IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カネカの特許一覧

<>
  • 特開-外観検査システム及び外観検査方法 図1
  • 特開-外観検査システム及び外観検査方法 図2
  • 特開-外観検査システム及び外観検査方法 図3
  • 特開-外観検査システム及び外観検査方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065861
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】外観検査システム及び外観検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/956 20060101AFI20230508BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230508BHJP
【FI】
G01N21/956 A
G06T7/00 610
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176244
(22)【出願日】2021-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】中村 聡
【テーマコード(参考)】
2G051
5L096
【Fターム(参考)】
2G051AA51
2G051AB02
2G051AB20
2G051AC21
2G051CA04
2G051EB05
5L096AA02
5L096AA06
5L096BA03
5L096CA02
5L096DA02
5L096EA35
5L096EA45
5L096GA06
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】本発明は、従来に比べてより正確に半導体の外観を検査できる外観検査システム及び外観検査方法を提供する。
【解決手段】配線領域と非配線領域を跨るように半導体の第1主面を撮影し、撮影画像を取得する撮影部と、撮影部で取得した撮影画像において配線領域の色情報を非配線領域の色情報で書き換えて又は配線領域の色情報を削除して加工画像を作成する画像処理部と、加工画像から複数の分割画像を抽出する抽出処理部と、過去に良品と判定された一又は複数の半導体の複数の分割画像から特徴量データを抽出し、分類モデルを作成する機械学習部と、分類モデルを用いて分割画像から良否判定を行う良否判定部を備える構成とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面に配線領域と非配線領域を有する半導体の外観検査システムであって、
前記配線領域と前記非配線領域を跨るように前記第1主面を撮影し、撮影画像を取得する撮影部と、
前記撮影部で取得した撮影画像において前記配線領域の色情報を前記非配線領域の色情報で書き換えて又は前記配線領域の色情報を削除して加工画像を作成する画像処理部と、
前記加工画像から複数の分割画像を抽出する抽出処理部と、
過去に良品と判定された一又は複数の半導体の前記複数の分割画像から特徴量データを抽出し、分類モデルを作成する機械学習部と、
前記分類モデルを用いて前記分割画像から良否判定を行う良否判定部を備える、外観検査システム。
【請求項2】
前記画像処理部は、前記撮影部で取得した撮影画像において前記配線領域の色情報を前記非配線領域の色情報で書き換えて加工画像を作成するものであり、
前記非配線領域の色情報は、前記非配線領域における平均の色味に対応する色情報である、請求項1に記載の外観検査システム。
【請求項3】
前記機械学習部は、入力層と、中間層と、出力層を有し、前記複数の分割画像が前記入力層に入力され、前記分類モデルに基づいて、前記入力層に入力された分割画像から特徴抽出した特徴量データを前記中間層で生成し、前記特徴量データから復元された復元画像を前記出力層から出力するものであり、
前記良否判定部は、前記入力層に入力した分割画像と、前記出力層から出力された復元画像を比較し、良否を判定する、請求項1又は2に記載の外観検査システム。
【請求項4】
前記抽出処理部は、一方向に隣接する分割画像間で重なり部分があるように前記加工画像から複数の分割画像を抽出する、請求項1~3のいずれか1項に記載の外観検査システム。
【請求項5】
前記撮影画像は、前記半導体以外の外部領域を含んでおり、
前記画像処理部は、前記外部領域の前記半導体と接する部分の色情報を前記非配線領域の色情報で書き換えて又は前記外部領域の前記半導体と接する部分の色情報を削除して加工画像を作成する、請求項1~4のいずれか1項に記載の外観検査システム。
【請求項6】
第1主面に配線領域と非配線領域を有する半導体の外観検査システムであって、
前記配線領域と前記非配線領域を跨るように前記第1主面を撮影し、撮影画像を取得する撮影部と、
前記撮影部で取得した撮影画像において前記配線領域の色情報を前記非配線領域の色情報で書き換えて又は前記配線領域の色情報を削除して加工画像を作成する画像処理部と、
前記加工画像から複数の分割画像を抽出する抽出処理部と、
過去に撮影された複数の半導体の前記分割画像から外観異常個所がない分割画像を選別し、選別した分割画像から特徴量データを抽出し、分類モデルを作成する機械学習部と、
前記分類モデルを用いて前記分割画像から良否判定を行う良否判定部を備える、外観検査システム。
【請求項7】
前記複数の半導体には、過去に不良品と判定された半導体を含む、請求項6に記載の外観検査システム。
【請求項8】
第1主面に配線領域と非配線領域を有する半導体の外観検査方法であって、
前記配線領域と前記非配線領域を跨るように前記第1主面を撮影し、撮影画像を取得する撮影工程と、
前記撮影画像において前記配線領域の色情報を前記非配線領域の色情報で書き換えて又は前記配線領域の色情報を削除して加工画像を作成する画像処理工程と、
前記加工画像から複数の分割画像を抽出する画像抽出工程と、
過去に良品と判定された一又は複数の半導体の前記複数の分割画像から特徴量データを抽出し、分類モデルを作成するモデル作成工程と、
前記分類モデルを用いて前記分割画像から良否判定を行う判定工程と、を含む外観検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池セルや有機ELパネル等の半導体を検査する外観検査システム及び外観検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から太陽電池セルや有機ELパネル等の半導体の生産プロセスでは、長期信頼性に影響を及ぼすような外観異常がないことや美観として問題がないことを担保するために外観検査が行われている。
例えば、太陽電池セルの場合には、光電変換層等の成膜面において局所的に成膜厚さが不均一になると、太陽電池セルをモジュール化した際に良品の太陽電池モジュールと比較して、短い年数でモジュール全体の出力低下が生じるおそれや、色むらが生じて美観を損なうおそれがある。そのため、太陽電池セルをモジュール化する前に、外観異常が生じている太陽電池セルは取り除く必要がある。
【0003】
そこで、太陽電池セルの外観異常を検査する外観検査装置の一例としては、例えば、特許文献1がある。
この特許文献1では、撮像部で撮像された検査対象画像に基づいて、補正平均輝度値と輝度閾値とを比較して良否判定を行う輝度検査部と、輝度分散値と分散閾値とを比較して良否判定を行う分散検査部と、輝度CV値とCV閾値とを比較して良否判定を行うCV検査部を備えた自動外観検査装置が開示されている。そして、この特許文献1の自動外観検査装置は、これらの検査部の中から検査する検査部を選択し、選択した検査部での良否判定結果に基づいて検査対象部位の良否判定を行うことが可能となっている。
この特許文献1の自動外観検査装置によれば、検査対象部位毎に撮像輝度が異なる場合であっても、検査対象部位の撮像輝度の違い影響を受けることなく、種々の異常モードに対し正確な良否判定を行うことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-148447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の自動外観検査装置では、成膜面の傷のような外観異常個所(欠陥箇所)が不連続となり、一つのキズ領域としてみなすことができない場合に、当該外観異常個所の評価が難しい問題がある。
また、太陽電池セルの成膜面の色味は、光電変換層等を構成する各層の微妙な膜厚の違いで色味が大きく変わるため、成膜面に生じる外観異常について、外観異常の検出のための閾値を一意に定めることが難しい問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、従来に比べてより正確に半導体の外観を検査できる外観検査システム及び外観検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するための本発明の一つの様相は、第1主面に配線領域と非配線領域を有する半導体の外観検査システムであって、前記配線領域と前記非配線領域を跨るように前記第1主面を撮影し、撮影画像を取得する撮影部と、前記撮影部で取得した撮影画像において前記配線領域の色情報を前記非配線領域の色情報で書き換えて又は前記配線領域の色情報を削除して加工画像を作成する画像処理部と、前記加工画像から複数の分割画像を抽出する抽出処理部と、過去に良品と判定された一又は複数の半導体の前記複数の分割画像から特徴量データを抽出し、分類モデルを作成する機械学習部と、前記分類モデルを用いて前記分割画像から良否判定を行う良否判定部を備える、外観検査システムである。
【0008】
ここでいう「過去に良品として判定された半導体」とは、過去に製品基準と比較し、製品基準を満たした半導体をいう。
【0009】
本様相によれば、良否判定部は、機械学習部が機械学習し作成した分類モデルを用いて半導体の良否判定を行うので、従来の画像処理だけでは検査が難しかった傷や色むらといった外観異常を人の判断に近い判断基準で検出できる。
本様相によれば、撮影部で取得した撮影画像において配線領域の色情報を非配線領域の色情報で書き換えて又は配線領域の色情報を削除して加工画像を作成するので、加工画像の見た目がほぼ同色となってシンプルになり、特徴量の抽出精度が従来に比べて向上し、良品と不良品との分類精度を向上できる。
本様相によれば、良品と判定された一又は複数の半導体の分割画像のみを用いて分類モデルを作成するので、製造初期などの十分量の不良品が無い生産プロセスに対しても適用ができ、また想定していない未知の外観異常が発生した際にも対応できる。
【0010】
好ましい様相は、前記画像処理部は、前記撮影部で取得した撮影画像において前記配線領域の色情報を前記非配線領域の色情報で書き換えて加工画像を作成するものであり、前記非配線領域の色情報は、前記非配線領域における平均の色味に対応する色情報である。
【0011】
ここでいう「平均の色味」とは、前記非配線領域におけるRGB3chそれぞれの平均輝度値をいう。
【0012】
本様相によれば、加工画像の大きさを一定とすることができ、分割画像を一定の水準で抽出しやすい。
【0013】
好ましい様相は、前記機械学習部は、入力層と、中間層と、出力層を有し、前記複数の分割画像が前記入力層に入力され、前記分類モデルに基づいて、前記入力層に入力された分割画像から特徴抽出した特徴量データを前記中間層で生成し、前記特徴量データから復元された復元画像を前記出力層から出力するものであり、前記良否判定部は、前記入力層に入力した分割画像と、前記出力層から出力された復元画像を比較し、良否を判定することである。
【0014】
本様相によれば、入力層に入力した分割画像と、出力層から出力された復元画像を比較することで、外観異常が差分となって抽出できるので、良否を判定しやすい。
【0015】
好ましい様相は、前記抽出処理部は、一方向に隣接する分割画像間で重なり部分があるように前記加工画像から複数の分割画像を抽出することである。
【0016】
本様相によれば、分割画像間で重なり部分があるので、分割画像の境界部分に配線領域が位置していても、正確に外観異常を検知できる。
【0017】
好ましい様相は、前記撮影画像は、前記半導体以外の外部領域を含んでおり、前記画像処理部は、前記外部領域の前記半導体と接する部分の色情報を前記非配線領域の色情報で書き換えて又は前記外部領域の前記半導体と接する部分の色情報を削除して加工画像を作成することである。
【0018】
本様相によれば、半導体の縁部分まで正確に外観異常を検知できる。
【0019】
ところで、機械学習を行って分類モデルを作成するにあたって、正確な分類モデルを作成するためには、膨大な量の学習データが必要となる。
ここで、過去に不良品として判定された太陽電池セルであっても、太陽電池セルの第1主面の一部分だけが外観異常個所となっており、他の箇所は良品の太陽電池セルと相違ない場合が多い。すなわち、最終的に不良品と判定されたとしても外観異常個所は、一部分だけであり、他の部分は正常である場合がある。
そこで、本発明者は、外観異常個所と重ならない分割画像を機械学習の学習データとして使用することで学習データの数を増加させることを考えた。
【0020】
上記の考えのもと導き出された本発明の一つの様相は、第1主面に配線領域と非配線領域を有する半導体の外観検査システムであって、前記配線領域と前記非配線領域を跨るように前記第1主面を撮影し、撮影画像を取得する撮影部と、前記撮影部で取得した撮影画像において前記配線領域の色情報を前記非配線領域の色情報で書き換えて又は前記配線領域の色情報を削除して加工画像を作成する画像処理部と、前記加工画像から複数の分割画像を抽出する抽出処理部と、過去に撮影された複数の半導体の前記分割画像から外観異常個所がない分割画像を選別し、選別した分割画像から特徴量データを抽出し、分類モデルを作成する機械学習部と、前記分類モデルを用いて前記分割画像から良否判定を行う良否判定部を備える、外観検査システムである。
【0021】
ここでいう「外観異常個所」とは、欠けやチッピング等の外形変化や、色むらや傷などをいう。
【0022】
本様相によれば、従来の画像処理だけでは検査が難しかった傷や色むらといった外観異常を人の判断に近い判断基準で検出できる。
本様相によれば、加工画像の見た目がほぼ同色となってシンプルになり、特徴量の抽出精度が従来に比べて向上し、良品と不良品との分類精度を向上できる。
本様相によれば、一部に外観異常個所があり、過去に不良品として判定された太陽電池セルであっても機械学習の学習データとして使用できる。
【0023】
好ましい様相は、前記複数の半導体には、過去に不良品と判定された半導体を含む。
【0024】
ここでいう「過去に不良品として判定された半導体」とは、過去に製品基準と比較し、製品基準を満たさなかった半導体をいう。
【0025】
本発明の一つの様相は、第1主面に配線領域と非配線領域を有する半導体の外観検査方法であって、前記配線領域と前記非配線領域を跨るように前記第1主面を撮影し、撮影画像を取得する撮影工程と、前記撮影画像において前記配線領域の色情報を前記非配線領域の色情報で書き換えて又は前記配線領域の色情報を削除して加工画像を作成する画像処理工程と、前記加工画像から複数の分割画像を抽出する画像抽出工程と、過去に良品と判定された一又は複数の半導体の前記複数の分割画像から特徴量データを抽出し、分類モデルを作成するモデル作成工程と、前記分類モデルを用いて前記分割画像から良否判定を行う判定工程と、を含む外観検査方法である。
【0026】
本様相によれば、従来に比べてより正確に半導体の外観を検査できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の外観検査システム及び外観検査方法によれば、従来に比べてより正確に半導体の外観異常を検査できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】(a)は本発明の第1実施形態の外観検査システムの構成を概念的に示した図であり、(b)は分類モデルのニューラルネットワークを概念的に示した図である。
図2図1(a)の撮影部を模式的に示した斜視図である。
図3】(a)は図1の撮影部で撮影した撮影画像を表す平面図であり、(b)は図1の画像処理部によって加工された加工画像を表す平面図である。
図4】抽出処理部によって抽出される分割画像の説明図であり、(a)は抽出する分割画像の縁を太線で表した図であり、(b)は一の分割画像を抽出する際の図であり、(c)は(b)の一の分割画像と隣接する分割画像を抽出する際の図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0030】
本発明の第1実施形態の外観検査システム1は、太陽電池セル100(半導体)の外観を検査し、外観異常を判定するものである。
【0031】
太陽電池セル100は、図2のように、板状のセルであり、第1主面101には、配線領域102と、非配線領域103がある。
配線領域102は、第1主面101側において光電変換部上に、パターン印刷によってバスバー電極部とフィンガー電極部で構成された集電極が形成された領域である。すなわち、配線領域102には、バスバー電極部が形成されたバスバー領域105と、フィンガー電極部が形成されたフィンガー領域106がある。
非配線領域103は、配線領域102以外の領域であり、主に、光電変換部が露出し、光電変換部の色味が反映された光電変換領域で構成されている。
光電変換部は、p型半導体層とn型半導体層を含み、光エネルギーを電気エネルギーに変換可能な部位である。
【0032】
外観検査システム1は、図1(a)のように、撮影部2と、処理コンピュータ3を有している。
撮影部2は、図2のように、太陽電池セル100の第1主面101を撮影し、図3のような撮影画像120を生成する部位である。
撮影部2は、図2のように、カメラ部10と、台座部11を備えている。
カメラ部10は、太陽電池セル100の第1主面101を撮影するカメラである。
台座部11は、太陽電池セル100を載置し、保持する台座である。
台座部11の載置面は、太陽電池セル100の非配線領域103や配線領域102と同色であってもよいが、太陽電池セル100との境界部分を認識しやすくする観点から、太陽電池セル100の非配線領域103及び配線領域102とは異なる色であることが好ましい。
【0033】
処理コンピュータ3は、ハードウェア構成として、各装置を制御する制御装置とデータに対する演算を行う演算装置で構成される中央処理装置と、データを記憶する記憶装置、外部からデータを入力する入力装置、外部にデータを出力する出力装置を備えたコンピュータである。
処理コンピュータ3は、図1(a)のように、主要構成部位として、画像処理部20と、抽出処理部21と、機械学習部22と、良否判定部23と、データ蓄積部24と、入出力部25を備えている。
【0034】
画像処理部20は、図3のように、撮影部2で撮影した撮影画像120に対して色情報を加工する部位である。
画像処理部20は、撮影画像120において配線領域102の色情報を非配線領域103の色情報で書き換えて加工画像121を作成することが可能となっている。
【0035】
抽出処理部21は、画像処理部20で加工した加工画像121から画像を抽出し、複数の分割画像122を生成する部位である。
【0036】
機械学習部22は、オートエンコーダによって教師なし学習を行うものであり、良品の分割画像122のみを使用して機械学習する部位である。
機械学習部22は、過去に良品と判定された一又は複数の太陽電池セル100における複数の分割画像122から特徴量データを抽出し、特徴量データから分割画像122を復元した復元画像123を生成する分類モデル30を作成可能となっている。
分類モデル30は、図1(b)のように、ニューラルネットワークが、入力層31と、中間層32(隠れ層)と、出力層33を備えており、入力層31を構成するノードの数と、出力層33を構成するノードの数が等しく、中間層32に分割画像122を符号化する符号化部35(エンコーダ部)と、復号化する復号化部36(デコーダ部)を備えている。
そして、分類モデル30では、入力層31の各ノードX1~Xnから分割画像122が入力されると、中間層32の符号化部35で分割画像122から特徴量データを抽出(次元削減)し、復号化部36で分割画像122の特徴量データから分割画像122を復元した復元画像123を生成し、出力層33の各ノードY1~Ynから復元画像123が出力される。
【0037】
良否判定部23は、機械学習部22で形成された分類モデル30を用いて、入力層31に入力された分割画像122と、出力層33から出力された復元画像123を比較し、その差分から外観異常を評価し、良否判定を行う部位である。
【0038】
データ蓄積部24は、過去及び現在の撮影画像120、加工画像121、及び分割画像122などの各種の画像や、機械学習部22が作成した分類モデル30、良否判定部23の判定結果などをデータとして蓄積する部位である。
入出力部25は、有線又は無線で撮影部2と接続され、撮影部2に対して操作信号又は操作データを送信し、撮影部2から撮影画像120のデータを受信する部位である。
【0039】
続いて、本実施形態の外観検査システム1を用いて太陽電池セル100を検査する外観検査方法について説明する。
【0040】
本実施形態の外観検査方法は、主に機械学習部22によって分類モデル30を生成する機械学習工程と、分類モデル30を用いて太陽電池セル100の良否判定を行う検査工程で構成されている。
【0041】
機械学習工程では、あらかじめ良品と判定された一又は複数の太陽電池セル100のみを使用して実施されるものであり、撮影工程と、画像処理工程と、画像抽出工程と、モデル作成工程をこの順に実施するものである。
【0042】
機械学習工程では、まず、図2のように台座部11上に太陽電池セル100を載置し、第1主面101をカメラ部10に対向させる。そして、カメラ部10によって図3(a)のような撮影画像120を撮影する(撮影工程)。
【0043】
このとき、撮影画像120は、図3(a)のように、少なくとも太陽電池セル100の配線領域102と非配線領域103が跨るように撮影されており、本実施形態では、台座部11内に太陽電池セル100が含まれるように撮影されている。
すなわち、本実施形態の撮影画像120は、配線領域102と非配線領域103と太陽電池セル100以外の外部領域104の3領域に跨って撮影されている。
【0044】
続いて、図3(b)のように撮影部2で撮影した撮影画像120に対して画像処理部20で配線領域102の色情報を非配線領域103の色情報で書き換えて加工画像121を作成する(画像処理工程)。
【0045】
このとき、画像処理部20は、画像処理ソフトウェアによって、撮影画像120の配線領域102を非配線領域103の色味で塗りつぶし加工を施し、さらに外部領域104の太陽電池セル100に接する部分を塗りつぶし加工を施す。
本実施形態の画像処理部20は、画像処理ソフトウェアによって、撮影画像120の配線領域102と外部領域104を非配線領域103の色味で塗りつぶし、撮影画像120全体の色味がほぼ同色になるように加工する。
ここで、基準となる非配線領域103の色味は、非配線領域103が持つ色味の範囲であれば特に限定されるものではないが、非配線領域103の平均の色味であることが好ましい。
【0046】
続いて、図4のように画像処理部20によって加工された加工画像121から抽出処理部21で複数の分割画像122を抽出する(画像抽出工程)。
【0047】
このとき、図4(a)のように、横方向(一方向)及び縦方向に隣接する分割画像122,122間でオーバーラップするように分割画像122を切り出す。
具体的には、加工画像121に対して四角形状に開口した画像切り出し用のフィルターを走査させることで多数の分割画像122を生成する。
分割画像122は、四角形状の画像であり、分割画像122,122間の重なり幅は、分割画像122の一辺の1/20以上1/2以下であることが好ましい。
分割画像122の面積は、加工画像121の面積に比べて小さく、加工画像121の面積の1/10以上1/1000以下であることが好ましい。
【0048】
続いて、複数の太陽電池セル100の分割画像122を学習データとして用いて、分類モデル30を作成する(モデル作成工程)。
具体的には、抽出処理部21によって抽出された各分割画像122を入力層31の各ノードX1~Xnに入力し、符号化部35によって符号化して特徴量データを抽出し、復号化部36によって抽出した特徴量データから復号化して各分割画像122を復元し、出力層33から復元画像123として出力される。そして、出力層33から出力された各復元画像123を入力層31に入力した各分割画像122と比較して各分割画像122と一致するように機械学習して分類モデル30を作成する。
以上が機械学習工程である。
【0049】
続いて、検査工程では、検査対象物である太陽電池セル100(検査対象セル100ともいう)に対して実施されるものであり、撮影工程と、画像処理工程と、画像抽出工程と、演算工程と、判定工程をこの順に実施するものである。
撮影工程と画像処理工程と画像抽出工程は、機械学習工程の撮影工程と画像処理工程と画像抽出工程と同様の工程であるため、説明を省略する。
【0050】
検査工程の演算工程では、上記した機械学習工程によって作成された分類モデル30を用い、画像抽出工程で抽出された検査対象セル100の各部分の分割画像122を分類モデル30のニューラルネットワークの入力層31に入力する。入力層31に各分割画像122が入力されると、分類モデル30に基づいて出力層33から各部分の復元画像123が出力される(演算工程)。
【0051】
検査対象セル100の各部分の復元画像123が出力されると、良否判定部23によって各分割画像122のデータと各復元画像123を比較して差分を取り、差分から良否判定を行う(判定工程)。
具体的には、各分割画像122と各復元画像123をそれぞれ比較し、その差分からそれぞれの分割画像122の異常度を算出して異常度を所定の基準値と比較して良否判定を行う。
分割画像122の異常度が所定の基準値超過の場合には、当該分割画像122が対応する太陽電池セル100の部分に異常があると判定する。
分割画像122の異常度が所定の基準値以下の場合には、当該分割画像122が対応する太陽電池セル100の部分に異常がない、すなわち、正常であると判定する。
【0052】
本実施形態の外観検査システム1によれば、良否判定部23は、機械学習部22が学習し作成した分類モデル30を用いて太陽電池セル100の良否判定を行うので、従来の画像処理だけでは検査が難しかった傷や色むらといった外観異常を人の判断に近い判断基準で検出できる。
【0053】
本実施形態の外観検査システム1によれば、撮影部2で取得した撮影画像120において配線領域102の色情報を非配線領域103の色情報で書き換えて加工画像121を作成するので、加工画像121の見た目がほぼ同色となってシンプルになり、特徴量の抽出精度が従来に比べて向上し、良品と不良品との分類精度を向上できる。
【0054】
本実施形態の外観検査システム1によれば、良品と判定された一又は複数の太陽電池セル100の分割画像122のみを用いて分類モデル30を生成させるので、教師なし学習が可能であり、製造初期などの不良品が無い生産プロセスに対しても適用ができ、また想定していない未知の外観異常が発生した際にも対応できる。
【0055】
本実施形態の外観検査システム1によれば、一枚の太陽電池セル100の撮影画像120から極小の多数の分割画像122を切り出して生成するため、元となる撮影画像120が少なくても、大量の学習用データを生成することができ、分類精度を向上できる。
【0056】
続いて、本発明の第2実施形態の検査装置について説明する。なお、第1実施形態の外観検査システム1と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0057】
第2実施形態の検査装置は、機械学習工程が第1実施形態の外観検査システム1と異なる。
第2実施形態の機械学習工程では、過去に良品と判定された太陽電池セル100だけではなく、過去に不良品と判定された太陽電池セル100も学習データとして使用する。
具体的には、過去に良否が判定された太陽電池セル100において、画像抽出工程で抽出した複数の分割画像122の中から傷等の外観異常個所がない分割画像122を選別し、選別した分割画像122を良品と判定された太陽電池セル100の分割画像122とともに学習データとして用いて、分類モデル30を作成する(モデル作成工程)。
【0058】
分割画像122に外観異常個所があるかどうかは、例えば、以下の(1)~(4)の基準を満たすかどうかによって判断することができる。
すなわち、太陽電池セル100の分割画像122に対応する部分が以下の(1)~(4)の少なくとも一つの基準を満たす場合は外観異常個所がないと判断する。
本実施形態では、太陽電池セル100の分割画像122に対応する部分が以下の(1)~(4)の全ての基準を満たす場合は外観異常個所がないと判断する。
(1)外観上の欠けがないこと
(2)チッピングが生じていないこと
(3)変色部分がないこと
(4)傷がないこと、又は傷があり、その傷の長さが8mm以下であって幅が1mm以下であること
【0059】
一方、太陽電池セル100の分割画像122に対応する部分が上記の(1)~(4)の全ての基準を満たさない場合は当該分割画像122に外観異常個所があると判断し、当該分割画像122を学習データとして使用しない。
【0060】
第2実施形態の検査装置によれば、良品の太陽電池セル100の分割画像122だけではなく、不良品の太陽電池セル100の分割画像122を機械学習部22の学習データとして使用できるため、良品の太陽電池セル100の分割画像122のみを使用する場合に比べて学習データの数を増やすことができ、より精度良く分類モデル30を作成できる。
【0061】
上記した実施形態では、画像処理部20は、撮影部2で撮影した撮影画像120において配線領域102の色情報を非配線領域103の色情報で書き換えて加工画像121を作成したが、本発明はこれに限定されるものではない。画像処理部20は、撮影部2で撮影した撮影画像120において配線領域102の色情報を削除して加工画像121を作成してもよい。
【0062】
上記した実施形態では、各分割画像122を各復元画像123と比較し、外観異常を判定したが、本発明はこれに限定されるものではない、各復元画像123から太陽電池セル100の加工画像121を復元し、分割画像122を抽出する前の加工画像121と、復元画像123から復元された加工画像121を比較して外観異常を判定してもよい。
【0063】
上記した実施形態では、太陽電池セル100の表面たる第1主面101に対して良否判定を行ったが、本発明はこれに限定されるものではない。裏面たる第2主面に対して良否判定を行ってもよい。
【0064】
上記した実施形態では、太陽電池セル100に対して検査したが、本発明はこれに限定されるものではない。有機ELパネル等の他の半導体に対して検査してもよい。また、モジュール化された太陽電池モジュールに対して検査してもよい。
【0065】
上記した実施形態では、撮影部2は、処理コンピュータ3の入出力部25と直接接続されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。撮影部2は、処理コンピュータ3の入出力部25とインターネットやイントラネット等のネットワークを介して接続されていてもよい。
【0066】
上記した実施形態では、機械学習部22は、オートエンコーダを用いた分類モデル30を作成したが、本発明はこれに限定されるものではない。他の機械学習手法により分類モデル30を作成してもよい。
【0067】
上記した実施形態は、本発明の技術的範囲に含まれる限り、各実施形態間で各構成部材を自由に置換や付加できる。
【符号の説明】
【0068】
1 外観検査システム
2 撮影部
20 画像処理部
21 抽出処理部
22 機械学習部
23 良否判定部
30 分類モデル
31 入力層
32 中間層
33 出力層
100 太陽電池セル
101 第1主面
102 配線領域
103 非配線領域
104 外部領域
120 撮影画像
121 加工画像
122 分割画像
123 復元画像
図1
図2
図3
図4