(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065737
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】熱交換形換気装置
(51)【国際特許分類】
F24F 7/08 20060101AFI20230508BHJP
F24F 13/30 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
F24F7/08 101H
F24F7/08 101B
F24F13/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176048
(22)【出願日】2021-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】本多 正人
(72)【発明者】
【氏名】松島 浩平
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真司
(57)【要約】
【課題】熱交換性能を維持しつつ、住宅躯体の梁と梁の隙間に設置できるように小型化された熱交形換気装置を提供する。
【解決手段】熱交換形換気装置2は、本体ケース5内において排気風路16に排気流3を生じさせる排気ファン7と、給気風路17に給気流4を生じさせる給気ファン10と、排気風路16と給気風路17とが交差する交差部に配置され、排気流3と給気流4との間で熱交換させる熱交換素子6と、を備える。熱交換素子6は、矩形状の第一熱交換素子6a及び矩形状の第二熱交換素子6bを有し、第一熱交換素子6a及び第二熱交換素子6bは、いずれも熱交換素子ピース15の積層方向が第一側面20と第二側面21とを最短距離で結ぶ直線に沿って配置され、且つ、積層方向に沿った第一熱交換素子6aの稜角部と積層方向に沿った第二熱交換素子6bの稜角部とを突き合わせて本体ケース5の高さ方向に並列配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内の空気を屋外に排気する排気風路と屋外の空気を屋内に給気する給気風路とが内部に形成された箱体形状の筐体と、
前記筐体の第一側面に並べて配置された外気口及び排気口と、
前記第一側面と対向する第二側面に並べて配置された内気口及び給気口と、
前記筐体内において前記内気口と前記排気口とを連通接続する前記排気風路に排気流を生じさせる排気送風機と、
前記筐体内において前記外気口と前記給気口とを連通接続する前記給気風路に給気流を生じさせる給気送風機と、
前記排気風路と前記給気風路とが交差する交差部に配置され、前記排気風路を流れる前記排気流と前記給気風路を流れる前記給気流との間で熱交換させる熱交換素子と、
を備え、
前記熱交換素子は、伝熱性及び吸湿性を有する仕切部材と、前記仕切部材の一方の面に設けられた複数の間隔保持部材とを有する複数の単位構成部材が積層されて前記排気風路と前記給気風路とが1層ずつ交互に形成された矩形状の第一熱交換素子及び矩形状の第二熱交換素子を有し、
前記第一熱交換素子及び前記第二熱交換素子は、いずれも前記単位構成部材の積層方向が前記第一側面と前記第二側面とを最短距離で結ぶ直線に沿って配置され、且つ、前記積層方向に沿った前記第一熱交換素子の稜角部と前記積層方向に沿った前記第二熱交換素子の稜角部とを突き合わせて前記筐体の高さ方向に並列配置されていることを特徴とする熱交換形換気装置。
【請求項2】
前記第一熱交換素子及び前記第二熱交換素子の積層方向の端面の対角線が互いに略垂直水平になるように前記第一熱交換素子と前記第二熱交換素子の稜角部が突き合わされたことを特徴とする請求項1に記載の熱交換形換気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寒冷地等で使用され、屋内の空気を屋外へ排気する排気流と屋外の空気を屋内へ給気する給気流との間で熱交換する熱交換形換気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の熱交換形換気装置は、特許文献1に示すように、熱交換素子の各稜角部が外接する箱体を構成し、この箱体に熱交換素子が各稜角部を内接させて組み込まれている。箱体内部には、排気流と給気流の通風路が構成され、それぞれに送風機が組み込まれ、排気流と給気流は熱交換素子を交差して通過する構成となっている。排気用送風機と給気用送風機箱体は、箱体の長さ方向に対して直列に配置されており、一方、熱交換素子は、箱体の幅方向に、送風機と並列するように配置さている。熱交換器は、その両小口を横にし、排気流の流入側の面である排気流入面が本体箱体の上の面方向、給気流の流入側の面である給気流入面が本体箱体の下の面方向を向くように箱体に組み込まれる。なお、熱交換器のうち、排気流の流出側の面である排気流出面は、本体箱体の下の面方向を向く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の熱交換形換気装置は、木造あるいは鉄骨造等の天井空間あるいは床下空間に一定間隔を梁で張り巡らされて構成された住宅において、梁を避けるように設置されることが通例である。例えば、天井空間に設置する場合、熱交換形換気扇の設置スペースを確保するために、張り巡らされた梁と屋根の隙間である天井裏の空間に設置される。しかしながら、近年、天井裏空間において隣り合う梁の間隔が狭くなる場合があり、熱交換形換気装置の小型化、特に梁の間隔に相当する熱交換形換気装置の幅方向の寸法の低減が求められている。
【0005】
そこで、本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、熱交換性能を維持しつつ、住宅躯体の梁と梁の隙間に設置できるように小型化された熱交換形換気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そして、この目的を達成するために、本発明に係る熱交換形換気装置は、屋内の空気を屋外に排気する排気風路と屋外の空気を屋内に給気する給気風路とが内部に形成された箱体形状の筐体と、筐体の第一側面に並べて配置された外気口及び排気口と、第一側面と対向する第二側面に並べて配置された内気口及び給気口と、筐体内において内気口と排気口とを連通接続する排気風路に排気流を生じさせる排気送風機と、筐体内において外気口と給気口とを連通接続する給気風路に給気流を生じさせる給気送風機と、排気風路と給気風路とが交差する交差部に配置され、排気風路を流れる排気流と給気風路を流れる給気流との間で熱交換させる熱交換素子と、を備える。熱交換素子は、伝熱性及び吸湿性を有する仕切部材と、仕切部材の一方の面に設けられた複数の間隔保持部材とを有する複数の単位構成部材が積層されて排気風路と給気風路とが1層ずつ交互に形成された矩形状の第一熱交換素子及び矩形状の第二熱交換素子を有する。第一熱交換素子及び第二熱交換素子は、いずれも単位構成部材の積層方向が第一側面と第二側面とを最短距離で結ぶ直線に沿って配置され、且つ、積層方向に沿った第一熱交換素子の稜角部と積層方向に沿った第二熱交換素子の稜角部とを突き合わせて筐体の高さ方向に並列配置されている。これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、熱交換性能を維持しつつ、住宅躯体の梁と梁の隙間に設置できるように小型化された熱交形換気装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1に係る熱交換形換気装置の住宅における設置例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、熱交換形換気装置の構造を示す模式図である。
【
図3】
図3は、熱交換形換気装置に用いられる2つの熱交換素子のうち一方の熱交換素子を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、熱交換素子の構造を示す分解斜視図である。
【
図5】
図5は、
図2の熱交換形換気装置に用いられる熱交換素子のB-B断面を示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図2の熱交換形換気装置のA-A断面における部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る熱交換形換気装置は、屋内の空気を屋外に排気する排気風路と屋外の空気を屋内に給気する給気風路とが内部に形成された箱体形状の筐体と、筐体の第一側面に並べて配置された外気口及び排気口と、第一側面と対向する第二側面に並べて配置された内気口及び給気口と、筐体内において内気口と排気口とを連通接続する排気風路に排気流を生じさせる排気送風機と、筐体内において外気口と給気口とを連通接続する給気風路に給気流を生じさせる給気送風機と、排気風路と給気風路とが交差する交差部に配置され、排気風路を流れる排気流と給気風路を流れる給気流との間で熱交換させる熱交換素子と、を備える。熱交換素子は、伝熱性及び吸湿性を有する仕切部材と、仕切部材の一方の面に設けられた複数の間隔保持部材とを有する複数の単位構成部材が積層されて排気風路と給気風路とが1層ずつ交互に形成された矩形状の第一熱交換素子及び矩形状の第二熱交換素子を有する。第一熱交換素子及び第二熱交換素子は、いずれも単位構成部材の積層方向が第一側面と第二側面とを最短距離で結ぶ直線に沿って配置され、且つ、積層方向に沿った第一熱交換素子の稜角部と積層方向に沿った第二熱交換素子の稜角部とを突き合わせて筐体の高さ方向に並列配置されている。
【0010】
このようにすることで、二つの熱交換素子(第一熱交換素子及び第二熱交換素子)によって従来の熱交換形換気装置に用いられる熱交換素子と同等の熱交換性能を有するようにすれば、従来の熱交換形換気装置に用いられる熱交換素子の単位構成部材と比較して、各熱交換素子の単位構成部材の面積(言い換えれば、熱交換形換気装置の内部に設置状態での幅方向の寸法)を縮小化できるので、熱交換形換気装置の幅寸法を低減することができる。つまり、熱交換性能を維持しつつ、住宅躯体の梁と梁の隙間に設置できるように小型化された熱交換形換気装置とすることができる。
【0011】
また、本発明に係る熱交換形換気装置では、第一熱交換素子及び第二熱交換素子の積層方向の端面の対角線が互いに略垂直水平になるように第一熱交換素子と第二熱交換素子の稜角部が突き合わさせることが好ましい。このようにすることで、第一熱交換素子と第二熱交換素子の積層方向の端面の対角線が略水平垂直ではない場合と比較して、熱交換形換気装置の幅寸法において、熱交換素子が占有する幅寸法を低減することができる。これにより、熱交換形換気装置の幅方向の寸法をさらに低減することができ、住宅躯体の梁と梁の隙間に設置しやすくなる。
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0013】
(実施の形態1)
まず、
図1及び
図2を参照して、本発明の実施の形態1に係る熱交換形換気装置2の概略について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る熱交換形換気装置2の住宅(家1)における設置例を示す模式図である。
図2は、熱交換形換気装置2の構造を示す模式図である。なお、
図2の(a)は、熱交換形換気装置2の斜視図である。
図2の(b)は、熱交換形換気装置2に用いられる熱交換素子6の斜視図である。
【0014】
図1に示す通り、家1の屋内には、熱交換形換気装置2が設置されている。熱交換形換気装置2は、家1において、屋内の空気と屋外の空気とを熱交換しながら換気する装置である。
【0015】
排気流3は、
図1の黒色矢印のごとく、熱交換形換気装置2を介して家1の屋内から屋外に放出される。排気流3は、家1の屋内から屋外に排出される空気の流れである。また、給気流4は、
図1の白色矢印のごとく、熱交換形換気装置2を介して家1の屋外から屋内に取り入れられる空気の流れである。すなわち、給気流4は、家1の屋外から屋内に取り込まれる空気の流れである。例えば、日本の冬季の場合と、排気流3は20℃~25℃であり、給気流4は氷点下に達する場合がある。熱交換形換気装置2は、換気を行うとともに、換気時に排気流3の熱を給気流4へと伝達し、不用な熱の放出を抑制、すなわち排気流3により屋外に排出される熱を給気流4により屋内に取り込むことができる。
【0016】
熱交換形換気装置2は、
図2の(a)に示す通り、本体ケース5、熱交換素子6、排気ファン7、内気口8、排気口9、給気ファン10、外気口11、及び給気口12を備えている。本体ケース5は、熱交換形換気装置2の箱体形状を有する外枠である。本体ケース5は、外枠の幅方向の寸法(幅寸法)を幅W[mm]、長さ方向の寸法(長さ寸法)を長さD[mm]、高さ方向の寸法(高さ寸法)を高さH[mm]としている。なお、
図2の(a)の破線Lは、本体ケース5内部における長さ方向の最短距離を示す直線である。
【0017】
本体ケース5の外周には、排気口9、外気口11、内気口8、及び給気口12が設けられている。より詳細には、本体ケース5の一つの側面である第一側面20には、排気口9及び外気口11が幅方向に並べて配置されている。また、本体ケース5の第一側面20と対向する側面である第二側面21には、内気口8及び給気口12が幅方向に並べて配置されている。内気口8は、排気流3を屋内から熱交換形換気装置2に吸い込む吸込口である。排気口9は、排気流3を熱交換形換気装置2から屋外に吐き出す吐出口である。外気口11は、給気流4を屋外から熱交換形換気装置2に吸い込む吸込口である。給気口12は、給気流4を熱交換形換気装置2から屋内に吐き出す吐出口である。
【0018】
本体ケース5の内部には、熱交換素子6、排気ファン7、及び給気ファン10が取り付けられている。熱交換素子6は、排気流3と給気流4との間で熱交換を行うための部材である。排気ファン7及び給気ファン10は、本体ケース5の長さ方向に対して直列に配置されている。排気ファン7及び給気ファン10は、破線Lに沿って直列状に配置されているとも言える。排気ファン7及び給気ファン10は、本体ケース5の幅方向に対して、熱交換素子6と並列に配置されている。排気ファン7は、排気流3を屋内から内気口8を介して吸い込み、排気口9を介して屋外に吐出する送風機である。給気ファン10は、給気流4を屋外から外気口11を介して吸い込み、給気口12を介して屋内に吐出する送風機である。排気ファン7を駆動することにより屋内から内気口8を介して吸い込まれた排気流3は、熱交換素子6及び排気ファン7を経由し、排気口9を介して屋外に排出される。また、給気ファン10を駆動することにより屋外から外気口11を介して吸い込まれた給気流4は、給気ファン10を経由し、給気口12を介して屋内に供給される。
【0019】
熱交換素子6は、
図2の(a)に示すように、熱交換形換気装置2の内部において、熱交換素子6の長手方向(後述する熱交換素子ピース15の積層方向)が第一側面20と第二側面21とを最短距離で結ぶ直線(破線L)に沿って配置されている。
【0020】
より詳細には、熱交換素子6は、
図2の(b)に示すように、矩形状の第一熱交換素子6aと矩形状の第二熱交換素子6bとの2つの熱交換素子を積層して構成される。第一熱交換素子6a及び第二熱交換素子6bの長手方向は、いずれも破線Lに沿って配置されている。そして、第一熱交換素子6a及び第二熱交換素子6bは、第一熱交換素子6aの長手方向に沿った第一熱交換素子6aの稜角部の一つと、第二熱交換素子6bの長手方向に沿った第二熱交換素子6bの稜角部の一つとを突き合わせて本体ケース5の高さ方向に並列配置されている。
【0021】
ここで、第一熱交換素子6aと第二熱交換素子6bとを、本体ケース5の高さ方向に、並列に配置させるときには、第一熱交換素子6a及び第二熱交換素子6bの積層方向の端面の対角線が互いに略垂直水平になるように第一熱交換素子6aと第二熱交換素子6bの稜角部が突き合わさせるように配置されている。
【0022】
第一熱交換素子6a及び第二熱交換素子6bのそれぞれにおいて、長手方向に沿って稜角部を突き合わせて固定する方法は、例えば、接着剤シーリング材による接着硬化、ゴムパッキンなどによる押し付け、又は第一熱交換素子6aと第二熱交換素子6bとの外周を固定する枠体での固定が挙げられる。このような固着方法を用いることで、排気流3と給気流4のそれぞれが漏れて混合されることを抑制ことができる。
【0023】
次に、
図3及び
図4を参照して、熱交換素子6を構成する第一熱交換素子6a及び第二熱交換素子6bについて説明する。
図3は、熱交換形換気装置2に用いられる2つの熱交換素子6のうち一方の第一熱交換素子6aを示す斜視図である。
図4は、第一熱交換素子6aの構造を示す分解斜視図である。
図3及び
図4の説明に際して、記述の簡略化のため、第一熱交換素子6aについて説明する。なお、第一熱交換素子6aと第二熱交換素子6bの構造は同一であり、
図3及び
図4の説明において、第一熱交換素子6aを第二熱交換素子6bに読み換えても差異はない。
【0024】
図3に示すように、第一熱交換素子6aは、直方体形状であり、排気流3が流れる排気風路16と給気流4が流れる給気風路17とが直交するように風路が構成されている。直方体の寸法関係は、第一熱交換素子6aの高さ方向の寸法L1より、第一熱交換素子6aの端面の対角線L2の方が小さい構成となっている。本構成理由については後述する。
【0025】
図4に示すように、第一熱交換素子6aは、複数の熱交換素子ピース15から構成される。各熱交換素子ピース15には、略正方形の伝熱板13の一方の面の下に複数のリブ14が接着されている。第一熱交換素子6aは、積層方向(上下方向)に隣接する熱交換素子ピース15のリブ14の長手方向が互いに直交するように、隣接する熱交換素子ピース15の向きを変えて複数積層するように構成されている。これにより、排気流3が通風する排気風路16と、給気流4が通風する給気風路17とを、熱交換素子ピース15の積層方向において交互に設けることができる。したがって、排気流3と給気流4とが熱交換素子ピース15の積層方向において交互に直交して流れるようになるため、第一熱交換素子6aは、排気流3と給気流4との間で伝熱板13を介して熱交換が可能となる。
【0026】
熱交換素子ピース15は、第一熱交換素子6aを構成する一つのユニットである。上述のように、熱交換素子ピース15は、略正方形の伝熱板13の一方の面下に複数のリブ14を接着されて構成されている。伝熱板13下のリブ14は、長手方向が伝熱板13の一つの端辺から、これに対向する端辺に向かうように形成されている。複数のリブ14のそれぞれは、直線状に形成されている。そして、複数のリブ14は、伝熱板13の面下に所定の間隔で並列配置されている。具体的には、
図4に示すように、上下に隣接する2つの熱交換素子ピース15のうち、一方の熱交換素子ピース15を構成する伝熱板13の一方の面の下には、リブ14の長手方向が、この伝熱板13の端辺13aから対向する端辺13c側に向かうように、リブ14が接着されて構成されている。また、他方の熱交換素子ピース15を構成する伝熱板13の一方の面の下には、リブ14の長手方向が、上記一方の熱交換素子ピース15を構成する伝熱板13の端辺13b(端辺13aに垂直である端辺)から対向する端辺13d側に向かうように、リブ14が接着にされて構成されている。
【0027】
伝熱板13は、伝熱板13を挟んで排気流3と給気流4とが流れたときに熱交換をするための板状の部材である。伝熱板13は、伝熱性を備えた薄いシートであって、気体が透過しない性質のものを用いることができる。伝熱板13は、セルロース繊維をベースとした伝熱紙によって形成され、伝熱性と透湿性と吸湿性とを備えており、熱と水分の交換を行う熱交換素子6を得ることができる。但し、伝熱板13の材質は、これに限定されるものではない。伝熱板13は、例えば、アルミニウム、鉄などの金属製のシート、または、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの樹脂製のシートを用いることで、熱のみを交換する熱交換素子6を得ることができる。さらに、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート等をベースとした透湿樹脂膜、または、セルロース繊維、セラミック繊維、あるいはガラス繊維をベースとした紙材料などを用いることで熱に加え水分の交換を行う熱交換素子6を得ることができる。
【0028】
複数のリブ14は、伝熱板13の対向する一対の端辺の間に設けられ、一方の端辺から他方の端辺に向かうように形成されている。リブ14は、伝熱板13を積み重ねるときに伝熱板13間に排気流3または給気流4を通風させるための間隙、即ち排気風路16または給気風路17を形成するための部材である。より詳細には、複数のリブ14は、
図4に示すように、伝熱板13の端辺(外縁)に平行に配置されるように形成されている。
【0029】
複数のリブ14のそれぞれは、
図4に示すように、断面が略円形状となっている。リブ14と伝熱板13の固着方法は接着剤での固着またはリブ自体を成形して固着する方法があげられる。接着剤の場合は、リブ14に接着力を発揮する薬剤が好ましく、例えば、リブ14に紙紐を用いた場合は、親水性の紙に接着性が良好な酢酸ビニル樹脂系の接着剤が挙げられる。また、製造方法に応じて、湿気硬化、乾燥固化、あるいはUV硬化等の硬化方式を選択することができる。ただし、これらの薬剤に限らずリブ14の材質に応じて既知の接着剤及び接着方法を用いることができ、その効果に差異は生じない。リブ自体を成形する場合は、伝熱板13を挟み込んだインサート成形または真空成型が望ましく、溶融した樹脂が伝熱板13と固着されやすい材質であることが望ましい。なお、リブ14の断面形状は略円形状としたが、三角形形状、矩形形状、台形形状、又は六角形形状にしてもよい。
【0030】
リブ14の材質としては、一定の強度があれば足り、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ABS、あるいはポリアミド等の樹脂部材、または、セルロース繊維、セラミック繊維、あるいはガラス繊維をベースとした紙材料、綿、絹、あるいは麻を用いることができる。
【0031】
第一熱交換素子6aは、以上のような構成部材によって構成される。第二熱交換素子6bについても同様である。
【0032】
次に、熱交換素子6(第一熱交換素子6a、第二熱交換素子6b)の寸法関係の相関について、熱交換形換気装置2の基本性能である、静圧、風量、及び熱交換効率を交えて説明する。熱交換形換気装置2では、静圧と風量(本構成影響が生じるのは熱交換素子6に掛かる圧力損失)及び熱交換効率を維持しながら、熱交換形換気装置2の幅寸法の低減を図るには、熱交換形換気装置2で多くの容積を占める熱交換素子6の容積低減が必要である。熱交換素子6の容積を低減するには、例えば、熱交換素子ピース15の一辺を小さくすることが挙げられる。このような場合、従来の熱交換形換気装置に用いられる熱交換素子と比較して、伝熱板13の伝熱面積が小さくなることで、熱交換効率が低下する。一方で、熱交換素子6の排気風路16及び給気風路17の風路長さが短くなる場合は、風路摩擦が低減できるため、圧力損失が低減する。不足した熱交換効率を補うためには、熱交換素子ピース15の積層枚数を増やす必要がある。以上の事項から、第一熱交換素子6a及び第二熱交換素子6bの寸法関係は、
図3に示した積層方向となる高さ方向の寸法L1より、端面の対角線L2の方が小さい構成となっている。そして、本実施の形態では、熱交換素子6の容積低減を実現しつつ、従来の熱交換形換気装置に用いられる熱交換素子と同等の熱交換性能を有するようにするために、熱交換素子ピース15の積層枚数を増やし、第一熱交換素子6a及び第二熱交換素子6bの並列積層とした構成としている。
【0033】
次に、
図5を参照して、第一熱交換素子6a及び第二熱交換素子6bを並列に積層して構成される熱交換素子6の通風方向について説明する。
図5は、
図2の熱交換形換気装置2に用いられる熱交換素子6のB-B断面を示す断面図である。
【0034】
ここで、第一熱交換素子6aを通風する排気流3を排気流3cとし、給気流4を給気流4bとする。また、第二熱交換素子6bを通風する排気流3を排気流3dとし、給気流4を給気流4cとする。また、第一熱交換素子6a及び第二熱交換素子6bの高さ方向の対角線(
図5中の上下方向にひかれた対角線)の左側の空間を熱交換前空間22とし、右側の空間を熱交換後空間23とする。また、第一熱交換素子6aに対して水平方向の対角線より上側の空間を上段空間24とし、第一熱交換素子6aに対して水平方向の対角線より下側の空間、且つ、第二熱交換素子6bに対して水平方向の対角線より上側の空間を中段空間25とし、第二熱交換素子6bに対して水平方向の対角線より下側の空間を下段空間26とする。
【0035】
まず、第一熱交換素子6aを通風する排気流3cと給気流4bの流れ方を説明する。排気流3cは、熱交換前空間22且つ上段空間24の空間、すなわち、第一熱交換素子6aの左上側の空間から通風され、熱交換後空間23且つ中段空間25の空間、すなわち、第一熱交換素子6aの右下側の空間へと通風される。一方で、給気流4bは、熱交換前空間22且つ中段空間25の空間、すなわち、第一熱交換素子6aの左下側の空間から通風され、熱交換後空間23且つ上段空間24の空間、すなわち、第一熱交換素子6aの右上側の空間へと通風される。
【0036】
次に、第二熱交換素子6bを通風する排気流3dと給気流4cの流れ方を説明する。排気流3dは、熱交換前空間22且つ下段空間26の空間、すなわち、第二熱交換素子6bの左下側の空間から通風され、熱交換後空間23且つ中段空間25の空間、すなわち、第二熱交換素子6bの右上側の空間へと通風される。一方で、給気流4cは、熱交換前空間22且つ中段空間25の空間、すなわち、第二熱交換素子6bの左上側の空間から通風され、熱交換後空間23且つ下段空間26の空間、すなわち、第二熱交換素子6bの右下側の空間へと通風される。
【0037】
熱交換素子6の風路は、以上のように排気流3(排気流3c及び排気流3d)及び給気流4(給気流4b及び給気流4c)が通風されるように構成されている。そして、分割された各風路によって、熱交換素子6としての風量を確保している。
【0038】
最後に、
図2及び
図6を参照して、熱交換形換気装置2における排気流3及び給気流4の流れ方について説明する。
図6は、
図2の熱交換形換気装置2のA-A断面における部分断面図である。ここで、
図6に示す排気流3a~排気流3e、給気流4a~給気流4e、排気風路16a~排気風路16c、及び給気風路17a~給気風路17cは、熱交換形換気装置2における排気流3、給気流4、排気風路16、及び給気風路17を区別して説明するためのものであり、それぞれに差異はない。なお、排気風路16a及び排気風路16bと給気風路17aとは、熱交換前空間22において互いに区切られた空間であり、排気風路16cと給気風路17b及び給気風路17cとは、熱交換後空間23において互いに区切られた空間である。つまり、排気風路16と給気風路17とは、各風路において排気流3と給気流4とが混合されることはないように構成されている。
【0039】
まず、熱交換形換気装置2における排気流3の流れ方について説明する。
【0040】
熱交換形換気装置2では、内気口8より流通した排気流3は、上段空間24の排気風路16aと下段空間26の排気風路16bとに分岐して流通し、熱交換素子6を流通した後に、中段空間25にて合流して排気風路16cを通り、排気口9から排気ファン7によって排気される。具体的には、内気口8より流通した排気流3は、上段空間24の排気風路16aと下段空間26の排気風路16bとに分岐して、熱交換前空間22において排気流3a及び排気流3bとなる。そして、排気流3aは、第一熱交換素子6aの左上側の空間である排気風路16a(前述の熱交換前空間22且つ上段空間24の空間)を流通し、第一熱交換素子6aを介して排気流3cとなって流通し、第一熱交換素子6aの右下側の空間である排気風路16c(前述の熱交換後空間23且つ中段空間25の空間)に排気流3eとして流れる。同様に、排気流3bは、第二熱交換素子6bの左下側の空間である排気風路16b(前述の熱交換前空間22且つ下段空間26の空間)を流通し、第二熱交換素子6bを介して排気流3dとなって流通し、第二熱交換素子6bの右上側の空間である排気風路16c(前述の熱交換後空間23且つ中段空間25の空間)に排気流3eとして流れる。このとき、第一熱交換素子6aを介して通風された排気流3cと、第二熱交換素子6bを介して通風された排気流3dとは、混合されて排気流3eとなる。その後、排気流3eは、排気口9から屋外に吐出される。
【0041】
次に、熱交換形換気装置2における給気流4の流れ方について説明する。
【0042】
熱交換形換気装置2では、外気口11より流通した給気流4は、中段空間25の給気風路17aから、第一熱交換素子6a及び第二熱交換素子6bに分岐して流通した後に、上段空間24の給気風路17bと、下段空間26の給気風路17cとをそれぞれ通り、給気ファン10で混合され、給気口12から給気される。具体的には、外気口11より流通した給気流4aは、二つに分岐し、分岐した給気流4aの一方は、第一熱交換素子6aの左下側の空間である給気風路17a(前述の熱交換前空間22且つ中段空間25の空間)を流通し、第一熱交換素子6aを介して給気流4bとなって流通し、第一熱交換素子6aの右上側の空間である給気風路17b(前述の熱交換後空間23且つ上段空間24の空間)に給気流4dとして流れる。同様に、分岐した給気流4aの他方は、第二熱交換素子6bの左上側の空間である給気風路17a(前述の熱交換前空間22且つ中段空間25の空間)を流通し、第二熱交換素子6bを介して給気流4cとなって流通し、第二熱交換素子6bの右下側の空間である給気風路17c(前述の熱交換後空間23且つ下段空間26の空間)に給気流4eとして流れる。このとき、給気流4dと給気流4eとは、給気ファン10によって混合され、給気口12から屋内に給気される。
【0043】
以上、本実施の形態1に係る熱交換形換気装置2によれば、以下の効果を享受することができる。
【0044】
(1)熱交換形換気装置2は、屋内の空気を屋外に排気する排気風路16と屋外の空気を屋内に給気する給気風路17とが内部に形成された箱体形状の本体ケース5と、本体ケース5の第一側面20に並べて配置された外気口11及び排気口9と、第一側面20と対向する第二側面21に並べて配置された内気口8及び給気口12と、本体ケース5内において内気口8と排気口9とを連通接続する排気風路16に排気流3を生じさせる排気ファン7と、本体ケース5内において外気口11と給気口12とを連通接続する給気風路17に給気流4を生じさせる給気ファン10と、排気風路16と給気風路17とが交差する交差部に配置され、排気風路16を流れる排気流3と給気風路17を流れる給気流4との間で熱交換させる熱交換素子6と、を備える。熱交換素子6は、伝熱性及び吸湿性を有する伝熱板13と、伝熱板13の一方の面に設けられた複数のリブ14とを有する複数の熱交換素子ピース15が積層されて排気風路16と給気風路17とが1層ずつ交互に形成された矩形状の第一熱交換素子6a及び矩形状の第二熱交換素子6bを有する。第一熱交換素子6a及び第二熱交換素子6bは、いずれも熱交換素子ピース15の積層方向が第一側面20と第二側面21とを最短距離で結ぶ直線(破線L)に沿って配置され、且つ、積層方向に沿った第一熱交換素子6aの稜角部と積層方向に沿った第二熱交換素子6bの稜角部とを突き合わせて本体ケース5の高さ方向に並列配置されている。
【0045】
このようにすることで、二つの熱交換素子(第一熱交換素子6a及び第二熱交換素子6b)によって従来の熱交換形換気装置に用いられる熱交換素子と同等の熱交換性能を有するようにすれば、従来の熱交換形換気装置に用いられる熱交換素子の熱交換素子ピース15と比較して、各熱交換素子6の熱交換素子ピース15の面積(言い換えれば、熱交換形換気装置2の内部に設置状態での幅方向の寸法)を縮小化できるので、熱交換形換気装置2の幅寸法(幅W)を低減することができる。つまり、熱交換性能を維持しつつ、住宅躯体の梁と梁の隙間に設置できるように小型化された熱交換形換気装置2とすることができる。
【0046】
(2)熱交換形換気装置2では、第一熱交換素子6a及び第二熱交換素子6bの積層方向の端面の対角線が互いに略垂直水平になるように第一熱交換素子6aと第二熱交換素子6bの稜角部が突き合わさせるようにした。これにより、第一熱交換素子6aと第二熱交換素子6bの積層方向の端面の対角線が略水平垂直ではない場合と比較して、熱交換形換気装置2の幅寸法(幅W)において、熱交換素子6が占有する幅寸法を低減することができる。これにより、熱交換形換気装置2の幅方向の寸法をさらに低減することができ、住宅躯体の梁と梁の隙間に設置しやすくなる。つまり、熱交換形換気装置2の施工性を向上することができる。
【0047】
以上、本発明に関して実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0048】
本実施の形態1に係る熱交換形換気装置2では、熱交換素子6を第一熱交換素子6aと第二熱交換素子6bの2つを並列積層した構成としたが、これに限られない。例えば、熱交換素子6を3個または4個などの複数個を並列積層した構成としてもよい。これにより、各熱交換素子6の熱交換素子ピース15の面積(言い換えれば、熱交換形換気装置2の内部に設置状態での幅方向の寸法)を縮小化できるので、熱交換形換気装置2の幅寸法(幅W)をさらに低減することができる。つまり、熱交換性能を維持しつつ、住宅躯体の梁と梁の隙間に設置できるようにさらに小型化された熱交換形換気装置2とすることができる。
【0049】
また、本実施の形態1に係る熱交換形換気装置2では、第一熱交換素子6a及び第二熱交換素子6bを、それぞれ熱交換素子ピース15を積層方向に複数枚積層して一つの熱交換素子として構成したが、積層方向に対して複数分割した構成としてもよい。こうした構成では、熱交換素子6の設置または着脱の際に寸法が小さくなることで、熱交換形換気装置2のメンテナンスをしやすくすることができる。
【0050】
また、本実施の形態1熱交換形換気装置2では、排気風路16は、
図6の左上側の上段空間24及び左下側の下段空間26から中段空間25に排気流3が流通する風路とし、給気風路17は、中段空間25から右上側の上段空間24段及び右下側の下段空間26に給気流4が流通する風路として記載したが、これらが入れ替わっても何ら問題はない。その場合、
図2に示した、内気口8は外気口11に、排気口9は給気口12になり、外気口11は内気口8に、給気口12は排気口9に配置変更した構成になる。
【0051】
以上で使用した文言に関し、本実施の形態に係る排気流3あるいは排気流3a~排気流3eは請求項の「排気流」に相当する。また、給気流4あるいは給気流4a~給気流4eは請求項の「給気流」に相当する。また、本体ケース5は請求項の「筐体」に相当する。また、伝熱板13は請求項の「仕切部材」、リブ14は請求項の「間隔保持部材」に相当する。また、熱交換素子ピースは請求項の「単位構成部材」に相当する。また、熱交換素子6請求項の「熱交換素子」、第一熱交換素子6aは請求項の「第一熱交換素子」、第二熱交換素子6bは請求項の「第二熱交換素子」に相当する。また、排気ファン7は請求項の「排気送風機」、給気ファン10は請求項の「給気送風機」に該当する。また、排気風路16あるいは排気風路16a~排気風路16cは請求項の「排気風路」、給気風路17あるいは給気風路17a~給気風路17cは請求項の「給気風路」に相当する。また、第一側面20は請求項の「第一側面」、第二側面21は請求項の「第二側面」に相当する。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る熱交換形換気装置は、住宅躯体の梁と梁の隙間に設置できるように、より幅方向の寸法を低減した熱交形換気装置として有用である。
【符号の説明】
【0053】
1 家
2 熱交換形換気装置
3 排気流
3a 排気流
3b 排気流
3c 排気流
3d 排気流
3e 排気流
4 給気流
4a 給気流
4b 給気流
4c 給気流
4d 給気流
4e 給気流
5 本体ケース
6 熱交換素子
6a 第一熱交換素子
6b 第二熱交換素子
7 排気ファン
8 内気口
9 排気口
10 給気ファン
11 外気口
12 給気口
13 伝熱板
13a 端辺
13b 端辺
13c 端辺
13d 端辺
14 リブ
15 熱交換素子ピース
16 排気風路
16a 排気風路
16b 排気風路
16c 排気風路
17 給気風路
17a 給気風路
17b 給気風路
17c 給気風路
20 第一側面
21 第二側面
22 熱交換前空間
23 熱交換後空間
24 上段空間
25 中段空間
26 下段空間