取り付け可能な身体上モジュールを備える。本明細書で使用されるとき、「埋め込み可能なセンサの領域の皮膚に取り付け可能」とは、電子パッチと埋め込み可能なセンサが、物理的に分離されていること、特に空間的に分離されていることを指す。具体的には、電子パッチと埋め込み可能なセンサは、物理的に接続されていない。たとえば、埋め込み可能なセンサと電子パッチとの間の距離は、3~10mmの範囲にあり得る。
【0015】
有利な実施形態では、可撓性電子パッチは、パッチが皮膚の輪郭に追従するように屈曲可能および/または伸縮可能であるように、絶縁箔基板、たとえば薄いポリマーフィルム上に設けられた可撓性プリント回路(FPC)を備える。
【0016】
その上にプリント回路を有する箔は、電気的にプリントされる構造を担持するポリイミド箔であってもよい。好ましくは、箔は、伸縮性があり、通気性のある箔であり、構造は、導電性インク(たとえば、銀および/またはカーボン粒子を含む)でプリントされる。
【0017】
有利には、箔基板は、その初期長さの20%以上、少なくとも一方向に伸縮可能である。一実施形態では、箔基板は、20%よりも大きく、少なくとも2つの方向に伸縮可能であってもよい。一実施形態では、箔基板は、20%よりも大きく、全方向に伸縮可能である。本明細書で使用されるとき、「20%よりも大きい」という用語は、一実施形態では、たとえば10cm(センチメートル)の長さを有する箔基板が、その長さに沿って少なくとも12cm(センチメートル)まで伸長され得ることを意味する。
【0018】
好ましくは、絶縁箔基板は、10~250ミクロン、好ましくは50~100ミクロン、より好ましくは60~90ミクロン、最も好ましくは70~80ミクロンの範囲の厚さを有する。箔の安定性に応じて、10~50ミクロンの範囲の厚さも実現可能であり得る。
【0019】
電子パッチは、少なくとも1つの変形可能な電子要素および/または少なくとも1つの剛性もしくは半剛性電子要素を備えてもよい。たとえば、電子パッチは、少なくとも1つの導電経路、少なくとも1つの抵抗器、少なくとも1つのコンデンサ、および少なくとも1つのバッテリからなる群から選択される少なくとも1つの電子要素を含む少なくとも1つの可撓性プリント回路を備えてもよく、電子要素は、変形可能な構成要素であってもよい。たとえば、電子パッチは、少なくとも1つの集積回路チップ、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの記憶媒体、少なくとも1つのアンテナ、および少なくとも1つのバッテリのうちの1つまたは複数などの剛性または半剛性構成要素を備えてもよい。本明細書で使用されるとき、「少なくとも1つの変形可能な電子要素および/または少なくとも1つの剛性もしくは半剛性の電子要素を備える」という用語は、変形可能な電子要素および/または剛性もしくは半剛性の電子要素が、パッチの一部である、および/もしくは、パッチ内で、もしくはパッチ内に一体化され、特に、パッチの少なくとも1つの基板内で、および/もしくはパッチの少なくとも1つの基板上で一体化され、および/もしくは、パッチの少なくとも1つの層内で一体化されること、ならびに/または、変形可能な電子要素および/または剛性もしくは半剛性の電子要素が、パッチ内に埋め込まれていること、ならびに/または、変形可能な電子要素および/または剛性もしくは半剛性の電子要素が、パッチ内に組み込まれていることを指す。たとえば、パッチは、その上に、特に直接プリントされた、変形可能な電子要素および/または剛性もしくは半剛性の電子要素を有する絶縁箔基板を備えてもよい。具体的には、変形可能な電子要素および/または剛性もしくは半剛性の電子要素は、パッチ自体が電子ユニットとして配置および/または構成されるように、パッチに一体化され、および/または組み込まれ、および/または埋め込まれてもよい。したがって、変形可能な電子要素および/または剛性もしくは半剛性電子要素は、ハウジングもしくはベースユニットまたは類似するものなど、変形可能な電子要素および/または剛性もしくは半剛性の電子要素を格納または収容するように構成された追加および/または別個の要素を必要とせずに、パッチ自体に備えられてもよい。
【0020】
平坦な可撓性アセンブリを提供するために、可撓性プリント回路は、変形可能な構成要素として形成された導電性経路、抵抗器、コンデンサ、およびバッテリのうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。また、プロセッサや他のIC、通信用アンテナ、記憶媒体も、完全な可撓性FPCにつながる可撓性構成要素として一体化されることも考えられ得る。
【0021】
別の可能性は、可撓性電子パッチが、集積回路チップ、プロセッサ、記憶媒体、アンテナ、およびバッテリの少なくとも1つを、使用中の皮膚の変化する輪郭に形状を適合させるように電子パッチが全体として変形可能なまま維持されるように分配される剛性または半剛性構成要素として備えることを提供する。
【0022】
有利には、短距離無線接続は、電磁誘導により結合され、好ましくは無線周波数範囲で作動する一対のアンテナを介して確立される。そのようなアンテナ配置は、可撓性基板上の平坦な構成で容易に実現できる。
【0023】
特定の実施形態は、データ交換が近距離無線通信(NFC)プロトコルに基づいていることをさらに含む。これにより、数ミリメートルから2センチメートルまでのさまざまな要求される範囲で信頼性の高い無線接続が可能になる。近距離無線通信の範囲は、3~10mmであり得る。データ送信は、その送信が短い距離でのみ行われるため、安全性の懸念なしに暗号化されずに提供することもできる。
【0024】
有利な実施形態では、第1の送信機は、センサから測定値を受け取り、最終的にセンサに較正データを送信するように動作可能である。後者の場合、センサの特性が変化しても、測定精度を維持することができる。また、システムが工場で較正されている場合、使用中の較正が不要な場合も考えられる。
【0025】
別の有利な構成では、身体上モジュールは、非接触伝送によってセンサにエネルギーを供給するように構成されたパッチ装着エネルギー供給部をさらに備える。好ましくは、誘導エネルギー伝送は、埋め込まれたセンサにコンデンサを搭載するために提供される。したがって、バッテリは、センサに一体化される必要がない。このような配置は、患者にとっても安全である。さらに、電力供給を長期間にわたって維持することができる。
【0026】
有利には、可撓性電子パッチは、可撓性基板にプリントされた機能性材料、たとえば、亜鉛二酸化マンガンシステムにより構成されるプリントバッテリを備える。他の市販のシステムも実現可能である。
【0027】
完全な可撓性バッテリは、FPCの上または下に層構成で配置され得る。(金属箔を含み得る)可撓性バッテリの配置に応じて、アンテナの配置は、バッテリで遮蔽されないように配置される必要がある。特定の構成では、複数のアンテナは、プリントバッテリの上下またはその側面上で使用され得る。
【0028】
さらに別の有利な構成では、身体上モジュールは、パッチと一体化され、遠距離領域に位置付けられた外部データ取得装置との無線データ交換のために動作可能な第2の送信機をさらに備える。この配置では、ブルートゥース低エネルギー通信プロトコルを介したデータ交換が好ましい。好ましくは、そのような装置は、携帯式として構成され、パッチから最大で数メートルの距離で操作される。
【0029】
閉ループシステムを実現するために、センサで達成された測定結果に応答して、インスリンなどの所定の用量の薬剤をユーザーの身体に送達するために、身体装着ポンプが別個の物理的実体として設けられてもよい。
【0030】
これに関連して、身体上モジュールが、ユーザーが遠隔操作なしでシステムを操作できるようにするために、可撓性パッチに直接取り付けられるコントローラ、スイッチ、およびディスプレイ、具体的には感圧ディスプレイのうちの少なくとも1つを備えることがさらに有利である。
【0031】
別の有利な実施形態では、システムは、身体領域に分配され、ネットワークで身体上モジュールに接続される複数のセンサを備える。これにより、さまざまな影響パラメータの相互制御とモニタリングが可能になる。そのようなネットワークでは、すべてのセンサからのデータは、システムのマスターである身体上モジュールに通信される。代替的に、別個のセンサ構成要素の他のいずれかがマスターであってもよい。すべてのセンサは、可撓性電子機器を備える可撓性パッチの形態で実現され得る。これらのセンサからのデータは、マスターを介して、好ましくはブルートゥース低エネルギー(BLE)接続により、遠隔制御装置に通信され得る。そこでは、患者の血糖状態についてより多くの洞察を得るために、データがさらに処理され得る。
【0032】
好ましくは、複数のセンサは、グルコース、温度、体動、震え、心拍数、汗の群から選択される少なくとも1つのパラメータを測定するように構成される。
【0033】
さらなる態様では、少なくとも1つの体液中の少なくとも1つの検体の連続モニタリングのための方法が提案される。この方法は、一例として、所与の順序で実行され得る以下のステップを含む。ただし、別の順序も可能である。また、方法ステップの1つまたは複数を1回または繰り返し実行することも可能である。また、方法ステップの2つ以上を同時に、またはタイムリーに重複する形で実行することが可能である。この方法は、列挙されていないさらなる方法ステップを含んでもよい。この方法は、上記のまたは以下に詳細に説明する実施形態のいずれか1つによる少なくとも1つの医療用センサシステムを使用することを含む。この方法は、以下の
i)自己接着型の可撓性電子パッチを使用して、ユーザーの皮膚の下に埋め込まれたセンサの領域で、ユーザーの皮膚に身体上モジュールを取り付けるステップであって、自己接着型の可撓性電子パッチは、第1の送信機を含む、ステップと、
ii)短距離無線接続を介して、埋め込み可能なセンサと、自己接着型の可撓性電子パッチの第1の送信機との間でデータを交換するステップと
を含む。
【0034】
方法の実施形態および定義に関して、上記のおよび以下でさらに詳細に説明する医療用システムの説明が参照される。
【0035】
さらなる可能な実施形態を除外することなく要約すると、以下の実施形態が想定され得る。
【0036】
実施形態1:医療用センサシステム、特に連続グルコースモニタリングシステムであって、ユーザーの皮膚の下に埋め込み可能なセンサと、埋め込み可能なセンサの領域で皮膚に取り付け可能な身体上モジュールとを備え、身体上モジュールは、短距離無線接続を介して埋め込み可能なセンサとデータを交換するように動作可能な第1の送信機を含む自己接着型の可撓性電子パッチを有する、システム。
【0037】
実施形態2:可撓性電子パッチは、絶縁箔基板上に設けられる可撓性プリント回路を備える、実施形態1のシステム。
【0038】
実施形態3:絶縁箔基板は、10~250ミクロン、好ましくは50~100ミクロン、より好ましくは60~90ミクロン、最も好ましくは70~80ミクロンの範囲の厚さを有する、実施形態2のシステム。
【0039】
実施形態4:可撓性プリント回路は、変形可能な構成要素として、導電経路、抵抗器、コンデンサ、およびバッテリのうちの少なくとも1つを含む、実施形態2または3のシステム。
【0040】
実施形態5:可撓性電子パッチは、集積回路チップ、プロセッサ、記憶媒体、アンテナ、およびバッテリのうちの少なくとも1つを、電子パッチが変形可能なままであるように分配される剛性または半剛性構成要素として備える、実施形態1~4のいずれかに記載のシステム。
【0041】
実施形態6:短距離無線接続は、電磁誘導により結合される一対のアンテナを介して確立される、実施形態1~5のいずれかに記載のシステム。
【0042】
実施形態7:データ交換は、近距離無線通信(NFC)プロトコルに基づいている、実施形態1~6のいずれかに記載のシステム。
【0043】
実施形態8:第1の送信機は、センサから測定値を受け取り、最終的にセンサに較正データを送信するように動作可能である、実施形態1~7のいずれかに記載のシステム。
【0044】
実施形態9:身体上モジュールは、非接触伝送によってセンサにエネルギーを供給するように構成されるパッチ装着エネルギー供給部をさらに備える、実施形態1~8のいずれかに記載のシステム。
【0045】
実施形態10:可撓性電子パッチは、可撓性基板上にプリントされた機能性材料により構成されるプリントバッテリを備える、実施形態1~9のいずれかに記載のシステム。
【0046】
実施形態11:身体上モジュールは、パッチと一体化され、遠距離領域に位置する外部データ取得装置との無線データ交換のために動作可能な第2の送信機をさらに備える、実施形態1~10のいずれかに記載のシステム。
【0047】
実施形態12:センサで達成された測定結果に応答して、インスリンなどの所定の用量の薬剤をユーザーの身体に送達するための身体装着ポンプをさらに備える、実施形態1~11のいずれかに記載のシステム。
【0048】
実施形態13:身体上モジュールは、ユーザーが遠隔制御なしでシステムを操作できるようにするために、可撓性パッチに直接取り付けられるコントローラ、スイッチ、およびディスプレイのうちの少なくとも1つを備える、実施形態1~12のいずれかに記載のシステム。
【0049】
実施形態14:身体領域に分配され、ネットワークで身体上モジュールに接続される複数のセンサをさらに備える、実施形態1~13のいずれかに記載のシステム。
【0050】
実施形態15:複数のセンサは、グルコース、温度、体動、震え、心拍数、汗の群から選択される少なくとも1つのパラメータを測定するように構成される、実施形態14のシステム。
【0051】
実施形態16:少なくとも1つの体液中の少なくとも1つの検体の連続モニタリングのための方法であって、方法は、実施形態1~15のいずれか1つに記載の少なくとも1つの医療用センサシステムを使用することを含み、方法は、以下の
i)自己接着型の可撓性電子パッチを使用して、ユーザーの皮膚の下に埋め込まれたセンサの領域で、ユーザーの皮膚に身体上モジュールを取り付けるステップであって、自己接着型の可撓性電子パッチは、第1の送信機を含む、ステップと、
ii)短距離無線接続を介して、埋め込み可能なセンサと、自己接着型の可撓性電子パッチの第1の送信機との間でデータを交換するステップと
を含む、方法。
【0052】
以下において、本発明は、図面に概略的に示される実施形態例に基づいてさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】無線接続で相互接続された身体装着可能な可撓性パッチと皮膚埋め込み型センサとを含む医療用センサシステムの部分的に3D拡大された断面図である。
図2】身体装着パッチポンプを含む、図1と同様の別の医療用センサアセンブリの断面図である。
図3】様々な皮膚埋め込み型センサを含む身体上モジュールのネットワークの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1を参照すると、体液中の連続検体モニタリング、具体的には連続グルコースモニタリングのための医療センサシステム10は、少なくとも1つの身体上モジュール12と、完全に皮膚の下の皮下組織に配置される完全皮下埋め込み型グルコースセンサ14と、任意で、モジュール12から情報を受け取るための携帯データ取得装置16とを備える。
【0055】
モジュール12は、埋め込まれたセンサ14の領域でユーザーの皮膚18に取り付け可能である。この目的のために、モジュール12は、可撓性箔材料22に基づく自己接着平面電子パッチ20を備える。電子パッチ20は、パッチ20をユーザーの皮膚18に取り付けるために接着剤23でコーティングされた底面と、可撓性プリント回路、導電経路26、および最終的にはパッチ箔22に直接取り付けられる剛性または半剛性構成要素27を担持するための、皮膚から離れて面する上面24とを有する。
【0056】
電子パッチ20に取り付けられる第1の送信機28は、短距離無線接続30を介して埋め込み可能なセンサ14とデータを交換するように動作可能である。そのような接続は、電磁誘導によって結合されるパッチ20の側面上のアンテナおよびセンサ14のアンテナを介して確立され得る。データ交換は、それ自体が当業者に知られている近距離無線通信(NFC)プロトコルに基づき得る。
【0057】
このようにして、第1の送信機28は、較正データをセンサ14に送信するように動作可能である。他の方向では、センサ14は、電子構成要素27でさらに処理するために、検体の読取値および/または他の測定データをパッチ20に送信する。
【0058】
皮膚18を介したガルバニック接続を回避するために、モジュール12は、誘導経路34を介した非接触伝送によりセンサ14に電気エネルギーを供給するように構成されるパッチ装着エネルギー供給部32をさらに備える。エネルギー供給部32は、可撓性基板上にプリントされた電解質材料および機能性電極からなるプリントバッテリとして実現され得る。
【0059】
図1からも明らかなように、身体上モジュール12は、パッチ20と一体化され、外部データ取得装置16との無線データ交換のために動作可能な第2の送信機36をさらに備える。ここで、少なくとも数メートルの範囲の遠距離通信のために伝送経路38が設けられてもよい。データ取得装置16は、モジュール12から情報を受け取ることに加えて、モジュール12を制御することを可能にし得る。
【0060】
使い捨て可能なセンサ14は、間質液と接触し、たとえば電気化学反応に基づいて検体の読取値を提供する電極を含んでいてもよい。具体的には、グルコースの読取値は、ユーザーが連続的または準連続的に生体内モニタリングを行えるように、血糖値と相関させられ得る。
【0061】
図2にさらに示されるように、システム10はまた、ユーザーの身体42に、所定の投与量の薬剤を送達するための身体装着ポンプ40を含み得る。ポンプ40は、皮膚18の直上の接着パッチ44上に配置され得る。動作中、ポンプ40は、モジュール12から制御信号を受け取り、センサ14で達成された測定結果に応じて、所定のボーラス投与量のインスリンを供給する。改善された利便性のために、モジュール12は、ユーザーが遠隔制御なしでシステム10を操作できるようにするためにインターフェースを含むコントローラ46を備える。
【0062】
図3の実施形態では、複数のセンサ14が、ユーザーの身体領域に分配され、無線ネットワーク48で身体上モジュール12に接続される。センサ14は、たとえば、グルコース、体温および体動、震え、心拍数、汗などの、異なる身体パラメータを測定するように構成される。このネットワーク48では、すべてのセンサ14(モジュールに割り当てられた一次センサおよび補助センサを含む)からのデータは、システムのマスターとして動作する身体上モジュール12に通信される。補助センサは、可撓性電子機器を備える可撓性パッチの形態で実現され得る。取得されたデータは、マスターを介して、好ましくはブルートゥース低エネルギー(BLE)接続によって、遠隔装置16に通信されてもよい。
図1
図2
図3
【外国語明細書】