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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065945
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】発光装置およびプロジェクター
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/11 20210101AFI20230508BHJP
   H01S 5/323 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
H01S5/11
H01S5/323 610
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176377
(22)【出願日】2021-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502350504
【氏名又は名称】学校法人上智学院
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】石沢 峻介
(72)【発明者】
【氏名】岸野 克巳
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AA32
5F173AB02
5F173AB53
5F173AB90
5F173AF03
5F173AH22
5F173AK21
5F173AL10
5F173AL13
5F173AL21
5F173AP05
5F173AP09
5F173AP13
5F173AP33
5F173AP71
5F173AR12
5F173AR52
(57)【要約】
【課題】発光層で発生する光の第1孔における散乱を低減することができ、かつ、電極における光の吸収を低減することができる発光装置を提供する。
【解決手段】基板と、複数の柱状部を有する積層体と、前記積層体の前記基板とは反対側に設けられた電極と、を有し、前記複数の柱状部の各々は、発光層を有し、前記電極には、複数の第1孔が設けられ、前記複数の第1孔の各々の径は、前記発光層で発生する光の波長よりも小さく、前記複数の第1孔のうちの隣り合う第1孔の間の距離は、前記発光層で発生する光の波長よりも小さい、発光装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
複数の柱状部を有する積層体と、
前記積層体の前記基板とは反対側に設けられた電極と、
を有し、
前記複数の柱状部の各々は、発光層を有し、
前記電極には、複数の第1孔が設けられ、
前記複数の第1孔の各々の径は、前記発光層で発生する光の波長よりも小さく、
前記複数の第1孔のうちの隣り合う第1孔の間の距離は、前記発光層で発生する光の波長よりも小さい、発光装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記複数の第1孔の各々は、前記電極を貫通している、発光装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記複数の柱状部の各々は、
第1導電型の第1半導体層と、
前記第1導電型と異なる第2導電型の第2半導体層と、
を有し、
前記発光層は、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられ、
前記第1半導体層は、前記基板と前記発光層との間に設けられ、
前記積層体は、前記複数の柱状部のうちの隣り合う柱状部の間に設けられた光伝搬層を有し、
前記光伝搬層には、第2孔が設けられ、
前記第2孔は、前記複数の第1孔のうちの1つと連通し、
前記第2孔の底面は、前記複数の柱状部のうちの隣り合う柱状部の前記第2半導体層の間に位置している、発光装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記複数の第1孔の各々は、前記電極を貫通していない、発光装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の発光装置を有する、プロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置およびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザーは、高輝度の次世代光源として期待されている。特に、ナノコラムを適用した半導体レーザーは、ナノコラムによるフォトニック結晶の効果によって、狭放射角で高出力の発光が実現できると期待されている。
【0003】
例えば特許文献1には、発光層を有する複数の柱状部と、複数の柱状部上に設けられた電極と、を有する発光装置において、電極に複数の孔を設けることにより、孔の分だけ光の吸収を低減できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-7136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電極における光の吸収をさらに低減する方法としては、例えば、電極に設けられた孔の径を大きくすることが考えられる。しかしながら、孔の径を発光層で発生する光の波長よりも大きくすると、発光層で発生する光の孔における散乱が増加する場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発光装置の一態様は、
基板と、
複数の柱状部を有する積層体と、
前記積層体の前記基板とは反対側に設けられた電極と、
を有し、
前記複数の柱状部の各々は、発光層を有し、
前記電極には、複数の第1孔が設けられ、
前記複数の第1孔の各々の径は、前記発光層で発生する光の波長よりも小さく、
前記複数の第1孔のうちの隣り合う第1孔の間の距離は、前記発光層で発生する光の波長よりも小さい。
【0007】
本発明に係るプロジェクターの一態様は、
前記発光装置の一態様を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図。
図2】本実施形態に係る発光装置の柱状部および第1孔を模式的に示す平面図。
図3】本実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
図4】本実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
図5】本実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
図6】本実施形態の第1変形例に係る発光装置を模式的に示す断面図。
図7】本実施形態の第2変形例に係る発光装置を模式的に示す断面図。
図8】本実施形態の第3変形例に係る発光装置を模式的に示す断面図。
図9】本実施形態に係るプロジェクターを模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0010】
1. 発光装置
1.1. 全体の構成
まず、本実施形態に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る発光装置100を模式的に示す断面図である。図2は、本実施形態に係る発光装置100を模式的に示す平面図である。なお、図1は、図2のI-I線断面図である。
【0011】
発光装置100は、図1に示すように、例えば、基板10と、積層体20と、第1電極40と、第2電極42と、を有している。発光装置100は、例えば、半導体レーザーである。
【0012】
基板10は、例えば、Si基板、GaN基板、サファイア基板、SiC基板などである。
【0013】
積層体20は、基板10に設けられている。図示の例では、積層体20は、基板10上に設けられている。積層体20は、例えば、バッファー層22と、複数の柱状部30と、を有している。なお、便宜上、図2では、柱状部30以外の部材の図示を省略している。
【0014】
本明細書では、積層体20の積層方向(以下、単に「積層方向」ともいう)において、柱状部30の発光層34を基準とした場合、発光層34から柱状部30の第2半導体層36に向かう方向を「上」とし、発光層34から柱状部30の第1半導体層32に向かう方向を「下」として説明する。また、積層方向と直交する方向を「面内方向」ともいう。また、「積層体20の積層方向」とは、第1半導体層32と発光層34との積層方向のことであり、基板10の垂線N方向である。具体的には、「基板10の垂線N」とは、基板10の上面の垂線である。
【0015】
バッファー層22は、基板10上に設けられている。バッファー層22は、例えば、Siがドープされたn型のGaN層である。バッファー層22上には、柱状部30を成長させるためのマスク層24が設けられている。マスク層24は、例えば、チタン層、酸化シリコン層、酸化チタン層、酸化アルミニウム層などである。
【0016】
柱状部30は、バッファー層22上に設けられている。柱状部30は、バッファー層22から上方に突出した柱状の形状を有している。言い換えれば、柱状部30は、バッファー層22を介して基板10から上方に突出している。柱状部30は、例えば、ナノコラム、ナノワイヤー、ナノロッド、ナノピラーとも呼ばれる。柱状部30の平面形状は、例えば、六角形などの多角形、円である。図2に示す例では、柱状部30の平面形状は、正六角形である。
【0017】
柱状部30の径は、例えば、50nm以上500nm以下である。柱状部30の径を500nm以下とすることによって、高品質な結晶の発光層34を得ることができ、かつ、発光層34に内在する歪を低減することができる。これにより、発光層34で発生する光を高い効率で増幅することができる。
【0018】
なお、「柱状部30の径」とは、柱状部30の平面形状が円の場合は、直径であり、柱状部30の平面形状が円ではない形状の場合は、最小包含円の直径である。例えば、柱状部30の径は、柱状部30の平面形状が多角形の場合、該多角形を内部に含む最小の円の直径であり、柱状部30の平面形状が楕円の場合、該楕円を内部に含む最小の円の直径である。
【0019】
柱状部30は、複数設けられている。隣り合う柱状部30の間隔は、例えば、1nm以上500nm以下である。複数の柱状部30は、積層方向からみて、所定の方向に所定のピッチで配列されている。複数の柱状部30は、例えば、三角格子状、正方格子状に配列されている。図2に示す例では、複数の柱状部30は、正三角格子状に配列されている。複数の柱状部30は、フォトニック結晶の効果を発現することができる。
【0020】
なお、「柱状部30のピッチ」とは、所定の方向に隣り合う柱状部30の中心間の距離である。「柱状部30の中心」とは、柱状部30の平面形状が円の場合は、該円の中心であり、柱状部30の平面形状が円ではない形状の場合は、最小包含円の中心である。例えば、柱状部30の中心は、柱状部30の平面形状が多角形の場合、該多角形を内部に含む最小の円の中心であり、柱状部30の平面形状が楕円の場合、該楕円を内部に含む最小の円の中心である。
【0021】
柱状部30は、図1に示すように、例えば、第1半導体層32と、発光層34と、第2半導体層36と、を有している。
【0022】
第1半導体層32は、バッファー層22上に設けられている。第1半導体層32は、基板10と発光層34との間に設けられている。第1半導体層32は、第1導電型の半導体層である。第1半導体層32は、例えば、Siがドープされたn型のGaN層である。
【0023】
発光層34は、第1半導体層32と第2半導体層36との間に設けられている。発光層34は、電流が注入されることで光を発生させる。発光層34は、例えば、ウェル層と、バリア層と、を有している。ウェル層およびバリア層は、不純物が意図的にドープされていないi型の半導体層である。ウェル層は、例えば、InGaN層である。バリア層は、例えば、GaN層である。発光層34は、ウェル層とバリア層とから構成されたMQW(Multiple Quantum Well)構造を有している。
【0024】
なお、発光層34を構成するウェル層およびバリア層の数は、特に限定されない。例えば、ウェル層は、1層だけ設けられていてもよく、この場合、発光層34は、SQW(Single Quantum Well)構造を有している。
【0025】
第2半導体層36は、発光層34上に設けられている。第2半導体層36は、発光層34と第2電極42との間に設けられている。第2半導体層36は、第1導電型と異なる第2導電型の半導体層である。第2半導体層36は、例えば、Mgがドープされたp型のGaN層である。第1半導体層32および第2半導体層36は、発光層34に光を閉じ込める機能を有するクラッド層である。
【0026】
なお、図示はしないが、第1半導体層32と発光層34との間、および発光層34と第2半導体層36との間の少なくとも一方に、i型のInGaN層およびGaN層からなるOCL(Optical Confinement Layer)が設けられていてもよい。また、第2半導体層36は、p型のAlGaN層からなるEBL(Electron Blocking Layer)を有してもよい。
【0027】
発光装置100では、p型の第2半導体層36、不純物が意図的にドープされていない
i型の発光層34、およびn型の第1半導体層32により、pinダイオードが構成される。発光装置100では、第1電極40と第2電極42との間に、pinダイオードの順バイアス電圧を印加すると、発光層34に電流が注入されて発光層34において電子と正孔との再結合が起こる。この再結合により発光が生じる。発光層34で発生した光は、面内方向に伝搬し、複数の柱状部30によるフォトニック結晶の効果により定在波を形成して、発光層34で利得を受けてレーザー発振する。そして、発光装置100は、+1次回折光および-1次回折光をレーザー光として、積層方向に出射する。
【0028】
なお、図示はしないが、基板10とバッファー層22との間、または基板10の下に反射層が設けられていてもよい。該反射層は、例えば、DBR(Distributed Bragg Reflector)層である。該反射層によって、発光層34において発生した光を反射させることができ、発光装置100は、第2電極42側からのみ光を出射することができる。
【0029】
第1電極40は、バッファー層22上に設けられている。バッファー層22は、第1電極40とオーミックコンタクトしていてもよい。第1電極40は、第1半導体層32と電気的に接続されている。図示の例では、第1電極40は、バッファー層22を介して、第1半導体層32と電気的に接続されている。第1電極40は、発光層34に電流を注入するための一方の電極である。第1電極40としては、例えば、バッファー層22側から、Cr層、Ni層、Au層の順序で積層したものなどを用いる。
【0030】
第2電極42は、積層体20の基板10とは反対側に設けられている。第2電極42は、第2半導体層36上に設けられている。第2半導体層36は、第2電極42とオーミックコンタクトしていてもよい。第2電極42は、発光層34に電流を注入するための他方の電極である。第2電極42としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)などを用いる。
【0031】
なお、上記では、InGaN系の発光層34について説明したが、発光層34としては、出射される光の波長に応じて、電流が注入されることで発光可能な様々な材料系を用いることができる。例えば、AlGaN系、AlGaAs系、InGaAs系、InGaAsP系、InP系、GaP系、AlGaP系などの半導体材料を用いることができる。
【0032】
1.2. 第2電極に設けられた第1孔
第2電極42には、複数の第1孔44が設けられている。第1孔44は、例えば、第2電極42を貫通している。図示の例では、第1孔44は、第2電極42を積層方向に貫通している。第1孔44は、貫通孔である。図示の例では、第1孔44は、空隙である。なお、図示はしないが、第1孔44は、第2電極42よりも屈折率が低い部材で充填されていてもよい。
【0033】
第1孔44の平面形状は、例えば、円である。なお、第1孔44の形状は、楕円であってもよいし、多角形であってもよい。図2に示す例では、複数の第1孔44は、互いに同じ大きさを有している。複数の第1孔44は、互いに離間している。
【0034】
第1孔44の径Dは、積層方向からみて、発光層34で発生する光の波長よりも小さい。第1孔44の径Dは、複数の柱状部30のフォトニック結晶効果によって形成された定在波の波長よりも小さい。すなわち、第1孔44の径Dは、発振波長よりも小さい。第1孔44の径Dは、柱状部30の径よりも小さい。
【0035】
なお、「第1孔44の径D」とは、第1孔44の平面形状が円の場合は、直径であり、第1孔44の平面形状が円ではない形状の場合は、最小包含円の直径である。例えば、第1孔44の径Dは、第1孔44の平面形状が多角形の場合、該多角形を内部に含む最小の
円の直径であり、第1孔44の平面形状が楕円の場合、該楕円を内部に含む最小の円の直径である。
【0036】
隣り合う第1孔44の間の距離は、発光層34で発生する光の波長よりも小さい。隣り合う第1孔44の間の距離は、複数の柱状部30のフォトニック結晶効果によって形成された定在波の波長よりも小さい。すなわち、隣り合う第1孔44の間の距離は、発振波長よりも小さい。隣り合う第1孔44の間の距離は、隣り合う柱状部30の間の距離よりも小さい。積層方向からみて、所定形状の単位領域当たりに存在する第1孔44の数は、所定形状の単位領域当たりに存在する柱状部30の数よりも多い。
【0037】
なお、「隣り合う第1孔44の間の距離」とは、任意の第1孔44と、複数の第1孔44のうち任意の第1孔44に最も近い第1孔44と、の間の、積層方向からみた平面視における最短の距離をいう。例えば、複数の第1孔44のうちの第1孔44aと、複数の第1孔44のうち第1孔44aに最も近い第1孔44bと、の間の距離Lは、発光層34で発生する光の波長よりも小さい。図示の例では、全ての第1孔44において、隣り合う第1孔44の間の距離は、発光層34で発生する光の波長よりも小さい。
【0038】
第1孔44の数は、柱状部30の数よりも多い。複数の第1孔44は、積層方向からみて、周期的に配列されていない。複数の第1孔44は、例えば、ランダムに配列されている。図示の例では、積層方向からみて、複数の第1孔44において、柱状部30と重なる位置に設けられた第1孔44もあるし、柱状部30と重ならない位置に設けられた第1孔44もある。第2電極42に複数の第1孔44が設けられていることにより、第2電極42は、多孔質構造を有していてもよい。複数の柱状部30は、積層方向からみて、周期的に配列されている。図示の例では、積層方向からみて、1つの柱状部30は、複数の第1孔44と重なっている。隣り合う柱状部30の間には、第1孔44が設けられている。
【0039】
1.3. 作用効果
発光装置100では、複数の柱状部30の各々は、発光層34を有し、第2電極42には、複数の第1孔44が設けられ、複数の第1孔44の各々の径Dは、発光層34で発生する光の波長よりも小さく、複数の第1孔44のうちの隣り合う第1孔44の間の距離は、発光層34で発生する光の波長よりも小さい。そのため、発光装置100では、第1孔の径が光の波長よりも大きい場合や、隣り合う第1孔の間の距離が光の波長よりも大きい場合に比べて、発光層34で発生する光は、第1孔44の影響を受け難く、発光層34で発生する光の第1孔44における散乱を低減することができる。さらに、隣り合う第1孔の間の距離が光の波長よりも大きい場合に比べて、所定の領域当たりの第1孔44の数を増やすことができるため、第2電極42における光の吸収を低減することができる。さらに、複数の柱状部30のフォトニック結晶効果によって生じる共振モードが第1孔44によって乱されることを抑制することができる。
【0040】
発光装置100では、複数の第1孔44の各々は、第2電極42を貫通している。そのため、発光装置100では、第1孔が第2電極を貫通していない場合に比べて、発光装置100の第2電極42が設けられた部分における面内方向の平均屈折率を小さくすることができる。これにより、光閉じ込め係数を大きくすることができる。
【0041】
2. 発光装置の製造方法
次に、本実施形態に係る発光装置100の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図3図5は、本実施形態に係る発光装置100の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0042】
図3に示すように、基板10上に、バッファー層22をエピタキシャル成長させる。エ
ピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法などが挙げられる。
【0043】
次に、バッファー層22上に、マスク層24を形成する。マスク層24は、例えば、電子ビーム蒸着法やスパッタ法などによる成膜、およびパターニングによって形成される。パターニングは、例えば、電子線リソグラフィーおよびドライエッチングによって行われる。
【0044】
図4に示すように、マスク層24をマスクとしてバッファー層22上に、第1半導体層32、発光層34、および第2半導体層36を、この順でエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MOCVD法、MBE法などが挙げられる。本工程により、複数の柱状部30を形成することができる。
【0045】
図5に示すように、第2半導体層36上に、第2電極42を形成する。第2電極42は、例えば、スパッタ法、真空蒸着法などによって形成される。第2電極42を形成する工程では、柱状部30の側面に電極材料が付着しないように、斜め蒸着を行ってもよい。
【0046】
図1に示すように、第2電極42をパターニングして、複数の第1孔44を形成する。パターニングは、例えば、電子線リソグラフィーおよびエッチングによって行われる。エッチングは、ドライエッチングでもよいし、ウェットエッチングでもよいが、ウェットエッチングの方が柱状部30に加えられるダメージを低減することができる。
【0047】
次に、バッファー層22上に第1電極40を形成する。第1電極40は、例えば、スパッタ法、真空蒸着法などによって形成される。なお、第1電極40を形成する工程と、第2電極42を形成する工程と、の順序は、特に限定されない。
【0048】
以上の工程により、発光装置100を製造することができる。
【0049】
3. 発光装置の変形例
3.1. 第1変形例
次に、本実施形態の第1変形例に係る発光装置200について、図面を参照しながら説明する。図6は、本実施形態の第1変形例に係る発光装置200を模式的に示す断面図である。
【0050】
以下、本実施形態の第1変形例に係る発光装置200において、上述した本実施形態に係る発光装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。このことは、後述する本実施形態の第2,第3変形例に係る発光装置について同様である。
【0051】
上述した発光装置100では、図1に示すように、隣り合う柱状部30の間には空隙が設けられていた。
【0052】
これに対し、発光装置200では、図6に示すように、積層体20は、隣り合う柱状の間に設けられた光伝搬層26を有している。
【0053】
光伝搬層26は、マスク層24上に設けられている。光伝搬層26は、例えば、誘電体材料で構成されている。具体的には、光伝搬層26は、酸化シリコン層である。より具体的には、光伝搬層26は、SiO層である。発光層34で発生した光は、光伝搬層26を面内方向に伝搬する。
【0054】
光伝搬層26には、第2孔28が設けられている。第2孔28は、第1孔44と連通している。第2孔28は、複数設けられている。第2孔28の底面29は、隣り合う柱状部30の第2半導体層36の間に設けられている。第2孔28は、隣り合う柱状部30の発光層34の間に設けられていない。第2孔28は、積層方向において、発光層34まで到達していない。底面29は、第2半導体層36によって規定されている。図示の例では、第2孔28は、空隙である。なお、図示はしないが、第2孔28は、光伝搬層26よりも屈折率が低い部材で充填されていてもよい。また、第2孔28は、設けられていなくてもよい。
【0055】
光伝搬層26は、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、スピンコート法によって形成される。第2孔28は、光伝搬層26をパターニングすることによって形成される。第2孔28は、例えば、第1孔44と連続して形成される。
【0056】
発光装置200では、積層体20は、複数の柱状部30のうちの隣り合う柱状部30の間に設けられた光伝搬層26を有し、光伝搬層26には、第2孔28が設けられ、第2孔28は、複数の第1孔44のうちの1つと連通し、第2孔28の底面29は、複数の柱状部30のうちの隣り合う柱状部30の第2半導体層36の間に位置している。そのため、発光装置200では、第2孔が設けられていない場合に比べて、発光装置200の第2孔28が設けられている部分における面内方向の平均屈折率を低くすることができる。これにより、光閉じ込め係数を大きくすることができる。さらに、隣り合う柱状部30の間に光伝搬層26が設けられているため、第2電極42を形成する際に、電極材料が柱状部30の側面に付着することを抑制することができる。
【0057】
3.2. 第2変形例
次に、本実施形態の第2変形例に係る発光装置300について、図面を参照しながら説明する。図7は、本実施形態の第2変形例に係る発光装置300を模式的に示す断面図である。
【0058】
上述した発光装置100では、図1に示すように、第1孔44は、第2電極42を貫通していた。
【0059】
これに対し、発光装置300では、図7に示すように、第1孔44は、第2電極42を貫通していない。第1孔44は、有底の孔である。
【0060】
第2電極42は、第1孔44が設けられていない第1層42aと、第1孔44が設けられた第2層42bと、を有している。第1層42aは、複数の柱状部30上に設けられている。第1層42aは、第1孔44の底面45を規定している。第1層42aは、複数の柱状部30と第2層42bとの間に設けられている。第2層42bは、第1層42a上に設けられている。第1孔44は、ドライエッチングによって形成されてもよいし、ウェットエッチングによって形成されてもよい。
【0061】
発光装置300では、複数の第1孔44の各々は、第2電極42を貫通していない。そのため、発光装置300では、第1孔44を形成するためのエッチングによって柱状部30にダメージが加えられることを抑制することができる。
【0062】
3.3. 第3変形例
次に、本実施形態の第3変形例に係る発光装置400について、図面を参照しながら説明する。図8は、本実施形態の第3変形例に係る発光装置400を模式的に示す断面図である。
【0063】
上述した発光装置100では、図1に示すように、柱状部30の第1半導体層32における径は、柱状部30の発光層34における径と同じであった。
【0064】
これに対し、発光装置300では、図8に示すように、柱状部30の第1半導体層32における径は、柱状部30の発光層34における径よりも小さい。これにより、柱状部30の第1半導体層32における径が柱状部30の発光層34における径と同じである場合に比べて、発光装置400の第1半導体層32が設けられた部分における面内方向の平均屈折率と、発光装置400の発光層34が設けられた部分における面内方向の平均屈折率と、の差を大きくすることができる。そのため、光閉じ込め係数を大きくすることができる。
【0065】
発光装置400では、柱状部30は、光閉じ込め層38を有している。光閉じ込め層38は、第1半導体層32上に設けられている。光閉じ込め層38は、第1半導体層32と発光層34との間に設けられている。図示の例では、光閉じ込め層38は、第1半導体層32から発光層34に向けて、徐々に柱状部30の径が大きくなる部分を有している。光閉じ込め層38は、例えば、i型のInGaN層と、i型のGaN層と、によって構成されている。光閉じ込め層38を構成するInGaN層のIn組成は、発光層34を構成するInGaN層のIn組成よりも小さい。光閉じ込め層38は、発光層34に光を閉じ込めるOCLである。
【0066】
発光装置400は、第2電極42と離間したダミー柱状部430を有している。ダミー柱状部430は、発光しない。ダミー柱状部430の構成は、例えば、柱状部30の構成と同じである。ダミー柱状部430は、例えば、複数設けられている。ダミー柱状部430は、例えば、柱状部30と同一の工程で成長される。
【0067】
ダミー柱状部430と第2電極42との間には、絶縁層440が設けられている。絶縁層440は、積層方向からみて、ダミー柱状部430を囲んでいる。絶縁層440は、ダミー柱状部430を覆っている。絶縁層440は、マスク層24上に設けられている。絶縁層440は、例えば、酸化シリコン層である。より具体的には、絶縁層440は、SiO層である。絶縁層440は、例えば、CVD法、スピンコート法によって形成される。
【0068】
図示の例では、第1電極40は、バッファー層22が掘り込まれた部分に設けられている。例えば、バッファー層22の一部をエッチングし、バッファー層22のエッチングされた部分に、第1電極40を形成する。
【0069】
第2電極42上には、電極パッド450が設けられている。電極パッド450は、積層方向からみて、ダミー柱状部430と重なっている。電極パッド450は、例えば、チタン、金などを含んで構成されている。電極パッド450には、例えば、図示せぬワイヤーボンディングが接続されている。電極パッド450は、例えば、CVD法、スパッタ法によって形成される。
【0070】
4. プロジェクター
次に、本実施形態に係るプロジェクターについて、図面を参照しながら説明する。図9は、本実施形態に係るプロジェクター800を模式的に示す図である。
【0071】
プロジェクター800は、例えば、光源として、発光装置100を有している。
【0072】
プロジェクター800は、図示しない筐体と、筐体内に備えられている赤色光、緑色光、青色光をそれぞれ出射する赤色光源100R、緑色光源100G、青色光源100Bと
、を有している。なお、便宜上、図9では、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bを簡略化している。
【0073】
プロジェクター800は、さらに、筐体内に備えられている、第1光学素子802Rと、第2光学素子802Gと、第3光学素子802Bと、第1光変調装置804Rと、第2光変調装置804Gと、第3光変調装置804Bと、投射装置808と、を有している。第1光変調装置804R、第2光変調装置804G、および第3光変調装置804Bは、例えば、透過型の液晶ライトバルブである。投射装置808は、例えば、投射レンズである。
【0074】
赤色光源100Rから出射された光は、第1光学素子802Rに入射する。赤色光源100Rから出射された光は、第1光学素子802Rによって集光される。なお、第1光学素子802Rは、集光以外の機能を有していてもよい。後述する第2光学素子802Gおよび第3光学素子802Bについても同様である。
【0075】
第1光学素子802Rによって集光された光は、第1光変調装置804Rに入射する。第1光変調装置804Rは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置808は、第1光変調装置804Rによって形成された像を拡大してスクリーン810に投射する。
【0076】
緑色光源100Gから出射された光は、第2光学素子802Gに入射する。緑色光源100Gから出射された光は、第2光学素子802Gによって集光される。
【0077】
第2光学素子802Gによって集光された光は、第2光変調装置804Gに入射する。第2光変調装置804Gは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置808は、第2光変調装置804Gによって形成された像を拡大してスクリーン810に投射する。
【0078】
青色光源100Bから出射された光は、第3光学素子802Bに入射する。青色光源100Bから出射された光は、第3光学素子802Bによって集光される。
【0079】
第3光学素子802Bによって集光された光は、第3光変調装置804Bに入射する。第3光変調装置804Bは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置808は、第3光変調装置804Bによって形成された像を拡大してスクリーン810に投射する。
【0080】
また、プロジェクター800は、第1光変調装置804R、第2光変調装置804G、および第3光変調装置804Bから出射された光を合成して投射装置808に導くクロスダイクロイックプリズム806を有することができる。
【0081】
第1光変調装置804R、第2光変調装置804G、および第3光変調装置804Bによって変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム806に入射する。クロスダイクロイックプリズム806は、4つの直角プリズムを貼り合わせて形成され、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが配置されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成され、カラー画像を表す光が形成される。そして、合成された光は、投射装置808によりスクリーン810上に投射され、拡大された画像が表示される。
【0082】
なお、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bは、発光装置100を映像の画素として画像情報に応じて制御することで、第1光変調装置804R、第
2光変調装置804G、および第3光変調装置804Bを用いずに、直接的に映像を形成してもよい。そして、投射装置808は、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bによって形成された映像を、拡大してスクリーン810に投射してもよい。
【0083】
また、上記の例では、光変調装置として透過型の液晶ライトバルブを用いたが、液晶以外のライトバルブを用いてもよいし、反射型のライトバルブを用いてもよい。このようなライトバルブとしては、例えば、反射型の液晶ライトバルブや、デジタルマイクロミラーデバイス(Digital Micro Mirror Device)が挙げられる。また、投射装置の構成は、使用されるライトバルブの種類によって適宜変更される。
【0084】
また、光源を、光源からの光をスクリーン上で走査させることにより、表示面に所望の大きさの画像を表示させる画像形成装置である走査手段を有するような走査型の画像表示装置の光源装置にも適用することが可能である。
【0085】
上述した実施形態に係る発光装置は、プロジェクター以外にも用いることが可能である。プロジェクター以外の用途には、例えば、屋内外の照明、ディスプレイ、レーザープリンター、スキャナー、車載用ライト、光を用いるセンシング機器、通信機器等の光源、ヘッドマウントディスプレイの表示装置、がある。また、上述した実施形態に係る発光装置は、微小な発光素子をアレイ状に配置して画像表示させるLED(Light Emitting Diode)ディスプレイの発光素子にも適用することができる。
【0086】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0087】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0088】
上述した実施形態および変形例から以下の内容が導き出される。
【0089】
発光装置の一態様は、
基板と、
複数の柱状部を有する積層体と、
前記積層体の前記基板とは反対側に設けられた電極と、
を有し、
前記複数の柱状部の各々は、発光層を有し、
前記電極には、複数の第1孔が設けられ、
前記複数の第1孔の各々の径は、前記発光層で発生する光の波長よりも小さく、
前記複数の第1孔のうちの隣り合う第1孔の間の距離は、前記発光層で発生する光の波長よりも小さい。
【0090】
この発光装置によれば、発光層で発生する光の第1孔における散乱を低減することができ、かつ、電極における光の吸収を低減することができる。
【0091】
発光装置の一態様において、
前記複数の第1孔の各々は、前記電極を貫通していてもよい。
【0092】
この発光装置によれば、光閉じ込め係数を大きくすることができる。
【0093】
発光装置の一態様において、
前記複数の柱状部の各々は、
第1導電型の第1半導体層と、
前記第1導電型と異なる第2導電型の第2半導体層と、
を有し、
前記発光層は、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられ、
前記第1半導体層は、前記基板と前記発光層との間に設けられ、
前記積層体は、前記複数の柱状部のうちの隣り合う柱状部の間に設けられた光伝搬層を有し、
前記光伝搬層には、第2孔が設けられ、
前記第2孔は、前記複数の第1孔のうちの1つと連通し、
前記第2孔の底面は、前記複数の柱状部のうちの隣り合う柱状部の前記第2半導体層の間に位置していてもよい。
【0094】
この発光装置によれば、光閉じ込め係数を大きくすることができる。
【0095】
発光装置の一態様において、
前記複数の第1孔の各々は、前記電極を貫通していなくてもよい。
【0096】
この発光装置によれば、第1孔を形成するためのエッチングによって柱状部30にダメージが加えられることを抑制することができる。
【0097】
プロジェクターの一態様は、
前記発光装置の一態様を有する。
【符号の説明】
【0098】
10…基板、20…積層体、22…バッファー層、24…マスク層、26…光伝搬層、28…第2孔、29…底面、30…柱状部、32…第1半導体層、34…発光層、36…第2半導体層、38…光閉じ込め層、40…第1電極、42…第2電極、42a…第1層、42b…第2層、44,44a,44b…第1孔、45…底面、100,200,300,400…発光装置、430…ダミー柱状部、440…絶縁層、450…電極パッド、800…プロジェクター、802R…第1光学素子、802G…第2光学素子、802B…第3光学素子、804R…第1光変調装置、804G…第2光変調装置、804B…第3光変調装置、806…クロスダイクロイックプリズム、808…投射装置、810…スクリーン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9