(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065715
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】車載式仮設水洗トイレ、および仮設水洗トイレシステム
(51)【国際特許分類】
B60P 3/00 20060101AFI20230508BHJP
【FI】
B60P3/00 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176003
(22)【出願日】2021-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】396011521
【氏名又は名称】大都技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】都 英吾
(57)【要約】 (修正有)
【課題】内部環境を快適に保つことができるとともに、汚物処理が容易となる車載式仮設水洗トイレ、および車載式仮設水洗トイレを取り入れた水洗トイレシステムを提供する。
【解決手段】車載式仮設水洗トイレ1は、トイレ筐体10の天井40に太陽光パネル14が載置され、天井40は蛇腹40bが上下に伸縮変位することで天井40の高さを大小調節変更できる構造である。収容部50に貯水タンク20と汚水タンク30が載置されている。貯水タンク20と、汚水タンク30は固定バンド15によってトイレ筐体10に固定されている。収容部50は、背面42の下端部と隣接するように併設された直方体の箱である。収容部50が画定する収容空間に、送水ポンプと、破砕圧送装置が収容されている。水洗トイレシステムは、車載式仮設水洗トイレ1を取入れたシステムであり、車載式仮設水洗トイレ1の他、運搬車および処理タンクを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬車に載置された状態で使用できる車載式仮設水洗トイレであって、
便器が設けられたトイレ筐体と、
前記便器に排泄された汚物を洗浄するための洗浄水を供給する貯水タンクと、
洗浄された前記汚物を破砕して汚水として外部空間に圧送する破砕圧送装置と、
前記破砕圧送装置により外部空間に圧送された前記汚水を貯留する汚水タンクと、
前記トイレ筐体の下端部に併設された収容部と、を備え、
前記破砕圧送装置は、前記収容部に収容され、
前記貯水タンク、および前記汚水タンクは、前記収容部に載置されることを特徴とする車載式仮設水洗トイレ。
【請求項2】
前記貯水タンクに貯留される前記洗浄水は、ポンプを動作することで前記便器に供給され、前記ポンプは、前記収容部に収容されることを特徴とする請求項1に記載の車載式仮設水洗トイレ。
【請求項3】
前記汚水タンクは、上端部に前記汚水を流入させる流入バルブが装着され、下端部に前記汚水タンクに貯留された貯留汚水を排出する排出バルブが装着されることを特徴とする請求項1または2に記載の車載式仮設水洗トイレ。
【請求項4】
前記便器は、前記洗浄水が供給される洋式便器と、前記洗浄水を非使用とする小便器とを有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の車載式仮設水洗トイレ。
【請求項5】
請求項1に記載の車載式仮設水洗トイレと、
前記車載式仮設水洗トイレを載置した状態で運搬する運搬車と、
前記貯留タンクに貯留された貯留汚水をまとめて貯留できる処理タンクと、を備え、
前記貯留汚水は、前記処理タンクに貯留された後、処理されることを特徴とする仮設水洗トイレシステム。
【請求項6】
前記汚水タンクは、上端部に前記汚水を流入させる流入バルブが装着され、下端部に前記貯留汚水を排出する排出バルブが装着され、
前記処理タンクは、排出バルブから排出される前記貯留汚水を流入させる処理タンク流入バルブが装着され、
前記排出バルブの位置における前記貯留汚水の位置水頭は、処理タンク流入バルブの位置における前記貯留汚水の位置水頭に比べて大きく設定されることを特徴とする請求項5に記載の仮設水洗トイレシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬車に載置された状態で使用できる車載式仮設水洗トイレ、およびこの車載式仮設水洗トイレを用いた仮設水洗トイレシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場や、屋外に期間限定で設営されるイベント会場は、周囲に常設の屋外トイレがない場合がほとんどである。このような状況下では、一般的に可搬式の仮設トイレが設営されていた。従来の可搬式の仮設トイレは、トラックで設営予定地まで搬送し、クレーン等を用いて設営する必要があった。また、別の場所に設置する場合は、再びクレーン等を用いて荷積み荷下ろしをする必要があり、設置や運搬作業に大きな労力が割かれていた。このような課題に対処するために車載した状態で使用できる移動式仮設トイレが提案されている。
【0003】
特許文献1では、トラックの荷台に簡単に固定することができ、運搬時には天井部を下降して高さを低くすることができて、車載した状態でも地上に据え置いた状態でも使用することができる仮設トイレが提案されている。この仮設トイレは、箱型の天井部が箱型本体に対して昇降可能に構成されており、上記天井部を昇降させる昇降手段と、天井部を上昇させた状態における天井部と箱型本体との隙間を塞ぐ遮蔽手段とを備えているため、トラックの荷台に載せて運搬する際には、天井部を下降させ、仮設トイレの高さを低くすることができる。このため、運搬時に、高さ制限に抵触することがなく、風の影響を受けにくく、トラックの運転にとって安全になる。また、固定用のロープ等を用いることなく、簡単にトラックの荷台に安定させて固定することができる。
【0004】
特許文献2では、伸縮開閉する蛇腹状のルーフ部を備える移動式仮設トイレが提案されている。この移動式仮設トイレは、内部に市販されているポンプ式簡易水洗トイレが収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-270427号公報
【特許文献2】特開2005-87380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で提案されている仮設トイレは、水洗式であるか否か、また汚物を貯留する貯留槽の配置については開示されていない。しかし、図面等から、非水洗式であり、貯留槽は便器の下方に配置されると推察される。仮に、非水洗式であるとすると、汚物に起因する臭気が内部に充満して籠もり、内部環境を快適な状態に保つことはできない。また、汚物を貯留するための貯留槽は便器の下に置かれているとすると、汚物を処理するために、例えば荷台に設けられるあおりを回動する等の、手順を踏む必要がある。
【0007】
特許文献2で提案されている仮設トイレについては、簡易水洗式であることが開示されているが、特許文献1と同様、汚物を貯留する貯留槽は便器の下方に配置されると推察される。したがって、汚物に起因する臭気が内部にある程度充満して籠もると考えられ、汚物を処理するために特許文献1と同様の手順を踏む必要がある。
【0008】
本発明は、これらの問題点に着目してなされたものであり、内部環境を快適に保つことができるとともに、汚物処理が容易となる車載式仮設水洗トイレ、および車載式仮設水洗トイレを取入れた水洗トイレシステムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための発明は、運搬車に載置された状態で使用できる車載式仮設水洗トイレであって、便器が設けられたトイレ筐体と、便器に排泄された汚物を洗浄するための洗浄水を供給する貯水タンクと、洗浄された汚物を破砕して汚水として外部空間に圧送する破砕圧送装置と、破砕圧送装置により外部空間に圧送された汚水を貯留する汚水タンクと、トイレ筐体の下端部に併設された収容部とを備え、破砕圧送装置は、収容部に収容され、貯水タンク、および汚水タンクは、収容部に載置されることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、便器に排泄された汚物は洗浄水とともに破砕圧送装置に送られて、汚水として外部空間に設けられた汚水タンクに貯留されるので、汚水タンクから排出される臭気を伴う空気は、トイレ筐体の内部に流入することはない。また、この構成によれば、破砕圧送装置は、トイレ筐体の下端部に併設された収容部に収容され、貯水タンク、および汚水タンクは、収容部に載置されるので、トイレ筐体の効率的な空間利用が図れるとともに、車載式仮設水洗トイレの省スペース化を図ることができる。
【0011】
好ましくは、貯水タンクに貯留される洗浄水はポンプを動作することで便器に供給され、ポンプは、収容部に収容されることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、貯水タンクに貯留される洗浄水はポンプを動作することで便器に供給されるので、洗浄水を便器に送水するために、貯水タンクを所定高さ以上にする必要はない。また、ポンプは収容部に収容されるので、トイレ筐体の更なる効率的な空間利用が図れるとともに、車載式仮設水洗トイレの更なる省スペース化を図ることができる。
【0013】
好ましくは、汚水タンクは、上端部に汚水を流入させる流入バルブが装着され、下端部に汚水タンクに貯留された貯留汚水を排出する排出バルブが装着されることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、汚水タンクは、上端部に汚水を流入させる流入バルブが装着され、下端部に汚水タンクに貯留された貯留汚水を排出する排出バルブが装着されるので、排出バルブを解放することでほとんどすべての貯留汚水を貯留タンクから排出できる。また、排出バルブは、運搬車に載置される車載式仮設トイレの収容部の上方に位置するので、高い位置水頭を確保できる。これにより、一定要件下、貯留汚水を排出するためのポンプ等が不要となる。
【0015】
好ましくは、便器は、洗浄水が供給される洋式便器と、洗浄水を非使用とする小便器とを有することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、洗浄水を非使用としているので、小便器は洗浄水の供給を受けず、洗浄水の効率的な利用を図ることができる。
【0017】
上記課題を解決するための他の態様の発明は、上述した車載式仮設水洗トイレを用いた仮設水洗トイレシステムであって、上述した車載式仮設水洗トイレと、車載式仮設水洗トイレを載置した状態で運搬する運搬車と、貯留タンクに貯留された貯留汚水をまとめて貯留できる処理タンクとを備え、貯留汚水は、処理タンクに貯留された後、処理されることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、車載式仮設水洗トイレと、車載式仮設水洗トイレを載置した状態で運搬する運搬車と、貯留タンクに貯留された貯留汚水をまとめて貯留できる処理タンクとを備え、貯留汚水は、処理タンクに貯留された後、処理されるので、貯留汚水の処理は、処理タンクに貯留することで足りる。これにより、バキュームカーを都度手配することなく、あるいは、運搬車を、わざわざ汚水処理施設まで搬送することなく、貯留汚水を処理できる。その結果、車載式仮設水洗トイレの効率的な運用が可能となる。
【0019】
好ましくは、汚水タンクは、上端部に汚水を流入させる流入バルブが装着され、下端部に貯留汚水を排出する排出バルブが装着され、処理タンクは、排出バルブから排出される貯留汚水を流入させる処理タンク流入バルブが装着され、排出バルブの位置における貯留汚水の位置水頭は、処理タンク流入バルブの位置における貯留汚水の位置水頭に比べて大きく設定されることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、排出バルブの位置における貯留汚水の位置水頭は、処理タンク流入バルブの位置における貯留汚水の位置水頭に比べて大きく設定されるので、貯留汚水を自然流下させて、貯留タンクから排出して処理タンクに流入させることができる。すなわち、貯留汚水を処理タンクに移送するためのポンプ等の移送設備を省略できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】同、天井板を上昇させたときの正面図である。
【
図4】主に送水ポンプと破砕圧送装置を示す平面配置図である。
【
図7】車載式仮設水洗トイレの概略的な配管図である。
【
図8】運搬車に載置された仮設水洗トイレシステムを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、
図1~7を参照して本発明における車載式仮設水洗トイレ1(以後、仮設トイレ1と称す)の実施形態について詳述する。
【0023】
図1、2に示す通り、仮設トイレ1は、トイレ筐体10の天井40に太陽光パネル14が載置されている。太陽光パネル14は、仮設トイレ1の動作に必要な電気をバッテリー(図示略)に供給するためのものである。なお、バッテリーは、トイレ筐体10の室内10aに設けることが好ましい。また、貯水タンク20と、汚水タンク30は、固定バンド15によってトイレ筐体10に固定された状態で収容部50に載置されている。これにより、仮設トイレ1は構造的に一体化できて、これらをまとめて一括での吊り上げや移動が可能となる。貯水タンク20に貯留された洗浄水WSは、汚物を洗浄するための水として、また手洗い用の水として利用される。汚水タンク30は汚水SWを貯留するためのタンクである。
【0024】
バッテリーはインバーターを介し、送水ポンプ21および破砕圧送装置31、室内照明等に電力を供給するようになっている。この電力供給により、貯水タンク20の水を送水ポンプ21で洗浄タンク63に供給することが可能となる。また、洋式便器61に排泄された汚物を、破砕圧送装置31を動作させることで、汚水として汚水タンク30に圧送することができる。
【0025】
トイレ筐体10は、立体ラーメン構造となるフレームにパネルが張り付けられた強固で頑丈な構造であり、有底で天井付きの角筒体を成す。なお、トイレ筐体10と接続する範囲のパネルは、トイレ筐体10と供用されている。トイレ筐体10の前面41に、外開き式の扉11が装着されている。また、前面41の上端部に、換気装置13が装着されている。換気装置13はファンを回転させることで、トイレ筐体10の内部の空気を外部に排出するとともに、外部の空気をトイレ筐体10の室内10aに取り込むことができる装置である。
【0026】
天井40は、天井板40aと、上下方向に伸縮変位可能な蛇腹40bを有している。天井板40aは蛇腹40bを介してトイレ筐体10の前面41、側面43、背面42の各上端に接続している。蛇腹40bが伸長することで天井板40aは上昇する。運搬時において、蛇腹40bを折り畳んで下方に縮小させることで、天井板40aを下降させて仮設トイレ1の構造高さを減じ、そのトイレ1の背丈を低くすることができる。そのため、風の影響を受けにくく走行安定性が向上する。また、蛇腹40bを伸長することで天井板40aが上昇し、トイレ筐体10の内部が天井高となるため、室内10aに入ったとき、天井空間に余裕ができて使用者に圧迫感を生じさせない。
【0027】
図3に示す通り、室内10aに、洋式便器61と小便器62が備えつけられている。洋式便器61は貯水タンク20から洗浄水WSの供給を受ける水洗式である。洗浄水WSは、背面42側に設けられた洗浄タンク63に貯留されている。また、洗浄タンク63は、手洗いの為の水栓64が装着されている。小便器62は洗浄水WSを非使用としているため、洗浄水WSの供給を受けない非水洗式となっている。洋式便器を水洗式とし、小便器を非水洗式とすることにより、洗浄水WSの使用量を低減できる。
【0028】
収容部50は、立体ラーメン構造となるフレームにパネルが張り付けられた強固な構造であり、背面42の下端部と隣接するように併設された直方体の箱である。
図4に示す通り、収容部50が画定する収容空間50aに、送水ポンプ21と、破砕圧送装置31が収容されている。また、上述した通り、収容部50は貯水タンク20と、汚水タンク30を載置している(
図3参照)。すなわち、貯水タンク20と、汚水タンク30は送水ポンプ21と、破砕圧送装置31の上方に位置している。このように、上下方向に重層配置することにより、仮設トイレ1の省スペース化を図ることができる。
【0029】
図5に示す通り、貯水タンク20は上端部に蓋22が設けられており、下端部に送水口23が装着されている。蓋22を開いて開口部25から給水ホース26で給水することで洗浄水WSを貯留することができる。送水ポンプ21を動作することで、貯留された洗浄水WSは送水口23、送水ホース27を経由して送水ポンプ21に送水される。開口部25に対する蓋22の着脱する部分には、蓋22を閉じたとき、貯水タンク20の内部に空気が流入できるスリット(図示略)を設けておくことが好ましい。これにより、貯留された洗浄水WSが送水ポンプ21に送水されたときの貯水タンク20の内部圧力の低下を回避できる。その結果、送水ポンプ21への円滑な送水が可能となる。
【0030】
図6に示す通り、汚水タンク30は上端部に設けられた蓋32に汚水流入口37が装着され、本体の上端部に吸気弁33、および排気弁34が装着されている。さらに、下端部に排水バルブ35が装着されている。吸気弁33は汚水タンク30に貯留される汚水SWを排出するとき、外部の空気を取入れて内部圧力の低下を抑制することで汚水SWの円滑な排出を図るためのものである。排気弁34は汚水SWが汚水タンク30に流入するとき、内部の空気を排出して内部圧力の上昇を抑制するためのものである。これにより、汚水SWの円滑な流入および排出を図ることができる。排気弁34から排出された臭気混じりの空気を脱臭するために、脱臭フィルターを装着することが好ましい。汚水SWの処理は、排水バルブ35にバキューム車の吸排ホースを接続して行うことができる。また、蓋32を取り外した状態でバキューム車の吸排ホースを汚水タンク30の内部に挿入して汚水SWの処理を行ってもよい。
【0031】
本実施形態では、貯水タンク20と汚水タンク30は同じ形状としているが、汚水タンク30の容量を、貯水タンク20の容量よりも大きくすることが好ましい。貯水タンク20、汚水タンク30の容量は、トイレの使用予想人数や、トイレの設置場所等を勘案して適宜に定めればよい。
【0032】
図7に示す通り、貯水タンク20に貯留された洗浄水WSは、送水ポンプ21を動作することで洗浄タンク63に送水されて貯留される。洋式便器61に排出された汚物は洗浄タンク63に貯留される洗浄水WSによって排出され、破砕圧送装置31に送られる。洗浄水WSとともに破砕圧送装置31に送られた汚物は、撹拌粉砕されて汚水となり汚水タンク30に圧送される。一方、小便器62に排出された汚物は、破砕圧送装置31を経由して汚水タンク30に圧送される。
【0033】
図8を参照して、上述した車載式仮設水洗トイレ1を構成の一部とする水洗トイレシステム100について説明する。
【0034】
水洗トイレシステム100は、仮設トイレ1、運搬車2、および処理タンク3を有している。運搬車2は、仮設トイレ1を載置した状態で移動できる車両である。運搬車2は、小回りが利き狭隘な道路でも走行できる小型のトラックであることが好ましい。より好ましくは軽トラックである。運搬車2を軽トラックとする場合、積載高さ、積載重量は、例えば2tトラックに比べて大きな制約を受ける。そのため、仮設トイレ1の総重量、および構造高さを軽トラックで積載できる程度に設定する必要がある。本実施形態の仮設トイレ1は、蛇腹40bを上下方向に伸縮変位させることで天井板40aの高さを大小調節変更することができる。仮設トイレ1の構造高さは、天井板40aを下降させて軽トラックに載置した状態で、軽トラックが走行できる高さを超えない高さ寸法とすることが好ましい。また、上昇完了時の天井板40aの高さは、室内10aに居て、使用者に圧迫感を生じさせない高さ寸法とすることが好ましい。
【0035】
仮設トイレ1は、トイレ筐体10の前面41が運搬車2の進行方向の後方に位置する状態で荷台210に載置されている。これにより、扉11は運搬車2の進行方向の後方に向かって解放可能な位置に配置される。トイレ筐体10の側面43には、固定金具12が装着され、運搬車2の側方には、あおり211aが配置されている。固定金具12とあおり部材211aとは、ワイヤー12aを介して接続されている。ワイヤー12aに所定の緊張力を負荷し、ワイヤー12aをピンと張ることで、仮設トイレ1は、不用意に位置ずれすることなく荷台210に強固に固定される。
【0036】
汚水タンク30の下端部に装着される排水バルブ35は、あおり211bの上端よりも高い位置に設定されている。
【0037】
荷台210の後方に位置するあおり211bを倒した状態で、荷台210と地面110の間に階段(図示略)を架け渡すことで、使用者は階段を昇って荷台210に上がり、扉11を経由して室内10aに到達できる。
【0038】
処理タンク3は、上端部に処理タンク流入バルブ225が装着されている。また、処理タンク流入バルブ225の装着高さは、排水バルブ35の装着高さに比べて低く設定されている。これにより、排水バルブ35と処理タンク流入バルブ225を、パイプ36を介して接続したとき、排水バルブ35の位置における貯留汚水SWの位置水頭は、処理タンク流入バルブ225の位置における貯留汚水SWの位置水頭よりも高くなるので、汚水SWは自然流下して処理タンク3に排出される。
【0039】
汚水SWが処理タンク3に流入したとき、処理タンク3の内部の空気を排出するための排気弁234が上端部に設けられている。排気弁234から排出された臭気混じりの空気を脱臭するために、脱臭フィルターを装着することが好ましい。
【0040】
処理タンク3の上端部の四隅に、吊りフックが装着されるとともに、下端部にフォークリフトのフォークが挿入可能な挿入孔220aが設けられている。これにより、処理タンク3は、クレーンおよびフォークリフトの双方のいずれでも設置可能となっている。
【0041】
処理タンク3に貯留された汚水の貯留量を確認できるように、処理タンク3の側面に観測窓221が設けられている。観測窓221は、上下方向に細長い半透明な短冊状のスリットに嵌合された透視板となっている。観測窓221の代わりに、汚水面を測る水位計を用いてもよい。
【0042】
処理タンク3の下端部に液抜きバルブ222が装着されている。これにより、底に溜まった汚水を抜き取ることが可能となり、処理タンク3を清潔に保つことができる。
【0043】
処理タンク3の貯留能力は、少なくとも汚水タンク30の貯留能力の2倍以上に設定されている。これにより、処理タンク3は複数台の運搬車2に貯留されている汚水を一括にまとめて貯留できる。汚水の処理回数を低減することで汚水処理の効率化を図ることができる。
【0044】
汚水SWの処理は、液抜きバルブ222にバキューム車の吸排ホースを接続して行うことができる。また、上端部に設けられた蓋(図示略)を取り外した状態でバキューム車の吸排ホースを汚水タンク30の内部に挿入して汚水SWの処理を行ってもよい。また、処理タンクを直接、汚水処理施設に搬送して汚水SWを処理してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る仮設水洗トイレ、仮設水洗トイレシステムは設置が容易で取り扱いが簡単であるとともに大量の汚物を迅速に処理できる。特に、一度に大人数の来場者が訪れる屋外イベント会場や、被災地における避難場所に機動的に適用可能であり、汚水の後処理も簡単であることから産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0046】
1:仮設トイレ
2:運搬車
3:処理タンク
10:トイレ筐体
20:貯水タンク
30:汚水タンク
40:天井
41:流入バルブ
42:排出バルブ
50:収容部
61:洋式便器
62:小便器
100:仮設水洗トイレシステム
225:処理タンク流入バルブ