IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社サンエー化研の特許一覧 ▶ 味の素株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-加熱処理用包装体 図1
  • 特開-加熱処理用包装体 図2
  • 特開-加熱処理用包装体 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065882
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】加熱処理用包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20230508BHJP
【FI】
B65D81/34 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176275
(22)【出願日】2021-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000106151
【氏名又は名称】株式会社サンエー化研
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148862
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179811
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 良和
(72)【発明者】
【氏名】殿柿 智也
(72)【発明者】
【氏名】芝崎 毅
(72)【発明者】
【氏名】小倉 佑介
(72)【発明者】
【氏名】唐牛 恵大
【テーマコード(参考)】
3E013
【Fターム(参考)】
3E013BB12
3E013BC04
3E013BC14
3E013BD11
3E013BE01
3E013BF02
3E013BF26
3E013BF32
3E013BF36
3E013BG15
(57)【要約】
【課題】包装体内部の水蒸気や内部空気の熱膨張による包装体内部の圧力の変動を抑制するとともに、内部圧力が上昇した際にチャックシール部が開封するのを防止することができ、食材等の内容物を効率よく加熱処理することが可能な加熱処理用包装体を提供する。
【解決手段】加熱処理用包装体1は、包装体フィルム22で構成された袋体2と、内容物を袋体2の内部に投入して密封するチャックシール部10と、内容物を加熱処理して内部圧力が上昇したときにその圧力を逃がす合掌シール部20と、を有し、チャックシール部10は、袋体2に接合された雄チャック及び雌チャックを有し、雄チャック及び雌チャックの一方は、袋体2と接触する接触面の袋体2内部側の端部から袋体2外部に向かって、袋体2と接合していない非接合領域を有し、包装体フィルム22は、所定の方法で測定される硬さが、40.0mNよりも小さい。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を加熱処理するための包装体であって、
包装体フィルムで構成された袋体と、内容物を前記袋体の内部に投入して密封するチャックシール部と、前記内容物を加熱処理して内部圧力が上昇したときにその圧力を逃がす合掌シール部と、を有し、
前記チャックシール部は、前記袋体に接合された雄チャック及び雌チャックを有し、
前記雄チャック及び前記雌チャックの一方は、前記袋体と接触する接触面の前記袋体内部側の端部から前記袋体外部に向かって、前記袋体と接合していない非接合領域を有し、
前記包装体フィルムは、当該包装体フィルムを幅25mmの短冊とし、当該短冊の長手方向の端部同士を接合して、直径50mmの輪を作成し、当該輪の直径の両端から前記輪の中心に向かって300mm/minの速度で30mm圧縮した際の反発力の最大値として測定される硬さが、40.0mNよりも小さい、加熱処理用包装体。
【請求項2】
前記雄チャック及び前記雌チャックの前記袋体と接触するそれぞれの接触面の大きさは、前記非接合領域が設けられた前記接触面の方が前記袋体内部側に向かって長い部分を有する、請求項1に記載の加熱処理用包装体。
【請求項3】
前記合掌シール部は、前記袋体上から外側に向かって突出するように形成され、
前記合掌シール部の中央には、前記内容物を加熱処理して内部圧力が上昇したときに通蒸する通蒸領域が形成されている、請求項1または2に記載の加熱処理用包装体。
【請求項4】
前記包装体フィルムは、複数の層で構成され、
前記複数の層のうちの少なくとも1層が、ポリブチレンテレフタレートで構成されている、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の加熱処理用包装体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を加熱処理する包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、調理済又は半調理済等の食品が耐熱性のプラスチック包装体に充填され、それを食する直前に電子レンジにより加熱調理する包装食品が市場に提供されている。しかし、このような包装食品を電子レンジにより加熱すると、包装体の内部の水蒸気や内部空気の熱膨張によって内部圧力が上昇し、包装体が破裂して内容物が飛散したり、電子レンジ内を汚染したりする欠点があった。
【0003】
電子レンジ調理の前に、あらかじめ包装体に小孔を開けて内部圧力の上昇を抑えることで、包装体の破裂を防止する方法が採られている。しかし、この方法では、発生した水蒸気が直ちに包装体の外へ放出されてしまい、水蒸気による蒸し調理効果が低減してしまうばかりか、包装体内部の食品の乾燥が進行して食味の劣化をきたすこともある。そこで、包装体の内部圧力が上昇した際に通蒸して圧力を逃がすイージーピール部を形成した包装体が知られている。
【0004】
特許文献1には、プラスチックフィルムによりその同一面側を互いに当接させて、所定巾のヒートシールにより合掌状に接合する第一接合部を設けて、その内部に加熱処理用の内容物を密封包装させる包装体にあって、前記第一接合部は、包装体の一方の側部へ片寄せさせて設けて、加熱による包装体の内部圧力が上昇したとき、その逃圧を行なう易開封性シールであることを特徴とする加熱処理用包装体が記載されている。
【0005】
特許文献2には、電子レンジにより加熱するための袋であって、少なくとも片面がシーラント層から構成される複合フィルムを用いて、シーラント面を上面とした下部材と、シーラント面同士を向かい合わせて少なくとも側部をシールしたウィング部を形成し、シーラント面を下面とした上部材とを重ね合わせ、その周縁部をシールして主シール部として密封した包装袋において、前記ウィング部内の中央領域であって、ウィング部上辺シール部または折り返し部と連結してポイントシール部が形成され、このポイントシール部内に少なくとも1個以上の易蒸通手段が施されていることを特徴とする電子レンジ用包装袋が記載されている。
【0006】
消費者は、これらの包装体に内容物が充填された状態で販売されている包装食品を買ってきて、単に加熱処理するだけでよく、非常に利便性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9-150864号公報
【特許文献2】特開2003-182779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの包装体は、製造元が内容物を充填して密閉することを想定して作られており、消費者は、自ら包装体に内容物を充填することはできない。消費者の中には、調理の負担は減らしたいが手作りしたいという要望もあることから、包装体にチャックシール部(ジッパー)を設けることも検討されている。
しかし、内部圧力が上昇した際にチャックシールが先に開封して、水蒸気による蒸し調理効果が低減してしまう問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、包装体内部の水蒸気や内部空気の熱膨張による包装体内部の圧力の変動を抑制するとともに、内部圧力が上昇した際にチャックシール部が開封するのを防止することができ、食材等の内容物を効率よく加熱処理することが可能な加熱処理用包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る加熱処理用包装体は、内容物を加熱処理するための包装体であって、
包装体フィルムで構成された袋体と、内容物を前記袋体の内部に投入して密封するチャックシール部と、前記内容物を加熱処理して内部圧力が上昇したときにその圧力を逃がす合掌シール部と、を有し、
前記チャックシール部は、前記袋体に接合された雄チャック及び雌チャックを有し、
前記雄チャック及び前記雌チャックの一方は、前記袋体と接触する接触面の前記袋体内部側の端部から前記袋体外部に向かって、前記袋体と接合していない非接合領域を有し、
前記包装体フィルムは、当該包装体フィルムを幅25mmの短冊とし、当該短冊の長手方向の端部同士を接合して、直径50mmの輪を作成し、当該輪の直径の両端から前記輪の中心に向かって300mm/minの速度で30mm圧縮した際の反発力の最大値として測定される硬さが、40.0mNよりも小さい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、包装体内部の水蒸気や内部空気の熱膨張による包装体内部の圧力の変動を抑制するとともに、内部圧力が上昇した際にチャックシール部が開封するのを防止することができ、食材等の内容物を効率よく加熱処理することが可能な加熱処理用包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る加熱処理用包装体の構成例を示す模式図である。
図2】本発明に係る加熱処理用包装体のチャックシール部の構成例を示す模式的断面図である。
図3図1に示した加熱処理用包装体が膨張した際のチャックシール部の状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る加熱処理用包装体の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。本発明に係る加熱処理用包装体は、電子レンジにより内容物を加熱処理する際に用いるのに好適であり、また食材を加熱処理する際に用いるのに好適である。
【0014】
図1に、本発明に係る加熱処理用包装体の構成例を示す。図1に示した加熱処理用包装体1は、袋体2と、袋体2の一辺側に設けられたチャックシール部10と、内容物を加熱処理して内部圧力が上昇したときにその圧力を逃がす合掌シール部20とで構成されている。このような構成を有することで、消費者がチャックシール部から食材等の内容物を投入して密封することができる。
袋体2は、2枚の包装体フィルム22で構成され、2枚の包装体フィルム22の三辺がシールされた周縁シール部5を有している。
【0015】
包装体フィルム22としては、電子レンジにより加熱処理がなされることを考慮すると、電子レンジの加熱に対する耐熱性を有するプラスチック素材で形成されていることが好ましい。そのようなプラスチック素材の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン等のハロゲン化ポリオレフィン;ポリビニルアルコール;ナイロン6、ナイロン6,6、ポリメタキシリレンアジパミド等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル;ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル等のポリアクリル酸エステル;及びこれらを形成するモノマーの共重合体などが挙げられる。なお、「(メタ)アクリル」は、メタクリル又はアクリルを意味する。
【0016】
ポリエチレンの具体例としては、直鎖状低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、メタロセン系ポリエチレンなどが挙げられる。ポリプロピレンの具体例としては、プロピレンのホモポリマー、プロピレンとエチレンや1-ブテンとのランダム又はブロックコポリマーなどが挙げられる。
【0017】
包装体フィルム22は、単層でもよいが、共押出しなどにより2層以上に積層されていてもよい。例えば、包装体フィルム22は、基材層とシーラント層からなることが好ましく、さらに基材層とシーラント層の間に他の層を有していてもよい。
【0018】
包装体フィルム22の基材層としては、例えば、ナイロン6、ナイロン6,6、ポリメタキシリレンアジパミド等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル等を用いることができる。
シーラント層としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを用いることができる。
また、基材層とシーラント層との間に設ける中間層としては、例えば、上記ポリアミド、上記ポリエステル等を用いることができる。
【0019】
なお、包装体フィルム22が複数層で構成されている場合、複数層のうちの少なくとも1層が、ポリエステルで構成されているのが好ましく、ポリブチレンテレフタレートで構成されているのがより好ましい。これにより、包装袋フィルム22の耐熱性をより高いものとしつつ、包装袋フィルム22の硬さをより容易に適度なものとすることができる。
【0020】
また、包装体フィルム22は、酸化アルミニウムや酸化ケイ素のような無機酸化薄膜が付与されたガスバリアー性の複合フィルムでもよい。この複合フィルムは、酸化アルミニウムや酸化ケイ素の単体又は混合物を真空下で加熱気化させ、上記のフィルムの表面に蒸着することで得ることができる。更に、包装体フィルム22は、ポリエポキシ樹脂を主剤とするようなガスバリアー性を有する接着剤層や、ポリビニルアルコール系重合体樹脂やセルロースやウレタン系樹脂等をはじめとするガスバリアー性を有する層を有していてもよい。
【0021】
加熱処理用包装体1を構成する包装体フィルム22は、下記方法で測定される反発力の最大値として測定される硬さが、40.0mNよりも小さいものとなっている。これにより、加熱処理用包装体1が膨張した際に、歪な膨らみとなり、チャックシール部10自体に歪が伝搬し、その嵌合部または嵌合部への膨張圧(内部圧力)負荷が集中しないように処置したものを阻害され、チャックシール部が開口してしまうのを効果的に防止することができる。すなわち、下記方法で測定される反発力の最大値が上記条件値未満であると、加熱処理用包装体1が歪な膨らみになりにくく、チャックシール部が許容する膨張圧(内部圧力)負荷が上昇する。
【0022】
(硬さの測定方法)
包装体フィルム22を幅25mmの短冊とする。
当該短冊の長手方向の端部同士を接合して、直径50mmの輪を作成する。
当該輪の直径の両端から輪の中心方向に向かって300mm/minの速度で30mm圧縮した際に測定される反発力の最大値を硬さとする。
【0023】
なお、包装体フィルム22の上記方法で測定される硬さは、40.0mNよりも小さいが、35mNよりも小さいのが好ましく、32mNよりも小さいのがより好ましい。これにより、加熱処理用包装体1が膨張する際に、歪に膨らんでいくのをより効果的に防止することができる。
【0024】
なお、包装体フィルム22の上記硬さは、短冊の長手方向が包装体フィルム22のMD方向であっても、短冊の長手方向が包装体フィルム22のTD方向であっても、上記範囲内となっていることが好ましい。
なお、MD方向及びTD方向とは、一方がチャックシール部10と平行な方向(図1中のX方向)を示し、他方が包装体フィルム22の水平面におけるチャックシール部10と垂直に交わる方向(図1中のY方向)を示す。
【0025】
加熱処理用包装体1は、内容物を内部に投入して密封することができる構成であれば、その形態は問わない。すなわち、袋体2は、図1に示す三方シールの他、四方シール、スティック、ピロー、ガゼット、封筒貼り、スタンディング、合掌貼り等の形態とすることができる。加熱処理用包装体1の外縁の形状は、三角形、四角形、五角形等の多角形、円形、楕円形、及びそれらの組み合わせた形状とすることができるが、一般的には四角形である。
【0026】
加熱処理用包装体1(袋体2)の側部及び底部に形成される周縁シール部5のシール幅は、3~15mmとすることが好ましく、5~12mmとすることがより好ましく、7~10mmとすることがさらに好ましい。周縁シール部5は、側部に形成したシール部が底部に向かって内側に傾斜しているV字の形状、又は側部と底部のコーナーに形成したシール部が丸みをおびたU字の形状に形成されていてもよい。V字又はU字の形状であれば、加熱処理用包装体1の内部に食材等の内容物を充填する際に底部に形成したシール部の後退及び抜けを効果的に抑制することができ、また側部と底部のコーナーに内容物が滞留しにくくなり、加熱時に内容物が焦げることを防止することができる。
【0027】
周縁シール部5は、常温及び90℃雰囲気下において完全シールでもよいが、チャックシール部10及び合掌シール部20よりも強いシール強度であれば、易開封性を有していてもよい。周縁シール部5が易開封性を有する場合の常温及び90℃雰囲気下でのシール強度は、10~50N/15mmが好ましく、12~45N/15mmがより好ましい。なお、常温及び90℃雰囲気下でのシール強度とは、JIS Z0238「密封軟包装袋の試験方法」に従い、それぞれ常温及び90℃雰囲気下で測定された値である。
【0028】
チャックシール部10は、その構成例を図2に示すように、雄チャック11及び雌チャック12を有している。
雄チャック11及び雌チャック12は、それぞれ、袋体2(包装体フィルム22)に接合されており、雄チャック11の凸部分と雌チャック12の凹部分とを嵌合させることでシール(密閉)することができる。雄チャックと雌チャックは嵌合すれば複数あってもよい。
【0029】
本実施形態において、雄チャック11は、袋体2と接触する接触面13において、袋体2の内部側(図1の下側)と袋体2の外部側(図1の上側)の2箇所でヒートシールされて接合部15が形成されている。なお、接触面13全面で接合部15を形成してもよい。
【0030】
これに対して、雌チャック12は、袋体2と接触する接触面14において、袋体2の外部側(図1の上側)の1箇所のみヒートシールで接合部16が形成されている。すなわち、袋体2と接触する接触面14の袋体2の内部側(図1の下側)の端部から袋体外部に向かって、袋体2と接合していない非接合領域17が形成されている。
【0031】
このような構成とすることで、加熱処理用包装体1が膨らんだ際に、雄チャック11側の包装体フィルム22に非接合領域17が追従し、内部圧力が図3中の矢印で示すように、接合部16に集中する。その結果、雄チャック11と雌チャック12の嵌合部分に膨張圧が集中するのを防止することができる。
【0032】
なお、包装体フィルム22の硬さが硬すぎると、加熱処理用包装体1の膨らみが歪となり、雄チャック11側の包装体フィルム22に非接合領域17が十分に追従しない場合があるが、本発明のように包装体フィルム22の硬さが適度であると、加熱処理用包装体1が歪に膨らむのを抑制することができるため、雄チャック11側の包装体フィルム22に非接合領域17をより確実に追従させることができる。その結果、膨張圧(内部圧力)が上昇した際にチャックシール部10が開封するのを防止することができる。
【0033】
さらに、本実施形態では、図2及び図3に示すように、非接合領域17が設けられた雌チャック12の袋体2と接触する接触面14の大きさは、雄チャック11の袋体2と接触する接触面13の大きさよりも、袋体2の内部側(図1の下側)に向かって長い構成となっている。これにより、雄チャック11と雌チャック12の嵌合部分に膨張圧(内部圧力)が集中するのをさらに効果的に防止することができる。なお、接触面13と接触面14は同じ大きさであってもよい。また、非接合領域17が設けられた雌チャック12の袋体2と接触する接触面14の大きさは、雄チャック11の袋体2と接触する接触面13の大きさよりも、袋体2の内部側(図1の下側)に向かって、少なくとも一部が長い構成であればよい。
【0034】
なお、上記説明では、非接合領域17が雌チャック12側に設けられている場合について説明したが、非接合領域17は、雄チャック11側に設けられていてもよい。
【0035】
本発明において、袋体2を構成する一方の包装体フィルム22には、その内面側を互いに向かい合わせて接合された合掌シール部20が形成されている。こうすることで、内容物を加熱処理して加熱処理用包装体1の内部圧力が上昇したときに、その圧力を合掌シール部20から逃がすことができる。
この合掌シール部20は、加熱処理用包装体1(袋体2)上から外側に向かって突出するように形成されている。
【0036】
合掌シール部20は、内容物の加熱処理時に内容物の上面側に位置するように形成され、加熱処理により加熱処理用包装体1の内部圧力が上昇したときにその圧力を逃がす易開封性を有するように形成される。合掌シール部20は、包装体フィルム22のうち合掌シール部20を構成する部分の内面側を互いに向かい合わせ、その間に必要に応じて易開封性フィルム(不図示)を挟み込むことで形成することができる。
【0037】
合掌シール部20は、90℃雰囲気下において周縁シール部5及びチャックシール部10よりも弱い易開封性を有していることが重要である。こうすることで、内容物を加熱処理して加熱処理用包装体1の内部圧力が上昇した際に、周縁シール部5及びチャックシール部10が開封する前に合掌シール部20が開封して、その圧力を合掌シール部20から逃がすことができる。
【0038】
合掌シール部20の90℃雰囲気下でのヒートシール強度は、12N/15mm以下であることが好ましく、8N/15mm以下であることがより好ましい。合掌シール部20の90℃雰囲気下でのヒートシール強度は、0N/15mmでも構わないが、1N/15mm以上であることが好ましい。なお、合掌シール部20は、常温においては完全シールでもよく、易開封性を有していてもよい。合掌シール部20が易開封性を有する場合の常温でのシール強度は、0.5~30N/15mmが好ましく、1~25N/15mmがより好ましい。
【0039】
なお、常温では完全シール、90℃雰囲気下でのヒートシール強度が12N/15mm以下となる合掌シール部20は、易開封性フィルムとして、ポリオレフィン(例えば、融点120℃以下(好ましくは110℃以下)のポリエチレン、融点140℃以下(好ましくは130℃以下)のポリプロピレンやこれらのブレンド樹脂等)を用いることで実現できる。なお、融点は、ASTM2117に基づいて測定した値である。
【0040】
本発明において、図1に示すように、合掌シール部20の中央に内容物を加熱処理して内部圧力が上昇したときに通蒸する通蒸領域21が形成されている。こうすることで、内部圧力が上昇した際でも破裂しないように逃圧された加熱処理用包装体1となる。
【0041】
また、図1に示すように、合掌シール部20は、加熱処理用包装体1の一辺と平行に形成されていることが好ましく、チャックシール部10は、合掌シール部20と加熱処理用包装体1の一辺の間に平行に形成されていることが好ましい。チャックシール部10及び合掌シール部20が平行に形成された加熱処理用包装体1の一辺から対辺までの距離H(図1参照、加熱処理用包装体1の長さ)は、100~500mmであることが好ましく、125~400mmであることがより好ましく、150~300mmであることがさらに好ましい。
【0042】
加熱処理用包装体1の一辺と合掌シール部20との間の距離H図1参照)は、加熱処理用包装体1の一辺から対辺までの距離Hに対して10~60%であることが好ましく、25~50%であることがより好ましく、30~40%であることがさらに好ましい。この範囲であれば、加熱処理用包装体1の破裂強度が低くなり、弱い力でも容易に通蒸するようになる。
【0043】
加熱処理用包装体1の一辺とチャックシール部10との間の距離H図1参照)は、加熱処理用包装体1の一辺と合掌シール部20との間の距離Hに対して10~80%であることが好ましく、20~60%であることがより好ましく、40~50%であることがさらに好ましい。
【0044】
このような加熱処理用包装体1であれば、消費者自らがチャックシール部10から食材等の内容物を充填し、密封することができる。そして、密封された内容物を電子レンジ等で効率よく加熱処理することができる。さらに、合掌シール部20を備えることで、包装体内部の水蒸気や内部空気の熱膨張による包装体内部の圧力の変動を抑制することができる。さらに、チャックシール部10を上記のような構成とし、包装体フィルム22の硬さを所定の範囲とすることで、内部圧力が上昇した際にチャックシール部10が開封するのを効果的に防止することができる。
【0045】
なお、加熱処理が完了した後は、消費者自らが例えば合掌シール部2を開封して、内容物を取り出すことができる。開封する場所はチャックシール部10でもよく、周縁シール部5から加熱処理用包装体1を裂いて開封してもよい。加熱処理用包装体1を裂けやすくするため、周縁シール部5には開封用ノッチが形成されていてもよい。
【0046】
以上、本発明の加熱処理用包装体の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【実施例0047】
<実施例1>
図1に示す構成の加熱処理用包装体(縦235mm×横200mm)を作製した。なお、用いた包装体フィルムの構成は、ポリエチレンテレフタレート(PET#12)/ナイロン(Ny#15)/無延伸ポリプロピレン(CPP#50)である。なお、合掌シール部は、PP系イージーオープンテープを挿入してヒートシールすることにより形成した。
【0048】
<実施例2>
包装体フィルムの構成を、ポリエチレンテレフタレート(PET#12)/ポリブチレンテレフタレート(PBT)/無延伸ポリプロピレン(CPP#50)以外は、実施例1と同様にして加熱処理用包装体を作製した。
【0049】
<実施例3>
包装体フィルムの構成を、ポリエチレンテレフタレート(PET#12)/無延伸ポリプロピレン(CPP#50)以外は、実施例1と同様にして加熱処理用包装体を作製した。
【0050】
<比較例1>
包装体フィルムの構成を、ポリエチレンテレフタレート(PET#12)/ナイロン(Ny#15)/ポリエチレンテレフタレート(PET#12)/無延伸ポリプロピレン(CPP#50)以外は、実施例1と同様にして加熱処理用包装体を作製した。
【0051】
<硬さの測定>
各実施例及び比較例で用いた包装体フィルムを幅25mmの短冊とした。
なお、短冊の長手方向が包装体フィルムのMD方向となるもの、及び、短冊の長手方向が包装体フィルムのTD方向となるものの2種類用意した。
当該短冊の長手方向の端部同士を接合して、直径50mmの輪を作成した。
台座と、台座の垂直上方に取り付けられたチャックとを備えた引張・圧縮試験機を用意し、台座とチャックとの距離を50mmとした。
次に、チャック-台座間に、輪の継ぎ目を台座側とし、継ぎ目を一端とする直径の他端がチャック側となり、台座と輪の継ぎ目と輪の中心部と輪の継ぎ目を一端とする直径の他端部とが重力方向に一直線となるように輪をセットし、300mm/minの速度の条件にて、台座を圧縮方向(輪の中心方向)へ30mm移動させた際の反発力の最大値を測定し、硬さを求めた。
測定結果を、表1に示した。
【0052】
<評価1>
各実施例及び比較例で得られた加熱処理用包装体1に水100mlを投入して密閉したサンプルを各100個作製し、電子レンジで加熱し、各加熱処理用包装体1を観察し、チャックシール部の開口の有無を調べた。
これらの評価結果を表1に合わせて示した。
【0053】
【表1】
【0054】
表1に示すように、実施例1、2、3では、チャックシール部が膨張圧に耐え、圧力を逃がす合掌シールから蒸気を抜くことで内圧が最適に保たれていることが分かる。しかし、比較例1では、膨張時に歪が認められ、チャックシール部への負荷が大きくなり、チャックシール部が開口するサンプルが認められた。
【符号の説明】
【0055】
1 加熱処理用包装体
2 袋体
5 周縁シール部
10 チャックシール部
11 雄チャック
12 雌チャック
13 接触面
14 接触面
15 接合部
16 接合部
17 非接合領域
20 合掌シール部
21 通蒸領域
22 包装体フィルム

図1
図2
図3