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特開2023-6597アンテナカバーおよびアンテナカバーの製造方法
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  • 特開-アンテナカバーおよびアンテナカバーの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006597
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】アンテナカバーおよびアンテナカバーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/42 20060101AFI20230111BHJP
   H01Q 1/02 20060101ALI20230111BHJP
   H01P 11/00 20060101ALI20230111BHJP
   G01S 7/03 20060101ALI20230111BHJP
   G01S 13/931 20200101ALN20230111BHJP
【FI】
H01Q1/42
H01Q1/02
H01P11/00
G01S7/03 246
G01S13/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021109282
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000220033
【氏名又は名称】東京コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶 真志
(72)【発明者】
【氏名】日置 貴之
【テーマコード(参考)】
5J046
5J070
【Fターム(参考)】
5J046AA02
5J046CA03
5J046RA03
5J046RA14
5J070AB24
5J070AC01
5J070AF03
(57)【要約】
【課題】阻害物の付着を確実に抑制するアンテナカバーおよびアンテナカバーの製造方法を提供する。
【解決手段】電波を送信するアンテナを覆うために電波を透過可能に形成されたカバー本体と、カバー本体に沿って延びるように配置され、通電によりカバー本体を加熱する電熱部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を送信するアンテナを覆うために前記電波を透過可能に形成されたカバー本体と、
前記カバー本体に沿って延びるように配置され、通電により前記カバー本体を加熱する電熱部とを備えるアンテナカバー。
【請求項2】
前記電熱部は、前記カバー本体に密着した状態で配置される請求項1に記載のアンテナカバー。
【請求項3】
金属材料からなる電熱部を形成し、
電波を送信するアンテナを覆うために前記電波を透過可能に形成されるカバー本体に沿うように前記電熱部を前記カバー本体に対して圧着するアンテナカバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナカバーおよびアンテナカバーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電波を送受信するレーダ装置が実用化されている。レーダ装置は、例えば、車両に搭載され、アンテナから電波を送受信することにより車両の周囲に存在する障害物を検出する。ここで、アンテナをカバーするレドームなどのアンテナカバーに雪や雨などの阻害物が付着すると、電波が減衰するなど、電波の伝搬が阻害され減衰するおそれがある。
【0003】
そこで、アンテナカバーに阻害物が付着することを抑制する技術として、例えば、特許文献1には、降雪時における電気的性能の劣化を防ぎ、定期的なメンテナンスを不要とするアンテナ装置が提案されている。このアンテナ装置は、内部にヒータを配置してレドーム表面の温度を上昇させることで、レドームに付着した雪を溶かして除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許6804966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のアンテナ装置は、レドームに対してヒータが離間して配置されているため、レドームの温度を速やかに上昇させることができず、阻害物の付着を確実に抑制することが困難であった。
【0006】
本開示は、阻害物の付着を確実に抑制するアンテナカバーおよびアンテナカバーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るアンテナカバーは、電波を送信するアンテナを覆うために電波を透過可能に形成されたカバー本体と、カバー本体に沿って延びるように配置され、通電によりカバー本体を加熱する電熱部とを備えるものである。
【0008】
本開示に係るアンテナカバーの製造方法は、金属材料からなる電熱部を形成し、電波を送信するアンテナを覆うために電波を透過可能に形成されるカバー本体に沿うように電熱部をカバー本体に対して圧着するものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、阻害物の付着を確実に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施の形態に係るアンテナカバーを備えたレーダ装置の構成を示す図である。
図2】アンテナカバーの構成を示す図である。
図3】カバー本体に対して加熱装置が配置された様子を示す図である。
図4】レーダ装置が車両に搭載された様子を示す図である。
図5】加熱装置が形成される様子を示す図である。
図6】加熱装置が金型に配置された様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係る実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
図1に、本開示の実施の形態に係るアンテナカバーを備えたレーダ装置の構成を示す。レーダ装置は、支持部1と、アンテナ基板2と、アンテナ3と、アンテナ制御部4と、アンテナカバー5とを有する。
【0013】
支持部1は、レーダ装置の各部を支持するもので、アンテナカバー5と共にアンテナ基板2およびアンテナ3を収容する収容室Rを形成する。支持部1は、例えば樹脂材料などから構成することができる。
アンテナ基板2は、アンテナ3を支持するもので、収容室Rにおいて支持部1に固定されている。アンテナ基板2は、例えば、樹脂材料などから構成することができる。
【0014】
アンテナ3は、アンテナ基板2に配置され、アンテナ制御部4からの制御信号に応じて所定の周波数の電波W、例えばミリ波を正面に向かって送信する。また、アンテナ3は、送信された電波Wが外部の物体に反射されて戻る反射波を受信し、その反射波の強度に応じた受信信号をアンテナ制御部4に出力する。
【0015】
アンテナ制御部4は、アンテナ3を制御するもので、アンテナ3に電気的に接続されている。アンテナ制御部4は、所定のタイミングでアンテナ3から電波Wが送信されるように予め設定された制御信号をアンテナ3に出力する。また、アンテナ制御部4は、反射波の強度に応じた受信信号をアンテナ3から受信する。アンテナ制御部4は、送信した電波Wの周波数に対する反射波の周波数の変化などに基づいて、外部に存在する物体の位置を算出する。
【0016】
アンテナカバー5は、カバー本体6と、加熱装置7とを有する。
【0017】
カバー本体6は、アンテナ3を保護するためのもので、いわゆるレドームであり、支持部1との間でアンテナ基板2およびアンテナ3を全て覆うように配置されている。カバー本体6は、アンテナ3の正面、すなわち電波Wの送信側に配置されており、アンテナ3を覆うために電波Wを透過可能に形成されている。このとき、カバー本体6は、電波Wの伝搬を阻害しないように、電波Wの周波数に応じた厚みで送信方向に凸状に湾曲するように形成されている。カバー本体6は、電波透過性を有する材料から構成することができ、例えば樹脂材料などから構成することができる。
【0018】
加熱装置7は、カバー本体6を加熱するもので、カバー本体6に沿って湾曲するように配置されている。図2に示すように、加熱装置7は、加熱基板8と、電熱部9と、接着部10とを有する。
【0019】
加熱基板8は、フィルム形状を有し、カバー本体6の内面に沿うように配置されている。加熱基板8は、絶縁性および耐熱性を有する材料から構成することができ、例えば樹脂材料などから構成することができる。
【0020】
電熱部9は、加熱基板8の表面に沿って延びるように配置、すなわちカバー本体6に沿って延びるように配置されている。このとき、電熱部9は、カバー本体6に密着した状態でカバー本体6に沿って延びるように配置されている。電熱部9は、金属材料から形成されており、通電により発熱してカバー本体6を加熱する。電熱部9は、例えば、銅などから構成することができる。
【0021】
接着部10は、加熱基板8および電熱部9をカバー本体6に強固に接着するためのもので、加熱基板8および電熱部9とカバー本体6との間に薄い層状に配置されている。接着部10は、例えば、接着剤などから構成することができる。
【0022】
図3に示すように、電熱部9は、カバー本体6の全面にわたって蛇行して延びるように配置されている。すなわち、電熱部9は、アンテナ3から送信される電波Wの送信範囲にわたるように配置されている。また、電熱部9は、その端部に一対の端子9aおよび9bが形成されている。
ここで、加熱装置7は、端子9aおよび9bに接続された電源11を有し、この電源11が電源制御部12を介して検出部13に接続されている。
【0023】
電源11は、端子9aおよび9bを介して電熱部9に給電するもので、電源制御部12の制御に応じて給電のオンとオフを切り換えるように構成されている。
【0024】
検出部13は、カバー本体6の表面上に付着する雪や雨などの阻害物を検出する。検出部13は、例えば、外部の温度を測定する温度計などから構成することができる。
【0025】
電源制御部12は、検出部13の検出結果に基づいて電源11のオンとオフを切り換えて、電熱部9によるカバー本体6の加熱を制御する。
【0026】
このレーダ装置は、図4に示すように、車両Vに搭載することができ、例えば、カバー本体6が車両VのフロントパネルFから外部に露出するように配置することができる。車両Vとしては、例えば、除雪車などの作業車が挙げられる。
【0027】
次に、アンテナカバー5の製造方法について説明する。
【0028】
まず、図5に示すように、フィルム状に形成された加熱基板8の表面上に、金属材料からなる電熱部9を形成する。このとき、電熱部9は、加熱基板8に沿って蛇行して延びるように形成される。そして、電熱部9および加熱基板8上に接着剤が塗布されて接着部10が形成される。
【0029】
続いて、図6に示すように、接着部10が塗布された電熱部9および加熱基板8を金型MのキャビティC内に配置する。このとき、電熱部9および加熱基板8は、電熱部9がキャビティCに露出するように配置される。
【0030】
このようにして、電熱部9および加熱基板8が金型Mに配置されると、カバー本体6を形成するための溶融樹脂Raが金型Mの流入口からキャビティCに注入される。これにより、図2に示すように、電波Wを透過可能なカバー本体6が成型されると同時に、電熱部9および加熱基板8がカバー本体6に沿うようにカバー本体6に対して圧着される。
【0031】
このとき、カバー本体6は、電波Wの伝搬を阻害しないように、電波Wの周波数に応じた厚みで湾曲するように形成されている。本開示では、電熱部9および加熱基板8をカバー本体6に圧着することで、電熱部9および加熱基板8をカバー本体6に密着した状態で沿うように形成することができ、電波Wの減衰などの電波Wの伝搬が阻害されるのを抑制することができる。
【0032】
また、電熱部9は、一般的に、両面テープなどの接着部材を介して加熱対象に接着されている。しかしながら、電熱部9をカバー本体6に両面テープで接着すると、電熱部9の位置ずれやアンテナカバー5の厚みが増加するなどして、アンテナカバー5における電波Wの伝搬が阻害されるおそれがある。
【0033】
そこで、電熱部9および加熱基板8が、カバー本体6に対して圧着により直接的に接着されることで、電熱部9の位置ずれを抑制すると共にアンテナカバー5の厚みを維持することができる。
【0034】
また、電熱部9および加熱基板8は、塗布された接着部10を介して接着されるため、アンテナカバー5の厚みを維持しつつ電熱部9および加熱基板8をカバー本体6に強固に接着することができる。
【0035】
また、電熱部9および加熱基板8は、カバー本体6に対してインサート成形で圧着されるため、カバー本体6に沿うように容易に形成することができる。
【0036】
また、加熱基板8は、フィルム形状を有するため、カバー本体6に沿うように容易に形成することができる。
【0037】
このようにして、電熱部9および加熱基板8が、カバー本体6に接着されることにより、アンテナカバー5を製造することができる。
【0038】
次に、本実施の形態の動作について説明する。
【0039】
まず、図4に示すように、レーダ装置を搭載した車両Vが走行される。このとき、レーダ装置は、カバー本体6がフロントパネルFから外部に露出するように車両Vに配置されている。図1に示すように、アンテナ制御部4の制御の下、アンテナ3から所定の周波数の電波Wが送信されると、その電波Wが、アンテナカバー5を介して車両Vの前方に伝搬する。
【0040】
このとき、図2に示すように、電熱部9が、カバー本体6に沿って延びるように配置されるため、電波Wの伝搬を阻害することなく、電波Wを車両Vの前方にスムーズに伝搬させることができる。
【0041】
また、電熱部9は、圧着によりカバー本体6に密着した状態で配置されるため、電波Wの伝搬が阻害されるのを確実に抑制することができる。
【0042】
また、加熱基板8は、カバー本体6の内面に沿うように配置されるため、アンテナ3から送信された電波Wが加熱基板8で反射するのを抑制し、電波Wを内面にスムーズに入力させて伝搬させることができる。
【0043】
このようにして、車両Vの前方に伝搬した電波Wは、車両Vの前方に存在する物体で反射される。そして、この反射波が、アンテナカバー5を介して戻り、アンテナ3で受信される。
【0044】
上記と同様に、電熱部9が、カバー本体6に沿って延びるように配置されているため、反射波の伝搬が阻害されるのを抑制することができる。
【0045】
反射波がアンテナ3で受信されると、その受信信号がアンテナ3からアンテナ制御部4に出力される。そして、アンテナ制御部4が、受信信号に基づいて反射波の周波数を算出し、送信した電波Wの周波数に対する反射波の周波数の変化などに基づいて、車両Vに対する物体の位置を算出する。
【0046】
このとき、電波Wおよび反射波は、電熱部9などにより伝搬が阻害されていないため、ノイズの影響などを抑制することができ、車両Vに対する物体の位置を高精度に算出することができる。
【0047】
続いて、カバー本体6の表面に雪などの阻害物が付着した場合には、図3に示すように、検出部13が、カバー本体6への阻害物の付着を検出する。検出部13は、例えば、車両Vの外部環境の温度を測定することで阻害物の付着を検出することができる。検出部13は、測定した温度を電源制御部12に出力する。
【0048】
電源制御部12は、検出部13で測定された温度に基づいて、カバー本体6への阻害物の付着を判定する。電源制御部12は、検出部13で測定された温度が所定値より高い場合には、阻害物が付着していないと判定し、電源11をオフ状態とする。
【0049】
一方、電源制御部12は、検出部13で測定された温度が所定値以下の場合には、阻害物が付着していると判定し、電源11をオン状態とする。電源11がオン状態となると、電源11から電熱部9に電力が供給されて、電熱部9がカバー本体6を加熱する。これにより、カバー本体6の温度が上昇し、カバー本体6の表面に付着した雪などの阻害物を溶かすまたは蒸発させて除去することができる。
【0050】
このとき、電熱部9が、カバー本体6に沿って延びるように配置されているため、カバー本体6を直接的に加熱することができ、阻害物の付着を確実に抑制することができる。また、電熱部9が、カバー本体6を直接的に加熱するため、少ない電力で阻害物を除去することができる。
【0051】
このように、電熱部9が、カバー本体6を加熱して阻害物の付着を抑制するため、外部環境の変化に関わらず、電波Wを車両Vの前方にスムーズに送信することができ、車両Vの前方に存在する物体を確実に検知することができる。
【0052】
本実施の形態によれば、電熱部9が、カバー本体6に沿って延びるように配置されるため、通電によりカバー本体6を直接的に加熱することができ、阻害物の付着を確実に抑制することができる。
【0053】
なお、上記の実施の形態では、電熱部9および加熱基板8は、カバー本体6の内面側に配置されたが、電熱部9がカバー本体6に沿って延びるように配置されていればよく、これに限られるものではない。例えば、電熱部9および加熱基板8は、カバー本体6から露出させずに、カバー本体6の内部に埋めるように配置することもできるし、カバー本体6外面側に配置することもできる。
【0054】
また、上記の実施の形態では、カバー本体6が、フロントパネルFから外部に露出するように配置されたが、阻害物を除去することができればよく、これに限られるものではない。例えば、カバー本体6が、フロントパネルFに当接するように配置し、カバー本体6からフロントパネルFに伝導した熱でフロントパネルFに付着した阻害物を除去することもできる。
【0055】
その他、上記の実施の形態は、何れも本発明の実施をするにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。例えば、上記の実施の形態で説明した各部の形状や個数などについての開示はあくまで例示であり、適宜変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本開示に係るアンテナカバーは、電波を送信するアンテナを覆うカバーに利用できる。
【符号の説明】
【0057】
1 支持部
2 アンテナ基板
3 アンテナ
4 アンテナ制御部
5 アンテナカバー
6 カバー本体
7 加熱装置
8 加熱基板
9 電熱部
9a,9b 端子
10 接着部
11 電源
12 電源制御部
13 検出部
C キャビティ
F フロントパネル
M 金型
R 収容室
Ra 溶融樹脂
V 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6