(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065754
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】浴室監視システム
(51)【国際特許分類】
G08B 21/02 20060101AFI20230508BHJP
【FI】
G08B21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176086
(22)【出願日】2021-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神宮 正樹
【テーマコード(参考)】
5C086
【Fターム(参考)】
5C086AA22
5C086BA04
5C086CA11
5C086CA25
5C086FA02
5C086FA06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】入浴中の異常状態を精度良く判定する浴室監視システムを提供する。
【解決手段】レーザセンサ装置10と、制御部20と、を備える浴室監視システム100であって、レーザセンサ装置10は、浴室に設けられ、パルス光を複数回出力する発光部12と、対象物OBJによるパルス光の反射光を受光する受光部14と、を有する。制御部20は、受光部14が受光した反射光の飛行時間を用いて、レーザセンサ装置から対象物OBJまでの距離である対象距離を算出する距離算出部24と、距離算出部24が算出した対象距離を用いて、浴槽に入っている入浴者(対象物)OBJを検知する検知部26と、検知部26により対象物として検知された入浴者の身体のうち、予め定められた身体部位を特定する特定部28と、特定部28が特定した予め定められた身体部位の位置の変化に基づき、入浴者が異常状態であるか否かを判定する判定部30と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザセンサ装置と、制御部とを備える浴室監視システムであって、
前記レーザセンサ装置は、浴室に設けられ、パルス光を複数回出力する発光部と、対象物による前記パルス光の反射光を受光する受光部と、を有し、
前記制御部は、前記受光部において受光される前記反射光の飛行時間を用いて、前記レーザセンサ装置から前記対象物までの距離である対象距離を算出する距離算出部と、
前記距離算出部により算出された前記対象距離を用いて、浴槽に入っている入浴者を前記対象物として検知する検知部と、
前記検知部により前記対象物として検知された前記入浴者の身体のうち、予め定められた身体部位を特定する特定部と、
前記特定部により特定された予め定められた身体部位の位置の変化に基づき、前記入浴者が異常状態であるか否かを判定する判定部と、
を有する、浴室監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の浴室監視システムにおいて、
前記予め定められた身体部位は、頭部または肩部である、浴室監視システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の浴室監視システムにおいて、
前記発光部は、前記浴室内の床面と平行な方向であって、かつ、予め定められた高さに前記パルス光を出力する、浴室監視システム。
【請求項4】
請求項3に記載の浴室監視システムにおいて、
前記判定部は、前記特定された前記予め定められた身体部位の大きさと、正常状態における前記入浴者が前記浴槽において座位姿勢となった際の前記予め定められた身体部位の大きさとして予め定められた大きさとが一致する場合には、前記入浴者が異常状態ではないと判定し、
前記特定された予め定められた身体部位の大きさが、正常状態における前記座位姿勢での前記予め定められた身体部位の大きさとして予め定められた大きさよりも小さい場合には、前記入浴者が異常状態であると判定する、浴室監視システム。
【請求項5】
請求項4に記載の浴室監視システムにおいて、
前記判定部は、異常状態ではないと判定された前記入浴者の前記予め定められた身体部位が前記特定部によって特定されなくなった場合、前記入浴者が異常状態であると判定する、浴室監視システム。
【請求項6】
請求項4に記載の浴室監視システムにおいて、
前記判定部は、異常状態ではないと判定された前記入浴者の前記予め定められた身体部位の位置が、予め定められた時間以上予め定められた移動速度以下で変化し続けている場合、前記入浴者が異常状態であると判定する、浴室監視システム。
【請求項7】
請求項4に記載の浴室監視システムにおいて、
前記判定部は、異常状態ではないと判定された前記入浴者の前記予め定められた身体部位の大きさが、予め定められた時間以上変化しない場合、前記入浴者が異常状態であると判定する、浴室監視システム。
【請求項8】
請求項4から請求項7までのいずれか一項に記載の浴室監視システムにおいて、
前記浴槽に入っている前記入浴者の異常状態を報知する報知部をさらに備える、浴室監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、浴室監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、入浴者の異常検出を目的とした種々の異常検出装置が知られている。例えば、特許文献1の異常検出装置では、カメラなどを用いて浴室内の人体の動きを検出する。かかる異常検出装置では、予め定められた設定時間、入浴者に動きがなければ、入浴者に動くように音声で報知し、その報知でも入浴者に動きがなければ、入浴者が異常状態であると判定するように構成されている。これにより、急な体調異常などによる浴室内事故を早く発見できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の異常検出装置のような体全体の動きの有無による異常状態の判定では、例えば、急な体調異常などによって意識障害が起きた入浴者の頭部が徐々に水面へ沈んでいく場合、入浴者に動きがあるので異常状態ではないとの誤判定がなされ、異常状態の発見が遅れるおそれがある。このため、入浴中の異常状態を精度良く判定可能な技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、浴室監視システムが提供される。この浴室監視システムは、 レーザセンサ装置と、制御部とを備える浴室監視システムであって、前記レーザセンサ装置は、浴室に設けられ、パルス光を複数回出力する発光部と、対象物による前記パルス光の反射光を受光する受光部と、を有し、前記制御部は、前記受光部において受光される前記反射光の飛行時間を用いて、前記レーザセンサ装置から前記対象物までの距離である対象距離を算出する距離算出部と、前記距離算出部により算出された前記対象距離を用いて、浴槽に入っている入浴者を前記対象物として検知する検知部と、前記検知部により前記対象物として検知された前記入浴者の身体のうち、予め定められた身体部位を特定する特定部と、前記特定部により特定された予め定められた身体部位の位置の変化に基づき、前記入浴者が異常状態であるか否かを判定する判定部と、を有する。
この形態の浴室監視システムによれば、検知部により対象物として検知された入浴者の身体のうち、予め定められた身体部位を特定する特定部と、特定部により特定された予め定められた身体部位の位置の変化に基づき、入浴者が異常状態であるか否かを判定する判定部と、を有するので、予め定められた身体部位の位置の変化に基づき、入浴者が異常状態であるか否かを判定できる。身体部位このため、単に入浴者に動きがなければ異常状態であると判定するシステムと比べて、浴槽に入っている入浴者の動きがない場合だけでなく、動きがある場合も含めて、異常状態を精度良く判定できる。
(2)上記形態の浴室監視システムにおいて、前記予め定められた身体部位は、頭部または肩部であってもよい。この形態の浴室監視システムによれば、頭部または肩部の位置の変化に基づき、浴槽に入っている入浴者が異常状態であるか否かを判定する。このため、頭部または肩部が沈んだ状況は、溺死等の事故に繋がりやすいので、かかる事故が未然に防止され得る。
(3)上記形態の浴室監視システムにおいて、前記発光部は、前記浴室内の床面と平行な方向であって、かつ、予め定められた高さに前記パルス光を出力してもよい。この形態の浴室監視システムによれば、発光部は、浴室内の床面と平行な方向であって、かつ、予め定められた高さにパルス光を出力する。このため、発光部は、浴室内の床面と平行な方向であって、かつ、例えば、浴槽において座位姿勢の入浴者の予め定められた身体部位にパルス光を出力できる。これにより、入浴者の予め定められた身体部位の有無や位置を精度良く特定できる。
(4)上記形態の浴室監視システムにおいて、前記判定部は、前記特定された前記予め定められた身体部位の大きさと、正常状態における前記入浴者が前記浴槽において座位姿勢となった際の前記予め定められた身体部位の大きさとして予め定められた大きさとが一致する場合には、前記入浴者が異常状態ではないと判定し、前記特定された予め定められた身体部位の大きさと、正常状態における前記座位姿勢での前記予め定められた身体部位の大きさとして予め定められた大きさよりも小さい場合には、前記入浴者が異常状態であると判定してもよい。
この形態の浴室監視システムによれば、判定部は、特定された予め定められた身体部位の大きさと、正常状態における入浴者が浴槽において座位姿勢となった際の予め定められた身体部位の大きさとして予め定められた大きさよりも小さいか否かによって、入浴者が異常状態であるか否かの判定を行う。このため、座位姿勢で入浴する入浴者が異常状態であるか否かを精度良く判定できる。
(5)上記形態の浴室監視システムにおいて、前記判定部は、異常状態ではないと判定された前記入浴者の前記予め定められた身体部位が前記特定部によって特定されなくなった場合、前記入浴者が異常状態であると判定してもよい。この形態の浴室監視システムによれば、異常状態ではないと判定された入浴者が、その後に水面下に沈んでいる等の異常状態が生じた場合において、かかる異常状態を精度良く判定できる。
(6)上記(4)の形態の浴室監視システムにおいて、前記判定部は、異常状態ではないと判定された前記入浴者の前記予め定められた身体部位の位置が、予め定められた時間以上予め定められた移動速度以下で変化し続けている場合、前記入浴者が異常状態であると判定してもよい。入浴者において発作が発生した異常状態においては、身体のバランスがとれずに浴槽に徐々に沈んでゆくことが起こり得る。かかる状況では、入浴者の頭部などの予め定められた身体部位の位置が予め定められた時間以上予め定められた移動速度以下で変化し続けることが起こる。したがって、上記形態の浴室監視システムによれば、異常状態ではないと判定された入浴者に、その後に発作が発生するなどして異常状態が発生した場合に、かかる異常状態を精度良く判定できる。
(7)上記(4)の形態の浴室監視システムにおいて、前記判定部は、異常状態ではないと判定された前記入浴者の前記予め定められた身体部位の大きさが、予め定められた時間以上変化しない場合、前記入浴者が異常状態であると判定してもよい。入浴者が身体のバランスがとれた状態で眠ってしまったり、入浴者において発作が発生して身体のバランスがとれた状態で意識を失ったりして、身体がまったく動かなくなることが起こり得る。かかる状況では、検知部により特定される(レーザセンサ装置から見た)入浴者の頭部などの予め定められた身体部位の大きさが予め定められた時間以上変化しないことが起こる。したがって、上記形態の浴室監視システムによれば、異常状態ではないと判定された入浴者が、その後に、入浴者の予め定められた身体部位の大きさが、予め定められた時間以上変化しない場合に、異常状態であると判定するので、異常状態ではないと判定された入浴者がその後に眠ったり、異常状態となった場合に、かかる異常状態を精度良く判定できる。
(8)上記(4)から上記(7)までのいずれかの形態の浴室監視システムにおいて、前記浴槽に入っている入浴者の異常状態を報知する報知部をさらに備えてもよい。この形態の浴室監視システムによれば、浴室外の人へ異常状態を報知できる。
【0007】
本開示は、浴室監視システム以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、浴室監視システムの制御方法、浴室監視システムの機能や制御方法を実現するためのコンピュータプログラム、かかるコンピュータプログラムを記憶した記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態としての浴室監視システムの概略構成および利用シーンを模式的に示す説明図である。
【
図3】浴室監視システムの詳細構成を示すブロック図である。
【
図4】座位姿勢の入浴者に対するパルス光の照射を説明するための模式図である。
【
図5】浴槽に入る入浴者の大きさと遷移(時間変化)のイメージを説明するための模式図である。
【
図6】浴槽に入っている入浴者の主に頭部の遷移(時間変化)を説明するための模式図である。
【
図7】レーザセンサ装置から浴室内の床面と平行な方向に照射光を照射したときの測定点を示す模式図である。
【
図8】第1実施形態の浴室監視システムにおいて、入浴者の異常状態の有無の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図9】浴槽における座位姿勢の入浴者に対する照射光の測定点を示す平面模式図である。
【
図10】頭部が水面方向へ移動している入浴者に対する照射を示す模式図である。
【
図11】頭部が水面方向へ移動している入浴者に対する照射光の測定点を示す平面模式図である。
【
図12】入浴者の頭部が体の横方向に移動した時の照射光の測定点を示す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
A1.システム構成:
図1は、本開示の一実施形態としての浴室監視システム100の概略構成および利用シーンを模式的に示す説明図である。
図2は、
図1の模式的な上面図である。
図3は、浴室監視システム100の詳細構成を示すブロック図である。浴室監視システム100は、浴室BRへの入浴者Huの異常の発生の有無を判定する。浴室BRは、出入り口ETと、浴槽Btを有する。上述の「異常」とは、本実施形態においては、浴槽Btにおいて座位姿勢となった入浴者Huの頭部が水面下に沈んでいく等の異常を意味する。
【0010】
図1では、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸が表されている。他の図面におけるX軸、Y軸およびZ軸は、
図1のX軸、Y軸およびZ軸と対応する。本実施形態において、X軸方向とは、+X方向および-X方向を総称するものである。同様に、Y軸方向は+Y方向および-Y方向を総称し、Z軸方向は+Z方向および-Z方向を総称するものである。
【0011】
図3に示すように、浴室監視システム100は、レーザセンサ装置10と、制御部20と、記憶部40と、通信部42と、報知部44とを備える。本実施形態では、浴室監視システム100が備える上述の各構成要素は、単一の筐体11に収容されている。なお、浴室監視システム100が備える上述の各構成要素の詳細については後述する。浴室監視システム100は、浴室内に設けられているレーザセンサ装置10を用いて、浴槽Btに入っている入浴者Huの異常発生の有無を判定する。
【0012】
図1および
図2に示すように、浴槽Btは、浴室BR内において-X方向かつ-Y方向の端部に配置されている。また、
図2に示すように、浴室監視システム100(筐体11)は、平面視した(-Z方向に見た)状態において浴槽Btの-X方向かつ-Y方向の端部に相当する位置に配置され、また、
図1に示すように、浴槽Btの上端面から所定距離だけ上方(+Z方向)に配置されている。このため、レーザセンサ装置10は、浴室の-X方向かつ-Y方向の端部に配置されている。入浴者Huは、浴室BRの外から-X方向に浴室に入り、その後、浴槽Btの側面から-Y方向に浴槽Btに入る。浴室監視システム100は、浴槽Btに浸かっている入浴者Huの頭部を検知できる高さに配置されている。具体的には、浴室監視システム100は、浴槽Btに入った入浴者Huが座位姿勢となったときに、かかる入浴者Huの頭、肩、首を検知できる高さとなるように、浴槽Btの上端面から+Z方向に隙間を空けて配置されている。
【0013】
浴室監視システム100に含まれるレーザセンサ装置10は、パルス光を照射し、
図3に示す対象物OBJにおける反射光を受光する。対象物OBJとは、入浴者Huが浴室BRに入っていない状態では、浴室BRの内壁等の内部構造物が該当し、入浴者Huが浴室BRに入っている場合には、上述の内部構造物に加えて入浴者Huが該当する。本実施形態において、レーザセンサ装置10は、内蔵電池により給電されて駆動する。なお、レーザセンサ装置10は、外部電源から電力の供給を受けて駆動してもよい。
図3に示すように、レーザセンサ装置10は、発光部12と、受光部14と、走査部50とを有する。
【0014】
発光部12は、光源としての半導体レーザを照射するレーザダイオードを光源として備え、距離測定用の照射光を照射する。本実施形態において、照射光は、パルス状のレーザ光である。発光部12は、パルス光を複数回発光し、この間に走査部50は、後述のミラー55を回転させる。これにより発光部12は、レーザ光を面状に(2次元に)出力する。なお、発光部12の光源はレーザダイオードのほか、固体レーザといった他の光源を用いてもよい。
【0015】
図4は、座位姿勢の入浴者Huに対するパルス光の照射を説明するための模式図である。
図2および
図4に示すように、発光部12は、浴室内の床面のX-Y平面と平行な方向であって、かつ、予め定められた高さにパルス光を出力する。本実施形態においては、予め定められた高さとは、浴槽Btに入っている入浴者Huが座位姿勢となった際の頭部の高さとして予め定められた高さである。なお、予め定めらえた高さとは、浴槽Btに入っている入浴者Huが座位姿勢となった際の頭部の高さとして予め定められた高さに限らず、本開示の作用効果を奏するならば、任意の高さであってもよい。
【0016】
図3に示す走査部50は、ミラー55を回動させることによって、発光部12から複数回出力するパルス光である照射光を予め定められた範囲で走査させる。言い換えると、走査部50は、発光部12によって連続的に出力された照射光を、予め定められた範囲で走査させる。ミラー55は、例えば、MEMSミラーによって構成される。ミラー55の回動は、制御部20における信号出力部22によって制御される。走査部50によって照射光の走査が行われることにより、発光部12は、測定範囲に対して照射光を照射する方位を変更しながら照射光を照射する。例えば、190°の走査範囲を0.25°刻みでミラー55を反時計回りにレーザを照射すると、1走査につき761点の距離値を取得できる。なお、走査範囲は、190°に限らず、360°や、160°など任意の角度であってもよい。また、0.25°刻みに限らず、刻み角度も任意の角度であってもよい。さらに、ミラー55の回転方向は、時計回りであってもよい。
【0017】
受光部14は、発光部12から出力されるレーザ光を受光する。具体的には、発光部12から出力されるレーザ光は、人や車などの外部物体(反射物)となる対象物OBJがあると、その表面で乱反射し、その一部は反射光として走査部50のミラー55に戻ってくる。この反射光は、ミラー55で反射されて、外乱光とともに入射光として受光部14に入射する。
【0018】
制御部20は、CPUおよびメモリを備えるコンピュータにより構成されている。CPUは、予めメモリに記憶されている制御プログラムを実行することにより、信号出力部22、距離算出部24、検知部26、特定部28、判定部30、および入浴槽状態認定部32として機能する。信号出力部22は、発光部12と、走査部50と、受光部14とを含む各部の制御を行う。より具体的には、信号出力部22は、発光部12に対してレーザダイオードを発光させる指令信号や、受光部14の受光素子をアクティブにするアドレス信号の他、距離算出部24に距離を算出させる指示信号や、走査部50のミラー55に対する回転の制御信号を出力する。
【0019】
距離算出部24は、対象物OBJまでの距離を算出する。距離算出部24は、受光した反射光の飛行時間(TOF:Time of Flight)を用いて、レーザセンサ装置10から対象物OBJまでの距離である対象距離を算出する。より具体的には、距離算出部24は、パルス光が発光されてから、反射パルス光のピークまでの時間を検出することで、レーザセンサ装置10から対象物OBJまでの対象距離を次々と算出する。なお、距離算出部24は、算出した距離を照射光の照射角度と対応付けて記録する。ここで、対象物OBJは、広がりを有する表面を有する。このため、上述の「対象物OBJまでの距離」は、より正確には、対象物OBJのうちの反射光を射出した身体部位(点)、換言すると、反射光を受光したことにより特定される点(以下、単に「測定点」とも呼ぶ)までの距離を意味する。対象物OBJにおいて複数の測定点が特定される場合、各測定点までの距離が算出されることとなる。
【0020】
ここで、レーザセンサ装置10では、照射光の対象物OBJにおける反射光に加えて、背景光を受光する。背景光とは、照射光とは異なる光(直接光)、または、かかる光が対象物に反射してレーザセンサ装置10にて受光された光を意味する。照射光とは異なる光とは、例えば、日光や浴室BR内の照明の光やこれらの光の反射光などが該当する。
【0021】
レーザセンサ装置10は、受光した光の強度を用いて背景光の強度を特定し、かかる強度に基づき閾値を設定する。そして、受光した光のうち設定された閾値以上の強度の光を対象物からの反射光として特定し、照射光を照射してから反射光を受光するまでの時間、すなわち、光の飛行時間TOF(Time of Flight)を特定する。そして、かかる飛行時間TOFを、レーザセンサ装置10と対象物OBJとの間を光が往復する時間であるものとして、対象物OBJまでの距離を算出する。
【0022】
検知部26は、距離算出部24により算出された対象距離を用いて、対象物OBJを浴槽に入っている入浴者Huとして検知する。
【0023】
特定部28は、検知部26により浴槽Btに入っている入浴者として検知された対象物OBJのうち、予め定められた身体部位を特定する。本実施形態において、上述の「予め定められた身体部位」は、頭部が該当する。なお、予め定められた身体部位は、頭部に限らず、肩部や首など、本実施形態の作用効果を奏するならば、他の任意の身体部位であってもよい。
【0024】
判定部30は、特定部28によって特定された予め定められた身体部位、すなわち頭部の位置の変化に基づき、浴槽Btに入っている入浴者Huの異常の発生の有無を判定する。
【0025】
入浴槽状態認定部32は、入浴者Huが浴槽Btへ入っている状態を認定する。これにより、入浴者Huが浴槽Btの外で体を洗っている時などに、異常状態であるとの判定部30による誤判定を除外できる。
【0026】
記憶部40は、例えば、距離算出部24により算出された対象距離など、制御部20の各機能において得られた値を記憶する。また、記憶部40において、予め定められた座位姿勢での頭部の大きさとして予め定められた大きさが記憶されている。詳細は後述する。なお、記憶部40は、上述の制御プログラムを記憶してもよい。
【0027】
通信部42は、発振器、変調回路、増幅回路、符号化回路、およびアンテナなどを有し、無線通信を実行する。かかる無線通信としては、例えば、426MHz帯や920MHz帯の周波数帯域を利用する特定小電力無線を用いてもよい。また例えば、IEEE802.11において規定される無線LAN(Local Area Network)を用いてもよい。
【0028】
報知部44は、浴槽Btに入っている入浴者Huの異常状態を報知する。本実施形態では、報知部44は、図示しないスピーカを有し、判定部30によって、浴槽Btに入っている入浴者Huが異常状態であると判定されたら、音声によって浴室外の人に報知する。例えば、異常の発生を浴室外の人に知らせる警報音であってもよいし、かかる警報音に代えて、または、かかる警報音に加えて、「異常が発生しています」の音声を発してもよい。さらに、報知部44は、通信部42を介して、浴室外のスマートフォン等に無線通信により報知してもよい。
【0029】
A2.入浴時の測定点の挙動:
後述の異常状態の有無の判定処理では、入浴者Huを示す測定点の挙動(位置の変化や、ひとかたまりとなった点群の大きさの変化等)に基づき判定される。そこで、まず、この測定点の挙動について、概略を説明する。
【0030】
図5は、浴槽Btに入る入浴者Huの大きさと遷移(時間変化)のイメージを説明するための模式図である。
図6は、浴槽Btに入っている入浴者Huの主に頭部の遷移(時間変化)を説明するための模式図である。
図7は、レーザセンサ装置10から浴室内の床面と平行な方向に照射光を照射したときの測定点を示す模式図である。
図7では、かかる照射光と平行な線分Li1~Li9が示されている。なお、
図7に示すように、レーザセンサ装置10からの照射光の各身体部位への測定点は、複数の白丸の点群として示されている。他方、
図5および
図6では、入浴者Huの各身体部位を、各身体部位における複数の測定点をひとかたまりにして、その大きさ、形状、位置を模式的に示している。
【0031】
図5および
図7に示すように、正常状態において入浴者Huが浴槽Btに入る場合、足から頭へ向かって、言い換えると、線分Li1からLi9へと、浴槽Btへ入る入浴者Huに対する各身体部位への照射光の測定点が遷移していく。かかる測定点の遷移は、モデル化されて記憶部40に予め記憶されている。なお、浴槽Btから出る入浴者Huに対する各身体部位への測定点の遷移は、浴槽Btへ入る入浴者Huに対する各身体部位への照射光の測定点の遷移と逆方向への遷移となる。そして、かかる測定点(点群)の遷移もモデル化して記憶部40に予め記憶されている。
図5および
図6において、浴槽Btに座位姿勢となった入浴者Huの頭部の高さに照射光が照射されている。かかる高さの測定点として、足、胴体、首、頭部の測定点が示されている。なお、
図5および
図6に示される測定点の大きさ等は模式的に示されている。
【0032】
図5において、上側の直線は、浴槽の境界を示し、かかる直線の上側は浴槽内であり、下側は浴槽外を示している。
図5において、下側の矢印付きの直線は時間軸を示している。
図5の一番左側は、両足が浴槽外にあり、時間軸に沿って順に、片足が浴槽に入り、両足が浴槽に入る。そして、浴槽Bt内の入浴者Huの胴体に照射され、次に首に照射される。最後に、入浴者Huの頭部に照射光が照射される。
図5における一番右側の測定点は、座位姿勢となった入浴者Huの頭部の測定点である。
【0033】
図6の一番上の段は、正常状態において、浴槽Btに入っている入浴者Huが浴槽Btから出るまでの浴室監視システム100により特定される測定点(点群)の遷移(時間変化)を示している。時刻t1において、浴槽内の座位姿勢の入浴者Huの頭部が測定点として検出される。時刻t2において、首が測定点として検出される。時刻t3において、胴体が測定点として検出される。時刻t4において、浴槽Bt内の両足が測定点として検出される。時刻t5において、浴槽内の一方の足と、浴槽外の他方の足が測定点として検出される。
【0034】
時刻t6において、浴槽Bt外の両足が測定点として検出される。この時点において、入浴者Huは、浴槽Btから出た状態となる。このような浴槽Btから出る時に検出される測定点に対して逆方向の遷移が浴槽Btに入る時に検出される測定点となる。このような浴槽Btに入る際の測定点の遷移と、浴槽Btから出る際の測定点の遷移が、浴槽Btへの出入りにおける入浴者Huの正常な動きとして、記憶部40に予め記憶されている。
【0035】
他方、
図6における2段目、3段目および4段目は、異常状態となった場合の測定点の遷移(時間変化)を示している。2段目は、浴槽Btにおいて座位姿勢の入浴者Huの頭部が水面方向へ下がっていき、頭部が沈んでしまうまでの浴室監視システム100により特定される測定点(点群)の遷移(時間変化)を示している。時刻t11において、浴槽Btにおいて座位姿勢の入浴者Huの頭部が測定点として検出される。時刻t12において、入浴者Huの頭部が水面方向へ少し下がり、頭部の測定点は、時刻t11における頭部の測定点よりも小さく検出される。時刻t13において、入浴者Huの頭部が水面方向へさらに下がり、頭部の測定点は、時刻t12における頭部の測定点よりもさらに小さく検出される。時刻t14において、入浴者Huの頭部の一部が水面下へ下がり、頭部の測定点は、時刻t13における頭部の測定点よりもさらに小さく検出される。時刻t15において、入浴者Huの頭部の測定点は検出されず、頭部は水面下へ沈んで入浴者Huは溺れている。この時点において、入浴者Huは全身が湯船に浸かった状態となる。
【0036】
図6における3段目は、浴槽Btにおいて座位姿勢の入浴者Huの頭部の位置の変化が長時間なく、同じ状態が続いている場合の浴室監視システム100により特定される測定点(点群)の遷移(時間変化)を示している。時刻t21において、浴槽Btにおいて座位姿勢の入浴者Huの頭部が測定点として検出される。時刻t22において、入浴者Huの頭部の大きさは、時刻t21における入浴者Huの頭部の大きさより、わずかに小さくなったが、ほとんど変化していない。その後、時刻t23、時刻t24、時刻t25、時刻t26においても、時刻t22と同じ測定点が検出される。この時点において、入浴者Huが眠ったり、入浴者Huに動くことができないような異変が生じたりしている可能性がある。入浴者Huに動くことできないような異変としては、例えば、心肺停止等の異変である。
【0037】
図6における4段目は、浴槽Btにおいて座位姿勢の入浴者Huの頭部の位置が定位置から横方向(入浴者Huの体の左右方向)へ移動している場合の浴室監視システム100により特定される測定点(点群)の遷移(時間変化)を示している。時刻t31において、浴槽Btにおいて座位姿勢の入浴者Huの頭部が測定点として検出される。時刻t32において、入浴者Huの頭部の大きさは、時刻t31における入浴者Huの頭部の大きさより、わずかに小さくなったが、ほとんど変化していない。時刻t33において、時刻t32の時よりも横方向(入浴者Huの体の右方向または左方向)へ移動した入浴者Huの頭部の測定点として検出される。時刻t34において、時刻t33の時よりもさらに横方向へ移動した入浴者Huの頭部の測定点として検出される。時刻t35において、入浴者Huの頭部の測定点が検出されていない。この時点において、湯船に浸かっている入浴者Huに発作が発生している可能性がある。
【0038】
A3.異常状態の有無の判定処理:
図8は、第1実施形態の浴室監視システム100において、入浴者Huの異常状態の有無の判定処理の手順を示すフローチャートである。異常状態の有無の判定処理とは、浴槽Btに入っている入浴者Huが異常状態であるか否かを判定する処理である。
図8に示す異常状態の有無の判定処理は、発光部12による照射光の照射と、受光部14による受光と、距離値の算出とは独立して行われている。
図8に示す異常状態の有無の判定処理は、繰り返し実行される。浴室監視システム100では、図示しない内蔵電池から電力が供給されると、上述したように信号出力部22による発光部12等の各機能部への指示の信号が出力されて、異常状態の有無の判定処理が実行される。
【0039】
距離算出部24は、上述したように、対象物OBJまでの対象距離を算出する(ステップS10)。検知部26は、対象物OBJを浴槽に入っている入浴者Huか否かを判定する(ステップS12)。かかる判定は、記憶部40に記憶されている浴槽Btに入る入浴者Huの各身体部位の遷移と、実際に測定された入浴者Huの遷移とが一致するか否かによって行われる。言い換えると、かかる判定は、浴槽Btに入浴者Huが足から入って、足の測定点から頭部へと順次測定点が遷移しているか否かによって行われる。
【0040】
記憶部40に記憶されている浴槽Btに入っている入浴者Huの各身体部位の遷移と、実際に測定された入浴者Huの遷移とが一致しない場合には、検知部26は対象物OBJを浴槽Btへ入っている入浴者Huとして検知することなく(ステップS12:NO)、処理はステップS10へ戻る。なお、本実施形態においては、浴槽Btに入っている特定の人物の各身体部位の遷移が予め測定されて記憶部40に記憶されている。
【0041】
記憶部40に記憶されている浴槽Btに入っている入浴者Huの各身体部位の遷移と、実際に測定された入浴者Huの遷移とが一致する場合には、入浴槽状態認定部32は、入浴者Huが浴槽Btへ入っている状態を認定し、対象物OBJは浴槽Btへ入っている入浴者Huとして検知される(ステップS12:YES)。「入浴槽状態を認定」とは、記憶部40に記憶されている浴槽Btへ入っている入浴者Huの各身体部位の遷移と、実際に測定された入浴者Huの遷移とを比較して、入浴者Huが浴槽Btに入っているか否かを認定する。具体的には、実際に測定された入浴者Huの遷移が、
図5または
図6の一番上の段における時刻t1~t5までに示すような各身体部位の遷移を辿るならば、入浴者Huは、浴槽Btに入っている状態であると認定される。他方、実際に測定された入浴者Huの遷移が、
図6の一番上の段における時刻t5~t9までに示すような各身体部位の遷移を辿るならば、入浴者Huは浴槽Btに入っていない状態、言い換えると、浴槽Btから出ている状態であると認定される。このように、入浴槽状態認定部32によって、入浴者Huが浴槽Btに入っているか否かが認定されることによって、例えば、入浴者Huが浴槽Btの外で体を洗っている時などに、異常状態であるとの誤判定を除外できる。これにより、報知部44からの無駄な警報音の発生を抑制できる。
【0042】
特定部28は、実際に測定された測定点のうち、浴槽Btに入っている入浴者Huの頭部の測定点を特定する(ステップS14)。頭部の測定点の特定は、例えば、ひとかたまりとなり得る測定点群を特定し、そのひとかたまりの大きさが、予め「頭部」として設定されている大きさある場合に、かかるひとかたまりを構成する測定点を「頭部の測定点」であると特定することにより実現してもよい。
【0043】
判定部30は、特定部28によって特定された頭部の大きさと、予め定められた座位姿勢での頭部の大きさとして予め定められた大きさとを比較する(ステップS16)。判定部30は、特定部28によって特定された頭部の大きさと、予め定められた座位姿勢での頭部の大きさとして予め定められた大きさとが一致するか否かを判定する(ステップS18)。一致しない場合には(ステップS18:NO)、判定部30は、浴槽Btに入っている入浴者Huが異常状態であると判定する(ステップS24)。報知部44は、浴槽Btに入っている入浴者Huの異常状態を報知する(ステップS26)。本実施形態では、報知部44は、警報音によって浴室外の人に報知する。
【0044】
特定部28によって特定された頭部の大きさと、予め定められた座位姿勢での頭部の大きさして予め定められた大きさとが一致する場合には(ステップS18:YES)、判定部30は、浴槽Btに入っている入浴者Huが異常状態ではないと判定する(ステップS20)。
【0045】
図9は、浴槽Btにおける座位姿勢の入浴者Huに対する照射光の測定点を示す平面模式図である。
図10は、頭部が水面方向へ移動している入浴者Huに対する照射を示す模式図である。
図11は、頭部が水面方向へ移動している入浴者Huに対する照射光の測定点を示す平面模式図である。判定部30は、ステップS20において異常状態ではないと判定された入浴者Huの頭部が引き続き検知されるか否かを判定する(ステップS22)。これは、一度は異常ではない、すなわち正常状態であると判定されたその後に、発作等により異常状態に変化する可能性もあり、かかる異常状態の有無を判定するために行われる。
図9に示すように、頭部の測定点の点群Me1が検知された場合(ステップS22:YES)、処理はステップS28へと進む。入浴者Huが溺れると、
図6の上から2段目および
図11に示すように、頭部が沈んでいって、測定点の点群が点群Me1、点群Me2、点群Me3、Me4の順序で遷移する。
図10に示すように、頭部の測定点が得られず頭部が検知されなくなった場合(ステップS22:NO)、処理は上述のステップS24へと進み、異常状態と判定されることとなる。
【0046】
ステップS22において頭部が検知された場合(ステップS22:YES)、入浴槽状態認定部32は、浴槽Btに入っている入浴者Huが浴槽Btを出たか否かを判定する(ステップS28)。入浴槽状態認定部32は、入浴者Huの各身体部位の測定点の遷移パターンが、記憶部40に格納されている浴槽Btから浴槽Bt外へ出る入浴者Huの測定点の遷移パターンと同様ならば、入浴者Huは浴槽Btに入っていない、言い換えると、浴槽Btから出た(ステップS28:YES)と認定して、処理はステップS10へ戻る。入浴槽状態認定部32は、入浴者Huの各身体部位の測定点の遷移パターンが、記憶部40に格納されている浴槽Btから浴槽Bt外へ出る入浴者Huの測定点の遷移パターンと異なるならば、入浴者Huは浴槽Btに入っている、言い換えると、浴槽Btから出ていない(ステップS28:NO)と認定して、処理はステップS22へ戻る。
【0047】
以上説明した第1実施形態の浴室監視システム100では、検知部26により浴槽Btに入っている入浴者Huとして検知された対象物のうち、頭部を特定する特定部28と、特定された頭部の位置の変化に基づき、浴槽Btに入っている入浴者Huが異常状態であるか否かを判定する判定部30と、を有するので、頭部の位置の変化に着目して、浴槽Btに入っている入浴者Huが異常状態であるか否かを判定できる。このため、単に入浴者に動きがなければ異常状態であると判定するシステムと比べて、浴槽Btに入っている入浴者Huの異常状態を精度良く判定できる。
【0048】
また、溺死等の事故に繋がりやすい頭部の位置の変化に基づき、浴槽Btに入っている入浴者Huが異常状態であるか否かを判定するので、かかる事故を未然に防止できる。
【0049】
また、パルス光が面状に走査されるので、頭部の位置の変化を精度良く追跡できる。
【0050】
さらに、発光部12は、浴室内の床面と平行な方向であって、かつ、入浴者Huが浴槽Btにおいて座位姿勢となった際の頭部の高さとして予め定められた高さにパルス光を出力する。これにより、入浴者Huが浴室内の浴槽Btにおいて座位姿勢となった際に、頭部にパルス光が出力される。このため、入浴者Huが座位姿勢で入浴した状態において、頭部の有無や位置を精度良く特定できる。
【0051】
また、判定部30は、特定された頭部の大きさと、正常状態における座位姿勢での頭部の大きさとして予め定められた大きさとが一致するか否かによって、入浴者Huが異常状態であるか否かの判定を行う。このため、座位姿勢入浴する入浴者Huが異常状態であるか否かを精度良く判定できる。
【0052】
さらに、異常状態ではないと判定された入浴者Huの頭部が特定部28によって特定されなくなった場合、判定部30は入浴者Huが異常状態であると判定する。このため、異常状態ではないと判定された入浴者Huが、その後に水面下に沈んでいる等の異常状態が生じた場合において、かかる異常状態を精度良く判定できる。
【0053】
また、入浴者Huが浴槽Btに入っている状態を認定する、入浴槽状態認定部32をさらに備えているので、入浴者Huが浴槽Btに入っている状態が入浴槽状態認定部32によって認定され、入浴者Huが浴槽Btの外で体を洗っている時などに、異常状態であるとの誤判定を除外できる。
【0054】
また、浴槽Btに入っている入浴者Huの異常状態を報知する報知部44をさらに備えているので、異常状態を浴室外の人へ報知できる。
【0055】
B.他の実施形態:
(B1)第1実施形態の浴室監視システム100では、異常状態の有無の判定処理のステップS22において、異常状態ではないと判定された入浴者Huの頭部が検知されるか否かが判定されていたが、本開示はこれに限定されない。
図12は、入浴者Huの頭部が体の横方向に移動した時の照射光の測定点を示す平面模式図である。
図6の最下段および
図12に示すように、頭部が中心の定位置から移動した場合、入浴者Huが寝ている等の異変が生じている可能性がある。このため、ステップS22において、頭部が検知されるか否かの処理に代えて、頭部が定位置から左右へ移動したか否かの判定処理を行ってもよい。
【0056】
(B2)第1実施形態の浴室監視システム100では、異常状態の有無の判定処理のステップS22において、異常状態ではないと判定された入浴者Huの頭部が検知されるか否かが判定されていたが、本開示はこれに限定されない。
図6の上から三段目の測定点の遷移に示すように、入浴者Huの頭部の大きさが、予め定められた時間以上変化しない場合、入浴者Huが眠ってしまっているか、心肺停止状態の可能性がある。このため、ステップS22において、頭部が検知されるか否かの処理に代えて、頭部の大きさが、予め定められた時間以上、変化しないかどうかの判定処理を行ってもよい。そして、かかる判定処理において、「頭部の大きさが、予め定められた時間以上変化しない」と判定された場合に、「異常状態」と判定し、そうでない場合に「異常状態でない」と判定してもよい。通常、入浴者が入浴している間、体全体の姿勢や頭の向きが変わることにより、レーザセンサ装置10から見た身体部位の大きさが変化することが断続的に起こり得る。他方、入浴者が身体のバランスがとれた状態で眠ってしまったり、入浴者において発作が発生して身体のバランスがとれた状態で意識を失ったりして、身体がまったく動かなくなることが起こり得る。かかる状況では、入浴者の頭部などの予め定められた身体部位の大きさが予め定められた時間以上変化しないことが起こる。また、入浴者Huの頭部等の身体部位の位置が予め定められている時間以上、予め定められた移動速度以下で変化し続けている場合も、入浴者Huに発作が発生するなどして異常状態が発生している可能性がある。例えば、発作が発生して入浴者Huが徐々に浴槽に沈んでゆく場合などには、予め定められた時間以上予め定められた移動速度以下で身体部位の位置が変化し続ける可能性がある。このため、ステップS22において、頭部が予め定められた時間以上予め定められた移動速度以下で変化し続けているか否かの判定処理を行ってもよい。そして、かかる判定において、「頭部の大きさが、予め定められた時間以上予め定められた移動速度以下で変化し続けている」と判定された場合に、「異常状態」と判定し、そうでない場合に「異常状態でない」と判定してもよい。なお、上述の「予め定められた移動速度」としては、例えば、1cm/秒としてもよい。また、かかる速度に限らず、異常状態において想定される速度よりも若干大きな任意の速度としてもよい。
【0057】
(B3)第1実施形態の浴室監視システム100では、1つの発光部12によって、パルス光が面状に走査されていたが、本開示はこれに限られない。複数の発光部を一箇所に並べてパルス光を面状に出力し、走査しない構成としてもよい。また、複数の発光部をそれぞれ異なる複数箇所に設置して、各発光部からパルス光を出力し、合わせて面状となるようにパルス光を出力して走査しない構成としてもよい。
【0058】
(B4)第1実施形態の浴室監視システム100では、発光部12は、浴室内の床面と平行な方向にパルス光を出力していたが、かかる平行な方向に限らず、かかる平行な方向とずれた方向であってもよい。例えば、発光部12は、浴室内の床面と平行な方向と10度以内の角度がずれた方向にパルス光を出力してもよい。なお、平行な方向とずれる角度は、10度に限らず、本開示の作用効果を奏すれば、任意の角度であってもよい。
【0059】
(B5)第1実施形態の浴室監視システム100において、判定部30は、特定された頭部の大きさと、正常状態における座位姿勢での頭部の大きさとして予め定められた大きさとを比較して、浴槽Btに入っている入浴者Huが異常状態であるか否かの判定をしていたが、本開示はこれに限られない。判定部30は、特定された頭部の大きさと、異常状態における座位姿勢での頭部の大きさして予め定められた大きさとを比較して、浴槽Btに入っている入浴者Huが異常状態であるか否かの判定をしてもよい。なお、浴槽Btに入っている入浴者Huが異常状態である場合の頭部の遷移パターン、例えば、
図6における上から2段目、3段目、4段目の遷移パターン等が予め記憶部40に記憶されている。
【0060】
(B6)第1実施形態の浴室監視システム100では、異常状態の有無の判定処理のステップS22において、異常状態ではないと判定された入浴者Huの頭部が引き続き検知されるか否か判定されていたが、かかる判定はされなくてもよい。言い換えると、ステップS22が無くてもよく、一度異常状態ではないと判定されたら、異常状態の有無の判定処理は終わってもよい。
【0061】
(B7)第1実施形態の浴室監視システム100では、入浴槽状態認定部32を備えていたが、無くてもよい。
【0062】
(B8)第1実施形態の浴室監視システム100では、報知部44を備えていたが、無くてもよい。
【0063】
(B9)第1実施形態の浴室監視システム100において、浴室監視システム100が備える各構成要素は、単一の筐体11に収容されていたが、一部機能が別の場所にあってもよい。
【0064】
(B10)第1実施形態の浴室監視システム100では、浴槽Btに入っている特定の人物の各身体部位の遷移が予め測定されて記憶部40に記憶されていたが、本開示はこれに限られない。浴槽Btに入っている複数人の各特定部位の遷移が、それぞれ、予め測定されて記憶部40に記憶されていてもよい。また、これらの複数人の各特定部位の遷移に対して幅のある許容範囲内のモデルが予め記憶部40に記憶されていてもよい。様々な体型の人の各特定部位の遷移に対して、予め測定されて記憶部40に記憶されていてもよい。
【0065】
(B11)第1実施形態の浴室監視システム100では、
図3に示すように、制御部20は、レーザセンサ装置10と同じ単一の筐体11に収容されていたが、本開示はこれに限られない。制御部20は、レーザセンサ装置10とは別の筐体に収容されていてもよい。また、制御部20は複数あってもよく、例えば、浴室監視システム100において、2つの制御部がある場合、1つの制御部は、レーザセンサ装置10と同じ筐体に収容され、他方の制御部は、レーザセンサ装置10とは別の筐体に収容されていてもよい。
【0066】
(B12)第1実施形態の浴室監視システム100では、
図3に示すように、記憶部40は、制御部20の外にあったが、本開示はこれに限られない。記憶部40は、制御部20の中にあってもよい。言い換えると、制御部20は、記憶部40を有していてもよい。
【0067】
(B13)第1実施形態の浴室監視システム100では、浴槽Btにおける入浴者Huが異常状態であると判定される一例として、
図6の2段目に示すように、入浴者Huが溺れる際の頭部の測定点は、時刻t11、t12、t13、t14の経過とともに小さく検出されていたが、本開示はこれに限られない。浴槽Btにおける入浴者Huが、異常状態と判定される一例として、入浴者Huが溺れる際の頭部の測定点は、時刻の経過とともに大きく検出されてもよい。例えば、
図4や
図9に示す姿勢から入浴者Huが首を横に傾けて、頭部が90度程度、左(または右に)位置を変えたら、頭部の測定点は、時刻の経過とともに大きく検出される。これは、一般に人間の頭長は頭幅よりも大きいからである。そして、このように頭部の向きが左右に90度程度変化して所定時間経過した場合に、入浴者Huが異常状態であると判定されてもよい。通常入浴において頭部の向きが左右に90度程度に大きく変化してその状態が継続することは稀だからである。
【0068】
(B14)第1実施形態の浴室監視システム100では、浴槽Btに入っている入浴者Huの頭部の測定点の遷移状況に基づいて、入浴者Huが異常状態であるか否かが判定されていたが、本開示はこれに限られない。レーザセンサ装置10から入浴者Huの頭部までの距離に基づいて入浴者Huが異常状態であるか否かが判定されてもよい。かかる構成においては、レーザセンサ装置10から頭部までの距離は、検出された各測定点までの距離に基づき特定してもよい。例えば、頭部に相当する複数の測定点までの各距離のうち、最小値、最大値、平均値などに基づき特定してもよい。
【0069】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した形態中の技術的特徴に対応する各実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0070】
10…レーザセンサ装置、11…筐体、12…発光部、14…受光部、20…制御部、22…信号出力部、24…距離算出部、26…検知部、28…特定部、30…判定部、32…入浴槽状態認定部、40…記憶部、42…通信部、44…報知部、50…走査部、55…ミラー、100…浴室監視システム、BR…浴室、Bt…浴槽、ET…出入り口、Hu…入浴者、Li1…線分、Me1,Me2,Me3…点群、OBJ…対象物、TOF…飛行時間、t1,t11,t12,t13,t14,t15,t2,t21,t22,t23,t24,t25,t26,t3,t31,t32,t33,t34,t35,t4,t5,t6,t7,t8,t9…時刻