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特開2023-65875エレベータにおける複数のかごの運行管理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065875
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】エレベータにおける複数のかごの運行管理装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/06 20060101AFI20230508BHJP
   B66B 9/02 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
B66B1/06 C
B66B9/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176266
(22)【出願日】2021-10-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】宮川 行宏
【テーマコード(参考)】
3F301
3F502
【Fターム(参考)】
3F301DC07
3F301DC08
3F502HA02
3F502HB01
3F502JA79
3F502JA86
3F502JA92
(57)【要約】
【課題】昇降路を昇降しているかごと昇降路間を移動可能なかごとの干渉を回避すべく、かごの運行の最適化を図ることができるエレベータにおける複数のかごの運行管理装置を提供する。
【解決手段】隣り合うように配置される複数の昇降路A,Bと、複数の昇降路A,Bを移動する複数のかごK1,K2,K3と、を備え、複数のかごのうちの少なくとも1つのかごK1が隣り合う昇降路A,Bへ移動可能に構成され、階床でのエレベータの呼び情報及び各かごの行先階情報に応じて移動する全てのかごの運行情報に基づいて全てのかごの運行を制御する制御部を備え、制御部は、運行情報がかご同士が相互に干渉し合う情報である場合に、その干渉を解消するように運行情報を補正する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合うように配置される複数の昇降路と、該複数の昇降路を移動する複数のかごと、を備え、
該複数のかごのうちの少なくとも1つのかごが隣り合う前記昇降路へ移動可能に構成され、
階床でのエレベータの呼び情報及び各かごの行先階情報に応じて移動する全てのかごの運行情報に基づいて該全てのかごの運行を制御する制御部を備え、
該制御部は、前記運行情報がかご同士が相互に干渉し合う情報である場合に、その干渉を解消するように運行情報を補正することを特徴とするエレベータにおける複数のかごの運行管理装置。
【請求項2】
前記制御部は、複数の昇降路のうちの一方の昇降路の所定の階床から他方の昇降路の所定の階床へ前記少なくとも1つのかごを移動させる時に、前記他方の昇降路において昇降している他のかごが前記少なくとも1つのかごに干渉すると判断した場合には、該他のかごが前記所定の階床を通過するまで前記少なくとも1つのかごの移動を禁止するように前記運行情報を補正することを特徴とする請求項1に記載のエレベータにおける複数のかごの運行管理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記階床でのエレベータの呼び情報及び前記各かごの行先階情報並びに各かごの位置情報に基づいて、各かごに出発要請、出発遅延要請、速度制限要請、迂回要請、退避要請を盛り込んだ運行情報となるタイムテーブルを作成することを特徴とする請求項1又は2に記載のエレベータにおける複数のかごの運行管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の昇降路を移動する複数のかごの運行を管理するためのエレベータにおける複数のかごの運行管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレベータにおいては、例えば2つの昇降路と3つのかごを設け、3つのかごのうちの1つのかごを昇降路間を移動可能に構成することによって、1つのかごを他の2つのかごに対して優先して移動させることができるようにしている(例えば、特許文献1の図6参照)。
【0003】
しかし、上記特許文献1の構成では、1つのかごが昇降路間を移動している時にも、他のかごが昇降により時々刻々と位置変更しているにもかかわらず、他のかごについての移動制限が何ら考えられていない。そのため、昇降路を昇降しているかごと昇降路間を移動しているかごとが干渉してしまう虞があり、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-121021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、昇降路を昇降しているかごと昇降路間を移動可能なかごとの干渉を回避すべく、かごの運行の最適化を図ることができるエレベータにおける複数のかごの運行管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエレベータにおける複数のかごの運行管理装置は、隣り合うように配置される複数の昇降路と、該複数の昇降路を移動する複数のかごと、を備え、該複数のかごのうちの少なくとも1つのかごが隣り合う前記昇降路へ移動可能に構成され、階床でのエレベータの呼び情報及び各かごの行先階情報に応じて移動する全てのかごの運行情報に基づいて該全てのかごの運行を制御する制御部を備え、該制御部は、前記運行情報がかご同士が相互に干渉し合う情報である場合に、その干渉を解消するように運行情報を補正することを特徴としている。
【0007】
本発明によれば、制御部が、運行情報がかご同士が相互に干渉し合う情報である場合に、その干渉を解消するように運行情報を補正することによって、昇降路を移動するかごと隣り合う昇降路へ移動しているかごとが干渉することを回避することができる。よって、昇降路を昇降しているかごと昇降路間を移動可能なかごとの干渉を回避すべく、かごの運行の最適化を図ることができる。
【0008】
また、本発明のエレベータにおける複数のかごの運行管理装置は、前記制御部が、複数の昇降路のうちの一方の昇降路の所定の階床から他方の昇降路の所定の階床へ前記少なくとも1つのかごを移動させる時に、前記他方の昇降路において昇降している他のかごが前記少なくとも1つのかごに干渉すると判断した場合には、該他のかごが前記所定の階床を通過するまで前記少なくとも1つのかごの移動を禁止するように前記運行情報を補正する構成であってもよい。
【0009】
上記のように、一方の昇降路の所定の階床から他方の昇降路の所定の階床へ例えば1つのかごを移動させる時に、他方の昇降路において昇降している他のかごが1つのかごに干渉すると判断した場合には、他のかごが所定の階床を通過するまで1つのかごの移動を禁止するように運行情報を補正することによって、他方の昇降路において昇降している他のかごが、一方の昇降路の所定の階床から他方の昇降路の所定の階床へ移動する1つのかごに干渉することを回避することができる。
【0010】
また、本発明のエレベータにおける複数のかごの運行管理装置は、前記制御部が、各かごの位置情報、前記階床でのエレベータの呼び情報及び前記各かごの行先階情報に基づいて、各かごに出発要請、出発遅延要請、速度制限要請、迂回要請、退避要請を盛り込んだ運行情報となるタイムテーブルを作成する構成であってもよい。
【0011】
上記のように、各かごの位置情報、階床でのエレベータの呼び情報及び各かごの行先階情報に基づいて、各かごに出発要請、出発遅延要請、速度制限要請、迂回要請、退避要請を盛り込んだ運行情報となるタイムテーブルを作成することによって、かご同士が相互に干渉し合うことを回避し易い。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、かご同士の干渉を解消するように運行情報を補正することによって、昇降路を昇降しているかごと昇降路間を移動可能なかごとの干渉を回避すべく、かごの運行の最適化を図ることができるエレベータにおける複数のかごの運行管理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係るエレベータにおける複数のかごの運行管理装置の基本構成を示す概略図である。
図2】同運行管理装置の動作を示すフローチャートである。
図3図2の続きのフローチャートである。
図4】3つのかごを表1のタイムテーブルで移動している状態を示す説明図である。
図5】3つのかごを表2のタイムテーブルで移動している状態を示す説明図である。
図6】3つのかごを表3のタイムテーブルで移動している状態を示す説明図である。
図7】3つのかごを表4のタイムテーブルで移動している状態を示す説明図である。
図8】エレベータにおける複数のかごの運行管理装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るエレベータにおける複数のかごの運行管理装置(以下、運行仮装置という)の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1は、前記運行管理装置の基本構成を示している。この運行管理装置は、隣り合うように配置される複数(図1では2つ)の昇降路A,Bと、複数の昇降路A,Bを縦移動(上下移動)する又は昇降路A,B間を横移動する複数(図1では3つ)のかごK1,K2,K3と、全てのかごの運行(縦移動及び横移動)を制御する制御部としての群管理サーバー10(図8参照)と、を備えている。かごK1,K2,K3は、前方に乗り降りするための開閉可能な単数又は複数の扉を備える。図1において、図の左右方向を左右方向(又は横方向)とし、図の上下方向を上下方向(又は縦方向)とし、紙面の貫通方向を前後方向として以下において説明する。尚、かごの個数は、複数の昇降路の数に対して少なくとも1つ多い個数とすることが好ましい。図1では、2つの昇降路A,Bが近接した状態で隣り合うように配置されているが、昇降路A,B間に所定の距離を空けて昇降路A,Bを隣り合うように配置してもよい。
【0016】
各昇降路A又はBには、上下方向に延びる左右一対のガイドレール1,1と、ガイドレール1,1に案内されて昇降可能な複数(図1では5つ)の第1~第5昇降駆動装置2~6と、を備えている。これら第1~第5昇降駆動装置2~6の昇降は、群管理サーバー10により制御される。
【0017】
各昇降駆動装置2は、かごK1に結合又は離脱可能に構成されるとともに、図示していない駆動部を備えていて、駆動部を駆動させることによって、結合されたかごK1をガイドレール1,1に沿って昇降させるように構成している。他の実施形態として、各昇降駆動装置2は、かごK1に結合又は離脱可能に構成されるとともに、図示していない吊りロープに連結され、該吊りロープを巻き上げる巻上機(図示せず)の駆動により、結合されたかごK1をガイドレール1,1に沿って昇降できるように構成してもよい。この実施形態では、かごK1を昇降させるための昇降駆動装置2を設けているが、昇降駆動装置2を省略し、かごK1を縦横自走式に構成してもよい。具体的には、かごK1をガイドレール1,1に沿って昇降させるための昇降用駆動部をかごK1に備えて、昇降用駆動部を駆動させることによって、かごK1をガイドレール1,1に沿って昇降させるように構成し、かごK1を横移動させるための横移動用駆動部をかごK1に備えて、横移動用駆動部を駆動させることによって、特定の階又は任意の階で隣り合う昇降路間を移動できるように形成された移動通路をかごK1が移動できるように構成する。
【0018】
各かごK1の後面には、昇降駆動装置2,3,4,5,6の前面に備える凹部2A,3A,4A,5A,6Aのそれぞれに横方向から係合する係合部7を備えている。凹部2A,3A,4A,5A,6Aに係合部7が係合した状態で係合部が横方向(左右方向)に移動することができるように、横移動手段を備えている。この横移動手段は、固定側となる昇降駆動装置2,3,4,5,6側にリニアガイド(リニアモータの一次側)を設けるとともに、可動側となる係合部7側にリニアモータの二次側を設けている。そして、リニアモータを駆動することにより、係合部7がリニアガイドに沿って横方向に移動することで、一方の昇降路Aから隣り合う他方の昇降路BへかごK1が移動できるように構成しているが、係合部7に駆動用車輪を設けて、駆動用車輪をモータにより駆動することにより係合部7が凹部に沿って横方向に移動することで、一方の昇降路Aから隣り合う他方の昇降路BへかごK1が移動できるように構成してもよい。
【0019】
図1では、左側の昇降路Aに3つの第1~第3昇降駆動装置2,3,4を備え、右側の昇降路Bに2つの第4~第5昇降駆動装置5,6を備えている。図1では、最下方に位置しているかごK1が一方(左側)の昇降路Aから隣り合う他方(右側)の昇降路Bへ移動している途中の状態を示し、他方(右側)の昇降路Bへの移動が完了すると、右側の昇降路Bを上昇して左側の昇降路AのかごK2を追い越してかごK2の上方に位置している昇降駆動装置4に移動するように構成されている。
【0020】
群管理サーバー19は、前記運行情報がかご同士が相互に干渉し合う情報である場合に、その干渉を解消するように運行情報を補正する機能を備えている。つまり、かごK1と昇降駆動装置2とからなる号機毎の運行情報(タイムテーブル)を補正する(作り直す)ことで、かご同士が相互に干渉することを解消するようにしている。具体的には、群管理サーバー19は、全てのかごK1,K2,K3の位置情報、全ての昇降駆動装置2~6の位置情報、階床でのエレベータの呼び情報(階床でのエレベータの乗り場呼び情報)及び各かごの行先階情報(かご呼び情報)に基づいて、運行情報となるタイムテーブルを所定時間(例えば3分)が経過するまでかつ全ての利用者が利用を終えるまでに作成する。つまり、群管理サーバー19は、時々刻々と変化するかごK1,K2,K3の位置情報及び前記呼び情報並びに前記かご呼び情報の3つの情報に基づいて、かごK1,K2,K3に、出発要請、出発遅延要請(停止要請)、速度制限要請、迂回要請、退避要請、積載制限要請を盛り込んだ運行情報となるタイムテーブルを作成し、作成したタイムテーブルを後述する昇降駆動装置マイコン11及びかご制御マイコン12に送信して、全てのかごK1,K2,K3の運行及び第1~第5昇降駆動装置2~6の昇降を制御する。これにより、かごK1,K2,K3同士が干渉することを回避し易い。
【0021】
具体的には、運行管理装置は、図8に示すように、群管理サーバー10により制御される昇降駆動装置マイコン11及びかご制御マイコン12を備えている。
【0022】
昇降駆動装置マイコン11は、昇降駆動装置2~6の昇降を制御するマイクロコンピュータであり、かご制御マイコン12は、かごの縦横移動を制御するマイクロコンピュータである。これら2つのマイコン11,12は、群管理サーバー10で管理される。
【0023】
例えば、昇降路Bから昇降路Aへ横移動するかごK1と昇降路Aを昇降している他のかごK2とが干渉すると判断し、群管理サーバー10から昇降している他のかごK2を制御するかご制御マイコン12へ緊急停止信号を送信した場合、かご制御マイコン12は、他のかごK2から横移動するかごK1までの距離が、他のかごK2の現在位置から通常時の減速度で減速したときに停止できる位置までの距離に所定の過走余裕距離(例えば、1000mm)を加算した仮想距離より短いと計算により判明したとき、緊急時の減速度(通常時の減速度よりも大きな減速度)で減速して昇降しているかごK2を緊急停止させることで、かご同士の干渉を回避することができる。
【0024】
前記かご制御マイコン12は、前記緊急時の減速度で減速しても前記仮想距離よりも短いと計算したときは、昇降しているかごK2を、即時、電磁制動機により機械的制動をかけることにより停止させる、又は干渉する位置より所定距離(例えば、1000mm)手前から電磁制動機により機械的制動をかけることにより停止させる、又はかごK2の昇降速度が例えば60m/min以下になったときに電磁制動機により機械的制動をかけることにより停止させる。
【0025】
群管理サーバー10は、上記のようにかご同士の干渉を回避するようにタイムテーブルを書き換えても干渉を回避できないと判断した場合には、昇降駆動装置マイコン11やかご制御マイコン12に対して緊急停止要請信号を出力してかご同士の干渉を回避することも行うようにしている。
【0026】
号機毎(後述する3つのかご(1号機)~(3号機)K1~K3)のタイムテーブルを作成する手順を図2及び図3のフローチャートに基づいて説明する。
【0027】
まず、各かごK1,K2,K3の位置、行先階を指定するためにかご内に設けられている呼び釦の入力状況(以下、かご呼びという)を各かご(1号機)~(3号機)K1~K3からの信号に基づいて把握する(ステップS1)。次に、各かごK1,K2,K3の移動時間、移動経路、行先階、積載状態、過去の運行実績を基に到着待ち時間が短くなるように乗り場でかごを呼ぶために乗り場に設けられている乗り場呼び釦の押下操作による入力階(以下、乗り場呼びという)を行先階としてかごを割り当てる(ステップS2)。
【0028】
続いて、前記ステップS1でのかごの位置、前記かご呼びの状況、並びに前記ステップS2での乗り場呼びによるかごの割り当てからかごの行先階を決定するとともに、決定したかごの行先階への移動(縦移動、横移動)を基に各昇降駆動装置の行先階を決定する(ステップS3)。次に、タイムテーブルを作成する号機(かご、昇降駆動装置)を優先度順に決定する(ステップS4)。尚、故障、点検、パーキング等による休止号機は除外する。さらに、エネルギー消費削減、過密制限が必要ならば、積載制限を行う(ステップS5)。
【0029】
続いて、緊急輸送、VIP(Very Important Person、非常に重要な人物)による利用等の優先運転か否かを群管理サーバー10が判定する(ステップS6)。群管理サーバー10は、優先運転であると判定すると、行先階へ直行するためには、どの号機(例えばX号機、1号機K1を優先するのであれば、2号機K2又は3号機K3)を横移動する必要があるかを決定する(ステップS7)。決定後は、群管理サーバー10は、行先階へ直行するタイムテーブルを作成する(ステップS8)。前記VIPがエレベータを利用する場合には、受付用の専用釦を押すことにより優先してエレベータを利用できる。
【0030】
ステップS6において、群管理サーバー10が、優先運転ではないと判定すると、例えば1号機K1が移動する場合に、1号機K1以外の他の号機(2号機又は3号機)に通行を譲る、又は衝突回避のための動作が必要か否かを判定する(ステップS9)。群管理サーバー10は、1号機K1が他の号機(2号機又は3号機)に通行を譲る、又は衝突回避のための動作が必要ないと判定すると、行先階へ昇降のみで行けるかどうかを判定する(ステップS10)。ステップS10において、群管理サーバー10は、1号機K1が行先階へ昇降のみで行けると判定すると、行先階へ直行するタイムテーブルを作成する(ステップS8)。また、ステップS10において、群管理サーバー10は、1号機K1が行先階へ昇降のみで行けないと判定すると、行先階に移動するためにどの号機(例えばX号機(2号機K2又は3号機K3))を横移動するかを決定する(ステップS11)。群管理サーバー10は、ステップS11で横移動する号機(2号機K2又は3号機K3)を決定する、又はステップS9で1号機K1以外の他の号機(2号機K2又は3号機K3)に通行を譲る、又は衝突回避のための動作が必要であると判定すると、1号機以外の他の号機に通行を譲る、追い越し、衝突回避のために、横移動、行き先階とは反対方向へ移動、停止階の変更、出発遅延、速度制限、一時停止等の動作を考慮したタイムテーブルを作成する(ステップS12)。ステップS8及びステップS12でのタイムテーブルの作成が終わると、図3の全号機終了か、つまり全号機のタイムテーブルの作成終了かどうかを判定する(ステップS13)。群管理サーバー10は、全号機のタイムテーブルの作成が終了したと判定すると、作成したタイムテーブルのスケジュール通りに各かご及び各昇降駆動装置を移動させる(ステップS14)。また、群管理サーバー10は、全号機のタイムテーブルの作成が終了していないと判定すると、ステップ1に戻って1号機K1以外の他の号機(例えば2号機K2)のタイムテーブルを作成する。ステップS14において、各かご及び各昇降駆動装置を移動させた後は、群管理サーバー10は、制御を終了するかどうかを判定し、終了する場合には、制御を終了し、終了しない場合には、ステップ1に戻ってタイムテーブルの作成が終わっていない3号機K3のタイムテーブルの作成を継続して行う。
【0031】
ステップS12においてタイムテーブルを作成する3つのパターンについて説明すれば、ステップS9で1号機K1以外の他の号機(2号機K2又は3号機K3)に通行を譲るためのタイムテーブルを作成する場合には、1号機K1を横移動させることにより通行を譲るタイムテーブルを作成することになる(ステップS12)。また、ステップS11において、1号機K1を行先階へ移動するために他の号機(2号機K2又は3号機K3)を横移動して「追い抜く(又は追い越す)」必要がある場合には、「横移動→昇降、又は横移動→昇降→横移動」で「追い抜く(又は追い越す)」ための他の号機(2号機K2又は3号機K3)のタイムテーブルを作成することになる(ステップS12)。また、例えば1号機K1を優先させるときに、優先させる号機(1号機K1)の移動スペースがない場合、移動スペースができるように他の号機(2号機K2又は3号機K3)を移動させるためのタイムテーブルを作成することになる(ステップS12)。
【0032】
群管理サーバー10は、号機毎のタイムテーブルを作成した後は、全てのかごの位置を把握し、各かごからの移動時間を受け取り、かご同士が相互に干渉し合うかどうかを判定し、干渉し合う場合には、干渉しないように前記作成したタイムテーブルを補正する(作成し直す)。
【0033】
具体的には、群管理サーバー10は、例えば、第1号機と第2号機とが干渉する(接触又は衝突する)可能性があると判定した場合には、第1号機及び第2号機のいずれか一方の号機の出発を遅延するタイムテーブルを補正する(作成し直す)、又は、第1号機及び第2号機のいずれか一方の号機の速度制限をしながら行先階へ向かうためのタイムテーブルを補正する(作成し直す)。尚、前記速度制限しても干渉する場合には、緩衝する手前で第1号機及び第2号機のいずれか一方の号機を停止するタイムテーブルを作成する(作成し直す)。
【0034】
かご同士が干渉しないように実際に作成した3つのタイムテーブルを表1~表4に示している。いずれの場合も、2つの昇降路A,Bと3つのかご1号機~3号機とを備えている。タイムテーブルは、号機毎に、経過時間に対応する、昇降路、階床、かごの位置、速度上限、積載上限から作成される。
【0035】
【表1】
【0036】
表1に基づいて、3つのかご(1号機)~(3号機)K1~K3について説明する。昇降路Aの昇降駆動装置2に昇降路Bの昇降駆動装置5が同一高さ位置(階床は1階)に位置している状態(図1参照)において、昇降路Aの昇降駆動装置2に結合しているかご(1号機)K1が1秒後に昇降路Bの昇降駆動装置5への移動を開始し(表1では昇降路AB)、5秒後にかご(1号機)K1が昇降路Bの昇降駆動装置5への移動を完了する(表1では昇降路B)。表1では0秒から1秒まではかご(1号機)K1が高さ位置0mm(階床は1階)に位置し、1秒から2秒の間にかご(1号機)K1が高さ位置0mm(階床は1階)で昇降路B側へ1000mm横移動(図1では右側へ移動)している。3秒経過すると、かご(1号機)K1が高さ位置0mm(階床は1階)で昇降路B側へ2000mm横移動(図1では右側へ移動)し、4秒経過すると、かご(1号機)K1が高さ位置0mm(階床は1階)で昇降路B側へ3000mm横移動(図4では右側へ移動)している。5秒経過すると、かご(1号機)K1が高さ位置0mm(階床は1階)で昇降路Bへの移動が完了している。尚、昇降路Aは、左右方向0mm(原点)の位置とし、昇降路Bは、原点から3000mm右側に移動した位置としている。昇降路Bへの移動が完了すると、かご(1号機)が結合している昇降路Bの昇降駆動装置5の上昇を開始し、5秒から20秒までの間にかご(1号機)K1が高さ位置12000mm(階床は5階)まで上昇して停止する。昇降路Bの昇降駆動装置5に結合しているかご(1号機)K1が21秒(表1では昇降路BA)から昇降路Aの昇降駆動装置4への移動を開始し、25秒後にかご(1号機)K1が昇降路Aの昇降駆動装置4への移動を完了する(表1では昇降路A)。表1では20秒から21秒まではかご(1号機)K1が高さ位置12000mm(階床は5階)に位置し、21秒から22秒の間にかご(1号機)K1が高さ位置12000mm(階床は5階)で昇降路A側へ1000mm横移動(図4では左側へ移動)している。23秒経過すると、かご(1号機)K1が高さ位置12000mm(階床は1階)で昇降路A側へ2000mm横移動(図4では左側へ移動)し、24秒経過すると、かご(1号機)K1が高さ位置12000mm(階床は1階)で昇降路A側へ3000mm横移動(図1では左側へ移動)している。25秒経過すると、かご(1号機)K1が高さ位置12000mm(階床は1階)で昇降路Aへの移動が完了している。昇降路Aへの移動が完了すると、かご(1号機)が結合している昇降路Aの昇降駆動装置4の上昇を開始し、32秒後に18000mmの高さ位置(階床は7階)となり、35秒後には、かご(1号機)K1が高さ位置21000mm(階床は8階)まで上昇して停止する。また、かご(2号機)K2は、昇降路Aにおいて9000mmの高さ位置(階床は4階)から3000mmの高さ位置(階床は2階)まで下降して20秒から35秒まで停止している。また、かご(3号機)K3は、昇降路Bにおいて15000mmの高さ位置(階床は6階)から21000mmの高さ位置(階床は8階)まで上昇して20秒から35秒まで停止している。
【0037】
表1の3つのかご(1号機)~(3号機)K1~K3の移動を図4に示している。図4に基づいて説明すると、かご(1号機)K1は、1階の昇降路Aから1階の昇降路Bに移動した後、昇降路Bの5階まで上昇し、昇降路Bの5階から昇降路Aの5階へ移動する。昇降路Aの5階への移動が完了すると、昇降路Aの8階まで上昇する。かご(2号機)K2は、昇降路Aの4階から2階まで下降して35秒経過するまで停止した状態のままである。かご(3号機)K3は、昇降路Bの6階から8階まで上昇して35秒経過するまで停止した状態のままである。この動きでは、かご(1号機)K1が、他のかご(2号機)K2及びかご(3号機)K3と干渉することがないため、タイムテーブルを書き換えることなく、3つのかご(1号機)~(3号機)K1~K3を運行させることになる。
【0038】
【表2】
【0039】
表2及び図5に基づいて、3つのかご(1号機)~(3号機)K1~K3について説明する。かご(1号機)K1は、緊急輸送のため、昇降路Aの1階から8階まで一気に上昇する。かご(2号機)K2は、昇降路Bの4階に停止していて、昇降路Aを上昇しているかご(1号機)K1が5階に上昇した時点で昇降路Bから昇降路Aへ移動する。この移動は、経過時間が12秒後から移動開始し、前述したように、昇降路Bは原点から3000mm右側の位置であり、経過時間が13秒で原点から2000mm右側の位置まで移動する。経過時間が14秒で原点から1000mm右側の位置まで移動し、経過時間が15秒で原点(0mm)、つまり昇降路Aまで移動する。昇降路Aへ移動したかご(2号機)K2は、23秒経過するまで4階に停止したままである。かご(3号機)K3は、6階から8階へ上昇し、23秒経過するまで停止状態のままである。この例では、群管理サーバー10は、かご(2号機)K2が、昇降路Aを上昇しているかご(1号機)と干渉してしまうことを回避するために、かご(1号機)K1が5階まで上昇するまで昇降路Bから昇降路Aへの移動を禁止するようにタイムテーブル(運行情報)を補正する。また、かご(3号機)K3では、積載上限を最大積載量の50%に制限してエネルギー消費を抑制している。かご(1号機)K1が4階を通過した後に、かご(2号機)K2が昇降路Aへ移動する際には、かご(2号機)K2に結合する昇降駆動装置が昇降路Aの4階に移動しておく必要がある。このかご(2号機)K2に結合する昇降駆動装置は、1階にいるかご(1号機)K1より下に設けられたガレージ階(人の乗り降りはしない)に待機しており、かご(1号機)K1が8階に向かって上昇を開始してから、前記かご(2号機)K2に結合する昇降駆動装置の上昇を開始し、かご(2号機)K2の昇降路Aへの移動が完了するまでに当該昇降駆動装置が昇降路Aの4階に移動するように駆動が制御される。また、最上階(ここでは8階)よりも上にも昇降駆動装置を待機できるガレージ階(人の乗り降りはしない)を設けておけば、下側の昇降駆動装置が最上階に移動する際は、上側の昇降駆動装置が最上階よりも上のガレージ階に移動することで下側の昇降駆動装置が最上階に移動することができ、また、上側の昇降駆動装置が最下階(ここでは1階)に移動する際は、下側の昇降駆動装置が1階より下のガレージ階に移動することで上側の昇降駆動装置が最下階に移動することができる。
【0040】
【表3】
【0041】
表3及び図6では、作成した表1のタイムテーブルにおいて、かご(3号機)K3が、昇降路Bの6階で20秒停止していたため、20秒後からのタイムテーブルを作成し、表3としている。表3と表1との違いは、かご(3号機)K3が、20秒後から上昇を開始している点である。図6では、20秒後は、かご(1号機)K1が昇降路Aの5階に位置し、かご(2号機)K2が昇降路Aの2階に位置している状態である。尚、新たなタイムテーブルを作成したので、表3において、開始時間(経過時間)を0秒としている。そして、かご(3号機)K3のタイムテーブルを見れば、6階から上昇を開始し、20秒後に8階まで上昇し、35秒経過するまで8階で停止している。このように作成したタイムテーブルに沿って移動していないかご(3号機)K3があれば、直ちにタイムテーブルを作成し直すことになる。
【0042】
【表4】
【0043】
表4及び図7では、かご(2号機)K2が故障して動けなくなった状態であるため、表4は、表1のタイムテーブルを作成し直したタイムテーブルである。つまり、かご(2号機)K2のみを書き換えたタイムテーブルとなっており、0秒から35秒まで4階に停止した状態に書き換えている。他のかご(1号機)K1、かご(3号機)K3は、表1と同じである。
【0044】
本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではない。
【0045】
前記実施形態では、2つの昇降路A,Bと3つのかごK1,K2,K3とを設けたが、昇降路を3つ以上の任意の個数とし、かごを4つ以上の任意の個数としてもよい。尚、かごの個数は、複数の昇降路の数に対して少なくとも1つ多い個数とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0046】
1…ガイドレール、2~6…昇降駆動装置、2A~6A…凹部、7…係合部、10…群管理サーバー、11…昇降駆動装置マイコン、12…かご制御マイコン、A,B…昇降路、K1,K2,K3…かご
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-10-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合うように配置される複数の昇降路と、該複数の昇降路を移動する複数のかごと、を備え、
該複数のかごのうちの少なくとも1つのかごが隣り合う前記昇降路へ移動可能に構成され、
階床でのエレベータの呼び情報及び各かごの行先階情報に応じて移動する全てのかごの運行情報に基づいて該全てのかごの運行を制御する制御部を備え、
該制御部は、複数の昇降路のうちの一方の昇降路の所定の階床から他方の昇降路の所定の階床へ前記少なくとも1つのかごを横移動させる時に、前記運行情報を補正しても、前記他方の昇降路において昇降している他のかごが前記少なくとも1つのかごに干渉すると判断した場合には、前記他方の昇降路において昇降している他のかごから横移動する前記少なくとも1つのかごまでの距離が、前記他のかごの現在位置から通常時の減速度で減速したときに停止できる位置までの距離に所定の過走余裕距離を加算した仮想距離よりも短いと計算により判明したとき、通常時の減速度よりも大きな減速度である緊急時の減速度で前記昇降している他のかごを減速させることを特徴とするエレベータにおける複数のかごの運行管理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記階床でのエレベータの呼び情報及び前記各かごの行先階情報並びに各かごの位置情報に基づいて、各かごに出発要請、出発遅延要請、速度制限要請、迂回要請、退避要請を盛り込んだ運行情報となるタイムテーブルを作成することを特徴とする請求項1に記載のエレベータにおける複数のかごの運行管理装置。