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特開2023-65891黒色分散液、紫外線硬化型黒色組成物、樹脂組成物、カラーフィルター用ブラックマトリクス、CMOSカメラモジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065891
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】黒色分散液、紫外線硬化型黒色組成物、樹脂組成物、カラーフィルター用ブラックマトリクス、CMOSカメラモジュール
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20230508BHJP
   C08F 2/48 20060101ALI20230508BHJP
   C08F 291/12 20060101ALI20230508BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20230508BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20230508BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20230508BHJP
   G03B 30/00 20210101ALI20230508BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20230508BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
C08F2/44 C
C08F2/48
C08F291/12
C08F290/06
G02F1/1335 500
G02B7/02 D
G03B30/00
C08F2/44 A
G03F7/004 505
G03F7/004 504
G03F7/027 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176295
(22)【出願日】2021-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】597065282
【氏名又は名称】三菱マテリアル電子化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】赤池 寛人
(72)【発明者】
【氏名】日向野 怜子
(72)【発明者】
【氏名】影山 謙介
(72)【発明者】
【氏名】相場 直幸
【テーマコード(参考)】
2H044
2H225
2H291
4J011
4J026
4J127
【Fターム(参考)】
2H044AD01
2H225AC21
2H225AC32
2H225AC35
2H225AC37
2H225AC54
2H225AC57
2H225AC64
2H225AC74
2H225AD02
2H225AD07
2H225AM91P
2H225AM95P
2H225AP08P
2H225BA20P
2H225BA35P
2H225CA18
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
2H291FA16Y
2H291FB04
2H291LA13
4J011PA08
4J011PA97
4J011PC02
4J011QA03
4J011QA09
4J011QA15
4J011QA17
4J011QB03
4J011QC05
4J011RA10
4J011SA04
4J011SA06
4J011SA13
4J011SA14
4J011SA22
4J011SA27
4J011SA32
4J011SA34
4J011SA84
4J026AB19
4J026AB38
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4J026BA36
4J026BA50
4J026DB05
4J026DB30
4J026DB36
4J026GA07
4J026GA08
4J127AA03
4J127AA04
4J127BD171
4J127BD411
4J127BG10Z
4J127BG27Z
4J127CB131
4J127CB281
4J127CC091
4J127CC111
4J127CC131
4J127DA09
4J127EA13
4J127FA17
4J127FA30
(57)【要約】
【課題】大気中で長期間保存しても黒色顔料が凝集しにくい黒色分散液と、その黒色分散液を含む紫外線硬化型黒色組成物と、その紫外線硬化型黒色組成物を硬化させることによって得られた樹脂組成物とを提供する。
【解決手段】黒色分散液は、溶媒と、黒色顔料と、高分子分散剤と、を含有し、前記溶媒は、エチレン性不飽和結合を有する単官能モノマー及び二官能モノマーの一方又は両方を含み、前記黒色顔料は、窒化ジルコニウムを含み、前記高分子分散剤は、主鎖と前記主鎖に結合した複数の側鎖とを有し、前記主鎖がポリアルキレンイミンであって、前記複数の側鎖のそれぞれがオキシエチレン基とオキシプロピレン基とを含有する基である櫛型ポリマーを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒と、黒色顔料と、高分子分散剤と、を含有し、
前記溶媒は、エチレン性不飽和結合を有する単官能モノマー及び二官能モノマーの一方又は両方を含み、
前記黒色顔料は、窒化ジルコニウムを含み、
前記高分子分散剤は、主鎖と前記主鎖に結合した複数の側鎖とを有し、前記主鎖がポリアルキレンイミンであって、前記複数の側鎖のそれぞれがオキシエチレン基とオキシプロピレン基とを含有する基である櫛型ポリマーを含む、黒色分散液。
【請求項2】
前記櫛型ポリマーが、下記の一般式(I)で表される重合体である、請求項1に記載の黒色分散液。
【化1】
一般式(I)において、Rは、オキシエチレン基とオキシプロピレン基を含有する基を表し、Lは、単結合または2価の連結基を表し、nは、5~30の数を表す。
【請求項3】
請求項1または2に記載の黒色分散液と、紫外線硬化型有機物と、紫外線硬化剤と、を含む、紫外線硬化型黒色組成物。
【請求項4】
前記紫外線硬化型有機物が、エチレン性不飽和結合を有するオリゴマーまたはエチレン性不飽和結合を3つ以上有する多官能モノマーである、請求項3に記載の紫外線硬化型黒色組成物。
【請求項5】
ブラックレジスト用である、請求項3または4に記載の紫外線硬化型黒色組成物。
【請求項6】
請求項3または4に記載の紫外線硬化型黒色組成物の硬化物である、樹脂組成物。
【請求項7】
請求項3または4に記載の紫外線硬化型黒色組成物の硬化物を含む、カラーフィルター用ブラックマトリクス。
【請求項8】
請求項3または4に記載の紫外線硬化型黒色組成物の硬化物を含む遮光材を有する、CMOSカメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒色分散液、紫外線硬化型黒色組成物、樹脂組成物、カラーフィルター用ブラックマトリクス、CMOSカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁性の黒色顔料は、例えば、ディスプレイ用のカラーフィルターのブラックマトリクス、CMOSカメラモジュール内の遮光材、光学接着剤として利用されている。また、黒色顔料を含む分散液は、ブラックレジストやインクジェット用の黒色インキなどの黒色パターンの形成用材料として利用されている。ブラックレジストとして、絶縁性の黒色顔料と紫外線硬化型有機物とを含む紫外線硬化型黒色組成物が知られている。
【0003】
絶縁性の黒色顔料として窒化ジルコニウム粒子を用い、紫外線硬化型有機物としてアクリルモノマー又はエポキシモノマーを用いた紫外線硬化型黒色組成物が知られている。また、紫外線硬化型黒色組成物に分散剤や可塑剤を添加することも知られている。分散剤としては、分子量が数千~数万で、絶縁性黒色顔料に吸着する官能基として二級アミン、三級アミン、カルボン酸、リン酸、リン酸エステルを含む高分子分散剤が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-38119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
紫外線硬化型黒色組成物は、黒色顔料が均一に分散されていることが好ましい。このため、紫外線硬化型黒色組成物は、分散媒に黒色顔料を分散させて均一な黒色分散液を調製し、次いでその黒色分散液と紫外線硬化型有機物とを混合することによって製造するのが一般的である。しかしながら、絶縁性の黒色顔料として用いられる窒化ジルコニウム粒子は、水分や大気によって粒子表面の酸化度(窒化度)が変化することがある。このため、窒化ジルコニウム粒子を分散させた黒色分散液を大気中で長期間保存すると、窒化ジルコニウム粒子の表面が変化することによって、窒化ジルコニウム粒子と分散剤との親和性が低下し、窒化ジルコニウム粒子が分散剤と乖離して、凝集することがあった。
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、大気中で長期間保存しても黒色粒子が凝集しにくい黒色分散液と、その黒色分散液を含む紫外線硬化型黒色組成物と、その紫外線硬化型黒色組成物を硬化させることによって得られた樹脂組成物とを提供することを目的とする。さらに、本発明は、その紫外線硬化型黒色組成物を用いたカラーフィルター用ブラックマトリクス、CMOSカメラモジュールを提供することもその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の黒色分散液は、溶媒と、黒色顔料と、高分子分散剤と、を含有し、前記溶媒は、エチレン性不飽和結合を有する単官能モノマー及び二官能モノマーの一方又は両方を含み、前記黒色顔料は、窒化ジルコニウムを含み、前記高分子分散剤は、主鎖と前記主鎖に結合した複数の側鎖とを有し、前記主鎖がポリアルキレンイミンであって、前記複数の側鎖のそれぞれがオキシエチレン基とオキシプロピレン基とを含有する基である櫛型ポリマーを含む。
【0008】
上記の構成の黒色分散液によれば、高分子分散剤の主鎖がポリアルキレンイミンであるので、黒色顔料に含まれる窒化ジルコニウムとの親和性が極めて高い。このため、溶媒中に分散された黒色粒子の表面が変化しても、黒色粒子と高分子分散剤とが乖離しにくい。また、高分子分散剤は櫛型ポリマーであって、オキシエチレン基とオキシプロピレン基を含有する基である側鎖を複数有するので、溶媒であるエチレン性不飽和結合を有する単官能モノマー及び二官能モノマーとの親和性が高い。よって、上記の構成の硬化型黒色組成物によれば、溶媒中に黒色粒子が安定して分散し、大気中で長期間保存しても黒色粒子が凝集しにくい。
【0009】
ここで、本発明の黒色分散液において、前記櫛型ポリマーが、下記の一般式(I)で表される重合体である構成とされていてもよい。
【0010】
【化1】
【0011】
一般式(I)において、Rは、オキシエチレン基とオキシプロピレン基を含有する基を表し、Lは、単結合または2価の連結基を表し、nは、5~30の数を表す。
【0012】
この場合、櫛型ポリマーの主鎖がポリエチレンイミンであり、窒化ジルコニウムの親和性が高い窒素原子を多く含むので、櫛型ポリマーと窒化ジルコニウムとの親和性がより高くなる。このため、黒色粒子と高分子分散剤とがより乖離しにくくなり、溶媒中に黒色粒子がより安定して分散し、より黒色粒子が凝集しにくい。
【0013】
また、本発明の黒色分散液においては、前記溶媒が、さらにエチレン性不飽和結合を有しない有機物を含む構成であってもよい。
この場合、エチレン性不飽和結合を有しない有機物を用いて、黒色分散液の粘度や表面張力などの物性を調整することが可能となり、黒色分散液の適用範囲を広げることができる。
【0014】
本発明の紫外線硬化型黒色組成物は、上述の黒色分散液と、紫外線硬化型有機物と、紫外線硬化剤と、を含む。
本発明の紫外線硬化型黒色組成物によれば、上述の黒色分散液を含むので、黒色粒子が安定して分散し、大気中で長期間保存しても黒色粒子が凝集しにくい。また、紫外線硬化型有機物と紫外線硬化剤とを含むので、紫外線の照射によって硬化させることができる。さらに、溶媒として含まれる単官能モノマー及び二官能モノマーは、エチレン性不飽和結合を有するので、紫外線硬化型黒色組成物を硬化させたときに、紫外線硬化型有機物の硬化物に取り込まれるため、硬化後の乾燥工程を省略もしくは簡略にすることができる。
【0015】
ここで、本発明の紫外線硬化型黒色組成物においては、前記紫外線硬化型有機物が、エチレン性不飽和結合を有するオリゴマーまたはエチレン性不飽和結合を2つ以上有する多官能モノマーである構成とされていてもよい。
この場合、紫外線硬化型有機物が、オリゴマーまたは多官能モノマーであるので、紫外線の照射によって容易に硬化させることができる。
【0016】
また、本発明の紫外線硬化型黒色組成物はブラックレジスト用である構成とされていてもよい。
この場合、紫外線硬化型黒色組成物中の黒色粒子が安定に分散されているので、均一な黒色のパターンを形成することができる。
【0017】
本発明の樹脂組成物は、上述の紫外線硬化型黒色組成物の硬化物である。
上記の構成の樹脂組成物は、上述の紫外線硬化型黒色組成物の硬化物であるので、黒色粒子が2次粒子(凝集粒子)を形成しにくく、黒色粒子が均一に分散されている。このため、上記の構成の樹脂組成物は、可視光の遮光性が均一である。
【0018】
本発明のカラーフィルター用ブラックマトリクスは、上述の紫外線硬化型黒色組成物の硬化物を含む。
上記の構成のカラーフィルター用ブラックマトリクスは、上述の紫外線硬化型黒色組成物の硬化物を含むので、可視光の遮光性が均一である。このため、上記のカラーフィルター用ブラックマトリクスを用いた液晶ディスプレイや有機ELディスプレイは、可視光のコントラストが向上する。
【0019】
本発明のCMOSカメラモジュールは、上述の紫外線硬化型黒色組成物の硬化物を含む遮光材を有する。
上記の構成のCMOSカメラモジュールは、上述の紫外線硬化型黒色組成物の硬化物を含む遮光材を有するので、不要な可視光の遮光性が高くなる。このため、上記の構成のCMOSカメラモジュールを用いたデジタルカメラは、高感度となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、大気中で長期間保存しても黒色粒子が凝集しにくい黒色分散液と、その黒色分散液を含む紫外線硬化型黒色組成物と、その紫外線硬化型黒色組成物を硬化させることによって得られた樹脂組成物とを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の一実施形態に係る黒色分散液、紫外線硬化型黒色組成物、樹脂組成物、カラーフィルター用ブラックマトリクスおよびCMOSカメラモジュールについて説明する。
【0022】
[黒色分散液]
本実施形態の黒色分散液は、溶媒と、黒色顔料と、高分子分散剤と、を含有する。
溶媒は、エチレン性不飽和結合を有する単官能モノマー及び二官能モノマーの一方又は両方を含む。エチレン性不飽和結合を有する単官能モノマー及び二官能モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系単官能モノマー及び二官能モノマー、ビニル基を有するビニル系単官能モノマーを用いることができる。アクリル系単官能モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソアミルアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。アクリル系二官能モノマーの例としては、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1、9ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルトリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ビニル系単官能モノマーの例としては、塩化ビニル、酢酸ビニルなどが挙げられる。
【0023】
溶媒として、エチレン性不飽和結合を有しない有機物を加えてもよい。エチレン性不飽和結合を有しない溶媒の例としては、エチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、ブチルカルビトール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、α-テルピネオール、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、酢酸ブチル、n-プロパノール、イソプロパノール、メタノール、エタノール、トルエンなどを挙げることができる。
【0024】
エチレン性不飽和結合を有しない溶媒を用いる場合、その含有量は、エチレン性不飽和結合を有する単官能モノマー及び二官能モノマーの合計量を100質量部に対して、1質量部以上60質量部以下の範囲内にあることが好ましい。エチレン性不飽和結合を有しない溶媒の含有量がこの範囲内にあることによって、黒色分散液の粘度や表面張力などの物性を調整することができる。エチレン性不飽和結合を有しない溶媒の含有量は、5質量部以上50質量部以下の範囲内にあることがより好ましく、10質量部以上40質量部以下の範囲内にあることが特に好ましい。
【0025】
黒色顔料は、溶媒中に黒色粒子として分散している。黒色顔料は、窒化ジルコニウムを含む。黒色顔料に含まれる黒色粒子は、窒化ジルコニウムを80質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがより好ましい。黒色粒子は、窒化ジルコニウム粒子であってもよい。窒化ジルコニウム粒子は、酸素を含んでいてもよい。また、窒化ジルコニウム粒子は、ジルコニウム以外の金属元素を含んでいてもよい。
【0026】
黒色顔料の平均粒子径は、500nm以下であってもよい。黒色顔料の平均粒子径は、10nm以上400nm以下の範囲内にあることがより好ましく、10nm以上300nm以下の範囲内にあることが特に好ましい。黒色顔料の平均粒子径は、BET法で測定したBET比表面積と密度とから、粒子形状が球形として下記の式(1)から算出したBET径である 。ここで、式(1)中、Lは黒色顔料の平均粒子径(m)、ρは黒色顔料の真密度(g/m)、Sは黒色顔料の比表面積値(m/g)である。BET比表面積は、例えば比表面積測定装置(柴田科学株式会社製、SA-1100)を用いて、窒素吸着によるBET1点法により測定できる。
L=6/(ρ×S) (1)
【0027】
黒色顔料は、例えば、酸化ジルコニウム粉末を還元触媒の存在下で窒素ガスと反応させて還元する方法(テルミット法)を用いることによって製造することができる。還元触媒としては、例えば、金属マグネシウム粉末を用いることができる。金属マグネシウム粉末に、酸化マグネシウム粉末を加えてもよい。還元触媒として金属マグネシウムを用いて製造した窒化ジルコニウム粒子は不可避不純物としてマグネシウムを含有する。窒化ジルコニウム粒子のマグネシウム含有量は0.1質量%以上5.0質量%以下の範囲内であってもよい。
【0028】
また、黒色顔料は、プラズマナノ粒子製造装置を用いて、金属ジルコニウム粒子や酸化ジルコニウム粒子を窒素ガス雰囲気下で還元する方法(プラズマ合成法)を用いることによって製造することができる。このプラズマ合成法を用いることによって、高純度の窒化ジルコニウム粒子を得ることができる。
【0029】
黒色分散液の黒色顔料の含有量は、5質量%以上50質量%以下の範囲内にあることが好ましい。黒色顔料の含有量がこの範囲内にあることによって、黒色顔料を安定に分散させることができる。黒色顔料の含有量は、5質量%以上45質量%以下の範囲内にあることがより好ましく、10質量%以上40質量%以下の範囲内にあることが特に好ましい。
【0030】
高分子分散剤は、主鎖と、この主鎖に結合した複数の側鎖とを有する櫛型ポリマーを含む。主鎖はポリアルキレンイミンである。主鎖のポリアルキレンイミンは、イミノ基とアルキレン基の繰り返し単位からなる。アルキレン基の炭素原子数は2~6の範囲内にあってもよい。ポリアルキレンイミンは、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。イミノ基の水素原子は、末端のアルキルアミノ基(-RNH:Rは、炭素原子数は2~6の範囲内にあるアルキル基)で置換されていてもよく、アルキルアミノ基のアミノ基の水素はさらにアルキルアミノ基で置換されていてもよい。アルキルアミノ基のアルキル基の水素は、オキシエチレン基とオキシプロピレン基を含有する基で置換されていてもよい。複数の側鎖のそれぞれは、オキシエチレン基とオキシプロピレン基を含有する基である。それぞれの側鎖に含まれるオキシエチレン基の数は1~20の範囲内にあってもよく、オキシプロピレン基の数は1~20の範囲内にあってもよい。複数個のオキシエチレン基およびオキシプロピレン基はそれぞれブロック共重合体を形成してもよい。櫛型ポリマーの主鎖は、黒色粒子に含まれる窒化ジルコニウムと結合し、櫛型ポリマーの側鎖は溶媒に含まれるエチレン性不飽和結合を有する単官能モノマーと結合する。また、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定から求められる高分子分散剤の数平均分子量(Mn)は500~10000の範囲内にあってもよい。
【0031】
櫛型ポリマーは、下記の一般式(I)で表される重合体であってもよい。
【0032】
【化2】
【0033】
一般式(I)において、nは、5~30の数を表す。
一般式(I)において、単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基は、酸素原子(-O-)、カルボニル基(-CO-)、炭素原子数が1~8の範囲にあるアルキレン基およびこれらの2種以上の基を組み合わせた基であってもよい。アルキレン基は、置換基を有していてもよいし、置換基を有していなくてもよい。置換基の例は、炭素原子数が1~3のアルキル基である。2種以上の基を組み合わせた基としては、酸素原子とアルキレン基を組み合わせた基、酸素原子とカルボニル基とアルキレン基を組み合わせた基を用いることができる。酸素原子とアルキレン基を組み合わせた基の例としては、*-O-アルキレン基-O-*(*は、ポリアルキレンイミンの炭素原子と結合する結合手を表し、*は、Rと結合する結合手を表す)を挙げることができる。酸素原子とカルボニル基とアルキレン基を組み合わせた基の例としては、-*-O-CO-アルキレン基-CO-O-*(*は、ポリアルキレンイミンの炭素原子と結合する結合手を表し、*は、Rと結合する結合手を表す)を挙げることはできる。
【0034】
一般式(I)において、Rは、オキシエチレン基とオキシプロピレン基とを含有する基である。Rは、下記の一般式(II)または(III)で表される基であってもよい。
-(PO)-(EO)-X・・・(II)
-(PO)r-(EO)s-(PO)t-(EO)u-X・・・(III)
【0035】
一般式(II)および(III)において、POは、オキシプロピレン基を表し、EOは、オキシエチレン基を表す。Xは、水素原子またはメチル基を表す。一般式(II)のpおよびqは、1~20のいずれかの数を表す。一般式(III)のr、s、tおよびuは、それぞれ1~10のいずれかの数を表す。
【0036】
黒色分散液の高分子分散剤の含有量は、黒色顔料100質量部に対して、1質量部以上50質量部以下の範囲内にあることが好ましい。高分子分散剤の含有量がこの範囲内にあることによって、黒色顔料の分散性を向上させることができる。高分子分散剤の含有量は、2質量部以上45質量部以下の範囲内にあることがより好ましく、5質量部以上40質量部以下の範囲内にあることが特に好ましい。
【0037】
黒色分散液は、その他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、界面活性剤、可塑剤やレベリング剤などのレオロジーコントロール剤などが挙げられ、これらは複数種を組み合わせて使用してもよい。また、黒色分散液は、単官能モノマー及び二官能モノマーの重合を抑制するために、重合禁止剤を含んでいてもよい。
【0038】
黒色分散液は、例えば、溶媒と、黒色顔料と、高分子分散剤とを混合し、得られた混合物を分散処理することによって製造することができる。分散処理装置としては、ビーズミルや超音波分散機などを用いることができる。
【0039】
以上のような構成とされた本実施形態の黒色分散液によれば、高分子分散剤の主鎖がポリアルキレンイミンであるので、黒色顔料に含まれる窒化ジルコニウムとの親和性が極めて高い。このため、溶媒中に分散された黒色粒子の表面が変化しても、黒色粒子と高分子分散剤とが乖離しにくい。また、高分子分散剤は櫛型ポリマーであって、オキシエチレン基とオキシプロピレン基を含有する基である側鎖を複数有するので、溶媒であるエチレン性不飽和結合を1つ有する単官能モノマーとの親和性が高い。よって、本実施形態の硬化型黒色組成物によれば、溶媒中に黒色粒子が安定して分散し、大気中で長期間保存しても黒色粒子が凝集しにくい。
【0040】
また、本実施形態の黒色分散液において、櫛型ポリマーが、上記の一般式(I)で表される重合体である構成とされている場合は、櫛型ポリマーの主鎖がポリエチレンイミンであり、窒化ジルコニウムの親和性が高い窒素原子を多く含むので、櫛型ポリマーと黒色粒子との親和性がより高くなる。このため、黒色粒子と高分子分散剤とがより乖離しにくくなり、溶媒中に黒色粒子がより安定して分散し、より黒色粒子が凝集しにくくなる。
【0041】
また、本実施形態の黒色分散液においては、溶媒として、さらにエチレン性不飽和結合を有しない有機物を加えて、黒色分散液の粘度や表面張力などの物性を調整してもよい。これによって、黒色分散液の適用範囲を広げることができる。
【0042】
[紫外線硬化型黒色組成物]
本実施形態の紫外線硬化型黒色組成物は、上述の黒色分散液と、紫外線硬化型有機物と、紫外線硬化剤と、を含む。すなわち、紫外線硬化型黒色組成物は、溶媒と、黒色顔料と、高分子分散剤と、紫外線硬化型有機物と、紫外線硬化剤と、を含む。紫外線硬化型黒色組成物の黒色顔料の含有量は、例えば、0.1質量%以上60質量%以下の範囲内にある。
【0043】
紫外線硬化型有機物としては、例えば、エチレン性不飽和結合を有するオリゴマーまたはエチレン性不飽和結合を3つ以上有する多官能モノマーを用いることができる。エチレン性不飽和結合を有するオリゴマーは、(メタ)アクリロイル基を2つ以上有するアクリル系オリゴマーであってもよい。アクリル系オリゴマーは、アクリル系単官能モノマーが重合した低分子量の重合体である。アクリル系オリゴマーの例としては、アクリル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。アクリル系オリゴマーの分子量は、例えば、数平均分子量で1000以上10000以下の範囲内にあってもよい。これらの(メタ)アクリレートモノマーおよびオリゴマーは単独あるいは2種以上を併用して使用できる。また、アクリル系オリゴマーは上記に記載されるものに限定されるものではなく、一般的に流通しているオリゴマーを使用することができる。エチレン性不飽和結合を有する多官能モノマーは、(メタ)アクリロイル基を3つ以上有するアクリル系多官能モノマーであってもよい。アクリル系多官能モノマーの例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
紫外線硬化型有機物の含有量は、例えば、紫外線硬化型黒色組成物100質量部に対して、5質量部以上99質量部以下の範囲内にある。
【0044】
紫外線硬化型黒色組成物は、他の紫外線硬化型有機物を含んでいてもよい。他の紫外線硬化型有機物としては、例えば、スチレン系モノマー、カチオン硬化性モノマーなどを用いることができる。スチレン系モノマーの例としては、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンを挙げることができるカチオン硬化性モノマーの例としては、オキセタンを挙げることができる。
【0045】
紫外線硬化剤としては、紫外線、具体的には100~400nmの波長の光を吸収し、重合反応を開始できる化合物が好ましい。紫外線硬化剤は、例えば、ラジカル発生剤であってもよいし、光酸発生剤であってもよい。紫外線硬化剤の例としては、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、トリアジン化合物、ホスフィンオキシド系化合物、スルホニウム系化合物、有機過酸化物を用いることができる。アセトフェノン系化合物の例としては、アセトフェノン、ジメチルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンを挙げることができる。ベンゾフェノン系化合物の例としては、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノンを挙げることができる。ベンゾインエーテル系化合物の例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテルを挙げることができる。ホスフィンオキシド系化合物の例としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシドを挙げることができる。スルホニウム系化合物の例としては、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート、トリ-p-トリルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナートを挙げることができる。有機過酸化物の例としては、過酸化ベンゾイル、過酸化クメンを挙げることができる。
紫外線硬化剤の含有量は、例えば、紫外線硬化型有機物100質量部に対して、0.5質量部以上15質量部以下の範囲内にある。
【0046】
紫外線硬化型黒色組成物は、可塑剤を含んでいてもよい。可塑剤の例としては、例えば、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪族-塩基性エステル系可塑剤、脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤、二価アルコールエステル系可塑剤、オキシ酸エステル系可塑剤を用いることができる。リン酸エステル系可塑剤の例としては、リン酸トリブチル、リン酸2-エチルヘキシルを挙げることができる。フタル酸エステル系可塑剤の例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジブチルを挙げることができる。脂肪族-塩基性エステル系可塑剤の例としては、オレイン酸ブチル、グリセリンモノオレイン酸エステルを挙げることができる。脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤の例としては、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシルを挙げることができる。二価アルコールエステル系可塑剤の例としては、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチラートを挙げることができる。オキシ酸エステル系可塑剤の例としては、アセチルリシノール酸メチル、アセチルクエン酸トリブチルを挙げることができる。
可塑剤を用いる場合、その含有量は、例えば、紫外線硬化型有機物100質量部に対して、1質量部以上100質量部以下の範囲内にある。
【0047】
紫外線硬化型黒色組成物は、保存安定性の向上のために、重合禁止剤を含んでいてもよい。重合禁止剤としてはヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、t-ブチルフェノールなどのフェノール誘導体、ベンゾキノン、2-メチル-1,4-ベンゾキノンなどのベンゾキノン誘導体、ジニトロベンゼン、ニトロフェノールなどのニトロ化合物、ニトロソベンゼン、フェノチアジン、フェニル-t-ブチルニトロンなどのニトロソ化合物、塩化鉄(III)、硫黄などが挙げられる。これらの重合禁止剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
重合禁止剤を用いる場合、その含有量は、紫外線硬化型黒色組成物の紫外線照射による硬化時に、硬化を阻害しない範囲であればよく、例えば、紫外線硬化型有機物100質量部に対して、5.0×10―4質量部以上5.0×10―2質量部以下の範囲内にある。
【0048】
紫外線硬化型黒色組成物は、その他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、界面活性剤、レベリング剤などのレオロジーコントロール剤などが挙げられ、これらは複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
紫外線硬化型黒色組成物は、例えば、黒色分散液と、紫外線硬化型有機物と、紫外線硬化剤とを混合することによって製造することができる。混合方法としては、特に制限はなく、例えば、遊星撹拌機、ビーズミル、三本ロールミルなどの混合装置を用いて混合することができる。
【0050】
以上のような構成とされた本実施形態の紫外線硬化型黒色組成物によれば、上述の黒色分散液を含むので、黒色粒子が安定して分散し、大気中で長期間保存しても黒色粒子が凝集しにくい。また、紫外線硬化型有機物と紫外線硬化剤とを含むので、紫外線の照射によって硬化させることができる。また、本実施形態の紫外線硬化型黒色組成物において、紫外線硬化型有機物が、エチレン性不飽和結合を有するオリゴマーまたはエチレン性不飽和結合を2つ以上有する多官能モノマーである構成とされている場合は、紫外線の照射によって容易に硬化させることができる。また、本実施形態の紫外線硬化型黒色組成物は黒色粒子が安定に分散されているので、ブラックレジストとして用いることによって、均一な黒色のパターンを形成することができる。
【0051】
[樹脂組成物]
本実施形態の樹脂組成物は、上述の硬化型黒色組成物の硬化物である。樹脂組成物は、例えば、硬化型黒色組成物を基板の上に塗布して塗布膜を形成する。硬化型黒色組成物が紫外線硬化性を有しない溶媒を含む場合は、塗布膜中の溶媒を揮発除去する。次に、この塗布膜に紫外線を照射して、紫外線硬化型有機物を重合させて樹脂を生成させる。紫外線の光源としては、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、UV―LEDなどが使用でき、紫外線硬化剤の吸収波長に合致する波長を有する光源であれば、特に限定されない。
【0052】
以上のような構成とされた本実施形態の樹脂組成物によれば、上述の紫外線硬化型黒色組成物の硬化物であるので、黒色粒子が凝集粒子を形成しにくく、黒色粒子が均一に分散されている。このため、本実施形態の樹脂組成物は、可視光の遮光性が均一である。本実施形態の樹脂組成物は、カラーフィルター用ブラックマトリクス、ブラックレジスト、CMOSカメラモジュールの遮光材として有利に用いることができる。
【0053】
本実施形態の樹脂組成物は、樹脂の遮光性(透過率の減衰)を表す指標の一つであるOD値(Optical Density値、光学濃度)が、例えば、2.5以上であり、好ましくは3.0以上である。OD値の上限は、例えば、5.0以下である。
OD値は、光が黒色膜を通過する際に吸収される度合を対数で表示したものであって、次の式(2)で定義される。式(2)中、Iは透過光量であり、Iは入射光量である。
OD値=-log10(I/I)・・・(2)
樹脂組成物中の黒色粒子の分散性が良好であるほど、樹脂組成物のOD値は高い値を示す傾向がある。
【0054】
[カラーフィルター用ブラックマトリクス]
本実施形態のカラーフィルター用ブラックマトリクスは、上述の紫外線硬化型黒色組成物の硬化物を含む。カラーフィルター用ブラックマトリクスは、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイのブラックマトリクスとして用いることができる。本実施形態のカラーフィルター用ブラックマトリクスは、上述の紫外線硬化型黒色組成物の硬化物を含むので、可視光の遮光性が均一である。このため、本実施形態のカラーフィルター用ブラックマトリクスを用いた液晶ディスプレイや有機ELディスプレイは、可視光のコントラストが向上する。
【0055】
[CMOSカメラモジュール]
本発明のCMOSカメラモジュールは、上述の紫外線硬化型黒色組成物の硬化物を含む遮光材を有する。CMOSカメラモジュールは、デジタルカメラの固体撮像素子として用いることができる。本実施形態のCMOSカメラモジュールは、上述の紫外線硬化型黒色組成物の硬化物を含む遮光材を有するので、不要な可視光の遮光性が高くなる。このため、本実施形態のCMOSカメラモジュールを用いたデジタルカメラは、高感度となる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【実施例0057】
本実施例では、高分子分散剤として、下記の分散剤A~Fを用いた。
分散剤A:主鎖がポリエチレンイミンで、側鎖がオキシエチレン基とオキシプロピレン基とを有する基である櫛型ポリマー(数平均分子量:3500)
分散剤B:主鎖(吸着基)がポリエチレンイミンで、側鎖がオキシエチレン基とオキシプロピレン基とを有する基である櫛型ポリマー(数平均分子量:3000)
分散剤C:主鎖(吸着基)がポリエチレンイミンで、側鎖がオキシエチレン基とオキシプロピレン基とを有する基である櫛型ポリマー(数平均分子量:4000)
分散剤D:吸着基がリン酸基であり、構造式が(CO)1836(HP)(n=1~10、x=1~3)であるリン酸エステル系分散剤(数平均分子量:1000)
分散剤E:主鎖(吸着基)が(ポリ)カルボン酸であり、カルボン酸に結合した不飽和アルキル基を有する櫛型ポリマー(数平均分子量:1500)
分散剤F:吸着基がリン酸基であり、リン酸に接続したオキシエチレン基と、オキシエチレン基に結合したオキシプロピレン基からなるリン酸エステル(数平均分子量:3000)
【0058】
[本発明例1]
乳鉢に、平均一次粒子径が50nmの二酸化ジルコニウム粉末7.4質量部、平均一次粒子径が150μmの金属マグネシウム粉末7.3質量部、酸化マグネシウム粉末7.3質量部を投入し、乳棒を用いて混合して、混合物を得た。この混合物を石英製ガラス管に黒鉛のボートを内装した反応装置を用いて窒素ガスの雰囲気下、700℃の温度で60分間焼成して焼成物を得た。この焼成物を、20g/リットルの濃度で水に分散し、得られた分散液のpHが1未満とならないように10%塩酸水溶液を徐々に添加した後、分散液を液温が100℃を超えないように保ちながら攪拌して焼成物を洗浄した。次いで、分散液に25%アンモニア水を添加してpHを7~8に調整した後、分散液を濾過して固形分を回収した。回収した固形分を水中に100g/リットルの濃度で再分散し、もう一度、前記と同様に酸洗浄、アンモニア水でのpH調整をした後、濾過した。このように酸洗浄-アンモニア水によるpH調整を2回繰り返した後、濾過物をイオン交換水に固形分換算で500g/リットルで分散させ、60℃での加熱撹拌とpH7への調整をした後、吸引濾過装置で濾過し、さらに等量のイオン交換水で洗浄し、設定温度:120℃の熱風乾燥機にて乾燥して窒化ジルコニウムを含有する黒色顔料を得た。得られた黒色顔料は、平均粒子径(BET径)が30nmであった。
【0059】
上記で得られた黒色顔料を20質量部、上記の分散剤Aを4質量部(黒色顔料に対する含有量として20質量%)、溶媒としてベンジルアクリレートを全成分の合計量が100質量部となる量で秤量した。秤量した各成分を、0.5mm径のジルコニアビーズを用いたビーズミル中で24時間混合して、黒色分散液を製造した。得られた黒色分散液は、黒色粒子の含有量が20質量%である。
【0060】
[本発明例2~14および比較例1~3]
高分子分散剤及び溶媒として、下記の表1に示すものを用いたこと、黒色顔料に対する高分子分散剤の含有量が下記の表1の値となるように高分子分散剤及び溶媒の配合量を変えたこと以外は、本発明例1と同様にして、本発明例2~14および比較例1~3の黒色分散液を製造した。
【0061】
[評価]
製造直後の黒色分散液の一部を抜き取り、ベンジルメタクリレートで粒子濃度が1質量%となるまで希釈して希釈黒色分散液を調製した。得られた希釈黒色分散液の黒色粒子の平均粒子径(散乱強度換算)を、動的光散乱式粒度分布計(スペクトリス社製 ゼータサイザーナノZSP)を用いて測定した。その結果を、製造直後の平均粒子径として表1に示す。
【0062】
また、黒色分散液を遮光ガラス瓶に入れて密封し、温度40℃の環境で100時間静置した。このとき、12時間おきにガラス瓶の蓋を5分間開放した。保存後の黒色分散液を保存前と同様に希釈して希釈黒色分散液を作製し、黒色粒子の平均粒子径を測定した。その結果を、40℃100時間保存後の平均粒子径として表1に示す。
【表1】
【0063】
表1の結果から、黒色分散液の高分子分散剤として、主鎖がポリアルキレンイミンであって、複数の側鎖のそれぞれがオキシエチレン基とオキシプロピレン基とを含有する基である分散剤A~Cを用いた本発明例1~14の黒色分散液は、40℃の環境で100時間保存した後も、黒色粒子の平均粒子径の変化は小さく、黒色粒子が良好な分散状態を維持することが確認された。これに対して、吸着官能基としてリン酸基またはカルボン酸基を持つ分散剤D~Fを用いた比較例1~3の黒色分散液は、40℃の環境で100時間静置した後に分散液が不安定となり、分散液中の黒色粒子が沈降または平均粒子径が増大した。
【0064】
[本発明例15]
本発明例1で得られた黒色分散液を40℃100時間保存した後のものを20質量部、紫外線硬化型有機物としてウレタンアクリレート(UF-07DF、共栄社化学株式会社製)を755質量部、紫外線硬化剤としてビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドを23質量部の割合で秤量し、遊星撹拌機(泡取り練太郎、シンキー社製)を用いて混合および脱泡して、紫外線硬化型黒色組成物を製造した。得られた紫外線硬化型黒色組成物は、黒色顔料の含有率が0.5質量%であって、紫外線硬化剤の含有量が紫外線硬化型有機物100質量部に対して3.0質量部である。
【0065】
[本発明例16~28および比較例4~6]
黒色分散液として下記の表2に示す本発明例で得られた黒色分散液を40℃100時間保存した後のものを用い、紫外線硬化型有機物及び紫外線硬化剤として、下記の表2に示すものを用いたこと、および黒色分散液、紫外線硬化型有機物及び紫外線硬化剤の配合量wを表2に示す量を変更したこと以外は、本発明例15と同様にして、16~28および比較例4~6の紫外線硬化型黒色組成物を製造した。なお、本発明例15~28で得られた紫外線硬化型黒色組成物の黒色顔料の含有率はいずれも0.5質量%である。
【0066】
[評価]
得られた紫外線硬化型黒色組成物をφ5mm、深さ1mmの型に注型した後、スポット型UV-LED照射器(8332C、シーシーエス株式会社製)を用いて照度4000mW/cm、波長365nmの紫外線を3分間照射して紫外線硬化を行った。得られた硬化物を型から取り出して黒色樹脂組成物を得た。
得られた黒色樹脂組成物のOD値を、透過濃度計(T5plus、伊原電子工業株式会社製)を用いて測定した。その結果を表2に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
表2の結果から、本発明例1~14の黒色分散液を40℃100時間保存した後のものを用いた本発明例15~28の紫外線硬化型黒色組成物を硬化させて得た黒色樹脂組成物はいずれもODが3以上と高い値を示すことが確認された。これに対して、比較例1~3の黒色分散液を40℃100時間保存した後のものを用いた比較例4~6の紫外線硬化型黒色組成物を硬化させて得た黒色樹脂組成物はいずれもODが2.5未満と低くなった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本実施形態の黒色分散液は、大気中で長期間保存しても黒色粒子が凝集しにくく、溶媒中に黒色粒子が安定して分散している。このため、本実施形態の黒色分散液を含む紫外線硬化型黒色組成物は、例えば、ブラックレジストやインクジェット用の黒色インキなどの黒色パターンの形成用材料として利用することができる。また、この紫外線硬化型黒色組成物の硬化物である本実施形態の樹脂組成物は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどのディスプレイで利用される画像形成素子のブラックマトリクスやCMOSセンサなどのイメージセンサ内の遮光材として利用することができる。またさらに、本実施形態の樹脂組成物は、光学部材用遮光材、遮光フィルタ、IRカットフィルタ、カバーレイフィルムの材料としても利用することができる。