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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065961
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/43 20060101AFI20230508BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20230508BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
E02F3/43 C
E02F9/20 M
E02F9/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176401
(22)【出願日】2021-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】宮嵜 龍之介
(72)【発明者】
【氏名】秋山 将貴
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB04
2D003AC06
2D003BA01
2D003BB04
2D003CA02
2D003CA10
2D003DA04
2D003DB04
2D003DB05
2D003FA02
2D015HA03
2D015HB04
2D015HB05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】作業者に不安感を与えることを抑制することが可能な作業機械を提供する。
【解決手段】バケット33の先端の目標経路71上の複数の目標点73、および、目標点73間でのバケット33の先端の目標点間時間、を含む目標軌道設定手段と、目標軌道に従ってバケット33の先端が移動する所定動作を行うように制御する制御手段と、所定動作による作業が所定段階に達した際に、次の所定動作のB点およびC点の少なくとも一方を移動させる移動手段と、目標軌道を補正する補正手段と、を有する。B点およびC点の少なくとも一方が移動される前の、B点からC点までをアタッチメント30が移動する移動量を旧移動量とし、B点およびC点の少なくとも一方が移動手段により移動された後の、B点からC点までをアタッチメント30が移動する移動量を新移動量としたとき、補正手段は、旧移動量に対する新移動量の変化量に基づいて、目標点間時間を補正する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体の上部に旋回可能に取り付けられた上部旋回体と、
前記上部旋回体に回動可能に取り付けられたアタッチメントと、
前記アタッチメントの特定部位の目標経路上の複数の目標点、および、前記目標点間での前記特定部位の目標移動時間である目標点間時間、を含む情報である目標軌道を設定する目標軌道設定手段と、
前記目標軌道に従って前記特定部位が移動する所定動作を行うように、前記上部旋回体および前記アタッチメントを制御する制御手段と、
前記所定動作による作業が所定段階に達した際に、次の前記所定動作の前記開始点および前記終了点の少なくとも一方を移動させる移動手段と、
前記目標軌道を補正する補正手段と、
を有し、
前記開始点および前記終了点の少なくとも一方が前記移動手段により移動される前の、前記開始点から前記終了点までを前記アタッチメントが移動する移動量を、旧移動量とし、
前記開始点および前記終了点の少なくとも一方が前記移動手段により移動された後の、前記開始点から前記終了点までを前記アタッチメントが移動する移動量を、新移動量としたとき、
前記補正手段は、前記旧移動量に対する前記新移動量の変化量に基づいて、前記目標点間時間を補正することを特徴とする作業機械。
【請求項2】
前記旧移動量と前記新移動量との比率を算出する算出手段を有し、
前記補正手段は、前記比率に基づいて前記目標点間時間を補正することを特徴とする請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記アタッチメントの作業範囲を設定する範囲設定手段を有し、
前記移動手段は、前記作業範囲内において前記開始点および前記終了点の少なくとも一方を移動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記アタッチメントの目標上限速度を設定する上限速度設定手段を有し、
前記補正手段は、前記アタッチメントが前記目標上限速度以下で動作するように、前記目標点間時間を補正することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項5】
前記所定動作を含む一連の動作を繰り返させる繰り返し手段を有し、
前記一連の動作は、前記アタッチメントで土砂を掘削する掘削動作を含み、
前記繰り返し手段は、前記掘削動作時における前記アタッチメントの先端の高さを変えながら、前記一連の動作を繰り返させ、
土砂を掘削する深さの制限深さを設定する制限深さ設定手段を有し、
前記移動手段は、掘削時の深さが前記制限深さに達した際に、次の前記一連の動作における前記掘削動作の開始点を移動させることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項6】
前記所定動作を含む一連の動作を繰り返させる繰り返し手段を有し、
前記一連の動作は、前記アタッチメントで対象物を拾い上げる拾い上げ動作を含み、
前記繰り返し手段は、前記拾い上げ動作時における前記アタッチメントの先端の高さを変えながら、前記一連の動作を繰り返させ、
前記対象物を拾い上げる高さの制限高さを設定する制限高さ設定手段を有し、
前記移動手段は、拾い上げ時の高さが前記制限高さに達した際に、次の前記一連の動作における前記拾い上げ動作の開始点を移動させることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項7】
前記所定動作を含む一連の動作を繰り返させる繰り返し手段を有し、
前記一連の動作を繰り返す回数を所定回数として設定する回数設定手段を有し、
前記移動手段は、前記一連の動作が前記所定回数繰り返された際に、次の前記一連の動作における前記開始点および前記終了点の少なくとも一方を移動させることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転される作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、土砂の掘削から排土までを自動で行う自動運転ショベルが開示されている。特許文献1では、ある掘削位置において掘削深さが設定値に達した場合に、上部旋回体の旋回方向に次の掘削位置を移動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-123479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、掘削位置を移動させた場合に、掘削位置から排土位置までの上部旋回体およびアタッチメントの動きが急峻になる場合がある。上部旋回体およびアタッチメントの動きが急峻になると、自動運転ショベルの周りにいる作業者に不安感を与える。
【0005】
本発明の目的は、作業者に不安感を与えることを抑制することが可能な作業機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下部走行体と、前記下部走行体の上部に旋回可能に取り付けられた上部旋回体と、前記上部旋回体に回動可能に取り付けられたアタッチメントと、前記アタッチメントの特定部位の目標経路上の複数の目標点、および、前記目標点間での前記特定部位の目標移動時間である目標点間時間、を含む情報である目標軌道を設定する目標軌道設定手段と、前記目標軌道に従って前記特定部位が移動する所定動作を行うように、前記上部旋回体および前記アタッチメントを制御する制御手段と、前記所定動作による作業が所定段階に達した際に、次の前記所定動作の前記開始点および前記終了点の少なくとも一方を移動させる移動手段と、前記目標軌道を補正する補正手段と、を有し、前記開始点および前記終了点の少なくとも一方が前記移動手段により移動される前の、前記開始点から前記終了点までを前記アタッチメントが移動する移動量を、旧移動量とし、前記開始点および前記終了点の少なくとも一方が前記移動手段により移動された後の、前記開始点から前記終了点までを前記アタッチメントが移動する移動量を、新移動量としたとき、前記補正手段は、前記旧移動量に対する前記新移動量の変化量に基づいて、前記目標点間時間を補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、アタッチメントの旧移動量に対する新移動量の変化量に基づいて、目標点間時間が補正される。例えば、旧移動量と新移動量との比率に基づいて、目標点間時間が補正される。このように、目標点間時間を補正した場合には、開始点および終了点の少なくとも一方が移動される前と同等の速度感で、上部旋回体およびアタッチメントを動作させることができる。これにより、上部旋回体およびアタッチメントの動きが急峻になるのを抑制することができる。よって、作業機械の周りにいる作業者に不安感を与えることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】作業機械の側面図である。
図2】作業機械の回路図である。
図3】作業機械の上面図であり、一連の動作におけるバケットの先端の目標経路を示す図である。
図4】B点が移動される前の、持ち上げ旋回動作の目標経路および目標点を示す図である。
図5】B点が移動された後の、持ち上げ旋回動作の目標経路および目標点の一例を示す図である。
図6】B点が移動された後の、持ち上げ旋回動作の目標経路および目標点の他の例を示す図である。
図7】動作制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
(作業機械の構成)
本発明の実施形態による作業機械は、自動運転される。作業機械1の側面図である図1に示すように、作業機械1は、アタッチメント30で作業を行う機械であり、例えば油圧ショベルである。作業機械1は、下部走行体21と上部旋回体22とを備えた機械本体25と、アタッチメント30と、シリンダ40と、を有している。
【0011】
下部走行体21は、作業機械1を走行させる部分であり、例えばクローラを備える。上部旋回体22は、下部走行体21の上部に旋回装置24を介して旋回可能に取り付けられる。上部旋回体22の前部には、キャブ(運転室)23が設けられている。
【0012】
アタッチメント30は、上下方向に回動可能に上部旋回体22に取り付けられる。アタッチメント30は、ブーム31と、アーム32と、バケット33と、を備える。ブーム31は、上下方向に回動可能(起伏可能)に上部旋回体22に取り付けられる。アーム32は、上下方向に回動可能にブーム31に取り付けられる。バケット33は、アタッチメント30の先端部である先端アタッチメントであり、前後方向に回動可能にアーム32に取り付けられる。バケット33は、土砂の、掘削、均し、すくい、などの作業を行う部分である。なお、バケット33が保持する作業対象物は、土砂に限定されず、石でもよく、廃棄物(産業廃棄物など)でもよい。また、先端アタッチメントは、バケット33に限られず、グラップルやリフティングマグネット等であってもよい。
【0013】
シリンダ40は、アタッチメント30を油圧で回動させることが可能である。シリンダ40は、油圧式の伸縮シリンダである。シリンダ40は、ブームシリンダ41と、アームシリンダ42と、バケットシリンダ43と、を備える。
【0014】
ブームシリンダ41は、上部旋回体22に対してブーム31を回動させる。ブームシリンダ41の基端部は、上部旋回体22に回動可能に取り付けられる。ブームシリンダ41の先端部は、ブーム31に回動可能に取り付けられる。
【0015】
アームシリンダ42は、ブーム31に対してアーム32を回動させる。アームシリンダ42の基端部は、ブーム31に回動可能に取り付けられる。アームシリンダ42の先端部は、アーム32に回動可能に取り付けられる。
【0016】
バケットシリンダ43は、アーム32に対してバケット33を回動させる。バケットシリンダ43の基端部は、アーム32に回動可能に取り付けられる。バケットシリンダ43の先端部は、バケット33に回動可能に取り付けられたリンク部材34に、回動可能に取り付けられる。
【0017】
また、作業機械1は、角度センサ52と、傾斜角センサ60と、を有している。
【0018】
角度センサ52は、下部走行体21に対する上部旋回体22の旋回角度を検出する。角度センサ52は、例えば、エンコーダ、レゾルバ、又は、ジャイロセンサである。本実施形態では、上部旋回体22の前方が下部走行体21の前方と一致するときの上部旋回体22の旋回角度を0°としている。
【0019】
傾斜角センサ60は、ブーム傾斜角センサ61と、アーム傾斜角センサ62と、バケット傾斜角センサ63と、を備える。
【0020】
ブーム傾斜角センサ61は、ブーム31に取り付けられ、ブーム31の姿勢を検出する。ブーム傾斜角センサ61は、水平線に対するブーム31の傾斜角度を取得するセンサであり、例えば傾斜(加速度)センサ等である。なお、ブーム傾斜角センサ61は、ブームフットピン(ブーム基端)の回転角度を検出する回転角度センサや、ブームシリンダ41のストローク量を検出するストロークセンサであってもよい。
【0021】
アーム傾斜角センサ62は、アーム32に取り付けられ、アーム32の姿勢を検出する。アーム傾斜角センサ62は、水平線に対するアーム32の傾斜角度を取得するセンサであり、例えば傾斜(加速度)センサ等である。なお、アーム傾斜角センサ62は、アーム連結ピン(アーム基端)の回転角度を検出する回転角度センサや、アームシリンダ42のストローク量を検出するストロークセンサであってもよい。
【0022】
バケット傾斜角センサ63は、リンク部材34に取り付けられ、バケット33の姿勢を検出する。バケット傾斜角センサ63は、水平線に対するバケット33の傾斜角度を取得するセンサであり、例えば傾斜(加速度)センサ等である。なお、バケット傾斜角センサ63は、バケット連結ピン(バケット基端)の回転角度を検出する回転角度センサや、バケットシリンダ43のストローク量を検出するストロークセンサであってもよい。
【0023】
以下、バケット33で土砂を掘削する場合について説明する。
【0024】
(作業機械の回路構成)
作業機械1の回路図である図2に示すように、作業機械1は、コントローラ11と、記憶装置13と、を有している。
【0025】
コントローラ11には、角度センサ52が検出した、下部走行体21に対する上部旋回体22の旋回角度(姿勢)に関する情報が入力される。また、コントローラ11には、ブーム傾斜角センサ61が検出した、ブーム31の姿勢に関する情報が入力される。また、コントローラ11には、アーム傾斜角センサ62が検出した、アーム32の姿勢に関する情報が入力される。また、コントローラ11には、バケット傾斜角センサ63が検出した、バケット33の姿勢に関する情報が入力される。
【0026】
コントローラ(目標軌道設定手段)11は、目標軌道を設定する。目標軌道は、バケット33の先端(アタッチメント30の特定部位)の目標経路上の複数の目標点、および、目標点間でのバケット33の先端の目標移動時間である目標点間時間、を含む情報である。
【0027】
コントローラ11は、作業機械1を自動制御する。コントローラ11は、一連の動作を上部旋回体22およびアタッチメント30が行うように、上部旋回体22およびアタッチメント30を制御する。つまり、作業機械1は自動運転される。具体的には、コントローラ11は、角度センサ52および傾斜角センサ60の検出値に基づいて、旋回装置24およびアタッチメント30を自動で動作させる。本実施の形態において、一連の動作は、土砂を掘削して排土する動作である。一連の動作には、バケット33で土砂を掘削する掘削動作が含まれる。
【0028】
また、コントローラ(制御手段)11は、目標軌道に従ってバケット33の先端が移動する所定動作を行うように、上部旋回体22およびアタッチメント30を制御する。所定動作は、一連の動作に含まれる。本実施形態において、所定動作は、掘削動作、持ち上げ旋回動作、排土動作、および、復帰旋回動作である。持ち上げ旋回動作、排土動作、および、復帰旋回動作については後述する。
【0029】
ここで、一連の動作におけるバケット33の先端の目標経路71を図3に示す。図3は、作業機械1の上面図である。バケット33の先端は、A点からB点まで掘削を行う(掘削動作)。次に、バケット33の先端は、B点からC点まで旋回する(持ち上げ旋回動作)。このとき、バケット33内には土砂が保持されている。その後、バケット33の先端は、C点からD点まで移動する。この間に、バケット33が解放されることで、ダンプカーの荷台などに土砂が排土される(排土動作)。そして、バケット33の先端は、D点から旋回してA点に戻る(復帰旋回動作)。つまり、一連の動作には、掘削動作、持ち上げ旋回動作、排土動作、および、復帰旋回動作が含まれる。なお、バケット33の先端をアタッチメント30の特定部位として、バケット33の先端の目標経路71を図示したが、アタッチメント30の特定部位はバケット33の先端に限定されない。
【0030】
図3に示すように、B点からC点までの持ち上げ旋回動作において、開始点(B点)から終了点(C点)までのバケット33の先端の目標経路71上に、複数の目標点73が設定される。同様に、A点からB点までの掘削動作において、開始点(A点)から終了点(B点)までのバケット33の先端の目標経路71上に、複数の目標点73が設定される。同様に、C点からD点までの排土動作において、開始点(C点)から終了点(D点)までのバケット33の先端の目標経路71上に、複数の目標点73が設定される。同様に、D点からA点までの復帰旋回動作において、開始点(D点)から終了点(A点)までのバケット33の先端の目標経路71上に、複数の目標点73が設定される。
【0031】
B点からC点までの持ち上げ旋回動作において、バケット33の先端は、B点から最初の目標点73まで、目標点73から次の目標点73まで、および、目標点73からC点までを、それぞれ目標点間時間で移動する。A点からB点までの掘削動作、C点からD点までの排土動作、および、D点からA点までの復帰旋回動作においても同様である。
【0032】
図2に戻って、コントローラ(繰り返し手段)11は、一連の動作を繰り返させる。コントローラ11は、掘削動作時におけるバケット33の先端の高さを変えながら、一連の動作を繰り返させる。これにより、同じ掘削個所において、土砂を掘削する深さを変えながら、土砂の掘削から排土までの一連の動作が繰り返されることになる。
【0033】
記憶装置13は、上記の一連の動作を記憶する。一連の動作は、例えば、作業者によるティーチングにより設定される。一連の動作により、アタッチメント30の先端(バケット33の先端)は目標経路71に沿って移動する。
【0034】
コントローラ(制限深さ設定手段)11は、土砂を掘削する深さの制限深さを設定する。上述したように、土砂を掘削する深さを変えながら、土砂の掘削から排土までの一連の動作が繰り返される。
【0035】
コントローラ11は、掘削時の深さが制限深さに達した際に、一連の動作の繰り返しによる作業が所定段階に達したと判定する。コントローラ11は、一連の動作の繰り返しによる作業が所定段階に達したと判定した場合に、同じ掘削個所での一連の動作の繰り返しを終了する。
【0036】
なお、コントローラ(回数設定手段)11は、一連の動作を繰り返す回数を所定回数として設定しておき、一連の動作を所定回数繰り返した際に、一連の動作の繰り返しによる作業が所定段階に達したと判定してもよい。
【0037】
コントローラ(移動手段)11は、一連の動作の繰り返しによる作業が所定段階に達したと判定した際に、次の一連の動作における掘削動作の開始点(A点)を移動させる。具体的には、図3において、上部旋回体22を旋回させることで、A点を移動させる。上部旋回体22の旋回により、A点とともにB点も移動することになる。A点を移動させることで、新たな掘削個所で一連の動作が繰り返されることになる。
【0038】
ここで、上部旋回体22の旋回によって開始点(B点)が移動される、持ち上げ旋回動作に着目する。開始点(B点)が移動される前の、持ち上げ旋回動作の目標経路71および目標点73を図4に示す。本実施形態では、バケット33の先端は、B点から最初の目標点73まで、目標点73から次の目標点73まで、および、目標点73からC点までを、それぞれ1秒で移動する。
【0039】
開始点(B点)が移動された後の、持ち上げ旋回動作の目標経路71および目標点75の一例を図5に示す。図5に示す例では、図4に示す状態から、B点がC点から遠ざかる方向に、上部旋回体22が30°旋回されている。コントローラ11は、移動後のB点からC点までの間において、バケット33の先端の目標経路71上に、バケット33の先端が目標点間時間で移動する間隔ごとに目標点75を設定し直す。設定し直された目標点75を黒丸で図示し、先に設定されていた目標点73を白丸で図示する。設定し直された目標点75間の距離は、先に設定されていた目標点73間の距離よりも長い。
【0040】
B点が移動される前と同様に、バケット33の先端が、B点から最初の目標点75まで、目標点75から次の目標点75まで、および、目標点75からC点までを、それぞれ1秒で移動するとした場合、目標点73間の距離よりも長い距離である目標点75間をバケット33の先端が移動する速度は速くなる。この場合、上部旋回体22およびアタッチメント30の動きが急峻になる可能性があり、作業機械1の周りにいる作業者に不安感を与える可能性がある。
【0041】
そこで、コントローラ(補正手段)11は、目標軌道を補正する。具体的には、B点が移動される前のB点からC点までをアタッチメント30が移動する移動量を旧移動量とし、B点が移動された後のB点からC点までをアタッチメント30が移動する移動量を新移動量としたとき、コントローラ11は、旧移動量に対する新移動量の変化量に基づいて、目標点間時間を補正する。
【0042】
より具体的には、コントローラ(算出手段)11は、旧移動量と新移動量との比率を算出する。本実施形態では、コントローラ11は、B点が移動される前のB点とC点との間の角度と、B点が移動された後のB点とC点との間の角度との比率を算出する。B点が移動される前のB点における上部旋回体の旋回角度を0°、B点が移動される前のC点における上部旋回体の旋回角度を-80°、B点が移動された後のB点における上部旋回体の旋回角度を30°とすると、比率は、(80+30)/80=1.375となる。
【0043】
コントローラ(補正手段)11は、算出した比率に基づいて目標点間時間を補正する。B点が移動される前において、目標点間時間は1秒であったので、B点が移動された後の目標点間時間は1.375秒となる。
【0044】
設定し直された目標点75間を、1.375秒でバケット33の先端を移動させることで、B点が移動される前と同等の速度感で、上部旋回体22およびアタッチメント30を動作させることができる。これにより、上部旋回体22およびアタッチメント30の動きが急峻になるのを抑制することができる。よって、作業機械1の周りにいる作業者に不安感を与えることを抑制することができる。
【0045】
開始点(B点)が移動された後の、持ち上げ旋回動作の目標経路71および目標点75の他の例を図6に示す。図6に示す例では、図4に示す状態から、B点がC点に近づく方向に、上部旋回体22が30°旋回されている。コントローラ11は、移動後のB点からC点までの間において、バケット33の先端の目標経路71上に、バケット33の先端が目標点間時間で移動する間隔ごとに目標点75を設定し直す。設定し直された目標点75を黒丸で図示し、先に設定されていた目標点73を白丸で図示する。設定し直された目標点75間の距離は、先に設定されていた目標点73間の距離よりも短い。
【0046】
B点が移動される前と同様に、バケット33の先端が、B点から最初の目標点75まで、目標点75から次の目標点75まで、および、目標点75からC点までを、それぞれ1秒で移動するとした場合、目標点73間の距離よりも短い距離である目標点75間をバケット33の先端が移動する速度は遅くなる。この場合、上部旋回体22およびアタッチメント30の動きが急峻になることはないので、作業機械1の周りにいる作業者に不安感を与える可能性は少ない。しかし、バケット33の先端が移動する速度が遅くなると、作業効率が低下する。
【0047】
そこで、コントローラ(補正手段)11は、旧移動量に対する新移動量の変化量に基づいて、目標点間時間を補正する。具体的には、コントローラ(算出手段)11は、旧移動量と新移動量との比率を算出する。本実施形態では、コントローラ11は、B点が移動される前のB点とC点との間の角度と、B点が移動された後のB点とC点との間の角度との比率を算出する。B点が移動される前のB点における上部旋回体の旋回角度を0°、B点が移動される前のC点における上部旋回体の旋回角度を-80°、B点が移動された後のB点における上部旋回体の旋回角度を-30°とすると、比率は、(80-30)/80=0.625となる。
【0048】
コントローラ(補正手段)11は、算出した比率に基づいて目標点間時間を補正する。B点が移動される前において、目標点間時間は1秒であったので、B点が移動された後の目標点間時間は0.625秒となる。
【0049】
設定し直された目標点75間を、0.625秒でバケット33の先端を移動させることで、B点が変更される前と同等の速度感で、上部旋回体22およびアタッチメント30を動作させることができる。
【0050】
以上、所定動作が持ち上げ旋回動作である場合について説明したが、所定動作が、掘削動作、排土動作、および、復帰旋回動作のいずれかである場合についても同様である。
【0051】
図2に戻って、コントローラ(範囲設定手段)11は、アタッチメント30の作業範囲を設定する。作業範囲80を図4図5図6に示す。図5図6に示すように、コントローラ(移動手段)11は、作業範囲80内においてB点を移動させる。これにより、移動後の一連の動作において、アタッチメント30が作業範囲80内から逸脱しないようにすることができる。よって、作業範囲80外に障害物などがある場合に、移動後の一連の動作においても、アタッチメント30がこれに干渉しないようにすることができる。
【0052】
また、図2に示すコントローラ(上限速度設定手段)11は、アタッチメント30の目標上限速度を設定する。コントローラ(補正手段)11は、アタッチメント30が目標上限速度以下で動作するように、目標点間時間を補正する。補正後の目標点間時間が短くなりすぎて、2つの目標点75間をバケット33の先端が移動する速度が速くなりすぎると、作業機械1の周りにいる作業者に不安感を与える。そこで、アタッチメント30が目標上限速度以下で動作するように、目標点間時間を補正することで、作業機械1の周りにいる作業者に不安感を与えることを好適に抑制することができる。
【0053】
(変形例)
ここで、上記では、持ち上げ旋回動作の開始点(B点)が移動される場合について説明したが、持ち上げ旋回動作の終了点(C点)が移動されてもよい。また、持ち上げ旋回動作の開始点(B点)と終了点(C点)とがそれぞれ移動されてもよい。C点は、排土動作の開始点でもあり、C点を移動させることで、新たな排土個所で一連の動作が繰り返されることになる。
【0054】
また、上記では、上部旋回体22を旋回させることで、A点およびB点を移動させていたが、A~D点を移動させる方法は、上部旋回体22の旋回に限定されず、アタッチメント30の姿勢を変えたり、下部走行体21を走行させたりすることで、A~D点を移動させてもよい。
【0055】
また、上記では、旧移動量と新移動量との比率を用いて、目標点間時間を補正しているが、例えば、アタッチメント30の移動量と目標点間時間とを対応付けたマップを用いて、目標点間時間を補正してもよい。
【0056】
また、上記では、土砂を掘削するバケット33を備えた作業機械1の場合について説明したが、これに限定されず、例えば、バケット33の代わりにリフティングマグネットを備えた作業機械1であってもよい。このような作業機械1では、一連の動作に、アタッチメント30で対象物を拾い上げる拾い上げ動作が含まれる。つまり、一連の動作によって、リフティングマグネットで鉄くず等の対象物を拾い上げて、ダンプカーの荷台などに放出する作業が行われる。この場合、コントローラ(繰り返し手段)11は、拾い上げ動作時におけるバケット33の先端の高さを変えながら(低くしていきながら)、一連の動作を繰り返させる。
【0057】
上記の、リフティングマグネットを備えた作業機械1の場合、コントローラ(制限高さ設定手段)11は、対象物を拾い上げる高さの制限高さを設定する。コントローラ11は、拾い上げ時の高さが制限高さに達した際に、一連の動作の繰り返しによる作業が所定段階に達したと判定する。そして、コントローラ11は、拾い上げ動作の開始点を移動させる。
【0058】
(作業機械の動作)
次に、動作制御処理のフローチャートである図7を参照して、作業機械1の動作を説明する。
【0059】
まず、コントローラ11は、上部旋回体22およびアタッチメント30に一連の動作を行わせる(ステップS1)。次に、コントローラ11は、掘削時の深さが制限深さに達したか否かを判定する(ステップS2)。
【0060】
ステップS2において、掘削時の深さが制限深さに達していないと判定した場合には(S2:NO)、コントローラ11は、掘削深さを変更する(ステップS3)。そして、ステップS1に戻る。これにより、掘削動作時におけるバケット33の先端の高さを変えながら、一連の動作が繰り返される。
【0061】
一方、ステップS2において、掘削時の深さが制限深さに達したと判定した場合には(S2:YES)、コントローラ11は、上部旋回体22を旋回させて、掘削動作の開始点(A点)を移動させる(ステップS4)。これにより、持ち上げ旋回動作の開始点(B点)も移動する。
【0062】
次に、コントローラ11は、持ち上げ旋回動作において、移動後のB点から最初の目標点75まで、目標点75から次の目標点75まで、目標点75からC点までをバケット33の先端が移動するのに要する目標点間時間を補正する(ステップS5)。このとき、コントローラ11は、アタッチメント30が目標上限速度以下で移動するように、目標点間時間を補正する。そして、ステップS1に戻る。これにより、新たな掘削個所において一連の動作が繰り返されることになる。
【0063】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係る作業機械1によれば、アタッチメント30の旧移動量に対する新移動量の変化量に基づいて、目標点間時間が補正される。例えば、旧移動量と新移動量との比率に基づいて、目標点間時間が補正される。このように、目標点間時間を補正した場合には、開始点および終了点の少なくとも一方が移動される前と同等の速度感で、上部旋回体22およびアタッチメント30を動作させることができる。これにより、上部旋回体22およびアタッチメント30の動きが急峻になるのを抑制することができる。よって、作業機械1の周りにいる作業者に不安感を与えることを抑制することができる。
【0064】
また、旧移動量と新移動量との比率に基づいて、目標点間時間が補正される。上記の比率に基づいて、目標点間時間を補正することで、開始点および終了点の少なくとも一方が移動される前と同等の速度感で、上部旋回体22およびアタッチメント30を好適に動作させることができる。
【0065】
また、アタッチメント30の作業範囲80内において、所定動作(持ち上げ旋回動作など)の開始点および終了点の少なくとも一方が移動される。これにより、移動後の所定動作において、アタッチメント30が作業範囲80内から逸脱しないようにすることができる。よって、作業範囲80外に障害物などがある場合に、移動後の所定動作においても、アタッチメント30がこれに干渉しないようにすることができる。
【0066】
また、アタッチメント30が目標上限速度以下で動作するように、目標点間時間が補正される。補正後の目標点間時間が短くなりすぎて、2つの目標点75間をバケット33の先端が移動する速度が速くなりすぎると、作業機械1の周りにいる作業者に不安感を与える。そこで、アタッチメント30が目標上限速度以下で動作するように、目標点間時間を補正することで、作業機械1の周りにいる作業者に不安感を与えることを好適に抑制することができる。
【0067】
また、土砂を掘削する動作を行う作業機械1において、掘削時の深さが制限深さに達した際に、次の一連の動作における掘削動作の開始点が移動される。これにより、掘削個所を変えながら、掘削を継続することができる。
【0068】
また、アタッチメント30で対象物を拾い上げる動作を行う、リフティングマグネットなどの作業機械1において、拾い上げ時の高さが制限高さに達した際に、次の一連の動作における拾い上げ動作の開始点が移動される。これにより、対象物を拾い上げる個所を変えながら、対象物の拾い上げを継続することができる。
【0069】
また、所定動作を含む一連の動作が所定回数繰り返された際に、次の一連の動作における所定動作(持ち上げ旋回動作など)の開始点および終了点の少なくとも一方が移動される。一連の動作を繰り返す回数を決めておくことで、掘削時の深さや拾い上げ時の高さを検出するよりも容易に、次の一連の動作に移行することができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0071】
1 作業機械
11 コントローラ(目標軌道設定手段、制御手段、移動手段、補正手段、算出手段、範囲設定手段、上限速度設定手段、繰り返し手段、制限深さ設定手段、制限高さ設定手段、回数設定手段)
13 記憶装置
21 下部走行体
22 上部旋回体
23 キャブ
24 旋回装置
25 機械本体
30 アタッチメント
31 ブーム
32 アーム
33 バケット
34 リンク部材
40 シリンダ
41 ブームシリンダ
42 アームシリンダ
43 バケットシリンダ
52 角度センサ
60 傾斜角センサ
61 ブーム傾斜角センサ
62 アーム傾斜角センサ
63 バケット傾斜角センサ
71 目標経路
73,75 目標点
80 作業範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7