(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065748
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】乳化組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/06 20060101AFI20230508BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230508BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20230508BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230508BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20230508BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20230508BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/73
A61K8/81
A61K8/34
A61K8/31
A61K8/86
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176072
(22)【出願日】2021-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000149181
【氏名又は名称】株式会社大阪製薬
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】福田 ひとみ
(72)【発明者】
【氏名】柴田 知佳
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB032
4C083AC022
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC402
4C083AC422
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD352
4C083AD532
4C083BB01
4C083BB13
4C083CC05
4C083DD23
4C083DD33
4C083EE05
4C083EE12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】使用者の皮膚に対して使用するときに、その皮膚が汗ばんでいるときであっても、さらに乳幼児に対してであっても、伸びがよく十分に塗り広げることができる乳化組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】ヘパリン類似物質、増粘剤、脂肪族モノアルコール、油分、界面活性剤及び水を含有する乳化組成物であって、25℃において、0.49~0.51gの前記乳化組成物を0.049~0.051gの塩化ナトリウム1重量%水溶液と混合して、略水平方向に沿って静置されたポリエチレンテレフタレート製板に15mm四方の面積で塗布した後に、前記ポリエチレンテレフタレート製板を10秒間略水平方向から略鉛直方向に立てかけてから略水平方向に戻したときに、前記乳化組成物及び前記塩化ナトリウム1重量%水溶液の混合物の移動距離が5~20cmである流動性を有する乳化組成物などにより解決することができた。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘパリン類似物質、増粘剤、脂肪族モノアルコール、油分、界面活性剤及び水を含有する乳化組成物であって、25℃において、0.49~0.51gの前記乳化組成物を0.049~0.051gの塩化ナトリウム1重量%水溶液と混合して、略水平方向に沿って静置されたポリエチレンテレフタレート製板に15mm四方の面積で塗布した後に、前記ポリエチレンテレフタレート製板を10秒間略水平方向から略鉛直方向に立てかけてから略水平方向に戻したときに、前記乳化組成物及び前記塩化ナトリウム1重量%水溶液の混合物の移動距離が5~20cmである流動性を有することを特徴とする乳化組成物。
【請求項2】
前記脂肪族モノアルコールは、直鎖状で飽和されており、炭素数18~22であることを特徴とする請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項3】
前記油分が5~20重量%、前記水が65~80重量%、前記脂肪族モノアルコールが0.5~5重量%含有されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の乳化組成物。
【請求項4】
前記ヘパリン類似物質が0.01~3.0重量%含有されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の乳化組成物。
【請求項5】
乳幼児用であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の手指や体幹などの皮膚に塗布等して水分の蒸発を抑制して保湿する乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚の乾燥を防止するために、使用者の指、手、腕、足、脚、体幹などの身体に塗布等して保湿する外用組成物が数多く知られている。さらに、保湿機能等を有する有効成分として、ヘパリン類似物質を含有する外用組成物も種々知られている。
【0003】
例えば、特許文献1において、保湿作用、抗炎症作用、血行促進作用等を有するヘパリン類似物質、組成物の粘度上昇作用を有するカルボキシビニルポリマーである増粘剤、水などを含有する外用剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の発明では、使用者の皮膚に対して使用するときに、その皮膚が汗ばんでいるとその汗と相俟って柔らかくなるなどして垂れやすくなることで塗り広げにくくなり、とりわけ大人しくしていないことが多い0~6歳の乳幼児であればより十分に塗り広げられないおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明では、使用者の皮膚に対して使用するときに、その皮膚が汗ばんでいるときであっても、さらには、汗をかきやすく大人しくしていないことが多い乳幼児に対してであっても、柔らかくなりすぎて垂れることがないように塗りやすい硬さを保ちながらも伸びがよく十分に塗り広げることができる乳化組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔1〕すなわち、本発明は、ヘパリン類似物質、増粘剤、脂肪族モノアルコール、油分、界面活性剤及び水を含有する乳化組成物であって、25℃において、0.49~0.51gの前記乳化組成物を0.049~0.051gの塩化ナトリウム1重量%水溶液と混合して、略水平方向に沿って静置されたポリエチレンテレフタレート製板に15mm四方の面積で塗布した後に、前記ポリエチレンテレフタレート製板を10秒間略水平方向から略鉛直方向に立てかけてから略水平方向に戻したときに、前記乳化組成物及び前記塩化ナトリウム1重量%水溶液の混合物の移動距離が5~20cmである流動性を有することを特徴とする乳化組成物である。
【0008】
〔2〕そして、前記脂肪族モノアルコールは、直鎖状で飽和されており、炭素数18~22であることを特徴とする前記〔1〕に記載の乳化組成物である。
【0009】
〔3〕そして、前記油分が5~20重量%、前記水が65~80重量%、前記脂肪族モノアルコールが0.5~5重量%含有されていることを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の乳化組成物である。
【0010】
〔4〕そして、前記ヘパリン類似物質が0.01~3.0重量%含有されていることを特徴とする前記〔1〕から前記〔3〕のいずれかに記載の乳化組成物である。
【0011】
〔5〕そして、乳幼児用であることを特徴とする前記〔1〕から前記〔4〕のいずれかに記載の乳化組成物である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、使用者の皮膚に対して使用するときに、その皮膚が汗ばんでいるときであっても、さらには、汗をかきやすく大人しくしていないことが多い乳幼児に対してであっても、柔らかくなりすぎて垂れることがないように塗りやすい硬さを保ちながらも伸びがよく十分に塗り広げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の皮膚外用組成物に関する実施形態について詳しく説明する。なお、説明中における範囲を示す表記のある場合は、上限と下限を含有するものである。
【0014】
本発明におけるヘパリン類似物質は、コンドロイチン多硫酸などの酸性ムコ多糖類の一種であり、皮膚に対する保湿効果や抗炎症作用、血流促進、瘢痕・ケロイドの治療や予防など幅広い効果が知られている公知の化合物である。
【0015】
本発明で使用されるヘパリン類似物質は、ムコ多糖類が硫酸化されることで得られたものであればよく、ブタやウシの小腸、肺、筋肉などの臓器から抽出されたものを使用することができる。本発明におけるヘパリン類似物質は、日本薬局方外医薬品規格に収載されているものを使用することが好ましい。
【0016】
本発明の乳化組成物におけるヘパリン類似物質の含有割合は、乳化の安定性を保つためなどの理由から、0.01~3.0重量%であることが好ましく、0.05~2.0重量%であることがより好ましい。
【0017】
本発明における増粘剤は、乳化組成物の粘度を上昇させるとともに、皮膚などに塗り広げたときの使用感を向上させるための成分である。増粘剤としては、例えば、ポリアクリル酸、架橋型ポリアクリル酸、アクリル酸とメタクリル酸アルキルが共重合されたアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール、ポリアクリル酸ナトリウムなどが好ましく、乳化組成物の保存安定性が良いことから架橋型ポリアクリル酸、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体がより好ましい。これらの増粘剤は、1種のみ又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0018】
本発明の乳化組成物における増粘剤の含有割合は、0.01~10重量%であることが好ましく、0.05~5重量%であることがより好ましい。その含有割合が、上記範囲であると、使用に適した所望の粘度に調整することができる。
【0019】
増粘剤を配合することにより乳化組成物の粘度は上昇するところ、各種成分を配合して攪拌し均一な溶液となった状態におけるその乳化組成物の粘度はJIS K7117-1に準じたB型回転粘度計を用いた計測において、25℃条件下2~15Pa・sであることが好ましく、3~10Pa・sであることがより好ましい。粘度がこの範囲にあると、乳化組成物を皮膚に付着してもただちに流れ落ちることなく、また、塗り広げるときにものばしやすい。
【0020】
本発明における脂肪族モノアルコールは、直鎖又は分岐鎖のいずれかを有する飽和又は不飽和のいずれかの炭化水素に1つのヒドロキシ基を備えた第一級アルコール、第二級アルコール又は第三級アルコールのいずれかであるアルコールである。脂肪族モノアルコールにより、増粘剤と相俟って、乳化組成物を外用剤として使用すると皮膚の表面に塗り拡げるときに滑らかに変形してのばしやすくなる。
【0021】
脂肪族モノアルコールとしては、例えば、カプリルアルコール、2-エチルヘキサノール、ペラルゴンアルコール、カプリンアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、パルミトレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコールなどが好ましく、このうち、直鎖状で飽和されており炭素数18~22である、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどがより好ましい。これらの脂肪族モノアルコールは、1種のみ又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0022】
本発明の乳化組成物における脂肪族モノアルコールの含有割合は、0.5~5重量%であることが好ましく、1~4重量%であることがさらに好ましい。当該脂肪族モノアルコールの含有割合が上記範囲内であると、増粘剤と相俟って乳化組成物を外用剤として使用したときに乳化組成物としての保形性を有するとともに皮膚の表面に塗り拡げるときに滑らかに変形してのばしやすくなる。
【0023】
本発明における油分は、油溶性の成分である。油分の性状としては、25℃の常温で液状、形状を維持しつつ力を加えると変形する程度の半固形状の化合物であることが好ましい。油分により、外用剤として使用したときに皮膚の表面に拡がることによりその表面より飛散する水分を抑制したり、皮膚に浸透して水分を留めたりすることから保湿を高めることができる。
【0024】
油分としては、例えば、スクワラン、オリーブオイルなどの植物油又は植物由来の油、パラフィン、ワセリンなどの炭化水素、ジメチコンなどのシリコーン油などが好ましい。これらの油分は、1種のみ又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0025】
本発明の乳化組成物における油分の含有割合は、5~20重量%であることが好ましく、8~15重量%であることがさらに好ましい。当該油分の含有割合が上記範囲内であると、外用剤として皮膚に塗布したときに皮膚からの水分蒸発を抑制し保湿効果を高めることができる。
【0026】
本発明における界面活性剤は、油分と水を乳化させて均一に分散するための成分である。界面活性剤により、水中油型エマルション(W/Oエマルション)などを作成することができる。
【0027】
界面活性剤としては、例えば、陽イオン界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤が挙げられる。
【0028】
さらに具体的には、陽イオン界面活性剤は、水中で解離したとき陽イオンとなる界面活性剤であり、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩などが好ましい。このうちアルキル基は、炭素数12~22であることが好ましく、カウンターアニオンとして塩化物イオン、水酸化物イオン、臭化物イオンなどであることが好ましい。
【0029】
そして、陰イオン界面活性剤は、水中で解離したとき陰イオンとなる界面活性剤であり、例えば、脂肪酸塩、モノアルキル硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸塩などが好ましい。このうちアルキル基は、炭素数12~22であることが好ましく、カウンターカチオンとしてナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンなどであることが好ましい。
【0030】
そして、両性界面活性剤は、分子内にアニオン性部位とカチオン性部位の両方を併せ持っており、溶液のpHに応じて陽イオン、陰イオン、および陽イオンと陰イオンの両性となる界面活性剤であり、例えば、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタインなどが好ましい。このうちアルキル基は、炭素数12~22であることが好ましい。
【0031】
そして、非イオン界面活性剤は、親水部がイオン化しない親水性部位を有する活性剤であり、例えば、ポリオキシエチレンセチルエーテルやポリオキシエチレンステアリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステルやソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンの脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン付加多価アルコールの脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミドなどが好ましい。上記非イオン界面活性剤のうち、グリフィンの式より算出されるHLBが3~17のものがさらに好ましい。上記非イオン界面活性剤でポリオキシエチレン骨格を有するものは適宜オキシエチレンの付加モル数を変更することができる。HLBが上記範囲の非イオン界面活性剤であると、乳化組成物の保存安定にすぐれ、具体的には時間が経過しても分離などが起こらず、半固形状又はクリーム状を保持することができる。また、これらの界面活性剤は、1種のみ又は2種以上組み合わせて使用することができる。界面活性剤のうち、乳化組成物の安定性などから非イオン界面活性剤を用いることが好ましい。
【0032】
本発明の乳化組成物における界面活性剤の含有割合は、0.01~10重量%であることが好ましく、0.05~5重量%であることがさらに好ましい。当該界面活性剤の含有割合が上記範囲内であると、油分と水を乳化させて均一で安定に分散することができる。
【0033】
本発明における水は、乳化組成物における溶剤であり、油分を均一に分散することができる。水としては、日本薬局方規格の水が好ましく、例えば、水道水、井戸水などである常水、そして、蒸留、イオン交換膜によるイオン交換処理、限外ろ過膜による限外ろ過処理のいずれか、またはそれらの組み合わせにより常水を処理した精製水、そして、加熱などにより精製水を滅菌処理した滅菌精製水などが好ましい。
【0034】
本発明の乳化組成物における水の含有割合は、65~80重量%であることが好ましく、70~75重量%であることがさらに好ましい。当該水の含有割合が上記範囲内であると、ヘパリン類似物質を十分に溶解することができるとともに、汎用であるために入手しやすく、外用剤として皮膚に使用してときに安全性にも問題がない。
【0035】
さらに、本発明の乳化組成物には、上述した各成分の他に、必要に応じて、フェノキシエタノール、トコフェロール、ビタミンC、BHTなどの保存剤、pH調整剤、グリセリン、ヒアルロン酸などの追加の保湿剤、香料、色素などを配合することもできる。
【0036】
そして、本発明の乳化組成物に関する流動性は、以下に示す評価において示される特性である。すなわち、本発明の乳化組成物の流動性は、25℃において、0.49~0.51gの乳化組成物を0.049~0.051gの塩化ナトリウム1重量%水溶液と混合して、略水平方向に沿って静置されたポリエチレンテレフタレート製板に15mm四方の面積で塗布した後に、そのポリエチレンテレフタレート製板を10秒間略水平方向から略鉛直方向に立てかけてから略水平方向に戻したときに、乳化組成物及び塩化ナトリウム1重量%水溶液の混合物の移動距離として表されるものである。流動性について、その移動距離が5~20cmであることが好ましく、10~20cmであることがより好ましい。流動性に関して上記範囲内であると、実際に乳化組成物を汗ばんだ皮膚に塗り広げたとき、後述する官能評価の試験結果と相関しているように、伸びやすく垂れにくくなる。なお、塗布されるポリエチレンテレフタレート製板は、表面に種々の物理的な加工がされておらず、種々の薬剤によるコーティングもされていないホームセンター等で購入可能である汎用品を用いることが好ましい。
【0037】
当該流動性については、乳化組成物を外用剤として使用したときに、塗布する皮膚が汗ばんでいるとしても、さらには、汗をかきやすく大人しくしていないことが多い乳幼児に対してであっても、伸びがよく十分に塗り広げることができることを示す特性である。塩化ナトリウム1重量%水溶液が汗を模した水溶液であり、乳化組成物及び塩化ナトリウム1重量%水溶液の混合物が、汗をかいた皮膚に乳化組成物を塗り広げるときに汗と乳化物が混ざりあった状態を模している。このように、当該流動性は、単に乳化組成物としての物性値だけは表すことができず、汗と混ざり合ったときに流動性が変化するという実際の使用状況を踏まえた特性として、乳化物を特定するものである。
【実施例0038】
〔実施例1〕
ヘパリン類似物質を0.1重量部、増粘剤として、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を0.1重量部、脂肪族アルコールとして、ベヘニルアルコール(直鎖・飽和・炭素数22)を2重量部、油分として、スクワランを10重量部、オリーブ油を2重量部、ジメチコンを1重量部、さらなる保湿剤として、グリセリンを10重量部、界面活性剤として、モノステアリンポリエチレングリコールを1重量部、親油型モノステアリン酸グリセリルを1重量部、他の添加剤として、キサンタンガムを0.5重量部、水酸化ナトリウムを1重量部、グリチルリチン酸ジカリウムを0.1重量部、そして、水を71.2重量部配合して混合等を行い、合計100重量部の乳化組成物を作製した。
【0039】
〔実施例2〕
添加剤として、フェノキシエタノールを0.5重量部添加し、グリチルリチン酸ジカリウムを添加しなかった以外は、実施例1と同様に乳化組成物を作製した。
【0040】
〔実施例3〕
脂肪族アルコールとして、ステアリルアルコール(直鎖・飽和・炭素数18)を2重量部とし、フェノキシエタノールを0.5重量部添加した以外は、実施例1と同様に乳化組成物を作製した。
【0041】
〔実施例4〕
増粘剤として、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を0.2重量部とし、油分として、スクワランを6重量部とし、添加剤として、キサンタンガムを配合せず、フェノキシエタノールを0.5重量部添加した以外は、実施例1と同様に乳化組成物を作製した。
【0042】
〔比較例1〕
脂肪族アルコールとして、セタノール(直鎖・飽和・炭素数16)を2重量部とし、添加剤として、フェノキシエタノールを0.5重量部添加した以外は、実施例1と同様に乳化組成物を作製した。
【0043】
〔比較例2〕
ヘパリン類似物質を配合せず、添加剤として、フェノキシエタノールを0.5重量部添加し、グリチルリチン酸ジカリウムを添加しなかった以外は、実施例1と同様に乳化組成物を作製した。
【0044】
上述したように作製した乳化組成物の粘度を測定し、流動性を測定し、使用感を官能評価し、使用感に基づいて総合的に善し悪しを評価した。
【0045】
〔粘度〕
JIS K7117-1に記載のブルックフィールド形回転粘度計B形(東機産業株式会社製、商品名「TVB-10M」)を使用し、25℃において、ロータ番号4のロータを用いて、ロータの回転数を30rpmとして、粘度を測定した。
【0046】
〔流動性〕
25℃において、0.49~0.51gの乳化組成物を0.049~0.051gの塩化ナトリウム1重量%水溶液と混合して、略水平方向に沿って静置されたポリエチレンテレフタレート製板に15mm四方の面積で塗布した後に、そのポリエチレンテレフタレート製板を10秒間略水平方向から略鉛直方向に立てかけてから略水平方向に戻したときに、乳化組成物及び塩化ナトリウム1重量%水溶液の混合物の移動距離を測定した。乳化組成物及び塩化ナトリウム1重量%水溶液の混合物の移動距離が、5m未満のものを伸びが悪く固くて塗りにくいとして「×」と評価し、5cm以上10cm未満のものを塗りやすく適切な粘度であるとして「△」と評価し、10cm以上20cm未満のものを塗りやすく最も適切な粘度であるとして「○」と評価し、20cm以上のものをゆるくて塗りにくく垂れやすいとして「×」と評価した。これらの結果について、「〇」及び「△」評価が好ましく、「×」評価は好ましくないと判断した。
【0047】
〔使用感〕
作製した乳化組成物を、専門パネラー5名の上腕部にそれぞれおおよそ0.5gの一定量塗り広げ、かなり伸びやすく垂れずに非常に塗り広げやすいものを5点、伸びやすく垂れずに塗り広げやすいものを4点、やや伸びやすく垂れにくいものをやや塗り広げやすいものを3点、伸ばしにくいまたは垂れやすいものをあまり塗り広げにくいものを2点、伸ばしにくいまたは垂れるものを非常に塗り広げにくいものを1点という5段階で官能評価を行い、その平均点に基づいて評価した。その平均点が、3.5以上のものを「○」と評価し、その平均点が、2.0以上3.5未満のものを「△」として評価し、その平均点が、2.5未満のものを「○」と評価した。これらの結果について、「〇」及び「△」評価が好ましく、「×」評価は好ましくないと判断した。
【0048】
実施例1~4、比較例1~2について、粘度、流動性、使用感に関する結果を、それぞれ表1に示す。
【0049】
【0050】
表1に示すように、実施例1~4、比較例1~2において、流動性の試験と使用感の試験には相関性が見られ、所定の流動性を有する組成物において良好な使用感を得られることが分かった。そして、実施例1~4の乳化組成物は、比較例1~2の組成物に比べて、柔らかくなりすぎて垂れることがなく、塗りやすい硬さを保ちながらも伸びがよく十分に塗り広げることができることが分かった。