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特開2023-65757無線綴じ機用接着剤、無線綴じ機用接着剤の製造方法および製本方法
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  • 特開-無線綴じ機用接着剤、無線綴じ機用接着剤の製造方法および製本方法 図1
  • 特開-無線綴じ機用接着剤、無線綴じ機用接着剤の製造方法および製本方法 図2
  • 特開-無線綴じ機用接着剤、無線綴じ機用接着剤の製造方法および製本方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065757
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】無線綴じ機用接着剤、無線綴じ機用接着剤の製造方法および製本方法
(51)【国際特許分類】
   B42C 9/00 20060101AFI20230508BHJP
   B42C 11/00 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
B42C9/00
B42C11/00
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176090
(22)【出願日】2021-10-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】521472999
【氏名又は名称】有限会社シュービ
(74)【代理人】
【識別番号】100150142
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 礼路
(72)【発明者】
【氏名】渡部誠幸
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、見開きが容易にでき、強度が高い本を製本できる無線綴じ機用接着剤を提供することにある。
【解決手段】本発明の無線綴じ機用接着剤を提供する。本発明の無線綴じ機用接着剤は、ゴム成分と、綿状の繊維と、前記綿状の繊維を分散させる分散媒とを含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分と、
綿状の繊維と、
前記綿状の繊維を分散させる分散媒と
を含むことを特徴とする、無線綴じ機用接着剤。
【請求項2】
前記分散媒が水である、請求項1に記載の無線綴じ機用接着剤。
【請求項3】
乾燥繊維材料を粉砕して、綿状の繊維を得る工程と、
前記線状の繊維を分散媒と共に攪拌して、繊維懸濁液を得る工程と、
前記繊維懸濁液をゴム成分と共に攪拌して、無線綴じ機用接着剤を得る工程と
を含む、無線綴じ機用接着剤の製造方法。
【請求項4】
前記乾燥繊維材料は、叩解された繊維を乾燥させた材料である、請求項3に記載の無線綴じ機用接着剤の製造方法。
【請求項5】
前記分散媒として水を用いる、請求項4に記載の無線綴じ機用接着剤の製造方法。
【請求項6】
複数枚の用紙を重ねて背を有する本文を作製する工程と、
前記本文の前記背に、請求項1または2に記載の無線綴じ機用接着剤を塗布する工程と、
前記本文の背に背紙を貼り、前記無線綴じ機用接着剤を乾燥させる工程と
を含む、製本方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線綴じ機用接着剤、無線綴じ機用接着剤の製造方法および製本方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本や冊子の製本の無線綴じでは、一般に、用紙を重ね合わせて作製された本文の背に、製本用接着剤が塗布され、この接着剤部分に背が張り付けられる。
【0003】
製本用接着剤の硬化物は、柔軟性が乏しいものがあり、このような製本用接着剤で製本した本はのど元まで見開きにし難かった。このような本は、抑える力が弱い人または片手に怪我をした人などの読書や、電車内でつり革に捕まりながらの読書を困難にしていた。また、たとえば漫画など、用紙ののど元に近い部分に印刷があり、それを見ようとして無理に見開きすると、接着剤で固定されていた部分が脆化し、本自体が分解することもあった。
【0004】
特許文献1には、被製本用紙の背部分の接着強度を高めて、略180度の状態に見開いたとしても製本状態を保つために、複数枚の被製本用紙に塗布した接着層に多数の短繊維を絡めることが記載されている。また、特許文献1には、短繊維を接着成分と混合して使用することが記載されている。
【0005】
特許文献2には、製図用フィルムを製本する際に上質紙と共に接着することが記載されている。
【0006】
一方、現在、ほとんどの冊子製本は自動機である無線綴じ機を使用して製本している。EVA系やPUR系ホットメルトなどの固形接着剤の温度を上げてのり状にして製本しており、摂氏140~180度などの高温で有機溶剤を使用するため有害なガスが発生する問題がある。有機溶剤などを使用するEVA系やPUR系ホットメルトは、接着剤の加温溶融時に人体に悪影響を与える有毒ガスが出るという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-12208号明細書
【特許文献2】実公昭59-21023号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、のど元まで容易に開くことができ、丈夫で長持ちする本を製本できる無線綴じ機用接着剤の開発が望まれていた。
【0009】
本発明は、見開きが容易にでき、強度が高い本を製本できる無線綴じ機用接着剤、このような無線綴じ機用接着剤の製造方法、およびこのような無線綴じ機用接着剤を用いた製本方法を提供することを目的とする。また、本発明は、常温硬化型で人体に優しく、温暖化ガスの排出削減を可能とする環境に優しい接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意検討の結果、無線綴じ機用接着剤に、綿状の繊維を含ませることにより、本文の背の部分が柔軟になり、かつ高い強度を示すことができることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
従って、本発明は、ゴム成分と、綿状の繊維と、前記綿状の繊維を分散させる分散媒とを含むことを特徴とする無線綴じ機用接着剤を提供する。
【0012】
また、本発明は、分散媒が水である、無線綴じ機用接着剤を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、乾燥繊維材料を粉砕して、綿状の繊維を得る工程と、前記線状の繊維を分散媒と共に攪拌して、繊維懸濁液を得る工程と、前記繊維懸濁液をゴム成分と共に攪拌して、無線綴じ機用接着剤を得る工程を含む、無線綴じ機用接着剤の製造方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、乾燥繊維材料が叩解された繊維を乾燥させた材料である、無線綴じ機用接着剤の製造方法。
【0015】
また、本発明は、分散媒として水を用いる、無線綴じ機用接着剤の製造方法を提供する。
【0016】
さらに、本発明は、複数枚の用紙を重ねて背を有する本文を作製する工程と、前記本文の前記背に、無線綴じ機用接着剤を塗布する工程と、前記本文の背に背紙を貼り、前記無線綴じ機用接着剤を乾燥させる工程とを含む、製本方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
実施形態に係る無線綴じ機用接着剤は、見開きが容易にでき、強度が高い本を製本できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】製本方法の一例を示すフロー図。
図2】実施例および比較例における引張強度試験を説明する概略図。
図3】引張強度試験による試験後状態を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、無線綴じ機用接着剤を用いた製本方法の例を、図1を参照しながら具体的に説明する。
【0020】
図1に示す製本方法では、まず、図1(A)に示すように、複数枚の用紙1を重ねて、背2を有する本文10を作製する工程を含む。この工程では、たとえば用紙1を折らずに重ね合わせて本文10とすることもできる。あるいは、用紙1を折って折丁にし、折丁の背に切り込みを入れ、複数の折丁を重ね合わせて、本文10としてもよい。後者によって作成した本文10を用いた製本は、あじろ綴じと言うこともできる。得られた本文の背2に近い部分(のどとも呼ばれる)1Aを圧締めしてもよい。
【0021】
次に、図1(B)に示すように、本文10の背2に無線綴じ機用接着剤3を塗布する工程を行う。ここで用いる無線綴じ機用接着剤3として、本発明の無線綴じ機用接着剤3を用いることができる。ただし、本発明の無線綴じ機用接着剤3を用いることができる製本方法は、この例の製本方法に限定されるものではない。あじろ綴じの場合、折り丁の背に設けた切り込みに無線綴じ機用接着剤3が入り込み易く、接合強度を更に高めることができる。
【0022】
次に、図1(C)に示すように、本文10の背2に背紙30を貼り、無線綴じ機用接着剤3を乾燥させる工程を行う。たとえば、表表紙および裏表紙の2つの表紙20と、これらの表紙20を繋ぐ背紙30とを含む表紙用紙40を本文10に包み、この状態で無線綴じ機用接着剤3を乾燥させる。これにより、本100を製本することができる。
【0023】
図1に示す製本方法は、無線綴じまたはくるみ製本と呼ばれる。
【0024】
以下、このような製本方法などに使用することができる本発明の無線綴じ機用接着剤をより詳細に説明する。
【0025】
本発明の無線綴じ機用接着剤は、ゴム成分と、綿状の繊維と、前記綿状の繊維を分散させる分散媒とを含むことを特徴とする。
【0026】
本発明の無線綴じ機用接着剤の硬化により得られた硬化物は、綿状の繊維とゴム成分とを含むことにより、柔軟であり、かつ高い強度を示すことができる。よって、本発明に係る無線綴じ機用接着剤を用いて製本した本は、本文の背(たとえば、図1(C)の背紙30)の部分が柔軟になり、かつ高い強度を示すことができる。従って、本発明に係る無線綴じ機用接着剤によれば、見開きが容易にでき、強度が高い本を製本できる。
【0027】
無線綴じ機用接着剤が含む繊維が綿状であることにより、接着剤に均一に繊維が混合されており、十分な柔軟性と、高い強度とを両立することができる。
【0028】
本発明に係る無線綴じ機用接着剤が含む繊維は、任意の長さであることができ、たとえば平均の長さが3mm以上5mm以下であることができる。下記の製造方法によって綿状の繊維を製造すると、繊維の平均の長さが3mm以上の長さを有する。このような繊維は、柔軟であり、かつより高い強度を示す。
【0029】
繊維の含有量は、接着剤の強度を高める量であれば限定されない。たとえば、繊維の含有量は、無線綴じ機用接着剤の重量に対し、1重量%以上20重量%以下、たとえば5重量%以上15重量%以下、8重量%以上12重量%以下であることができる。繊維の含有量がこの範囲内にあると、より柔軟であり、かつ十分に強固な硬化物を提供できる。
【0030】
分散媒は、接着剤に含めて使用することができる任意の材料であることができる。たとえば、分散媒は、水であることができる。分散媒として水を用いることにより、無線綴じ機用接着剤を、有機溶剤を含まないものとすることができる。有機溶剤を含まない接着剤は、人体および環境への悪影響が少ない。本明細書において、「分散媒を含む」とは、本発明の無線綴じ機用接着剤の製造時から接着時までのいずれかの段階において分散媒を含有することをいう。したがって、「分散媒を含む」は、本明細書において、製本段階において本発明の無線綴じ機用接着剤を塗布後および乾燥後に分散媒が蒸発等することによって含有されなくなっていても、「分散媒を含む」に包含される。
【0031】
ゴム成分は、接着剤として使用することができる任意の成分であることができる。たとえば、ゴム成分は、合成ラテックスゴムおよび天然ゴム成分を含むことができる。
【0032】
合成ゴム成分は、特に限定されないが、たとえばスチレンブタジエン共重合体を含む成分であることができる。合成ゴム成分は、たとえばSB-1270(株式会社レヂテックス社製)を使用することができる。
【0033】
天然ゴム成分は、特に限定されない。天然ゴム成分は、天然ゴムラテックスと呼ぶこともできる。天然ゴムラテックスは、変性した天然ゴムラテックス、すなわち天然ゴムラテックス変性体を含むこともできる。天然ゴム成分を含む接着剤は、人体および環境への悪影響が少ない。
【0034】
ゴム成分の含有量は、無線綴じ機用接着剤の重量に対し、40重量%以上、たとえば50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上および90重量%以上であることができる。
【0035】
本発明の無線綴じ機用接着剤は、上記成分以外の成分を更に含んでもよい。たとえば、増粘剤などの無線綴じ機用接着剤に使用される各種添加剤を含むことができる。
【0036】
たとえば、本発明の無線綴じ機用接着剤は、10重量%~18重量%の繊維懸濁液と、70重量%~90重量%の合成ゴム成分と、1重量%~5重量%の増粘剤とを含むことができ、水性接着剤であることができる。このような接着剤は、使用後に水で清掃することができ、経済的に優れ、人体や環境への悪影響も小さい。また、本発明の無線綴じ機用接着剤は、常温で使用することができ、EVAやPUR系ホットメルトよりも取り扱いが容易である。本発明の無線綴じ機用接着剤は、常温で使用できるため、無線綴じ機を使用する際に温度を上げる必要がない。このため、無線綴じ機を使用する際の電気代の約3分の2を節約することができる。また、無線綴じ機用接着剤としてEVAやPUR系ホットメルトを使用する場合、温度を上げるために1時間以上を要するが、本発明の無線綴じ機用接着剤は、常温で使用出来るため、すぐに作業ができる。したがって、EVAやPUR系ホットメルトを使用する場合よりも作業の効率よい。
【0037】
更に、このような無線綴じ機用接着剤は、接着強度が強く、製本後にのどの部分まで大きく開くことができる本を提供できる。
【0038】
次に、本発明の無線綴じ機用接着剤の製造方法の例を説明する。ただし、本発明の無線綴じ機用接着剤は、この例の製造方法で製造できるものに限定されない。
【0039】
この例の無線綴じ機用接着剤の製造方法は、
乾燥繊維材料を粉砕して、綿状の繊維を得る工程と、
前記線状の繊維を分散媒と共に攪拌して、繊維懸濁液を得る工程と、
前記繊維懸濁液をゴム成分と共に攪拌して、無線綴じ機用接着剤を得る工程と
を含む。
【0040】
乾燥繊維材料は、綿状にすることができる任意の材料であることができる。たとえば、乾燥繊維材料は、和紙原料などの植物に由来する繊維、たとえばみつまたおよびこうぞに由来する繊維であることができる。
【0041】
乾燥繊維材料は、植物材料から和紙原料を製造する手順に従って得ることができる。乾燥繊維材料は、たとえば以下の手順で得ることができる。
【0042】
まず、みつまたなどの伐採した原木から、皮を剥ぐ。剥ぐ前に、原木を水で煮ると皮が剥がし易くなる。剥いだ皮に黒い部分がある場合、黒い部分をそげ落としてもよい。
【0043】
次に、釜のお湯にソーダ灰(炭酸ナトリウム)を入れ、皮を煮沸する。これにより、柔らかな繊維材料を得ることができる。
【0044】
次に、柔かな繊維材料を叩き、繊維を更に解す。この工程は、叩解と呼ばれる。煮沸により十分に柔らかな繊維が得られる場合は、この打解の工程は省略してもよい。
【0045】
このようにして叩解した繊維材料を乾燥させることにより、乾燥繊維材料を得ることができる。
【0046】
次に、乾燥繊維材料を粉砕して、綿状の繊維を得る工程を行う。
【0047】
粉砕の手段は、特に限定されない。たとえば、粉砕しやすい大きさに乾燥繊維材料を裁断してから、粉砕器に投入する。粉砕器は、任意の装置を使用することができるが、工業用ミキサーまたは家庭用のミキサー(ジューサー)を使用することができる。粉砕は、乾燥繊維材料が綿状にすることができる任意の時間、量および速度で実施することができる。たとえば、綿状の繊維の平均の長さが3mm以上5mm以下の綿状の繊維となるように条件を設定することがよい。
【0048】
次に、線状の繊維を分散媒と共に攪拌して、繊維懸濁液を得る。
【0049】
分散媒は、主に水を含むことが好ましく、水であることが特に好ましい。水系の繊維懸濁液は、人体および環境に対する悪影響が小さく、取り扱いが容易である。
【0050】
たとえば、水100重量部に対して綿状の繊維を5重量部投入し、再度ミキサー等で水に馴染むまで撹拌して、水性繊維懸濁液を得てもよい。繊維懸濁液中の綿状の繊維の含有量は、接着後に必要とされる強度に応じて調節することができ、たとえば繊維懸濁液において1重量%以上99重量%以下、たとえば1重量%以上20重量%以下とすることができる。乾燥繊維材料は、綿状に粉砕していないと、分散媒に均一に混合することができない。本発明の無線綴じ機用接着剤の製造方法は、綿状に粉砕する工程を含むことにより、繊維を分散媒に均一に混合することができる。
【0051】
次に、繊維懸濁液をゴム成分と共に攪拌して、無線綴じ機用接着剤を得る工程を行う。ここでの撹拌手段は、特に限定されない。また、ゴム成分としては、先に説明した例の成分を用いることができる。綿状の繊維を直接ゴム成分と混合してしまうと、繊維を均一に分散させることができない。しかし、分散媒と共に攪拌して繊維懸濁液を得て、繊維懸濁液をゴム成分と共に攪拌することにより、接着剤において繊維を均一に分散させることができる。
【0052】
攪拌により得られる無線綴じ機用接着剤の取扱性を向上させるために、増粘剤を含ませ、粘度を調整することができる。
【0053】
上記のとおり、乾燥繊維材料は、綿状に粉砕していないと、ゴム成分に均一に混合することができない。本発明の無線綴じ機用接着剤の製造方法は、綿状に粉砕する工程を含むことにより、繊維をゴム成分に均一に混合することができる。さらに、本発明の無線綴じ機用接着剤の製造方法は、綿状の繊維を分散媒と共に攪拌して繊維懸濁液を得て、繊維懸濁液をゴム成分と共に攪拌することにより、繊維をゴム成分に均一に混合することができる。また、本発明の接着剤は、独自の和紙繊維を加えた水溶性の常温硬化型で人体に優しく、加温を必要としないために温暖化ガス排出削減も可能である。
【実施例0054】
次に、実施例を説明する。ただし、実施例は、実施形態の具体例として説明することを目的としており、本発明を限定するものではない。
【0055】
本実施例では、以下の手順で、実施例の無線綴じ機用接着剤を製造した。乾燥繊維材料の原料には、和紙原料であるみつまたに由来する繊維を使用した。合成ゴム成分として、変性スチレンブタジエン共重合体であるSB-1270(株式会社レヂテックス社製)を使用した。
【0056】
みつまたを原料として、通常の和紙の製造の手順に従って繊維材料を製造した。この繊維を叩き、叩解して、乾燥させた。
【0057】
約5gの乾燥したみつまたの繊維を約3分間家庭用ミキサーで粉砕して、綿状の繊維を得た。綿状繊維の長さは、平均して3mm以上5mm以下であった。
【0058】
綿状の繊維に5重量%となるように水を投入し、水:繊維=100g:5gの繊維懸濁液を製造した。一方、対象接着剤では、繊維を含まない水のみの溶液を使用した。
【0059】
繊維懸濁液と合成ゴム成分と増粘剤とを、10%:86%:4%の重量比で混合し、攪拌機で約15分間攪拌し、実施例の無線綴じ機用接着剤を製造した。混合した接着剤は、みつまた繊維がだまになったりすることなく、均一に混合されていた。
【0060】
[製本]
以上のようにして準備した接着剤を用いて、以下の手順で製本を行った。
【0061】
(実施例1)株式会社ホリゾンジャパンBQ-220の無線綴じ機を使用し、A-4上質紙44.5kgを50枚重ね合わせて本文10を作成し、この本文10を用いて背に切り込みを入れ、背に接着剤を添付し、表紙になる色上質特厚口に付着させ3秒ほどで製本になる。ここまでの全行程を無線綴じ機で行った。また、従来の接着剤と同様の使用感であった。
【0062】
(実施例2)
実施例2では、綿状繊維を含まない接着剤を使用したこと以外は、実施例1と同様の手順で製本を行った。
【0063】
[引張強度試験]
実施例1および2の本100を、以下の手順で引張強度試験に供した。試験機は、島津製作所オートグラフAG-X(100kN)を使用した。
【0064】
まず、本100を真ん中のページで軽く開き、本文10の一方の端が上に、他方の端が下になるように、本100の向きを変えた。図2に示すように、この状態の本100の本文10を引張治具を用いて上下方向に引っ張った。図3は、試験機による試験後状態を示す写真である。
【0065】
引張速度は10mm/秒とした。ロードセルは、1000N(≒100kgf)とした。試験温度は常温(23℃)とした。
【0066】
本100の背紙30の内側の接着剤3部分から用紙が剥がれる荷重を引張強度として記録した。
【0067】
みつまた繊維を含む接着剤による実施例1の本100の引張強度は、46.9kgfであった。一方、みつまた繊維を含まない接着剤による実施例2の本100の引張強度は、34.2kgfであった。本発明の繊維を含む接着剤は、従来の接着剤より約1.5倍程度の引っ張り強度を得ることができた。
【0068】
無線綴じ機においてみつまた繊維を含む接着剤を使用することにより、40kgf以上の引張強度を得ることができ、のど元まで開いた場合にも本100の分解を十分に抑えることができる。
【0069】
また、引張強度試験では、実施例1の本100が、1.5kgf~6kgfの負荷でのど元1Aに近い部分まで十分に開くことができたことが確認された。また、実施例1の本100を手で開いたところ、通常の本を開く際の力でのど元1Aに近い部分まで十分に開くことができたことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0070】
実施形態に係る無線綴じ機用接着剤は、見開きが容易にでき、強度が高い本を無線綴じ機において製本するために使用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1…用紙
2…背
3…無線綴じ機用接着剤
10…本文
20…表紙
30…背紙
40…表紙用紙、
100…本
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-10-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥繊維材料を粉砕して、綿状の繊維を得る工程と、
前記綿状の繊維を分散媒と共に攪拌して、繊維懸濁液を得る工程と、
前記繊維懸濁液をゴム成分と共に攪拌して、無線綴じ機用接着剤を得る工程と、
によって製造される、無線綴じ機用接着剤。
【請求項2】
前記分散媒が水である、請求項1に記載の無線綴じ機用接着剤。
【請求項3】
乾燥繊維材料を粉砕して、綿状の繊維を得る工程と、
前記綿状の繊維を分散媒と共に攪拌して、繊維懸濁液を得る工程と、
前記繊維懸濁液をゴム成分と共に攪拌して、無線綴じ機用接着剤を得る工程と
を含む、無線綴じ機用接着剤の製造方法。
【請求項4】
前記乾燥繊維材料は、叩解された繊維を乾燥させた材料である、請求項3に記載の無線綴じ機用接着剤の製造方法。
【請求項5】
前記分散媒として水を用いる、請求項4に記載の無線綴じ機用接着剤の製造方法。
【請求項6】
複数枚の用紙を重ねて背を有する本文を作製する工程と、
前記本文の前記背に、請求項1または2に記載の無線綴じ機用接着剤を塗布する工程と、
前記本文の背に背紙を貼り、前記無線綴じ機用接着剤を乾燥させる工程と
を含む、製本方法。

【手続補正書】
【提出日】2022-12-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥繊維材料を粉砕して、綿状の繊維を得る工程と、
前記綿状の繊維を分散媒と共に攪拌して、繊維懸濁液を得る工程と、
前記繊維懸濁液をゴム成分と共に攪拌して、無線綴じ機用接着剤を得る工程と
を含む、無線綴じ機用接着剤の製造方法。
【請求項2】
前記乾燥繊維材料は、叩解された繊維を乾燥させた材料である、請求項1に記載の無線綴じ機用接着剤の製造方法。
【請求項3】
前記分散媒として水を用いる、請求項1に記載の無線綴じ機用接着剤の製造方法。