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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065719
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】災害対応支援システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/2668 20110101AFI20230508BHJP
   G06Q 50/26 20120101ALI20230508BHJP
   H04M 11/04 20060101ALI20230508BHJP
   G08B 27/00 20060101ALI20230508BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
H04N21/2668
G06Q50/26
H04M11/04
G08B27/00 Z
G09B29/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176013
(22)【出願日】2021-10-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人科学技術振興機構 令和3年度戦略的創造研究推進事業「自然災害領域等におけるCyborgCrowdミドルウェア要件分析と応用」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
(71)【出願人】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】井ノ口 宗成
(72)【発明者】
【氏名】森嶋 厚行
(72)【発明者】
【氏名】北原 格
(72)【発明者】
【氏名】田島 敬史
【テーマコード(参考)】
2C032
5C087
5C164
5K201
5L049
【Fターム(参考)】
2C032HB05
2C032HB21
2C032HB31
2C032HC27
2C032HC38
5C087AA03
5C087AA09
5C087AA19
5C087DD02
5C087EE05
5C087EE07
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087GG02
5C164FA23
5C164SB08S
5C164SC05P
5C164SC11S
5C164TA06S
5C164YA15
5K201BA02
5K201CC04
5K201CC10
5K201DC04
5L049CC35
(57)【要約】
【課題】避難所等の基地局で行われる住民の避難状況を把握する活動を、遠隔地の管理センタ等から効率よく的確に支援できる災害対応支援システムを提供する。
【解決手段】管理センタ18の管理装置16は、基地局12の端末装置14から送信された避難状況データを受信する避難状況データ受信手段16aを備える。避難状況データ受信手段16aが受信した避難状況データを、あらかじめ設定された単位期間Ta,Tb,・・・毎に分析するデータ分析手段16bを備える。データ分析手段16bの分析結果に基づいて災害対応支援情報を作成する支援情報作成手段16cを備える。災害対応支援情報を端末装置14に送信する支援情報送信手段16dを備える。避難状況データには、少なくとも、四角形のエリアARが表されたアナログ地図22が撮影されたデジタル形式の動画データであるデジタル地図データ24が含まれている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
避難所等の基地局で使用される端末装置との間で通信が可能な管理装置を備えた災害対応支援システムであって、
前記管理装置は、前記端末装置から送信された避難状況データを受信する避難状況データ受信手段と、前記避難状況データ受信手段が受信した前記避難状況データを、あらかじめ設定された単位期間毎に分析するデータ分析手段と、前記データ分析手段の分析結果に基づいて災害対応支援情報を作成する支援情報作成手段と、前記災害対応支援情報を前記端末装置に送信する支援情報送信手段とを備え、
前記避難状況データには、少なくとも、四角形のエリアが表されたアナログ地図が撮影されたデジタル形式の動画データであるデジタル地図データが含まれていることを特徴とする災害対応支援システム。
【請求項2】
前記デジタル地図データは、前記エリアの4つの角部に相互標定用マークが各々表示されるとともに、当該エリアの中の適宜の位置に避難状況表示マークが表示されたアナログ地図が撮影されたデジタル形式の動画データであり、
前記データ分析手段は、1つの前記単位期間の前記避難状況データが取得されることにより、当該単位期間の前記デジタル地図データを構成する複数の静止画データに対し、4つの前記相互標定用マークを基に相互標定を行う相互標定処理と、相互標定後の前記静止画データ毎に、前記静止画データに表示された前記避難状況表示マークの位置座標を算出し、算出された複数の位置座標を統計分析することによって、当該単位期間における前記避難状況表示マークの位置座標を特定する位置座標特定処理とを実行する請求項1記載の災害支援システム。
【請求項3】
前記デジタル地図データは、4つの前記相互標定マーク、前記避難状況表示マーク、及び4つの前記相互標定マークを識別するための補助マークが表示されたアナログ地図が撮影されたデジタル形式の動画データであり、
前記データ分析手段は、前記相互標定処理を実行する時、前記静止画データ毎に、前記静止画データの中に表示された4つの前記相互標定マークと前記補助マークとの位置関係を分析することによって、前記静止画データにおける4つの前記相互標定マークを識別する請求項2記載の災害対応支援システム。
【請求項4】
前記データ分析手段は、前記相互標定処理を実行する時、4つの前記相互標定マーク及び前記補助マークの中の1つでも認識されない前記静止画データがあった場合、その前記静止画データを、前記データ分析手段が行う分析の対象から除外する請求項3記載の災害対応支援システム。
【請求項5】
前記データ分析手段は、1つの前記単位期間の前記デジタル地図データについて、前記相互標定処理を実行した後、前記位置座標特定処理を実行する前に、避難状況表示マーク識別処理及びグルーピング処理を実行し、
前記避難状況表示マーク識別処理は、1つの前記単位期間の前記デジタル地図データを構成する前記静止画データ毎に、前記静止画データに表示された前記避難状況表示マークを認識し、認識された個々の前記避難状況表示マークを、前記相互標定マークとの位置関係を分析することによって識別し、ラベリングする処理であり、
前記グルーピング処理は、1つの前記単位期間の前記デジタル地図データを構成する複数の前記静止画データについて、個々の前記静止画データに表示された前記避難状況表示マークの中の、同一のラベリングがされたもの同士を1つのグループとする処理であり、
前記データ分析手段は、1つの前記グループに属する前記避難状況表示マーク毎に、前記位置座標特定処理を実行する請求項2乃至4のいずれか記載の災害対応支援システム。
【請求項6】
前記避難状況データには、4つの前記相互標定マークが表示された位置の緯度経度を認識可能にする緯度経度情報が含まれており、
前記データ分析手段は、前記緯度経度情報と、前記位置座標特定処理で特定された前記避難状況表示マークの位置座標とに基づいて、個々の前記位置座標に対応した緯度経度を算出する緯度経度算出処理を実行する請求項2乃至5のいずれか記載の災害対応支援システム。
【請求項7】
前記支援情報作成手段が作成する前記災害対応支援情報には、前記避難状況表示マークの数の経時変化の情報が含まれる請求項1乃至6のいずれか記載の災害対応支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害発生時に避難所等の基地局の活動を遠隔地から支援するための災害対応支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地震や豪雨等の災害が発生すると、各地域に避難所が開設されたり、市町村役場に対策本部が設けられたりする。避難所や災害対策本部は災害対応の最前線の基地局になるので、できるだけスムーズに運営されることが求められる。しかし、基地局を運営する担当者は一般的には不慣れなので、運営担当者の負担が非常に大きく、多少の混乱が発生することは避けられないというのが実情である。
【0003】
この種の基地局は臨時で開設されるものなので、災害対応を遅滞なく円滑に行うための特別な設備(専用のコンピュータシステム等)を常設しておくことは難しい。そこで、遠隔地にある県や国等の管理センタから、リモートで災害対応支援を行う方法が考えられる。
【0004】
災害発生初期に基地局で行う重要な活動の1つに、住民の避難状況を素早く的確に把握することが挙げられる。例えば、基地局内の壁やホワイトボードにその地域の住宅地図等の紙地図を貼り出し、住人が避難した住宅から順にマーキングを行うことによって避難状況を把握することが行われる。避難状況を把握する活動は、基地局の運営担当者にとって非常に手間が掛かるものであるが、従来、この活動を管理センタから支援するシステムはなかった。
【0005】
例えば、特許文献1には、災害発生時、スマートホン等の無線端末装置を携帯している個人に対し、管理センタから有用な行動情報(災害時体の情報、災害発生時における行動指針をなる情報)を報知する無線通信システムが開示されている。しかし、このシステムは、基地局で行う活動を直接支援するものではない。
【0006】
また、特許文献2には、紙地図の内容を電子的に処理する技術であって、紙地図に、当該地図の4隅の緯度経度の情報を含むQRコード(登録商標)を表記しておき、紙地図をスキャナで読み込んでデジタル化し、デジタル化した地図をメッシュで区切り、その中のマーキングされた箇所を同定する技術が開示されている。しかし、この技術は、避難所等の基地局で使用するのに適していない。例えば、避難所等の基地局では、壁などに貼り出される大判の地図に対応したスキャナを確保することが難しい。また、時間とともに避難状況を示すマーキングがどんどん追加されるので、基地局の運営担当者は、紙地図をスキャナで読み込む作業を何度も繰り返さなければならず、非常に面倒であり、状況把握のリアルタイム性にも欠ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-192887号公報
【特許文献2】特開2011-237552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、従来、避難所等の基地局では、災害発生初期の、住民の避難状況を把握する活動をスムーズに行うことが難しく、遠隔地の管理センタ等から支援するシステムもなかった。この問題は、特許文献1,2の技術を組み合わせたとしても、解決することができない。
【0009】
本発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、避難所等の基地局で行われる住民の避難状況を把握する活動を、遠隔地の管理センタ等から効率よく的確に支援できる災害対応支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、避難所等の基地局で使用される端末装置との間で通信が可能な管理装置を備えた災害対応支援システムであって、
前記管理装置は、前記端末装置から送信された避難状況データを受信する避難状況データ受信手段と、前記避難状況データ受信手段が受信した前記避難状況データを、あらかじめ設定された単位期間毎に分析するデータ分析手段と、前記データ分析手段の分析結果に基づいて災害対応支援情報を作成する支援情報作成手段と、前記災害対応支援情報を前記端末装置に送信する支援情報送信手段とを備え、前記避難状況データには、少なくとも、四角形のエリアが表されたアナログ地図が撮影されたデジタル形式の動画データであるデジタル地図データが含まれている災害対応支援システムである。
【0011】
前記デジタル地図データは、前記エリアの4つの角部に相互標定用マークが各々表示されるとともに、当該エリアの中の適宜の位置に避難状況表示マークが表示されたアナログ地図が撮影されたデジタル形式の動画データであり、前記データ分析手段は、1つの前記単位期間の前記避難状況データが取得されることにより、当該単位期間の前記デジタル地図データを構成する複数の静止画データに対し、4つの前記相互標定用マークを基に相互標定を行う相互標定処理と、相互標定後の前記静止画データ毎に、前記静止画データに表示された前記避難状況表示マークの位置座標を算出し、算出された複数の位置座標を統計分析することによって、当該単位期間における前記避難状況表示マークの位置座標を特定する位置座標特定処理を実行する。
【0012】
前記デジタル地図データは、4つの前記相互標定マーク、前記避難状況表示マーク、及び4つの前記相互標定マークを識別するための補助マークが表示されたアナログ地図が撮影されたデジタル形式の動画データであり、前記データ分析手段は、前記相互標定処理を実行する時、前記静止画データ毎に、前記静止画データの中に表示された4つの前記相互標定マークと前記補助マークとの位置関係を分析することによって、前記静止画データにおける4つの前記相互標定マークを識別する。
【0013】
前記データ分析手段は、前記相互標定処理を実行する時、4つの前記相互標定マーク及び前記補助マークの中の1つでも認識されない前記静止画データがあった場合、その前記静止画データを、前記データ分析手段が行う分析の対象から除外する。
【0014】
前記データ分析手段は、1つの前記単位期間の前記デジタル地図データについて、前記相互標定処理を実行した後、前記位置座標特定処理を実行する前に、避難状況表示マーク識別処理及びグルーピング処理を実行し、前記避難状況表示マーク識別処理は、1つの前記単位期間の前記デジタル地図データを構成する前記静止画データ毎に、前記静止画データに表示された前記避難状況表示マークを認識し、認識された個々の前記避難状況表示マークを、前記相互標定マークとの位置関係を分析することによって識別し、ラベリングする処理であり、前記グルーピング処理は、1つの前記単位期間の前記デジタル地図データを構成する複数の前記静止画データについて、個々の前記静止画データに表示された前記避難状況表示マークの中の、同一のラベリングがされたもの同士を1つのグループとする処理であり、前記データ分析手段は、1つの前記グループに属する前記避難状況表示マーク毎に、前記位置座標特定処理を実行する。
【0015】
前記避難状況データには、4つの前記相互標定マークが表示された位置の緯度経度を認識可能にする緯度経度情報が含まれており、前記データ分析手段は、前記緯度経度情報と、前記位置座標特定処理で特定された前記避難状況表示マークの位置座標とに基づいて、個々の前記位置座標に対応した緯度経度を算出する緯度経度算出処理を実行する構成にすることができる。また、前記支援情報作成手段が作成する前記災害対応支援情報には、前記避難状況表示マークの数の経時変化の情報が含まれることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の災害対応支援システムによれば、避難所等の基地局で行われる、住民の避難状況を把握する活動を効率よく的確に支援することができる。基地局の運営担当者は、基地局に貼り出された避難状況を示すアナログ地図をウェブカメラ付きシングルボードコンピュータ等の端末装置で撮影し、デジタル地図データとして管理センタに送信する。そして、管理センタの管理装置は、デジタル地図データを含む避難状況データを受信すると、避難状況データを自動的に分析し、有用な災害対応支援情報を基地局に送信することができる。したがって、基地局は、高価な専用設備が常設されていなくても、有用な災害対応情報を効率よくタイムリーに得ることができ、且つ基地局の運営担当者の負担も大幅に軽減される。
【0017】
また、ウェブカメラ付きシングルボードコンピュータ等の可搬型の端末装置でアナログ地図を撮影する場合、使用中に撮影アングルが変化してしまうことが予想されるが、管理装置のデータ分析手段が、相互標定マークを基に相互標定を行ってから分析を行う構成にすることにより、複数の避難状況表示マークを正確に同定することができる。また、基地局内は多くの人が行き来するとともに、避難者の避難状況報告においてアナログ地図への作業が必要となり、それらの人たちが写り込んでしまうことでアナログ地図や報告状況を認識できない可能性があるため、データ分析手段が、この種のノイズデータを自動的に分析対象から除外する構成にすることにより、混乱している現場でも安心して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の災害対応支援システムの一実施形態を示すシステム構成図(a)、災害発生時の基地局内の様子を示す図(b)である。
図2】基地局内に貼り出されたアナログ地図の表示内容の一例を示す図(a)、避難状況データの1つである、相互標定マークの緯度経度情報を示す図表(b)である。
図3】避難状況データの1つであるデジタル地図データを構成する静止画データの具体例を示す図(a)~(e)である。
図4】データ分析手段の動作の一例(単位期間Taの動作)を示す図表である。
図5】データ分析手段の動作の一例(単位期間Tdの動作)を示す図表である。
図6】支援情報作成手段が作成する災害対応支援情報の2つの例を示す図(a)、(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の災害対応支援システムの一実施形態について、図面に基づいて説明する。この実施形態の災害対応支援システム10は、図1(a)に示すように、災害発生時の避難所等の基地局の活動を支援するシステムであり、基地局12の端末装置14との間で通信が可能な管理装置16を備え、管理装置16が主体となって、基地局12で行われる住民の避難状況を把握する活動を支援する。管理装置16は、基地局12の遠隔地にある管理センタ18に設置されたコンピュータ等で、インターネット等の通信回線20を通じて端末装置14と双方向の通信を行うことができる。端末装置14は、ウェブカメラ付きシングルボードコンピュータや、撮影機能付きスマートホン等が想定され、撮影機能を備えたタブレットやパソコン等でもよい。特に、ウェブカメラ付きシングルボードコンピュータは、コストが安価で、必要に応じてデバイスや機能を拡張しやすく、サイズが小さく省電力で扱えることから端末装置14に適している。
【0020】
まず、災害が発生して間もない基地局12の中の様子を説明する。基地局12では、住民の避難状況を把握するため、図1(b)に示すように、ホワイトボード等にその地域を表した大判のアナログ地図22が貼り出され、基地局12への避難が終了した住宅から順に、小さい丸形シール(避難状況表示マークJM1,JM2,・・・)を貼り付けることにしている。アナログ地図22を大判にするのは、避難状況の全体像を多くの人が一目で視認できるようするためである。
【0021】
アナログ地図22は、住宅地図等の紙地図又は上空から撮影された航空写真等で、図2(a)に示すように、△△町の全域を含む四角形のエリアARが表されている。そして、エリアARの4つの角部に相互標定マークSM1~SM4が表示され、相互標定マークSM1,SM4の間のSM1に近い位置に補助マークHMが表示され、エリアARの中の適宜の位置に上記の避難状況表示マークJM1,JM2,・・・が表示されている。相互標定マークSM1~SM4及び補助マークHMについては後で説明する。
【0022】
各マークは、小さい丸形シールを貼り付けたものでもよいし、マジックペン等の筆記具で描いた丸印でもよい。なお、各マークの形状は丸形以外の形状でもよいが、丸形にすると、マークの中心点の座標を画像分析で容易に把握できるという利点がある。また、アナログ地図22に表記されている家屋、ビル、橋梁等は多くが多角形なので、これらと区別しやすいという利点もある。
【0023】
次に、管理センタ18に設置された管理装置16のシステム構成を説明する。管理装置16は、図1(a)に示すように、避難状況データ受信手段16a、データ分析手段16b、支援情報作成手段16c及び支援情報送信手段16dで構成される。
【0024】
避難状況データ受信手段16aは、基地局12の端末装置14から送信された避難状況データを受信する機能ブロックである。避難状況データには、アナログ地図22を撮影したデジタル形式の動画データであるデジタル地図データ24が含まれ、デジタル地図データ24は、複数の静止画データ26で構成される。また、避難状況データには、デジタル地図データ24の中の4つの相互標定マークSM1~SM4の緯度経度を示す緯度経度情報(図2(b))が含まれる。
【0025】
データ分析手段16bは、避難状況データ受信手段16aが受信した避難状況データを、あらかじめ設定された単位期間Ta,Tb,Tc,・・・毎に分析し、各単位期間における、避難状況表示マークJM1,JM2,・・・の位置座標を算出する等の動作を行う機能ブロックである。1つの単位期間の長さは、例えば1~3秒程度である。
【0026】
以下、データ分析手段16bの機能及び具体的な動作について、図1図3図5に基づいて説明する。ここでは、1つの単位期間のデジタル画像データ24が30個の静止画データ26で構成されると仮定して、例えば、単位期間Taのデジタル画像データ24はデジタル画像データ24(Ta)と表記し、このデジタル画像データ24(Ta)を構成するタイミングtk(k=1~30)の静止画データ26を静止画データ26(Ta/tk)と表記する。
【0027】
基地局12には、端末装置14として可搬型のウェブカメラ付きシングルボードコンピュータ等が設置されているが、避難者や運営担当者等の避難所利用者Pの避難所生活活動により、端末装置14やホアナログ地図22への接触が想定される。従って、デジタル画像データ24は、1つの単位期間の間であっても、撮影アングルが微妙にずれる可能性がある。例えば、単位期間Taの静止画データ26の例を示すと、図3(a)に示す静止画像データ26(Ta/t1)はエリアARが長方形になっているが、図3(b),(c)に示す静止画像データ26(Ta/t5),26(Ta/t15)はエリアARが少し歪んだ四角形になっている。また、図3(d)に示す静止画像データ26(Ta/t21)~26(Ta/t25)では人が写り込んで相互標定マークSM3が隠れてしまっている。また、図3(e)に示すように、別の単位期間Tdの静止画像データ26(Td/t7)~26(Td/t13)は、人が写り込んで避難状況表示マークJM2が隠れてしまっている。
【0028】
データ分析手段16bは、単位期間Taの避難状況データ(デジタル地図データ及び相互標定マークの緯度経度情報)が取得されると、まず、デジタル地図データ24(Ta)を構成する30個の静止画データ26(Ta/t1)~26(Ta/t30)に対し、相互標定処理を実行する。具体的には、各静止画データの中の4つの相互標定用マークSM1~SM4を基に、射影変換等の公知の手法を用いて相互標定を行う。このとき、データ分析手段16bは、相互標定マークSM1~SM4の認識が静止画データ毎にずれないように、相互標定マークSM1~SM4と補助マークHMとの位置関係を各々分析することによって、4つの相互標定マークを識別する(どれがSM1,SM2,SM3,SM4かを特定する)。このようにすれば、例えば静止画像データの上下左右が判断しにくい時でも、正しく識別することができる。
【0029】
単位期間Taにおいて、30個の静止画データ26(Ta/t1)~26(Ta/t30)のうち、図3(d)示す5個の静止画データ26(Ta/t21)~26(Ta/t25)に相互標定マークSM3が表示されていないので、この5個の静止画データを含めると相互標定を正確に行うことができない。そこで、データ分析手段16bは、図4に示すように、静止画データ26(Ta/t21)~26(Ta/t25)以外の25個の静止画データで相互標定を行う。そして、除外した5つの静止画データは、単位期間Taにおけるノイズデータとみなして以降の分析対象から除外する。
【0030】
単位期間Taの相互標定処理の後、次は避難状況表示マーク識別処理を実行する。避難状況表示マーク識別処理では、1つの単位期間の静止画データ(相互標定後の静止画データ)に対し、静止画データ毎に、静止画データに表示された避難状況表示マークを認識し、認識された個々の避難状況表示マークを、相互標定マークとの位置関係を分析することによって識別しラベリングする処理である。図3図4に示す事例では、分析対象の静止画像データが25個であり、各々に複数個の避難状況表示マークが表示されている。そこで、各静止画像データに表示された避難状況表示マークを、相互標定マークSM1~SM4との位置関係に基づいて識別し、各々「JM1」、「JM2」、・・・とラベリングする。
【0031】
単位期間Taの避難状況表示マーク識別処理の後、次はグルーピング処理を実行する。グルーピング処理は、1つの単位期間の静止画データについて、個々の静止画データに表示された避難状況表示マークの中の、同じラベルが付与されたもの同士を1つのグループとする処理である。図3図4に示す事例では、25個の静止画像データの中の、ほぼ同じ位置にある避難状況表示マークに「JM1」又は「JM2」等のラベルが付与され、グルーピング処理を行って、25個の静止画データに表示されている避難状況表示マークを、「JM1」のグループ、「JM2」のグループ等のように区分する。
【0032】
なお、30個の静止画データの中に避難状況表示マークが1個も表示されていない時は、避難状況表示マーク識別処理及びグルーピング処理は行わない。
【0033】
単位期間Taのグルーピング処理の後、次は位置座標特定処理を実行する。位置座標特定処理は、相互標定後の静止画データ毎に、静止画データに表示された避難状況表示マークの位置座標を算出し、算出された複数の位置座標を統計分析することによって、当該単位期間における避難状況表示マークの位置座標を特定する処理である。位置座標特定処理は、1つのグループに属する避難状況表示マーク毎に実行する。図3図4に示す事例では、まず、25個の静止画像データの中の、「JM1」のグループに属する避難状況表示マークJM1について、個々に位置座標を算出する。位置座標の算出結果は25個になり、これらは必ずしも一致しないので、適宜の統計手法を用いて単位期間Taにおける位置座標を特定する。どんな統計手法を選択するかは自由であり、例えば単純に平均値をとってもよいし、状況に合わせて加重平均値や中央値を取ってもよい。「JM1」のグループについての位置座標を特定した後は、他のグループの位置座標を特定する処理を順に行い、全てのグループの位置座標を特定すると単位期間Taの位置座標特定処理が終了する。
【0034】
次に、単位期間Taの後の単位期間Tdについて説明する。単位期間Tdは、単位期間Taと少し状況が異なり、30個の静止画データの全部に相互標定マークSM1~SM4及び補助マークHKが表示されており、静止画像データ26(Td/t7)~26(Td/t13)は、人が写り込んで避難状況表示マークJM2が隠れてしまっているという相違がある。
【0035】
データ分析手段16bは、図5に示すように、単位期間Tdにおいて、全ての静止画データ26(Td/t1)~26(Td/t30)を対象に相互標定処理を行う。相互標定処理の後、上述した避難状況表示マーク識別処理、グルーピング処理及び位置座標特定処理を順に実行する。ただし、単位期間Tdでは、静止画データ26(Td/t7)~26(Td/t13)に避難情報表示マークJM2が表示されていないので、この7個の静止画データは、避難情報表示マークJM2についてのノイズデータとして分析対象から除外し、残りの23個の静止画データを対象とする。
【0036】
このように、データ分析手段16bは、上記の各処理を順に実行することにより、ノイズデータを自動的に除外し、デジタル地図データ24(Ta),24(Tb),・・・に表示された複数の避難情報表示マークJM1,JM2,・・・を的確に認識し、各避難情報表示マークの位置座標を高い精度で特定することができる。
【0037】
なお、位置座標特定処理で特定される位置座標は、避難状況表示マークJM1,JM2,・・・の、相互標定マークSM1~SM4を基準にした相対的な座標であり、緯度経度を示すものではない。しかし、この実施形態では、避難状況データ受信手段16aが受信する避難状況データの中に相互標定マークSM1~SM4の緯度経度を示す緯度経度情報が含まれているので、特定した避難状況表示マークJM1,JM2,・・・の位置座標から、避難状況表示マークJM1,JM2,・・・の緯度経度を算出することも可能である。
【0038】
支援情報作成手段16cは、データ分析手段16bの分析結果に基づいて、基地局12の活動を支援するための災害対応支援情報を作成する機能ブロックである。例えば、住民の避難状況を把握する活動をサポートするため、地図に表示された避難状況表示マークの数の経時変化のグラフを作成する。この時、例えば図6(a)に示すように、避難状況表示マークの数を地域毎に集計すれば、順調に避難が進んでいる地域とそうでない地域とを把握することができ、現状の課題等に気付きやすくなる。また、図6(b)に示すように、地図に表示された避難状況表示マーク毎に、位置座標、緯度経度、認識された時刻や単位期間等を表形式で表示した表形式のリストを提供することも非常に有用である。
【0039】
支援情報送信手段16dは、支援情報作成手段が作成した災害対応支援情報を基地局12の端末装置14に送信する機能ブロックである。基地局12は、管理装置16から有用な災害対応支援情報をタイムリーに得ることができるので、支援活動の方針を的確に決めることができ、運営担当者の負担も大幅に軽減される。
【0040】
以上説明したように、災害対応支援システム10は、避難所等の基地局12で行われる、住民の避難状況を把握する活動を効率よく的確に支援することができる。基地局12の運営担当者は、基地局12に貼り出された避難状況を示すアナログ地図22をウェブカメラ付きシングルボードコンピュータ等の端末装置14で撮影し、デジタル地図データ24として管理センタ18に送信する。管理センタ18の管理装置16は、デジタル地図データ24を含む避難状況データを受信すると、避難状況データを自動的に分析し、有用な災害対応支援情報を作成して基地局12に送信することができる。したがって、基地局12は、高価な専用設備が常設されていなくても、有用な災害対応情報を効率よくタイムリーに得ることができ、且つ基地局12の運営担当者の負担も大幅に軽減される。
【0041】
また、ウェブカメラ付きシングルボードコンピュータのような可搬型の端末装置14でアナログ地図22を撮影する場合、使用中に避難所利用者Pの接触等により端末装置14やアナログ地図22が動いて、撮影アングルが変化してしまうことが予想される。しかし、管理装置16のデータ分析手段16bが、相互標定マークSM1~SM4を基に相互標定を行ってから分析を行うので、複数の避難状況表示マークJM1,JM2,・・・を正確に同定することができる。また、基地局12内は避難所利用者P等の多くの人が行き来するため、デジタル画像データ24に人が写り込んでしまう可能性があるが、データ分析手段16bが、この種のノイズデータを自動的に分析対象から除外するので、混乱している現場でも安心して使用することができる。
【0042】
なお、本発明の災害支援システムは、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、避難状況データ受信手段16aが受信する避難状況データの中に、デジタル地図データ24と、相互標定マークSM1~SM4の緯度経度を示す緯度経度情報とが含まれるとしているが、必要に応じて緯度経度情報は省略することができる。
【0043】
また、図2に示すように、アナログ地図22に表示するマークは、家屋、ビル、橋梁等と区別しやすい丸形に統一している関係で、避難状況表示マークとその他のマーク(相互標定マーク及び補助マーク)は、各マークの大きさの違いで識別している。しかし、各マークを同じ大きさの丸形とし、マークの色の違いで識別するように変更することも可能である。あるいは、各マークを違う形状のマーク(家屋、ビル、橋梁等と確実に区別できる形状のマーク)に変更して識別するようにしてもよい。
【0044】
その他、災害対応支援情報として、図6(a)、(b)に例示した内容以外の情報を追加することも可能であり、その場合、必要があれば、基地局から管理装置に送信する避難状況データの種類をさらに追加するとよい。また、管理装置が支援する基地局の数はいくつでもよく、管理装置は、複数の基地局の支援を同時並行的に行えるように構成することが好ましい。さらに、管理装置はスマートホン等の携帯端末でも良く、管理装置の避難状況データ受信手段、データ分析手段、支援情報作成手段、及び支援情報送信手段の一部をネットワークに接続された携帯端末により行う構成でも良い。これにより、管理装置の設置自由度が向上し、災害時の対応をより柔軟に行うことができる。
【符号の説明】
【0045】
10 災害対応支援システム
12 基地局
14 端末装置
16 管理装置
16a 避難状況データ受信手段
16b データ分析手段
16c 支援情報作成手段
16d 支援情報送信手段
22 アナログ地図
24 デジタル地図データ
26 静止画データ
AR 四角形のエリア
HM 補助マーク
JM1,JM2,・・・ 避難状況表示マーク
Ta,Tb,・・・ 単位期間
SM1~SM4 相互標定マーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6