(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065642
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】電気光学ポリマー層を含む非線形光学用積層体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/377 20060101AFI20230502BHJP
G02F 1/01 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
G02F1/377
G02F1/01 C
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034222
(22)【出願日】2023-03-07
(62)【分割の表示】P 2019537669の分割
【原出願日】2018-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2017161292
(32)【優先日】2017-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶 貴博
(72)【発明者】
【氏名】富成 征弘
(72)【発明者】
【氏名】山田 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】大友 明
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ポーリング処理の条件によって制限されない非線形光学用積層体の製造方法の提供。
【解決手段】電気光学分子を含む電気光学ポリマー層を、ポーリング処理する工程と、ポーリング処理された上記電気光学ポリマー層を支持体に積層する工程と、を含む、非線形光学用積層体の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学分子を含む電気光学ポリマー層を、ポーリング処理する工程と、
ポーリング処理された前記電気光学ポリマー層を支持体に積層する工程と、
を含む、非線形光学用積層体の製造方法。
【請求項2】
前記積層する工程は、前記電気光学ポリマー層の表面と前記支持体の表面とが、共有結合、静電相互作用、又はファンデルワールス相互作用を介して結合することによって行われる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
支持体と、
前記支持体上に接して積層されている電気光学ポリマー層と、
を含む、非線形光学用積層体であって、
前記電気光学ポリマー層は、電気光学分子を含み、
前記電気光学ポリマー層における前記電気光学分子は、所定の方向に配向している、非線形光学用積層体。
【請求項4】
前記支持体と前記電気光学ポリマー層との接着強度は、0.01N/mm2以上20N/mm2以下である、請求項3に記載の非線形光学用積層体。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の非線形光学用積層体を含むテラヘルツ波用導波路素子であって、
前記支持体は、シクロオレフィンポリマー又はシクロオレフィンコポリマーを含む、テラヘルツ波用導波路素子。
【請求項6】
請求項3又は請求項4に記載の非線形光学用積層体を含む高出力レーザー用非線形光学素子であって、
前記電気光学ポリマー層の厚さは、5μm以上50cm以下である、高出力レーザー用非線形光学素子。
【請求項7】
請求項3又は請求項4に記載の非線形光学用積層体を含む光変調素子であって、
前記支持体は、ガラス、SiO2、ゾルゲルガラス、フッ素樹脂、ポリカーボネート、(メタ)アクリレートポリマー、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタラート、紫外線硬化樹脂、シリコン、ガリウム砒素、インジウムリン、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミ、窒化シリコン、窒化アルミ、ITO、IZO、及びIGZOからなる群から選択される1以上を含む、光変調素子。
【請求項8】
請求項3又は請求項4に記載の非線形光学用積層体を含むフリースタンディング電気光学ポリマー積層体であって、
前記支持体は、前記電気光学ポリマー層と同一の組成又は異なる組成の電気光学ポリマーである、フリースタンディング電気光学ポリマー積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学ポリマー層を含む非線形光学用積層体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気光学ポリマーは、ニオブ酸リチウム及びテルル化亜鉛等の無機非線形光学材料、並びにDAST(4-N,N-ジメチルアミノ-4’-N’-メチル-スチルバゾリウムトシレート)等の有機非線形光学材料と比較して大きな電気光学定数を有する。電気光学ポリマーは、電気光学定数と屈折率とを考慮に入れたテラヘルツ波の発生の性能指数(nopt
6r2/16nTHz;nopt:入射光の波長での材料の屈折率、r:電気光学定数、nTHz:発生するテラヘルツ波の波長での材料の屈折率)(“Organic Electro-Optics and Photonics”(L. R. Dalton,et.al.,Cambridge University Press(2015)))が他の材料よりも大きくなり得ることから、高効率なテラヘルツ波発生素子(又は検出素子)を実現できる。また、結晶性の非線形光学材料がテラヘルツ波(0.1~20THz)の帯域において結晶格子振動に起因する大きな吸収係数を有するのに対して、電気光学ポリマーはテラヘルツ波帯の広帯域において吸収係数が小さい。そのため、電気光学ポリマーは広帯域のテラヘルツ波を発生、検出することができる。また、電気光学ポリマーは、光領域からテラヘルツ波帯、マイクロ波帯、及びミリ波帯の間での屈折率の差が小さい。そのため、電気光学ポリマーを含む非線形光学素子(電気光学素子を含む)は、様々な周波数の電磁波を効率的に相互作用させることができる。また、電気光学ポリマーを含む非線形光学素子(電気光学素子を含む)は効率的な周波数変換、電磁波の位相変調等を行うことができる。このような観点から、電気光学ポリマーは、次世代の光通信、無線通信、及び電磁波センシング等を担う材料として注目されている。
【0003】
電気光学ポリマーの種類には、(1)母体となるポリマー(以下、「マトリックスポリマー」という場合がある。)と2次非線形光学効果を発揮する化合物(以下、「電気光学分子」という場合がある。)とを混合したゲスト・ホスト型の電気光学ポリマー、(2)基本骨格となるポリマー(以下、「ベースポリマー」という場合がある。)の側鎖に電気光学分子が共有結合したサイドチェーン型の電気光学ポリマー、(3)ベースポリマーの主鎖中に電気光学分子が共有結合した主鎖型の電気光学ポリマー、(4)マトリックスポリマー間若しくはベースポリマー間、又は、マトリックスポリマー若しくはベースポリマーと電気光学分子等との間で架橋したクロスリンク型の電気光学ポリマー、(5)モレキュラーガラス型の電気光学ポリマー等がある。電気光学ポリマーは、高性能な2次非線形光学材料として知られている。また、電気光学ポリマーは、2次非線形光学効果を発揮する。
【0004】
2次非線形光学効果には、第2次高調波発生、光整流、和周波発生、差周波発生、光パラメトリック発振・増幅、電気光学効果(ポッケルス効果)等が含まれる。このような2次非線形光学効果によって、様々な周波数の電磁波の周波数(波長)変換、電場による電磁波の位相の制御等が、電気光学ポリマーを含む非線形光学素子において達成される。具体例としては、2つ以上の周波数を含むレーザー光を2次非線形光学効果によって周波数変換することでテラヘルツ波(周波数が0.1~20THzである電磁波であって、マイクロ波、ミリ波、赤外光等を含む概念。)を発生することができる。また、1つ以上の周波数を含むレーザー光とテラヘルツ波とを2次非線形光学効果によって周波数変換することで、レーザー光の周波数が変化し、その周波数変化したレーザー光を検出することで、テラヘルツ波を検出することができる。また、電気光学効果による屈折率変化を用いることで、テラヘルツ波、電界を検出することができる。また、電気光学効果による屈折率の変化を用いることで電磁波の位相変調を行うことができる。
【0005】
電気光学ポリマーが、2次非線形光学効果を発揮するためには、電気光学ポリマーに含まれる電気光学分子の向きを出来るだけ同じ方向に揃える(配向する)必要がある。この処理をポーリング処理という。ポーリング処理を行う方法として、電気光学ポリマー膜若しくは電気光学ポリマー導波路の上部と下部とにポーリング電極を配置し電極間に電圧を加える方法、又は、電気光学ポリマー膜若しくは電気光学ポリマー導波路の上部若しくは下部に2つ以上のポーリング電極若しくは櫛型ポーリング電極等を配置し、電極間に電圧を加える方法がある。これらポーリング電極を用いたポーリング処理時の電界は、典型的には100V/μmである。また、電気光学ポリマー膜にコロナ放電を行うことでポーリング処理を行う方法がある。電気光学ポリマー膜は、スピンコート法等で簡便に成膜することができる。また成膜した電気光学ポリマー膜は、フォトリソグラフィー、ドライエッチング等の微細加工プロセスを用いることで、導波路に加工することができる。
【0006】
従来の電気光学ポリマーを含む非線形光学素子の製造方法では、最終素子構造である上記非線形光学素子の構成を構築した後に、構成要素の一つである電気光学ポリマーに対しポーリング処理が行われていた。例えば、従来の電気光学ポリマーを含む導波路の製造技術では、まず基板に下部ポーリング電極を形成し、上記下部ポーリング電極の上に、クラッド層、電気光学ポリマーを含むコア層、クラッド層をこの順に形成する。さらに上記クラッド層の上に、上部ポーリング電極を形成する。その後、2つのポーリング電極の間に電圧を加えることで、電気光学ポリマーに対するポーリング処理が行われていた(特表2006-506689号公報(特許文献1)、特開2012-027437号公報(特許文献2)、特開2013-025261号公報(特許文献3)、特開2016-130768号公報(特許文献4)、国際公開第2013/024840号(特許文献5))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2006-506689号公報
【特許文献2】特開2012-027437号公報
【特許文献3】特開2013-025261号公報
【特許文献4】特開2016-130768号公報
【特許文献5】国際公開第2013/024840号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】F.A.Vallejo,L.M.Hayden,“Simplified model for optical rectification of broadband terahertz pulses in lossy waveguides including a new generalized expression for the coherence length,”,Opt.Express,vol.21,24398-24412(2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、製造しようとする非線形光学素子の構成によっては、ポーリング処理がうまく行えず、電気光学ポリマー内の電気光学分子の配向が十分でない、又は上記非線形光学素子の構成をポーリング処理に適した構成にしたために、最終的に製造された非線形光学素子が所定の性能を備えていない等の課題があった。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ポーリング処理の条件によって制限されない非線形光学用積層体の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、電気光学分子を含む電気光学ポリマー層をポーリング処理した後に、当該電気光学ポリマー層を所定の支持体に積層することによって、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本願は以下の実施態様を提供する。
【0012】
[1]電気光学分子を含む電気光学ポリマー層をポーリング処理する工程と、
ポーリング処理された上記電気光学ポリマー層を支持体に積層する工程と、
を含む、非線形光学用積層体の製造方法。
[2]上記積層する工程は、上記電気光学ポリマー層の表面と上記支持体の表面とが、共有結合、静電相互作用、又はファンデルワールス相互作用を介して接着することによって行われる、[1]に記載の製造方法。
[3]支持体と、
上記支持体上に接して積層されている電気光学ポリマー層と、
を含む、非線形光学用積層体であって、
上記電気光学ポリマー層は、電気光学分子を含み、
上記電気光学ポリマー層における上記電気光学分子は、所定の方向に配向している、非線形光学用積層体。
[4]上記支持体と上記電気光学ポリマー層との接着強度は、0.01N/mm2以上20N/mm2以下である、[3]に記載の非線形光学用積層体。
[5][3]又は[4]に記載の非線形光学用積層体を含むテラヘルツ波用導波路素子であって、
上記支持体は、シクロオレフィンポリマー又はシクロオレフィンコポリマーを含む、テラヘルツ波用導波路素子。
[6][3]又は[4]に記載の非線形光学用積層体を含む高出力レーザー用非線形光学素子であって、
上記電気光学ポリマー層の厚さは、5μm以上50cm以下である、高出力レーザー用非線形光学素子。
[7][3]又は[4]に記載の非線形光学用積層体を含む光変調素子であって、
上記支持体は、ガラス、SiO2、ゾルゲルガラス、フッ素樹脂、ポリカーボネート、(メタ)アクリレートポリマー、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタラート、紫外線硬化樹脂、シリコン、ガリウム砒素、インジウムリン、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミ、窒化シリコン、窒化アルミ、ITO、IZO、及びIGZOからなる群から選択される1以上を含む、光変調素子。
[8][3]又は[4]に記載の非線形光学用積層体を含むフリースタンディング電気光学ポリマー積層体であって、
上記支持体は、上記電気光学ポリマー層と同一の組成又は異なる組成の電気光学ポリマーである、フリースタンディング電気光学ポリマー積層体。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ポーリング処理の条件によって制限されない非線形光学用積層体の製造方法の提供が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、非線形光学用積層体及び上記積層体を含む導波路の製造方法の例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、ポーリング処理された電気光学ポリマー層を支持体に積層する方法の例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、非線形光学用積層体を含むテラヘルツ波用導波路素子の例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、高出力レーザー用非線形光学用積層体の製造方法の例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、非線形光学用積層体を含む光変調素子の例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、シクロオレフィンコポリマー、シクロオレフィンポリマー及びポリメタクリル酸メチルのテラヘルツ波領域における吸収スペクトルを示すグラフである。
【
図7】
図7は、実施例に係るテラヘルツ波用導波路素子の走査顕微鏡画像である。
【
図8】
図8は、実施例に係るテラヘルツ波用導波路素子の走査顕微鏡画像である。
【
図9】
図9は、実施例に係る高出力レーザー用非線形光学素子に用いる非線形光学用積層体の走査顕微鏡画像である。
【
図10】
図10は、実施例に係るテラヘルツ波用導波路素子の断面における走査電子顕微鏡画像である。
【
図11】
図11は、実施例に係るテラヘルツ波用導波路素子から発生したテラヘルツ波の時間波形を示すグラフである。
【
図12】
図12は、フリースタンディング電気光学ポリマー積層体の製造方法の例を示す模式図である。
【
図13】
図13は、実施例に係る電気光学ポリマー層及びフリースタンディング電気光学ポリマー積層体の吸光度スペクトルを示すグラフである。
【
図14】
図14は、実施例に係る電気光学ポリマー層及びフリースタンディング電気光学ポリマー積層体の薄膜干渉スペクトルを示すグラフである。
【
図15】
図15は、実施例に係る光変調素子の断面における走査電子顕微鏡画像である。
【
図16】
図16は、実施例に係る光変調素子における光変調の時間波形を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0016】
(非線形光学用積層体の製造方法)
本実施形態に係る非線形光学用積層体の製造方法は、
電気光学分子を含む電気光学ポリマー層を、ポーリング処理する工程と、
ポーリング処理された上記電気光学ポリマー層を支持体に積層する工程と、
を含む。
【0017】
本実施形態に係る製造方法は、上記構成を備えることで、ポーリング処理の条件によって制限されずに所定の非線形光学用積層体を製造することが可能になる。他の側面において、本実施形態に係る製造方法は、電気光学ポリマーの導波路素子におけるコア層の周囲に存在するクラッド層の材料を、テラヘルツ波の吸収損失が小さい材料又は屈折率の小さな材料を含む任意の材料とした電気光学ポリマーの導波路素子の製造方法、及び任意の大きな膜厚の電気光学ポリマー層を含む非線形光学素子の製造方法、これら製造方法によって製造された電気光学ポリマーを含む非線形光学素子を提供することが可能になる。
【0018】
本実施形態において「非線形光学用積層体」とは、非線形光学素子等の製造に用いられる積層体であって、支持体及び電気光学ポリマー層を含む積層体を意味する。
【0019】
本実施形態において、「電気光学ポリマー」(以下、「EOポリマー」という場合がある。)とは、2次非線形光学効果を発揮するポリマーであって、(1)マトリックスポリマーと電気光学分子とを混合したゲスト・ホスト型の電気光学ポリマー、(2)ベースポリマーの側鎖に電気光学分子が共有結合したサイドチェーン型の電気光学ポリマー、(3)ベースポリマーの主鎖中に電気光学分子が共有結合した主鎖型の電気光学ポリマー、(4)マトリックスポリマー間若しくはベースポリマー間、又は、マトリックスポリマー若しくはベースポリマーと電気光学分子等との間で架橋したクロスリンク型の電気光学ポリマー、(5)モレキュラーガラス型の電気光学ポリマーを含む。ゲスト・ホスト型の電気光学ポリマーは、マトリックスポリマーと電気光学分子とを含む組成物として把握することもできる。
【0020】
2次非線形光学効果としては、例えば、第2次高調波発生、光整流、和周波発生、差周波発生、光パラメトリック発振・増幅、電気光学効果(ポッケルス効果)等が挙げられる。
【0021】
本実施形態において、「マトリックスポリマー」とは、電気光学ポリマーの母体となるポリマーを意味する。上記マトリックスポリマーは、ゲスト・ホスト型の電気光学ポリマーのホストとなる有機ポリマーを含む。また、「ベースポリマー」とは、電気光学ポリマーの基本骨格となるポリマーを意味する。上記ベースポリマーは、サイドチェーン型、主鎖型、又はクロスリンク型の電気光学ポリマーにおけるポリマー主鎖の有機ポリマーを含む。マトリックスポリマー及びベースポリマーとしては、光学材料として用いるために散乱のない透明なポリマーが好ましく、例えば、(メタ)アクリレート系ポリマー(例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA))、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート(例えば、poly[Bisphenol A carbonate-co-4,4’-(3,3,5-trimethylcyclo-hexylidene)diphenol carbonate]等)、ポリジシクロペンタニルメタクリレート(poly DCPMA)、ポリアダマンチルメタクリレート(poly AdMA)、poly(DCPMA-co-MMA)、poly(AdMA-co-MMA)等)、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンテレフタラート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリフェニレンサルファイド、ポリウレア、シリコン系樹脂、エポキシ系樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。上記有機ポリマーは、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
本実施形態において「電気光学分子」とは、2次非線形光学効果を発揮する化合物を意味する。電気光学分子としては、例えば、米国特許6067186号明細書、特表2004‐501159号公報、国際WO2011/024774A1号公報、「非線形光学のための有機材料」(日本化学会編、季刊化学総説No.15(1992))、“Organic Nonlinear Optical Materials”(Ch. Bosshard, et. al., Gordonand Breach Publishers(1995))、「情報・通信用光有機材料の最新技術」(戒能俊邦監修、シーエムシー出版(2007))、及び“Molecular Nonlinear Optics”(ed. J. Zyss, Academic Press(1994))等に記載の2次非線形光学効果を発揮する化合物が挙げられる。
【0023】
電気光学分子は、2次非線形光学効果を発揮する化合物であれば特に限定されないが、共役系の化学構造を有し、更に、分子内に電子供与性基及び電子求引性基を有する化合物であることが好ましい。ここで、共役系の化学構造の例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ペリレン、ビフェニル、インデン及びスチルベン等の芳香族化合物、フラン、ピラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、チオフェン、チアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、キノリン及びクマリン等の複素環式化合物、これらの化合物同士が炭素―炭素不飽和結合又は窒素―窒素不飽和結合を介して結合した化合物等が挙げられる。
【0024】
電子供与性基としては、例えば、アルキル基、アリール基又はアシル基で置換されてもよいアミノ基、アルコキシ基、アリルオキシ基及びチオエーテル基等が挙げられる。電子求引性基としては、例えば、ニトロ基、シアノ基、ジシアノビニル基、トリシアノビニル基、ハロゲン原子、カルボニル基、スルホン基、ペルフルオロアルキル、トリシアノビニルフラン、トリシアノフラン等が挙げられる。
【0025】
電気光学分子の一例としては、以下の構造式[A-1]~[A-7]で表される化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
【0027】
電気光学分子の含有割合は、特に限定されないが、マトリックスポリマー又はベースポリマー、及び電気光学分子の全量(電気光学ポリマーの全質量に相当)に対して、通常は、約1~70質量%であり、好ましくは、約5~60質量%であり、より好ましくは、約10~50質量%である。上記含有割合は、電気光学ポリマーがサイドチェーン型又は主鎖型の形態であっても同様である。ここで、サイドチェーン型の電気光学ポリマーの場合、電気光学分子の含有割合は、サイドチェーン部分の由来となる電気光学分子に基づいて求めるものとする。主鎖型の電気光学ポリマーの場合、電気光学色素の含有割合は、主鎖中の電気光学分子部分に基づいて求めるものとする。
【0028】
電気光学ポリマーは、例えば、式(1)~式(3)で表される繰り返し単位を有するサイドチェーン型の電気光学ポリマーであってもよい。式中、p、q、rはそれぞれ正の整数を示す。ここで、サイドチェーン型の電気光学ポリマーは、電気光学分子部分をサイドチェーンとして含まないベースポリマーを構成する繰り返し単位(例えば、式(1)、式(3)で表される繰り返し単位)と、電気光学分子部分をサイドチェーンとして含むベースポリマーを構成する繰り返し単位(例えば、式(2)で表される繰り返し単位)とのコポリマーであってもよい。この場合、上記コポリマーは、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマーのいずれでもよい。
【0029】
【0030】
本実施形態において、「電気光学ポリマー層」とは、電気光学ポリマーから構成される層を意味する。
【0031】
電気光学ポリマー層の作製方法は、特に制限されないが、例えば、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、バーコート法、フローコート法、グラビアコート法、ロールコート法等が挙げられる。
【0032】
本実施形態において「支持体」とは、電気光学ポリマー層を担持する基体を意味する。支持体は、製造される非線形光学用積層体の用途に応じて、単一の層構造であってもよいし、複数の層構造であってもよい。上記支持体は、製造される非線形光学用積層体の用途に応じて、適宜設定できる。
【0033】
支持体としては、ガラス(例えば、BK7等)、SiO2(例えば、石英ガラス)、ゾルゲルガラス(例えば、MAPTMS等)、フッ素樹脂(例えば、PTFE、CYTOP(旭硝子、登録商標)、テフロン(The Chemours Company、登録商標)AF等)、ポリカーボネート(例えば、poly[Bisphenol A carbonate-co-4,4’-(3,3,5-trimethylcyclo-hexylidene)diphenol carbonate]等)、(メタ)アクリレートポリマー(例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリジシクロペンタニルメタクリレート(poly DCPMA)、ポリアダマンチルメタクリレート(poly AdMA)、poly(DCPMA-co-MMA)、poly(AdMA-co-MMA)等)、シクロオレフィンポリマー(例えば、ZEONEX(日本ゼオン、登録商標)、ZEONOR(日本ゼオン、登録商標)、ARTON(JSR、登録商標)等)、シクロオレフィンコポリマー(TOPAS(Topas Advanced Polymers GmbH、登録商標)、APEL(三井化学、登録商標)等)、Tsurupica(登録商標)、Daikyo Resin CZ、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン(TPX(三井化学、登録商標))、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンテレフタラート、紫外線硬化樹脂(例えば、SU8、マスターボンド社製UV15、UV15LV、ノーランド社製NOA61、NOA65、NOA71、NOA73等)、電気光学ポリマー(poly(Disperse Red 1 acrylate)、poly(Disperse Red 1 methacrylate)、poly(Disperse Red 13 acrylate)、poly(Disperse Red 13 methacrylate)、poly(Disperse Orange 3 acrylamide)、poly(Disperse Orange 3 methacrylamide)、poly(Disperse Yellow 7 acrylate)、poly(Disperse Yellow 7 methacrylate)を含む)等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。その他、色素分子(電気光学分子を含む)を上記支持体に含んだものであってもよい。
【0034】
また、支持体としては、半導体、酸化物、窒化物、酸窒化物、強誘電体化合物、金属、透明導電性材料等が挙げられる。半導体としては、例えば、ダイヤモンド(C)、シリコン(Si)、ホウ素ドープシリコン、リンドープシリコン、シリコンカーバイド(SiC)、シリコンゲルマニウム(SiGe)及びゲルマニウム(Ge)等のIV族半導体、ガリウム砒素(GaAs)、インジウムリン(InP)、窒化ガリウム(GaN)及びリン化ガリウム(GaP)等のIII-V族半導体、セレン化亜鉛(ZnSe)、硫化カドミウム(CdS)、セレン化カドミウム(CdSe)、テルル化カドミウム(CdTe)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)及びテルル化カドミウム亜鉛(CdZnTe)等のII-VI族半導体等が挙げられる。酸化物としては、例えば、酸化シリコン、金属酸化物[例えば、酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ランタン(La2O3)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化イットリウム(Y2O3)、五酸化タンタル(Ta2O5)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ガリウム(Ga2O3)、酸化マグネシウム(MgO)等]、ケイ酸ハフニウム(HfSiO4)、二酸化ケイ素(SiO2)等が挙げられる。窒化物としては、窒化シリコン、窒化炭素、窒化金属[例えば、窒化アルミニウム(AlN)、窒化チタン(TiN)、窒化ハフニウム(HfN)等]等が挙げられる。酸窒化物としては、酸窒化シリコン、酸窒化金属[例えば、酸窒化アルミニウム(AlON)、酸窒化ハフニウム(HfON)等]等が挙げられる。強誘電体化合物としては、例えば、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ランタンドープジルコン酸チタン酸鉛(PLZT)等が挙げられる。金属としては、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)等が挙げられる。透明導電性材料としては、ITO、IZO、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)、IGZO(InGaZnO)、AZO(アルミドープ酸化亜鉛)、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)、SnO2等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。上記材料は、支持体が複数の層構造を有する場合における電気光学ポリマー層と接する層に対して好適に用いられる。
【0035】
各非線形光学素子における好適な支持体の構成については、後述する。
【0036】
以下、
図1及び
図2を用いて各工程について詳細に説明する。
【0037】
(1)電気光学ポリマー層をポーリング処理する工程
本実施形態において「ポーリング処理」とは、電気光学分子を配向させ、その配向を固定する処理を意味する。上記ポーリング処理としては特に制限されないが、例えば電気光学ポリマー層を下部電極及び上部電極で挟んで電気光学ポリマー層のガラス転移温度付近において電圧を印加する方法、電気光学ポリマー層に対してコロナ放電を行う方法等が挙げられる。
例えば、
図1の(a)に示されるように、基板1、下部電極2、電気光学ポリマー層10及び上部電極3をこの順に積層して、上記電気光学ポリマー層10のガラス転移温度付近において下部電極2と上部電極3との間に電圧を印加することで、電気光学ポリマー層10をポーリング処理してもよい。
【0038】
(2)ポーリング処理された電気光学ポリマー層を支持体に積層する工程
本実施形態において「積層する」とは、ポーリング処理された電気光学ポリマー層を支持体上に積み重ねることを意味する。ここで、上記積層する工程は、従来行われていた、電気光学ポリマー層を支持体に積層した後に、当該電気ポリマー層に対して電圧を印加する(ポーリング処理する)方法を排除することを意味する。上記積層する工程としては、特に制限はないが例えば、下部電極上にあるポーリング処理された電気光学ポリマー層を支持体上に転写する方法が挙げられる。上記積層する方法としては、上記電気光学ポリマー層の表面と上記支持体の表面とが、共有結合、静電相互作用、又はファンデルワールス相互作用等を介して接着することによって行われるのが好ましい。
より具体的な例としては、以下の方法が挙げられる。ポーリング処理が完了した後(
図1の(b))、まずウェットエッチング等によって上部電極3を除去する(
図1の(c)、
図2の(a))。その後、ポーリング処理された電気光学ポリマー層11の表面に酸素プラズマ処理を行い、当該表面を活性化する(
図2の(b))。ここで、
図2の(b)中の-CORは、カルボニル基を含む有機基を示す。他方で、支持体20の表面に酸素プラズマ処理を行い、更にアミノ基を有するシランカップリング剤等で処理して当該表面を活性化する(
図2の(c)及び(d))。最後に、互いに活性化した表面が向き合うようにポーリング処理された電気光学ポリマー層11を支持体20に転写し、基板1及び下部電極2を除去して、非線形光学用積層体50を得る(
図1の(d)、
図2の(e))。上述の方法では、電気光学ポリマー層11と支持体20とを密着させる試薬として、アミノ基を有するシランカップリング剤が用いられているが、この他にも、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ウレイド基、又はメルカプト基を有するシランカップリング剤等を用いてもよい。また、シランカップリング剤を用いず、電気光学ポリマー層11の表面及び支持体20の表面に酸素プラズマ処理を行い、互いに活性化した表面が向き合うようにポーリング処理された電気光学ポリマー層11を支持体20に転写してもよい。また、支持体20の表面に酸素プラズマ処理を行い、更にアミノ基を有するシランカップリング剤等で処理して当該表面を活性化し、支持体20の活性化した表面と、酸素プラズマ処理及びシランカップリング処理を行わない未処理の電気光学ポリマー層11との表面が互いに向き合うように電気光学ポリマー層11を支持体20に転写してもよい。電気光学ポリマー層10がスピンコート法によって、単に下部電極2上に担持されている場合、特別な処理を施すことなく基板1及び下部電極2を転写された電気光学ポリマー層11から剥離するだけで、基板1及び下部電極2を除去できる。
【0039】
本実施形態に係る非線形光学用積層体の製造方法の他の実施態様としては、以下の方法が挙げられる。まず、長尺の電気光学ポリマーのフィルム(電気光学ポリマー層)のロール及び長尺のフィルム型の支持体のロールを用意し、これらを巻出し装置を用いて連続的に巻出しながらフィルム搬送を行う。各フィルムは、それらの長手方向が搬送方向となるように搬送される。ここで、搬送されてきた電気光学ポリマーのフィルムに対してコロナ放電等を行うことによって、上記電気光学ポリマーのフィルムにポーリング処理を行う(ポーリング処理する工程)。次に、連続的に搬送されるポーリング処理された電気光学ポリマーのフィルム及びフィルム型の支持体をそれらの長手方向(搬送方向)が平行となるように重ねて、重ねられたフィルムの積層体(非線形光学用積層体)を一対の貼合ロール間に通して、上記積層体に圧力を印加することによってフィルム同士を貼合する(電気光学ポリマー層を支持体に積層する工程)。
【0040】
本実施形態に係る製造方法は、上述の工程の後に、ポーリング処理された電気光学ポリマー層を加工する工程等のその他の工程を更に含んでもよい。
その他の工程としては、例えば、
(1)フォトリソグラフィー等によってポーリング処理された電気光学ポリマー層11の上にマスクを形成して、ドライエッチング等によって、電気光学ポリマー層11を導波路の構造等に加工すること(
図1の(e))、
(2)ポーリング処理された電気光学ポリマー層を加工して得た導波路12の上に新たな層(例えば、上部クラッド層25)を積層すること(
図1の(f))、
(3)支持体20に積層されたポーリング処理された電気光学ポリマー層11の上に、他のポーリング処理された電気光学ポリマー層11を更に積層すること(
図4の(d)、(e)、(f))、
が挙げられる。
【0041】
(非線形光学用積層体)
本実施形態に係る非線形光学用積層体は、
支持体と、
上記支持体上に接して積層されている電気光学ポリマー層と、
を含む、非線形光学用積層体であって、
上記電気光学ポリマー層は、電気光学分子を含み、
上記電気光学ポリマー層における上記電気光学分子は、所定の方向に配向している。
【0042】
上記非線形光学用積層体は、所定の方向に配向している電気光学分子を含むため、2次非線形光学効果を有している。なお、2次非線形光学効果は、電磁波の強度の2乗に比例して大きくなる。そのため、導波路の断面積が小さく光閉じ込めの効果が大きい電気光学ポリマーの導波路等を用いることで、周波数変換の効率が向上する。2次非線形光学効果は、電磁波と電気光学分子とが相互作用する距離が長くなるほど大きくなる。そのため、導波路長が長い電気光学ポリマーの導波路を用いることで、効率よく周波数変換を行うことができる。また、電気光学ポリマー層を含む非線形光学素子については、層の厚さ(断面積)が大きいほど導入できるレーザー光のパワーを大きくすることができ、発生するテラヘルツ波のパワーが向上し得る。
【0043】
本実施形態における非線形光学用積層体は、支持体上に積層されている電気光学ポリマー層の上に、1又は複数の他の層が更に積層されていてもよい。上記他の層は、上記支持体又は上記電気光学ポリマー層と同一の成分から構成されていてもよいし、異なる成分から構成されていてもよい。
【0044】
電気光学ポリマー層の厚さは、非線形光学用積層体の用途に応じて適宜設定できるが、0.01μm以上50cm以下であってもよいし、0.05μm以上10cm以下であってもよいし、0.5μm以上1cm以下であってもよい。ここで、「電気光学ポリマー層の厚さ」とは、非線形光学用積層体における積層方向に対して垂直である当該電気光学ポリマー層の2つの面の間の最短距離を意味する。また、「電気光学ポリマー層の厚さ」は、電気光学ポリマー層における互いに向き合っている2つの主面の間の最短距離と把握することもできる。上記厚さは、触針式膜厚計測法、電子顕微鏡法、光学顕微鏡法、エリプソメトリー法、又はマイクロメーター等によって、任意の3~10箇所において測定した値の平均値として求められる。
【0045】
支持体の厚さは、非線形光学用積層体の用途に応じて適宜設定できるが、0.01μm以上1000cm以下であってもよいし、10μm以上1000cm以下であってもよいし、20μm以上100cm以下であってもよいし、30μm以上10cm以下であってもよいし、40μm以上1cm以下であってもよい。ここで、「支持体の厚さ」とは、非線形光学用積層体における積層方向に対して垂直である当該支持体の2つの面の間の最短距離を意味する。また、「支持体の厚さ」は、支持体における互いに向き合っている2つの主面の間の最短距離と把握することもできる。上記厚さは、触針式膜厚計測法、電子顕微鏡法、光学顕微鏡法、エリプソメトリー法、又はマイクロメーター等によって、任意の3~10箇所において測定した値の平均値として求められる。
【0046】
本実施形態において、支持体と電気光学ポリマー層との接着強度は、0.01N/mm2以上20N/mm2以下であることが好ましく、0.05N/mm2以上10N/mm2以下あることがより好ましく、0.1N/mm2以上5N/mm2以下であることが更に好ましい。上記接着強度は、例えば、プルオフ法によって測定が可能である。
【0047】
本実施形態に係る非線形光学用積層体は、非線形光学素子の製造に好適に用いられる。非線形光学素子としては、例えば、テラヘルツ波用導波路素子、高出力レーザー用非線形光学素子、光変調素子等が挙げられる。以下、各非線形光学素子について説明する。
【0048】
(テラヘルツ波用導波路素子)
本実施形態に係るテラヘルツ波用導波路素子は、上記非線形光学用積層体(支持体と電気光学ポリマー層とを含む)を含むテラヘルツ波用導波路素子であって、上記支持体は、シクロオレフィンポリマー又はシクロオレフィンコポリマーを含む。
シクロオレフィンポリマー及びシクロオレフィンコポリマーは、テラヘルツ波の吸収損失が小さい。そのため、本実施形態に係るテラヘルツ波用導波路素子は、効率よくテラヘルツ波を発生又は検出することが可能になる。
【0049】
従来の電気光学ポリマーを含む導波路の製造技術では、まず基板に下部ポーリング電極を形成し、上記下部ポーリング電極の上に、クラッド層、電気光学ポリマーを含むコア層、クラッド層をこの順に形成する。さらに上記クラッド層の上に、上部ポーリング電極を形成する。その後、2つのポーリング電極の間に電圧を加えることで、電気光学ポリマーに対するポーリング処理が行われていた(特許文献1~5)。ここで、従来技術では、電気光学ポリマーを用いた導波路素子において、電気光学ポリマーを含むコア層の周囲のクラッド層に使用する材料は、ポーリング処理におけるクラッド層での電圧降下を抑制する観点から電気光学ポリマーと比較して電気抵抗率が小さな材料でなければならなかった。クラッド層に使用する材料の電気抵抗率は典型的には108Ω・mである。また、この方法でポーリング処理を行うことで作製された導波路素子は、製造が完了した導波路素子においてもポーリング処理時に存在していた電気抵抗率が小さな当該クラッド層がそのまま残ることになる。
【0050】
しかし、電気抵抗率が小さな材料(又は導電性を有する材料)及び多くの一般的な材料は、その材料の分子振動、格子振動、導電性等に起因してテラヘルツ波をよく吸収することが知られている。すなわち、高効率なテラヘルツ波の発生素子、検出素子等のテラヘルツ波用導波路素子を実現するには、電気光学ポリマーを含むコア層から発生したテラヘルツ波、又は検出対象となる外部から導入されるテラヘルツ波が、吸収されて失われることが少ない、テラヘルツ波の吸収損失が小さな材料(以下、「テラヘルツ波低吸収損失材料」という場合がある。)をクラッド層の材料として用いる必要がある。
【0051】
しかし、例えば、クラッド層の電気抵抗率が電気光学ポリマーを含むコア層の電気抵抗率より大きい場合、所定の電圧を印加してもクラッド層の部分で大きな電圧降下が生じ、電気光学ポリマーを含むコア層へ加わる電圧が小さくなるため効率的なポーリング処理を行うことができない。また、クラッド層にテラヘルツ波低吸収損失材料を用いることは、テラヘルツ波用導波路素子の設計におけるシミュレーションによって示唆されているが(F.A.Vallejo,L.M.Hayden,“Simplified model for optical rectification of broadband terahertz pulses in lossy waveguides including a new generalized expression for the coherence length,”,Opt.Express,vol.21,24398-24412(2013)(非特許文献1))、そのような導波路素子の具体的な製造方法についてはこれまで明らかにされていなかった。
【0052】
本実施形態に係るテラヘルツ波用導波路素子は、本実施形態に係る非線形光学用積層体の製造方法によって、コア層である電気光学ポリマー層をポーリング処理し、その後、ポーリング処理したコア層を、テラヘルツ波低吸収損失材料を含むクラッド層(支持体)に積層することで製造される。そのため、ポーリング処理の条件によって制限されずに所定のテラヘルツ波用導波路素子を製造することが可能になる。
【0053】
シクロオレフィンポリマーは、シクロオレフィンのポリマーであり、例えば、ポリノルボルネン等が挙げられる。シクロオレフィンは、エチレン性二重結合を有する重合性のシクロオレフィンを含み、二環式オレフィン、単環式オレフィン、又は三環以上の多環式オレフィンを含む。代表的な二環式オレフィンとしては、例えば、置換基を有していてもよいノルボルネン(2-ノルボルネン)等が挙げられる。単環式オレフィンとしては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの環状C4-12シクロオレフィン類等が挙げられる。多環式オレフィンとしては、例えば、置換基を有していてもよいジシクロペンタジエン等が挙げられる。シクロオレフィンポリマーは、例えば、式(4)で表される繰り返し単位を有するポリマーであってもよい(式中、nは正の整数を示す。)。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
シクロオレフィンコポリマーとしては、例えば、シクロオレフィンと鎖状オレフィンとのコポリマー、シクロオレフィンポリマーとオレフィンポリマーとのコポリマー、第1のシクロオレフィンポリマーと第2のシクロオレフィンポリマーとのコポリマー等が挙げられる。鎖状オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどの鎖状C2-10オレフィン類等が挙げられる。コポリマーは、ランダムコポリマーであってもよいし、ブロックコポリマーであってもよいし、グラフトコポリマーであってもよい。シクロオレフィンコポリマーとしては、例えば、式(5)で表される繰り返し単位を有するコポリマーであってもよい(式中、x、yはそれぞれ正の整数を示す。)。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0054】
【0055】
また、シクロオレフィンポリマー及びシクロオレフィンコポリマーは、市販されているものを用いてもよい。シクロオレフィンポリマーの市販品としては、例えばZEONEX(登録商標)、ZEONOR(登録商標)、ARTON(登録商標)が挙げられる。シクロオレフィンコポリマーの市販品としては、例えば、TOPAS(登録商標)、APEL(登録商標)が挙げられる。
【0056】
図1は、非線形光学用積層体及び上記積層体を含む導波路の製造方法の例を示す模式図である。ここで、
図1の(b)等において、ポーリング処理された電気光学ポリマー層11中に描かれている複数の矢印は、上記電気光学ポリマー層11中の電気光学分子が配向していることを表している。以下、
図1を用いてテラヘルツ波用導波路素子の製造方法の一例について説明する。まず、基板1上に下部電極2を形成し、その上に、スピンコート法等によって電気光学ポリマー層10を形成する。さらに電気光学ポリマー層10の上に上部電極3を形成する。その後、電気光学ポリマー層のガラス転移温度付近において、下部電極2及び上部電極3の間に所定の電圧を加えることで電気光学ポリマー層10のポーリング処理を行う(
図1の(a)、(b))。ポーリング処理後、ウェットエッチング等によって上部電極3を除去し(
図1の(c)、
図2の(a))、反応性イオンエッチング装置等を用いた酸素プラズマ処理を行う(
図2の(b))。別途、反応性イオンエッチング装置等を用いた酸素プラズマ処理を行ったテラヘルツ波低吸収損失材料の支持体20を、アミノ基を有するシランカップリング剤等で処理する(
図2の(c)、(d))。その後、熱を加えながら両者の基板を圧着することで、電気光学ポリマー層11の転写を行い、基板1及び下部電極2を除去する(
図1の(d)、
図2の(e))。その後、ドライエッチング等によって、転写された電気光学ポリマー層11を導波路構造に加工する(
図1の(e))。さらに、テラヘルツ波低吸収損失材料を含む溶液を導波路構造12の上に塗布することで、テラヘルツ波の低吸収損失材料を含む上部クラッド層25を形成する(
図1の(f))。これらの過程によって、テラヘルツ波低吸収損失材料を含む上下のクラッド層を有するテラヘルツ波用導波路素子が製造される。
【0057】
図3は、本実施形態の製造方法で製造される非線形光学用積層体を含むテラヘルツ波用導波路素子の例を示す模式図である。上記模式図は導波路の断面を示す。
図3の(a)及び(b)に示す構造は、ポーリング処理された電気光学ポリマーを含む導波路13、14の上下に、テラヘルツ波低吸収損失材料を含むクラッド層20、25が接するように配置されている。
図3の(c)及び(d)に示す構造は、導波路13及び14を構成する電気光学ポリマー層の屈折率よりも大きな屈折率を有する材料(以下、「高屈折率材料」という場合がある。)の層6、22が、導波路13及び14の上下に接するように配置されている。更に上記高屈折率材料の層6、22の上下にテラヘルツ波低吸収損失材料を含むクラッド層21、25が配置されている。ここで、
図3の(c)及び(d)に示す構造を有する導波路素子は、クラッド層21及び高屈折率材料の層22を含む支持体23を用いて製造されている。
図3の(e)及び(f)に示す構造は、導波路13の上下に、テラヘルツ波低吸収損失材料を含むクラッド層20、25が接するように配置されている。更に上記クラッド層20、25の上下に金属層5、5が配置されている。ここで、
図3の(e)及び(f)に示す構造を有する導波路素子は、基板4、金属層5、及びクラッド層20を含む支持体26を用いて製造されている。
図1及び
図3で例示される構造は、電気光学ポリマー層を含む導波路12、13、14の周囲にテラヘルツ波低吸収損失材料を含むクラッド層20、21、25が配置されている。その結果、電気光学ポリマー層を含む導波路12、13、14から発生したテラヘルツ波が、クラッド層20、21、25に吸収されて失われることが少なくなるためテラヘルツ波を効率的に発生させることができる。また、検出対象となる外部から導入されるテラヘルツ波が、クラッド層20、21、25に吸収されて失われることが少なくなるためテラヘルツ波を効率的に検出することができる。
【0058】
上記導波路の形状は、特に制限されないが、例えば、スラブ型、チャネル型、リッジ型、リブ型等が挙げられる。また、チャネル型の導波路等を作製するには、ドライエッチング、反応性イオンエッチング、フォトリソグラフィー法、インプリンティング法、フォトブリーチング法等を用いることができる。
【0059】
(高出力レーザー用非線形光学素子)
本実施形態に係る高出力レーザー用非線形光学素子は、本実施形態に係る非線形光学用積層体(支持体と電気光学ポリマー層とを含む)を含む高出力レーザー用非線形光学素子であって、
上記電気光学ポリマー層の厚さは、5μm以上50cm以下である。
本実施形態に係る非線形光学素子は、上記電気光学ポリマー層の厚さが5μm以上50cm以下であることによって、導入するレーザー光の出力(パワー)を大きくでき、発生するテラヘルツ波のパワーが向上する。
【0060】
従来技術では、電気光学ポリマーの膜を含む非線形光学素子を製造する際に、大きな膜厚の電気光学ポリマーの膜をポーリング処理するためには、高電圧を印加する必要があった。しかし、汎用的な高電圧電源の電圧には限界があるため、ポーリング処理できる電気光学ポリマーの膜の厚さには限界があるという課題があった。また、高電圧の印加による大きな膜厚の電気光学ポリマーの膜のポーリング処理では、ポーリング処理用の電極と電気光学ポリマーの膜との界面における電荷注入障壁に起因して大きな電流が流れる等の理由によって絶縁破壊が生じていた。この絶縁破壊によって電気光学ポリマーの膜が破壊されるため、ポーリング処理できる電気光学ポリマーの膜の厚さには限界があるという課題があった。
【0061】
本実施形態に係る高出力レーザー用非線形光学素子は、本実施形態に係る非線形光学用積層体の製造方法によって製造できる。具体的には、まず、
第1の電気光学ポリマー層を、ポーリング処理する工程と、
ポーリング処理された第1の電気光学ポリマー層を支持体に積層する工程と、を含む方法によって、非線形光学用積層体を製造する。
次に、第1の電気光学ポリマー層と同一の組成を有する第2の電気光学ポリマー層をポーリング処理し、その後、ポーリング処理された第2の電気光学ポリマー層を、当該非線形光学用積層体における第1の電気光学ポリマー層に積層する。
さらに必要に応じて、第1の電気光学ポリマー層と同一の組成を有する第3の電気光学ポリマー層をポーリング処理し、その後、ポーリング処理された第3の電気光学ポリマー層を、当該非線形光学用積層体における第2の電気光学ポリマー層に積層してもよい。このようにポーリング処理された電気光学ポリマー層を逐次積層することで、ポーリング処理の条件によって制限されずに所定の厚さの電気光学ポリマー層を含む高出力レーザー用非線形光学素子を製造することが可能になる。本実施形態において「高出力レーザー」は、ピーク出力が10×10-3W以上1×1014W以下であるレーザーを意味する。上記ピーク出力は、20×10-3W以上1×1012W以下であることが好ましく、50×10-3W以上5×1011W以下であることがより好ましい。
【0062】
上記電気光学ポリマー層の厚さは、5μm以上50cm以下であり、10μm以上10cm以下であることが好ましく、20μm以上1cm以下であることがより好ましい。
【0063】
図4は、高出力レーザー用非線形光学用積層体の製造方法の例を示す模式図である。上記積層の過程を複数回繰り返すことで(
図4の(d)、(e)、(f))、大きな膜厚の電気光学ポリマー層を有する非線形光学用積層体が製造される。
図4で示される非線形光学用積層体は、任意の大きな厚さを有する電気光学ポリマー層を含むため、高出力レーザー用非線形光学素子の製造に好適に用いられる。電気光学ポリマー層の厚さが大きくなるほど電気光学ポリマー層に導入できるレーザー光のパワーを大きくすることができる。そのため、非線形光学素子において発生するテラヘルツ波のパワーが向上する。
【0064】
(光変調素子)
本実施形態に係る光変調素子は、本実施形態に係る非線形光学用積層体(支持体と電気光学ポリマー層とを含む)を含む光変調素子であって、
上記支持体は、ガラス、SiO2、ゾルゲルガラス、フッ素樹脂、ポリカーボネート、(メタ)アクリレートポリマー、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタラート、紫外線硬化樹脂、シリコン、ガリウム砒素、インジウムリン、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミ、窒化シリコン、窒化アルミ、ITO、IZO、及びIGZO等からなる群から選択される1以上を含む。
本実施形態に係る光変調素子は、上記構成を備えることによって、従来よりも小さい動作電圧及び小さい消費電力によって使用できる。
【0065】
従来、非線形光学素子を光変調素子として使用する場合において、電気光学ポリマーを含むコア層の周囲のクラッド層に使用する材料は、ポーリング処理におけるクラッド層での電圧降下を抑制する観点から電気抵抗率が小さな材料でなければならなかった。そのため、クラッド層に利用できる材料に制限があり、低電圧での位相変調が可能となる屈折率の小さな材料、又は任意の材料をクラッド層の材料として使用することができないという課題があった。
【0066】
本実施形態に係る光変調素子は、本実施形態に係る非線形光学用積層体の製造方法によって、コア層である電気光学ポリマー層をポーリング処理し、その後、ポーリング処理したコア層を、任意の材料を含む支持体(クラッド層)に積層することで製造される。そのため、ポーリング処理の条件によって制限されずに所定の光変調素子を製造することが可能になる。
【0067】
図5は、本実施形態に係る製造方法で製造される非線形光学用積層体を含む光変調素子の例を示す模式図である。
図5に示す構造は、電気光学ポリマー層を含む導波路13の周囲に低屈折率材料を含むクラッド層20、25が配置されている。導波路13の屈折率に対してクラッド層20、25の屈折率が小さいほど、導波路におけるモードのサイズが小さくなることが知られている。また、モードのサイズが小さいほど、上下に配置した光変調用の電極7、7とモードの相互作用が小さくなり、光の損失が小さくなる。そのため、光変調用の電極7、7の間隔を小さくすることができ、動作電圧を小さくすることができる。すなわち、
図5に示す光変調素子は、光変調器の動作電圧と消費電力を小さくする効果がある。
【0068】
上記支持体に用いられる材料は、電気光学ポリマー層と共に導波路を形成する材料であれば特に制限されない。上記支持体に用いられる材料は、例えば、ガラス(例えば、BK7等)、SiO2(例えば、石英ガラス)、ゾルゲルガラス(例えば、MAPTMS等)、フッ素樹脂(例えば、PTFE、CYTOP、テフロンAF等)、ポリカーボネート(例えば、poly[Bisphenol A carbonate-co-4,4’-(3,3,5-trimethylcyclo-hexylidene)diphenol carbonate]等)、(メタ)アクリレートポリマー(例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリジシクロペンタニルメタクリレート(poly DCPMA)、ポリアダマンチルメタクリレート(poly AdMA)、poly(DCPMA-co-MMA)、poly(AdMA-co-MMA)等)、シクロオレフィンポリマー(例えば、ZEONEX(登録商標)、ZEONOR(登録商標)、ARTON(登録商標)等)、シクロオレフィンコポリマー(例えば、TOPAS(登録商標)、APEL(登録商標)等)、Tsurupica(登録商標)、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン(TPX(三井化学、登録商標))、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンテレフタラート、紫外線硬化樹脂(例えば、SU8、マスターボンド社製UV15、UV15LV、ノーランド社製NOA61、NOA65、NOA71、NOA73等)、他のEOポリマー(例えばpoly(Disperse Red 1 acrylate)、poly(Disperse Red 1 methacrylate)、poly(Disperse Red 13 acrylate)、poly(Disperse Red 13 methacrylate)、poly(Disperse Orange 3 acrylamide)、poly(Disperse Orange 3 methacrylamide)、poly(Disperse Yellow 7 acrylate)、poly(Disperse Yellow 7 methacrylate))、シリコン、ガリウム砒素、インジウムリン、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミ、窒化シリコン、窒化アルミ、ITO、IZO、及びIGZO等からなる群から選択される1以上を含む。
【0069】
上記電極としては、特に制限はないが、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、金、銀、クロム、アルミニウム、チタン、酸化インジウム亜鉛(IZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0070】
(フリースタンディング電気光学ポリマー積層体)
本実施形態に係るフリースタンディング電気光学ポリマー積層体では、本実施形態に係る非線形光学用積層体(支持体と電気光学ポリマー層とを含む)を含むフリースタンディング電気光学ポリマー積層体であって、
上記支持体は、上記電気光学ポリマー層と同一の組成又は異なる組成の電気光学ポリマーである。
本実施形態に係るフリースタンディング電気光学ポリマー積層体は、例えば、テラヘルツ波発生デバイス、テラヘルツ波検出デバイス、光変調素子等の用途に用いることができる。
【0071】
本実施形態において、「フリースタンディング電気光学ポリマー積層体」とは、複数の上記電気光学ポリマー層からなる積層体であって、支持体が電気光学ポリマーである積層体を意味する。他の側面において、上記フリースタンディング電気光学ポリマー積層体における上記支持体は、ポーリング処理された電気光学ポリマー層であると把握することもできる。
【0072】
図12は、フリースタンディング電気光学ポリマー積層体の製造方法の例を示す模式図である。具体的には、
第1の電気光学ポリマー層を、ポーリング処理する工程と(
図12の(a))、
第1の電気光学ポリマー層と同一の組成又は異なる組成を有する第2の電気光学ポリマー層を、ポーリング処理する工程と、
ポーリング処理された第2の電気光学ポリマー層を、ポーリング処理された第1の電気光学ポリマー層に積層する工程と(
図12の(b)及び(c))、を含む方法によって、フリースタンディング電気光学ポリマー積層体を製造する。
さらに必要に応じて、第1の電気光学ポリマー層と同一の組成又は異なる組成を有する第3の電気光学ポリマー層をポーリング処理し、その後、ポーリング処理された第3の電気光学ポリマー層を、当該フリースタンディング電気光学ポリマー積層体における第2の電気光学ポリマー層に積層してもよい(
図12の(d)及び(e))。さらに、当該フリースタンディング電気光学ポリマー積層体に新たな別のフリースタンディング電気光学ポリマー積層体を積層してもよい。このようにポーリング処理された電気光学ポリマー層を逐次積層することで、ポーリング処理の条件によって制限されずに所定の厚さのフリースタンディング電気光学ポリマー積層体を製造することが可能になる((
図12の(f))。
【0073】
上記フリースタンディング電気光学ポリマー積層体の厚さは、フリースタンディング電気光学ポリマー積層体の用途に応じて適宜設定できる。上記フリースタンディング電気光学ポリマー積層体の厚さは、0.02μm以上50cm以下であってもよいし、0.1μm以上40cm以下であってもよいし、1μm以上10cm以下であってもよいし、10μm以上1cm以下であってもよい。
【実施例0074】
以下、実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0075】
実施例1(テラヘルツ波用導波路素子に用いる非線形光学用積層体の作製)
スピンコート法によって、以下に示す化学式(1)~(3)の繰返し単位(式中、p、q、rはそれぞれ正の整数を示す。)を含むサイドチェーン型の電気光学ポリマー(ランダムコポリマー)の層(以下、「電気光学ポリマー層」という場合がある。)を酸化インジウムスズ電極(ITO電極)上に形成した。触針式膜厚計測法で測定したところ電気光学ポリマー層の厚さは2.4~2.6μmであった。ここで当該厚さは、上記電気光学ポリマー層の主面上の3箇所において測定した値の平均値として求めた。当該電気光学ポリマー層の上にスパッタリング法によって酸化インジウム亜鉛電極(IZO電極)を形成して、ポーリング処理前の試料を得た。その後、電気光学ポリマーのガラス転移点(160℃)に近い150℃まで当該試料を加熱しながらITO電極とIZO電極との間に110~115V/μmの電圧を加えることで電気光学ポリマー層のポーリング処理を行い、電圧を維持したまま室温まで冷却した。透過型エリプソメトリー法(T.Yamada,A.Otomo,“Transmission ellipsometric method without an aperture for simple and reliable evaluation of electro-optic properties”,Opt.Express,vol.21,29240-29248(2013))で測定した電気光学ポリマー層の電気光学定数(r33)は、波長1308nmで56~66pm/V、波長1550nmで44~49pm/Vであった。ポーリング処理を行った後、IZO電極をウエットエッチング法によって除去して、反応性イオンエッチング装置(サムコ社製、RIE-10NR)を用いて電気光学ポリマー層の表面を酸素プラズマ処理した(得られた試料について、以後「試料A」という場合がある。)。また、反応性イオンエッチング装置を用いて酸素プラズマ処理したシクロオレフィンコポリマー(TOPAS(登録商標)5013)の支持体を、アミノ基を有するシランカップリング剤(信越化学工業社製、KBP-90)で処理した(得られた試料について、以後「試料B」という場合がある。)。同様に、反応性イオンエッチング装置を用いて酸素プラズマ処理したシクロオレフィンポリマー(ZEONEX(登録商標)480R)の支持体を、アミノ基を有する上記シランカップリング剤で処理した(得られた試料について、以後「試料C」という場合がある。)。表面の処理を行った面が互いに向き合うように試料Aと、試料B又は試料Cとを100℃で圧着することで、電気光学ポリマー層をシクロオレフィンコポリマー又はシクロオレフィンポリマーの支持体上へ転写して積層した。ここで、試料Aと試料Bを圧着することで得られた非線形光学用積層体における、電気光学ポリマー層と支持体との接着強度は、プルオフ法で測定したところ0.75N/mm2であった。
【0076】
【0077】
図6に、支持体として用いたシクロオレフィンコポリマー及びシクロオレフィンポリマーのテラヘルツ波の帯域での吸収スペクトルを示した(
図6の(a)、(b))。0.1~10THzにおけるシクロオレフィンコポリマー及びシクロオレフィンポリマーの吸収係数は5cm
-1以下であった。また、比較のため上記シクロオレフィンコポリマー又はシクロオレフィンポリマーと同様に透明な樹脂として一般的なポリマーであるポリメタクリル酸メチル(PMMA)のテラヘルツ領域での吸収スペクトルを示した(
図6の(c))。支持体として用いたシクロオレフィンコポリマー及びシクロオレフィンポリマーは、テラヘルツ波の帯域での吸収が、一般的なポリマーより小さく、テラヘルツ波用導波路素子のクラッド層として適していることが分かった。
【0078】
上述の方法で得られた非線形光学用積層体は、その後、フォトリソグラフィーによって電気光学ポリマー層上にマスクを形成し、反応性イオンエッチング装置を用いたドライエッチング法によって、電気光学ポリマー層を導波路構造に加工した(
図7及び
図8)。
図7はシクロオレフィンコポリマーの支持体上のチャネル型の電気光学ポリマー導波路構造(上面画像)である。
図8はシクロオレフィンポリマーの支持体上のリッジ型の電気光学ポリマー導波路構造(断面画像)である。
【0079】
実施例2(高出力レーザー用非線形光学素子に用いる非線形光学用積層体の作製)
反応性イオンエッチング装置を用いて酸素プラズマ処理した熱酸化膜を有するシリコンの支持体を、アミノ基を有するシランカップリング剤で処理した(得られた試料について、以後「試料D」という場合がある。)。表面の処理を行った面が互いに向き合うように上記試料Aと試料Dとを100℃で圧着することで、電気光学ポリマー層をシリコンの支持体上へ転写して積層した。シリコンの支持体上へ転写された電気光学ポリマー層の表面を反応性イオンエッチング装置を用いて酸素プラズマ処理し、アミノ基を有するシランカップリング剤で処理した(得られた試料について、以後「試料E」という場合がある。)。表面の処理を行った面が互いに向き合うように別の新たな試料Aと試料Eとを100℃で圧着することで、シリコンの支持体上にある電気光学ポリマー層へさらに電気光学ポリマー層を転写して積層した。この過程を繰り返すことで、電気光学ポリマー層が3層に積層された非線形光学用積層体を作製した。触針式膜厚計測法で測定したところ、当該積層された電気光学ポリマー層の厚さは、7.4μmであった(
図9)。
【0080】
(プルオフ法による接着強度の測定方法)
2液混合のエポキシ系接着剤を用いて直径7mmの円柱と支持体上に積層した電気光学ポリマー層とを接着した。接着剤の硬化後、精密万能試験機(島津製作所社製、オートグラフ)を用いて1mm/minの速度で円柱を引き上げ、電気光学ポリマー層と支持体とが剥離する力(接着強度)を計測した。
【0081】
電気光学ポリマー層と支持体の間の接着強度が大きいことで、非線形光学素子をダイシング加工する際に支持体から電気光学ポリマー層が剥離することが防止される等の効果がある。
【0082】
実施例3(テラヘルツ波用導波路素子の作製)
実施例1の方法と同様の方法で、上記試料A及び上記試料C(厚さ1mm)を準備した。表面の処理を行った面が互いに向き合うように上記試料Aと上記試料Cとを100℃で圧着することで、電気光学ポリマー層をシクロオレフィンポリマーの支持体上へ転写して積層した。得られた試料を、試料Aの作製と同様に反応性イオンエッチング装置を用いて電気光学ポリマー層の表面を酸素プラズマ処理した(以降、「試料F」という場合がある)。表面の処理を行った面が互いに向き合うように上記試料Fと別の新たな試料C(厚さ1mm)とを100℃で圧着することで、両者を接合した。これにより、
図3の(b)に相当する積層体を作製した。積層体の断面の走査電子顕微鏡画像を
図10に示す。作製した積層体における電気光学ポリマー層の厚さは4.5μmであり、波長1550nmでの電気光学定数(r
33)は45pm/Vであった。20mWのフェムト秒パルスレーザー(中心波長:1.56μm、パルス幅:100fs以下、繰り返し周波数:50MHz)を、互いに直交するように配置した2つのシリンドリカルレンズ(焦点距離f=100mmとf=12mm)を用いて1.0mmのデバイス長の積層体に照射し、テラヘルツ波を発生させた。テラヘルツ波は、波長780nmのプローブ光と厚さ1mmのテルル化亜鉛を用いた電気光学サンプリング法により検出した。すなわち、プローブ光は、テルル化亜鉛結晶中でテラヘルツ波と重ね合わされ、テラヘルツ電場により誘起されたポッケルス効果により、上記プローブ光の偏光状態が変化した。偏光状態が変化した上記プローブ光は、λ/4板と偏光プリズムを通過後、縦偏光及び横偏光の2種類の偏光成分に分離した。分離した各偏光成分は、バランス検出器の2つの検出器によりそれぞれ検出された。バランス光検出器における2つの検出器に入力されたプローブ光の合計パワーは、60μWであった。電気光学サンプリング法により得られたテラヘルツ波の時間波形を
図11に示す。プローブ光の合計光強度に対するプローブ光強度の変化量の割合(ΔI/I
0)は、テラヘルツ電場に比例する。
図11の結果から上記積層体からのテラヘルツ波発生が確認された。
【0083】
実施例4(フリースタンディング電気光学ポリマー積層体の作製)
支持体が、ポーリング処理された電気光学ポリマー層である場合の電気光学ポリマー積層体(フリースタンディング電気光学ポリマー積層体)を作製した。
図12に支持体が、ポーリング処理された電気光学ポリマー層である場合の電気光学ポリマー積層体の作製プロセスの例を示す。本実施例4では、まず実施例1と同様の方法によって、ITO電極上に電気光学ポリマー層を形成し、当該電気光学ポリマー層上にIZO電極を形成し、ポーリング処理を行った後、IZO電極を除去した。得られたポーリング処理された電気光学ポリマー層を表面に有する試料から、電気光学ポリマー層のみを分離することで、ポーリング処理された第1の電気光学ポリマー層(厚さ2.8μm)とポーリング処理された第2の電気光学ポリマー層(厚さ3.1μm)とを準備した。次に実施例1と同様の方法によって、上記第1の電気光学ポリマー層及び上記第2の電気光学ポリマー層それぞれの表面に酸素プラズマ処理を施した。その後、表面処理を行った面が互いに向き合うように上記第1の電気光学ポリマー層と上記第2の電気光学ポリマー層とを100℃で圧着することで、積層した。以上の工程によって、フリースタンディング電気光学ポリマー積層体(以下、「積層体」という場合がある。)を作製した。
【0084】
図13に、(a)ポーリング処理された第1の電気光学ポリマー層(2.8μm)(支持体)と(b)積層する前のポーリング処理された第2の電気光学ポリマー層(3.1μm)と(c)上記積層体との吸光度スペクトルを示す。これらの吸光度スペクトルは、電気光学ポリマー層又は上記積層体が、ガラス基板上に空気層を介して静電的に吸着された状態で測定された。ランベルト・ベール(Lambert-Beer)の法則に従えば、上記積層体の吸光度スペクトルは、ポーリング処理された第1の電気光学ポリマー層とポーリング処理された第2の電気光学ポリマー層との吸光度スペクトルの和になる。
図13の(c)に示されているように上記積層体の吸光度スペクトルは、ポーリング処理された第1の電気光学ポリマー層とポーリング処理された第2の電気光学ポリマー層との吸光度スペクトルの和にほぼ等しくなった。
図14に(a)ポーリング処理された第1の電気光学ポリマー層(2.8μm)(支持体)と(b)積層する前のポーリング処理された第2の電気光学ポリマー層(3.1μm)と(c)上記積層体(5.9μm)との薄膜干渉スペクトル(薄膜干渉による干渉スペクトル)を示す。1000nm~1600nmの範囲の波長帯域は、電気光学ポリマー層による吸収が殆どない波長帯域である。当該波長帯域において、ポーリング処理された第1の電気光学ポリマー層、積層する前のポーリング処理された第2の電気光学ポリマー層及び上記積層体それぞれの薄膜干渉スペクトルが観測された。薄膜干渉スペクトルが生じることは、光学的にみてある厚さをもつ均質かつ独立した薄膜(フリースタンディング薄膜)として存在していることを意味する。
【0085】
厚さdで屈折率nの均質な薄膜があるとき、その薄膜の上面と下面とでそれぞれ反射と透過が起きる。下面側から波長λの光が入射し、最初に薄膜の下面で反射した光を反射光1とする。下面側から光が入射し、薄膜の下面を透過し、薄膜の上面で反射し、薄膜の下面を透過した光を反射光2とする。反射光1と反射光2とが強めあう条件は、2nd=mλとなる。また、反射光1と反射光2とが弱めあう条件は、2nd=(m±1/2)λとなる。mは、自然数である。波長λを変化させて測定する吸光度スペクトルにおいて、反射光が強めあう条件ではスペクトルの山として観測され、弱めあう条件ではスペクトルの谷として観測される。このような吸光度スペクトルは、薄膜干渉スペクトルと呼ばれる。
薄膜干渉スペクトルでは干渉スペクトルの山と谷の波長、山と山の波長又は谷と谷の波長、及び薄膜の屈折率nから薄膜の厚さdを算出することができる。薄膜干渉スペクトルにおいて隣接する山と谷との波長(それぞれ、λ1、λ2)と厚さdと屈折率nとの関係は、d=|1/(4n(1/λ2-1/λ1))|である。用いた電気光学ポリマー層の屈折率は、波長1550nmで1.6である。薄膜干渉スペクトルにおいて1550nm付近の隣接する山と谷の波長(それぞれ、λ1、λ2)を使って、第1の電気光学ポリマー層、第2の電気光学ポリマー層、積層体の層厚(膜厚)を算出した。屈折率は、隣接する山と谷との波長で1.6であるとした。第1の電気光学ポリマー層の薄膜干渉スペクトルにおける山と谷との波長はλ1=1390nm、λ2=1506nmであり、算出した厚さはd=2.82μmとなった。第2の電気光学ポリマー層の薄膜干渉スペクトルにおける山と谷との波長はλ1=1502nm、λ2=1397nmであり、算出した厚さはd=3.12μmとなった。積層体の薄膜干渉スペクトルにおける山と谷との波長はλ1=1513nm、λ2=1455nmであり、算出した厚さはd=5.93μmとなった。このようにそれぞれの層厚が一致することが確認された。上記積層体の層厚がポーリング処理した第1の電気光学ポリマー層とポーリング処理された第2の電気光学ポリマー層との層厚の和に一致しており、光学的に見て、厚さが一定で均質かつ独立した積層体(フリースタンディング電気光学ポリマー積層体)の形成が確認された。
【0086】
実施例5(紫外線硬化樹脂を支持体とした光変調素子の作製)
表面に電気光学ポリマー層を有する試料を、実施例1の試料Aと同様の方法で準備した(得られた試料について、以後「試料G」という場合がある。)。試料Gの作製に用いた電気光学ポリマーのガラス転移温度は178℃であり、ポーリング処理の温度は165℃であり、ポーリング時の電界は120V/μmであった。測定した電気光学ポリマー層の電気光学定数(r33)は、波長1308nmで60pm/Vであり、波長1550nmで42pm/Vであった。また、厚さ2μmの熱酸化膜付きシリコン基板にスパッタリング法によって光変調器のIZO下部電極を形成した。当該IZO下部電極の上に、スピンコート法により支持体となる紫外線硬化樹脂(NTT-AT社製、FE4048)を塗布し、365nmのLED光を照射したのちに、100℃で2時間加熱した。紫外線硬化樹脂の支持体の表面を反応性イオンエッチング装置を用いて酸素プラズマ処理し、アミノ基を有するシランカップリング剤で処理した(得られた試料について、以後「試料H」という場合がある。)。表面の処理を行った面が互いに向き合うように試料Gと、試料Hとを100℃で圧着することで、電気光学ポリマー層を紫外線硬化樹脂の支持体上へ転写して積層した。
【0087】
その後、フォトリソグラフィーによって電気光学ポリマー層上にマスクを形成し、反応性イオンエッチング装置を用いたドライエッチング法によって、電気光学ポリマー層を矩形構造(1.62μm×1.29μm)に加工した。光導波路は、マッハツェンダ(MZ)型光変調器構造を形成している。加工した上記電気光学ポリマー層上に、光導波路の上部クラッド層としてスピンコート法により紫外線硬化樹脂(NTT-AT社製、FE4048)を塗布し、365nmのLED光を照射したのちに、80℃で2時間加熱した。上部クラッド層の上にスパッタリング法によって光変調器のIZO上部電極を形成した。以上の手順によって、
図5に相当する構造の光変調素子を作製した。
図15は、作製した光変調素子の光入射部の断面画像である。
図15において紫外線硬化樹脂の支持体上にチャンネル型の電気光学ポリマー導波路構造が確認できる。
図16は光変調の時間波形である。
図16においてチャンネル1が印加電圧、チャンネル3がMZ光変調素子の出力光強度である。三角波形の電圧変化に対して典型的なMZ光変調素子の光出力波形を示し、π位相変調電圧(最小値-最大値間の電圧)は、8.4Vであった。
【0088】
以上のように本発明の実施形態及び実施例について説明を行なったが、上述の各実施形態及び各実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0089】
今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態及び実施例ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1、4…基板、2…下部電極、3…上部電極、5…金属層、6…高屈折率材料の層、7…光変調用電極、10…電気光学ポリマー層、11…ポーリング処理された電気光学ポリマー層、12、13…ポーリング処理された電気光学ポリマー層を加工して得た導波路、14…ポーリング処理された電気光学ポリマー層を加工して得たスラブ導波路、20、23、26…支持体、21…テラヘルツ波低吸収損失材料の層、22…高屈折率材料の層、25…上部クラッド層、50…非線形光学用積層体。