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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006568
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】開口開閉構造ならびに板状蓋設置方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/14 20060101AFI20230111BHJP
   F16J 15/06 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
E02D29/14 B
E02D29/14 C
F16J15/06 E
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021109241
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000252207
【氏名又は名称】六菱ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】川崎 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】本明 達也
(72)【発明者】
【氏名】蕪木 浩一
(72)【発明者】
【氏名】上田 奏一朗
【テーマコード(参考)】
2D147
3J040
【Fターム(参考)】
2D147BB06
2D147BB11
3J040AA01
3J040AA17
3J040BA03
3J040EA02
3J040EA03
3J040EA16
3J040HA03
3J040HA21
(57)【要約】
【課題】コンクリート枠の上面に板状蓋を簡易に着脱可能としたうえで、比較的低コストで十分な止水性能を発揮できるようにする。
【解決手段】上開口1の内周には、コンクリート枠3が設けられている。板状蓋2は上開口1を閉塞するようにコンクリート枠3の上面に自重のみにより載せられている。コンクリート枠3の上面には、防水性を有する膜4がコーティングされている。板状蓋2の下面においてコンクリート枠3の上面に対応する領域には、膜4に接触させられるリップ6bを有するシールリング6が取り付けられている。板状蓋2の下面には、コンクリート枠3の上面に当接されることにより板状蓋2を支えるとともに当該板状蓋2と前記上面と板状蓋2との対向間隔を一定に保つための支持部(内枠7および外枠8)が設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間の上開口を板状蓋で開放または閉塞可能とする開口開閉構造であって、
前記上開口の内周には、コンクリート枠が設けられており、
前記板状蓋は、前記上開口を閉塞するように前記コンクリート枠の上面に自重のみにより載せられており、
前記コンクリート枠の上面には、防水性を有する膜がコーティングされており、
前記板状蓋の下面において前記コンクリート枠の上面に対応する領域には、前記膜に接触させられるリップを有するシールリングが取り付けられており、
前記板状蓋の下面には、前記コンクリート枠の上面に当接されることにより前記板状蓋を支えるとともに当該板状蓋と前記上面との対向間隔を一定に保つための支持部が設けられていることを特徴とする開口開閉構造。
【請求項2】
請求項1に記載の開口開閉構造において、
前記コンクリート枠の上面には、前記膜のコーティング前に当該膜の付着強度を高めるための下処理が施されていることを特徴とする開口開閉構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の開口開閉構造において、
前記板状蓋の外周の円周方向の複数ヶ所には、当該板状蓋で前記上開口を閉塞した状態で前記コンクリート枠に対して前記板状蓋を径方向に位置決めするための位置決め部材が設けられていることを特徴とする開口開閉構造。
【請求項4】
請求項3に記載の開口開閉構造において、
前記コンクリート枠の上面は、それよりも外径側領域の面よりも隆起されており、
前記位置決め部材は、前記板状蓋で前記上開口を閉塞した状態で前記外径側領域の面に対向するとともに前記コンクリート枠の外周面に対向する位置に配置されていることを特徴とする開口開閉構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の開口開閉構造において、
前記板状蓋の下面において前記コンクリート枠の上面に対応する領域には、内枠および外枠が径方向に離隔するように取り付けられており、
前記シールリングは、前記内枠と前記外枠との離隔空間(環状溝)内に嵌合される胴部を有し、この胴部の下端における内周部に前記リップが径方向外向きでかつ斜め下向きに突き出すように連接されていることを特徴とする開口開閉構造。
【請求項6】
請求項5に記載の開口開閉構造において、
前記シールリングの胴部は、前記環状溝内に上下方向に変位可能に嵌合されており、
前記胴部の外周面には、前記膜に前記リップを圧接させるための圧力が付与されていることを特徴とする開口開閉構造。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項に記載の開口開閉構造において、
前記シールリングは、前記板状蓋の下面において前記コンクリート枠の上面に対応する領域に当接された状態で締結部材により固定される断面矩形状の胴部を有し、
前記胴部の外周部に前記リップが径方向外向きでかつ斜め下向きに突き出すように連接されていることを特徴とする開口開閉構造。
【請求項8】
請求項5または6に記載の開口開閉構造において、
前記内枠および前記外枠の少なくともいずれか一方は、その下端面が前記コンクリート枠の上面に当接されることにより前記支持部として機能することを特徴とする開口開閉構造。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1項に記載の開口開閉構造において、
前記支持部は、前記板状蓋に板厚方向に貫通形成されるねじ孔に、頭部を下にした状態で螺合される高さ調整ボルトとされ、
前記高さ調整ボルトの頭部が、前記コンクリート枠の上面の膜に当接されることを特徴とする開口開閉構造。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の開口開閉構造において、
前記板状蓋は、平面視が矩形に形成されており、
この板状蓋の対向する2つの辺には、当該板状蓋を前記上開口の閉塞位置または開放位置にスライドするときの操作力を軽減するためのキャスターが前記コンクリート枠よりも外径側領域にはみ出した状態で取り付けられていることを特徴とする開口開閉構造。
【請求項11】
請求項10に記載の開口開閉構造において、
前記キャスターには、そのローラを上下方向に昇降させるための昇降機構が設けられていることを特徴とする開口開閉構造。
【請求項12】
空間の上開口の内周縁にコンクリート枠が設けられていて、前記コンクリート枠の上面に前記上開口を閉塞するように前記コンクリート枠の外周形状と同じ外周形状の板状蓋を自重のみにより載せる板状蓋設置方法であって、
前記コンクリート枠の上面に少なくとも防水性を有する膜をコーティングする工程と、
前記板状蓋の下面において前記コンクリート枠の上面に対応する領域に、前記膜に接触させられるリップを有するシールリングを取り付ける工程と、
前記板状蓋の下面に、前記コンクリート枠の上面に当接されることにより前記板状蓋を支えるとともに当該板状蓋と前記上面との対向間隔を一定に保つための支持部を取り付ける工程と、
前記板状蓋の支持部を前記コンクリート枠の上面の膜の上に載せることにより、前記板状蓋で前記上開口を閉塞するとともに前記シールリングのリップを前記膜に接触させる工程と、
を含むことを特徴とする板状蓋設置方法。
【請求項13】
請求項12に記載の板状蓋設置方法において、
前記膜をコーティングする工程の前に、前記コンクリート枠の上面に前記膜の付着強度を高めるための下処理を施す工程をさらに含むことを特徴とする板状蓋設置方法。
【請求項14】
請求項11または12に記載の板状蓋設置方法において、
前記シールリングは、前記板状蓋の下面において前記コンクリート枠の上面に対応する領域に径方向に離隔するように取り付けられる内枠と外枠との離隔空間(環状溝)に嵌合される胴部を有し、
この胴部の内周における下部に前記リップが径方向外向きでかつ斜め下向きに突き出すように連接されていることを特徴とする板状蓋設置方法。
【請求項15】
請求項11または12に記載の板状蓋設置方法において、
前記シールリングは、前記板状蓋の下面において前記コンクリート枠の上面に対応する領域に当接された状態で締結部材により固定される断面矩形状の胴部を有し、
この胴部の外周部に前記リップが径方向外向きでかつ斜め下向きに突き出すように連接されていることを特徴とする板状蓋設置方法。
【請求項16】
請求項12から15のいずれか1項に記載の板状蓋設置方法において、
前記板状蓋で前記上開口を閉塞した後、当該板状蓋の外周の円周方向の複数ヶ所に、前記コンクリート枠に対して前記板状蓋を径方向に位置決めするための位置決め部材を取り付ける工程を、さらに含むことを特徴とする板状蓋設置方法。
【請求項17】
請求項16に記載の板状蓋設置方法において、
前記コンクリート枠の上面は、それよりも外径側領域の面よりも隆起されており、
前記位置決め部材は、前記板状蓋で前記上開口を閉塞した状態で前記外径側領域の面に対向するとともに前記コンクリート枠の外周面に対向する位置に配置されることを特徴とする板状蓋設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば地下構造物または筐体の空間の上開口を板状蓋で開放または閉塞可能とする開口開閉構造、ならびに前記上開口に前記板状蓋を覆い被せるように設置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、「地下施設の入口1を蓋体2で開閉する構造において、入口側縁枠Aに蓋体側縁枠Bの止水ゴム12を蓋体2の自重により密に嵌合させることにより密閉して浸水を防止する」ということが記載されている。
【0003】
また、例えば特許文献2には、「船舶9の船倉7の上部開口10をスライド式ハッチカバー11で開閉する構造において、上部開口10にスライド式ハッチカバー11を配置し、スライド式ハッチカバー11上に配置されるレール19に、スライド式ハッチカバー11のハッチロ13を覆う船上シュート22および蓋部材23を走行自在に設ける」ということが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、「レール19とスライド式ハッチカバー11との間に第2シール81が介装されており、レール19に支持される第1シール80が一端部から他端部に向かうにつれて斜め下方に傾斜されているとともに、この第1シール80の他端部がスライド式ハッチカバー11の上面11aに重ねられ、レール19に第1シール80とともに支持される止水部材88のブラシ毛90が第1止水シート41の内面に当接されている」ということが記載されている。
【0005】
さらに、例えば特許文献3には、「ベース筐体10の開口をカバー筐体20で開閉する構造において、ベース筐体10上に板状のカバー筐体20をネジ30で固定する」ということが記載されている。
【0006】
また、特許文献3では、「ベース筐体10の開口の周囲に塗布されるシール材13をカバー筐体20のシール面23に接触させる」ということが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2964142号公報
【特許文献2】特開2021-49832号公報
【特許文献3】特開2020-145374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1では、地下施設の入口1上に蓋体2を開閉可能に載置するだけの簡易な構造であるものの、入口1の内周縁に入口側縁枠Aを埋め込むように設置する必要があり、入口側縁枠Aの設置に手間がかかるとともに、コストが嵩むことが懸念される。
【0009】
上記特許文献2では、船倉7の上部開口10にスライド式ハッチカバー11を配置し、スライド式ハッチカバー11上に配置されるレール19に、スライド式ハッチカバー11のハッチロ13を覆う船上シュート22および蓋部材23を走行自在に設けるようにしているから、船倉7の上部開口10に船上シュート22および蓋部材23を着脱する作業が煩雑で面倒であることが懸念される。
【0010】
さらに、上記特許文献2では、スライド式ハッチカバー11の上面11aとレール19との間を第2シール81と、第1シール80と、止水部材88のブラシ毛90とで止水するようにしている関係より、構成部品が多く、コストが嵩むことが懸念される。
【0011】
上記特許文献3では、ベース筐体10上に板状のカバー筐体20をネジ30で固定するようにしているから、カバー筐体20を着脱する作業が煩雑で面倒であることが懸念される。
【0012】
さらに、上記特許文献3では、ベース筐体10とカバー筐体20との間にシール材13を潰した状態で挟むようにしているから、カバー筐体20をベース筐体10から取り外した後では、シール材13を再使用することができないことが懸念される。
【0013】
このような事情に鑑み、本発明は、コンクリート枠の上面に板状蓋を簡易に着脱可能としたうえで、比較的低コストで十分な止水性能を発揮する開口開閉構造の提供を目的としている。
【0014】
また、本発明は、コンクリート枠の上面に板状蓋を簡易に着脱可能としたうえで、比較的低コストで十分な止水性能を発揮する開口開閉構造を簡易に得ることができる板状蓋設置方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、空間の上開口を板状蓋で開放または閉塞可能とする開口開閉構造であって、前記上開口の内周には、コンクリート枠が設けられており、前記板状蓋は、前記上開口を閉塞するように前記コンクリート枠の上面に自重のみにより載せられており、前記コンクリート枠の上面には、防水性を有する膜がコーティングされており、前記板状蓋の下面において前記コンクリート枠の上面に対応する領域には、前記膜に接触させられるリップを有するシールリングが取り付けられており、前記板状蓋の下面には、前記コンクリート枠の上面に当接されることにより前記板状蓋を支えるとともに当該板状蓋と前記上面との対向間隔を一定に保つための支持部が設けられていることを特徴としている。
【0016】
本発明は、コンクリート枠の上面に板状蓋を自重のみにより載せるだけの簡易な開口開閉構造に密封対策を施すように構成している。
【0017】
そして、上記構成では、前記板状蓋に前記シールリングおよび支持部を取り付けて、前記コンクリート枠の上面に前記膜をコーティングするだけの簡素な構成にしていて、前記コンクリート枠の上面にシール面となる部材を取り付けていないから、設備コストならびに施工コストを低減することが可能になる。
【0018】
また、前記上開口を前記板状蓋で閉塞している状態では、前記支持部により前記板状蓋を支えることにより前記シールリングのリップの接触状態を一定に保つことができるから、仮に前記板状蓋が重量物であっても前記リップが潰れなくなるなど、所期の止水性能を長期にわたって発揮できるとともに、耐久性能が向上する。
【0019】
ところで、上記開口開閉構造において、前記コンクリート枠の上面には、前記膜のコーティング前に当該膜の付着強度を高めるための下処理が施されている構成とすることができる。
【0020】
この構成によれば、前記コンクリート枠の上面に対して前記リップを強く接触させなくても、当該接触面に微小隙間が発生しなくなるので、止水性能が向上することになる。
【0021】
また、上記開口開閉構造において、前記板状蓋の外周の円周方向の複数ヶ所には、当該板状蓋で前記上開口を閉塞した状態で前記コンクリート枠に対して前記板状蓋を径方向に位置決めするための位置決め部材が設けられている構成とすることができる。
【0022】
この構成によれば、前記板状蓋で前記上開口を閉塞したときに、当該板状蓋が前記上開口から径方向にずれ動かなくなる。
【0023】
また、上記開口開閉構造において、前記コンクリート枠の上面は、それよりも外径側領域の面よりも隆起されており、前記位置決め部材は、前記板状蓋で前記上開口を閉塞した状態で前記外径側領域の面に対向するとともに前記コンクリート枠の外周面に対向する位置に配置されている構成とすることができる。
【0024】
また、上記開口開閉構造において、前記板状蓋の下面において前記コンクリート枠の上面に対応する領域には、内枠および外枠が径方向に離隔するように取り付けられており、前記シールリングは、前記内枠と前記外枠との離隔空間(環状溝)内に嵌合される胴部を有し、この胴部の下端における内周部に前記リップが径方向外向きでかつ斜め下向きに突き出すように連接されている構成とすることができる。
【0025】
この構成によれば、前記シールリングの取り付けが比較的簡単に行えるようになるので、当該シールリングの取り付けコストを低減するうえで有利になる。
【0026】
しかも、前記シールリングのリップは、径方向外向きでかつ斜め下向きに突き出すものであって、当該シールリングの外圧上昇時に、前記リップの接触圧力が強められるようになるなど、高い止水性能を発揮する。
【0027】
また、上記開口開閉構造において、前記シールリングの胴部は、前記環状溝内に上下方向に変位可能に嵌合されており、前記胴部の外周面には、前記膜に前記リップを圧接させるための圧力が付与されている構成とすることができる。
【0028】
この構成によれば、前記膜に対する前記シールリングのリップの接触圧力を強くしたり弱くしたり調整することができるなど、止水性能を調整することができる。
【0029】
また、上記開口開閉構造において、前記シールリングは、前記板状蓋の下面において前記コンクリート枠の上面に対応する領域に当接された状態で締結部材により固定される断面矩形状の胴部を有し、前記胴部の外周部に前記リップが径方向外向きでかつ斜め下向きに突き出すように連接されている構成とすることができる。
【0030】
この構成によれば、前記シールリングの取り付けが比較的簡単に行えるようになるので、当該シールリングの取り付けコストを低減するうえで有利になる。
【0031】
しかも、前記シールリングのリップは、径方向外向きでかつ斜め下向きに突き出すものであって、当該シールリングの外圧上昇時に、前記リップの接触圧力が強められるようになるなど、高い止水性能を発揮する。
【0032】
また、上記開口開閉構造において、前記内枠および前記外枠の少なくともいずれか一方は、その下端面が前記コンクリート枠の上面に当接されることにより前記支持部として機能する構成とすることができる。
【0033】
この構成によれば、前記支持部としての前記内枠および前記外枠の少なくともいずれか一方の上下方向に沿う寸法を調整することにより、前記コンクリート枠の前記膜に対する前記板状蓋の対向間隔を増加させたり減少させたりすることができる。
【0034】
つまり、前記内枠および前記外枠の少なくともいずれか一方が前記支持部を兼ねるようになっているから、余分な部材を増やさずに済む。
【0035】
また、上記開口開閉構造において、前記支持部は、前記板状蓋に板厚方向に貫通形成されるねじ孔に、頭部を下にした状態で螺合される高さ調整ボルトとされ、前記高さ調整ボルトの頭部が、前記コンクリート枠の上面の膜に当接される構成とすることができる。
【0036】
この構成によれば、前記支持部としての高さ調整ボルトのねじ込み深さを調整することにより、前記コンクリート枠の上面に対する前記板状蓋の対向間隔を増加させたり減少させたりすることができるので、前記リップの接触圧力を強くしたり弱くしたり調整することができるなど、止水性能を調整することができる。
【0037】
また、上記開口開閉構造において、前記板状蓋は、平面視が矩形に形成されており、この板状蓋の対向する2つの辺には、当該板状蓋を前記上開口の閉塞位置または開放位置にスライドするときの操作力を軽減するためのキャスターが前記コンクリート枠よりも外径側領域にはみ出した状態で取り付けられている構成とすることができる。
【0038】
前記キャスターとは、公知のように、ローラを備えた構成であって、このローラが転動することによって当該キャスターが取り付けられる部材を比較的小さな操作力で簡単かつ円滑に動かせるようにするためのものである。
【0039】
したがって、上記構成によれば、前記板状蓋を開放する際に、前記キャスターのローラが転動することになるので、前記板状蓋の開放操作および閉塞操作が比較的小さな操作力で簡単かつ円滑に行えるようになる。
【0040】
また、上記開口開閉構造において、前記キャスターには、そのローラを上下方向に昇降させるための昇降機構が設けられている構成とすることができる。
【0041】
この構成によれば、前記昇降機構でもって前記ローラを上昇または下降させることにより、前記板状蓋を上昇または下降させることができるので、前記板状蓋を前記コンクリート枠の上面に対して遠近変位させることができる。
【0042】
そのため、前記板状蓋を開放位置に移動させる際には、前記昇降機構でもって前記板状蓋を上昇させることにより、前記支持部および前記シールリングのリップを前記膜から浮かせば、前記板状蓋を比較的小さい操作力で簡単かつ円滑にスライドさせることが可能になるとともに、前記シールリングが損傷せずに済む。
【0043】
また、本発明は、空間の上開口の内周縁にコンクリート枠が設けられていて、前記コンクリート枠の上面に前記上開口を閉塞するように前記コンクリート枠の外周形状と同じ外周形状の板状蓋を自重のみにより載せる板状蓋設置方法であって、前記コンクリート枠の上面に少なくとも防水性を有する膜をコーティングする工程と、前記板状蓋の下面において前記コンクリート枠の上面に対応する領域に、前記膜に接触させられるリップを有するシールリングを取り付ける工程と、前記板状蓋の下面に、前記コンクリート枠の上面に当接されることにより前記板状蓋を支えるとともに当該板状蓋と前記上面との対向間隔を一定に保つための支持部を取り付ける工程と、前記板状蓋の支持部を前記コンクリート枠の上面の膜の上に載せることにより、前記板状蓋で前記上開口を閉塞するとともに前記シールリングのリップを前記膜に接触させる工程と、を含むことを特徴としている。
【0044】
この構成によれば、比較的低コストで十分な止水性能を発揮する開口開閉構造を簡易に得ることができる。
【0045】
また、上記板状蓋設置方法において、前記膜をコーティングする工程の前に、前記コンクリート枠の上面に前記膜の付着強度を高めるための下処理を施す工程をさらに含む構成とすることができる。
【0046】
この構成によれば、前記コンクリート枠の上面に対して前記リップを強く接触させなくても、当該接触面に微小隙間が発生しなくなるので、止水性能が向上することになる。
【0047】
また、上記板状蓋設置方法において、前記シールリングは、前記板状蓋の下面において前記コンクリート枠の上面に対応する領域に径方向に離隔するように取り付けられる内枠と外枠との離隔空間(環状溝)に嵌合される胴部を有し、この胴部の内周における下部に前記リップが径方向外向きでかつ斜め下向きに突き出すように連接されている構成とすることができる。
【0048】
この構成によれば、前記シールリングの取り付けが比較的簡単に行えるようになるので、当該シールリングの取り付けコストを低減するうえで有利になる。
【0049】
しかも、前記シールリングのリップは、径方向外向きでかつ斜め下向きに突き出すものであって、当該シールリングの外圧上昇時に、前記リップの接触圧力が強められるようになるなど、高い止水性能を発揮する。
【0050】
また、上記板状蓋設置方法において、前記シールリングは、前記板状蓋の下面において前記コンクリート枠の上面に対応する領域に当接された状態で締結部材により固定される断面矩形状の胴部を有し、この胴部の外周部に前記リップが径方向外向きでかつ斜め下向きに突き出すように連接されている構成とすることができる。
【0051】
この構成によれば、前記シールリングの取り付けが比較的簡単に行えるようになるので、当該シールリングの取り付けコストを低減するうえで有利になる。
【0052】
しかも、前記シールリングのリップは、径方向外向きでかつ斜め下向きに突き出すものであって、当該シールリングの外圧上昇時に、前記リップの接触圧力が強められるようになるなど、高い止水性能を発揮する。
【0053】
また、上記板状蓋設置方法において、前記板状蓋で前記上開口を閉塞した後、当該板状蓋の外周の円周方向の複数ヶ所に、前記コンクリート枠に対して前記板状蓋を径方向に位置決めするための位置決め部材を取り付ける工程を、さらに含む構成とすることができる。
【0054】
また、上記板状蓋設置方法において、前記コンクリート枠の上面は、それよりも外径側領域の面よりも隆起されており、前記位置決め部材は、前記板状蓋で前記上開口を閉塞した状態で前記外径側領域の面に対向するとともに前記コンクリート枠の外周面に対向する位置に配置される構成とすることができる。
【発明の効果】
【0055】
本発明に係る開口開閉構造は、コンクリート枠の上面に板状蓋を簡易に着脱可能としたうえで、比較的低コストで十分な止水性能を発揮することができる。
【0056】
また、本発明に係る板状蓋設置方法は、コンクリート枠の上面に板状蓋を簡易に着脱可能としたうえで、比較的低コストで十分な止水性能を発揮する開口開閉構造を簡易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1図2の(1)-(1)線断面を矢印方向から見た図である。
図2】本発明に係る開口開閉構造の一実施形態を示す平面図であって、板状蓋の閉塞状態を示している。
図3図2の右側面図である。
図4図1において右側部位を拡大して示す図である。
図5】板状蓋設置方法の第1工程を示す図である。
図6図5に続く第2工程を示す図である。
図7】本発明に係る開口開閉構造の他の実施形態で、図4に対応する図である。
図8図7において板状蓋を上昇させた状態を示す図である。
図9図7および図8に示すキャスターの配置を示す平面図である。
図10】本発明に係る開口開閉構造の他の実施形態で、図4に対応する図である。
図11】本発明に係る開口開閉構造の他の実施形態で、図4に対応する図である。
図12】本発明に係る開口開閉構造の他の実施形態で、図4に対応する図である。
図13】本発明に係る開口開閉構造の他の実施形態で、図4に対応する図である。
図14図13のシールリングに圧力を付与した状態を示す図である。
図15】本発明に係る開口開閉構造の他の実施形態で、図13に対応する図である。
図16図15のシールリングに圧力を付与した状態を示す図である。
図17】本発明に係る開口開閉構造の他の実施形態で、図15に対応する図である。
図18図17のシールリングに圧力を付与した状態を示す図である。
図19】本発明に係る開口開閉構造の他の実施形態で、図15に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0059】
図1から図6に、本発明の一実施形態を示している。図中、1は地下空間の上開口(出入口)、2は板状蓋を示している。
【0060】
上開口1は、平面視がほぼ長方形に形成されている。この形状は、例えば正方形、円形、楕円形などとすることができる。
【0061】
この上開口1の内周縁には、コンクリート枠3が設けられている。コンクリート枠3の上面は、その外周部位よりも隆起されている。
【0062】
このコンクリート枠3の上面には、少なくとも防水性を有する膜4がコーティングされている。
【0063】
なお、膜4については、例えば防水性ならびに滑性の優れたエポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、ふっ素系樹脂などとすることが好ましい。また、膜4の膜厚は、例えば1~5mm程度にすることが考えられるが、コンクリート枠3の上面の凹凸(面粗さ)に応じて適宜に設定される。
【0064】
板状蓋2は、上開口1を閉塞することが可能なようにコンクリート枠3の外形形状と同一の外形形状(例えば平面視がほぼ長方形)の板とされており、コンクリート枠3の上面に載置される。
【0065】
なお、板状蓋2の弾性変形を防止するために、板状蓋2の上面には補強部材5が十字状に取り付けられている。この補強部材5は、図1から図3に示すように、直線形状とされていて、その断面はT字形に形成されている。
【0066】
この板状蓋2および補強部材5は、例えば金属材料で形成されている。
【0067】
板状蓋2の下面においてコンクリート枠3の上面に対応する領域(外周縁寄り領域とも言う)には、シールリング6が取り付けられている。このシールリング6およびその取り付け構造について詳細に説明する。
【0068】
まず、板状蓋2の下面においてコンクリート枠3の上面に対応する領域には、内枠7と外枠8とが所定間隔離されて径方向に対向するように設けられている。
【0069】
この内枠7と外枠8との離隔空間(対向空間とも言う)が、シールリング6を収容するための環状溝9とされている。この環状溝9は、平面視で四角い環状の溝であって、その四隅が丸く湾曲されている。
【0070】
シールリング6は、胴部6aと、リップ6bとを有している。胴部6aは、断面が横長の長方形に形成されている。この胴部6aは、内枠7と外枠8との離隔空間である環状溝9内に嵌合されている。
【0071】
リップ6bは、胴部6aの下部における内周側に径方向外向きでかつ斜め下向きに突き出すように連接されている。
【0072】
このリップ6bの厚みは、先端側へ向けて徐々に薄くなっている。このリップ6bの内周面の先端側がコンクリート枠3の上面の膜4に接触させられる。
【0073】
内枠7および外枠8は、上下方向に沿う寸法が同じに設定されているので、板状蓋2をコンクリート枠3の上面に載置すると、それらの下端面がコンクリート枠3の上面に当接することになる。
【0074】
この実施形態では、内枠7および外枠8が板状蓋2を支えるための支持部として機能するようになっている。つまり、内枠7および外枠8が前記支持部を兼ねるように構成されているから、余分な部材を増やさずに済む。
【0075】
ここで、板状蓋2をコンクリート枠3の上面に載置すると、支持部としての内枠7および外枠8の下端が、コンクリート枠3の上面の膜4に当接されることになって、コンクリート枠3の上面と板状蓋2との対向間隔を一定に保つ。
【0076】
これにより、コンクリート枠3の上面の膜4に対するシールリング6のリップ6bの接触状態を一定に保つことができる。
【0077】
なお、内枠7および外枠8の上下方向に沿う寸法を調整することにより、コンクリート枠3の上面の膜4に対する板状蓋2の対向間隔を増加させたり減少させたりすることができるとともに、リップ6bの接触圧力を強くしたり弱くしたりすることができるなど、止水性能を調整することができる。
【0078】
また、板状蓋2の外周の円周方向の複数ヶ所には、位置決め部材20が設けられている。この位置決め部材20は、板状蓋2を閉塞したときにコンクリート枠3の外周面に対向するように配置されることにより、板状蓋2を径方向に位置決めするものである。
【0079】
具体的に、図1に示すように、板状蓋2の上面において四辺それぞれの一端側および他端側には、上向きに突出する突片10が固定されている。なお、板状蓋2と突片10を金属材とする場合には、例えば溶接などにより板状蓋2に突片10を固定することができる。
【0080】
合計8つの突片10の外側には、それぞれ位置決め部材20が締結部材(ボルト24およびナット25)により取り付けられている。
【0081】
位置決め部材20は、第1部材21と第2部材22とを上下に組み合わせたツーピース構造とされている。
【0082】
第1部材21は、横板部21aと、横長の縦板部21bと、補強板部21cと、を備えている。
【0083】
横板部21aは、水平方向に沿う長方形の平板からなる。縦板部21bは、横板部21aの一長辺に上向きに突出するように設けられている。補強板部21cは、横板部21aの長手方向中央の短手方向全域に上向きに突出するように設けられている。
【0084】
なお、横板部21aにおいて補強板部21cの両側には、それぞれ楕円形の長孔(図示省略)が設けられている。長孔には、締結部材としてのボルト24が挿入される。また、縦板部21bにおいて補強板部21cの両側には、それぞれ円形孔(図示省略)が設けられている。円形孔には、締結部材としてのボルト24が挿入される。
【0085】
第2部材22は、第1部材21と同一の形状であって、第1部材21を上下逆さにしたものである。
【0086】
そのため、第2部材22は、横板部22aと、横長の縦板部22bと、補強板部22cと、を備えている。
【0087】
横板部22aは、水平方向に沿う長方形の平板からなる。縦板部22bは、横板部22aの一長辺に下向きに突出するように設けられている。補強板部22cは、横板部22aの長手方向中央の短手方向全域に下向きに突出するように設けられている。
【0088】
なお、横板部22aにおいて補強板部22cの両側には、それぞれ楕円形の長孔(図示省略)が設けられている。長孔には、締結部材としてのボルト24が挿入される。また、縦板部22bには、緩衝シート23が貼り付けられている。この緩衝シート23は、例えば弾性材料で形成されている。
【0089】
そして、第1部材21の横板部21aの下面に第2部材22の横板部22aの上面が重ね合わされていて、この重ね合わされた部分が2組の締結部材(ボルト24およびナット25)により締結されるようになっている。
【0090】
次に、図5および図6を参照して、コンクリート枠3の上面に板状蓋2を自重により載せるように設置する方法を説明する。
【0091】
(1)新たに地下空間の上開口1に板状蓋2を設置する場合を説明する。
【0092】
まず、板状蓋2に内枠7および外枠8を取り付け、内枠7と外枠8との離隔空間(環状溝9)にシールリング6を嵌合し、さらに、板状蓋2に突片10を取り付けるとともに、この突片10に位置決め部材20の第1部材21を締結部材(ボルト24およびナット25)により締結しておく。
【0093】
次に、コンクリート枠3の上面について、後でコーティングする膜4の付着強度を高めるための下処理を行う。この下処理は、コンクリート枠3の上面の凹凸(面粗さ)を調整する処理である。通常のコンクリート枠3の設置作業の場合には、当該下処理を行うことが好ましいが、当該下処理を省くことも可能である。
【0094】
ここで、前記下処理は、コンクリート枠3の上面に研削加工を施すことにより上面の凹凸(面粗さ)を調整してから、コンクリート枠3の上面を清掃、乾燥する。なお、前記研削加工としては、例えばコンクリート用グラインダー、あるいはダイヤモンドカップを用いる形態が挙げられる。
【0095】
この後、コンクリート枠3の上面に、少なくとも防水性を有する膜4をコーティングする。
【0096】
そして、板状蓋2を上開口1の上方に配置し、図6に示すように、板状蓋2をコンクリート枠3の上面に自重により載置する。
【0097】
このとき、板状蓋2に取り付けている位置決め部材20の第1部材21をコンクリート枠3の外周から外側に突出させるような状態にセットする。
【0098】
この状態では、環状溝9から径方向外向きでかつ斜め下向きに飛び出しているシールリング6のリップ6bが適宜に撓んで、当該リップ6bの内周面の先端側がコンクリート枠3の上面に所定の圧力で接触させられるとともに、板状蓋2の内枠7および外枠8の各下端がコンクリート枠3の上面上に当接される。
【0099】
これにより、板状蓋2の下面とコンクリート枠3の上面との対向間隔が一定に保たれることになって、シールリング6のリップ6bが板状蓋2の重量によって潰れなくなるので、リップ6bの接触圧が所定の設定値に保たれることになる。
【0100】
続いて、図6に示すように、板状蓋2に取り付けている位置決め部材20の第1部材21に位置決め部材20の第2部材22を締結部材(ボルト24およびナット25)により締結することにより、第2部材22の縦板部22bに貼り付けている緩衝シート23を、コンクリート枠3の外側面と第2部材22との間に挟むようにする。
【0101】
これにより、板状蓋2は、コンクリート枠3の径方向(長手方向および短手方向)に対して変位不可能な状態に位置決めされる。但し、板状蓋2を金属材のような重量物で形成している場合には、その自重により容易にずれ動かなくなる。
【0102】
なお、コンクリート枠3の上面の平面度(周方向での波状のうねりの高低差)が、例えば10mm未満、好ましくは5mm未満の場合には。上述したシールリング6でも、シールリング6のリップ6bをコンクリート枠3の上面の周方向での波状のうねりに倣わせて接触させることができる。
【0103】
但し、コンクリート枠3の上面の平面度が、例えば10mm以上、好ましくは5mm以上の場合には、下記(8)~(12)で説明するようにシールリング6を加圧することにより、リップ6bをコンクリート枠3の上面の周方向での波状のうねりに倣わせて確実に接触させるようにすることが好ましい。
【0104】
(2)例えば図示していないが、密封対策を施していない既設の開口開閉構造に、本発明を適用する場合を説明する。
【0105】
この既設の開口開閉構造とは、膜4を形成していないコンクリート枠3の上面にシールリング6を取り付けていない板状蓋2を自重により載せている構造のことを言う。
【0106】
まず、シールリング6を取り付けていない板状蓋2の下面に内枠7および外枠8を取り付け、内枠7と外枠8との離隔空間(環状溝9)にシールリング6を嵌合し、さらに、板状蓋2に突片10を取り付けるとともに、この突片10に位置決め部材20の第1部材21を締結部材(ボルト24およびナット25)により締結する。
【0107】
この後、コンクリート枠3の上面の下処理、膜4をコーティングする処理、板状蓋2をコンクリート枠3に載置する処理、ならびに位置決め部材20を取り付ける処理は、上記(1)と同様であるので、ここでの記載は割愛する。
【0108】
このように、前記既設の開口開閉構造に対して、後から上開口1への水浸入を防止する密封対策を施すことが可能になる。つまり、密封対策を施していない既設の開口開閉構造を、本発明を適用した実施形態の開口開閉構造に簡易に置き換えることが可能になる。
【0109】
以上説明したように、本発明を適用した実施形態では、コンクリート枠3の上面に板状蓋2を自重により載せるだけの簡易な開口開閉構造に密封対策を施すように構成している。
【0110】
特に、板状蓋2に内枠7、外枠8ならびにシールリング6を取り付けるとともに、コンクリート枠3の上面に膜4をコーティングするだけの簡素な構成にしていて、コンクリート枠3の上面にシール面となる部材を取り付けていないから、設備コストならびに施工コストを低減することが可能になる。
【0111】
また、上開口1を板状蓋2で閉塞している状態では、シールリング6のリップ6bを斜め下向きの姿勢でコンクリート枠3の上面に押し付けるように接触させていて、支持部としての内枠7および外枠8で板状蓋2を支えるようにしているから、仮に板状蓋2が重量物であってもリップ6bが潰れなくなるなど、シールリング6のリップ6bの接触状態を一定に保つことができる。
【0112】
しかも、外枠8を膜4に当接させているから、外部から水分の浸入を抑制できる。この外枠8と膜4との間から環状溝9内に水が浸入したとしても、当該浸入水の圧力によってリップ6bの接触圧力が高められるようになるので、リップ6bによる止水性能が向上する。
【0113】
これらのことから、シールリング6の耐久性に優れているとともに、所期の止水性能を長期にわたって発揮できるようになるので、風雨による洪水や津波などが発生したときでも地下空間への浸水を防止することが可能になる。
【0114】
要するに、本発明を適用した実施形態によれば、コンクリート枠3の上面に板状蓋2を簡易に着脱することが可能になり、しかも、比較的低コストで所期の止水性能を発揮する開口開閉構造を簡易に得ることができる。
【0115】
なお、本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内および当該範囲と均等の範囲内で適宜に変更することが可能である。
【0116】
(1)上記実施形態では、板状蓋2で開放または閉塞する対象として地下空間の上開口1を例に挙げているが、本発明はこれのみに限定されるものではない。
【0117】
前記対象としては、図示していないが、例えば地上に設置される構造物や船舶の貨物艙などのようないろいろな構造物の空間の上開口とすることが可能である。
【0118】
(2)上記実施形態では、内枠7および外枠8の両方をコンクリート枠3の上面の膜4に当接させるようにした例を挙げているが、本発明はこれのみに限定されるものではない。
【0119】
図示していないが、例えば内枠7のみをコンクリート枠3の上面の膜4に当接させるような構成にすることが可能であり、また、例えば外枠8のみをコンクリート枠3の上面の膜4に当接させるような構成にすることが可能である。
【0120】
(3)上記実施形態では、板状蓋2において対向する四辺それぞれの一端側および他端側に位置決め部材20を取り付けるようにした例を挙げているが、本発明はこれのみに限定されるものではない。
【0121】
図示していないが、板状蓋2において対向する2つの長辺(または短辺)それぞれの一端側および他端側に、位置決め部材20を取り付けることができる。
【0122】
その場合には、コンクリート枠3の長手方向(または短手方向)に対して変位不可能な状態に位置決めされるが、コンクリート枠3の短手方向(または長手方向)に対して変位可能な状態になる。
【0123】
(4)図7から図9に本発明の他の実施形態を示している。この実施形態では、位置決め部材20を無くして、板状蓋2にキャスター40を設けている。
【0124】
このキャスター40は、板状蓋2を前記地下空間の上開口1の閉塞位置または開放位置にスライドさせる際に比較的小さな操作力で簡単かつ円滑に動かせるようにするためのものであって、図8に示すように、板状蓋2において対向する2つの短辺それぞれの一端側および他端側の合計4ケ所に取り付けられている。
【0125】
このキャスター40は、支持部材41に、ローラ42をアーム43や不図示の支軸およびベアリングなどを介して回動自在に支持した構成である。
【0126】
支持部材41は、上下方向に沿う帯状の長尺縦板41aの下半分領域に、上下方向に沿う帯状の短尺縦板41bを水平方向に沿う横板41cを介して径方向に離隔して配置した構成である。
【0127】
ローラ42は、長尺縦板41aと短尺縦板41bとの対向空間に配置された状態で、その回転中心軸の一端と他端とが長尺縦板41aと短尺縦板41bとに支持されることにより、回転自在とされている。そして、支持部材41の上部が突片10に締結部材(ボルト24およびナット25)により取り付けられている。
【0128】
アーム43は、ローラ42を回転自在に支持するものであって、側方から見てコ字形に形成されている。
【0129】
このキャスター40には、高さ調整ボルト44が取り付けられている。この高さ調整ボルト44は、ローラ42を支持部材41に対して上昇または下降させるものである。
【0130】
高さ調整ボルト44は、その頭部44aを上にした状態でねじ軸部44bが横板41cの厚み方向(上下方向)に貫通形成されているねじ孔41dに螺合されており、このねじ軸部44bの先端(下端)が、アーム43に回転自在な状態でかつ抜け止めされた状態で取り付けられている。
【0131】
この高さ調整ボルト44は、図7に示すように、ねじ込み深さを浅くすると、板状蓋2が下降されることになる一方で、図8に示すように、ねじ込み深さを深くすると、板状蓋2が上昇されることになる。
【0132】
ここで、板状蓋2をコンクリート枠3の上面に載せる位置に配置してから、図7に示すように、高さ調整ボルト44のねじ込み深さを浅くすると、ローラ42がコンクリート枠3の外径側領域の面から浮くとともに、板状蓋2が下降することになって、内枠7および外枠8がコンクリート枠3の上面の膜4に当接する。
【0133】
これにより、コンクリート枠3の上面と板状蓋2との対向間隔が一定に保たれることになってリップ6bが潰れなくなるので、コンクリート枠3の上面の膜4に対するリップ6bの接触状態が一定に保たれることになる。
【0134】
なお、ねじ孔41dに対する高さ調整ボルト44のねじ込み深さを調整することにより、コンクリート枠3の上面に対する板状蓋2の対向間隔を大きくしたり小さくしたりすることができるので、リップ6bの接触圧力を強くしたり弱くしたり調整することができるなど、止水性能を調整することができる。
【0135】
そして、板状蓋2を開放する状態に動かしたいときには、図8に示すように、高さ調整ボルト44によりローラ42を下降させることにより、板状蓋2を上昇させて、内枠7および外枠8を膜4から離隔させれば、図9の矢印で示すように、板状蓋2をその短手方向の一方へ向けて比較的小さい操作力で簡単かつ円滑にスライドさせることが可能になる。
【0136】
ところで、この実施形態では、キャスター40は、平面視で長方形の板状蓋2において対向する2つの短辺それぞれの一端側および他端側の合計4ケ所に取り付ける形態にしているが、本発明はそれのみに限定されるものではなく、図示していないが、平面視で長方形の板状蓋2において対向する2つの長辺それぞれの一端側および他端側の合計4ケ所に取り付ける形態にすることが可能である。
【0137】
この場合、板状蓋2を長手方向に比較的小さい操作力で簡単かつ円滑にスライドさせることが可能になる。
【0138】
(5)上記実施形態では、コンクリート枠3の上面がそれよりも外径側領域の面よりも隆起している例を挙げているが、本発明はそれのみに限定されるものではなく、例えばコンクリート枠3の上面が外周領域とほぼ同じ高さになっている場合にも適用できる。
【0139】
具体的に、図10に本発明の他の実施形態を示している。この実施形態では、上記実施形態の位置決め部材20の代わりに、コンクリート枠3の上面がそれよりも外径側領域の面とほぼ同じ高さである場合に適した形状の位置決め部材20Aを用いている。
【0140】
この実施形態の位置決め部材20Aは、内枠7よりも小さいものの同じ形状の枠とされており、板状蓋2の下面において内枠7よりも内径側に設けられている。
【0141】
この位置決め部材20Aは、板状蓋2と別体に形成されていて、板状蓋2に適宜の方法で固定されている。位置決め部材20Aおよび板状蓋2を例えば金属材とする場合には、例えば溶接により固定することができる。
【0142】
そして、前記枠からなる位置決め部材20Aは、板状蓋2をコンクリート枠3の上面に載置したときに、位置決め部材20Aの下端がコンクリート枠3の上面の内周角部に設けられている段部3aに非接触に臨むように配置される。
【0143】
そのため、板状蓋2が長手方向や短手方向に押されたときに、位置決め部材20Aが段部3aの立ち上がり壁面に当接することになって、板状蓋2が長手方向および短手方向に変位することを阻止されるようになる。
【0144】
この位置決め部材20Aは、上記実施形態の位置決め部材20に比べて、構成が簡素であるので、設備コストを低減することに貢献できる。
【0145】
(6)上記実施形態において、板状蓋2を支える支持部として内枠7および外枠8を用いる例を挙げているが、この支持部については、特に限定されるものではなく、いろいろなものを用いることが可能である。
【0146】
具体的に、図11に本発明の他の実施形態を示している。この実施形態では、上記実施形態の外枠8の上下方向に沿う寸法が内枠7よりも小さく設定されていて、この外枠8の代わりに支持ボルト51を支持部として用いるようにしている。
【0147】
具体的に、支持ボルト51は、板状蓋2の下面において外枠8よりも外径側に設けられている。
【0148】
この支持ボルト51は、頭部51aが下に配置されるように逆さにされて、ねじ軸部51bが板状蓋2の板厚方向に貫通形成されているねじ孔2aに螺合されている。
【0149】
この支持部ボルト51において板状蓋2の下面から頭部51aの頂面までの長さが、内枠7の上下方向に沿う寸法と同じに設定されている。
【0150】
そのため、板状蓋2をコンクリート枠3の上面に載置すると、内枠7の下端と支持ボルト51の頭部51aがコンクリート枠3の上面に当接されることになって、コンクリート枠3の上面と板状蓋2との対向間隔が一定に保たれることになる。これにより、リップ6bが潰れなくなるので、コンクリート枠3の上面の膜4に対するリップ6bの接触状態が一定に保たれることになる。
【0151】
なお、ねじ孔2aに対する支持ボルト51のねじ込み深さを調整することにより、コンクリート枠3の上面に対する板状蓋2の対向間隔を大きくしたり小さくしたりすることができるので、リップ6bの接触圧力を強くしたり弱くしたり調整することができるなど、止水性能を調整することができる。
【0152】
(7)上記実施形態に示すシールリング6については、特に限定されるものではなく、いろいろなタイプのシールリングを用いることが可能である。
【0153】
具体的に、図12に本発明の他の実施形態を示している。この実施形態では、図4に示したシールリング6の形状およびその取り付け形態が異なる。
【0154】
具体的に、この実施形態では、図4に示していた外枠8を無くすとともに、への字形状のシールリング6Aを用いていて、このシールリング6Aを板状蓋2の下面に当て板6A3を介して締結部材(皿ねじ6A4)により取り付けるようにしている。
【0155】
具体的に、シールリング6Aは、断面矩形状の胴部6A1の外周にリップ6A2を径方向外向きでかつ斜め下向きに突き出すように連接した構成である。
【0156】
このシールリング6Aの取り付け形態としては、胴部6A1の下面に当て板6A3を重ね合わせて、この重ね合わせ部分を下から上へ向けて締結部材としての皿ねじ6A4をねじ込むことにより締結するようにしている。胴部6A1は、内枠7の外周面に当てられている。
【0157】
そして、板状蓋2をコンクリート枠3の上面に載置すると、内枠7の下端および当て板6A3がコンクリート枠3の上面に当接されることになるので、コンクリート枠3の上面と板状蓋2との対向間隔が一定に保たれることになる。これにより、コンクリート枠3の上面の膜4に対するリップ6A2の接触状態が一定に保たれることになる。
【0158】
このような場合においても上記実施形態と同様の作用、効果が得られるので、その詳細な説明は割愛する。
【0159】
(8)上記実施形態では、コンクリート枠3の上面と板状蓋2との対向間隔によりコンクリート枠3の上面の膜4に対するシールリング6のリップ6b,6A2の接触圧力を調整するようにした例を挙げているが、本発明はこれのみに限定されるものではない。
【0160】
なお、コンクリート枠3の上面の平面度(周方向での波状のうねりの高低差)が、例えば10mm以上、好ましくは5mm以上の場合には、例えば下記(9)~(12)に示すように、シールリング6を加圧することにより、リップ6bをコンクリート枠3の上面の周方向での波状のうねりに倣わせて確実に接触させるようにすることが可能である。
【0161】
(9)図13および図14に本発明の他の実施形態を示している。この実施形態では、図4に示すシールリング6に圧力を付与するように構成している。
【0162】
具体的に、この実施形態では、内枠7と外枠8との離隔空間(環状溝9)内にシールリング6が上下方向に摺動可能に嵌合されている。
【0163】
このシールリング6の内周面と外周面とには、突条部6cが設けられている。この突条部6cは、断面が半円形状になっている。
【0164】
シールリング6の内周面の突条部6cは、内枠7の外周面に接触されていて、シールリング6の内周面と内枠7の外周面との対向間を密封する。一方、シールリング6の外周面の突条部6cは、外枠8の内周面に接触されていて、シールリング6の外周面と外枠8の内周面との対向間を密封する。
【0165】
そして、板状蓋2において環状溝9に対応する位置の複数箇所には、通孔2bが板状蓋2の板厚方向に貫通するように設けられている。
【0166】
複数の通孔2bうち、任意の1つの通孔2bは、エア抜き口とされており、このエア抜き口には、図示していないが、エア抜き弁が取り付けられている。
【0167】
このエア抜き口となる通孔2b以外の複数の通孔2bそれぞれには、一方弁61が取り付けられており、この一方弁61には圧力付与装置60が接続されている。
【0168】
この圧力付与装置60は、要求に応じて所定の圧力で加圧媒体62を一方弁61および通孔2bを介して環状溝9内に供給するものである。なお、加圧媒体62は、例えば硬化性樹脂、水などの液体、空気などの気体とすることができる。
【0169】
ここで、図14に示すように、圧力付与装置60により加圧媒体62を所定の圧力で一方弁61および通孔2bを介して環状溝9内に供給すると、シールリング6の胴部6aが下向きに加圧されることになって、当該シールリング6のリップ6bが撓んでコンクリート枠3の上面の膜4に接触させられることになる。
【0170】
これにより、膜4に対するリップ6bの接続圧力を強くできる。この接触圧力は、圧力付与装置60による加圧媒体62の供給圧力つまり胴部6aの上面に付与する圧力を調整することによって、リップ6bの接触圧力を強くしたり弱くしたり調整することができるなど、止水性能を調整することができる。
【0171】
なお、胴部6aに設けた突条部6cによって、環状溝9内においてシールリング6の胴部6aと板状蓋2との間に作られる空間が密封された空間になるので、加圧媒体62の圧力がシールリング6の胴部6aの上面にロスすることなく付与されることになって、シールリング6の接触状態が長期にわたって一定に保たれることになる。
【0172】
また、前記密封された空間に加圧媒体62を供給した後は、この加圧媒体62が圧力付与装置60側へ戻ることが一方弁61により阻止されるので、圧力付与装置60を一方弁61から外すことができる。
【0173】
さらに、加圧媒体62を硬化性樹脂とする場合には、前記密封された空間内に硬化性樹脂を溶融状態で供給するようにし、この加圧媒体62としての硬化性樹脂が前記空間内で硬化するのを待つ。このように硬化性樹脂が硬化すると、一方弁61を取り外すことが可能である。但し、加圧媒体62を水などの液体や空気などの気体とする場合には、一方弁61を取り外すことはできない。
【0174】
この実施形態の場合には、上記実施形態と同様の作用、効果が得られる他、下記するような優れた効果が得られる。
【0175】
つまり、コンクリート枠3の上面の平面度が低い場合(周方向での波状のうねりの高低差が例えば10mm以上、好ましくは5mm以上)に、圧力付与装置10でもってシールリング6を加圧することにより、当該シールリング6のリップ6bがコンクリート枠3の上面のうねりに倣うように撓んで下降させられることになるので、シールリング6の胴部6B1,6C1およびリップ6b,6B2,6C2の全周がコンクリート枠3の上面の周方向全域にほぼ均等な圧力で接触させられるようになるなど、止水性能が向上する。
【0176】
(10)図15および図16に本発明の他の実施形態を示している。この実施形態では、図13および図14に示す構成をベースとして、シールリング6と形状が異なるシールリング6Bを用いている。
【0177】
具体的に、この実施形態のシールリング6Bは、胴部6B1の下面の外周部にリップ6B2が径方向外向きでかつ斜め下向きに突き出すように設けられており、さらに、胴部6B1の上面の外角部と内角部とに突条部6B3,6B4が設けられている。
【0178】
なお、この実施形態では、板状蓋2を支えるための支持部として、内枠7のみをコンクリート枠3の上面に当接させるようにしている。つまり、外枠8の上下方向に沿う寸法が内枠7よりも小さく設定されている。
【0179】
また、内枠7の内側面の下端には、径方向外向きに突出する抜け止め片7aが設けられている。この抜け止め片7aは、シールリング6Bが下に抜け出すことを防止するための抜け止めとされている。
【0180】
このシールリング6Bを環状溝9内に上下方向に摺動可能に嵌合されていて、このシールリング6Bの上面と板状蓋2の下面との間に所定の空間が作られるようになる。
【0181】
そして、前記空間に圧力付与装置60により加圧媒体62(例えば硬化性樹脂、水などの液体、空気などの気体)を所定の圧力で供給すると、図16に示すように、シールリング6Bが下降されることになって、シールリング6Bの胴部6B1およびリップ6B2がコンクリート枠3の上面の膜4に所定の圧力で接触させられることになる。
【0182】
なお、加圧媒体62の圧力によって上外側の突条部6B3が外枠8の内周面に圧接されるとともに、上内側の突条部6B4が内枠7の外周面に圧接されるので、加圧媒体62がシールリング6Bの外周面と外枠8の内周面との間、およびシールリング6Bの内周面と内枠7の外周面との間から下向きに漏洩することが防止される。
【0183】
このように、前記シールリング6Bの上側に作られる空間が密封された空間になるので、加圧媒体62の圧力がシールリング6Bの上面にロスすることなく付与されることになるので、コンクリート枠3の上面の膜4に対するシールリング6Bの胴部6B1およびリップ6B2の接触圧力が長期にわたって一定に保つことができる。
【0184】
なお、加圧媒体62の供給圧力つまり胴部6aの上面に付与する圧力を調整することによって、胴部6B1およびリップ6B2の接触圧力を強くしたり弱くしたり調整することができるなど、止水性能を調整することができる。
【0185】
この実施形態の場合にも、上記(9)と同様の優れた効果が得られる。
【0186】
(11)図17および図18に本発明の他の実施形態を示している。この実施形態では、図15および図16に示す実施形態の構成をベースとして、シールリング6Bと形状が異なるシールリング6Cを用いているとともに、シールリング6Cの上部に加圧チューブ70を設けている。
【0187】
具体的に、この実施形態のシールリング6Cは、断面が矩形状の胴部6C1の下面の外周部にリップ6C2が径方向外向きでかつ斜め下向きに突き出すように設けられた形状になっていて、図15に示していたシールリング6Bの上外突条部6B3および上内突条部6B4が無くされている。
【0188】
また、この実施形態では、板状蓋2の通孔2bに配管71を挿入するとともに、この配管71の下端を加圧チューブ70内に差し込むようにしている。
【0189】
この配管71の上端には、一方弁61が取り付けられており、この一方弁61には、圧力付与装置60が接続されている。
【0190】
この実施形態の場合、加圧チューブ70内に圧力付与装置60により加圧媒体62(例えば水などの液体、空気などの気体)を所定の圧力で供給すると、図18に示すように、加圧チューブ70が膨張されることになって、この加圧チューブ70の膨張圧力がシールリング6Cに付与されることになるので、シールリング6Cが下降されることになって、シールリング6Cの胴部6C1およびリップ6C2がコンクリート枠3の上面の膜4に所定の圧力で接触させられることになる。
【0191】
このとき、胴部6C1は、上下方向に弾性的に圧縮されることになって、その下面が膜4に接触させられることになる。一方、リップ6C2は、弾性的に撓まされることになって、その下面において先端側領域が膜4に接触させられることになる。
【0192】
なお、加圧媒体62の供給圧力つまり胴部6aの上面に付与する圧力を調整することによって、胴部6C1およびリップ6C2の接触圧力を強くしたり弱くしたり調整することができるなど、止水性能を調整することができる。
【0193】
また、板状蓋2の通孔2bおよび配管71は、環状溝9の円周方向の複数箇所に対応する位置に設けるようにして、複数の配管71を加圧チューブ70の円周方向の複数箇所に差し込むようにして接続することが可能である。
【0194】
この実施形態の場合にも、上記(9)と同様の優れた効果が得られる。
【0195】
(12)図19に本発明の他の実施形態を示している。この実施形態では、図15に示す実施形態の構成をベースとして、圧力付与装置60の代わりに、加圧ボルト80を用いるようにしている。
【0196】
板状蓋2において環状溝9の円周方向の複数箇所に対応する位置には、通孔2bの代わりにねじ孔2cが設けられている。このねじ孔2cそれぞれには、加圧ボルト80が頭部80aを上にした状態でねじ込まれている。
【0197】
シールリング6Cの胴部6C1の上面には、圧力伝達部材81が載置されている。この圧力伝達部材81は、シールリング6Cと同じ外形形状の環状平板とされている。
【0198】
そして、加圧ボルト80のねじ軸部80bの下端が、圧力伝達部材81の円周方向の所定位置に当接されるようになっている。
【0199】
この実施形態の場合、加圧ボルト80をねじ込むことにより圧力伝達部材81を下向きに押圧すると、シールリング6Cが下降されることになって、シールリング6Cの胴部6C1およびリップ6C2がコンクリート枠3の上面の膜4に所定の圧力で接触させられることになる。
【0200】
このとき、胴部6C1は、上下方向に弾性的に圧縮されることになって、その下面が膜4に接触させられることになる。一方、リップ6C2は、弾性的に撓まされることになって、その下面において先端側領域が膜4に接触させられることになる。
【0201】
なお、加圧ボルト80のねじ込み深さを深くしたり浅くしたり調整することによって、胴部6C1およびリップ6C2の接触圧力を強くしたり弱くしたり調整することができるなど、止水性能を調整することができる。
【0202】
この実施形態の場合にも、上記(9)と同様の優れた効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0203】
本発明は、地下構造物または筐体の空間の上開口を板状蓋で開放または閉塞可能とする開口開閉構造、ならびに前記上開口に前記板状蓋を覆い被せるように設置する方法に好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0204】
1 地下空間の上開口
2 板状蓋
3 コンクリート枠
4 膜
5 補強部材
6 シールリング
6a 胴部
6b リップ
7 内枠
8 外枠
9 環状溝
10 突片
20 位置決め部材
21 第1部材
21a 横板部
21b 縦板部
21c 補強板部
22 第2部材
22a 横板部
22b 縦板部
22c 補強板部
23 緩衝シート
24 ボルト
25 ナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19