(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065730
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】スルホニルウレア化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 239/545 20060101AFI20230508BHJP
【FI】
C07D239/545
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176035
(22)【出願日】2021-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000169
【氏名又は名称】クミアイ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤城 信哉
(72)【発明者】
【氏名】阿部 尚司
(72)【発明者】
【氏名】高杉 航平
(57)【要約】
【課題】スルホニルウレア化合物の、工業的に好ましく、経済的であり、そして環境にも優しい、製造方法を提供する。
【解決手段】式(4)の化合物の製造方法であって、式(2)の化合物を式(3)の化合物と反応させることを含む製造方法である。
【化1】
(式中、R
1は、水素又は(C1-C6)アルキルである。)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(4)の化合物の製造方法であって、式(2)の化合物を式(3)の化合物と反応させることを含む、製造方法:
【化1】
(式中、R
1は、水素又は(C1-C6)アルキルである。)
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法であって、反応温度が50℃~80℃である製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法であって、前記反応が溶媒の存在下で行われ、前記溶媒がキシレンである製造方法。
【請求項4】
式(2)の化合物の製造方法であって、式(1)の化合物をトリホスゲンと反応させることを含む、製造方法:
【化2】
(式中、R
1は、水素又は(C1-C6)アルキルである。)
【請求項5】
請求項4に記載の製造方法であって、トリホスゲンの使用量が式(1)の化合物1モルに対して、0.5モル~1.2モルである製造方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の製造方法であって、イソシアネート化合物の存在下、式(1)の化合物とトリホスゲンとの反応を行う製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の製造方法であって、イソシアネート化合物がn-ブチルイソシアネートである製造方法。
【請求項8】
請求項4から7のいずれか1項に記載の製造方法であって、反応温度が120℃~160℃である製造方法。
【請求項9】
請求項4から8のいずれか1項に記載の製造方法であって、前記反応が溶媒の存在下で行われ、前記溶媒がキシレンである製造方法。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の製造方法であって、R1がメチルである製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(4):
【0002】
【化1】
(式中、R
1は、後述の通りである。)の化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
式(4)の化合物であるスルホニルウレア化合物は優れた除草活性を有する除草剤としてよく知られている。その中で、ベンスルフロンメチルが強い除草活性を有することが知られている。特許文献1(U.S. Pat. No. 4,420,325)には、ベンスルフロンメチルが農薬として有用であることが記載されている。特許文献2は、式(4)の化合物の製造方法を開示する。特許文献2(CN102796049A)に記載の製造方法では、中間体化合物を製造する原料に、トリホスゲンとジホスゲンを用いている。
【0004】
特許文献1(U.S. Pat. No. 4,420,325)の化合物6、すなわちベンスルフロンメチルを以下に示す。:
【0005】
【0006】
特許文献2(CN102796049A)の反応スキームを以下に示す。:
【0007】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許4,420,325号
【特許文献2】中国特許出願公開第102796049号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記式(4)の化合物の工業的に好ましい製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、簡単な操作により、式(4)の化合物を製造する方法であって、工業的な製造に有利な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような状況に鑑み、本発明者が式(4)の化合物の製造方法について鋭意研究した。その結果、意外にも、式(4)の化合物の以下の製造方法を提供することにより、前記課題が解決可能であることが見出された。本発明者はこの知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、一つの態様では、本発明は以下の通りである。
【0012】
〔I-1〕 式(4)の化合物の製造方法であって、式(2)の化合物を式(3)の化合物と反応させることを含む、製造方法:
【化4】
(式中、R
1は、水素又は(C1-C6)アルキルである。)。
【0013】
〔I-2〕 〔I-1〕に記載の製造方法であって、反応温度が40℃~90℃である製造方法。
【0014】
〔I-3〕 〔I-1〕に記載の製造方法であって、反応温度が50℃~80℃である製造方法。
【0015】
〔I-4〕 〔I-1〕から〔I-3〕のいずれか1項に記載の製造方法であって、前記反応が溶媒の存在下で行われ、前記溶媒が芳香族炭化水素誘導体である製造方法。
【0016】
〔I-5〕 〔I-1〕から〔I-3〕のいずれか1項に記載の製造方法であって、前記反応が溶媒の存在下で行われ、前記溶媒がトルエン又はキシレンである製造方法。
【0017】
〔I-6〕 〔I-1〕から〔I-3〕のいずれか1項に記載の製造方法であって、前記反応が溶媒の存在下で行われ、前記溶媒がキシレンである製造方法。
【0018】
〔I-7〕 〔I-1〕から〔I-6〕のいずれか1項に記載の製造方法であって、反応時間が1時間~24時間である製造方法。
【0019】
〔I-8〕 〔I-1〕から〔I-6〕のいずれか1項に記載の製造方法であって、反応時間が1時間~12時間である製造方法。
【0020】
〔I-9〕 〔I-1〕から〔I-8〕のいずれかに1項記載の製造方法であって、R1がメチルである製造方法。
【0021】
〔I-10〕 式(2)の化合物の製造方法であって、式(1)の化合物をトリホスゲンと反応させることを含む、製造方法:
【化5】
(式中、R
1は、水素又は(C1-C6)アルキルである。)
【0022】
〔I-11〕 〔I-10〕に記載の製造方法であって、トリホスゲンの使用量が式(1)の化合物1モルに対して、0.4モル~1.6モルである製造方法。
【0023】
〔I-12〕 〔I-10〕に記載の製造方法であって、トリホスゲンの使用量が式(1)の化合物1モルに対して、0.5モル~1.2モルである製造方法。
【0024】
〔I-13〕 〔I-10〕から〔I-12〕のいずれか1項に記載の製造方法であって、イソシアネート化合物の存在下、式(1)の化合物とトリホスゲンとの反応を行う製造方法。
【0025】
〔I-14〕 〔I-13〕に記載の製造方法であって、イソシアネート化合物の使用量が、式(1)の化合物1モルに対して、0.05モル~0.8モルである製造方法。
【0026】
〔I-15〕 〔I-13〕に記載の製造方法であって、イソシアネート化合物の使用量が、式(1)の化合物1モルに対して、0.1モル~0.4モルである製造方法。
【0027】
〔I-16〕 〔I-13〕から〔I-15〕のいずれか1項に記載の製造方法であって、イソシアネート化合物がn-ブチルイソシアネートである製造方法。
【0028】
〔I-17〕 〔I-10〕から〔I-16〕のいずれか1項に記載の製造方法であって、反応温度が100℃~170℃である製造方法。
【0029】
〔I-18〕 〔I-10〕から〔I-16〕のいずれか1項に記載の製造方法であって、反応温度が120℃~160℃である製造方法。
【0030】
〔I-19〕 〔I-10〕から〔I-18〕のいずれか1項に記載の製造方法であって、前記反応が溶媒の存在下で行われ、前記溶媒が芳香族炭化水素誘導体である製造方法。
【0031】
〔I-20〕 〔I-10〕から〔I-18〕のいずれか1項に記載の製造方法であって、前記反応が溶媒の存在下で行われ、前記溶媒がトルエン又はキシレンである製造方法。
【0032】
〔I-21〕 〔I-10〕から〔I-18〕のいずれか1項に記載の製造方法であって、前記反応が溶媒の存在下で行われ、前記溶媒がキシレンである製造方法。
【0033】
〔I-22〕 〔I-10〕から〔I-21〕のいずれか1項に記載の製造方法であって、反応時間が1時間~36時間である製造方法。
【0034】
〔I-23〕 〔I-10〕から〔I-21〕のいずれか1項に記載の製造方法であって、反応時間が1時間~24時間である製造方法。
【0035】
〔I-24〕 〔I-10〕から〔I-23〕のいずれか1項に記載の製造方法であって、R1がメチルである製造方法。
【0036】
〔I-25〕 〔I-10〕に記載の製造方法であって、ジホスゲン及びホスゲンを用いない製造方法。
【0037】
〔I-26〕 〔I-10〕に記載の製造方法であって、式(1)の化合物をトリホスゲンのみと反応させる製造方法。
【発明の効果】
【0038】
本発明により式(4)の化合物の新規な製造方法が提供される。本発明によれば、より工業的に好ましい、式(4)の化合物の製造方法が提供される。また、本発明によれば、簡単な操作により、高い収率で式(4)の化合物を製造できる。
【0039】
更に、本発明により、ベンスルフロンメチル等の除草剤を簡便且つ安価に工業的規模で製造できる方法が提供される。従って、本発明の方法は、工業的に好ましく、経済的であり、そして環境にも優しく、高い工業的な利用価値を有する。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0041】
本明細書において用いられる用語及び記号について以下に説明する。
【0042】
ハロゲン原子の例は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子を含む。
【0043】
(Ca-Cb)は、炭素原子数がa~b個であることを意味する。例えば、「(C1-C4)アルキル」の「(C1-C4)」は、アルキルの炭素原子数が1~4であることを意味する。
【0044】
本明細書中、「アルキル」のような一般的用語は、ブチル及びtert-ブチルのような直鎖及び分枝鎖の両方を含むと理解される。しかしながら、「ブチル」のような具体的な用語が使用された場合は、これは「ノルマルブチル」、すなわち「n-ブチル」に対して特異的である。言い換えれば、具体的な用語「ブチル」は直鎖の「ノルマルブチル」を意味する。そして「tert-ブチル」のような分枝鎖異性体は、意図した場合に具体的に言及される。
【0045】
接頭語「n-」、「s-」及び「sec-」、「i-」、「t-」及び「tert-」、[neo-]、「c-」及び「cyc-」、「o-」、「m-」、並びに「p-」は、それらの以下の通常の意味を有する:ノルマル、セカンダリー(「s-」及び「sec-」)、イソ、ターシャリー(「t-」及び「tert-」)、ネオ、シクロ(「c-」及び「cyc-」)、オルト、メタ、並びにパラ。
【0046】
本明細書中、以下の略語が使用されることがある:
「Me」はメチルを意味する。
「Et」はエチルを意味する。
「Pr」、「n-Pr」及び「Pr-n」はプロピル(すなわち、ノルマルプロピル)を意味する。
「i-Pr」及び「Pr-i」はイソプロピルを意味する。
「Bu」、「n-Bu」及び「Bu-n」はブチル(すなわち、ノルマルブチル)を意味する。
「s-Bu」及び「Bu-s」はsec-ブチルを意味する。
「i-Bu」及び「Bu-i」はイソブチルを意味する。
「t-Bu」及び「Bu-t」はtert-ブチルを意味する。
「Pen」、「n-Pen」および「Pen-n」はペンチル(すなわち、ノルマルペンチル)を意味する。
「Hex」、「n-Hex」および「Hex-n」はヘキシル(すなわち、ノルマルヘキシル)を意味する。
「Ph」はフェニルを意味する。
「Bn」はベンジルを意味する。
「Ac」はアセチル(CH3CO-)を意味する。
【0047】
(C1-C6)アルキルは、1~6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキルを意味する。(C1-C6)アルキルの例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル等を含むが、これらに限定されない。
【0048】
本明細書中、異性体を有する化合物は、全ての異性体と任意の割合のそれらの任意の混合物を含む。例えば、キシレンは、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン及び任意の割合のそれらの任意の混合物を含む。例えば、ジクロロベンゼンは、o-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、p-ジクロロベンゼン及び任意の割合のそれらの任意の混合物を含む。
【0049】
本発明による方法は、一つの態様では、以下の通りである。
【0050】
本発明の反応について説明する。
【0051】
(工程(i))
【0052】
工程(i)について説明する。
【0053】
工程(i)は、式(1)の化合物をトリホスゲンと反応させて、式(2)の化合物を製造する工程である。式(2)の化合物は、式(4)の化合物を製造するための原料の1つとして用いることができる。
【0054】
【化6】
(式中、R
1は上記で定義した通りである。)
【0055】
(工程(i)の原料;式(1)の化合物)
工程(i)の原料として、式(1)の化合物を用いる。式(1)の化合物は公知の化合物であるか、又は公知の化合物から公知の方法に準じて製造することができる。
【0056】
式(1)の化合物の具体的な例は、以下を含むが、これらに限定されない;
2-(スルファモイルメチル)安息香酸、2-(スルファモイルメチル)安息香酸メチル、2-(スルファモイルメチル)安息香酸エチル、2-(スルファモイルメチル)安息香酸プロピル、2-(スルファモイルメチル)安息香酸ブチル等。
【0057】
収率、入手性、価格、生成物の有用性等の観点から、式(1)の化合物の好ましい具体的な例は、2-(スルファモイルメチル)安息香酸メチルを含む。
【0058】
(工程(i)の原料;トリホスゲン)
工程(i)の原料として、トリホスゲンを用いる。トリホスゲンからホスゲン及び/又はジホスゲンを発生させることができるため、ホスゲン及び/又はジホスゲンを用いてもよい。しかしながら、簡単な操作と安全性の観点からホスゲン及びジホスゲンを用いないで、トリホスゲンだけを用いることが好ましい。
【0059】
トリホスゲンの使用量は、反応が進行する限りは、いずれの量でもよい。しかしながら、収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、その使用量は、例えば、式(1)の化合物1モルに対して、通常0.35モル~2.0モル、好ましくは0.4モル~1.6モル、より好ましくは0.5モル~1.2モルである。
【0060】
(工程(i)の原料、イソシアネート化合物)
工程(i)の原料として、イソシアネート化合物を用いることができる。工程(i)の反応は、好ましくはイソシアネート化合物の存在下で行われる。イソシアネート化合物の具体的な例は、以下を含むが、これらに限定されない;エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、n-ブチルイソシアネート、t-ブチルイソシアネート、ペンチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート等。反応性、収率及び経済効率等の観点から、より好ましくはn-ブチルイソシアネートを含む。
【0061】
イソシアネートの使用量は、反応が進行する限りは、いずれの量でもよい。しかしながら、収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、その使用量は、例えば、式(1)の化合物1モルに対して、通常0.01モル~1モル、好ましくは0.05モル~0.8モル、より好ましくは0.1モル~0.4モルである。
【0062】
(工程(i)の溶媒)
反応の円滑な進行等の観点から、工程(i)は溶媒の存在下で実施することが好ましい。工程(i)の溶媒は、反応が進行する限りは、いずれの溶媒でもよい。溶媒の例は、芳香族炭化水素誘導体類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等)および任意の割合のそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0063】
収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、工程(i)の溶媒の好ましい具体的な例は、トルエン、キシレンおよび任意の割合のそれらの任意の組み合わせ、より好ましくはキシレンを含む。
【0064】
溶媒の使用量は、反応系の撹拌が十分にできる限りは、いずれの量でもよい。収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、式(1)の化合物1モルに対して、0(ゼロ)~10L(リットル)、好ましくは0.1~5Lの範囲を含むが、これらに限定されない。2種以上の溶媒の組み合わせを用いるときは、2種以上の溶媒の割合は、反応が進行する限りは、いずれの割合でもよい。溶媒は、反応が進行する限りは、単層でもよく、2層に分離してもよい。
【0065】
(工程(i)の反応温度)
反応温度は、特に制限されない。しかしながら、収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、反応温度は、例えば、80℃~180℃、好ましくは100℃~170℃、選り好ましくは120℃~160℃である。
【0066】
(工程(i)の反応時間)
反応時間は、特に制限されない。しかしながら、収率、副生成物抑制および経済効率等の観点から、反応時間は、例えば、1時間~48時間、好ましくは1時間~36時間、より好ましくは1時間~24時間である。ただし、後述の連続式の場合は、反応時間はこれらに限定されない。
【0067】
(工程(i)の生成物)
工程(i)で得られる式(2)の具体的な例は、以下を含むが、これらに限定されない;2-((イソシアナトスルフォニル)メチル)安息香酸、2-((イソシアナトスルフォニル)メチル)安息香酸メチル、2-((イソシアナトスルフォニル)メチル)安息香酸エチル、2-((イソシアナトスルフォニル)メチル)安息香酸プロピル、2-((イソシアナトスルフォニル)メチル)安息香酸ブチル等。
【0068】
生成物の有用性等の観点から、式(2)の化合物の好ましい具体的な例は、2-((イソシアナトスルフォニル)メチル)安息香酸メチルを含む。
【0069】
工程(ii)について説明する。
【0070】
工程(ii)は、式(2)の化合物を式(3)の化合物と反応させて、式(4)の化合物を製造する工程である。原料の1つである式(2)の化合物としては、上記工程(i)の生成物を用いることができる。
【0071】
【化7】
(式中、R
1は上記で定義した通りである。)
【0072】
(工程(ii)の他の原料;2-アミノ-4,6-ジメトキシピリミジン)
【0073】
工程(ii)の他の原料として、式(3)の化合物を用いる。式(3)の化合物は、公知の化合物である。
【0074】
式(3)の化合物の使用量は、反応が進行する限りは、いずれの量でもよい。式(3)の化合物の使用量は、当業者が適切に調整することができる。しかしながら、収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、その使用量は、例えば、式(2)の化合物1モルに対して、0.8モル~1.5モル、好ましくは0.9モル~1.2モルである。
【0075】
(工程(ii)の溶媒)
反応の円滑な進行等の観点から、工程(ii)の反応は、溶媒の存在下で行うことが好ましい。工程(ii)の溶媒、その使用量等は、工程(i)のそれらと同じであってもよい。
【0076】
(工程(ii)の反応温度)
工程(ii)の反応温度は、特に制限されない。しかしながら、収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、反応温度は、例えば、20℃~100℃、好ましくは40℃~90℃、より好ましくは50℃~80℃である。ただし、後述の連続式の場合は、反応時間はこれらに限定されない。
【0077】
(工程(ii)の反応時間)
工程(ii)の反応時間は、特に制限されない。しかしながら、収率、副生成物抑制および経済効率等の観点から、反応時間は、例えば、1時間~48時間、好ましくは1時間~24時間、より好ましくは1時間~12時間である。
【0078】
(工程(ii)の生成物)
工程(ii)で得られる式(4)の具体的な例は、以下を含むが、これらに限定されない;((N-((4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)カルバモイル)スルファモイル)メチル)安息香酸、((N-((4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)カルバモイル)スルファモイル)メチル)安息香酸メチル、((N-((4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)カルバモイル)スルファモイル)メチル)安息香酸エチル、((N-((4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)カルバモイル)スルファモイル)メチル)安息香酸プロピル、((N-((4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)カルバモイル)スルファモイル)メチル)安息香酸ブチル等。
【0079】
生成物の有用性等の観点から、式(4)の化合物の好ましい具体的な例は、((N-((4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)カルバモイル)スルファモイル)メチル)安息香酸メチルを含む。
【0080】
(反応の実施形態)
本反応は、反応釜を用いた回分式(バッチ式)で実施することができ、また、連続式の反応器を用いたフロー反応でも実施することができる。連続式の反応器とは、原料の供給、反応を連続的に同時に進行させるための反応器である。連続式の反応器として、流通反応器(フローリアクタ)がある。流通反応器は、原料を連続して供給し、連続して反応を行うことができる反応器である。流通反応器は、管型流通反応器(チューブ型流通反応器を含む)と槽型流通反応器に大別されるが、いずれも連続式で反応を行うことができる。本発明に用いられる流通反応器は、流通反応器の温度を制御する温度制御手段が設けられていてもよく、例えば、加熱や冷却のための温度制御部が設けられていてもよい。温度制御部は適切な如何なるものであってもよく、温度制御部の例は、バス及びジャケットを包含する。バス及びジャケットの様式は、適切な如何なる様式であってもよい。また、流通反応器の材質としては、原料物質、溶媒に侵されないものであれば特に制限はなく、例えば、金属(例えば、チタン、ニッケル、ステンレス、ハステロイC)、樹脂(例えば、フッ素樹脂)、ガラス、磁器(例えば、セラミックス)等が挙げられる。
【0081】
本発明の連続式の反応は、槽型流通反応器での実施を排除するものではない。しかしながら、好ましい流通反応器としては、例えば、管型流通反応器が挙げられる。本発明に用いられる管型流通反応器は、液状の混合物を連続して流通させることができるものであればよく、管の断面の形状は円管状、角管状、多角形管状、楕円管状等のいずれであってもよく、これらの形状を組み合わせたものであってもよい。また、管の材質としては、原料、溶媒に侵されないものであれば特に制限はなく、例えば、金属(例えば、チタン、ニッケル、ステンレス、ハステロイC)、樹脂(例えば、フッ素樹脂)、ガラス、磁器(例えば、セラミックス)等が挙げられるが、耐圧性に優れた金属製が好ましい。本発明に用いられる管型流通反応器も温度を制御する温度制御手段が設けられていてもよく、例えば、加熱や冷却のための温度制御部が設けられていてもよい。温度制御部は適切な如何なるものであってもよく、温度制御部の例は、バス及びジャケット等を包含する。バス及びジャケットの様式は、適切な如何なる様式であってもよい。このような流通反応装置として、例えば、スパイラル型、シェルアンドチューブ型、プレート熱交換型などの反応装置を使用することができる。
【0082】
本発明に用いられる管型流通反応器における管の配置方法としては、特に制限はなく、例えば、直線状であってもよいし、曲線状であってもよいし、コイル状であってもよい。好ましい配置法としては、例えば、管をコイル状に配置した管型反応器が挙げられる。また、管は1本であってもよいが、2本以上の複数の管を適当な間隔で規則的又は不規則的に束ねたものであってもよい。生産効率を上げたい場合には、2本以上の複数の管を適当な間隔で規則的又は不規則的に束ねた管型流通反応器を用いることもできる。
また、本発明に用いられる管型流通反応器は、必要に応じて、混合器を有していてもよい。混合器としては、例えば、Y字型混合器、T字型混合器、パイプライン型混合器(スタティックミキサー等を含むラインミキサー)等が挙げられる。スタティックミキサー等を含むラインミキサーは、管型流通反応器であってもよい。
【0083】
(流通式の反応)
流通式を採用する場合の方法としては、例えば、以下の方法が挙げられるが、これらに限定されない。、工程(i)においては、管型反応器に式(1)の化合物、トリホスゲン、イソシアネート化合物及び溶媒の所定量の混合物(必要であればさらに添加してよい)を流通させる。複数の菅を用いて流通させてもよい。この場合、用いる管型反応器は加熱装置を有するものを使用し、所定温度に加熱した反応管中に混合物を流通させることが好ましい。工程(ii)においては、管型反応器に式(2)の化合物及び溶媒の所定量の混合物(必要であればさらに添加してよい)を流通させ、さらに、別の管から式(3)の化合物及び溶媒の所定量の混合物(必要であればさらに添加してよい)を流通させ、混合させる。いずれの工程においても、反応温度は特に制限されないが、上述した温度を参考にすることができる。
【0084】
本発明に用いられる管型反応器における管の等価直径としては、液状の混合物が連続して流通することができる大きさであれば特に制限はないが、生産効率の点からも、0.5mm以上であることが好ましい。好ましい等価直径の例としては、0.5mm~50mm、好ましくは0.5mm~30mm程度が挙げられる。
本発明における「等価直径(De)」とは、次の式で定義される値である。
De = 4・Af/Wp
(式中、Afは流路断面積を示し、Wpは濡れ縁長さを示す。)
例えば、半径rの円管状の管の等価直径は、
De = 4・πr2/2πr
= 2r
【0085】
本発明に用いられる管型流通反応器の管の長さは、十分な反応ができる範囲であれば特に制限はない。十分な反応時間のために、管型流通反応器の管の長さは、例えば、1m~100mの範囲である。
【0086】
本発明に用いられる流通反応器、好ましくは管型流通反応器における流速は、管の等価直径にもよるが、通常は0.5m/分以上、好ましくは1.0m/分以上である。
【0087】
管型流通反応器内の圧力としては、例えば、0.1MPa~10MPa、好ましくは0.1MPa~5MPaであるが、これらに限定されない。
【0088】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これら実施例によって何ら限定されない。
【0089】
HPLC分析方法に関しては、必要に応じて、以下の文献を参照することができる。
文献(a):(社)日本化学会編、「新実験化学講座9 分析化学 II」、第86~112頁(1977年)、発行者 飯泉新吾、丸善株式会社
文献(b):(社)日本化学会編、「実験化学講座20-1 分析化学」第5版、第130~151頁(2007年)、発行者 村田誠四郎、丸善株式会社
【実施例0090】
実施例1
2-((イソシアナトスルフォニル)メチル)安息香酸メチルの製造
【0091】
【0092】
窒素雰囲気下、2-(スルファモイルメチル)安息香酸メチル(3.00g, 13.1mmol, 100 mol%)及びn-ブチルイソシアネート(0.26g, 2.6 mmol, 20 mol%)をキシレン(5ml, 0.4 L/mol)に懸濁した。内温を140℃に昇温し、トリホスゲン(4.27g, 14.4mmol, 110 mol%)のキシレン(6ml, 0.45 L/mol)溶液を2時間掛けて滴下した。混合物を同温度で30分間撹拌した後、70℃まで冷却した。 反応混合物のHPLC分析(面積百分率、230nm)を行った。分析の結果は以下の通りであった;
2-((イソシアナトスルフォニル)メチル)安息香酸メチル(目的生成物):87.1%、
2-(スルファモイルメチル)安息香酸メチル(原料):1.0%。
【0093】
実施例2
((N-((4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)カルバモイル)スルファモイル)メチル)安息香酸メチル、すなわちベンスルフロンメチルの製造
【0094】
【0095】
窒素雰囲気下、2-アミノ-4,6-ジメトキシピリジン(2.03g, 13.1mmol, 100 mol%)をキシレン(5ml, 0.4 L/mol)に懸濁した。内温を60~70℃に昇温し、実施例1で製造した2-((イソシアナトスルフォニル)メチル)安息香酸メチルのキシレン溶液をキャニュラーで20分掛けて滴下した。混合物を同温度で30分撹拌した。50℃~55℃まで冷却した後、メタノール3.0gを滴下した。混合物を5℃~20℃まで冷却し、30分撹拌した。析出した結晶をろ過し、メタノール4.5gで洗浄した後、結晶を乾燥させ、4.55g(収率84.7%)で((N-((4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)カルバモイル)スルファモイル)メチル)安息香酸メチルを得た。
本発明により、農薬として有用な式(4)の化合物の新規な製造方法が提供される。本発明の製造方法は、経済的であり、そして環境にも優しく、高い工業的な利用価値を有する。従って、本発明は高い産業上の利用可能性を有する。