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特開2023-65840超音波洗浄装置及び超音波洗浄装置に用いるプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065840
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】超音波洗浄装置及び超音波洗浄装置に用いるプログラム
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/12 20060101AFI20230508BHJP
【FI】
B08B3/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176212
(22)【出願日】2021-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】武部 匡彦
(72)【発明者】
【氏名】園部 勝
(72)【発明者】
【氏名】石田尾 樹
【テーマコード(参考)】
3B201
【Fターム(参考)】
3B201AA46
3B201AB42
3B201BB03
3B201BB83
3B201BB92
3B201BB95
3B201CD42
3B201CD43
(57)【要約】
【課題】被洗浄物の洗浄性能をより均一に向上させる超音波洗浄装置を提供する。
【解決手段】超音波洗浄装置10は、被洗浄物としてのワークWが内部に配置されるとともに洗浄液Lが貯留される洗浄槽14と、洗浄槽14における洗浄液Lの貯留量を調整する調整部としての電磁バルブ24と、洗浄槽14に設けられるとともに洗浄槽14内に超音波を出力する出力部としての超音波出力器18と、超音波を出力するように超音波出力器18を制御する第一制御部20Aと、超音波が出力された状態において、洗浄槽14内に貯留された洗浄液Lの液面高さZが段階的に変化するように電磁バルブ24を制御する第二制御部20Bと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄物が内部に配置されるとともに洗浄液が貯留される洗浄槽と、
前記洗浄槽における前記洗浄液の貯留量を調整する調整部と、
前記洗浄槽に設けられるとともに前記洗浄槽内に超音波を出力する出力部と、
前記超音波を出力するように前記出力部を制御する第一制御部と、
前記超音波が出力された状態において、前記洗浄槽内に貯留された前記洗浄液の液面高さが段階的に変化するように前記調整部を制御する第二制御部と、
を備えることを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項2】
前記出力部は、前記洗浄槽の底部から前記超音波を出力することを特徴とする請求項1に記載の超音波洗浄装置。
【請求項3】
前記第二制御部は、少なくとも2以上の異なる前記液面高さを、それぞれ所定時間ずつ維持すると共に、当該所定時間が前記液面高さ毎に異なるように前記調整部を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波洗浄装置。
【請求項4】
前記第二制御部は、前記洗浄槽に前記洗浄液を供給することにより前記液面高さが段階的に高くなるように前記調整部を制御することを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の超音波洗浄装置。
【請求項5】
前記第二制御部は、前記被洗浄物の高さに応じて、前記液面高さの段階数を変化させることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の超音波洗浄装置。
【請求項6】
被洗浄物が内部に配置されるとともに洗浄液が貯留される洗浄槽内に超音波を出力する前記洗浄槽に設けられた出力部と、前記洗浄槽内における前記洗浄液の貯留量を調整する調整部と、通信可能なコンピュータとを有する超音波洗浄装置に対し、
第一制御部が、前記超音波を出力するように前記出力部を制御し、
第二制御部が、前記超音波が出力された状態において、前記洗浄槽内に貯留された前記洗浄液の液面高さが段階的に変化するように前記調整部を制御する、
よう機能させることを特徴とする超音波洗浄装置に用いるプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波洗浄装置及び超音波洗浄装置に用いるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波を利用して被洗浄物を洗浄する超音波洗浄装置が知られている。この種の装置によれば、微小気泡の生成、膨張と圧縮による振動、及び崩壊という一連の過程(いわゆる、キャビテーション現象)を通じて、被洗浄物に付着した油分や塵埃等の異物が剥離除去される。
【0003】
これに関し、下記特許文献1には、超音波を利用して被洗浄物を洗浄している間に、洗浄槽内の洗浄液を排出することにより当該洗浄液の液面高さを徐々に低くしていく超音波洗浄装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60-036099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者等の鋭意研究の結果、超音波の直進成分と反射成分との間で共振が起こり、キャビテーション現象が促進されることが明らかにされた。その結果、被洗浄物における当該共振が起こる箇所に対する洗浄性能を向上させることができることが判明した。
【0006】
しかしながら、洗浄槽内において被洗浄物が浸漬する高さまで洗浄液を投入した状態で超音波を出力する場合、洗浄液の液面で反射した超音波の反射成分は、被洗浄物の中央部や下方部に比べて、被洗浄物の上方部に到達し易い。よって、超音波の直進成分と反射成分との間での共振が被洗浄物の上方部で起こり易いので、被洗浄物における当該共振が起こる箇所に対する洗浄性能が、被洗浄物の上方部だけ偏って向上してしまい、被洗浄物の洗浄が不均一になるという問題がある。
【0007】
ここで、上記特許文献1に記載の超音波洗浄装置のように、洗浄槽内における洗浄液の液面高さを徐々に低くしていく場合には、同じ液面高さを維持する時間が無いため、超音波の直進成分と反射成分との間での共振がそもそも生じ難い。よって、このような超音波洗浄装置では、当該共振によって洗浄性能を向上させることができない。
【0008】
そこで、本発明は、被洗浄物の洗浄性能をより均一に向上させることができる超音波洗浄装置及び超音波洗浄装置に用いるプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一態様に係る超音波洗浄装置は、被洗浄物が内部に配置されるとともに洗浄液が貯留される洗浄槽と、前記洗浄槽における前記洗浄液の貯留量を調整する調整部と、前記洗浄槽に設けられるとともに前記洗浄槽内に超音波を出力する出力部と、前記超音波を出力するように前記出力部を制御する第一制御部と、前記超音波が出力された状態において、前記洗浄槽内に貯留された前記洗浄液の液面高さが段階的に変化するように前記調整部を制御する第二制御部と、を備える。
【0010】
本発明の第二態様に係る超音波洗浄装置では、前記出力部は、前記洗浄槽の底部から前記超音波を出力する。
【0011】
本発明の第三態様に係る超音波洗浄装置では、前記第二制御部は、少なくとも2以上の異なる前記液面高さを、それぞれ所定時間ずつ維持すると共に、当該所定時間が前記液面高さ毎に異なるように前記調整部を制御する。
【0012】
本発明の第四態様に係る超音波洗浄装置では、前記第二制御部は、前記洗浄槽に前記洗浄液を供給することにより前記液面高さが段階的に高くなるように前記調整部を制御する。
【0013】
本発明の第五態様に係る超音波洗浄装置では、前記第二制御部は、前記被洗浄物の高さに応じて、前記液面高さの段階数を変化させる。
【0014】
本発明の第六態様に係るプログラムは、被洗浄物が内部に配置されるとともに洗浄液が貯留される洗浄槽内に超音波を出力する前記洗浄槽に設けられた出力部と、前記洗浄槽内における前記洗浄液の貯留量を調整する調整部と、通信可能なコンピュータとを有する超音波洗浄装置に対し、第一制御部が、前記超音波を出力するように前記出力部を制御し、第二制御部が、前記超音波が出力された状態において、前記洗浄槽内に貯留された前記洗浄液の液面高さが段階的に変化するように前記調整部を制御する、よう機能させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被洗浄物の洗浄性能をより均一に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る超音波洗浄装置の全体構成の一例を示す図である。
図2図1に示すコンピュータのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3】コンピュータによる超音波洗浄装置の制御の流れの一例を示すフローチャートである。
図4】第二制御部の制御によって変化する液面高さを示すグラフである。
図5A】超音波の伝播経路の一部を示す模式図である。
図5B】超音波の伝播経路の一部を示す模式図である。
図5C】超音波の伝播経路の一部を示す模式図である。
図6】変形例に係る第二制御部の制御によって変化する液面高さを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一要素又は同一機能を有する要素には可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0018】
<全体構成>
図1は、本発明の一実施形態(以下、「本実施形態」と称す場合がある。)に係る超音波洗浄装置10の全体構成の一例を示す図である。図1において、超音波洗浄装置10は正面から見た正面図として描かれている。以下、超音波洗浄装置10の上方向又は下方向を「高さ方向」と、超音波洗浄装置10の右方向又は左方向を「幅方向」と、超音波洗浄装置10の手前方向又は奥方向を「奥行き方向」と、それぞれ総称する場合がある。
【0019】
図1に示すように、超音波洗浄装置10は、超音波を用いて被洗浄物としてのワークWの表面を洗浄する装置である。この超音波洗浄装置10は、具体的には、洗浄槽14と、超音波出力器18と、コンピュータ20と、供給部22と、排出部26と、を備える。なお、ここでは図示しないが、超音波洗浄装置10には、洗浄槽14に設けられる扉部、洗浄槽14を下方から支持する脚部、気体の供給/パージ機構、操作パネル等を含む様々な構成が設けられる。
【0020】
洗浄槽14は、ワークWが内部に配置されるとともに洗浄液が貯留されるように構成されている。洗浄槽14は、高剛性の金属板(例えば、ステンレス鋼板)から構成されている。洗浄槽14は、洗浄槽14の内壁面によって画成された収容空間12を有する。また、洗浄槽14は、作業者による操作により開閉可能な扉部を有し、当該扉部が開閉されることにより、洗浄前のワークWを収容空間12に搬入すると共に洗浄後のワークWを収容空間12から搬出することができる。
【0021】
また、洗浄槽14は、下方中央側にワークWを配置するための保持部16を有する。保持部16は、例えばメッシュ状の棚板として構成され、洗浄槽14の内壁面から離間させた状態でワークWを保持する。保持部16は、メッシュ状の棚板に限られず、洗浄槽14の内壁面から離間させてワークWを保持可能であればその種類は問わない。なお、図1では、ワークWをブロック状に簡略化して図示しているが、実際のワークWは、例えば複数の被洗浄物が高さ方向に段積みされた状態で保持され、これらの被洗浄物同士の間に隙間を有するものである。これにより、超音波はワークWの側部に接する流路空間だけでなく、ワークWの中も進行することが可能となっている。
【0022】
また、洗浄槽14は、例えば炭化水素系溶剤や水系溶剤である洗浄液Lを貯留する。なお、洗浄液Lは、上記に限定されない。洗浄槽14の上方部14bに、洗浄液Lを収容空間12内に供給するための供給口30が設けられている。また、洗浄槽14の底部14aに、収容空間12内に貯留された洗浄液Lを外部に排出するための排出口32が設けられている。収容空間12における洗浄液LやワークW以外の空間は、真空又は不活性ガスで充たされた状態とされている。なお、洗浄槽14内を加圧する等、収容空間12における圧力を変動させてもよい。
【0023】
超音波出力器18は、洗浄槽14内に超音波を出力する出力部である。超音波出力器18は、例えば、洗浄槽14の底部14aに設けられ、洗浄槽14の底部14aから超音波を出力する。超音波出力器18は、左側から右側にわたって順に、4つの超音波振動子18a,18b,18c,18dを含んで構成される。超音波振動子18a~18dは、図示しない発信器から供給された電気信号を超音波に変換する振動板方式の振動子である。
【0024】
超音波振動子18a~18dは、例えば、奥行き方向に延びると共に、幅方向に略等間隔に並んで配置される。超音波出力器18は、洗浄槽14の底部14aから超音波を出力する。当該超音波は、下側から上側に向かって進行する。ワークWの中を通過する超音波は、超音波出力器18に近い側のワークWの端部である近端部34から、超音波出力器18から遠い側のワークWの端部である遠端部36に向かって進行する。
【0025】
コンピュータ20は、超音波出力器18、供給部22の電磁バルブ24、排出部26の電磁バルブ28等とそれぞれ通信可能に接続されており、これらの各構成の動作を制御する。図2は、図1に示すコンピュータ20のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図2に示すように、コンピュータ20は、制御装置40と、通信装置46と、記憶装置48と、を備える。
【0026】
制御装置40は、CPU(Central Processing Unit)42及びメモリ44を主に備えて構成される。CPU42は、コンピュータ20の各種構成を制御する。メモリ44は、例えばコンピュータ20における処理の実行に必要な各種プログラム等を記憶する。
【0027】
通信装置46は、外部の装置と通信するための通信インターフェース等で構成される。通信装置46は、例えば、超音波出力器18や電磁バルブ24,28との間で各種の情報を送受信する。
【0028】
記憶装置48は、ハードディスク等で構成される。記憶装置48は、制御装置40における処理の実行に必要な各種プログラムや各種の情報、及び処理結果の情報を記憶する。
【0029】
コンピュータ20の各制御部は、CPU42の制御のもとで、メモリ44又は記憶装置48に記憶されたプログラムを実行し、コンピュータ20が備える上記各種構成を動作させることで実現される。
【0030】
なお、コンピュータ20は、専用又は汎用のサーバ・コンピュータ等の情報処理装置を用いて実現することができる。また、コンピュータ20は、単一の情報処理装置により構成されても、通信ネットワーク上に分散した複数の情報処理装置により構成されてもよい。また、図2は、コンピュータ20が有する主要なハードウェア構成の一部を示しているに過ぎず、コンピュータ20は、一般的なサーバが備える他の構成を備えてもよい。
【0031】
図1に戻り、コンピュータ20は、第一制御部20Aと、第二制御部20Bと、を有する。第一制御部20Aは、超音波を出力するように超音波出力器18を制御する。第二制御部20Bは、超音波が出力された状態において、洗浄槽14内に貯留された洗浄液Lの液面高さが段階的に変化するように調整部としての電磁バルブ24,28を制御する。液面高さが段階的に変化するとは、時間の経過に伴い液面高さが階段状に変化することであり、少なくとも2以上の異なる液面高さをそれぞれ所定時間ずつ維持するように変化することを意味する。異なる液面高さには、少なくともワークWの一部が洗浄液に浸漬する液面高さを含む。すなわち、第二制御部20Bは、液面高さを段階的に変化させる際、少なくともワークWの全体が洗浄液Lに浸漬する液面高さよりも低い液面高さ(ワークWの一部が洗浄液Lに浸漬する液面高さ)を所定時間維持するようにする。所定時間とは、液面で反射する超音波の反射成分がワークWに届くのに要する時間であって、例えば少なくとも1分以上で設定される。
【0032】
供給部22は、洗浄液Lを洗浄槽14に供給する。供給部22は、一端が洗浄液Lを貯蔵する外部の貯蔵槽等に接続されると共に、他端が洗浄槽14の供給口30に接続される流路である。供給部22は、洗浄液Lを流す又は止めるための電磁バルブ24を有している。電磁バルブ24は、洗浄槽14における洗浄液Lの貯留量を調整する調整部である。供給部22は、第二制御部20Bにより電磁バルブ24が「開」状態に制御されると、洗浄液Lを洗浄槽14に供給する。その一方で、供給部22は、第二制御部20Bにより電磁バルブ24が「閉」状態に制御されると、洗浄槽14への洗浄液Lの供給を停止する。
【0033】
排出部26は、洗浄液Lを洗浄槽14から排出する。排出部26は、一端が洗浄槽14の排出口32に接続されると共に、他端が外部の排出槽等に接続される流路である。排出部26は、洗浄液Lを流す又は止めるための電磁バルブ28を有している。電磁バルブ28は、洗浄槽14における洗浄液Lの貯留量を調整する調整部である。排出部26は、第二制御部20Bにより電磁バルブ28が「開」状態に制御されると、洗浄液Lを洗浄槽14から排出する。その一方で、排出部26は、第二制御部20Bにより電磁バルブ28が「閉」状態に制御されると、洗浄液Lの排出を停止する。
【0034】
<超音波洗浄装置10の制御の流れ>
次に、図3を参照して、コンピュータ20による超音波洗浄装置10の制御の流れについて具体的に説明する。
【0035】
図3は、コンピュータ20による超音波洗浄装置10の制御の流れの一例を示すフローチャートである。なお、以下のステップの順番は、適宜、変更することができる。以下の処理は、作業者がワークWを洗浄槽14に搬入し、超音波洗浄装置10の動作を開始するための操作を行った後、開始される。
【0036】
(ステップSP10)
コンピュータ20の第二制御部20Bは、洗浄液Lの液面高さを変化させる段階数iを決定する。第二制御部20Bは、高さ検出センサや作業者の入力等によって取得されるワークWの高さに応じて、段階数iを決定する。例えば、第二制御部20Bは、ワークWが三段積みで配置されている場合に、段階数iを「3」と決定する。そして、処理は、ステップSP12の処理に移行する。
【0037】
(ステップSP12)
第二制御部20Bは、段階数iの初期値をn=1とする。そして、処理は、ステップSP14の処理に移行する。
【0038】
(ステップSP14)
コンピュータ20の第一制御部20Aは、超音波出力器18を作動させ、超音波の出力を開始する。そして、処理は、ステップSP16の処理に移行する。
【0039】
(ステップSP16)
第二制御部20Bは、電磁バルブ24を「開」状態に制御する。これにより、供給部22は、洗浄槽14に洗浄液Lの供給を開始する。そして、処理は、ステップSP18の処理に移行する。
【0040】
(ステップSP18)
第二制御部20Bは、液面高さZが段階数nに応じた液面高さZnになったか否かを判定する。段階数nに応じた液面高さZnとは、段階数nに対応付けて予め設定された液面高さZnである。例えばステップSP10の処理で決定された段階数iが「3」である場合には、第二制御部20Bは、段階数1~3のそれぞれに対応付けて設定された液面高さZ1~Z3になったか否かを判定する。液面高さZ1は、例えばワークWの下方部が洗浄液Lに浸漬する程度の高さである。液面高さZ2は、例えばワークWの中央部が洗浄液Lに浸漬する程度の高さである。液面高さZ3は、例えばワークWの全体が洗浄液Lに浸漬する程度の高さである。当該判定を肯定判定した場合、処理は、ステップSP20の処理に移行する。当該判定を否定判定した場合、洗浄槽14への洗浄液Lの供給を続行し、ステップSP18の処理を繰り返す。
【0041】
(ステップSP20)
第二制御部20Bは、電磁バルブ24を「閉」状態に制御する。これにより、供給部22は、洗浄槽14への洗浄液Lの供給を停止する。そして、処理は、ステップSP22の処理に移行する。
【0042】
(ステップSP22)
第二制御部20Bは、段階数nに応じた液面高さZnを維持した状態での洗浄時間Tが、所定時間として例えば段階数nに応じた洗浄時間Tnになったか否かを判定する。段階数nに応じた洗浄時間Tnは、段階数nに対応付けて予め設定されており、少なくとも1分以上である。液面高さZnを維持した状態での各洗浄時間Tnは、液面高さZn毎に可変とされていてもよく、液面高さZn毎で何れも同じに設定されていてもよい。当該判定を肯定判定した場合、処理は、ステップSP24の処理に移行する。当該判定を否定判定した場合、液面高さZnを維持した状態での洗浄を続行し、ステップSP22の処理を繰り返す。
【0043】
(ステップSP24)
第二制御部20Bは、段階数nがステップSP10の処理で決定した段階数iであるか否かを判定する。当該判定を肯定判定した場合、図3に示す一連の処理を終了する。当該判定を否定判定した場合、処理は、ステップSP26の処理に移行する。
【0044】
(ステップSP26)
第二制御部20Bは、段階数nをインクリメントする。そして、処理は、ステップSP16の処理に戻る。ステップSP10の処理で決定した段階数iの数だけ、ステップSP16~SP24の処理を繰り返した後、図3に示す一連の処理が終了する。
【0045】
図3に示す一連の処理によって変化する液面高さZの一例を図4に示す。図4は、第二制御部20Bの制御によって変化する液面高さZを示すグラフである。図4のグラフの横軸は、超音波出力器18による超音波の出力を開始後の洗浄時間Tを示し、図4のグラフの縦軸は、第二制御部20Bにより制御された洗浄液Lの液面高さZを示す。
【0046】
図4に示すように、例えばステップSP10の処理で決定された段階数iが「3」である場合、第二制御部20Bは、液面高さZが階段状にZ1,Z2,Z3と高くなっていくように、洗浄液Lを三段階に分けて洗浄槽14に供給する。このように、第二制御部20Bは、ワークWの全体が洗浄液Lに浸漬する程度の液面高さZ3になるよりも前に、ワークWの下方部や中央部が洗浄液Lに浸漬する程度の液面高さZ1,Z2を所定時間ずつ維持するように、液面高さZを段階的に変化させる。なお、図4の例では、各液面高さZ1~Z3を維持する各洗浄時間T1~T3は、何れも略同じに設定されている。
【0047】
<作用効果>
次に、超音波洗浄装置10による作用効果について、図5A図5Cを参照して説明する。
【0048】
図5A図5Cは、超音波の伝播経路の一部を示す模式図である。図5A図5Cでは、図示の便宜上、図1と比べて、保持部16、コンピュータ20、供給部22、排出部26等の構成を省略して簡略化している。図5A図5Cは、それぞれ、液面高さZ1,Z2,Z3を維持した状態での超音波の伝播経路を示す。
【0049】
(液面高さZ1を維持した状態:ワークWの下方部に対する洗浄性能の向上)
図5Aにおいて、超音波振動子18aから出力される超音波の進行経路の一部を矢印P1~P3で示し、超音波振動子18dから出力される超音波の進行経路の一部を矢印P4~P7で示している。矢印P1,P2,P4,P5は、ワークWの側部に接する流路空間を通過する直進成分を示している。矢印P3,P7は、洗浄液Lの液面によって進行方向が変わった反射成分を示している。矢印P6は、洗浄槽14の内壁面によって進行方向が変わった反射成分を示している。
【0050】
液面高さZ1を維持した状態では、液面で反射した超音波の反射成分がワークWの下方部に到達し易い。よって、当該下方部において、超音波の直進成分と反射成分との間で共振が起こる箇所(矢印P1と矢印P3とが交差する箇所や、矢印P4と矢印P7とが交差する箇所)が生じ、キャビテーション現象が促進される。その結果、当該下方部に対する洗浄性能を向上させることができる。
【0051】
(液面高さZ2を維持した状態:ワークWの中央部に対する洗浄性能の向上)
図5Bにおいて、超音波振動子18aから出力される超音波の進行経路の一部を矢印P8~P10で示し、超音波振動子18dから出力される超音波の進行経路の一部を矢印P11~P14で示している。矢印P8,P9,P11,P12は、ワークWの側部に接する流路空間を通過する直進成分を示している。矢印P10,P14は、洗浄液Lの液面によって進行方向が変わった反射成分を示している。矢印P13は、洗浄槽14の内壁面によって進行方向が変わった反射成分を示している。
【0052】
液面高さZ2を維持した状態では、液面で反射した超音波の反射成分がワークWの特に中央部に到達し易い。よって、当該中央部に集中して、超音波の直進成分と反射成分との間で共振が起こる箇所(矢印P8と矢印P10とが交差する箇所や、矢印P11と矢印P14とが交差する箇所)が生じ、キャビテーション現象が促進される。その結果、当該中央部に対する洗浄性能を向上させることができる。なお、図示はしていないが、ワークWの下方部においても、超音波の直進成分と反射成分との間で共振が起こる箇所が生じ得る。よって、ワークWの下方部に対する洗浄性能も向上するが、共振が生じ易いワークWの中央部の方がワークWの下方部よりも洗浄性能がより向上する。
【0053】
(液面高さZ3を維持した状態:ワークWの上方部に対する洗浄性能の向上)
図5Cにおいて、超音波振動子18aから出力される超音波の進行経路の一部を矢印P15~P17で示し、超音波振動子18dから出力される超音波の進行経路の一部を矢印P18~P21で示している。矢印P15,P18は、ワークWの中を伝播しながら直進する経路を示している。矢印P16,P19は、ワークWの側部に接する流路空間を通過する直進成分を示している。矢印P17,P21は、洗浄液Lの液面によって進行方向が変わった反射成分を示している。矢印P20は、洗浄槽14の内壁面によって進行方向が変わった反射成分を示している。
【0054】
液面高さZ3を維持した状態では、液面で反射した超音波の反射成分がワークWの特に上方部に到達し易い。よって、当該上方部に集中して、超音波の直進成分と反射成分との間で共振が起こる箇所(矢印P15と矢印P17とが交差する箇所や、矢印P18と矢印P21とが交差する箇所)が生じ、キャビテーション現象が促進される。その結果、当該上方部に対する洗浄性能を向上させることができる。なお、図示はしていないが、ワークWの中央部や下方部においても、超音波の直進成分と反射成分との間で共振が起こる箇所が生じ得る。よって、ワークWの中央部や下方部に対する洗浄性能も向上するが、共振が生じ易いワークWの上方部、中央部、及び下方部の順で、洗浄性能がより向上する。
【0055】
次に、本実施形態に係る超音波洗浄装置10による効果について、従来の超音波洗浄装置と比較してより詳細に説明する。
【0056】
従来の超音波洗浄装置としては、洗浄液Lの液面高さZをワークWが浸漬する液面高さZ3に維持した状態で、合計の洗浄時間が3tとなるように超音波を出力する場合を想定する。この従来の場合において、超音波の共振によって論理的に得られる洗浄性能の一例を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
従来の超音波洗浄装置では、洗浄液Lの液面高さZをワークWが浸漬する液面高さZ3とした状態で超音波を出力するため、洗浄液Lの液面で反射した超音波の反射成分が、ワークWの中央部や下方部よりもワークWの上方部に到達し易い。このため、表1に示すように、ワークWの上方部、中央部、下方部で、洗浄性能の合計が不均一になってしまう。
【0059】
これに対し、本実施形態に係る超音波洗浄装置10は、液面高さZを三段階に変化させて超音波を出力する。各液面高さZ1~Z3を維持する洗浄時間T1~T3を何れも同じくした場合において、超音波の共振が起こる結果として論理的に得られる洗浄性能の一例を表2に示す。また、当該洗浄時間T1~T3をそれぞれ0.7t、0.8t、1.5tと異ならせた場合において、超音波の共振が起こる結果として論理的に得られる洗浄性能の一例を表3に示す。
【0060】
【表2】
【表3】
【0061】
本実施形態の場合、共振が起こり易い箇所を、液面高さZ1ではワークWの下方部、液面高さZ2ではワークWの中央部、液面高さZ3ではワークWの上方部、と変化させることができる。このため、表2,3に示すように、ワークWの上方部、中央部、下方部で、洗浄性能の合計を従来と比べてより均一にすることができる。更に、各液面高さZを維持する洗浄時間Tを異ならせる表3の場合の方が、当該洗浄時間Tを何れも同じくする表2の場合よりも、洗浄性能の合計を更に均一にすることができる。
【0062】
以上、本実施形態に係る超音波洗浄装置10は、被洗浄物としてのワークWが内部に配置されるとともに洗浄液Lが貯留される洗浄槽14と、洗浄槽14における洗浄液Lの貯留量を調整する調整部としての電磁バルブ24と、洗浄槽14に設けられるとともに洗浄槽14内に超音波を出力する出力部としての超音波出力器18と、超音波を出力するように超音波出力器18を制御する第一制御部20Aと、超音波が出力された状態において、洗浄槽14内に貯留された洗浄液Lの液面高さZが段階的に変化するように電磁バルブ24を制御する第二制御部20Bと、を備える。
この構成によれば、洗浄液Lの液面高さZの段階に応じて、液面で反射した超音波の反射成分がワークWに届き易い箇所を変化させることができる。よって、ワークWにおける超音波の直進成分と反射成分との間で共振が起こり易い箇所を、ワークWの上方部だけに集中させず、液面高さZの段階に応じて変化させることができる。その結果、ワークWの洗浄性能をより均一に向上させることができる。
【0063】
また、本実施形態に係る超音波洗浄装置10では、超音波出力器18は、洗浄槽14の底部14aから超音波を出力する。
この構成によれば、洗浄槽14の底部14aから超音波を出力するので、当該超音波を洗浄液Lの液面で好適に反射させることができる。その結果、ワークWにおける超音波の直進成分と反射成分との間で共振が起こる箇所を適切に発生させることができる。
【0064】
また、本実施形態に係る超音波洗浄装置10では、第二制御部20Bは、少なくとも2以上の異なる液面高さZ1~Z3を、それぞれ所定時間ずつ維持すると共に、当該所定時間が液面高さZ1~Z3毎に異なるように電磁バルブ24を制御する。
この構成によれば、各液面高さZ1~Z3を維持する洗浄時間T1~T3をそれぞれ異なるように制御することで、洗浄性能をより一層均一に向上させるように調整することができる。
【0065】
また、本実施形態に係る超音波洗浄装置10では、第二制御部20Bは、洗浄槽14に洗浄液Lを供給することにより液面高さZが段階的に高くなるように電磁バルブ24を制御する。
本実施形態の構成によれば、液面高さZが段階的に高くなるように洗浄液Lを供給制御するので、液面高さZを段階的に低くなるように洗浄液Lを排出制御する場合よりも、容易に制御することができる。
【0066】
また、本実施形態に係る超音波洗浄装置10では、第二制御部20Bは、ワークWの高さに応じて、液面高さZの段階数を変化させる。
この構成によれば、例えばワークWが三段積みである場合には段階数を「3」として液面高さZを三段階で変化させる等、ワークWの高さに応じて適切に液面高さZを変化させることができる。
【0067】
<変形例>
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。すなわち、上記の実施形態に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。また、上記の実施形態及び後述する変形例が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【0068】
例えば、第二制御部20Bは、洗浄槽14に洗浄液Lを供給する供給制御に加えて又は替えて、洗浄槽14から洗浄液Lを排出することにより液面高さZが段階的に低くなるように、電磁バルブ24,28を制御してもよい。図6は、変形例に係る第二制御部20Bの制御によって変化する液面高さZを示すグラフであって、図4のグラフに対応する。
【0069】
図6に示す例では、第二制御部20Bは、液面高さZが階段状に高くなっていくように洗浄液Lを洗浄槽14に供給した後、液面高さZが階段状に低くなっていくように洗浄液Lを洗浄槽14から排出する。このように、洗浄液Lの供給と排出とを適宜組み合わせて液面高さZを段階的に変化させてもよい。また、排出部26により排出された洗浄液Lを供給部22に循環して、洗浄液Lを再利用してもよい。また、第二制御部20Bは、ワークWの高さに応じて液面高さZの段階数を変化させなくてもよく、予め設定された固定の段階数だけ液面高さZを変化させてもよい。
【0070】
また、超音波出力器18は、洗浄槽14の底部14aに限らず、例えば洗浄槽14の側壁の奥側に設けられていてもよい。この場合、超音波出力器18から出力された超音波は、奥側から手前側に向かって進行する。また、超音波出力器18は、洗浄槽14の側壁における上側から下側にわたって順に、3つの超音波振動子を含んで構成されていてもよい。なお、超音波出力器18に含まれる超音波振動子の数は上記で説明した例に限られない。
【0071】
また、洗浄槽14の内壁面には、超音波出力器18から出力された超音波の反射方向の調整を行う反射構造が設けられていてもよい。ここで、「反射方向の調整」は、ワークWの所定箇所に向けて超音波を案内することを意味する。反射構造は、例えば複数枚の反射板から構成される。反射板は、洗浄液Lとの間で音響インピーダンスの差が大きい材料、例えば、金属や樹脂等から構成される。また、反射板は、洗浄槽14の内壁面に対して着脱自在に設けられる。例えば、反射板は、吸盤、磁石、ねじ止めを含む様々な固定方法により固定される。超音波の直進成分との間で共振を起こす反射成分は、液面で反射した超音波の反射成分に限らず、反射板によって反射した超音波の反射成分であってもよい。
【0072】
また、本発明は、コンピュータ20等の情報処理装置を、第一制御部20A及び第二制御部20Bとして機能させるためのプログラムであってもよい。当該プログラムは、コンピュータ20の内部に配置された記憶手段に記憶されてもよく、ネットワークで超音波洗浄装置10に接続された外部の記憶手段に記憶されてもよい。また、当該プログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供してもよく、インターネット等のネットワーク経由でインストールする形式で提供してもよい。
【符号の説明】
【0073】
10:超音波洗浄装置、14:洗浄槽、18:超音波出力器(出力部)、20A:第一制御部、20B:第二制御部、24,28:電磁バルブ(調整部)
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6