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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065880
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】ベルト
(51)【国際特許分類】
   B65G 15/34 20060101AFI20230508BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20230508BHJP
   F16G 3/00 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
B65G15/34
B32B5/24
F16G3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176272
(22)【出願日】2021-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000211156
【氏名又は名称】中興化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】深草 孝郎
(72)【発明者】
【氏名】川本 啓司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大樹
(72)【発明者】
【氏名】濱渦 陽
【テーマコード(参考)】
3F024
4F100
【Fターム(参考)】
3F024AA04
3F024AA07
3F024BA05
3F024CA04
3F024CB04
3F024CB07
4F100AK17B
4F100AK18B
4F100BA02
4F100DA11
4F100DA15
4F100DG01A
4F100DG12A
4F100EJ82
4F100GB51
(57)【要約】
【課題】接合部での折れ曲がりと、走行不良を低減することが可能なベルトを提供する。
【解決手段】耐熱性繊維の織布4と、前記織布4の表面の少なくとも一部を被覆するフッ素樹脂5とを含むベルト基材同士が接合された環状構造を有するベルト1であって、前記ベルト1の接合部は、前記ベルト基材の進行方向31と交差する一方の第1端部1aの表面に、前記ベルト基材の進行方向31と交差する他方の第2端部1bの表面が接合されたものであり、前記接合部は、前記第1端部1aで規定された凸部と、前記第2端部1bで規定された凸部とを有し、前記凸部の先端部分3a,3bが、前記ベルト基材の進行方向31に対して45度以上80度以下の角度を有する方向に沿っている、ベルト。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性繊維の織布と、前記織布の表面の少なくとも一部を被覆するフッ素樹脂とを含むベルト基材同士が接合された環状構造を有するベルトであって、
前記ベルトの接合部は、前記ベルト基材の進行方向と交差する一方の第1端部の表面に、前記ベルト基材の進行方向と交差する他方の第2端部の表面が接合されたものであり、
前記接合部は、前記第1端部で規定された第1凸部と、前記第2端部で規定された第2凸部とを有し、前記第1凸部及び前記第2凸部の先端部分が、前記ベルト基材の進行方向に対して45度以上80度以下の角度を有する方向に沿っている、ベルト。
【請求項2】
前記ベルト基材の厚さが0.1mm以上1mm以下である、請求項1に記載のベルト。
【請求項3】
前記第1凸部及び前記第2凸部のうちの少なくとも一方の端面が、前記ベルト基材の進行方向と交差する幅方向に沿った断面に対して傾斜している、請求項1または2に記載のベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ベルト、特に製品等の製造に使用されるベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートシールなど、各種製品を製造する際に用いられるベルトは、例えば、ベルト基材の長さ方向の端部どうしが接合された、無端状あるいは環状をしている。ベルト基材の接合方法として、オーバーラップ接合が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-8361号公報
【特許文献2】国際公開番号WO2011/004848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オーバーラップ接合を用いて製造されたベルトの一例を図9及び図10に示す。図9及び図10は、環状もしくは無端状のベルト20が、ロール2に取り付けられた状態を示す。図9は斜視図で、図10は、ベルト基材の進行方向に沿った断面図である。図10の破線で囲まれた領域中の断面図は、ベルト20の接合部の拡大断面図である。ベルト20は、ベルト基材の長さ方向の両端部20a,20bが重ね合わされて接合されたものである。そのため、ベルト20の表面と裏面(ロール2と接する面)に、接合部の段差21a,21bが存在する。段差21a,21bは、ベルトの進行方向22に対して垂直(90°)な方向に沿って形成されている。これにより、次のような問題が生じる事がある。ベルト20がロール2上を走行してベルト20の裏面の段差21bの周辺がロール2に接触すると、端部20aのうちの段差21bと隣接する部分が、段差21bによって持ち上げられて直線的に折れる事がある。また、ベルト20の表面の段差21aと隣接する端部20bがロール2に接触すると、端部20bのうち端部20aと重なっていない単独部分はロール2の表面に沿うものの、端部20aと重なっている部分は単独部分よりもロール2の表面に追従し難い。これにより、端部20aと端部20bが重なっている部分(接合部)と、重なっていない端部20bのみの単独部分との境界部分に負荷(剛性(コシ)の違い)が加わって折れる場合がある。ロール2の径が小さくなると、ベルト20がロール2上を走行する際の曲がり具合(曲率)が大きくなるため、折れる頻度が高くなる。また、ベルト20が走行した際の走行条件によっては、ベルト1の裏面がロール2と接触したところで、段差21bがロール2に引っ掛かる事がある。この引っ掛かりによって、走行→停止→走行の動作が短時間で起こり、ノッキングやスリップといった一定速度で走行することに影響を及ぼす事象を起こす事になる。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、接合部での折れ曲がりと、走行不良を低減することが可能なベルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
耐熱性繊維の織布と、前記織布の表面の少なくとも一部を被覆するフッ素樹脂とを含むベルト基材同士が接合された環状構造を有するベルトであって、
前記ベルトの接合部は、前記ベルト基材の進行方向と交差する一方の第1端部の表面に、前記ベルト基材の進行方向と交差する他方の第2端部の表面が接合されたものであり、
前記接合部は、前記第1端部で規定された第1凸部と、前記第2端部で規定された第2凸部とを有し、前記第1凸部及び前記第2凸部の先端部分が、前記ベルト基材の進行方向に対して45度以上80度以下の角度を有する方向に沿っている、ベルト。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、接合部での折れ曲がりと、走行不良を低減することが可能なベルトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態のベルトの一例の概略を示す図。
図2図1に示すベルトの要部を概略的に示す拡大断面図。
図3図1に示すベルトの概略的な平面図。
図4図1に示すベルトのベルト基材の概略を示す図。
図5】実施形態のベルトの他の例の概略を示す断面図。
図6】実施例の屈曲試験機の概略を示す図。
図7図6に示す屈曲試験機の回転アームを180度回転させた状態での概略を示す図。
図8図6に示す屈曲試験機の回転アームをz軸方向側から見た概略的な平面図。
図9】オーバーラップ接合を用いて製造されたベルトの一例の概略を示す図。
図10図9に示すベルトのベルト基材の進行方向に沿う概略的な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に実施形態が図面を参照して記述される。以下の記述において、略同一の機能および構成を有する構成要素は同一符号を付され、繰り返しの説明は省略される場合がある。図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なり得る。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。また、ある実施形態についての記述は全て、明示的にまたは自明的に排除されない限り、別の実施形態の記述としても当てはまる。各実施形態は、この実施形態の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、実施形態の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定しない。
【0010】
図1は、実施形態のベルト1がロール2に装着された状態を示している。図2は、ベルト1の接合部付近を拡大した概略的な断面図である。図3は、ベルト1の概略的な平面図である。図4は、ベルト1を構成するベルト基材の概略的な断面図である。また、図5は、実施形態のベルト1の別な例を示す。図2図5において、x軸は、ベルト基材の進行方向(走行方向ともいう)31と平行な方向で、y軸はベルト基材の幅方向32と平行な方向で、z軸はベルト基材同士を積層した方向と平行な方向である。
【0011】
ベルト1は、ベルト基材を環状もしくは無端状に接合したものである。ベルト基材は、例えば、耐熱性繊維の織布4と、織布4の表面を被覆するフッ素樹脂5とを含む。フッ素樹脂5は、織布4の表面を部分的に被覆していても、または表面全体を被覆していても良い。ベルト基材同士の接合は、例えば、幅方向32に沿った一方の第1端部1aの表面に、幅方向32に沿う他方の第2端部1bの表面が接合層1cで接合されることで行われる。このようにして接合部が形成された結果、ベルト1の表面及び裏面に段差が存在する。
【0012】
具体的には、ベルト1の表面には、第1端部1aが第1凸部となる段差が存在する。ロール2と接するベルト1裏面には、第2端部1bが第2凸部となる段差が存在する。第1端部1aの先端部分3aと、第2端部1bの先端部分3bは、それぞれ、ベルト基材の進行方向31に対して45度以上80度以下の角度33を有する方向に沿っている。ベルト基材の進行方向31に対して平行な方向は、ベルト基材の進行方向31に対する角度33が0度である。進行方向31と第1端部1aの先端部分3aとが交わる角度は、鋭角33と鈍角34の二つ存在するが、そのうちの小さい方の鋭角33の角度が45度以上80度以下であれば良い。また、進行方向31と第2端部1bの先端部分3bとが交わる角度についても鋭角33と鈍角34の二つの角度が存在するが、そのうちの小さい方の鋭角33の角度が45度以上80度以下であれば良い。なお、進行方向31と第1端部1aの先端部分3aとの角度33と、進行方向31と第2端部1bの先端部分3bとの角度33は、互いに同じであることが望ましい。
【0013】
角度33を45度以上80度以下の範囲にする理由を説明する。角度33が80度よりも大きいと、第1端部1aの先端部分3aと第2端部1bの先端部分3bが進行方向31に対してほぼ垂直な方向に沿っているため、ベルト1が折れ曲がる事象と、ベルト1がロール2に引っ掛かって一定速度での走行に影響を及ぼす事象が起きやすくなる。また、ベルト1の裏面の第2端部1bとロール2とが点接触よりは線接触に近い状態になるため、第2端部1bの先端部分3bがロール2に引っ掛かりやすくなる。一方、角度33が45度未満であると、接合部の幅方向(図3のx方向に沿う方向)の長さが長くなる。これにより、接合すべき部分がプレス機(もしくは融着機)の有効盤面に収まらない不具合が生じる。そのため、角度33を45度以上80度以下の範囲にすることが望ましい。
【0014】
角度33を45度以上80度以下にすると、接合部の長さ(面積)によっては、接合部を形成するためのプレス機(もしくは融着機)の有効盤面に収まらないことがある。そのため、接合部の長さ(面積)を大きくする必要がある場合、角度33は45度以上80度以下の範囲内で大きくすることが望ましい。このように接合部の長さと、接合部の面積は、ベルト1に要求される性能等に応じて調整することができる。
【0015】
実施形態のベルト1がロール2と接する際、第2端部1bの先端部分3bの全体が一度にロール2と接することなく、先端部分3bのうちロール2と接する箇所がベルト1の走行に伴って変化する。また、第2端部1bにおける第1端部1aの先端部分3aと隣接する部分についても、この部分全体が一度にロール2と接することなく、ロール2と接する位置がベルト1の走行に伴って変化する。これらの結果、ベルト1が接合部を起点にして折れ曲がるのを抑制することができる。また、ベルト1の表面がロール2と接触した際、第2端部1bがロール2に引っ掛かるのを抑えることができるため、ノッキングやスリップといった一定速度での走行に影響を及ぼす事象を防止することができる。従って、実施形態のベルト1によれば、接合部での折れ曲がりと、走行不良を低減することが可能なベルトを実現することができる。なお、ベルト1の表面を裏面として使用しても、裏面を表面として使用しても良い。ベルト1の表面を裏面として使用する場合、第1端部1aがロール2と接することとなる。
【0016】
実施形態のベルト1のベルト基材について、説明する。織布を構成する耐熱性繊維の例として、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維あるいはこれらから選択される2種以上をを混合したものなどが挙げられる。ガラス繊維は、不燃性であり、かつ電気絶縁性を有する。一方、アラミド繊維は、強度に優れ、かつ耐薬品性を有する。炭素繊維は、ガラス繊維よりも強度に優れ、軽く、かつ導電性を有する。
【0017】
フッ素樹脂の例として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂(FEP)などが挙げられる。フッ素樹脂の種類は1種類または2種類以上にすることができる。
ベルト基材は、充填材を含有していても良い。充填材は、フッ素樹脂に混合または分散されていることが望ましい。充填材の例として、炭素材料、無機物(酸化チタン、窒化ホウ素、酸化ケイ素、酸化亜鉛など)、各種顔料を挙げることができる。使用する充填材の種類は、1種類または2種類以上にすることができる。充填材の形態は、特に限定されず、粒状、繊維状などにすることができる。
【0018】
ベルト基材の厚さは、例えば、0.1mm以上1mm以下にすることができる。
【0019】
接合部は、例えば、以下の方法で形成され得る。接合層1cとして溶融性フッ素樹脂のフィルムを、第1端部1aの表面と第2端部1bの表面の間に挟み、加熱によりフィルムを溶融させて第1端部1aの表面と第2端部1bの表面を接合する。溶融性フッ素樹脂の例として、PFA、FEPなどを挙げることができる。これらの樹脂を混合したものを含むフィルムを使用しても良い。また、第1端部1aの表面か、第2端部1bの表面、あるいは両方に、フッ素樹脂のディスパージョンを塗布して得られた塗膜を加熱により溶融または焼成することで接合層1cを形成し、第1端部1aの表面と第2端部1bの表面を接合する。フッ素樹脂の例には、ベルト基材で挙げたものと同様な種類を挙げることができる。
【0020】
図1図4の例では、ベルト基材の凸部の端面である第1端部の端面と第2端部の端面を、ベルト基材の幅方向32に沿った断面と平行な面にしたが、これに限定されない。例えば、第1端部の端面か、第2端部の端面、あるいは両方の端面として、ベルト基材の幅方向32に沿った断面に対して傾斜した傾斜面を用いることができる。この例を図5に示す。図5では、第1端部1aの端面と、第2端部1bの端面の双方が傾斜面6a,6bで構成されている。傾斜面6a,6bは、例えば、スカイバー加工で形成される。
【0021】
実施形態のベルトは、例えば、ヒートシール機用ベルト、食品製造ライン、冷凍食品製造ライン、プラスチックフィルムや床材などの製造ライン等、製品の製造に使用され得る。
【実施例0022】
以下、実施例を説明する。
(例1)
ガラス繊維が平織された織布をPTFEディスパージョンに浸漬した後、これを焼成する操作を複数回繰り返すことにより、ガラス繊維製織布の表面がPTFEで被覆されたベルト基材を作製した。ベルト基材は、厚さが0.125mmの帯形状であった。
【0023】
ベルト基材の長辺方向の両端部である第1端部と第2端部を接合して環状構造のベルトを作製した。なお、ベルト基材の長辺方向は、ベルト基材の進行方向(走行方向)と平行な方向である。ベルトの具体的な作製方法は以下の通りである。ベルト基材の第1端部と第2端部の先端部分は、ベルト基材の長辺方向に対して45°の角度を持つ方向に沿っている。ベルト基材の第1端部の表面に第2端部の表面を積層して環状にした。この際、第1端部の表面と第2端部の表面の間に溶融性フッ素樹脂フィルムとしてPFAフィルムを配置した。これらを加熱して溶融性フッ素樹脂フィルムを溶融させることにより、第1端部と第2端部を接合してベルト基材を環状に繋ぎ合わせた。接合部の幅は、第1端部の先端部分と第2端部の先端部分との距離であり、10mmとした。以上に説明した方法により、例1のベルトを製造した。
(例2-例12)
ベルト基材の長辺方向に対する、ベルト基材の第1端部と第2端部の先端部分の角度(接合角度)を表1に示す値にすると共に、接合幅を表1に示す値にすること以外は、例1と同様にしてベルトを製造した。
(例13-例24)
ベルト基材の厚さを0.24mmにし、ベルト基材の長辺方向に対する、ベルト基材の第1端部と第2端部の先端部分の角度(接合角度)を表2に示す値にすると共に、接合幅を表2に示す値にすること以外は、例1と同様にしてベルトを製造した。
(例25-例36)
ベルト基材の厚さを0.35mmにし、ベルト基材の長辺方向に対する、ベルト基材の第1端部と第2端部の先端部分の角度(接合角度)を表3に示す値にすると共に、接合幅を表3に示す値にすること以外は、例1と同様にしてベルトを製造した。
(例37-例48)
ベルト基材の厚さを0.54mmにし、ベルト基材の長辺方向に対する、ベルト基材の第1端部と第2端部の先端部分の角度(接合角度)を表4に示す値にすると共に、接合幅を表4に示す値にすること以外は、例1と同様にしてベルトを製造した。
(例49-例56)
ベルト基材の厚さを0.915mmにし、ベルト基材の長辺方向に対する、ベルト基材の第1端部と第2端部の先端部分の角度(接合角度)を表5に示す値にすると共に、接合幅を表5に示す値にすること以外は、例1と同様にしてベルトを製造した。
【0024】
得られた例1~例56のベルトの引張強さと破断伸度を、以下に説明する屈曲試験にて測定し、測定結果を表1~表5に示す。屈曲試験に用いられる試験機の概略を図6図8に示す。図6図8において、x軸方向を、測定用サンプル18が往復移動する方向とする。また、図6図8において、z軸方向を測定用サンプル18が上下に移動する方向15a,15bとする。屈曲試験機10は、回転アーム11と、第1ロール12と、第2ロール13と、複数のプーリー14と、荷重16と、複数の搬送用ベルト17a,17bとを備える。測定用サンプル18は、例1~例56のベルトを接合部が含まれるように帯状に切り出したものである。回転アーム11は、回転軸11aと、回転軸11aと平行に設けられ、搬送用ベルト17aが固定される軸部11bと、回転軸11aと軸部11bとを連結する連結部11cとを備える。回転軸11aは、時計回りに回転可能なものである。回転アーム11は、回転軸11aの回転によって、軸部11bがプーリー14から離れる方向と近づく方向に移動するものである。複数(例えば4)の搬送用ベルト17aは、それぞれ、回転アーム11の軸部11bに固定されている。各搬送用ベルト17aの先端部に、測定用サンプル18の一方の端部がチャック19によって連結されている。また、測定用サンプル18の他方の端部が、搬送用ベルト17bにチャック19によって連結されている。搬送用ベルト17aが第1ロール12に架けられ、搬送用ベルト17bが第2ロール13に架けられている。搬送用ベルト17bの先端に荷重16が連結されている。荷重16によって、搬送用ベルト17a,17bと測定用サンプル18に張力が加わる。そのため、回転アーム11の回転に伴って測定用サンプル18が円滑に往復移動する。測定用サンプル18は、接合部を含む部分がプーリー14と接している。各プーリー14は、その軸方向がy軸方向に沿った状態でx軸方向に並べられている。測定用サンプル18は、各プーリー14の外周に沿って移動することにより、屈曲変形を受ける。
【0025】
図6では、回転アーム11の軸部11bがプーリー14に近づく方向に位置している。回転アーム11の回転軸11aをBで示す方向に回転させると、回転軸11aと連結部11cを介して接続された軸部11bが180度反転し、図7に示すプーリー14から離れる方向に移動する。その結果、測定用サンプル18が矢印15aに沿った方向に移動する。この移動に伴い、測定用サンプル18が各プーリー14の外周に沿ってx軸方向に沿った左向きに移動するため、測定用サンプル18が屈曲変形を受ける。
図7に示す状態において、回転アーム11の回転軸11aをAで示す方向に回転させると、軸部11bが180度反転し、図6に示すプーリー14に近づく方向に移動する。その結果、測定用サンプル18が矢印15bに沿った方向に移動するため、この移動に伴い、各プーリー14の外周に沿ってx軸方向に沿った右方向に移動して屈曲変形を受ける。つまり、回転アーム11の回転軸11aを時計回りに回転させて軸部11bを左右に反転させることにより、測定用サンプル18がプーリー14の外周に沿って往復移動して繰り返し屈曲を受ける。
【0026】
以上説明した屈曲試験機10を用いた屈曲試験の条件は、以下の通りである。測定用サンプル18のサイズは、幅100mmで、長さが1250mm(チャック部分含む。屈曲部分は約1000mm)であった。屈曲時の荷重は、10kg/100mm(=1kg/10mm)であった。屈曲時の雰囲気温度は、設定値で200℃であった。屈曲回数は、20万回であった。例14と例22のベルトについては、50万回と100万回も実施した。プーリー14のロール径はφ45mmであった。プーリー14のロール本数は3本であった。
【0027】
屈曲試験前の引張強さ、20万回屈曲後の引張強さ、屈曲試験前の引張強さを100%とした際の20万回屈曲後の引張強さを20万回後の強度保持率として表1~表5に示す。また、屈曲試験前の破断伸度、20万回屈曲後の破断伸度、屈曲試験前の破断伸度と20万回屈曲後の破断伸度との差を20万回後の伸度変化幅として表1~表5に示す。なお、表1~表5には、接合部を含まないベルト基材について、同様な条件で屈曲試験を行った結果を本体の結果として併記する。
さらに、例14と例22のベルトについては、屈曲回数を50万回に変更して行った試験結果を表6に、屈曲回数を100万回に変更して行った試験結果を表7に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
【表4】
【0032】
【表5】
【0033】
【表6】
【0034】
【表7】
【0035】
表1から明らかな通り、接合部角度を45°または60°に設定した例1~例8のベルトは、20万回屈曲後の引張強さの保持率が、接合部角度が90°である例9~例12のベルトに比して、やや低下するものの、実用上問題のない水準である。例1~例8のベルトの20万回屈曲後の引張強さの保持率は、接合部を含まないベルト基材本体の試験結果と比較しても遜色のない水準である。一方、破断伸度についても、20万回屈曲後の伸度変化幅は、例1~例8のベルトと、例9~例12のベルトで大きな差はなかった。
【0036】
表2から明らかな通り、ベルト基材の厚さを0.24mmに変更した場合にも、接合部角度を45°または60°に設定した例13~例20のベルトは、20万回屈曲後の引張強さ保持率と、20万回屈曲後の破断伸度変化幅が、接合部角度が90°である例21~例24のベルトと遜色なく、実用上問題のない水準である。接合部を含まないベルト基材本体の試験結果から、例13~例20のように接合部角度を90°未満に設定したことが、引張強さと破断伸度に大きな影響を及ぼすものではないことがわかる。
【0037】
表3~表5から明らかな通り、ベルト基材の厚さを0.35mm、0.54mm、0.915mmに変更した場合にも、接合部角度を45°または60°に設定した例25~例32、例37~44、例49~例52のベルトは、20万回屈曲後の引張強さ保持率と、20万回屈曲後の破断伸度変化幅が、接合部角度が90°である例33~例36、例45~例48、例53~例56のベルトと遜色なく、実用上問題のない水準である。また、接合部を含まないベルト基材本体の試験結果から、接合部角度を90°未満に設定することが、引張強さと破断伸度に大きな影響を及ぼすものではないことがわかる。
【0038】
表6から明らかな通り、屈曲回数を50万回に変更した場合、接合部角度を45°に設定した例14のベルトは、50万回屈曲後の引張強さ保持率と、50万回屈曲後の破断伸度変化幅が、接合部角度が90°である例22のベルトと遜色なく、実用上問題のない水準である。
【0039】
さらに、表7から明らかな通り、屈曲回数を100万回に変更した場合、接合部角度を45°に設定した例14のベルトは、100万回屈曲後の引張強さ保持率と、100万回屈曲後の破断伸度変化幅が、接合部角度が90°である例22のベルトと遜色なく、実用上問題のない水準である。
【0040】
以上の実験結果に示す通り、接合角度を45度以上80度以下にすることは、ベルトの引張強さと破断伸度に大きな影響を及ぼすものではない。接合角度を45度以上80度以下にすることにより、実用的な引張強さと破断伸度を維持しつつ、接合部での折れ曲がりと、走行不良を低減することが可能なベルトを実現することができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0041】
1…ベルト、1a…第1端部、1b…第2端部、1c…接合層、2…ロール、3a…先端部分、3b…先端部分、4…織布、5…フッ素樹脂、6a…傾斜面、6b…傾斜面、
10…屈曲試験機、11…回転アーム、12…第1ロール、13…第2ロール、14…プーリー、17a…搬送用ベルト、17b…搬送用ベルト、18…測定用サンプル、19…チャック、20…ベルト、20a,20b…端部、21a,21b…段差、22…進行方向、31…進行方向、32…幅方向、33…接合角度。
図1
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