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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065854
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】容器、試薬入り容器および管
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20230508BHJP
【FI】
G01N35/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176234
(22)【出願日】2021-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】591122956
【氏名又は名称】株式会社LSIメディエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】忽那 史徳
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 靖成
(72)【発明者】
【氏名】古川 克己
(72)【発明者】
【氏名】羽立 雄一
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CE01
2G058CE02
2G058EA07
(57)【要約】
【課題】管内部と管外部で液面高さが等しくなる容器および試薬入り容器を提供する。
【解決手段】容器は、試薬を貯留し、上側に開口を有する容器本体と、前記開口から前記容器本体内に挿入されて前記容器本体に固定されている管と、を備え、前記管には、前記管の内側と外側との間で貫通し、上下方向に延びるスリットが形成されており、前記スリットは、前記容器本体に定格容量の試薬が貯留されているときの液面の高さよりも上側に前記スリットの上端が位置し、前記液面の高さより下側に前記スリットの下端が位置するように形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬を貯留し、上側に開口を有する容器本体と、
前記開口から前記容器本体内に挿入されて前記容器本体に固定されている管と、を備え、
前記管には、前記管の内側と外側との間で貫通し、上下方向に延びるスリットが形成されており、
前記スリットは、前記容器本体に定格容量の試薬が貯留されているときの液面の高さよりも上側に前記スリットの上端が位置し、前記液面の高さより下側に前記スリットの下端が位置するように形成されている、
容器。
【請求項2】
前記スリットは上下方向に不連続に形成されている、
請求項1に記載の容器。
【請求項3】
上下方向に不連続に形成された前記スリットは一直線上に並ぶ位置に形成されている、
請求項2に記載の容器。
【請求項4】
上下方向に不連続に形成された前記スリットは周方向にずれた位置に形成されている、
請求項2に記載の容器。
【請求項5】
前記容器本体の内面の平面視形状の重心と前記管の外面の平面視形状の重心は、互いにずれており、
前記管は、前記スリットが前記容器本体の内面の平面視形状の重心側を向くように、前記容器本体に固定されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の容器。
【請求項6】
前記容器本体の内面の平面視形状の重心と前記管の外面の平面視形状の重心の間に、前記スリットが位置している、
請求項5に記載の容器。
【請求項7】
前記管は、平面視において前記容器本体の内面から等しい所定距離にある点を結んで形成される形状の内側に前記スリットが位置するように、前記容器本体に固定されている、
請求項1から6のいずれか一項に記載の容器。
【請求項8】
前記所定距離は、前記容器本体の内面から、前記容器本体の内面に付着して存在する泡の前記容器本体の内面から最も遠い部位までの距離である、
請求項7に記載の容器。
【請求項9】
前記管は、平面視において角を有する内面形状を有している、
請求項1から8のいずれか一項に記載の容器。
【請求項10】
前記スリットは、前記角が位置する位置に形成されている、
請求項9に記載の容器。
【請求項11】
前記管の内面形状は、平面視において正多角形である、
請求項9または10に記載の容器。
【請求項12】
前記管の内面形状は、平面視において星形である、
請求項9または10に記載の容器。
【請求項13】
前記管の内面形状は、平面視において、円と、前記円の内側または外側に突出する凸部とを組み合わせた形状である、
請求項9または10に記載の容器。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の容器と、
前記容器本体に貯留された試薬と、を備える
試薬入り容器。
【請求項15】
試薬を貯留し、上側に開口を有する容器本体内に、前記開口から挿入されて前記容器本体に固定される管であって、
前記管には、前記管の内側と外側との間で貫通し、上下方向に延びるスリットが形成されており、
前記スリットは、前記容器本体に定格容量の試薬が貯留されているときの液面の高さよりも上側に前記スリットの上端が位置し、前記液面の高さより下側に前記スリットの下端が位置するように形成されている、
管。
【請求項16】
前記スリットは上下方向に不連続に形成されている、
請求項15に記載の管。
【請求項17】
上下方向に不連続に形成された前記スリットは一直線上に並ぶ位置に形成されている、
請求項16に記載の管。
【請求項18】
上下方向に不連続に形成された前記スリットは周方向にずれた位置に形成されている、
請求項16に記載の管。
【請求項19】
前記管は、平面視において角を有する内面形状を有している、
請求項15から18のいずれか一項に記載の管。
【請求項20】
前記スリットは、前記角が位置する位置に形成されている、
請求項19に記載の管。
【請求項21】
前記管の内面形状は、平面視において正多角形である、
請求項19または20に記載の管。
【請求項22】
前記管の内面形状は、平面視において星形である、
請求項19または20に記載の管。
【請求項23】
前記管の内面形状は、平面視において、円と、前記円の内側または外側に突出する凸部とを組み合わせた形状である、
請求項19または20に記載の管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、容器、試薬入り容器および管に関する。
【背景技術】
【0002】
血液成分等を分析する自動分析装置が知られている。このような自動分析装置は、容器に入っている試薬を使用する。試薬が入っている容器は、自動分析装置にセットされる前に試薬を均質にするために振られたり、自動分析装置によって高速で動かされたりする。このとき、容器の内部の液状の試薬と空気とによって、泡が発生することがある。分注ノズルがこの泡を吸ったりこの泡に触れたりすると、試薬を適切に吸うことができず、種々の不都合が生じる可能性がある。
【0003】
また、自動分析装置によって容器が高速で動かされると、試薬の液面が揺れる。液面が揺れていると、分注ノズルは適切に試薬を吸うことができない。よって、液面の揺れが収まることを待つ必要がある。この待ち時間の発生により、分析時間が長くなる。
【0004】
そこで、例えば特許文献1に開示されているように、容器の内部に管を挿入して固定することが提案されている。この管の内部には泡が入らないし、液面の揺れが伝わらない。よって、管の内部に挿入された分注ノズルが泡を吸ったり泡に触れたりすることを防ぐことができ、また、液面の揺れが収まることを待つ必要も無くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-099769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、容器の内部に管を設置すると、表面張力の影響により、管内部と管外部で液面高さが異なるという現象が発生し得るということを本発明者らは発見した。このような現象が発生すると、分注ノズルで試薬を吸ったときに管内部で液面が低下する距離が、吸われた試薬の体積に見合う距離にならないことがある。例えば、分注ノズルで試薬を吸うと、管外部の液面高さは低くなるものの、管内部の液面高さは変わらないことがある。あるいは、管内部で液面が低下する距離が、管外部で液面が低下する距離と異なる距離となることがある。このような現象が発生すると、液面に対する分注ノズルの位置を適切に設定することができなくなり、ひいては、分注ノズルで試薬を適切に吸うことができなくなる。
【0007】
本開示は、管内部と管外部で液面高さが等しくなる容器、試薬入り容器および管を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る容器は、試薬を貯留し、上側に開口を有する容器本体と、前記開口から前記容器本体内に挿入されて前記容器本体に固定されている管と、を備え、前記管には、前記管の内側と外側との間で貫通し、上下方向に延びるスリットが形成されており、前記スリットは、前記容器本体に定格容量の試薬が貯留されているときの液面の高さよりも上側に前記スリットの上端が位置し、前記液面の高さより下側に前記スリットの下端が位置するように形成されている。
【0009】
また、本開示に係る試薬入り容器は、前記容器と前記容器本体に貯留された試薬と、を備える。
【0010】
さらに、本開示に係る管は、試薬を貯留し、上側に開口を有する容器本体内に前記開口から挿入されて前記容器本体に固定される管であって、前記管には、前記管の内側と外側との間で貫通し、上下方向に延びるスリットが形成されており、前記スリットは、前記容器本体に定格容量の試薬が貯留されているときの液面の高さよりも上側に前記スリットの上端が位置し、前記液面の高さより下側に前記スリットの下端が位置するように形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、管内部と管外部で液面高さが等しくなる容器、試薬入り容器および管を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係る容器の分解斜視図
図2】第1の実施形態に係る容器の縦断面図
図3】第1の実施形態に係る容器の横断面図
図4】第1の実施形態に係る容器の横断面図
図5】第1の実施形態に係る容器の横断面図
図6】第2の実施形態に係る容器の横断面図
図7】第3の実施形態に係る容器の横断面図
図8】管の変形例の正面図
図9】管の変形例の正面図
図10】管の変形例の横断面図
図11】第4の実施形態に係る管の正面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は例示であり、本開示はこれらの実施の形態により限定されるものではない。
【0014】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る容器1の分解斜視図である。容器1は、容器本体100と、管200を備える。
【0015】
容器本体100は、平面視で内面および外面が略三角形となる形状を有している。略三角形を形成する3辺のうちの1辺は円弧である。容器本体100の上側には、口101が形成されている。口101には、容器本体100の内外を繋ぐ開口102が形成されている。
【0016】
管200は、平面視で内面及び外面が円形となる形状を有している。管200の上端には開口201が形成されている。管200の側面には、管200の内側と外側との間で貫通し、上下方向に延びるスリット202が形成されている。スリット202の幅は、スリット202の全長にわたって均一である。スリット202は正面視で矩形状であり、上下方向の長さは管200よりも短く、上端および下端は閉じている。なお、この実施形態では管200は平面視で内面と外面が同じ形状であるが、別の実施形態としては異なる形状であってもよい。また管200は円筒状であることに限らず、外面が平面視で矩形や多角形の角筒状であってもよい。さらに、この実施形態ではスリット202の幅はスリット202の全長にわたって均一であるが、別の実施形態としてはスリット202の幅は、本発明の目的を達成できる限りにおいて、全長にわたって均一でなくてもよい。
【0017】
管200の側面、かつ、スリット202よりも開口201に近い位置には、管200の内側と外側との間で貫通する通気孔203が形成されている。なお、通気孔203は形成されていなくてもよい。
【0018】
管200は、容器本体100の開口102から挿入されて容器本体100に固定される。具体的には、管200は、口101の内側に固定される。
【0019】
管200の少なくとも容器本体100の内部に挿入される部分の外径は、口101に形成されている開口102の内径以下である。よって、管200を変形させることなく、管200を容器本体100の内部に容易に挿入することができる。また、変形させる必要がないので、管200の剛性が高くなるように、管200の材質および寸法を決定することができる。管200の剛性を高くすることにより、容器1を振ることによって容器1の内部の試薬を攪拌して均質にする効果を高めることができる。
【0020】
図2は、容器1の縦断面図である。具体的には、図2は、容器本体100の外形が有する円弧の垂直二等分線を含む鉛直面で容器1を切断した場合の縦断面図である。
【0021】
管200の下端部には、通液孔204が形成されている。図2に示される例では、通液孔204の直径は、管200の他の部分の内径よりも小さい。しかしながら、通液孔204の直径は、管200の他の部分の内径と等しくてもよい。また、通液孔204は、図2に示されるように管200の最下端つまり底面に形成されていてもよいし、最下端よりも上側である最下端近傍(つまり、管200の側面)に形成されていてもよい。
なお、通液孔204は形成されていなくてもよい。またスリット202は管200の下端に開放して形成されてもよく、通液孔204に連通するよう形成されてもよい。
【0022】
以上のように構成されている容器1には、開口201を介して液状の試薬300が注入され、液体である試薬300が貯留される。また、容器本体100の開口102を介して液状の試薬300が注入された後、管200が、容器本体100の開口102から挿入されて容器本体100に固定されてもよい。口101には、開口201を開閉する図示されないキャップを取り付けることができる。容器1と試薬300は試薬入り容器を構成する。
【0023】
容器本体100に定格容量の試薬300が貯留されているときの液面の高さにスリット202が位置するように、スリット202は形成されている。換言すれば、容器本体100に定格容量の試薬300が貯留されているときの液面の高さよりもスリット202の上端が上側に位置するように、スリット202は形成されている。また、容器本体100に定格容量の試薬300が貯留されているときの液面の高さよりもスリット202の下端が下側に位置し、かつ、試薬300を最後まで使ったときの液面高さよりもスリット202の下端が下側に位置するように、スリット202は形成されている。
【0024】
以上のように構成されている容器1は、次のように使用される。まず、試薬300を均質にするために、キャップが取り付けられた状態で、容器1が振られる。この際、管200があるので、管200の内側にはほとんど泡が発生しない。続いて、キャップが取り外された状態で、容器1が自動分析装置にセットされる。さらに、分注ノズルで試薬300を吸うことができる位置に容器1が高速で移動させられる。このとき、容器1は、例えば図1の円弧状の矢印a1または直線状の矢印a2に沿うように、移動する。この際、管200があるので、管200の内側にはほとんど泡が入り込まないし、管200の内側に液面の揺れはほとんど伝わらない。よって、開口201を介して挿入される分注ノズルは、容器1が移動した後、迅速かつ適切に試薬300を吸うことができる。
【0025】
また、管200の内側と外側は、スリット202、通気孔203および通液孔204を介して連通している。よって、管200の内側と外側で液面の高さは等しくなる。しかも、スリット202を介して、管200の内側と外側で液面が連続している。つまり、管200の内側で閉じる液面は存在しない。よって、開口201を介して分注ノズルが挿入され、所定量の試薬300が吸い取られたときに、管200の内部に発生する表面張力の影響で、管200の内側の液面が管200の外側の液面よりも相対的に高くなることを防止することができる。つまり、管200の内側と外側で液面の高さが等しい状態を維持することができる。
【0026】
また、スリット202の幅は、管200の内側と外側との間で液面の高さを等しくすることができ、かつ、管200の外側で発生した泡および液面の揺れ(波)が管200の内側に伝わることを防ぐことができる幅に設定されている。具体的には、スリット202の幅は、好ましくは0.1mm以上1.5mm以下、より好ましくは0.3mm以上1.0mm以下、さらに好ましくは0.5mmに設定されている。
【0027】
スリット202の幅は、スリット202の全長にわたって均一である。仮に、下側ほどスリット202の幅が大きいとすると、試薬300が使われ液面が低下するにつれて、液面の高さにおけるスリット202の幅が大きくなる。スリット202の幅が大きくなるほど、液面に浮かぶ泡が管200の内側に入りやすくなり、かつ、液面の変動が管200の内側に伝わりやすくなる。しかしながら、本開示にかかるスリット202の幅は、スリット202の全長にわたって均一である。よって、液面の高さにかかわらず、管200の内側と外側との間で液面の高さを等しくすることができ、かつ、管200の外側で発生した泡および液面の揺れ(波)が管200の内側に伝わることを防ぐことができる。
【0028】
また、スリット202の位置および向きを特定の位置及び向きにすることにより、容器本体100の内部で発生した泡が管200の内側に入り込むことをさらに確実に防ぐことができる。以下、この点について説明する。
【0029】
図3は、液面よりも高い位置において水平面で容器1を切断した横断面図である。容器1の内部で発生した泡301が模式的に示されている。泡301は、液面に浮かぶと共に、容器本体100の内面103に付着して広がるように分布する。よって、スリット202が容器本体100の内面103から比較的遠い位置に位置するように管200の設置位置およびスリット202の向きを設定することにより、スリット202を泡301から遠ざけることができる。ひいては、泡301がスリット202を介して管200の内側に入り込むことを防止することができる。
【0030】
図4は、図3同様、液面よりも高い位置において水平面で容器1を切断した横断面図である。ただし、説明の便宜上、泡301は示されていない。例えば、図4に示されるように管200を容器本体100に取り付けることで、スリット202を泡301から遠ざけることができる。すなわち、容器本体100の内面103の平面視形状の重心C100と、管200の外面205の平面視形状(スリット202の部分はつながって閉じているものとする)の重心C200が、互いに対してずれるように、管200を容器本体100に取り付ける。さらに、スリット202が重心C100側を向くように、管200を容器本体100に取り付ける。このように管200を容器本体100に取り付けると、スリット202を泡301から遠ざけることができ、ひいては、泡301がスリット202を介して管200の内側に入り込むことを防止することができる。
【0031】
この際、重心C100と重心C200の間(つまり、これらの重心を結ぶ線分上)にスリット202が位置するようにすれば、より確実に、スリット202を泡301から遠ざけることができ、ひいては、泡301がスリット202を介して管200の内側に入り込むことを防止することができる。
【0032】
図5は、図3同様、液面よりも高い位置において水平面で容器1を切断した横断面図である。ただし、説明の便宜上、泡301は示されていない。例えば、図5に示されるように管200を容器本体100に取り付けることで、スリット202を泡301から遠ざけることができる。すなわち、平面視において容器本体100の内面103から等しい所定距離にある点を結んで形成される形状Fの内側にスリット202が位置するように、管200を容器本体100に取り付ける。このように管200を容器本体100に取り付けると、スリット202を泡301から遠ざけることができ、ひいては、泡301がスリット202を介して管200の内側に入り込むことを防止することができる。
【0033】
形状Fと容器本体100の内面103との距離である所定距離は、容器本体100の内面103から、容器本体100の内面103に付着して存在する泡301の容器本体100の内面103から最も遠い部位までの距離よりも大きい距離とすることが好ましい。このように所定距離を設定した上で、形状Fの内側にスリット202が位置するように管200を容器本体100に取り付ければ、より確実に、スリット202を泡301から遠ざけることができ、ひいては、泡301がスリット202を介して管200の内側に入り込むことを防止することができる。
【0034】
なお、重心C100と重心C200が互いに対してずれ、スリット202が重心C100側を向くようにしつつ、形状Fの内側にスリット202が位置するように、管200を容器本体100に取り付けてもよい。このように取り付けることで、より確実に泡301がスリット202を介して管200の内側に入り込むことを防止することができる。
【0035】
<第2の実施形態>
図6は、第2の実施形態に係る容器1の横断面図である。第2の実施形態に係る容器1は、第1の実施形態に係る容器1と比較して、容器本体100の形状が異なる。すなわち、第2の実施形態における容器本体100は、略直方体状の形状を有している。
【0036】
容器本体100の形状は異なるが、第2の実施形態に係る容器1は、第1の実施形態における管200と同様に構成された管200を備えている。よって、第2の実施形態に係る容器1も、液面の高さにかかわらず、管200の内側と外側との間で液面の高さを等しくすることができ、かつ、管200の外側で発生した泡および液面の揺れ(波)が管200の内側に伝わることを防ぐことができる。
【0037】
また、第2の実施形態に係る容器1においても、スリット202が容器本体100の内面103から比較的遠い位置に位置するように管200の設置位置およびスリット202の向きを設定することにより、スリット202を泡301から遠ざけることができる。ひいては、泡301がスリット202を介して管200の内側に入り込むことを防止することができる。
【0038】
例えば、図6に示されるように、容器本体100の内面103の平面視形状の重心C100と、管200の外面205の平面視形状の重心C200が、互いに対してずれるように、管200を容器本体100に取り付けてもよい。さらに、スリット202が重心C100側を向くように、管200を容器本体100に取り付けてもよい。このように管200を容器本体100に取り付けると、第2の実施形態に係る容器1においても、スリット202を泡301から遠ざけることができ、ひいては、泡301がスリット202を介して管200の内側に入り込むことを防止することができる。
【0039】
また、例えば、図6に示されるように、平面視において容器本体100の内面103から等しい所定距離にある点を結んで形成される形状Fの内側にスリット202が位置するように、管200を容器本体100に取り付けてもよい。このように管200を容器本体100に取り付けると、第2の実施形態に係る容器1においても、スリット202を泡301から遠ざけることができ、ひいては、泡301がスリット202を介して管200の内側に入り込むことを防止することができる。
【0040】
<第3の実施形態>
図7は、第3の実施形態に係る容器1の横断面図である。第3の実施形態に係る容器1は、第1の実施形態に係る容器1と比較して、容器本体100の形状が異なる。すなわち、第3の実施形態における容器本体100は、略円筒状の形状を有している。
【0041】
容器本体100の形状は異なるが、第3の実施形態に係る容器1は、第1の実施形態における管200と同様に構成された管200を備えている。よって、第3の実施形態に係る容器1も、液面の高さにかかわらず、管200の内側と外側との間で液面の高さを等しくすることができ、かつ、管200の外側で発生した泡および液面の揺れ(波)が管200の内側に伝わることを防ぐことができる。
【0042】
また、第3の実施形態に係る容器1においても、スリット202が容器本体100の内面103から比較的遠い位置に位置するように管200の設置位置およびスリット202の向きを設定することにより、スリット202を泡301から遠ざけることができる。ひいては、泡301がスリット202を介して管200の内側に入り込むことを防止することができる。
【0043】
例えば、図7に示されるように、容器本体100の内面103の平面視形状の重心C100と、管200の外面205の平面視形状の重心C200が、互いに対してずれるように、管200を容器本体100に取り付けてもよい。さらに、スリット202が重心C100側を向くように、管200を容器本体100に取り付けてもよい。このように管200を容器本体100に取り付けると、第3の実施形態に係る容器1においても、スリット202を泡301から遠ざけることができ、ひいては、泡301がスリット202を介して管200の内側に入り込むことを防止することができる。
【0044】
また、例えば、図7に示されるように、平面視において容器本体100の内面103から等しい所定距離にある点を結んで形成される形状Fの内側にスリット202が位置するように、管200を容器本体100に取り付けてもよい。このように管200を容器本体100に取り付けると、第3の実施形態に係る容器1においても、スリット202を泡301から遠ざけることができ、ひいては、泡301がスリット202を介して管200の内側に入り込むことを防止することができる。
【0045】
<管の変形例>
これまでに説明した各実施形態に係る容器1が備える管200は、以下に説明する管200であってもよい。
【0046】
図8は、管200の種々の変形例の正面図を示している。図8Aに示されるように、スリット202は、スリット202の上端で通気孔203とつながっていてもよい。
【0047】
図8Bに示される管200には、通気孔203は形成されていない。また、スリット202が、管200の上端付近まで、延在している。つまり、第1の実施形態で示されたスリット202および図8Aに示されたスリット202よりも、図8Bに示されたスリット202は、長い。この場合、通気孔203の代わりにスリット202の上側の部分を介して、管200の内側と外側との間を連通させることができる。すなわち、管200の内側と外側の気圧を等しくすることができる。
【0048】
図8Cに示される管200には、スリット202に代えて、不連続に形成されたスリット、換言すれば複数のスリット、すなわち、第1のスリット202A、第2のスリット202Bおよび第3のスリット202Cが形成されている。この場合、第1のスリット202Aは、単にスリット202Aと称されても良い。第1のスリット202A、第2のスリット202Bおよび第3のスリット202Cは、一直線上に並ぶ位置に形成されている。この場合、第1のスリット202Aと第2のスリット202Bの間、および、第2のスリット202Bと第3のスリット202Cの間に、リブが形成されることになる。よって、管200の強度を向上させると共に、管200の形状および各スリットの幅が変わることを防止することができる。なお、図8Cに示される管200には、通気孔203が形成されていないが、通気孔203が形成されても良い。また、複数のスリットの数は2であっても良いし、4以上であっても良い。
【0049】
図8Dに示される管200は、図8Cに示される管200と比較して、複数のスリットが一直線上に並んでいない点で異なる。また、上側に位置するスリットの下端が、下側に位置するスリットの上端よりも低い位置に位置している点で異なる。具体的には、第2のスリット202Bは、第1のスリット202Aおよび第3のスリット202Cと周方向にずれた位置に形成されている。さらに、第1のスリット202Aの下端は、第2のスリット202Bの上端よりも低い位置に位置しており、第3のスリット202Cの上端は、第2のスリット202Bの下端よりも高い位置に位置している。この場合、液面は、必ずいずれかのスリットに接触する。よって、リブによる補強効果に加えて、管200の内側と外側との間での液面の接続を確実に維持することができるという効果を得ることができる。
【0050】
図9は、管200の他の変形例の正面図を示している。スリット202の形状は上述した正面視矩形状で上下方向直線状に伸びるものに限られず、正面視長孔状のものであってもよく、また、たとえば図9A図9B図9Cに示すように、湾曲した形状、蛇行した形状、螺旋状やジクザク状に伸びるものであってもよい。さらに、本発明の目的を達成できる限りにおいて、複数本並行して伸びるように形成してもよい。
【0051】
図10は、管200の更なる種々の変形例の横断面図を示している。図10Aから図10Gに例示されるように、管200は、平面視において角を有する内面形状を有していても良い。管200の内面206を、平面視において外側に凸となる角207を有する形状とすることによって、管200の内側に存在する泡を、管200の平面視における中心から比較的遠い位置にある角207付近に凝集させることができる。つまり、仮に、管200の内側に泡301(図3参照)の一部が入り込んでしまったとしても、泡301が管200の中心付近に存在することを防止することができる。よって、管200の内側に分注ノズルを挿入したときに、分注ノズルが泡301に接触することをより確実に防止することができる。
【0052】
また、スリット202を角207が位置する位置に形成することで、スリット202を介して管200の内側に侵入した泡301を、スリット202と同じ位置に位置する角207付近に凝集させ続けることができる。つまり、スリット202を介して管200の内側に侵入した泡301が、管200の中心に向かって移動することを未然に防止することができる。
【0053】
具体的には、管200の内面形状は、平面視において正多角形であっても良い。例えば、図10Aに示されるように、正三角形であっても良いし、図10Bに示されるように、正方形であっても良いし、図10Cに示されるように正五角形であっても良いし、図10Dに示されるように正六角形であっても良い。
【0054】
また、管200の内面形状は、平面視において星形であっても良い。例えば、図10Eに示されるように、とがった出っぱりを5つ持つ星形であっても良いし、とがった出っぱりを3つ、4つ、または6つ以上持つ星形であっても良い。
【0055】
また、管200の内面形状は、平面視において、円と、この円の内側または外側に突出する凸部とを組み合わせた形状であっても良い。例えば、図10Fに示されるように、円の外側に凸部208が突出する形状であっても良いし、図10Gに示されるように、円の内側に凸部208が突出する形状であっても良い。
【0056】
<第4の実施形態>
図11は、第4の実施形態に係る容器1を構成する管200の正面図である。第4の実施形態において、スリット202は、その上端が、容器本体100に定格容量の試薬300が貯留されているときの液面の高さよりも上側に位置するように形成されている。また、このスリット202の下端は、容器本体100に定格容量の試薬300が貯留されている初期状態の液面の高さよりも下側に位置するように形成されている。この場合、試薬300を最後まで使ったときの液面高さよりもスリット202の下端は上側に位置するように形成される。したがって、スリット202の下端より下方の管200の壁面はリブとして作用し強度が保たれる。なお、スリット202の上端は閉じていてもよく、管200の上端または通気孔203に開放されてもよい。
【0057】
このようなスリット202が形成された管200は、第1の実施形態と同様に容器本体100に取り付けられ、容器1を構成する。この容器1では、定格容量の試薬300が貯留された初期状態において、管200の内側と外側は、スリット202、通気孔203および通液孔204を介して連通している。よって、管200の内側と外側で液面の高さは等しくなる。そのため、初期状態の液面に挿入される分注ノズルの高さを正確に検知することできる。しかし、ある程度試薬を使用した後は分注ノズルの高さ、すなわち分注ノズルを管200に挿入する深さを自動計算で求めて制御する場合には、試薬を使い切るまで管200の内側と外側で液面の高さを等しく維持する必要はない。この実施形態4の容器1はそのような自動計算を行う自動分析装置に適用することができる。しかも、スリット202の開口を必要最小限にすることで、管200内への泡の侵入を抑制することができる。
【0058】
各実施形態にて説明された容器1が備える管200は、容器本体100とは別に準備された後に、容器本体100に取り付けられて容器1を構成してもよい。また、それらの管200は、既設の管(上述の管200とは異なる管)と交換されることで、各実施形態にて説明された容器1を構成してもよい。また、試薬300が事前に貯留されている容器本体100に管200を固定することによって、試薬入り容器が構成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本開示にかかる容器および試薬入り容器は、自動分析装置への試薬の供給に利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 容器
100 容器本体
101 口
102 開口
103 内面
200 管
201 開口
202 スリット
202A 第1のスリット
202B 第2のスリット
202C 第3のスリット
203 通気孔
204 通液孔
205 外面
206 内面
207 角
208 凸部
300 試薬
301 泡
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11