(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065878
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】モータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02P 6/18 20160101AFI20230508BHJP
【FI】
H02P6/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176269
(22)【出願日】2021-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】野▲崎▼ 優
【テーマコード(参考)】
5H560
【Fターム(参考)】
5H560BB04
5H560DA12
5H560DA14
5H560DB12
5H560DB14
5H560DC06
5H560DC13
5H560EB01
5H560TT11
5H560TT15
5H560XA12
(57)【要約】
【課題】本体制御回路とモータ駆動装置とのやり取りをする5本の線のみで、DCモータの回転方向の切り換えを制御できるモータ駆動装置を提供することにある。
【解決手段】下側閾電圧~上側閾電圧の範囲内の速度指令入力VSPからDCモータ3の回転速度を指示する速度指令値spを生成する速度指令値生成部と、上側閾電圧よりも高い指令判別閾電圧を上回る速度指令入力VSPの入力パターンに基づいて、速度指令入力VSPに含まれる回転方向切換指令を判別する速度指令判別部44と、DCモータ3の回転方向を時計回りCWと反時計周りCCWとのいずれかに設定し、速度指令判別部44によって回転方向切換指令が判別されると、設定している回転方向を切り換える回転方向設定部45と、速度指令値spの回転速度で回転方向設定部45に設定された回転方向にDCモータ3を回転させる回転制御部47と、を具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
速度指令入力に基づいてモータの回転速度を制御するモータ駆動装置であって、
下側閾電圧~上側閾電圧の範囲内の前記速度指令入力から前記モータの回転速度を指示する速度指令値を生成する速度指令値生成部と、
前記上側閾電圧よりも高い指令判別閾電圧を上回る前記速度指令入力の他指令入力パターンに基づいて、前記速度指令入力に含まれる回転方向切換指令を判別する指令判別部と、
前記モータの回転方向を時計回りと反時計周りとのいずれかに設定し、前記指令判別部によって前記回転方向切換指令が判別されると、設定している回転方向を切り換える回転方向設定部と、
前記速度指令値の回転速度で前記回転方向設定部に設定された回転方向に前記モータを回転させる回転制御部と、を具備することを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項2】
前記指令判別部は、前記回転方向切換指令を判別する前記他指令入力パターンとは異なる前記他指令入力パターンに基づいて、テストモード指令を判別し、
前記回転制御部は、前記指令判別部によって前記テストモード指令が判別されると、予め設定されたテストモードで前記モータを回転させることを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
前記モータから入力信号に基づいて、前記モータのステータに対するロータの位置を推定し、前記モータの回転数をモニタするための回転数検出出力を出力する位置推定部を具備し、
前記位置推定部は、前記回転方向設定部に設定された回転方向に応じて異なる仕様の前記回転数検出出力を出力することを特徴とする請求項1又は2に記載のモータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータを有するモータ装置に備えられ、外部から供給される電源や制御信号に基づいてモータを駆動するモータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図4を参照すると、供給される電源や制御信号に基づいてDCモータ3を駆動するモータ駆動装置4を備えたモータ装置2が各種の電気機器1に用いられている(例えば、特許文献1参照)。モータ駆動装置4は、モータ駆動用の半導体ICとしてモータ装置2に備えられている。モータ駆動装置4は、U相出力U、V相出力V、W相出力W、U相ホール素子信号入力HU、V相ホール素子信号入力HV、W相ホール素子信号入力HW等のDCモータ3に接続される端子を有する。また、モータ駆動装置4は、DC電源入力VBB、制御回路電源入力VCC、グランド接続COM、速度指令入力VSP、回転数検出出力FG、回転方向設定入力信号CW/CCW等の電源供給や制御信号の入出力用の端子を有する。
【0003】
モータ装置2を製造するモータメーカーと、モータ装置を用いた電気機器1(本体制御回路11)を製造するセットメーカーとの間では、合計5本の線で信号をやり取りすることで、モータ装置2を動作させることが取り決められている場合がある。取り決められている場合の5本の線は、DC電源入力VBB、制御回路電源入力VCC、グランド接続COM、速度指令入力VSP、回転数検出出力FGである。
【0004】
取り決められている場合の5本の線には、回転方向設定入力信号CW/CCWは、含まれていない。従って、回転方向設定入力信号CW/CCWは、モータ駆動用の半導体ICを基盤に実装した時点で設定され、DCモータの回転方向を固定する使用方法が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年では、電気機器1(本体制御回路11)側の制御によってDCモータ3の回転方向の切り換えを制御可能にすることが要望されている場合がある。
【0007】
本発明の目的は、本体制御回路11とモータ駆動装置4とのやり取りをする5本の線のみで、DCモータ3の回転方向の切り換えを制御できるモータ駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のモータ駆動装置は、速度指令入力に基づいてモータの回転速度を制御するモータ駆動装置であって、下側閾電圧~上側閾電圧の範囲内の前記速度指令入力から前記モータの回転速度を指示する速度指令値を生成する速度指令値生成部と、前記上側閾電圧よりも高い指令判別閾電圧を上回る前記速度指令入力の他指令入力パターンに基づいて、前記速度指令入力に含まれる回転方向切換指令を判別する指令判別部と、前記モータの回転方向を時計回りと反時計周りとのいずれかに設定し、前記指令判別部によって前記回転方向切換指令が判別されると、設定している回転方向を切り換える回転方向設定部と、前記速度指令値の回転速度で前記回転方向設定部に設定された回転方向に前記モータを回転させる回転制御部と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、本体制御回路とモータ駆動装置とのやり取りをする5本の信号線に含まれる速度指令入力VSPを用いてDCモータ3の回転方向の切り換えを制御できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るモータ駆動装置の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す速度指令判定部の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1に速度指令入力VSPの入力パターン例を示す図である。
【
図4】モータ装置を備えた電気機器の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態において、同様の機能を示す構成には、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0012】
本実施の形態のモータ駆動装置40は、
図1を参照すると、電源回路41と、インバータ42と、ドライバ43と、速度指令判定部44と、回転方向設定部45と、位置推定部46と、回転制御部47と、を備えている。
【0013】
電源回路41は、制御回路電源入力VCCから内部電源電圧を生成する電圧レギュレーターである。
【0014】
インバータ42は、ブリッジ接続されたスイッチ素子を備え、DC電源入力VBBを交流の駆動電力(U相出力U、V相出力V、W相出力W)に変換して、変換した駆動電力をDCモータ3に供給する。
【0015】
速度指令判定部44は、
図2を参照すると、速度指令入力VSPから速度指令値spを生成する速度指令値生成部441と、速度指令入力VSPを分圧する分圧回路442と、分圧回路442によって分圧された電位を予め設定された基準電位V
refと比較する比較器443と、比較器443の出力に基づいて速度指令入力VSPに含まれる他の指令を判別する指令判別部444とを備えている。
【0016】
DCモータ3の回転速度は、速度指令入力VSPによって制御される。速度指令値生成部441は、下側閾電圧VspL~上側閾電圧VspHの範囲内の速度指令入力VSPをAD変換してDCモータ3の回転速度を指示する速度指令値spを生成し、生成した速度指令値spを回転制御部47に出力する。
【0017】
比較器443は、速度指令入力VSPが上側閾電圧VspHよりも高く最大定格電圧VHよりも低い値に設定された指令判別閾電圧Vthを上回ると、Hiレベル信号を出力する。換言すると、分圧回路442による分圧比と、基準電位Vrefとは、速度指令入力VSPが指令判別閾電圧Vthを上回ると、比較器443からHiレベル信号が出力されるように、設定されている。
【0018】
指令判別部444は、比較器443から出力されるHiレベル信号の出力パターン、すなわち、指令判別閾電圧Vthを上回る速度指令入力VSPの入力パターンに基づいて、速度指令入力VSPに含まれる他の指令を判別する。なお、指令判別部444による判別は、モータ駆動装置40の起動時に実行される。
【0019】
指令判別部444は、
図3(a)に示すように、速度指令入力VSPが指令判別閾電圧V
thを上回り、比較器443から出力されるHiレベル信号が予め設定された所定時間Ta以上継続した場合、速度指令入力VSPに含まれる他の指令をテストモード指令と判別し、テストモード指示信号testを回転制御部47に出力する。
【0020】
また、指令判別部444は、
図3(b)に示すように、速度指令入力VSPが指令判別閾電圧V
thを定期的に上回り、比較器443から出力されるHiレベル信号が所定時間Taよりも短い所定時間Tbのパルスとして予め設定された回数(例えば、4回)以上継続した場合、速度指令入力VSPに含まれる他の指令を回転方向切換指令と判別し、回転方向切換指示信号switchを回転方向設定部45に出力する。
【0021】
なお、指令判別部444によってテストモード指令と回転方向切換指令と判別可能であれば、指令判別閾電圧Vthを上回る速度指令入力VSPの入力パターンには、特に制限はない。例えば、テストモード指令と回転方向切換指令とを、指令判別閾電圧Vthを上回る速度指令入力VSPの入力パターンのパルス幅、デューティ、パルス振幅、パルス数のいずれかもしくは組み合わせで判別可能にしても良い。
【0022】
回転方向設定部45は、DCモータ3の回転方向を時計回りCWと反時計周りCCWとのいずれかに設定する。回転方向設定部45は、指令判別部444から回転方向切換指示信号switchが入力されると、設定している回転方向を切り換える。回転方向設定部45は、回転方向を時計回りCWに設定している状態で、回転方向切換指示信号switchが入力されると、回転方向を反時計周りCCWに切り換え、回転方向を反時計周りCCWに設定している状態で、回転方向切換指示信号switchが入力されると、回転方向を時計回りCWに切り換える。
【0023】
位置推定部46と、DCモータ3から入力されるU相ホール素子信号入力HU、V相ホール素子信号入力HV、W相ホール素子信号入力HWに基づいて、DCモータ3のステータに対するロータの位置を推定し、位置推定信号を回転制御部47に出力する。
【0024】
また、位置推定部46は、DCモータ3から入力されるU相ホール素子信号入力HU、V相ホール素子信号入力HV、W相ホール素子信号入力HWに基づいて、DCモータ3の回転数をモニタするための回転数検出出力FGを生成する。
【0025】
位置推定部46によって生成される回転数検出出力FGは、回転方向設定部45に設定されているDCモータ3の回転方向(CWorCCW)に対応して2つの異なる仕様が用意されている。例えば、回転方向設定部45が回転方向を時計回りCWに設定している場合、DCモータ3が1周回転する際に4回パルスを出力する設定を回転数検出出力FGの第1の仕様とし、回転方向設定部45が回転方向を反時計周りCCWに設定している場合、DCモータ3が1周回転する際に回転数検出出力FGから12回パルスを出力する設定を回転数検出出力FGの第2の仕様とする。なお、回転数検出出力FGの2つの異なる仕様は、回転数検出出力FGを用いてセットメーカー側の機器でDCモータ3の回転方向を判別可能であれば良い。従って、回転数検出出力FGの2つの異なる仕様は、パルス幅、デューティ、パルス振幅、パルス数のいずれかもしくは組み合わせで判別可能にしても良い。
【0026】
回転制御部47は、速度指令値生成部441から入力される速度指令値spと、位置推定部46から入力される位置推定信号とに基づいて、DCモータ3を速度指令値spの回転速度で回転方向設定部45に設定された回転方向(CWorCCW)に回転させる駆動制御信号をドライバ43に出力し、ドライバ43は、インバータ42を駆動制御するための駆動信号を生成し、生成した駆動信号をインバータ42に出力する。
【0027】
また、回転制御部47は、指令判別部444からテストモード指示信号testが入力された場合、予め設定されたテストモードでDCモータ3を回転させる駆動制御信号をドライバ43に出力する。
【0028】
以上説明したように、本実施の形態によれば、アナログ電圧である速度指令入力VSPに基づいてDCモータ3の回転速度を制御するモータ駆動装置40であって、下側閾電圧VspL~上側閾電圧VspHの範囲内の速度指令入力VSPからDCモータ3の回転速度を指示する速度指令値spを生成する速度指令値生成部441と、上側閾電圧VspHよりも高い指令判別閾電圧Vthを上回る速度指令入力VSPの入力パターン(他指令入力パターン)に基づいて、速度指令入力VSPに含まれる回転方向切換指令を判別する指令判別部444と、DCモータ3の回転方向を時計回りCWと反時計周りCCWとのいずれかに設定し、指令判別部444によって回転方向切換指令が判別されると、設定している回転方向を切り換える回転方向設定部45と、速度指令値spの回転速度で回転方向設定部45に設定された回転方向にDCモータ3を回転させる回転制御部47と、を具備する。
この構成により、モータメーカーとセットメーカーとの間で取り決められている5本の信号線に含まれる速度指令入力VSPを用いてDCモータ3の回転方向の切り換えを制御できる。
【0029】
さらに、本実施の形態は、指令判別部444は、回転方向切換指令を判別する他指令入力パターンとは異なる他指令入力パターンに基づいて、テストモード指令を判別し、回転制御部47は、指令判別部444によってテストモード指令が判別されると、予め設定されたテストモードでDCモータ3を回転させる。
この構成により、速度指令入力VSPによってテストモード指令と回転方向切換指令とを受け付けることができる。
【0030】
さらに、本実施の形態によれば、DCモータ3から入力信号に基づいて、DCモータ3のステータに対するロータの位置を推定し、DCモータ3の回転数をモニタするための回転数検出出力FGを出力する位置推定部46を備え、位置推定部46は、回転方向設定部45に設定された回転方向に応じて異なる仕様の回転数検出出力FGを出力する。
この構成により、モータメーカーとセットメーカーとの間で取り決められている5本の信号線に含まれる回転数検出出力FGによってDCモータ3の回転方向を判別できる。
【0031】
以上、本発明を具体的な実施形態で説明したが、上記実施形態は一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0032】
1 電気機器
2 モータ装置
3 DCモータ
4、40 モータ駆動装置
11 本体制御回路
41 電源回路
42 インバータ
43 ドライバ
44 速度指令判定部
45 回転方向設定部
46 位置推定部
47 回転制御部
441 速度指令値生成部
442 分圧回路
443 比較器
444 指令判別部