(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006588
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】面状発熱体、光学装置、および面状発熱体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05B 3/20 20060101AFI20230111BHJP
H05B 3/86 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
H05B3/20 312
H05B3/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021109269
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000220033
【氏名又は名称】東京コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶 真志
(72)【発明者】
【氏名】西川 将史
【テーマコード(参考)】
3K034
【Fターム(参考)】
3K034AA07
3K034AA15
3K034BB13
3K034BC14
3K034JA01
3K034JA07
(57)【要約】
【課題】透明電極の温度制御をより簡単に実現することができる面状発熱体、光学装置、および面状発熱体の製造方法を提供すること。
【解決手段】面状発熱体は、通電により発熱する透明電極が第1面に設けられた絶縁シートと、第1面の裏面である第2面に設けられ、透明電極と直列に接続されたPTC(Positive Temperature Coefficient)素子と、透明電極上において互いに離間して設けられた第1電極および第2電極と、を有する。透明電極は、その厚みと同じ深さを備えた溝部を境界として電気的に絶縁する第1領域、第2領域、および第3領域を含む。第1電極の一端は第1領域に設けられ、第1電極の他端は第3領域に設けられる。第2電極の一端は第2領域に設けられ、第2電極の他端は第3領域に設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により発熱する透明電極が第1面に設けられた絶縁シートと、
前記第1面の裏面である第2面に設けられ、前記透明電極と直列に接続されたPTC(Positive Temperature Coefficient)素子と、
前記透明電極上において互いに離間して設けられた第1電極および第2電極と、を有し、
前記透明電極は、前記透明電極の厚みと同じ深さを備えた溝部を境界として電気的に絶縁する第1領域、第2領域、および第3領域を含み、
前記第1電極の一端は前記第1領域に設けられ、前記第1電極の他端は前記第3領域に設けられ、
前記第2電極の一端は前記第2領域に設けられ、前記第2電極の他端は前記第3領域に設けられる、
面状発熱体。
【請求項2】
前記透明電極と前記PTC素子は、前記絶縁シートを貫通して設けられる端子を介して接続されている、
請求項1に記載の面状発熱体。
【請求項3】
前記PTC素子は、前記第1面における前記第3領域の位置に対応するように、前記第2面に設けられている、
請求項1または2に記載の面状発熱体。
【請求項4】
前記溝部は、
レーザ加工、または、金型を用いたハーフカットにより形成される、
請求項1から3のいずれか1項に記載の面状発熱体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の面状発熱体を備えた光学装置。
【請求項6】
通電により発熱する透明電極を絶縁シートの第1面に設け、
前記第1面の裏面である第2面にPTC(Positive Temperature Coefficient)素子を設け、前記PTC素子と前記透明電極とを直列に接続し、
前記透明電極において、前記透明電極の厚みと同じ深さを備えた溝部を形成することにより、前記溝部を境界として電気的に絶縁する第1領域、第2領域、および第3領域を形成し、
前記透明電極上において互いに離間する第1電極および第2電極を設け、
前記第1電極の一端を前記第1領域に設け、前記第1電極の他端を前記第3領域に設け、
前記第2電極の一端を前記第2領域に設け、前記第2電極の他端を前記第3領域に設ける、
面状発熱体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、面状発熱体、光学装置、および面状発熱体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通電により発熱する透明電極(透明導電膜と言ってもよい)を備えた面状発熱体が知られている。この面状発熱体は、例えば、自動車のガラス窓に取り付けられ、透明電極の発熱により、ガラス窓における凍結や曇りを抑制することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来では、透明電極自体に温度制御機能が備わっていないため、面状発熱体の外部に設けられた制御用デバイス(例えば、サーミスタやサーモスタット等)を用いて、透明電極の温度を制御する必要があった。
【0005】
本開示の一態様の目的は、透明電極の温度制御をより簡単に実現することができる面状発熱体、光学装置、および面状発熱体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る面状発熱体は、通電により発熱する透明電極が第1面に設けられた絶縁シートと、前記第1面の裏面である第2面に設けられ、前記透明電極と直列に接続されたPTC(Positive Temperature Coefficient)素子と、前記透明電極上において互いに離間して設けられた第1電極および第2電極と、を有し、前記透明電極は、前記透明電極の厚みと同じ深さを備えた溝部を境界として電気的に絶縁する第1領域、第2領域、および第3領域を含み、前記第1電極の一端は前記第1領域に設けられ、前記第1電極の他端は前記第3領域に設けられ、前記第2電極の一端は前記第2領域に設けられ、前記第2電極の他端は前記第3領域に設けられる。
【0007】
本開示の一態様に係る光学装置は、本開示の一態様に係る面状発熱体を備える。
【0008】
本開示の一態様に係る面状発熱体の製造方法は、通電により発熱する透明電極を絶縁シートの第1面に設け、前記第1面の裏面である第2面にPTC(Positive Temperature Coefficient)素子を設け、前記PTC素子と前記透明電極とを直列に接続し、前記透明電極において、前記透明電極の厚みと同じ深さを備えた溝部を形成することにより、前記溝部を境界として電気的に絶縁する第1領域、第2領域、および第3領域を形成し、前記透明電極上において互いに離間する第1電極および第2電極を設け、前記第1電極の一端を前記第1領域に設け、前記第1電極の他端を前記第3領域に設け、前記第2電極の一端を前記第2領域に設け、前記第2電極の他端を前記第3領域に設ける。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、透明電極の温度制御をより簡単に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施の形態に係る面状発熱体の分解斜視図
【
図2】本開示の実施の形態に係る絶縁シートの第1面側(レーザ加工前)を示す正面図
【
図3】本開示の実施の形態に係る絶縁シートの第1面側(レーザ加工後)を示す正面図
【
図4】本開示の実施の形態に係る絶縁シートの第1面側(両面テープ取付前)を示す正面図
【
図5】本開示の実施の形態に係る絶縁シートの第2面側(保護フィルム取付前)を示す正面図
【
図6】本開示の実施の形態に係る絶縁シートの第2面側(保護フィルム取付後)を示す正面図
【
図7】本開示の実施の形態に係る絶縁シートの第2面に設けられる電極を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態に係る面状発熱体100について、
図1~
図7を参照しながら説明する。なお、各図において共通する構成要素については同一の符号を付し、それらの説明は適宜省略する。
【0012】
【0013】
図1に示すように、面状発熱体100は、両面テープ1、電極2、3、絶縁シート6、電極7、PTC素子8、9、端子10、11、12、保護フィルム13を有する。
【0014】
絶縁シート6の第1面の加工方法について、
図2~
図4を用いて説明する。
【0015】
絶縁シート6の第1面は、例えば
図1に示した面であり、以下では、単に「第1面」ともいう。また、以下では、絶縁シート6の第1面の裏面を、「第2面」という。
【0016】
図2~
図4は、絶縁シート6の第1面側を示す正面図である。
図2は、第1面に対してレーザ加工が実行される前の状態を示している。
図3は、第1面に対してレーザ加工が実行された後の状態を示している。
図4は、
図3に示した第1面において
図1に示した電極2、3が設けられた状態(
図1に示した両面テープ1が取り付けられる前の状態)を示している。
【0017】
絶縁シート6は、電気的な絶縁性を有するシート状の透明部材である。まず、
図2に示すように、絶縁シート6の第1面の全体には、通電により発熱する透明電極Aが設けられる。
【0018】
次に、
図2に示した透明電極Aに対して、例えばレーザ加工が行われる。これにより、
図3に示すように、溝部6a、6b、6cが形成される。なお、溝部6a、6b、6cは、例えば、金型を用いたハーフカットにより形成されてもよい。レーザ加工、および、金型を用いたハーフカットについては公知の技術を用いることができる。
【0019】
溝部6a、6bは、縦方向(絶縁シート6の短辺方向。以下同様)に沿って、絶縁シート6の上端から下端にかけて設けられている。
【0020】
溝部6cは、横方向(絶縁シート6の長辺方向。以下同様)に沿って、絶縁シート6の右端から溝部6bにかけて設けられている。
【0021】
溝部6a~6cそれぞれの深さは、透明電極Aの厚みと同じである。
【0022】
上述した溝部6a、6b、6cの形成により、透明電極Aは、
図3に示すように、第1領域21、第2領域22、第3領域23、第4領域24に分割される。
【0023】
第1領域21と第2領域22とは、溝部6cを境界として電気的に絶縁している。第1領域21と第3領域23とは、溝部6bを境界として電気的に絶縁している。第2領域22と第3領域23とは、溝部6bを境界として電気的に絶縁している。第3領域23と第4領域24とは、溝部6aを境界として電気的に絶縁している。
【0024】
次に、
図3に示した第1面に対して、導電部としての電極2、3が設けられる。
図4に示すように、電極2と電極3は、互いに離間して設けられる。
【0025】
電極2(第1電極の一例)は、第1面の上方部分において、横方向に延伸して設けられている。電極2の一端は、第1領域21上に設けられており、電極2の他端は、第3領域23上に設けられている。電極2における横方向への延伸部分は、第3領域23と導通している。
【0026】
電極3(第2電極の一例)は、一部分が第1面の下端において横方向に延伸して設けられ、一部分が第1面の右端部分において縦方向に延伸して設けられている。電極3の一端は、第2領域22上に設けられており、電極3の他端は、第3領域23上に設けられている。電極3における横方向への延伸部分は、第3領域23と導通している。
【0027】
図4に示す端子10~12については後述する。なお、
図4に示す点線は、
図1、
図6に示す保護フィルム13の下端部分を示している。
【0028】
図4に示した絶縁シート6の第1面には、その全体を被覆するように、
図1に示した両面テープ1が取り付けられる。両面テープ1は、両面に粘着力を有する透明部材である。
【0029】
図5、
図6は、絶縁シート6の第2面側を示す正面図である。
図5は、
図1に示した保護フィルム13が取り付けられる前の状態を示している。
図6は、
図1に示した保護フィルム13が取り付けられた後の状態を示している。
【0030】
図5に示すように、絶縁シート6の第2面側の上方部分には、導電部としての電極7と、電流制御部としてのPTC(Positive Temperature Coefficient)素子8、9とが設けられている。なお、PTC素子は、PTC抵抗体と言ってもよい。
【0031】
電極7の形状を
図7に示す。
図7に示すように、電極7は、櫛歯形状部14、15と、端部16、17とを有する。
【0032】
櫛歯形状部14にはPTC素子8が設けられ、櫛歯形状部15にはPTC素子9が設けられる(
図5参照)。
【0033】
PTC素子8、9は、
図4に示した透明電極A(具体的には、第3領域23)の裏面側に設けられている。すなわち、PTC素子8、9は、第1面における透明電極A(具体的には、第3領域23)の位置に対応するように、第2面に設けられていると言える。
【0034】
また、端部16には端子10が取り付けられ、端部17には端子12が取り付けられる(
図5参照)。
【0035】
端子10~12は、絶縁シート6の第1面側と第2面側とを導通させるための導電部材である。
【0036】
端子10は、電極7、絶縁シート6(第4領域24を含む)を貫通して設けられている。端子10の第2面側(
図5、
図6参照)には、図示しないリード線が接続される。
【0037】
端子11は、絶縁シート6(第1領域21を含む)、電極2を貫通して設けられている。端子11は、電極2(具体的には、第1領域21に位置する電極2の一端)と導通する。端子11の第2面側(
図5、
図6参照)には、図示しないリード線が接続される。
【0038】
端子12は、電極7、絶縁シート6(第2領域22を含む)、電極3を貫通して設けられている。電極3(具体的には、第2領域22に位置する電極3の一端)と電極7(具体的には、
図7に示した端部17)とは、端子12を介して導通する。
【0039】
図5に示した絶縁シート6の第2面には、電極7およびPTC素子8、9を被覆するように、
図1に示した保護フィルム13が取り付けられる(
図6参照)。
【0040】
保護フィルム13は、非透明部材である。保護フィルム13には、端子10~12それぞれの取付位置に対応するように、開口部(符号略)が設けられている。これにより、保護フィルム13を第2面に取り付けた場合、
図6に示すように、端子10~12は、各開口部から露出する。
【0041】
上述のように構成された面状発熱体100における電流の流れについて、説明する。なお、ここでは、電流の入力端が端子11であり、電流の出力端が端子10である場合を例に挙げて、説明する。
【0042】
端子11の第2面側に接続されたリード線(図示略)から端子11に流れ込んだ電流は、まず、絶縁シート6の第1面側を流れる。具体的には、電流は、
図4において、電極2、透明電極A(具体的には、第3領域23)、電極3の順に流れ、端子12に到達する。このとき、透明電極Aは発熱する。これにより、面状発熱体100が取り付けられた対象物(例えば、後述する光学装置の透明部材)は加温される。
【0043】
端子12の第1面側に達した電流は、その後、絶縁シート6の第2面側を流れる。具体的には、電流は、
図5において、電極7、PTC素子8、9を流れて、端子10に到達する。そして、電流は、端子10の第2面側に接続されたリード線(図示略)へ流れ出る。
【0044】
このような電流の流れから、PTC素子8、9は、電極3、端子12、および電極7を介して、透明電極A(第3領域23)と直列に接続されていると言うことができる。
【0045】
なお、電流の入力端および出力端をそれぞれ端子10、11としてもよい。その場合、電流は、上述した順とは逆に流れる。
【0046】
上述した面状発熱体100は、
図1に示した両面テープ1により、光学装置の透明部材(例えば、撮像素子の前方に設けられる保護ガラス等)に取り付けられる。光学装置としては、例えば、車両の周辺の状況を検知する車載カメラ(衝突防止カメラと言ってもよい)、建物等に取り付けられる監視カメラ、車載電子ドアミラー等が挙げられるが、これらに限定されない。なお、面状発熱体100は、光学装置以外に設けられる透明部材(例えば、車両のガラス窓等)に取り付けられてもよい。
【0047】
以上説明したように、本実施の形態の面状発熱体100は、通電により発熱する透明電極Aが第1面に設けられた絶縁シート6と、第1面の裏面である第2面に設けられ、透明電極Aと直列に接続されたPTC素子8、9と、透明電極A上において互いに離間して設けられた電極2、3と、を有し、透明電極Aは、その厚みと同じ深さを備えた溝部6a~6cを境界として電気的に絶縁する第1領域21、第2領域22、および第3領域23を含み、電極2の一端は第1領域21に設けられ、電極2の他端は第3領域23に設けられ、電極3の一端は第2領域22に設けられ、電極3の他端は第3領域23に設けられることを特徴とする。
【0048】
これにより、絶縁シート6の第1面に設けられた透明電極Aの温度の制御を、絶縁シート6の第2面に設けられたPTC素子8、9により行うことができる。すなわち、面状発熱体100は、外部に設けられた制御用デバイス(例えば、サーミスタやサーモスタット等)を用いて、透明電極Aにおける温度を制御する必要がないため、従来に比べて、透明電極Aにおける温度制御をより簡単に実現することができる。
【0049】
また、本実施の形態の面状発熱体100では、PTC素子8、9が第1面における透明電極A(例えば、第3領域23)の位置に対応するように第2面に設けられていることを特徴とする。これにより、透明電極A(例えば、第3領域23)の温度が迅速にPTC素子8、9に伝わるため、透明電極Aにおける温度制御をより精度良く実現することができる。
【0050】
なお、本開示は、上記実施の形態の説明に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【0051】
実施の形態では、2つのPTC素子8、9を設ける場合を例に挙げて説明したが、PTC素子の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。複数のPTC素子を設けた場合では、安定的な温度制御を実現することができるので、より好ましい。
【0052】
また、面状発熱体100に含まれる各構成要素の形状やサイズは、図示したものに限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本開示の面状発熱体は、透明電極を有する面状発熱体、光学装置、および面状発熱体の製造方法に有用である。
【符号の説明】
【0054】
1 両面テープ
2、3、7 電極
6 絶縁シート
6a、6b、6c 溝部
8、9 PTC素子
10、11、12 端子
13 保護フィルム
14、15 櫛歯形状部
16、17 端部
21 第1領域
22 第2領域
23 第3領域
24 第4領域
100 面状発熱体
A 透明電極