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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065943
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】発光装置およびプロジェクター
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/11 20210101AFI20230508BHJP
   H01S 5/343 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
H01S5/11
H01S5/343 610
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176375
(22)【出願日】2021-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502350504
【氏名又は名称】学校法人上智学院
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】吉本 拓矢
(72)【発明者】
【氏名】岸野 克巳
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AA32
5F173AB02
5F173AB53
5F173AB90
5F173AF03
5F173AH22
5F173AP05
5F173AP09
5F173AP13
5F173AP33
5F173AP47
5F173AR03
5F173AR52
(57)【要約】
【課題】複数の柱状部構造体のフォトニック結晶効果による光の共振状態が、複数の第2柱状部によって受ける影響を低減することができる発光装置を提供する。
【解決手段】複数の柱状部構造体の各々は、複数の第1柱状部のうちの少なくとも1つで構成され、平面視において、前記複数の柱状部構造体は、格子状に周期的に配列されて周期パターンを形成し、各々が前記周期パターンの単位となる複数の単位領域には、それぞれ、前記複数の柱状部構造体のうちの少なくとも1つと複数の第2柱状部のうちの少なくとも1つとが設けられ、平面視において、前記複数の単位領域のうちの隣り合う単位領域における一方の第1単位領域と他方の第2単位領域とを重ね合わせた場合に、前記複数の第2柱状部のうちの前記第1単位領域に設けられた第2柱状部の中心と、前記複数の第2柱状部のうちの前記第2単位領域に設けられた第2柱状部の中心とは、位置が異なる、発光装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の柱状部構造体を有する積層体を有し、
前記積層体は、
光を発生させる発光層を有する複数の第1柱状部と、
発光しない複数の第2柱状部と、
を有し、
前記複数の柱状部構造体の各々は、前記複数の第1柱状部のうちの少なくとも1つで構成され、
前記積層体の積層方向からみた平面視において、前記複数の柱状部構造体は、格子状に周期的に配列されて周期パターンを形成し、
各々が前記周期パターンの単位となる複数の単位領域には、それぞれ、前記複数の柱状部構造体のうちの少なくとも1つと前記複数の第2柱状部のうちの少なくとも1つとが設けられ、
前記積層体の積層方向からみた平面視において、前記複数の単位領域のうちの隣り合う単位領域における一方の第1単位領域と他方の第2単位領域とを重ね合わせた場合に、前記複数の第2柱状部のうちの前記第1単位領域に設けられた第2柱状部の中心と、前記複数の第2柱状部のうちの前記第2単位領域に設けられた第2柱状部の中心とは、位置が異なる、発光装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記積層体の積層方向からみた平面視において、
前記複数の柱状部構造体は、正三角格子状に配列され、
前記複数の単位領域の各々の中心と、前記複数の柱状部構造体の各々の中心とは、位置が一致し、
前記第1単位領域は、前記複数の単位領域のうちの、第3単位領域、第4単位領域、第5単位領域、第6単位領域、および第7単位領域と隣り合い、
前記第1単位領域は、
前記第1単位領域の中心と、前記第2単位領域の中心と、を結ぶ第1線分の第1垂直二等分線と、
前記第1単位領域の中心と、前記第3単位領域の中心と、を結ぶ第2線分の第2垂直二等分線と、
前記第1単位領域の中心と、前記第4単位領域の中心と、を結ぶ第3線分の第3垂直二等分線と、
前記第1単位領域の中心と、前記第5単位領域の中心と、を結ぶ第4線分の第4垂直二等分線と、
前記第1単位領域の中心と、前記第6単位領域の中心と、を結ぶ第5線分の第5垂直二等分線と、
前記第1単位領域の中心と、前記第7単位領域の中心と、を結ぶ第6線分の第6垂直二等分線と、
で囲まれた領域である、発光装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記複数の第2柱状部のうちの前記第1単位領域に設けられた第2柱状部の数と、前記複数の第2柱状部のうちの前記第2単位領域に設けられた第2柱状部の数とは、異なる、発光装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記複数の柱状部構造体の各々は、前記複数の第1柱状部のうちの2つ以上で構成されている、発光装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、
前記複数の第2柱状部の各々の径は、前記複数の第1柱状部の各々の径よりも小さい、発光装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記複数の第2柱状部の各々は、前記複数の第2柱状部の各々の径と、前記複数の第2柱状部の各々の径方向における空乏層領域の幅とが、等しい部分を有する、発光装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、
前記複数の第1柱状部および前記複数の第2柱状部に接続された電極を有する、発光装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記発光層が発生する光の波長は、500nm以上750nm以下である、発光装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の発光装置を有する、プロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置およびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザーは、高輝度の次世代光源として期待されている。特に、ナノコラムを適用した半導体レーザーは、ナノコラムによるフォトニック結晶の効果によって、狭放射角で高出力の発光が実現できると期待されている。
【0003】
例えば特許文献1には、最小径が径方向の空乏層領域の長さである複数の細い柱状部と、最小径が径方向の空乏層領域の長さよりも大きい複数の太い柱状部と、を有する発光装置が記載されている。特許文献1では、細い柱状部は発光せず、太い柱状部が発光する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-29522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、複数の発光しない柱状部が周期的に配列されているため、複数の発光する柱状部のフォトニック結晶効果による光の共振状態が、複数の発光しない柱状部によって影響を受ける。そのため、複数の発光する柱状部のフォトニック結晶効果によって共振する光の波長や分布がずれてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発光装置の一態様は、
複数の柱状部構造体を有する積層体を有し、
前記積層体は、
光を発生させる発光層を有する複数の第1柱状部と、
発光しない複数の第2柱状部と、
を有し、
前記複数の柱状部構造体の各々は、前記複数の第1柱状部のうちの少なくとも1つで構成され、
前記積層体の積層方向からみた平面視において、前記複数の柱状部構造体は、格子状に周期的に配列されて周期パターンを形成し、
各々が前記周期パターンの単位となる複数の単位領域には、それぞれ、前記複数の柱状部構造体のうちの少なくとも1つと前記複数の第2柱状部のうちの少なくとも1つとが設けられ、
前記積層体の積層方向からみた平面視において、前記複数の単位領域のうちの隣り合う単位領域における一方の第1単位領域と他方の第2単位領域とを重ね合わせた場合に、前記複数の第2柱状部のうちの前記第1単位領域に設けられた第2柱状部の中心と、前記複数の第2柱状部のうちの前記第2単位領域に設けられた第2柱状部の中心とは、位置が異なる。
【0007】
本発明に係るプロジェクターの一態様は、
前記発光装置の一態様を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る発光装置を模式的に示す平面図。
図2】第1実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図。
図3】第1実施形態に係る発光装置の第1単位領域と第2単位領域とを重ね合わせた場合を模式的に示す平面図。
図4】第1実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
図5】第2実施形態に係る発光装置を模式的に示す平面図。
図6】第2実施形態に係る発光装置を模式的に示す平面図。
図7】第2実施形態に係る発光装置を模式的に示す平面図。
図8】第2実施形態に係る発光装置を模式的に示す平面図。
図9】第2実施形態に係る発光装置を模式的に示す平面図。
図10】第2実施形態に係る発光装置を模式的に示す平面図。
図11】第2実施形態に係る発光装置を模式的に示す平面図。
図12】第2実施形態に係る発光装置を模式的に示す平面図。
図13】第3実施形態に係るプロジェクターを模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0010】
1. 第1実施形態
1.1. 発光装置
1.1.1. 全体の構成
まず、第1実施形態に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る発光装置100を模式的に示す平面図である。図2は、第1実施形態に係る発光装置100を模式的に示す図1のII-II線断面図である。
【0011】
発光装置100は、図2に示すように、例えば、基板10と、積層体20と、第1電極40と、第2電極42と、を有している。発光装置100は、半導体レーザーである。
【0012】
基板10は、例えば、Si基板、GaN基板、サファイア基板、SiC基板などである。
【0013】
積層体20は、基板10に設けられている。図示の例では、積層体20は、基板10上に設けられている。積層体20は、例えば、バッファー層22と、複数の第1柱状部30aと、複数の第2柱状部30bと、を有している。第1柱状部30aおよび第2柱状部30bは、例えば、第1半導体層32と、MQW(Multi Quantum Well)層34と、第2半導体層36と、を有している。なお、便宜上、図1では、第1柱状部30aおよび第2柱状部30b以外の部材の図示を省略している。
【0014】
本明細書では、積層体20の積層方向(以下、単に「積層方向」ともいう)において、MQW層34を基準とした場合、MQW層34から第2半導体層36に向かう方向を「上」とし、MQW層34から第1半導体層32に向かう方向を「下」として説明する。また、積層方向と直交する方向を「面内方向」ともいう。また、「積層体20の積層方向」とは、第1半導体層32とMQW層34との積層方向のことである。
【0015】
バッファー層22は、基板10上に設けられている。バッファー層22は、例えば、Siがドープされたn型のGaN層である。バッファー層22上には、第1柱状部30aおよび第2柱状部30bを成長させるためのマスク層24が設けられている。マスク層24
は、例えば、酸化シリコン層、チタン層、酸化チタン層、酸化アルミニウム層などである。
【0016】
第1柱状部30aおよび第2柱状部30bは、バッファー層22上に設けられている。柱状部30a,30bは、バッファー層22から上方に突出した柱状の形状を有している。言い換えれば、柱状部30a,30bは、バッファー層22を介して基板10から上方に突出している。柱状部30a,30bは、例えば、ナノコラム、ナノワイヤー、ナノロッド、ナノピラーとも呼ばれる。柱状部30a,30bの平面形状は、例えば、六角形などの多角形、円である。図1に示す例では、柱状部30a,30bの平面形状は、正六角形である。
【0017】
第1柱状部30aの径は、例えば、50nm以上500nm以下である。第1柱状部30aの径を500nm以下とすることによって、高品質な結晶のMQW層34を得ることができ、かつ、MQW層34に内在する歪を低減することができる。これにより、第1柱状部30aのMQW層34で発生する光を高い効率で増幅することができる。
【0018】
なお、「第1柱状部30aの径」とは、第1柱状部30aの平面形状が円の場合は、直径であり、第1柱状部30aの平面形状が円ではない形状の場合は、最小包含円の直径である。例えば、第1柱状部30aの径は、第1柱状部30aの平面形状が多角形の場合、該多角形を内部に含む最小の円の直径であり、第1柱状部30aの平面形状が楕円の場合、該楕円を内部に含む最小の円の直径である。このことは、「第2柱状部30bの径」について同様である。
【0019】
第1半導体層32は、図2に示すように、バッファー層22上に設けられている。第1半導体層32は、基板10とMQW層34との間に設けられている。第1半導体層32は、第1導電型の半導体層である。第1半導体層32は、例えば、Siがドープされたn型のGaN層である。
【0020】
MQW層34は、第1半導体層32上に設けられている。MQW層34は、第1半導体層32と第2半導体層36との間に設けられている。MQW層34は、不純物が意図的にドープされていないi型の半導体層である。MQW層34は、例えば、ウェル層と、バリア層と、を有している。ウェル層は、例えば、InGaN層である。バリア層は、例えば、GaN層である。MQW層34は、ウェル層とバリア層とから構成されたMQW構造を有している。第1柱状部30aのMQW層34は、電流が注入されることで光を発生させる発光層である。
【0021】
なお、MQW層34を構成するウェル層およびバリア層の数は、特に限定されない。例えば、ウェル層は、1層だけ設けられていてもよく、この場合、柱状部30a,30bは、MQW層34の代わりにSQW(Single Quantum Well)層を有する。
【0022】
第2半導体層36は、MQW層34上に設けられている。第2半導体層36は、MQW34と第2電極42との間に設けられている。第2半導体層36は、第1導電型と異なる第2導電型の半導体層である。第2半導体層36は、例えば、Mgがドープされたp型のGaN層である。第1柱状部30aの第1半導体層32および第2半導体層36は、MQW層34に光を閉じ込める機能を有するクラッド層である。
【0023】
なお、図示はしないが、第1半導体層32とMQW層34との間、およびMQW層34と第2半導体層36との間の少なくとも一方に、i型のInGaN層およびGaN層からなるOCL(Optical Confinement Layer)が設けられていてもよい。また、第2半導体層36は、p型のAlGaN層からなるEBL(Electron Blocking Layer)を有しても
よい。
【0024】
発光装置100では、第1柱状部30aのp型の第2半導体層36、第1柱状部30aのi型のMQW34、および第1柱状部30aのn型の第1半導体層32により、pinダイオードが構成される。発光装置100では、第1電極40と第2電極42との間に、pinダイオードの順バイアス電圧を印加すると、第1柱状部30aのMQW層34に電流が注入されて第1柱状部30aのMQW層34において電子と正孔との再結合が起こる。この再結合により発光が生じる。第1柱状部30aのMQW層34で発生した光は、面内方向に伝搬し、複数の柱状部構造体50によるフォトニック結晶の効果により定在波を形成して、第1柱状部30aのMQW層34で利得を受けてレーザー発振する。そして、発光装置100は、+1次回折光および-1次回折光をレーザー光として、積層方向に出射する。
【0025】
なお、図示はしないが、基板10とバッファー層22との間、または基板10の下に反射層が設けられていてもよい。該反射層は、例えば、DBR(Distributed Bragg Reflector)層である。該反射層によって、第1柱状部30aのMQW層34において発生した光を反射させることができ、発光装置100は、第2電極42側からのみ光を出射することができる。
【0026】
第1電極40は、バッファー層22上に設けられている。バッファー層22は、第1電極40とオーミックコンタクトしていてもよい。第1電極40は、第1柱状部30aの第1半導体層32と電気的に接続されている。図示の例では、第1電極40は、バッファー層22を介して、第1柱状部30aの第1半導体層32と電気的に接続されている。第1電極40は、第1柱状部30aのMQW層34に電流を注入するための一方の電極である。第1電極40としては、例えば、バッファー層22側から、Cr層、Ni層、Au層の順序で積層したものなどを用いる。
【0027】
第2電極42は、第1柱状部30aおよび第2柱状部30bに接続されている。第2電極42は、第2半導体層36上に設けられている。第2半導体層36は、第2電極42とオーミックコンタクトしていてもよい。第2電極42は、第1柱状部30aのMQW層34に電流を注入するための他方の電極である。第2電極42としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、ZnOなどを用いる。
【0028】
なお、上記では、InGaN系のMQW層34について説明したが、MQW層34としては、出射される光の波長に応じて、電流が注入されることで発光可能な様々な材料系を用いることができる。例えば、AlGaN系、AlGaAs系、InGaAs系、InGaAsP系、InP系、GaP系、AlGaP系などの半導体材料を用いることができる。
【0029】
1.1.2. 第1柱状部および第2柱状部
第1柱状部30aは、上記のように、発光する柱状部である。第1柱状部30aは、図2に示すように、光を発生させる発光層としてのMQW層34を有している。第1柱状部30aのMQW層34が発生する光の波長は、例えば、500nm以上750nm以下である。第1柱状部30aのMQW層34は、緑色光から赤色光までの範囲の可視光を発生する。積層方向からみた平面視において、複数の第1柱状部30aの形状および大きさは、互いに同じである。
【0030】
第2柱状部30bは、発光しない柱状部である。第2柱状部30bのMQW層34では、電子と正孔との再結合が起きない。第2柱状部30bの径は、第1柱状部30aの径よりも小さい。図2に示すように、第2柱状部30bの最小径D2は、第1柱状部30aの
最小径D1よりも小さい。図示の例では、最小径D1は、第1柱状部30aのバッファー層22と接する部分における径である。最小径D2は、第2柱状部30bのバッファー層22と接する部分における径である。
【0031】
第2柱状部30bのMQW層34のウェル層がIn(インジウム)を含む場合、第2柱状部30bのIn濃度は、例えば、第1柱状部30aのIn濃度よりも低い。積層方向からみた平面視において、複数の第2柱状部30bの形状および大きさは、互いに同じである。
【0032】
第1柱状部30aおよび第2柱状部30bは、図2に示すように、空乏層領域2を有している。空乏層領域2は、フェルミレベルピニング(Fermi-level pinning)によって柱状部30a,30bの側面近傍に生じるキャリアが枯渇した領域である。
【0033】
第1柱状部30aの最小径D1を構成する部分は、空乏層領域2と、空乏層を形成していない非空乏層領域4と、を有している。すなわち、第1柱状部30aの最小径D1は、第1柱状部30aの径方向における空乏層領域2の幅よりも大きい。そのため、第1柱状部30aの中央部には、非空乏層領域4が形成される。
【0034】
第2柱状部30bの最小径D2を構成する部分は、空乏層領域2のみを有しており、非空乏層領域4を有していない。すなわち、第2柱状部30bの最小径D2は、第2柱状部30bの径方向における空乏層領域2の幅と等しい。このように、第2柱状部30bは、第2柱状部30bの径と、第2柱状部30bの径方向における空乏層領域2の幅と、が等しい部分31を有する。そのため、第2柱状部30bのMQW層34には電流が注入されず、発光が生じない。すなわち、第2柱状部30bのMQW層34は、発光層として機能しない。図示の例では、第2柱状部30bの径と、第2柱状部30bの径方向における空乏層領域2の幅と、が等しい部分31は、第2柱状部30bの第1半導体層32とMQW層34とで構成されている。
【0035】
第1柱状部30aは、図1に示すように、柱状部構造体50を構成している。図示の例では、柱状部構造体50は、1つの第1柱状部30aによって構成されている。積層体20は、複数の柱状部構造体50を有している。積層方向からみた平面視において、複数の柱状部構造体50は、図1に示すように、格子状に周期的に配列されて周期パターンを形成している。具体的には、複数の柱状部構造体50は、正三角格子状や正方格子状などの正多角形格子状に配列されている。図示の例では、複数の柱状部構造体50は、正三角格子状に配列されている。隣り合う柱状部構造体50の中心Cを結ぶ線分がなす図形は、正三角形である。積層方向からみた平面視において、複数の柱状部構造体50の各々の形状および大きさは、互いに同じである。図示の例では、7つの柱状部構造体50が記載されているが、複数の柱状部構造体50が正多角形格子状に配列されていれば、その数は、特に限定されない。
【0036】
なお、「柱状部構造体50の中心」あるいは「柱状部の中心」とは、柱状部構造体50あるいは柱状部の平面形状が円の場合は、該円の中心であり、柱状部構造体50あるいは柱状部の平面形状が円ではない形状の場合は、最小包含円の中心である。例えば、柱状部構造体50の中心は、柱状部構造体50の平面形状が多角形の場合、該多角形を内部に含む最小の円の中心であり、柱状部構造体50の平面形状が楕円の場合、該楕円を内部に含む最小の円の中心である。また、例えば、柱状部の中心は、柱状部の平面形状が多角形の場合、該多角形を内部に含む最小の円の中心であり、柱状部の平面形状が楕円の場合、該楕円を内部に含む最小の円の中心である。このことは、後述する「単位領域60の中心」について同様である。
【0037】
図示の例では、複数の柱状部構造体50によって形成される周期パターンの単位となる単位領域60は、正六角形である。複数の単位領域60の各々の形状は、互いに同じである。単位領域60の中心と、柱状部構造体50の中心Cとは、位置が一致している。単位領域60は、複数設けられている。単位領域60の数は、柱状部構造体50の数と同じである。図示の例では、複数の単位領域60は、ハニカム構造を形成している。
【0038】
複数の単位領域60のうちの第1単位領域61および第2単位領域62は、隣り合う単位領域60である。図示の例では、第1単位領域61は、複数の単位領域60のうちの第2単位領域62、第3単位領域63、第4単位領域64、第5単位領域65、第6単位領域66、および第7単位領域67と隣り合っている。第1単位領域61は、第2単位領域62、第3単位領域63、第4単位領域64、第5単位領域65、第6単位領域66、および第7単位領域67と接している。第1単位領域61は、単位領域62,63,64,65,66,67に囲まれている。図示の例では、第2単位領域62から反時計回りに、第3単位領域63、第4単位領域64、第5単位領域65、第6単位領域66、第7単位領域67の順で配置されている。
【0039】
第1単位領域61は、第1垂直二等分線P1と、第2垂直二等分線P2と、第3垂直二等分線P3と、第4垂直二等分線P4と、第5垂直二等分線P5と、第6垂直二等分線P6と、で囲まれた領域である。
【0040】
第1垂直二等分線P1は、第1単位領域61の中心C1と、第2単位領域62の中心C2と、を結ぶ第1線分L1の垂直二等分線である。第2垂直二等分線P2は、第1単位領域61の中心C1と、第3単位領域63の中心C3と、を結ぶ第2線分L2の垂直二等分線である。第3垂直二等分線P3は、第1単位領域61の中心C1と、第4単位領域64の中心C4と、を結ぶ第3線分L3の垂直二等分線である。第4垂直二等分線P4は、第1単位領域61の中心C1と、第5単位領域65の中心C5と、を結ぶ第4線分L4の垂直二等分線である。第5垂直二等分線P5は、第1単位領域61の中心C1と、第6単位領域66の中心C6と、を結ぶ第5線分L5の垂直二等分線である。第6垂直二等分線P6は、第1単位領域61の中心C1と、第7単位領域67の中心C7と、を結ぶ第6線分L6の垂直二等分線である。
【0041】
図示の例では、第1垂直二等分線P1と、第4垂直二等分線P4とは、平行である。第2垂直二等分線P2と、第5垂直二等分線P5とは、平行である。第3垂直二等分線P3と、第6垂直二等分線P6とは、平行である。
【0042】
単位領域60には、柱状部構造体50と第2柱状部30bとが設けられている。図示の例では、複数の単位領域60の各々に、柱状部構造体50と第2柱状部30bとが設けられている。具体的には、複数の単位領域60の各々に、1つの柱状部構造体50と、2つの第2柱状部30bとが、設けられている。
【0043】
ここで、図3は、第1単位領域61と第2単位領域62とを重ね合わせた場合を模式的に示す平面図である。図3に示すように、第1単位領域61と第2単位領域62とを重ね合わせた場合に、第1単位領域61には、第2単位領域62に設けられた第2柱状部30bと、完全に重ならない第2柱状部30bが設けられている。図3において、「30b1」は、第1単位領域61に設けられた第2柱状部30bである。「30b2」は、第2単位領域62に設けられた第2柱状部30bである。
【0044】
なお、「第1単位領域61には、第2単位領域62に設けられた第2柱状部30bと、完全に重ならない第2柱状部30bが設けられている」とは、第1単位領域61に設けられた第2柱状部30bの少なくとも一部が、第2単位領域62に設けられた第2柱状部3
0bと重なっていないことをいう。
【0045】
第1単位領域61と第2単位領域62とを重ね合わせた場合に、第1単位領域61には、第2単位領域62に設けられた第2柱状部30bの中心と、中心が一致しない第2柱状部30bが設けられている。すなわち、積層方向からみた平面視において、第1単位領域61と第2単位領域62とを重ね合わせた場合に、第1単位領域61に設けられた第2柱状部30bの中心α1と、第2単位領域62に設けられた第2柱状部30bの中心α2とは、重ならない。積層方向からみた平面視において、第1単位領域61と第2単位領域62とを重ね合わせた場合に、第1単位領域61に設けられた第2柱状部30bの中心α1と、第2単位領域62に設けられた第2柱状部30bの中心α2とは、位置が異なる。図示の例では、第1単位領域61と第2単位領域62とを重ね合わせた場合に、第1単位領域61に設けられた2つの第2柱状部30bの各々は、第2単位領域62に設けられた第2柱状部30bと重ならない。第1単位領域61と第2単位領域62とを重ね合わせた場合に、第1単位領域61に設けられた柱状部構造体50と、第2単位領域62に設けられた柱状部構造体50とは、完全に重なる。
【0046】
なお、「第1単位領域61に設けられた柱状部構造体50と、第2単位領域62に設けられた柱状部構造体50とは、完全に重なる」とは、第1単位領域61に設けられた柱状部構造体50の全部が、第2単位領域62に設けられた柱状部構造体50と重なり、かつ、第2単位領域62に設けられた柱状部構造体50の全部が、第1単位領域61に設けられた柱状部構造体50と重なることをいう。
【0047】
同様に、第1単位領域61と第3単位領域63とを重ね合わせた場合に、第1単位領域61には、第3単位領域63に設けられた第2柱状部30bと、完全に重ならない第2柱状部30bが設けられている。第1単位領域61と第4単位領域64とを重ね合わせた場合に、第1単位領域61には、第4単位領域64に設けられた第2柱状部30bと、完全に重ならない第2柱状部30bが設けられている。第1単位領域61と第5単位領域65とを重ね合わせた場合に、第1単位領域61には、第5単位領域65に設けられた第2柱状部30bと、完全に重ならない第2柱状部30bが設けられている。第1単位領域61と第6単位領域66とを重ね合わせた場合に、第1単位領域61には、第6単位領域66に設けられた第2柱状部30bと、完全に重ならない第2柱状部30bが設けられている。第1単位領域61と第7単位領域67とを重ね合わせた場合に、第1単位領域61には、第7単位領域67に設けられた第2柱状部30bと、完全に重ならない第2柱状部30bが設けられている。
【0048】
このように、図1に示す例では、複数の単位領域60のうち全ての隣り合う単位領域60において、一方の単位領域60と他方の単位領域60とを重ね合わせた場合に、一方の単位領域60には、他方の単位領域60に設けられた第2柱状部30bと、完全に重ならない第2柱状部30bが設けられている。複数の第2柱状部30bは、例えば、ランダムに配列されている。複数の第2柱状部30bは、周期的に配列されていない。
【0049】
図示の例では、隣り合う単位領域60でなくても、複数の単位領域60のうちの一の単位領域60と他の単位領域60とを重ねた場合に、一の単位領域60には、他の単位領域60に設けられた第2柱状部30bと、完全に重ならない第2柱状部30bが設けられている。例えば、第2単位領域62と第4単位領域64とを重ね合わせた場合に、第2単位領域62には、第4単位領域64に設けられた第2柱状部30bと、完全に重ならない第2柱状部30bが設けられている。
【0050】
なお、図示しないが、隣り合う単位領域60でなければ、一の単位領域60と他の単位領域60とを重ねた場合に、一の単位領域60に設けられた第2柱状部30bと、他の単
位領域60に設けられた第2柱状部30bとが、完全に重なってもよい。
【0051】
1.1.3. 作用効果
発光装置100では、複数の柱状部構造体50を有する積層体20を有し、積層体20は、光を発生させる発光層としてのMQW層34を有する複数の第1柱状部30aと、発光しない複数の第2柱状部30bと、を有する。複数の柱状部構造体50の各々は、複数の第1柱状部30aのうちの少なくとも1つで構成されている。積層方向からみた平面視において、複数の柱状部構造体50は、格子状に周期的に配列されて周期パターンを形成する。各々が周期パターンの単位となる単位領域60には、それぞれ、複数の柱状部構造体50のうちの少なくとも1つと複数の第2柱状部30bのうちの少なくとも1つとが設けられている。積層方向からみた平面視おいて、複数の単位領域60のうちの隣り合う単位領域60における一方の第1単位領域61と他方の第2単位領域62とを重ね合わせた場合に、複数の第2柱状部のうちの第1単位領域61に設けられた第2柱状部30bの中心α1と、複数の第2柱状部のうちの第2単位領域62に設けられた第2柱状部30bの中心α2とは、位置が異なる。
【0052】
そのため、発光装置100では、第1単位領域と他方の第2単位領域とを重ね合わせた場合に第1単位領域に設けられた第2柱状部の中心と第2単位領域に設けられた第2柱状部の中心との位置が一致する場合に比べて、複数の柱状部構造体50のフォトニック結晶効果による光の共振状態が、複数の第2柱状部30bによって受ける影響を低減することができる。その結果、複数の柱状部構造体50のフォトニック結晶効果によって共振する光の波長や分布がずれることを抑制することができる。発光装置100では、複数の第2柱状部30bが周期的に配列さていないので、複数の第2柱状部30bは、フォトニック結晶効果を発現しない。
【0053】
発光装置100では、積層方向からみた平面視において、複数の柱状部構造体50は、正三角格子状に配列され、複数の単位領域60の各々の中心と、複数の柱状部構造体50の各々の中心Cとは、位置が一致し、第1単位領域61は、単位領域60のうちの、第3単位領域63、第4単位領域64、第5単位領域65、第6単位領域66、および第7単位領域67と隣り合う。第1単位領域61は、第1単位領域61の中心C1と、第2単位領域62の中心C2と、を結ぶ第1線分L1の第1垂直二等分線P1と、第1単位領域61の中心C1と、第3単位領域63の中心C3と、を結ぶ第2線分L2の第2垂直二等分線P2と、第1単位領域61の中心C1と、第4単位領域64の中心C4と、を結ぶ第3線分L3の第3垂直二等分線P3と、第1単位領域61の中心C1と、第5単位領域65の中心C5と、を結ぶ第4線分L4の第4垂直二等分線P4と、第1単位領域61の中心C1と、第6単位領域66の中心C6と、を結ぶ第5線分L5の第5垂直二等分線P5と、第1単位領域61の中心C1と、第7単位領域67の中心C7と、を結ぶ第6線分L6の第6垂直二等分線P6と、で囲まれた領域である。そのため、発光装置100では、例えば、第1単位領域61を正六角形の領域に規定することができる。
【0054】
発光装置100では、複数の第2柱状部30bの各々の径は、複数の第1柱状部30aの各々の径よりも小さい。ここで、MQW層34のウェル層がInを含む場合、MQW層34を結晶成長させる工程にいて、柱状部の径が小さいほど、MQW層34のIn濃度が低くなる。そのため、発光装置100では、第2柱状部30bのIn濃度は、第1柱状部30aのIn濃度よりも低い。したがって、第1柱状部30aのMQW層34で発生する光の波長と、第2柱状部30bのMQW層34で吸収される光の波長と、をずらすことができる。よって、発光装置100では、第2柱状部30bで吸収される光の量を低減させることができる。
【0055】
発光装置100では、複数の第2柱状部30bの各々は、複数の第2柱状部30bの各
々の径と、複数の第2柱状部30bの各々の径方向における空乏層領域2の幅とが、等しい部分31を有する。そのため、発光装置100では、第2柱状部30bを高抵抗にすることができ、第2柱状部30bのMQW層34で電子と正孔との再結合を生じさせないようにすることができる。これにより、第2柱状部30bを発光させないようにすることができる。
【0056】
発光装置100では、複数の第1柱状部30aおよび複数の第2柱状部30bに接続された第2電極42を有する。そのため、発光装置100では、第2柱状部が設けられていない場合に比べて、第2電極42の平坦性を高くすることができる。これにより、第2電極42の電極材料が第1柱状部30aの側面に付着することによる電流リークの発生、および第2電極42の破断による導電性の低下を抑制することができる。
【0057】
発光装置100では、発光層としてのMQW層34が発生する光の波長は、500nm以上750nm以下である。ここで、赤色光や緑色光を発生させる場合は、青色光を発生さる場合に比べて、隣り合う柱状部構造体の間の距離を大きくする必要がある。そのため、第2電極の平坦性が低くなる。このような問題に対して、発光装置100では、第2柱状部30bによって、第2電極42の平坦性が低くなることを抑制することができる。
【0058】
1.2. 発光装置の製造方法
次に、第1実施形態に係る発光装置100の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図4は、第1実施形態に係る発光装置100の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0059】
図4に示すように、基板10上に、バッファー層22をエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法などが挙げられる。
【0060】
次に、バッファー層22上に、マスク層24を形成する。マスク層24は、例えば、電子ビーム蒸着法やスパッタ法などによる成膜、およびパターニングによって形成される。パターニングは、例えば、電子線リソグラフィーおよびドライエッチングによって行われる。第2柱状部30bを成長させるための開口部の径が、第1柱状部30aを成長させるための開口部の径よりも小さくなるように、マスク層24をパターニングする。
【0061】
図2に示すように、マスク層24をマスクとしてバッファー層22上に、第1半導体層32、MQW層34、および第2半導体層36を、この順でエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MOCVD法、MBE法などが挙げられる。本工程により、第1柱状部30aからなる柱状部構造体50、および第2柱状部30bを形成することができる。
【0062】
次に、第2半導体層36上に第2電極42を形成する。第2電極42は、例えば、スパッタ法や真空蒸着法による成膜、およびパターニングによって形成される。
【0063】
次に、バッファー層22上に第1電極40を形成する。第1電極40は、例えば、スパッタ法や真空蒸着法による成膜、およびパターニングによって形成される。なお、第1電極40を形成する工程と、第2電極42を形成する工程と、の順序は、特に限定されない。
【0064】
以上の工程により、発光装置100を製造することができる。
【0065】
2. 第2実施形態
2.1. 発光装置
次に、第2実施形態に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図5は、第2実施形態に係る発光装置200を模式的に示す平面図である。なお、便宜上、図5では、単位領域60に設けられた第1柱状部30aおよび第2柱状部30b以外の部材の図示を省略している。
【0066】
以下、第2実施形態に係る発光装置200において、上述した第1実施形態に係る発光装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0067】
上述した発光装置100では、図1に示すように、柱状部構造体50は、1つの第1柱状部30aで構成されていた。
【0068】
これに対し、発光装置200では、図5に示すように、柱状部構造体50は、複数の第1柱状部30aで構成されている。図示の例では、1つの柱状部構造体50は、3つの第1柱状部30aで構成されている。柱状部構造体50を構成する3つの第1柱状部30aにおいて、隣り合う第1柱状部30aの中心を結ぶ線分がなす図形は、正三角形である。
【0069】
第1単位領域61に設けられた第2柱状部30bの数と、第2単位領域62に設けられた第2柱状部30bの数とは、異なる。図示の例では、第1単位領域61には、1つの第2柱状部30bが設けられている。第2単位領域62、第3単位領域63、第4単位領域64、第5単位領域65、第6単位領域66、および第7単位領域67には、2つの第2柱状部30bが設けられている。
【0070】
発光装置200では、複数の第2柱状部30bのうちの第1単位領域61に設けられた第2柱状部30bの数と、複数の第2柱状部30bのうちの第2単位領域62に設けられた第2柱状部30bの数とは、異なる。そのため、発光装置200では、複数の第2柱状部30bを周期的に配列させないことができる。
【0071】
発光装置200では、複数の柱状部構造体50の各々は、複数の第1柱状部30aのうちの2つ以上で構成されている。そのため、発光装置200では、柱状部構造体50が1つの第1柱状部30aで構成されている場合に比べて、例えば、柱状部構造体50の密度を大きくすることができる。これにより、第2電極42の平坦性を高くすることができる。さらに、径が大きい第1柱状部30aを成長させなくても、複数の第1柱状部30aで構成された柱状部構造体50を単位格子とみなすことができる。
【0072】
なお、図5に示す例では、1つの柱状部構造体50は、3つの第1柱状部30aで構成されているが、1つの柱状部構造体50を構成する複数の第1柱状部30aの数は、特に限定されない。
【0073】
図6に示すように、1つの柱状部構造体50は、4つの第1柱状部30aで構成されていてもよい。図示の例では、1つの柱状部構造体50を構成する4つの第1柱状部30aにおいて、隣り合う第1柱状部30aの中心を結ぶ線分がなす図形は、菱形である。複数の単位領域60の各々には、2つの第2柱状部30bが設けられている。
【0074】
図7に示すように、1つの柱状部構造体50は、7つの第1柱状部30aで構成されていてもよい。図示の例では、1つの柱状部構造体50を構成する7つの第1柱状部30aにおいて、1つの第1柱状部30aを、6つの第1柱状部30aで囲むように配置されている。積層方向からみた平面視において、1つの柱状部構造体50を構成する7つの第1柱状部30aは、正三角格子状に配列されている。複数の単位領域60の各々には、1つ
の第2柱状部30bが設けられている。
【0075】
図8に示すように、1つの柱状部構造体50は、9つの第1柱状部30aで構成されていてもよい。図示の例では、1つの柱状部構造体50を構成する9つの第1柱状部30aにおいて、1つの第1柱状部30aを、8つの第1柱状部30aで囲むように配置されている。積層方向からみた平面視において、1つの柱状部構造体50を構成する9つの第1柱状部30aは、正三角格子状に配列されている。複数の単位領域60の各々には、1つの第2柱状部30bが設けられている。図示の例では、第2柱状部30bが設けられていない第2柱状部不在領域70が設けられている。第2柱状部不在領域70には、柱状部構造体50が設けられている。第2柱状部不在領域70の形状は、単位領域60の形状と同じである。第2柱状部不在領域70の数は、単位領域60の数よりも少ない。第2柱状部不在領域70の数は、単位領域60の数の半分よりも少ない。なお、第2柱状部不在領域70は形成されず、複数の柱状部構造体50によって形成される周期パターンの単位の全てが単位領域60であってもよい。
【0076】
図9に示すように、1つの柱状部構造体50は、12個の第1柱状部30aで構成されていてもよい。図示の例では、1つの柱状部構造体50を構成する12個の第1柱状部30aにおいて、3つの第1柱状部30aを、9つの第1柱状部30aで囲むように配置されている。積層方向からみた平面視において、1つの柱状部構造体50を構成する12個の第1柱状部30aは、正三角格子状に配列されている。複数の単位領域60の各々には、1つの第2柱状部30bが設けられている。
【0077】
図10に示すように、1つの柱状部構造体50は、2つの第1柱状部30aで構成されていてもよい。複数の単位領域60の各々には、1つの第2柱状部30bが設けられている。
【0078】
図11に示すように、1つの柱状部構造体50は、6つの第1柱状部30aで構成されていてもよい。図示の例では、1つの柱状部構造体50を構成する6つの第1柱状部30aにおいて、隣り合う第1柱状部30aの中心を結ぶ線分がなす図形は、正六角形である。複数の単位領域60の各々には、1つの第2柱状部30bが設けられている。6つの第1柱状部30aは、第2柱状部30bを囲むように設けられている。
【0079】
図5に示す例では、1つの柱状部構造体50を構成する3つの第1柱状部30aにおいて、3つの第1柱状部30aの各々の中心を結ぶ線分がなす図形は、正三角形であったが、複数の第1柱状部30aの配列は、特に限定されない。図12に示すように、1つの柱状部構造体50を構成する3つの第1柱状部30aにおいて、3つの第1柱状部30aの各々の中心を結ぶ線分がなす図形は、底辺が他の2辺よりも長い二等辺三角形であってもよい。
【0080】
2.2. 発光装置の製造方法
次に、第2実施形態の発光装置200の製造方法について説明する。第2実施形態の発光装置200の製造方法は、上述した第1実施形態の発光装置100の製造方法と、基本的に同じである。したがって、その詳細な説明を省略する。
【0081】
3. 第3実施形態
次に、第3実施形態に係るプロジェクターについて、図面を参照しながら説明する。図13は、第3実施形態に係るプロジェクター800を模式的に示す図である。
【0082】
プロジェクター800は、例えば、光源として、発光装置100を有している。
【0083】
プロジェクター800は、図示しない筐体と、筐体内に備えられている赤色光、緑色光、青色光をそれぞれ出射する赤色光源100R、緑色光源100G、青色光源100Bと、を有している。なお、便宜上、図13では、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bを簡略化している。
【0084】
プロジェクター800は、さらに、筐体内に備えられている、第1光学素子802Rと、第2光学素子802Gと、第3光学素子802Bと、第1光変調装置804Rと、第2光変調装置804Gと、第3光変調装置804Bと、投射装置808と、を有している。第1光変調装置804R、第2光変調装置804G、および第3光変調装置804Bは、例えば、透過型の液晶ライトバルブである。投射装置808は、例えば、投射レンズである。
【0085】
赤色光源100Rから出射された光は、第1光学素子802Rに入射する。赤色光源100Rから出射された光は、第1光学素子802Rによって集光される。なお、第1光学素子802Rは、集光以外の機能を有していてもよい。後述する第2光学素子802Gおよび第3光学素子802Bについても同様である。
【0086】
第1光学素子802Rによって集光された光は、第1光変調装置804Rに入射する。第1光変調装置804Rは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置808は、第1光変調装置804Rによって形成された像を拡大してスクリーン810に投射する。
【0087】
緑色光源100Gから出射された光は、第2光学素子802Gに入射する。緑色光源100Gから出射された光は、第2光学素子802Gによって集光される。
【0088】
第2光学素子802Gによって集光された光は、第2光変調装置804Gに入射する。第2光変調装置804Gは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置808は、第2光変調装置804Gによって形成された像を拡大してスクリーン810に投射する。
【0089】
青色光源100Bから出射された光は、第3光学素子802Bに入射する。青色光源100Bから出射された光は、第3光学素子802Bによって集光される。
【0090】
第3光学素子802Bによって集光された光は、第3光変調装置804Bに入射する。第3光変調装置804Bは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置808は、第3光変調装置804Bによって形成された像を拡大してスクリーン810に投射する。
【0091】
また、プロジェクター800は、第1光変調装置804R、第2光変調装置804G、および第3光変調装置804Bから出射された光を合成して投射装置808に導くクロスダイクロイックプリズム806を有することができる。
【0092】
第1光変調装置804R、第2光変調装置804G、および第3光変調装置804Bによって変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム806に入射する。クロスダイクロイックプリズム806は、4つの直角プリズムを貼り合わせて形成され、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが配置されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成され、カラー画像を表す光が形成される。そして、合成された光は、投射装置808によりスクリーン810上に投射され、拡大された画像が表示される。
【0093】
なお、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bは、発光装置100を映像の画素として画像情報に応じて制御することで、第1光変調装置804R、第2光変調装置804G、および第3光変調装置804Bを用いずに、直接的に映像を形成してもよい。そして、投射装置808は、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bによって形成された映像を、拡大してスクリーン810に投射してもよい。
【0094】
また、上記の例では、光変調装置として透過型の液晶ライトバルブを用いたが、液晶以外のライトバルブを用いてもよいし、反射型のライトバルブを用いてもよい。このようなライトバルブとしては、例えば、反射型の液晶ライトバルブや、デジタルマイクロミラーデバイス(Digital Micro Mirror Device)が挙げられる。また、投射装置の構成は、使用されるライトバルブの種類によって適宜変更される。
【0095】
また、光源を、光源からの光をスクリーン上で走査させることにより、表示面に所望の大きさの画像を表示させる画像形成装置である走査手段を有するような走査型の画像表示装置の光源装置にも適用することが可能である。
【0096】
上述した実施形態に係る発光装置は、プロジェクター以外にも用いることが可能である。プロジェクター以外の用途には、例えば、屋内外の照明、ディスプレイ、レーザープリンター、スキャナー、車載用ライト、光を用いるセンシング機器、通信機器等の光源、ヘッドマウントディスプレイの表示装置、がある。また、上述した実施形態に係る発光装置は、微小な発光素子をアレイ状に配置して画像表示させるLED(Light Emitting Diode)ディスプレイの発光素子にも適用することができる。
【0097】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0098】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0099】
上述した実施形態および変形例から以下の内容が導き出される。
【0100】
発光装置の一態様は、
複数の柱状部構造体を有する積層体を有し、
前記積層体は、
光を発生させる発光層を有する複数の第1柱状部と、
発光しない複数の第2柱状部と、
を有し、
前記複数の柱状部構造体の各々は、前記複数の第1柱状部のうちの少なくとも1つで構成され、
前記積層体の積層方向からみた平面視において、前記複数の柱状部構造体は、格子状に周期的に配列されて周期パターンを形成し、
各々が前記周期パターンの単位となる複数の単位領域には、それぞれ、前記複数の柱状部構造体のうちの少なくとも1つと前記複数の第2柱状部のうちの少なくとも1つとが設けられ、
前記積層体の積層方向からみた平面視において、前記複数の単位領域のうちの隣り合う
単位領域における一方の第1単位領域と他方の第2単位領域とを重ね合わせた場合に、前記複数の第2柱状部のうちの前記第1単位領域に設けられた第2柱状部の中心と、前記複数の第2柱状部のうちの前記第2単位領域に設けられた第2柱状部の中心とは、位置が異なる。
【0101】
この発光装置によれば、複数の柱状部構造体のフォトニック結晶効果による光の共振状態が、複数の第2柱状部によって受ける影響を低減することができる。
【0102】
発光装置の一態様において、
前記積層体の積層方向からみた平面視において、
前記複数の柱状部構造体は、正三角格子状に配列され、
前記複数の単位領域の各々の中心と、前記複数の柱状部構造体の各々の中心とは、位置が一致し、
前記第1単位領域は、前記複数の単位領域のうちの、第3単位領域、第4単位領域、第5単位領域、第6単位領域、および第7単位領域と隣り合い、
前記第1単位領域は、
前記第1単位領域の中心と、前記第2単位領域の中心と、を結ぶ第1線分の第1垂直二等分線と、
前記第1単位領域の中心と、前記第3単位領域の中心と、を結ぶ第2線分の第2垂直二等分線と、
前記第1単位領域の中心と、前記第4単位領域の中心と、を結ぶ第3線分の第3垂直二等分線と、
前記第1単位領域の中心と、前記第5単位領域の中心と、を結ぶ第4線分の第4垂直二等分線と、
前記第1単位領域の中心と、前記第6単位領域の中心と、を結ぶ第5線分の第5垂直二等分線と、
前記第1単位領域の中心と、前記第7単位領域の中心と、を結ぶ第6線分の第6垂直二等分線と、
で囲まれた領域であってもよい。
【0103】
この発光装置によれば、例えば、第1単位領域を正六角形の領域に規定することができる。
【0104】
発光装置の一態様において、
前記複数の第2柱状部のうちの前記第1単位領域に設けられた第2柱状部の数と、前記複数の第2柱状部のうちの前記第2単位領域に設けられた第2柱状部の数とは、異なってもよい。
【0105】
この発光装置によれば、複数の第2柱状部を周期的に配列させないことができる。
【0106】
発光装置の一態様において、
前記複数の柱状部構造体の各々は、前記複数の第1柱状部のうちの2つ以上で構成されていてもよい。
【0107】
この発光装置によれば、径が大きい第1柱状部を成長させなくても、複数の第1柱状部で構成された柱状部構造体を単位格子とみなすことができる。
【0108】
発光装置の一態様において、
前記複数の第2柱状部の各々の径は、前記複数の第1柱状部の各々の径よりも小さくてもよい。
【0109】
この発光装置によれば、例えば、第1柱状部のMQW層で発生する光の波長と、第2柱状部のMQW層で吸収される光の波長と、をずらすことができる。
【0110】
発光装置の一態様において、
前記複数の第2柱状部の各々は、前記複数の第2柱状部の各々の径と、前記複数の第2柱状部の各々の径方向における空乏層領域の幅とが、等しい部分を有してもよい。
【0111】
この発光装置によれば、第2柱状部を発光させないようにすることができる。
【0112】
発光装置の一態様において、
前記複数の第1柱状部および前記複数の第2柱状部に接続された電極を有してもよい。
【0113】
この発光装置によれば、第2電極の平坦性を高めることができる。
【0114】
発光装置の一態様において、
前記発光層が発生する光の波長は、500nm以上750nm以下であってもよい。
【0115】
この発光装置によれば、隣り合う柱状部構造体の間の距離を大きくする必要がある赤色光や緑色光を発生させる場合においても、第2柱状部によって、第2電極の平坦性が低くなることを抑制することができる。
【0116】
プロジェクターの一態様は、
前記発光装置の一態様を有する。
【符号の説明】
【0117】
2…空乏層領域、4…非空乏層領域、10…基板、20…積層体、22…バッファー層、24…マスク層、30a…第1柱状部、30b,30b1,30b2…第2柱状部、31…部分、32…第1半導体層、34…MQW層、36…第2半導体層、40…第1電極、42…第2電極、50…柱状部構造体、60…単位領域、61…第1単位領域、62…第2単位領域、63…第3単位領域、64…第4単位領域、65…第5単位領域、66…第6単位領域、67…第7単位領域、70…第2柱状部不在領域、100,200…発光装置、800…プロジェクター、802R…第1光学素子、802G…第2光学素子、802B…第3光学素子、804R…第1光変調装置、804G…第2光変調装置、804B…第3光変調装置、806…クロスダイクロイックプリズム、808…投射装置、810…スクリーン
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