(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065912
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】磁気治療器
(51)【国際特許分類】
A61N 2/08 20060101AFI20230508BHJP
【FI】
A61N2/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176334
(22)【出願日】2021-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000112299
【氏名又は名称】ピップ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519242908
【氏名又は名称】島川 祐一
(71)【出願人】
【識別番号】521472195
【氏名又は名称】市川 能也
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河合 邦親
(72)【発明者】
【氏名】島川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】市川 能也
【テーマコード(参考)】
4C106
【Fターム(参考)】
4C106AA01
4C106BB07
4C106CC02
4C106DD01
4C106FF06
4C106FF15
(57)【要約】
【課題】人体の外部への磁界の漏洩を抑制可能であり、かつ、皮膚への取り付けが容易な磁気治療器を提供することを目的とする。
【解決手段】磁気治療器1は、人体の皮膚に取り付けられて使用される。磁気治療器1は、皮膚と接触する接触面1a側に配置され、可撓性を有する第1の母材11aを有する第1のシート11と、接触面1a側と反対側である非接触面1b側に配置され、可撓性を有する第2の母材12aを有する第2のシート12とを備えている。第1のシート11は、第1の母材11aに磁粉11bを含み、磁粉11bによって、接触面1a側の表面が多極着磁されて人体に磁界を及ぼすように構成されている。第2のシート12は、第2の母材12aに軟磁性粉12bを含み、軟磁性粉12bによって、磁界の非接触面1b側への漏洩を抑制するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の皮膚に取り付けられて使用される磁気治療器であって、
前記磁気治療器は、
前記皮膚と接触する接触面側に配置され、可撓性を有する第1の母材を有する第1のシートと、
前記接触面側と反対側である非接触面側に配置され、可撓性を有する第2の母材を有する第2のシートと
を備え、
前記第1のシートは、前記第1の母材に磁粉を含み、前記磁粉によって、前記接触面側の表面が多極着磁されて前記人体に磁界を及ぼすように構成されており、
前記第2のシートは、前記第2の母材に軟磁性粉を含み、前記軟磁性粉によって、前記磁界の前記非接触面側への漏洩を抑制するように構成されている、
磁気治療器。
【請求項2】
前記第1のシートは、短冊形状の複数の磁気セルを備え、
前記複数の磁気セルは、前記接触面側から見た平面視で、隣接する磁気セルが前記短冊形状の長辺で隣接し、かつ、互いに反対の磁極の向きとなるように、略同一平面上に連続して配置されている、請求項1記載の磁気治療器。
【請求項3】
前記軟磁性粉は、鉄から構成されている、請求項1または2記載の磁気治療器。
【請求項4】
前記磁粉は、ネオジム磁石から構成されている、請求項1または2記載の磁気治療器。
【請求項5】
前記第1の母材および前記第2の母材はそれぞれ、シリコーン樹脂から構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の磁気治療器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の皮膚に取り付けられて使用される磁気治療器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血行促進などの磁気治療効果を目的として、たとえば錠剤型の磁石を粘着シートによって人体の皮膚に貼り付けて使用する磁気治療器が一般的に用いられている。ところが、錠剤型の磁石は、通常3mm~5mm程度の大きさであるので、錠剤型の磁石を人体の患部に当たるように貼り付けることが困難である。
【0003】
このような問題を解決するために、たとえば特許文献1には、可撓性を有する磁気シートを含む磁気治療器が開示されている。特許文献1の磁気治療器は、数cm~数十cmの方形の大きさで用いることができるので、人体の皮膚の比較的広い範囲に貼り付けて使用することができる。したがって、特許文献1の磁気治療器は、磁気治療効果が必要な人体の患部に及ぶように容易に貼り付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、スマートフォン、スマートウォッチ、タブレット型パソコンなどの携帯型電子機器が普及している。特許文献1では、人体の皮膚に貼り付けられた磁気治療器からの磁界が、人体の内部だけでなく外部にも比較的広い範囲で及ぶ。そのため、磁気治療器の使用者が携帯型電子機器を使用すると、磁気治療器からの磁界が携帯型電子機器にも及び、携帯型電子機器を誤作動させることが懸念される。したがって、磁気治療器と携帯型電子機器とを併用することができない。
【0006】
このような携帯型電子機器の誤作動を抑制するために、磁気シートを金属箔などによって人体の皮膚と反対側で被覆することで、磁気治療器からの磁界を遮蔽することが考えられる。しかし、この場合、遮蔽効果を高めるために、金属箔を厚くすると、金属箔の剛性が高くなり、磁気治療器が皮膚に追従して変形しにくくなる。そのため、磁気治療器をうまく皮膚に取り付けにくくなる。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、人体の外部への磁界の漏洩を抑制可能であり、かつ、皮膚への取り付けが容易な磁気治療器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る磁気治療器は、人体の皮膚に取り付けられて使用される磁気治療器であって、前記磁気治療器は、前記皮膚と接触する接触面側に配置され、可撓性を有する第1の母材を有する第1のシートと、前記接触面側と反対側である非接触面側に配置され、可撓性を有する第2の母材を有する第2のシートとを備え、前記第1のシートは、前記第1の母材に磁粉を含み、前記磁粉によって、前記接触面側の表面が多極着磁されて前記人体に磁界を及ぼすように構成されており、前記第2のシートは、前記第2の母材に軟磁性粉を含み、前記軟磁性粉によって、前記磁界の前記非接触面側への漏洩を抑制するように構成されている。
【0009】
前記第1のシートは、短冊形状の複数の磁気セルを備え、前記複数の磁気セルは、前記接触面側から見た平面視で、隣接する磁気セルが前記短冊形状の長辺で隣接し、かつ、互いに反対の磁極の向きとなるように、略同一平面上に連続して配置されていてもよい。
【0010】
前記軟磁性粉は、鉄から構成されていてもよい。
【0011】
前記磁粉は、ネオジム磁石から構成されていてもよい。
【0012】
前記第1の母材および前記第2の母材はそれぞれ、シリコーン樹脂から構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態に係る磁気治療器によれば、人体の外部への磁界の漏洩を抑制可能であり、かつ、皮膚への取り付けが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る磁気治療器を示す模式的な斜視図である。
【
図2A】本発明の一実施形態に係る磁気治療器の変形例(その1)を示す模式的な平面図である。
【
図2B】本発明の一実施形態に係る磁気治療器の変形例(その2)を示す模式的な平面図である。
【
図2C】本発明の一実施形態に係る磁気治療器の変形例(その3)を示す模式的な平面図である。
【
図3A】本発明の一実施形態に係る磁気治療器の変形例(その4)を示す模式的な断面図である。
【
図3B】本発明の一実施形態に係る磁気治療器の変形例(その5)を示す模式的な断面図である。
【
図4A】本発明の一実施形態に係る磁気治療器の製造方法の一例を示す模式的な斜視図である。
【
図4B】本発明の一実施形態に係る磁気治療器の製造方法の一例を示す模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係る磁気治療器について説明する。ただし、以下で説明する実施形態は、あくまで一例であり、本発明の磁気治療器は、以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において、「A形状」およびこれに類する表現は、完全なA形状のみを指すのではなく、見た目にA形状を連想させる形状(略A形状)を含んで指すものとする。また、図中において、同一の、または対応する構成要素には、同じ符号が付されている。
【0016】
図1は、本実施形態に係る磁気治療器1を示している。本実施形態に係る磁気治療器1は、人体の皮膚に取り付けられて使用される。具体的には、磁気治療器1は、人体の皮膚に取り付けられて使用されることにより、人体の体内に磁界を及ぼし、これらの部位およびその周辺の血行を促進したり、代謝を向上したりするなどの磁気治療効果をもたらす。磁気治療器1の皮膚への取付方法は、磁気治療効果が得られる期間にわたって、磁気治療器1が人体の皮膚に直接的または間接的に取り付けられていれば、特に限定されることはない。たとえば磁気治療器1の皮膚への取付方法として、磁気治療器1自身の粘着力により皮膚に直接密着させる方法や、粘着シートなどの公知の粘着手段を介して直接または間接的に皮膚に密着させる方法などを採用することができる。磁気治療器1が取り付けられる皮膚の位置は、磁気治療効果が発揮される位置であれば、特に限定されることはなく、人体の肩、腕、首、腰、脚など、いかなる位置であってもよい。
【0017】
磁気治療器1の形状は、磁気治療効果が発揮される形状であれば、特に限定されることはない。本実施形態では、
図1に示されるように、磁気治療器1は、人体の皮膚と接触する接触面1a側から見た平面視で方形であるシート形状を有している。しかし、磁気治療器1の形状は、磁気治療器1が取り付けられる人体の位置や、磁気治療器1の製造および取り扱いの容易性などを鑑みて、たとえば平面視で円形であるシート形状など、その他の形状に適宜変更されてもよい。
【0018】
磁気治療器1の大きさは、特に限定されることはないが、磁気治療器1が取り付けられる人体の皮膚の形状に沿って、磁気治療器1が変形可能な大きさに設定されることが好ましい。一方で、磁気治療器1の大きさは、磁気治療器1の製造や取り扱いが容易な大きさに設定されることが好ましい。たとえば、磁気治療器1の大きさは、接触面1a側から見た平面視での最大長さが5~100mmであることが好ましい。磁気治療器1の最大長さを5mm以上にすることで、磁気治療器1の製造や取扱いがより容易となる。磁気治療器1の最大長さは、接触面1a側から見た平面視で、10mm以上であることがより好ましく、20mm以上であることがさらに好ましい。また、磁気治療器1の最大長さを100mm以下とすることで、曲率半径のより小さい湾曲部位にも沿うように、磁気治療器1をより容易に変形させることができる。磁気治療器1の最大長さは、接触面1a側から見た平面視で、75mm以下であることがより好ましく、50mm以下であることがさらに好ましい。
【0019】
磁気治療器1は、
図1に示されるように、皮膚と接触する接触面1a側に配置される第1のシート11と、接触面1a側と反対側である非接触面1b側に配置される第2のシート12とを備えている。磁気治療器1はさらに、後述されるように、第1のシート11の接触面1a側に、磁気治療器1を皮膚に貼り付けるための粘着シート13(
図3A参照)などを備えていてもよく、第2のシート12の非接触面1b側に、磁気治療器1(第1のシート11や第2のシート12など)の劣化を防止するための保護膜(図示せず)などを備えていてもよい。
【0020】
第1のシート11は、
図1に示されるように、可撓性を有する第1の母材11aを有している。第1のシート11は、第1の母材11aに磁粉11bを含み、磁粉11bによって、接触面1a側の表面が多極着磁されて人体に磁界を及ぼすように構成されている。換言すれば、第1のシート11は、磁極の向きが互いに異なる複数の磁気セル11cを含んでいる。このように、第1のシート11が多極着磁されることで、単極着磁される場合と比べて、接触面1a側に発生する磁界の磁束密度をより高めることができ、より少ない材料で効率よく磁界を体内に及ぼすことができる。
【0021】
第1のシート11の磁極の方向は、第1のシート11の接触面1a側の表面が多極着磁されていれば、特に限定されることはない。本実施形態では、体内のより深部に磁界を及ぼして、より大きい磁気治療効果を得るために、第1のシート11は、磁極の方向が第1のシート11の接触面1a側の表面に対して略垂直な方向となるように、接触面1a側の表面が多極着磁されている。換言すれば、ある磁気セル11cにおいて、接触面1a側の表面がS極に着磁されていれば、非接触面1b側の表面は、N極に着磁されており、接触面1a側の表面がN極に着磁されていれば、非接触面1b側の表面は、S極に着磁されている。なお、
図1などでは、説明の便宜のため、S極およびN極のうちの一方に着磁された第1のシート11の接触面1a側の表面領域は、ドットを付して示しており、S極およびN極のうちの他方に着磁された第1のシート11の接触面1a側の表面領域は、ドットを付さずに示している。なお、第1のシート11の磁極の方向は、第1のシート11の接触面1a側の表面に対して鋭角をなすなど、その他の方向であってもよい。
【0022】
第1の母材11aは、可撓性を有していれば、特に限定されることはないが、たとえば、高分子材料(たとえば、樹脂(より具体的には、ゴム))から構成されており、典型的には、エラストマから構成されている。なお、ここで言う「エラストマ」は、熱硬化性エラストマおよび熱可塑性エラストマの両方を含む概念である。本実施形態では、第1の母材11aは、シリコーン樹脂から構成されている。第1の母材11aをシリコーン樹脂から構成する場合、シリコーン樹脂が有する粘着性によって、磁気治療器1を対象部位の皮膚に第1のシート11の表面で直接接触させることで、対象部位の皮膚との良好な密着性を得ることができる。また、シリコーン樹脂が有する耐湿性や耐腐食性によって、第1の母材11aが直接皮膚に接触しても、人体からの汗や熱による第1の母材11aの劣化が抑制される。さらに、シリコーン樹脂は、人体に対して刺激性が低いので、第1の母材11aと接触させた皮膚にかぶれなどを生じにくい。しかし、第1の母材11aは、フッ素樹脂、軟質塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、各種エラストマなどのその他の可撓性材料から構成されていてもよい。
【0023】
磁粉11bは、磁石から構成されている。磁粉11bは、特に限定されることはないが、本実施形態では、ネオジム磁石(Nd-Fe-B)から構成されている。磁粉11bをネオジム磁石から構成する場合、少ない磁粉11bの量でも、高い磁束密度を得ることができ、効率よく磁界を体内に及ぼすことができる。しかし、磁粉11bは、フェライト磁石(ハードフェライト:R-Fe-O(R:Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Ba、Sr、Pb、希土類元素など)組成のスピネルフェライト磁石、六方晶フェライト磁石、ガーネットフェライト磁石など)、サマリウムコバルト磁石(Sm-Co)などのその他の磁石から構成されていてもよい。
【0024】
本実施形態では、
図1に示されるように、第1のシート11は、短冊形状の複数の磁気セル11cを備えており、短冊状の複数の磁気セル11cは、接触面1a側から見た平面視で、隣接する磁気セル11cが短冊形状の長辺で隣接し、かつ、互いに反対の磁極の向きとなるように、略同一平面上に連続して配置されている。この場合、互いに反対の磁極が一次元的に配列される簡単なセル配置で、効率よく磁束密度を高めることができる。しかし、第1のシート11の形態は、多極着磁された磁気シートであれば、特に限定されることはない。
図1では、短冊状の複数の磁気セル11cは、同じ幅(短辺の長さ)に形成されているが、
図2に示されるように、少なくとも一部が異なる幅に形成されてもよい。また、
図2Bに示されるように、第1のシート11は、方形(より具体的には、正方形)形状を有する複数の磁気セル11cを備え、方形形状の複数の磁気セル11cは、接触面1a側から見た平面視で、隣接する磁気セル11cが方形形状の各辺で隣接し、かつ、互いに反対の磁極の向きとなるように、略同一平面上に連続して配置されていてもよい。この場合、反対の磁極が2次元的に配列されるセル配置によって、複数の磁気セル11cが高密度に配置されるので、磁束密度をより高めることができる。さらに、複数の磁気セル11cは、互いに同一または類似する形状に形成されなくてもよい。たとえば、
図2Cに示されるように、第1のシート11は、1つの磁気セル11cが別の1つの磁気セル11cを取り囲むように、複数の磁気セル11cを備え、1つの磁気セル11cの外周と別の1つの磁気セル11cの内周とが隣接するように、略同一平面上に連続して配置されてもよい。なお、磁気セル11cの数は、磁気治療器1(第1のシート11)の大きさや形状、要求される磁束密度、製造の容易性などに応じて、適宜変更され得る。
【0025】
なお、第1のシート11(第1の母材11a)が皮膚に対する密着性を有さない場合や、密着性を有していても、磁気治療器1にさらなる皮膚への密着性が要求される場合があり得る。そのような場合には、
図3Aに示されるように、第1のシート11の接触面1a側に、磁気治療器1を人体の皮膚に貼り付けるために、公知の粘着シート13が設けられてもよい。
【0026】
第2のシート12は、
図1に示されるように、可撓性を有する第2の母材12aを有している。第2のシート12は、第2の母材12aに軟磁性粉12bを含み、軟磁性粉12bによって、第1のシート11からの磁界が非接触面1b側に漏洩することを抑制するように構成されている。このように、軟磁性粉12bを第2の母材12aに含ませることで、第2のシート12が、第2の母材12aによって可撓性を有すると同時に、軟磁性粉12bによって磁界に対する遮蔽効果を得ることができる。これにより、磁気治療器1は、全体として、第1のシート11および第2のシート12の可撓性により、皮膚に沿うように取り付けることが容易となり、第2のシート12の磁界への遮蔽効果により、第1のシート11から人体の外部(磁気治療器1の非接触面1b側)への磁界の漏洩を効率的に抑制することができる。さらに、軟磁性体(軟磁性粉12b)を、バルク状、シート状、または箔状で使用せずに、粉状で使用することで、磁気治療器1を人体の皮膚に沿うように変形させて取り付けるときに、変形による応力を第2の母材12aに吸収させることができる。そのため、軟磁性体(軟磁性粉12b)自体の変形や破損が抑制されるので、磁気治療器1が全体として損傷し難くなるとともに、磁気治療器1を皮膚に沿うように取り付け易くなる。
【0027】
第2の母材12aは、可撓性を有していれば、特に限定されることはないが、たとえば、高分子材料(たとえば、樹脂(より具体的には、ゴム))から構成されており、典型的には、エラストマから構成されている。本実施形態では、第2の母材12aは、シリコーン樹脂から構成されている。第2の母材12aをシリコーン樹脂から構成する場合、シリコーン樹脂が有する優れた耐候性や耐摩耗性によって、第2の母材12aの劣化が抑制される。しかし、第2の母材12aは、フッ素樹脂、軟質塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、各種エラストマなどのその他の可撓性材料から構成されていてもよい。
【0028】
軟磁性粉12bは、軟磁性を有していれば、特に限定されることはないが、本実施形態では、鉄(Fe)から構成されている。軟磁性粉12bを鉄から構成する場合、安価な材料で効率よく、第1のシート11による磁界の非接触面1b側への漏洩を抑制することができる。しかし、軟磁性粉12bは、ケイ素鋼(Fe-Si)、パーマロイ(Ni-Fe)、センダスト(Fe-Si-Al)、パーメンジュール(Fe-Co/Fe-Co-V)、ソフトフェライト(R-Fe-O(R:Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Ba、Sr、Pb、希土類元素など))などのその他の軟磁性体から構成されていてもよい。
【0029】
本実施形態では、
図1に示されるように、第2のシート12は、第1のシート11の非接触面1b側のみを覆うように設けられている。しかし、第1のシート11の磁粉11bによる磁界が比較的強い場合や、第1のシート11の厚さが比較的厚い場合など、磁気治療器1の接触面1aに垂直な方向のみならず、平行な方向から漏洩する磁界が無視できないこともあり得る。そのような場合には、
図3Bに示されるように、第2のシート12は、第1のシート11の非接触面1b側のみならず、端面(シートの主面と交差する面)11c側をも覆うように設けられてもよい。
【0030】
つぎに、
図4Aおよび
図4Bを参照して、本実施形態に係る磁気治療器1の製造方法の一例を説明する。ただし、本発明の磁気治療器の製造方法は、以下の説明に限定されることはない。
【0031】
まず、
図4Aに示されるように、未着磁の磁粉11bを分散させたシート状の第1の母材11aを用意し、外部から第1の母材11aの表面に垂直な磁界を印加する。これにより、
図4Aに示されるように、表面110aがS極(N極)となり、裏面110bがN極(S極)となるように、単極着磁された磁気シート110が得られる。
【0032】
つぎに、
図4Bに示されるように、磁気シート110を厚さ方向に切断することで、複数の個片化された磁気シート111を得る。その後に、第2のシート12(
図1参照)を用意し、公知の接着剤などを用いて、第2のシート12の接触面1a側の表面に、磁極の向きが交互となるように、表面110aおよび裏面110bの向きを交互に逆にしながら、個片化された磁気シート111を貼り付ける。これにより、
図1に示される磁気治療器1を得ることができる。
【0033】
なお、
図1、
図4A、および
図4Bでは、1つの磁気セル11cは、1つの個片化された磁気シート111から構成されている。しかし、1つの磁気セル11cは、2以上の個片化された磁気シート111から構成されてもよい。このようにすれば、2以上の個片化された磁気シート111を複数組み合わせることで、磁気セル11cを様々な形状に形成することができる。
【0034】
磁気シート110を個片化することなく、磁気治療器1を得ることもできる。たとえば、未着磁の磁粉11bを分散させたシート状の第1の母材11aと、軟磁性粉12bを分散させたシート状の第2の母材12aとを用意する。その後に、第1の母材11aと第2の母材12aとを厚さ方向で重ねた状態で、圧延ロールによって圧延加工することで、一体的なシート状の磁気治療器1を形成する。この圧延加工の際に、第1の母材11aおよび第2の母材12aを所定の速度で圧延ロールの送り方向に送るとともに、圧延加工機の所定の位置において、交番磁界を厚さ方向に印加することで、磁粉11bを着磁させる。この交番磁界によって、磁粉11bを含む第1のシート11は、多極着磁されるが、軟磁性粉12bを含み、磁粉11bを含まない第2のシート12は、着磁されない。このように磁気治療器1を製造すると、磁気シート110の個片化ステップを省略することができるので、製造効率が向上する。
【0035】
以上のように、本実施形態に係る磁気治療器1は、接触面1a側に配置され、可撓性を有する第1の母材11aを備える第1のシート11と、非接触面1b側に配置され、可撓性を有する第2の母材12aを備える第2のシート12とを備えている。第1のシート11は、第1の母材11aに磁粉11bを含み、磁粉11bによって、接触面1a側の表面が多極着磁されて人体に磁界を及ぼすように構成されており、第2のシート12は、第2の母材12aに軟磁性粉12bを含み、軟磁性粉12bによって、磁界の非接触面1b側への漏洩を抑制するように構成されている。
【0036】
本実施形態に係る磁気治療器1によれば、軟磁性粉12bを含む第2のシート12の磁界に対する遮蔽効果により、磁粉11bを含む第1のシート11から発生する磁界が磁気治療器1の非接触面1b側に漏洩することを抑制することができる。また、第1のシート11および第2のシート12の母材である第1の母材11aおよび第2の母材12aがそれぞれ可撓性を有しているので、磁気治療器1を皮膚に沿うように取り付けることが容易となる。さらに、第2のシート12に含まれる軟磁体(軟磁性粉12b)が粉状であるため、磁気治療器1を人体の皮膚に沿うように変形させて取り付けるときに、変形による応力が第2の母材12aに吸収される。そのため、軟磁性体(軟磁性粉12b)自体が変形や破損することが抑制されるので、磁気治療器1が全体として損傷し難くなるとともに、磁気治療器1を皮膚に沿うように取り付け易くなる。
【0037】
本実施形態では、第1のシート11は、短冊状の複数の磁気セル11cを備え、複数の磁気セル11cは、接触面1a側から見た平面視で、隣接する磁気セル11cが長辺で隣接し、かつ、互いに反対の磁極の向きとなるように、略同一平面上に連続して配置されている。この場合、互いに反対の磁極が一次元的に配列される簡単なセル配置で、効率よく磁束密度を高くすることができる。
【0038】
本実施形態では、軟磁性粉12bは、鉄から構成されている。この場合、安価な材料で、第1のシート11による磁界の非接触面1b側への漏洩を効率よく抑制することができる。
【0039】
本実施形態では、磁粉11bは、ネオジム磁石から構成されている。この場合、少ない磁粉11bの量でも、高い磁束密度を得ることができ、第1のシート11の磁界を体内に効率よく及ぼすことができる。
【0040】
本実施形態では、第1の母材11aは、シリコーン樹脂から構成されている。この場合、シリコーン樹脂が有する粘着性によって、磁気治療器1を対象部位の皮膚に第1のシート11の表面で直接接触させることで、対象部位の皮膚との良好な密着性を得ることができる。また、シリコーン樹脂が有する耐湿性や耐腐食性によって、第1の母材11aが直接皮膚に接触しても、人体からの汗や熱による第1の母材11aの劣化が抑制される。さらに、シリコーン樹脂は、人体に対して刺激性が低いので、第1の母材11aと接触させた皮膚にかぶれなどを生じにくい。
【0041】
本実施形態では、第2の母材12aは、シリコーン樹脂から構成されている。この場合、シリコーン樹脂が有する優れた耐候性や耐摩耗性によって、第2の母材12aの劣化が抑制される。
【符号の説明】
【0042】
1 磁気治療器
1a 接触面
1b 非接触面
11 第1のシート
11a 第1の母材
11b 磁粉
11c 端面
12 第2のシート
12a 第2の母材
12b 軟磁性粉
13 粘着シート
110 磁気シート
110a 表面
110b 裏面
111 個片化された磁気シート