(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065893
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】ビワ葉粉末を含む抗アレルギー用サプリメント
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20230508BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230508BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20230508BHJP
A61K 36/73 20060101ALI20230508BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20230508BHJP
【FI】
A23L33/105
A61P37/08
A61P3/02
A61K36/73
A23L19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176297
(22)【出願日】2021-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】505243696
【氏名又は名称】農業生産法人 有限会社十津川農場
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 邦義
(72)【発明者】
【氏名】玉置 博祥
【テーマコード(参考)】
4B016
4B018
4C088
【Fターム(参考)】
4B016LC07
4B016LE02
4B016LG16
4B016LP01
4B016LP13
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE03
4B018MD04
4B018MD10
4B018MD32
4B018MD47
4B018MD48
4B018MD67
4B018ME07
4B018MF02
4B018MF03
4B018MF07
4B018MF08
4C088AB51
4C088AC05
4C088BA07
4C088BA18
4C088BA23
4C088BA32
4C088MA35
4C088MA52
4C088NA05
4C088ZB13
4C088ZC21
(57)【要約】
【課題】本発明は代表的にはアレルギー作用を軽減する手段を提供することを目的とする。また本発明は睡眠障害を軽減する手段を提供することを目的とする。また本発明は精神的疲労感を軽減する手段を提供することを目的とする。また本発明はストレスを軽減する手段を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、代表的には有効量のビワ葉粉末を含む抗アレルギー用サプリメント及びその製造方法を提供する。また本発明は、有効量のビワ葉粉末を含む睡眠障害用サプリメント及びその製造方法を提供する。また本発明は、有効量のビワ葉粉末を含む精神的疲労感を軽減するためのサプリメント及びその製造方法を提供する。また本発明は、有効量のビワ葉粉末を含むストレス用サプリメント及びその製造方法を提供する。
【選択図】
図4-5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗アレルギー作用を発揮するのに有効な量のねじめビワ葉粉末を含む、抗アレルギー用サプリメントであって、抗アレルギー作用を発揮するのに有効な量が1日当たり2075mgのねじめビワ葉粉末である、前記サプリメント。
【請求項2】
アレルギー性鼻炎に関連する睡眠障害を軽減するのに有効な量のねじめビワ葉粉末を含む、睡眠障害用サプリメントであって、睡眠障害を軽減するのに有効な量が1日当たり2075mgのねじめビワ葉粉末である、前記サプリメント。
【請求項3】
精神的疲労感を軽減するのに有効な量のねじめビワ葉粉末を含む、精神的疲労感軽減用サプリメントであって、精神的疲労感を軽減するのに有効な量が1日当たり2075mgのねじめビワ葉粉末である、前記サプリメント。
【請求項4】
ストレス又はアレルギーに関連するストレスを軽減するのに有効な量のねじめビワ粉末を含む、ストレス軽減用サプリメントであって、ストレスを軽減するのに有効な量が1日当たり2075mgのねじめビワ葉粉末である、前記サプリメント。
【請求項5】
1日当たり2075mgのねじめビワ葉粉末が、83重量%のビワ葉粉末を含む1錠250mgのねじめビワ葉粉末サプリメントの、1日10錠摂取によりもたらされる、請求項1~4のいずれか1項に記載のサプリメント。
【請求項6】
抗アレルギー作用を発揮するのに有効な量のねじめビワ葉粉末を含む抗アレルギー用サプリメントを製造する方法であって、
(i)ねじめビワ葉を粉砕して粉末を得る工程、
(ii) 粉砕した粉末を、1錠あたり207.5mgのねじめビワ葉粉末を含む250mg錠となるよう打錠することを含む工程、
(iii) 1錠あたり207.5mgのねじめビワ葉粉末を含む250mg錠剤を1日10錠摂取することを推奨することを記載した使用説明書を添付する、又は1日10錠摂取することを推奨することを記載したパッケージに包装する工程、
を含む、前記製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビワ葉粉末を含む抗アレルギー用サプリメント及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビワ葉は、ビワ茶の嗜好飲料に利用され、ビワ茶として親しまれているのみならず、古くから漢方に配合される薬として用いられている。
【0003】
特許文献1には、ビワ葉を利用して風味のあるビワ茶を多量に製造する方法及び製造設備が開示されている。該方法ではトルマリン石焙煎によりねじめビワ茶を製造する。
【0004】
一方、特許文献1の段落番号[0004]に「従来のビワ茶製造の材料となるビワの葉は、果実の収穫を目的とした果実栽培種が利用されているため、栄養分は果実に集まり、ビワの葉に栄養分が十分に行き渡らないため、薬用として利用しても本来の効果は得られないという欠点がある」という記載があるように、従来では、ビワ葉は薬用として十分に効果を発揮していなかった。
【0005】
しかしながら近年、ビワ葉の有する機能性が明らかにされつつある。例えば、ビワ葉に含まれているポリフェノール成分のヒト口腔癌細胞に対する細胞傷害活性(非特許文献1)、ビワ葉に含まれるメガスチグマン配糖体の抗発癌プロモーション作用(非特許文献2)、ビワ葉の抗腫瘍活性作用(非特許文献3)及び抗酸化作用(非特許文献4)などが報告されている。
【0006】
また、従来において、ビワには以下のような活性又は利用方法があることが開示されている。例えば特許文献2には、ビワ又はその抽出物がマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP-1)阻害活性を有することが開示されている。
【0007】
特許文献3には、ビワの木の葉を焼いて炭にして粉末状食品素材とすることが開示されている。
【0008】
特許文献4には、ビワの生葉を切断し、蒸気で蒸し、熱風を送りつつ揉み、乾燥させ、整形した後、再度乾燥させることにより香気と旨味とを増すように仕上げることを特徴とした漢方茶の製造方法が開示されている。
【0009】
特許文献5には、ビワ葉又はビワ茶の抽出物又は精製物を有効成分として含有し、且つ抗高脂血症作用、高血圧抑制作用、癌細胞増殖抑制作用、癌細胞アポトーシス誘導作用、活性酸素種産生作用、高血糖降下作用及び抗酸化作用から成る群から選択される1以上の作用を有する飲食品又は医薬品が開示されている。
【0010】
特許文献6はビワ茶の抗腫瘍作用と肝機能改善作用を記載している。
【0011】
花粉症やアトピー性皮膚炎はアレルギーの一種であり、過剰な免疫反応が原因で引き起こされることが知られている。花粉や食物タンパク質などの抗原が体内に侵入すると、免疫系により異物として認識され、抗原に特異的に反応する抗体が体内で産生される。そして、再び同じ抗原が体内に侵入した際、抗原と抗体とが結合し抗体の架橋が起こり、体内から抗原を排除するための免疫反応としてヒスタミンやβ-ヘキソサミニダーゼなどが放出され、アレルギー症状が起こる。近年、花粉症やアトピー性皮膚炎の発症率は高まっており、その傾向は若い世代に顕著である。したがって花粉症やアトピー性皮膚炎を抑制する、又は症状を緩和する手段が求められている。また、アレルギーによる睡眠障害や睡眠不足が問題となっており、これを軽減又は緩和する手段が求められている。また、精神的疲労感やストレスが問題となっており、これを軽減又は緩和する手段が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3452351号公報
【特許文献2】特開第2005-008539号公報
【特許文献3】特開第2004-154108号公報
【特許文献4】特開第2004-105036号公報
【特許文献5】特許第4974116号公報(特願2007-524050)
【特許文献6】特開第2014-101286号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Ito, H.ら,「Chem. Pharm. Bull.」,2000年,第48巻,p.687-693
【非特許文献2】Ito, H.ら,「J. Agric. Food Chem.」,2002年,第50巻,p.2400-2403
【非特許文献3】吉田隆志ら,「Bio Industry」,2003年,第20巻,p.27-33
【非特許文献4】Jung, H.ら,「Arch. Pharm. Res.」,1999年,第22巻,p.213-218
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明者らは、ビワ葉抽出物が抗アレルギー作用を有することをこれまでに確認した。しかしながら、これまでの知見は、あくまで定性的な特性であり、また主に細胞レベル又は試験管レベルでのものであった(in vitro)。そのため、どの程度のビワ葉抽出物又はビワ葉粉末を接種すれば、ヒトにおけるアレルギー反応を効果的に緩和できるかは、必ずしも明確ではなかった(in vivo)。ビワ葉抽出物を含むサプリメントも市販されているが、ビワ葉由来成分の含有量は商品によって異なり、また、どのような含有量のサプリメントをどの程度接種すれば、有意の抗アレルギー作用が発揮されるかは不明であった。また、ビワ葉抽出物の、精神的疲労感やストレスに対する効果はこれまで厳密に評価されているとは言い難く、不明であった。
【0015】
上記の実情に鑑み、本発明は、ある実施形態において、抗アレルギー作用を発揮するのに有効な量のビワ葉粉末を含む抗アレルギー用サプリメント、及び、その製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、特定の実施形態において、アレルギー性鼻炎に関連する睡眠障害を軽減するのに有効な量のビワ葉粉末を含む抗アレルギー用サプリメント、及び、その製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、特定の実施形態において、精神的疲労感又はストレスを軽減するのに有効な量のビワ葉粉末を含む抗アレルギー用サプリメント、及び、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、食品成分によりアレルギー症状を緩和できるか、鋭意検討した結果、特定の量のビワ葉粉末を含むサプリメントを摂取することにより、ヒトにおいて、アレルギー症状を緩和することができることを見出し、これを一実施形態として包含する本発明を完成した。また、本発明者らは、特定の量のビワ葉粉末を含むサプリメントを摂取することにより、ヒトにおいて、アレルギー性鼻炎に関連する睡眠障害を緩和することができることを見出し、これを一実施形態として包含する本発明を完成した。また、本発明者らは、特定の量のビワ葉粉末を含むサプリメントを摂取することにより、ヒトにおいて、精神的疲労感を緩和することができることを見出し、これを一実施形態として包含する本発明を完成した。また、本発明者らは、特定の量のビワ葉粉末を含むサプリメントを特定の量にて摂取することにより、ヒトにおいて、ストレスを緩和することができることを見出し、これを一実施形態として包含する本発明を完成した。
【0017】
すなわち、本発明は以下の実施形態を包含する。
[1] 抗アレルギー作用を発揮するのに有効な量のねじめビワ葉粉末を含む、抗アレルギー用サプリメントであって、抗アレルギー作用を発揮するのに有効な量が1日当たり2075mgのねじめビワ葉粉末である、前記サプリメント。
[2] アレルギー性鼻炎に関連する睡眠障害を軽減するのに有効な量のねじめビワ葉粉末を含む、睡眠障害用サプリメントであって、睡眠障害を軽減するのに有効な量が1日当たり2075mgのねじめビワ葉粉末である、前記サプリメント。
[3] 精神的疲労感を軽減するのに有効な量のねじめビワ葉粉末を含む、精神的疲労感軽減用サプリメントであって、精神的疲労感を軽減するのに有効な量が1日当たり2075mgのねじめビワ葉粉末である、前記サプリメント。
[4] ストレス又はアレルギーに関連するストレスを軽減するのに有効な量のねじめビワ粉末を含む、ストレス軽減用サプリメントであって、ストレスを軽減するのに有効な量が1日当たり2075mgのねじめビワ葉粉末である、前記サプリメント。
[5] 1日当たり2075mgのねじめビワ葉粉末が、83重量%のビワ葉粉末を含む1錠250mgのねじめビワ葉粉末サプリメントの、1日10錠摂取によりもたらされる、1~4のいずれかに記載のサプリメント。
[6] 抗アレルギー作用を発揮するのに有効な量のねじめビワ葉粉末を含む抗アレルギー用サプリメントを製造する方法であって、
(i)ねじめビワ葉を粉砕して粉末を得る工程、
(ii) 粉砕した粉末を、1錠あたり207.5mgのねじめビワ葉粉末を含む250mg錠となるよう打錠することを含む工程、
(iii) 1錠あたり207.5mgのねじめビワ葉粉末を含む250mg錠剤を1日10錠摂取することを推奨することを記載した使用説明書を添付する、又は1日10錠摂取することを推奨することを記載したパッケージに包装する工程、
を含む、前記製造方法。
【発明の効果】
【0018】
特定の実施形態において、本発明に係るビワ葉粉末含有サプリメントにより、アレルギー症状を軽減することができる。また、特定の実施形態において、本発明に係るビワ葉粉末含有サプリメントにより、睡眠障害を軽減することができる。また、特定の実施形態において、本発明に係るビワ葉粉末含有サプリメントにより、精神的疲労感を軽減することができる。また、特定の実施形態において、本発明に係るビワ葉粉末含有サプリメントにより、ストレスを軽減することができる。本発明に係るサプリメントは上記の効果の1以上を発揮しうる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】サンプル添加後の1細胞あたりのβ-ヘキソサミニダーゼ活性(%)を示す(平均値±SD、n=3) (*p < 0.05, **p < 0.01)。
【
図2-1】ビワ葉に含まれるトリテルペン類のHPLCクロマトグラムを示す。8分付近のピークがMA、8.5-9分付近のピークがCA、13分付近のピークがOA、13.5-14分付近のピークがUAである。
【
図2-2】各種ビワ葉抽出物についての、サンプル添加後の1細胞あたりのβ-ヘキソサミニダーゼ活性(%)を示す(平均値±SD、n=3) (*p < 0.05, **p < 0.01)。
【
図4-1】プラセボ群と試験群との間のアレルギー性鼻炎症状(鼻の症状)の比較結果を示す。各値は平均値である。エラーバーは標準誤差を示す。プラセボ群は鼻のかゆみが悪化したのに対し、試験品群は軽減した。
【
図4-2】プラセボ群と試験群との間のアレルギー性鼻炎症状(目の症状)の比較結果を示す。各値は平均値である。エラーバーは標準誤差を示す。*:p<0.05。プラセボ群では摂取前後で目のかゆみが有意に悪化したが、試験品群では軽減した。
【
図4-3】プラセボ群と試験群との間のアレルギー性鼻炎症状(睡眠障害)の比較結果を示す。各値は平均値である。エラーバーは標準誤差を示す。**:p<0.1。試験品群において、摂取前後で睡眠障害の項目が有意に軽減した。
【
図4-4】プラセボ群と試験群との間のアレルギー性鼻炎症状(一般的状態)の比較結果を示す。各値は平均値である。エラーバーは標準誤差を示す。*:p<0.05。試験品群において、摂取前後で総括的評価(アレルギー性症状、心身の状態を含む)に有意な好転が認められた。
【
図4-5】プラセボ群と試験群との間のアレルギー性鼻炎症状の比較結果を示す。サプリメント又はプラセボ摂取の前後での一般的状態の違いを示す。各値は平均値である。エラーバーは標準誤差を示す。*:p<0.05。プラセボ群と比較して、試験品群における摂取前後の変化量は有意に大きく、アレルギーによる総合的評価がより好転した。
【
図5-1】プラセボ群と試験群との間の精神的疲労の比較結果を示す。各値は平均値である。エラーバーは標準誤差を示す。*:p<0.05。試験品群において、摂取前後で精神的疲労の有意な低下が認められた。
【
図5-2】プラセボ群と試験群との間の自覚ストレスの比較結果を示す。各値は平均値である。エラーバーは標準誤差を示す。**:p<0.1。試験品群において、摂取前後で自覚ストレスの有意な低下が認められた。
【
図6-1】プラセボ群と試験群との間の水分量の比較結果を示す。各値は平均値である。エラーバーは標準誤差を示す。*:p<0.05。プラセボ群では、摂取前後で頬部位の水分量に有意な低下が認められたが、試験品群では認められなかった。
【
図6-2】プラセボ群と試験群との間のTEWLの比較結果を示す。各値は平均値である。エラーバーは標準誤差を示す。*:p<0.05。試験品群において、摂取前後で腕部位のTEWLに有意な低下が認められた。
【
図6-3】プラセボ群と試験群との間のメラニンの比較結果を示す。各値は平均値である。エラーバーは標準誤差を示す。*:p<0.05。試験品群において、摂取前後で腕部位のメラニンの有意な低下が認められた。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。ある実施形態において、本発明は、抗アレルギー用サプリメントを提供する。該サプリメントは、抗アレルギー作用を発揮するのに有効な量のビワ葉粉末を含む。ある実施形態において、抗アレルギー作用を発揮するのに有効な量は、接種者が1日当たり約2075mgのねじめビワ葉粉末を接種することとなる量である。
【0021】
別の実施形態において、本発明は、睡眠障害用サプリメントを提供する。該サプリメントは、睡眠障害を軽減するのに有効な量のビワ葉粉末を含む。ある実施形態において、睡眠障害を軽減するのに有効な量は、接種者が1日当たり約2075mgのねじめビワ葉粉末を接種することとなる量である。1日当たり約2075mgのねじめビワ葉粉末を接種することとなる量がサプリメントに含まれていれば、サプリメントは、睡眠障害を軽減するのに有効な量のビワ葉粉末を含むこととなる。そのため、1日当たり約2075mgのねじめビワ葉粉末を接種することとなる量以上の量を含むサプリメントは、睡眠障害を軽減するのに有効な量のビワ葉粉末を含む睡眠障害用サプリメントに該当する。ある実施形態において、睡眠障害は、アレルギー性鼻炎に関連する睡眠障害である。
【0022】
別の実施形態において、本発明は、精神的疲労感軽減用サプリメントを提供する。該サプリメントは、精神的疲労感を軽減するのに有効な量のビワ葉を含む。ある実施形態において、精神的疲労感を軽減するのに有効な量は、接種者が1日当たり約2075mgのねじめビワ葉粉末を接種することとなる量である。1日当たり約2075mgのねじめビワ葉粉末を接種することとなる量がサプリメントに含まれていれば、サプリメントは、精神的疲労感を軽減するのに有効な量のビワ葉粉末を含むこととなる。そのため、1日当たり約2075mgのねじめビワ葉粉末を接種することとなる量以上の量を含むサプリメントは、精神的疲労感を軽減するのに有効な量のビワ葉粉末を含む精神的疲労感軽減用サプリメントに該当する。ある実施形態において、精神的疲労感は、アレルギーに関連する精神的疲労感である。
【0023】
別の実施形態において、本発明は、ストレス軽減用サプリメントを提供する。該サプリメントは、ストレスを軽減するのに有効な量のビワ葉を含む。ある実施形態において、ストレスを軽減するのに有効な量は、接種者が1日当たり約2075mgのねじめビワ葉粉末を接種することとなる量である。1日当たり約2075mgのねじめビワ葉粉末を接種することとなる量がサプリメントに含まれていれば、サプリメントは、ストレスを軽減するのに有効な量のビワ葉粉末を含むこととなる。そのため、1日当たり約2075mgのねじめビワ葉粉末を接種することとなる量以上の量を含むサプリメントは、ストレスを軽減するのに有効な量のビワ葉粉末を含むストレス軽減用サプリメントに該当する。ある実施形態において、ストレスはアレルギーに関連するストレスである。
【0024】
ビワ葉としては、新鮮葉又は乾燥葉を使用することができる。ビワ(枇杷、学名: Eriobotrya japonica)は、バラ科の常緑高木である。ビワ葉としては、例えばねじめビワ葉(商品名)が挙げられる。ねじめビワ葉(ネジメビワ葉とも標記される)は、鹿児島県農業生産法人有限会社十津川農場(以下、単に十津川農場と記載することがある)から入手し得る。ある実施形態において、ねじめビワ葉粉末は、十津川農場から市販されている(製品カタログ番号:NBT83)サプリメントとすることができる。別の実施形態において、ねじめビワ茶を熱水抽出に供して抽出物を取得し、該抽出物を減圧乾燥、及び凍結乾燥に供することによりねじめビワ葉抽出物を得ることができる。
【0025】
ある実施形態において、本発明は、抗アレルギー作用を発揮するのに有効な量のビワ葉粉末を含む抗アレルギー用サプリメントを製造する方法を提供する。この製造方法は、
(i)ねじめビワ葉を粉砕して粉末を得る工程、
(ii) 粉砕した粉末を、1錠あたり207.5mgのねじめビワ葉粉末を含む250mg錠となるよう打錠することを含む工程、
(iii) 1錠あたり207.5mgのねじめビワ葉粉末を含む250mg錠剤を1日10錠摂取することを推奨することを記載した使用説明書を添付する、又は1日10錠摂取することを推奨することを記載したパッケージに包装する工程、
を含み得る。工程(ii)は、1錠あたり83重量%のねじめビワ葉粉末を含む250mg錠となるよう打錠することを含む工程とすることもできる。
【0026】
本明細書において、抗アレルギー作用とは、アレルギー症状を軽減又は緩和することをいい、具体的には有効量の本開示のサプリメントを接種した後のアレルギー性鼻炎が、本開示のサプリメントの接種前と比較して、又はプラセボ対照と比較して、有意に軽減されていることをいう。本明細書において、アレルギー性鼻炎は、特に断らない限り、奥田らを中心に作成された日本アレルギー性鼻炎QOL質問票(Japanese Rhino-conjunctivitis Quality of Life Questionnaire、以下本明細書においてJRQLQと表記することがある)(奥田ら、Acta Otolaryngol. 2005 Jul;125(7):736-44)により評価されるアレルギー性鼻炎をいうものとする。
【0027】
本明細書において、睡眠障害の軽減とは、睡眠の質が改善される、不眠症が軽減される、入眠までの時間が短縮される又は合計睡眠時間がより長くなることをいい、具体的には有効量の本開示のサプリメントを接種した後の睡眠障害が、本開示のサプリメントの接種前と比較して、又はプラセボ対照と比較して、有意に軽減されていることをいう。本明細書において、特に断らない限り、睡眠障害は、JRQLQ中の睡眠に関する項目により評価されるものとする。アレルギー性鼻炎に関連する睡眠障害もJRQLQ中の睡眠に関する項目により評価されるものとする。
【0028】
本明細書において、精神的疲労感の軽減とは、有効量の本開示のサプリメントを接種した後の疲労感が、本開示のサプリメントの接種前と比較して、又はプラセボ対照と比較して、有意に軽減されていることをいう。本明細書において疲労感は、特に断らない限り、日本疲労学会による疲労感尺度VAS(Visual Analogue Scale)により評価されるものとする。疲労感尺度VASは備考欄のものを使用する。
【0029】
本明細書において、ストレスの軽減とは、有効量の本開示のサプリメントを接種した後のストレスが、本開示のサプリメントの接種前と比較して、又はプラセボ対照と比較して、有意に軽減されていることをいう。本明細書においてストレスは、特に断らない限り、日本語版CFS(chronic fatigue syndrome)及び疲労感尺度VASにより評価されるストレスをいうものとする。日本語版CFSはOkuyama ら、Journal of Pain and Symptom Management 2000;19:5-14に報告されている。
【0030】
本発明に係るサプリメントは、例えば経口投与用に製剤化され得る。製剤の形態としては、特に限定されないが、例えば錠剤、顆粒剤、カプセル剤、粉末剤などが挙げられる。
【0031】
ある実施形態において、本発明に係るビワ葉粉末を含むサプリメントは、ビワ葉粉末を賦形剤と共に打錠し得る。これにより有効成分の一日摂取量を安定化させることができる。かかるサプリメントは、健康補助食品又は特定保健用食品として使用することができる。別の実施形態において、本発明に係るビワ葉粉末を含むサプリメントは、例えば、錠剤、カプセル、又は顆粒などの形態とし、健康補助食品又は特定保健用食品とすることができる。サプリメント、錠剤、カプセル、又は顆粒には、必要に応じて甘味料、調味料、乳化剤、懸濁化剤、防腐剤などを添加してもよく、あるいはビタミン類、栄養剤、免疫増強剤などを添加してもよい。
【0032】
ある実施形態において、本発明に係るサプリメントに含まれるビワ葉粉末の有効量は、ビワ葉粉末の乾燥重量として、1000mg/日~5000mg/日、1500mg/日~4000mg/日、1600mg/日~3000mg/日、1800mg/日~2500mg/日、2000mg/日~2200mg/日、例えば約2075mg/日とすることができる。ある実施形態において、本発明に係るサプリメントに含まれるビワ葉粉末の有効量は、摂取する成人体重1 kgあたり例えば10~200 mg、10~150 mg、例えば10~100 mgに相当する範囲内の量とすることができる。ある実施形態において、本発明に係るサプリメントに含まれるビワ葉粉末の有効量は、約2075mg/日とすることができ、これは例えば1製品あたり約207.5mgを含む投与単位を10単位、例えば1製品あたり約415mgを含む投与単位を5単位、又は例えば1製品あたり約2075mgを含む投与単位を1単位により達成し得るが、これに限らない。
【0033】
本発明に係るサプリメントを含むサプリメント、錠剤、カプセル、又は顆粒は、ビワ葉粉末以外に、さらに製薬上許容可能な担体(賦形剤若しくは希釈剤)並びに結合剤、増量剤、滑沢剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤、懸濁化剤、保存剤、着色剤、風味剤及び甘味料などから適宜選択される添加剤を含み得る。例えば、結合剤の例としては、デンプン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが挙げられる。増量剤としては、ラクトース、微結晶セルロースなどが挙げられる。滑沢剤としては、タルク、シリカ、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムなどが挙げられるがこれに限らない。崩壊剤としては、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウムなどが挙げられる。湿潤剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。乳化剤としては、セルロース誘導体、ソルビトールなどが挙げられる。また、保存剤としては、メチル-p-ヒドロキシベンゾエート、ソルビン酸などが挙げられる。甘味料としては還元マルトース(マルチトール、還元麦芽糖ともいう)が挙げられるがこれに限らない。賦形剤としては、例えばカルシウム海藻、及び柑橘系繊維(シトラスファイバーともいう)が挙げられるがこれに限らない。ただし、本発明に使用できる添加剤は、これらに限定されない。ある実施形態において、本発明に係るサプリメントは、有効成分のほかに、カルシウム海藻、柑橘系繊維、ステアリン酸カルシウムを含み得る。
【0034】
ある実施形態において、本発明は、ビワ葉粉末サプリメントの使用説明書を提供する。使用説明書には、サプリメントについて推奨される一日摂取量を記載しうる。ある実施形態において、一日摂取量は2075mgのねじめビワ葉粉末である。別の実施形態において、一日摂取量は83重量%のビワ葉粉末を含む250mg錠を1日10錠である。推奨量は、同等の有効成分となる同等の記載とすることもできる。ある実施形態において、使用説明書は、サプリメント錠剤の包装に添付され得る。別の実施形態において、使用説明書、又は1日推奨量は、サプリメント錠剤の包装に記載されうる。別の実施形態において、使用説明書又は1日推奨量は、特定のウェブサイト、ウェブアドレス又はURLに記載され得る。例えば使用説明書は、その内容がサプリメント包装に物理的に含まれるわけではなく、1日推奨量又は使用説明書の詳細な内容を取得するための情報のみを、サプリメント錠剤の包装に含めるか又は記載し得る。そしてウェブアドレス又はURL先に、本発明のサプリメント錠剤又はその1日推奨量の詳細を記載した情報が提供されてもよい。このような場合も、実体的にはサプリメントの摂取者は、最終的に摂取に必要な情報を取得できる。そのため、本明細書では便宜上、「使用説明書を添付する」、又は、特定の摂取量を「推奨することを記載した包装に包装する」とは、包装が詳細な情報を記載した使用説明書を含む態様のみならず、包装が詳細な情報を取得することのできるウェブアドレスやURL情報等のみ記載した簡便な説明書又は資料を含む態様、或いは詳細な情報は特定のウェブサイト、ウェブアドレス又はURLにのみ記載される態様も包含するものとする。
【実施例0035】
以下の実施例は例示のみを意図したものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0036】
下記の実施例において使用するねじめビワ茶は、鹿児島県農業生産法人有限会社十津川農場から市販されているものを入手した。また、特に断らない限り、試薬は、市販されているか、又は当技術分野で慣用の手法、公知文献の手順に従って入手又は調製する。ウルソール酸(98%)及びマスリン酸(98%)の標準はフナコシ社から入手した。オレアノール酸(97%)及びコロソリン酸(98%)の標準は和光純薬(富士フイルム和光純薬)から入手した。これらをLC/MS系の検量線のための標準として用いた。LC/MSグレードのアセトニトリル及びメタノールは和光純薬から入手した。各実施例に伴う図中の結果は、各群の平均値又は平均値±標準誤差で示す。
【0037】
[実施例1]抗アレルギー活性試験
まず、ねじめビワ葉由来単離化合物が抗アレルギー活性に及ぼす影響を評価する。好塩基球のモデル細胞としてラット好塩基球白血病細胞(RBL-2H3)を用いた。抗アレルギー活性の評価は、脱顆粒の際に放出されるβ-ヘキソサミニダーゼを指標として実施した。
【0038】
[評価サンプル]
ウルソール酸、オレアノール酸、マスリン酸およびコロソリン酸(いずれもねじめビワ葉由来成分)を評価した。
【0039】
[実験方法]
1.細胞培養
ラット好塩基球白血病細胞(RBL-2H3)はEagle's minimal essential Medium (EMEM)(含1 %ペニシリン-ストレプトマイシンおよび10 %ウシ胎児血清(FBS))を用いて、細胞がコンフルエントになるまでφ10 cmディッシュにて前培養した。その後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、培地に再懸濁後、96穴プレートに5.0×104 cells/wellの濃度で播種し(β-ヘキソサミニダーゼ測定用および細胞生存率測定用)、CO2インキュベーター(37℃, 5% CO2)でオーバーナイト培養した。
【0040】
2.β-ヘキソサミニダーゼ活性の測定
オーバーナイト培養後、サンプルを含むタイロード液100 μLに交換し、CO2インキュベーターにて1時間培養した。培養後、アレルギー刺激物質であるA 23187を含むタイロード液100 μLをブランク以外のウェルに添加した。ブランクには、タイロード液100 μLを添加した。CO2インキュベーター内で3時間培養後、新しい96穴プレートに細胞上清50 μLを移した。β-ヘキソサミニダーゼを含む細胞上清に、基質(p-nitrophenyl-N-acethyl-β-glucosaminide)溶液50 μLを添加し、アルミ箔で遮光し、室温で3時間反応させた。反応後、反応停止液を添加し、酵素反応を停止させ、プレートリーダーにて405 nmの吸光度を測定し、β-ヘキソサミニダーゼ活性を測定した。
【0041】
3.MTT法による細胞生存率の測定
オーバーナイト培養後、サンプルを含むEMEM無血清培地(含1 %ペニシリン-ストレプトマイシン)を100 μL添加し、CO2インキュベーターにて1時間培養した。サンプル添加1時間後、サンプル含有培地を除去し、96穴プレートの各ウェルにサンプルを含まない無血清培地(含1 %ペニシリン-ストレプトマイシン)を100 μL加えた。次いで、各ウェルにMTT染色液(PBS中5 mg/ml)を20 μL添加し、CO2インキュベーターにて4時間静置培養した。培地を除去し、各ウェルに塩酸-イソプロパノール溶液を100 μLずつ加え、ピペッティングにてホルマザンを完全に溶解させた。マイクロプレートリーダーで570 nmにおける吸光度を測定し、細胞生存率を算出した。ポジティブコントロールとして、ケルセチン(終濃度100 μM)を使用した。コントロールはジメチルスルホキシド(DMSO)を用いた。
【0042】
結果および考察
ねじめビワ葉由来単離化合物のウルソール酸、オレアノール酸、マスリン酸およびコロソリン酸が抗アレルギー活性に及ぼす影響について検討するため、サンプル添加後のβ-ヘキソサミニダーゼ活性および細胞生存率を評価した。
図1に、ウルソール酸、オレアノール酸、マスリン酸およびコロソリン酸添加後の1細胞あたりのβ-ヘキソサミニダーゼ活性(%)を示す。ねじめビワ葉由来のウルソール酸、オレアノール酸、マスリン酸には高濃度域において強い抗アレルギー活性が期待できることが明らかになった。また、ウルソール酸添加時のIC50は5.40 μM、オレアノール酸がIC50=21.20 μM、マスリン酸がIC50=22.08 μMであった。また、コロソリン酸も弱いながらも抗アレルギー活性が認められた。以上の結果から、本実施例で使用したねじめビワ葉由来単離化合物のウルソール酸、オレアノール酸、マスリン酸およびコロソリン酸は抗アレルギー活性を示すことが確認できた。
【0043】
[実施例2]抗アレルギー活性試験
次に、ビワ葉抽出物の抗アレルギー活性を細胞試験により調べた。また、ビワ葉粉末と、ビワ葉抽出物を含むサプリメントとでトリテルペン含有量に違いがないか確認した。
【0044】
材料および方法
ビワ(Eriobotrya japonica)葉、及び、ビワ葉を含むサプリメントは、戸津川農場(鹿児島)によって収穫され製造された。これを
図7に示す製造工程にて錠剤とした。サプリメントは1錠あたり250mgにて製造され、83%のビワ葉粉末、5%の還元マルトース、5%の海藻カルシウム、4.5%の柑橘類繊維、及び2.5%のステアリン酸カルシウムで構成されていた(いずれも重量%)。
【0045】
ビワ葉の抽出物の調製と分析
サンプル(100mgのビワ葉粉末)に酢酸エチル(5mL)を加え、超音波抽出(45℃、15分)を行った。遠心分離(3,500rpm、15分)を行い、上澄み上清を回収した。この手順を4回繰り返した。上清をロータリーエバポレーター(45℃)で除去することにより、溶媒を除去した。乾燥した固形物をメタノール/クロロホルム混合物中に再度溶解し、HPLC分析のサンプルとして使用した。
【0046】
HPLC分析
ウルソール酸、マスリン酸、オレアノール酸、及びコロソリン酸の標準液のメタノール溶液をHPLCで分析し、ピークとその位置を確認した。ビワ葉の酢酸エチル抽出物もHPLCで分析し、抽出物中のウルソール酸、マスリン酸、オレアノール酸、コロソリン酸を同定した。
【0047】
Agilent社のAgilent 1220 Infinity LCシステムをPenomenex Prodigy(250×4.6 mm、5μm)とともに使用し、移動相は6 mMギ酸アンモニウム/メタノール(10:90、v/v)水溶液で、単一層条件を使用した。検出には蒸発光散乱検出器(ELSD)を使用した。ELSD検出器はネブライザー温度を30℃、エバポレーター温度を80℃に設定した。
【0048】
結果と考察
標準化合物のキャリブレーション
ウルソール酸(0.025-0.5 mg/ml)、マスリン酸(0.0125-0.25 mg/mL)、オレアノール酸(0.025-0.5 mg/mL)、コロソリン酸(0.01-0.4 mg/mL)の標準溶液をメタノール中で調製した。溶液を、0.22μm(Millex-GVフィルター)メンブレンフィルターでろ過し、HPLCで分析した。各点の評価を3回繰り返した。 それぞれの検量線は良好な直線性を示した(ウルソール酸:r2 = 0.999、マスリン酸:r2 = 0.999、オレアノール酸:r2 = 0.999、およびコロソリン酸:r2 = 0.999)(図は示さず)。
【0049】
ビワの葉のトリテルピン類酢酸エチル抽出物のHPLC分析
HPLC結果を
図2-1に示す。また、下記表に、毎月収集されたビワの葉のトリテルペンの含有量を示す。
【0050】
【0051】
結果は、UA> MA> CA> OAの順に含量が多いことを示した。毎月採取したビワの葉のトリテルペン含有量は、MAで13.86%もあり、年間を通じた含有量の変動はMAが最も大きかった。表の結果は、ビワ葉のトリテルペン含有量が年間を通じて比較的安定しており、季節による大きな影響を受けないことを示している。本発明者らの知る限り、ビワ葉のトリテルペン含有量が年間を通じてさほど変動しないことについて、これまでに定量性をもって厳密に確認した報告例はない。トリテルペン類が有効成分となるビワ葉やビワ葉抽出物を用いた機能性食品開発では、有効成分含有量が、年間を通じて安定しているのか、特定の季節は多めの含有量が必要か、などが作用効果を奏効する上で、あるいは品質管理の上で、重要となる。今回の結果は、ビワ葉やビワ粉末を用いた機能性食品開発における品質管理に役立つと期待される。
【0052】
ビワ葉粉末を含む錠剤のトリテルペン含有量も推定した。この錠剤は下記実施例の臨床試験で用いる錠剤と同じものである。ビワ葉を含むサプリメント中のビワ葉粉末の含有量は83%であったため、定量分析からのこの値に基づいて葉1グラムあたりの含有量を計算した。結果はビワ葉サンプルとビワ葉粉末を含む錠剤サンプルとの間に差がないことを示した。これは、錠剤形態のサプリメントの製造工程がトリテルペン含有量に影響を与えないことを示しており、また、この分析方法が、ビワの葉と臨床試験に用いたビワ葉粉末サプリメントの両方の分析に有効であることを示している。
【0053】
錠剤は1錠250mgにて製造され、1日当たり10錠の摂取が予定された。そこでサプリメント10錠中のUA、MA、OA、CA含量を計算した。その結果、10錠のサプリメント中には、7.06±0.08mgのマスリン酸(MA)、5.92±0.004 mgのコロソリン酸(CA)、2.23±0.03 mgのオレアノール酸(OA)、および12.32±0.10 mgのウルソール酸(UA)が、含まれる、と計算された。
【0054】
[実施例3]ビワ茶抽出物を含むサプリメントの生体内効果の臨床試験
実施例1において、ねじめビワ葉由来成分であるウルソール酸、オレアノール酸、マスリン酸およびコロソリン酸について、高濃度域において強い抗アレルギー活性が細胞試験において確認された(in vitro)。また、実施例2において、ビワ葉抽出物の抗アレルギー活性が細胞試験により確認された。また、ビワ葉に含まれる成分の年間を通じての含量も確認された。そこで、経口投与されるビワ茶抽出物サプリメントの生体内での効果を確認するための臨床試験を行った(in vivo)。
【0055】
ねじめビワ葉粉末を含むサプリメントの調製
ねじめビワ葉(Eriobotrya japonica)抽出物は鹿児島県農業生産法人有限会社十津川農場から入手した。ねじめビワ葉(ねじめびわ茶ともいう)を殺菌した粉末を、還元麦芽糖水飴(マルチトール、還元マルトースともいう)、シトラスファイバー(柑橘系繊維)、海藻カルシウム(カルシウム海藻ともいう)と共に秤量し、篩過の後、混合し、造粒した。造粒には5%アルコールを用いた。次いでこれを乾燥させ、整粒し、秤量する際に、造粒品にステアリン酸カルシウムを加えた。篩過の後、混合し、打錠した。金属検知、計量の後、梱包した。
図7を参照のこと。ねじめビワ葉粉末サプリメント(製品カタログ番号:NBT83)は、1錠当たり250mgの合計重量とし、1日10錠を摂取するよう設計した。サプリメントは、83.0重量%のビワ葉粉末、5.0重量%の還元マルトース、5.0重量%のカルシウム海藻、4.5重量%の柑橘系繊維、及び2.5重量%のステアリン酸カルシウムを1錠に含んだ。プラセボ製品は、37.9重量%のデキストリン、40重量%のコーンスターチ、20.0重量%の結晶セルロース、2.1重量%のステアリン酸カルシウム、ヒドロ器プロピルセルロース、及び天然着色料を1錠に含んだ。
【0056】
臨床試験及び倫理規定
臨床試験は、プラセボ対照二重盲検ランダム化並行群間比較試験として、2018年11月12日から2018年12月15日まで、九州大学大学院、生物資源環境学府、環境農学専攻、森林圏環境資源科学研究室にて行った。群構成として、年齢が20歳以上の一般的に健康な男女を対象とし、被験者数として、プラセボ群15名、試験品群15名とした。介入として、プラセボ群、試験品群、ともに1日250mg×10錠のサプリメントを摂取した。使用期間は4週間とした。
【0057】
評価項目
質問紙として、日本語版CFS、疲労感尺度VAS(備考欄参照)、アトピー性皮膚炎評価、アレルギー性鼻炎評価をそれぞれ使用した。
肌質測定は、水分量、水分蒸散量、粘弾性、メラニンの測定により行った。測定部位は左頬、及び左腕とした。
【0058】
試験は、近畿大学、産業理工学部倫理委員会により承認され(2017年3月4日)、大学病院医療情報ネットワークセンターにID: 000034859として臨床試験登録された。統計的有意性に達するビワ葉粉末の経口投与に関する試験はこれまでになかったため、別のサプリメントの経口投与後に統計的有意性を検出した過去の研究を参考にした。その結果、4週間のサプリメント摂取後に0.05の有意性αにて、20%以上の経表皮水分蒸散量(transepidermal water loss、TEWL)値の違いを検出するには、試験群及び対照群ともに、少なくとも8検体必要と考えられた。そこで下記表の選択基準及び除外基準に従って、20歳以上の健康な成人(n=30)を臨床試験に加えた。調査官から独立したスタッフが選択基準を決定した。女性の自主的参加者は、この研究についての目的、方法、補償、秘匿性、及び離脱の権利を記載したインフォームドコンセントに署名した。2つの臨床施設と協力することにより、有害事象が発生した場合には医師に相談することができるよう手配した。
【0059】
【0060】
ランダム化
ランダム化は一元化され、調査員から独立したスタッフによってコンピューターで生成された乱数のリストに基づいて実行された。ランダム化は、年齢とBMI及び性別(40歳未満かつBMI 21未満、40歳未満かつBMI 21以上、40歳以上かつBMI 21未満、40年以上かtBMI 21以上)の層別ランダムサンプリングに基づいて実施した。また、各アームの同数について適応ランダム化を施した。調査員の誰も、グループの割り当てを認識しておらず、割り当てに関与しなかった。
【0061】
試験スケジュール
すべての参加者は、割り当てられた試験配合物を2錠(経口)、1日1回服用した。試験の弱点を最小化するために、すべての参加者には、類似の栄養補助食品、医薬部外品、または医薬品の摂取を控えることを要件とした。また、フェイスマスクやパック、マッサージなどのスキンケアトリートメントを使用したり、試験の開始から終了まで毎日のスキンケア化粧品を変更することも禁止した。各参加者は、評価のために研究室を2回訪れた。すなわち、ベースラインでの、試験製剤の摂取前(0週間)と、効力測定のための試験製剤摂取の4週間後(4週間W)である。参加者は、訪問日の朝に毎日のスキンケア製品を適用するよう求められ、各訪問ごとに製品を取り外した。測定は、左頬(右耳たぶの下端から5 cmの内側の位置)と左上腕(内側、肘の3 cm上)で行った。クレンジングシート(ビフェスタクレンジングシート、マンダム株式会社、大阪、日本)を使用して対象の皮膚領域を洗浄し、洗浄液を含む綿(ビフェスタフェイスウォッシュ、マンダム株式会社)で拭き、温水ですすぎ、拭き取り、安定した温度(23±5℃)および湿度条件(50%±15%)で20分間、乾燥させた。
【0062】
アレルギー性鼻炎の症状と皮膚領域の測定
アレルギー性鼻炎の症状を評価するために、日本の耳鼻咽喉科で一般的に使用されている日本アレルギー性鼻炎標準QOL質問票(JRQLQ)[22]を用いた。この指標では、スコアが高いほど症状が深刻であることを意味する。皮膚の水分量(任意単位; au)、TEWL(g/h/m2)、およびメラニン指数の測定は、それぞれCorneometer(登録商標)CM825、TEWAMETER(登録商標)TM300、及びMexameter(登録商標)MX18(いずれの機器もCourage and Khazaka、ケルン、ドイツ)を用いて行った。3つの中間値を使用して、平均値を計算した。
【0063】
結果
主要な結果は、JRQLQで評価したアレルギー性鼻炎の症状に関するサプリメントの経口投与に対する応答であった。二次的な結果は、皮膚の状態に関する応答、すなわち、皮膚の水分量、TEWL、及び皮膚測定装置に基づく皮膚メラニン指数であった。
【0064】
統計分析
SPSS(バージョン25.0、シカゴ、イリノイ、米国)を使用してデータを分析した。2つの群の間で年齢と体重の定量的な人口統計変数を比較するために、独立したサンプルのt検定を用いた。2つの群の間の皮膚状態の定量的人口統計変数を比較するために、マン・ホイットニーU検定を用いた。試験の開始時と比較した試験終了時の変数の変化は、Wilcoxon符号順位検定で測定した。2つの群の間のパラメーターの変化を比較するために、Mann-WhitneyU検定及び反復測定分散分析(Repeated measure ANOVA)を用いた。統計的有意性はp <0.05とした。
【0065】
結果 ベースラインでの人口統計情報
2018年11月12日から2018年12月15日まで、個人的な理由で試験から離脱した3人の参加者を除いて、27人の健康な成人が試験を完了した(
図3)。各群の背景特性を下記に示す。年齢、身長、体重、BMI指数において、2つの群の間に有意差はなかった。
【0066】
【0067】
ビワ葉粉末含有サプリメントのアレルギー性鼻炎症状に対する影響
アレルギー性鼻炎の評価では、4週間での一般的な状態の変化の観察された数、すなわち(維持または改善)と(悪化)とに関し、プラセボ群と試験群との間で有意差が観察された(p = 0.041)(下記表、
図4-1、
図4-2、
図4-3、
図4-4、
図4-5)。
【0068】
【0069】
ビワ葉粉末含有サプリメントの皮膚状態に対する影響
左頬の皮膚と左上腕の皮膚という2つの皮膚切片を測定したが、プラセボ群の頬の皮膚の水分量は、ベースラインから4週間の処置後にかけて有意に減少した。どちらの群でも、他の頬の皮膚の状態の値に有意な進展はなかった(下記表)。一方で、腕の皮膚の質の3つのパラメーターは、試験群でのみ有意に変化した。腕の皮膚の水分量は大幅に減少したが(p = 0.019)、腕の皮膚のTEWLは改善された(p = 0.004)。
【0070】
【0071】
ビワ葉粉末含有サプリメント投与群の4週間後の腕の皮膚のメラニン指数も改善された(p = 0.009)(下記表)。
【0072】
【0073】
本臨床試験では、ビワ葉粉末含有サプリメントの経口摂取の、健康な成人のアレルギー症状及び皮膚状態に対する影響を調べた。そこで作用機序について考察する。IgE抗体とアレルゲン抱合体刺激を受けた後に肥満細胞が脱顆粒すると、アレルギー反応はヒスタミン、プロスタグランジン、ケモカイン、サイトカインなどの伝達物質を放出することによって引き起こされる。トリテルペノイドであるマスリン酸(MA)、コロリン酸(CA)、オレアノール酸(OA)g、及びウルソール酸(UA)が抗アレルギーおよび抗炎症活性を示すことを細胞実験にて確認した(実施例1)。また、1錠の合計重量が250mgであるビワ葉粉末サプリメント10錠中に、マスリン酸(MA)が約7mg、コロリン酸(CA)が約6mg、オレアノール酸(OA)が約2mg、及びウルソール酸(UA)が約12mg含まれることを確認した(実施例2)。本臨床試験で確認されたビワ葉粉末サプリメントの抗アレルギー活性などの作用効果は、有効量にて含まれるこれらの化合物の抗アレルギー及び抗炎症活性が寄与しているものと思われる。
【0074】
精神的疲労及び自覚ストレスに関しては、試験群においてサプリメント摂取の前後で、精神的疲労の有意な低下が認められ(
図5-1)、また、自覚ストレスの有意な低下が見られた(
図5-2)。
【0075】
皮膚の状態分析に関しては、試験群の腕の皮膚の水分量は減少したが、皮膚バリア機能のパラメータであるTEWLが大幅に改善された(
図6-1、
図6-2)。またメラニンの有意な低下が確認された(
図6-3)。メラニンの低下は、色素沈着の低下を意味し、すなわち肌質改善を表す。この試験は、空気が乾燥した秋から冬の季節に実施され、参加者は、試験の前の4週間以内に化粧品の使用を変更しないように指示された。ビワ葉粉末含有サプリメント摂取の影響は、衣服で保護されているが化粧品で処理されていない腕の皮膚において明らかであった。また、皮膚バリア機能の向上が観察された。この臨床試験は、ビワ葉粉末含有サプリメントが、アレルギーの症状を軽減し、肌の状態を維持するのに役立つことを実証している。
【0076】
ビワ葉には種々の化合物が含まれていることがこれまでに報告されており、また一部の化合物についてはin vitroでの細胞試験も行われているが、in vivoで実際に抗アレルギー作用を発揮するには、或いは皮膚の状態を維持するには、いかなる量のビワ葉粉末が必要か、予測することは容易ではなかった。そのような中で、本発明者らの知る限り、本試験は、アレルギーや皮膚の状態の症状に対するビワ葉粉末の経口摂取の影響を臨床的に評価した最初の臨床試験である。
特定の実施形態において、本発明により、抗アレルギー作用を有するビワ葉粉末含有サプリメントが提供される。特定の実施形態において、本発明に係るサプリメントによりアレルギーを軽減又は緩和し得る。特定の実施形態において、本発明により、睡眠障害緩和作用を有するビワ葉粉末含有サプリメントが提供される。本発明に係るサプリメントにより睡眠障害を軽減又は緩和し得る。特定の実施形態において、本発明により、精神的疲労感軽減作用を有するビワ葉粉末含有サプリメントが提供される。本発明に係るサプリメントにより精神的疲労感を軽減又は緩和し得る。