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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006596
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   B61D 17/12 20060101AFI20230111BHJP
   B61D 17/00 20060101ALI20230111BHJP
   B61D 37/00 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
B61D17/12
B61D17/00 B
B61D37/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021109281
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】加藤 修
(72)【発明者】
【氏名】細川 淳平
(72)【発明者】
【氏名】福田 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】福田 一郎
(57)【要約】
【課題】天井に情報機器を設ける場合でも情報機器による乗客への威圧感を抑制でき、更に天井の見栄えの悪化を抑制できる鉄道車両を提供すること。
【解決手段】鉄道車両1における天井パネル50の車両長手方向側の側面には、車両長手方向に沿って並設された座席20に面するように、天井パネル50の下端から車両長手方向の外側に向けて鈍角に傾斜した傾斜面54が形成され、その傾斜面54には、監視カメラCのレンズが向けられる開口部である撮影窓55が形成され、監視カメラCが傾斜面54における上面側に設けられる。これにより、客室Ro内から監視カメラCを視認し難くできるので、監視カメラCを設けることによる乗客への威圧感を抑制でき、更に天井の見栄えの悪化を抑制できる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
客室の天井側に設けられ、車両長手方向に複数並設される天井パネルを備えた鉄道車両において、
前記客室には、座席が車両長手方向に沿って並設され、
少なくとも1の前記天井パネルにおける車両長手方向側の側面には、傾斜した傾斜面が形成され、
その傾斜面には、前記客室内の情報を取得する情報機器が向けられる開口部である取得窓が形成され、
前記情報機器が前記傾斜面の上面側に設けられることを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
前記天井パネルの上面側には、前記天井パネルを補強する骨組である補強部材が設けられ、
前記情報機器は、前記補強部材に固定されることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両。
【請求項3】
前記補強部材は、前記天井パネルの上面側における端部に沿って設けられる端部補強部材を備えることを特徴とする請求項2記載の鉄道車両。
【請求項4】
前記天井パネルは、断面がV字状に屈曲した屈曲部を有するように形成され、
前記補強部材は、前記屈曲部に接着して設けられる屈曲部補強部材を備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に関し、特に、天井に情報機器を設ける場合でも、情報機器による乗客への威圧感を抑制でき、更に天井の見栄えの悪化を抑制できる鉄道車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、監視カメラ1を複数設け、監視カメラ1で撮像された車両内の映像を、中継装置6を介して情報制御装置3へ送信し、情報制御装置3に接続された表示器4で車両内の映像を表示することが開示されている。監視カメラ1は、車両内の天井に設けられているので、複数の監視カメラ1によって車両内全体の映像が取得できる。かかる映像を表示器4で監視することで、車両内の不審者や不審物等の早期発見が可能となり防犯に繋げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5436726号公報(例えば、段落0016-0025,図1,4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、監視カメラ1は、車両内の天井に露出して設けられるので、監視カメラ1の存在によって乗客は威圧感を覚え、また天井の見栄えが悪化してしまう虞があるという問題点がある。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、天井に情報機器を設ける場合でも情報機器による乗客への威圧感を抑制でき、更に天井の見栄えの悪化を抑制できる鉄道車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の鉄道車両は、客室の天井側に設けられ、車両長手方向に複数並設される天井パネルを備え、前記客室には、座席が車両長手方向に沿って並設され、少なくとも1の前記天井パネルにおける車両長手方向側の側面には、傾斜した傾斜面が形成され、その傾斜面には、前記客室内の情報を取得する情報機器が向けられる開口部である取得窓が形成され、前記情報機器が前記傾斜面の上面側に設けられる。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の鉄道車両によれば、天井パネルの車両長手方向側の側面には、傾斜した傾斜面が形成され、その傾斜面には、情報機器が向けられる開口部である取得窓が形成され、情報機器が傾斜面における上面側に設けられる。これにより、客室内から情報機器を視認し難くできるので、情報機器を設けることによる乗客への威圧感を抑制でき、更に天井の見栄えの悪化を抑制できるという効果がある。
【0008】
請求項2記載の鉄道車両によれば、請求項1記載の鉄道車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。天井パネルの上面側には、天井パネルを補強する骨組である補強部材が設けられ、情報機器はその補強部材に固定される。従って、補強部材によって天井パネルの剛性を向上できると共に、その補強部材に情報機器が天井パネルに固定されることで、情報機器が直接天井パネルに設けられることがない。これにより、情報機器の重量によって天井パネルが歪むのを抑制できるという効果がある。
【0009】
請求項3記載の鉄道車両によれば、請求項2記載の鉄道車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。補強部材は、天井パネルの上面視における端部に沿って設けられる端部補強部材を備えている。即ち情報機器が天井パネルの端部に設けられる端部補強部材によって支持されるので、情報機器の重量によって天井パネルの中央部が歪むのを抑制できるという効果がある。
【0010】
請求項4記載の鉄道車両によれば、請求項2又は3に記載の鉄道車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。天井パネルは、断面がV字状に屈曲した屈曲部を有するように形成され、補強部材は、その屈曲部に接着して設けられる屈曲部補強部材を備える。屈曲部は、天井パネルをV字状に屈曲して形成されるので、天井パネルにおいて剛性の高い部分とされる。このような屈曲部に対して屈曲部補強部材を接着して設けることで、屈曲部補強部材を接着する際の接着剤の「ヒケ」によって天井パネルが歪むのを抑制できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)は、鉄道車両の側面図であり、(b)は、(a)のIb-Ib断面線における鉄道車両の断面図である。
図2】(a)は、図1(b)の矢印IIa方向における天井パネルの下面図であり、(b)は、(a)の矢印IIb方向における天井パネル及び客室の側面図である。
図3】(a)は、図2(b)の矢印IIIa視における天井パネルの上面図であり、(b)は、(a)におけるIIIb-IIIb断面線における断面図であり、(c)は、(b)の矢印IIIc視における屈曲部補強部材の側面図である。
図4】(a)は、上面側の近傍に監視カメラが設けられる天井パネルの正面図であり、(b)は、上面側の近傍に集音マイクが設けられる天井パネルの正面図であり、(c)は、(a)から保護カバーを取り外した場合の正面図であり、(d)は、(c)から着脱部材を取り外した場合の正面図である。
図5】(a)は、監視カメラが設けられる側の保護カバーの背面図であり、(b)は、集音マイクが設けられる側の保護カバーの背面図である。
図6】(a)は、変形例における車両長手方向の側面を垂直に形成した天井パネルの側面図であり、(b)は、別の変形例における車両長手方向の側面を階段状に形成した天井パネルの側面図であり、(c)は、更に別の変形例における車両長手方向の側面を曲面状に形成した天井パネルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1(a)は、鉄道車両1の側面図であり、図1(b)は、図1(a)のIb-Ib断面線における鉄道車両1の断面図である。図1において、矢印U-Dは鉄道車両1の上下方向を、矢印F-Bは、鉄道車両1の前後方向を、矢印L-Rは鉄道車両1の左右方向を、それぞれ示しており、図2以降も同様とする。
【0013】
図1に示すように、鉄道車両1は、複数の車輪2と、それら複数の車輪2を軸支する台車(図示せず)と、その台車に支持される車体台枠3と、その車体台枠3の車両幅方向(即ち矢印L-R方向)の端部から立設される一対の側構体4と、車体台枠3の車両長さ方向の端部から立設される図示しない一対の妻構体と、一対の側構体4及び一対の妻構体の車両上方の端部(図1の上側の端部)同士を連結する屋根構体5とを備え、内部に客室Roが形成される。
【0014】
客室Roには、車体台枠3の上面に形成される床面10と、その床面10の車両幅方向における両端側に配設される一対の座席20と、その座席20に隣接して配設されると共に床面10の車両幅方向端部から立設される一対の側パネル30と、それら一対の側パネル30それぞれの上端に配設される側天井パネル40と、それら一対の側天井パネル40の対向間に配設される天井パネル50と、その天井パネル50及び一対の側天井パネル40の対向間に配設される照明部材70とが設けられる。
【0015】
側パネル30は、客室Roの車両幅方向両側の壁面を形成するパネルであり、側構体4に連結されると共に、その上端には荷棚31が配設される。荷棚31は、側パネル30から客室Roの内方(車両幅方向中央側)へ突出して形成される。側天井パネル40は、荷棚31の上方を覆うパネルであり、その一端が側構体4に連結されると共に、他端が屋根構体5に連結される。
【0016】
天井パネル50は、一対の側天井パネル40の対向間における天井面を形成するパネルであり、その車両幅方向両側の端部が屋根構体5に連結される。この天井パネル50は、車両幅方向に並設される第1面51及び第2面52を備え、それら第1面51及び第2面52は、車両長手方向(即ち矢印F-B方向)に直交する上方へ円弧状に凹む湾曲形状にそれぞれ形成されると共に、第1面51及び第2面52の接続部分である屈曲部53が下方へ突出される。即ち、第1面51及び第2面52は、それぞれ車両幅方向中央側ほど下方に位置し、屈曲部53を下端とするV字状に形成される。
【0017】
詳細は後述するが、天井パネル50は車両長手方向に複数並設され、天井パネル50がV字状に形成されることで生じる空間には、客室Ro内の映像を撮影する情報機器である監視カメラC(図2参照)と、客室Ro内の音声を集音する情報機器である集音マイクM(図2参照)とが設けられる。天井パネル50の車両幅方向両端には一対の照明部材70が屋根構体5から下方へ向けて配設される。照明部材70から照射される光を第1面51及び第2面52で反射させ、その間接光によって客室Roを明るく照らすことができる。
【0018】
次に図2図5を参照して、天井パネル50を説明する。図2(a)は、図1(b)の矢印IIa視における天井パネル50の下面図であり、図2(b)は、図2(a)の矢印IIb視における天井パネル50及び客室Roの側面図である。なお、理解を容易にするため、図2(a)には、天井パネル50のみが図示され、図2(b)には、天井パネル50、座席20及び座席20に着席している乗客Hのみが図示される。
【0019】
図2に示す通り、鉄道車両1の天井には、複数の天井パネル50が車両長手方向に沿って並設される。本実施形態では、1両の鉄道車両1に対して6枚の天井パネル50が並設される。これら天井パネル50の車両長手方向における両側の側面には、座席20に面するように傾斜した傾斜面54がそれぞれ形成される。
【0020】
具体的に、天井パネル50における前方側(即ち矢印F方向側)の傾斜面54は、屈曲部53の前端から、前方かつ上方(即ち矢印U方向)に向けて傾斜するように形成され、天井パネル50における後方側(即ち矢印B側)の傾斜面54は、屈曲部53の後端から、後方かつ上方に向けて傾斜するように形成される。本実施形態において、屈曲部53と傾斜面54との傾斜角は「120度」に設定される。なお、傾斜面54の傾斜角は120度に限られず、120度以上でも良いし120度以下でも良い。
【0021】
これら傾斜面54のうち、監視カメラCが設けられる傾斜面54には撮影窓55が、集音マイクMが設けられる傾斜面54には集音窓56がそれぞれ形成される。撮影窓55は、監視カメラCが設けられる傾斜面54の下部に形成され、監視カメラCにおいて被写体を撮影するためのレンズ(図示せず)が向けられる開口部である。本実施形態において撮影窓55は、最も前方の天井パネル50における後方側の傾斜面54と、前方から3番目の天井パネル50における後方側の傾斜面54と、前方から4番目の天井パネル50における前方側の傾斜面54と、最も後方の天井パネル50における前方側の傾斜面54とにそれぞれ形成される。詳細は後述するが、監視カメラCは、天井パネル50がV字状に形成されることで生じる空間に設置され、監視カメラCのレンズが撮影窓55に向けられる。これにより、客室Ro内の状況を撮影できる。
【0022】
集音窓56は、集音マイクMが設けられる傾斜面54の下部に形成され、集音マイクMにおいて集音を行う集音部(図示せず)が向けられる開口部である。本実施形態において集音窓56は、前方から3番目の天井パネルにおける前方側の傾斜面54に形成される。詳細は後述するが、集音マイクMは、天井パネル50がV字状に形成されることで生じる空間に設置され、集音マイクMの集音部が集音窓56に向けられる。これにより、客室Ro内の音声を集音できる。
【0023】
即ち、監視カメラC及び集音マイクMが、天井パネル50がV字状に形成されることで生じる空間に設置されることで、客室Ro内からこれらを視認し難くできる。よって、監視カメラを設けることによる乗客への威圧感を抑制でき、更に天井パネル50の見栄えの悪化を抑制できる。
【0024】
また、撮影窓55及び集音窓56が屈曲部53に対して鈍角に傾斜した傾斜面54に設けられることで、撮影窓55及び集音窓56の開口部も、斜め下方、具体的には車両長手方向かつ下方に向けられる。これにより、監視カメラCの撮影範囲および集音マイクMの集音範囲を、車両長手方向側により広く確保できるので、客室Ro内に設置する監視カメラCや集音マイクMの台数を低減できる。
【0025】
更に傾斜面54、撮影窓55及び集音窓56は、天井パネル50における車両長手方向側の側面に形成される。従って、第1面51及び第2面52の形状を損ねることがなく、更に第1面51及び第2面52で反射された間接光を遮ることがない。これにより、かかる間接光を客室Ro内へ好適に行き渡らせることができると共に、監視カメラC及び集音マイクMによって客室Ro内の映像や音声を取得できる。
【0026】
次に、図3図5を参照して、天井パネル50の構造を説明する。図3(a)は、図2(b)の矢印IIIa視における天井パネル50の上面図であり、図3(b)は、図3(a)におけるIIIb-IIIb断面線における断面図であり、図3(c)は、図3(b)の矢印IIIc視における屈曲部補強部材59の側面図である。
【0027】
図3(a)に示す通り、天井パネル50における上面側であって、車両長手方向側の端部には、監視カメラC又は集音マイクMを天井パネル50に固定する部材である固定具57が設けられる。固定具57は、後述の端部補強部材58、屈曲部補強部材59及び内側補強部材60を介して天井パネル50に設けられ、監視カメラC又は集音マイクMの側面を固定具57で固定することで、監視カメラC又は集音マイクMが天井パネル50に固定される。
【0028】
固定具57が設けられる端部補強部材58、屈曲部補強部材59及び内側補強部材60は、天井パネル50の上面に設けられる部材(補強部材)である。端部補強部材58は、天井パネル50の上面における端部の全周に沿って設けられる枠状の部材である。端部補強部材58は、天井パネル50の端部を折り曲げ(図示せず)、その折曲部に対して接着剤(図示せず)によって貼り付けられる。天井パネル50の端部の折曲部は、天井パネル50において剛性の高い部分とされる。このような折曲部に端部補強部材58を接着することで、天井パネル50が接着剤の「ヒケ」によって歪むのを抑制できる。
【0029】
また、車両長手方向側の端部補強部材58は、車両幅方向側の端部補強部材58のそれぞれ端部と接続される外側部材58aと、両側の外側部材58aに対して着脱可能に構成される着脱部材58bとで構成される。
【0030】
屈曲部補強部材59は、天井パネル50の車両幅方向における中央部、即ち上述の屈曲部53に対して平行に沿って設けられる板状の部材である。本実施形態では屈曲部補強部材59は、屈曲部53の屋根構体5(図1参照)側の面に対して、接着剤(図示せず)によって貼り付けられる。
【0031】
図3(b)に示す通り、天井パネル50は、断面視において第1面51と第2面52とがV字状に屈曲した形状であり、そのV字状の屈曲部(谷の部分)が屈曲部53に該当する。屈曲部53は天井パネル50を屈曲して形成されるので、剛性が高い部分とされるので、かかる屈曲部53に対して屈曲部補強部材59を接着することで、天井パネル50が接着剤の「ヒケ」によって歪むのを抑制できる。
【0032】
また図3(c)に示す通り、屈曲部補強部材59の側面側には、開口部である側面開口部59aが複数形成される。これにより、屈曲部補強部材59の重量を低減できるので、屈曲部補強部材59及び天井パネル50の重量を低減できる。
【0033】
内側補強部材60は、天井パネル50の車両長手方向側の端部補強部材58よりも、車両長手方向における内側に設けられる板状の部材である。図3(a)に示す通り、内側補強部材60の車両幅方向側の端部は、端部補強部材58にそれぞれ接続される。また、屈曲部補強部材59の車両長手方向側の端部は、内側補強部材60にそれぞれ接続される。これによって、端部補強部材58、屈曲部補強部材59及び内側補強部材60が、相互に接続される。
【0034】
固定具57は、車両長手方向側における端部補強部材58と内側補強部材60との間に設けられる。具体的には、固定具57の車両長手方向における外側(天井パネル50の端側)が、端部補強部材58の外側部材58aに接続され、固定具57の車両長手方向における内側(天井パネル50の中心側)が、内側補強部材60に接続される。
【0035】
これにより、固定具57は、端部補強部材58、屈曲部補強部材59及び内側補強部材60に接続されるので、固定具57及び固定具57に設けられた監視カメラC及び集音マイクMを、しっかりと天井パネル50へ固定できる。この際、監視カメラC及び集音マイクMは、天井パネル50には直接設けられないので、天井パネル50、特に第1面51や第2面52が監視カメラC及び集音マイクMの重量によって歪むのを抑制できる。
【0036】
なお、図3では、天井パネル50の車両長手方向における両端に、固定具57を設ける例を示したが、天井パネル50のいずれか一方の車両長手方向の端部に、監視カメラC又は集音マイクMを設けない場合は、該当する端部における固定具57及び内側補強部材60を省略しても良い。その場合は、該当する端部における端部補強部材58に屈曲部補強部材59を接続しても良い。また、天井パネル50に監視カメラC又は集音マイクMのいずれも設けない場合も、天井パネル50の車両長手方向の両端の固定具57及び内側補強部材60を省略し、車両長手方向の両端の端部補強部材58に屈曲部補強部材59をそれぞれ接続しても良い。
【0037】
次に図4を参照して、監視カメラC又は集音マイクMが設置される傾斜面54を説明する。図4(a)は、上面側の近傍に監視カメラCが設けられる天井パネル50の正面図であり、図4(b)は、上面側の近傍に集音マイクMが設けられる天井パネル50の正面図である。図4(a),(b)に示す通り、傾斜面54の正面視における中央は、着脱可能な保護カバー54bとして略五角形状に分割される。また、保護カバー54bを取り外した場合に傾斜面54に形成される開口部が、開口部54aとされる。
【0038】
図4(a)に示す通り、監視カメラCが設けられる側の保護カバー54bに、上記した撮影窓55が形成される。その撮影窓55には、撮影窓55及び監視カメラCを保護する半透明のフィルム(例えばポリカーボネート製)である撮影窓カバー54b1が設けられる。監視カメラCのレンズを撮影窓55及び撮影窓カバー54b1に向けることで、客室Ro内の映像を撮影できる。この際、撮影窓カバー54b1によって、空調や乗客の移動で舞い上がる埃等から監視カメラCのレンズを保護できると共に、乗客が監視カメラCを視認し難くできる。
【0039】
図4(b)に示す通り、集音マイクMの集音部が設けられる側の保護カバー54bに、上記した集音マイクMの集音部が向けられる開口部である集音窓56が形成される。具体的には、集音窓56はスリット状に開口され、上下方向(矢印U-D方向)に所定の間隔(例えば1mm)を開けて複数形成される。集音マイクMの集音部を、集音窓56に向けることで客室Ro内の音声を集音できる。また、本実施形態では集音窓56を複数形成しているが、いずれもスリット状であるため、乗客が天井パネル50を見上げても、集音マイクMを視認し難くできる。
【0040】
保護カバー54bは、傾斜面54に対して着脱可能に設けられるので、保護カバー54b自体や、保護カバー54bに設けられる撮影窓55及び撮影窓カバー54b1や集音窓56が破損や汚染等した場合でも、容易に保護カバー54bを交換できる。
【0041】
保護カバー54bは、傾斜面54に設けられたストッパー61と後述する磁石受54b2及び引掛部材54b4とによって、傾斜面54に固定される。ストッパー61は、傾斜面54の上部と、端部補強部材58の外側部材58aとに跨って設けられるスライド式のロック用の部材である。ストッパー61は、傾斜面54の上部および外側部材58aに対して、保護カバー54bを傾斜面54に設けた場合の、保護カバー54bの上端における左端および右端付近にそれぞれ設けられる。
【0042】
保護カバー54bを傾斜面54に嵌め込んだ上で、左右のストッパー61をスライドさせ、傾斜面54と保護カバー54bとをそれぞれ係止させる位置(即ち図4(a),(b)におけるストッパー61の位置)に移動させることで、保護カバー54bの上部が傾斜面54に固定される。一方で、ストッパー61による傾斜面54と保護カバー54bとが係止された状態で、ストッパー61を係止する方向とは反対方向にスライドさせることで、保護カバー54bの上部と傾斜面54との固定が解除される。このように、ストッパー61をスライドさせるだけで、保護カバー54bの上部と傾斜面54とを容易に固定し、又、固定の解除をすることができる。
【0043】
次に、傾斜面54から保護カバー54bを取り外した場合を図4(c),(d)を参照して説明する。図4(c)は、図4(a)から保護カバー54bを取り外した場合の正面図であり、図4(d)は、図4(c)から着脱部材58bを取り外した場合の正面図である。なお、図4(c),(d)においては、監視カメラCが設けられた側の傾斜面54を図示するが、集音マイクMが設けられた側の傾斜面54でも略同一なので、図示および説明を省略する。
【0044】
図4(c)に示す通り、保護カバー54bを取り外すことで、天井パネル50の下方から天井パネル50の上面側にアクセスできる。これによって、天井パネル50を屋根構体5(図1(b)参照)から取り外すことなく、監視カメラC又は集音マイクMの点検や角度調節等をすることができる。
【0045】
また保護カバー54bを取り外すことで、天井パネル50の下方から着脱部材58bにアクセスできる。ここで、着脱部材58bは、隣り合う外側部材58aに対して着脱可能に構成されるので、図4(d)に示すように、保護カバー54bを取り外した状態で、更に着脱部材58bを取り外すことができる。着脱部材58bを取り外すことで、開口部54aの上部が開放され、開口部54aから天井パネル50の上面側にかけて形成される空間が増大する。これにより、開口部54aへ作業員の手等を挿入しやすくなるので、監視カメラCや集音マイクMの点検や交換等の作業性を向上させることができる。
【0046】
傾斜面54の開口部54aにおける左端付近および右端付近には、磁石によって形成される磁性部材54cがそれぞれ設けられる。図5で後述するが、保護カバー54bには、磁性を有する磁石受54b2が設けられ、磁性部材54cと磁石受54b2とを磁力によって固定することで、傾斜面54に保護カバー54bを固定できる。
【0047】
次に図5を参照して、保護カバー54bの構造を説明する。図5(a)は、監視カメラCが設けられる側の保護カバー54bの背面図であり、図5(b)は、集音マイクMが設けられる側の保護カバー54bの背面図である。
【0048】
図5に示す通り、保護カバー54bの背面、即ち保護カバー54bを傾斜面54に取り付けた場合に、上方に面する面の左端付近および右端付近には、磁性を有する素材(例えば鉄)で形成される磁石受54b2が設けられる。具体的に磁石受54b2は、保護カバー54bにおける、保護カバー54bを傾斜面54に取り付けた場合の、磁性部材54cと対応する位置に設けられる。保護カバー54bを傾斜面54の開口部54aに配置した場合、磁性部材54cと磁石受54b2とが磁力によって固定され、これによって、傾斜面54に保護カバー54bを固定できる。
【0049】
また図5(a)に示す通り、監視カメラCが設けられる側の保護カバー54bにおける、撮影窓55及び撮影窓カバー54b1の左右には、それぞれ撮影窓カバー54b1を支持するカバー支持部材54b3が設けられる。カバー支持部材54b3によって撮影窓カバー54b1が支持されることで、保護カバー54bの着脱の際などに撮影窓カバー54b1が保護カバー54bから脱落したり、撮影窓カバー54b1が撮影窓55からずれるのを抑制できる。
【0050】
また、保護カバー54bにおける撮影窓55側または集音窓56側の端部には、開口部54aの端部に係止する爪状の引掛部材54b4が複数設けられる。開口部54aの端部に、保護カバー54bの引掛部材54b4を係止することで、保護カバー54bにおける撮影窓55側または集音窓56側を、傾斜面54に固定できる。
【0051】
即ち保護カバー54bを傾斜面54に固定する部材として、ストッパー61と、磁性部材54cと、引掛部材54b4とが設けられる。保護カバー54bを傾斜面54に取り付ける場合は、引掛部材54b4を傾斜面54の開口部54aの端部に係止し、更に磁性部材54cを磁石受54b2に接近させて磁力によって固定することで、保護カバー54bが傾斜面54に「仮止め」され、作業員の手が保護カバー54bから離れても、保護カバー54bが傾斜面54から脱落することがない。かかる仮止め後に、保護カバー54bの支持から解放された作業員がストッパー61をスライドさせることで、保護カバー54bを傾斜面54に完全に固定できる。
【0052】
一方で保護カバー54bを傾斜面54から取り外す場合は、ストッパー61を解放側へスライドさせても、引掛部材54b4と磁性部材54c及び磁石受54b2とによって、保護カバー54bが傾斜面54に仮止めされた状態を維持できる。これにより、作業員はストッパー61を解放させた後に、保護カバー54bを支持しながら傾斜面54から取り外せば良いので、保護カバー54bの傾斜面54からの取り外しも容易にできる。
【0053】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0054】
上記実施形態において、天井パネル50の車両長手方向の側面に傾斜面54を形成し、傾斜面54における上面側に監視カメラCや集音マイクMを設置した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、図6(a)の天井パネル100のように、天井パネル100の車両長手方向の側面を垂直に形成し、その垂直な車両長手方向の側面の上面側に監視カメラCや集音マイクMを設置しても良い。その場合は、天井パネル100に隣接する天井パネル101の下端の位置を天井パネル100よりも高くすることで、天井パネル101の車両長手方向の側面に設置された監視カメラCの撮影範囲や集音マイクMの集音範囲を広く確保できる。
【0055】
また、図6(b)の天井パネル150のように、天井パネル150の車両長手方向の側面を階段状に形成して、監視カメラCや集音マイクMを設置しても良いし、図6(c)の天井パネル200のように、天井パネル200の車両長手方向の側面を曲面状に形成して、監視カメラCや集音マイクMを設置しても良い。
【0056】
上記実施形態では、傾斜面54を天井パネル50の車両長手方向の側面の両側に形成した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、天井パネル50のいずれか一方の車両長手方向の側面のみ傾斜面54を形成しても良いし、天井パネル50の車両長手方向の側面への傾斜面54の形成自体を省略しても良い。
【0057】
上記実施形態では、1つの傾斜面54に対して、1台の監視カメラC又は集音マイクMを設けた。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、1つの傾斜面54に対して2台以上の監視カメラC又は集音マイクMを設けても良い。また1つの傾斜面54に対して、監視カメラCと集音マイクMとを共に設けても良い。
【0058】
上記実施形態では、天井パネル50の屈曲部53を車両長手方向に形成した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、屈曲部53を車両幅方向に形成しても良いし、その他任意の方向に形成しても良い。
【0059】
上記実施形態では、監視カメラCが設けられる側の保護カバー54bに撮影窓55を保護する半透明のフィルムの保護カバー54bを設けた。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、保護カバー54bを透明な素材で形成しても良いし、保護カバー54b自体を省略しても良い。
【0060】
上記実施形態では、1両の鉄道車両1に対して天井パネル50を6枚設けた。しかし、天井パネル50の数は6枚に限られるものではなく、鉄道車両1の全長あるいは、天井パネル50の車両長手方向側の長さ等に応じて、6枚以下でも良いし、6枚以上でも良い。
【0061】
上記実施形態では、天井パネル50の上面側に監視カメラC又は集音マイクMを設置した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、温度や騒音を検出するセンサ等の他の情報機器や、スピーカや無線LANルータ等の他の装置や機器を設置しても良い。
【0062】
上記実施形態では、天井パネル50、監視カメラC及び集音マイクMを設置する輸送機器として、鉄道車両1を例示した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、天井パネル50、監視カメラC及び集音マイクMを、観光バス等の自動車に設置しても良いし、フェリー等の船舶に設置して良いし、他の輸送機器に設置しても良い。
【符号の説明】
【0063】
1 鉄道車両
20 座席
50,100,150,200 天井パネル
53 屈曲部
54 傾斜面
55 撮影窓(取得窓)
56 集音窓(取得窓)
58 端部補強部材(補強部材の一部、端部補強部材)
59 屈曲部補強部材(補強部材の一部、屈曲部補強部材)
C 監視カメラ(情報機器)
M 集音マイク(情報機器)
Ro 客室
図1
図2
図3
図4
図5
図6