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▶ 株式会社安川電機の特許一覧

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  • 特開-塗装ロボットおよび塗装システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065973
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】塗装ロボットおよび塗装システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/06 20060101AFI20230508BHJP
【FI】
B25J9/06 B
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176417
(22)【出願日】2021-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今野 剛志
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 毅
(72)【発明者】
【氏名】宮園 義彰
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS13
3C707BS13
3C707BT06
3C707CV09
3C707CY01
3C707MT07
3C707NS05
(57)【要約】
【課題】ワークへの接近性を向上させること。
【解決手段】塗装ロボットは、基台と、旋回ベースと、ロアアームと、アッパーアームと、手首部とを備える。基台は、設置面に固定される。旋回ベースは、基台の上面側に基端側が支持され、鉛直向きに沿う第1軸まわりに旋回する。ロアアームは、旋回ベースに基端側が支持され、第1軸と垂直な第2軸まわりに旋回する。アッパーアームは、ロアアームの先端側に基端側が支持され、第2軸と平行な第3軸まわりに旋回する。手首部は、アッパーアームの先端側に基端側が支持され、先端側にエンドエフェクタを取り付け可能な3軸構成である。アッパーアームは、基端側の第1アッパーアームと、先端側の第2アッパーアームとを備える。第2アッパーアームは、第3軸と平行な第4軸まわりに旋回するとともに、アーム長が第1アッパーアームのアーム長よりも長く、かつ、アーム長の2倍よりも短い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面に固定される基台と、
前記基台の上面側に基端側が支持され、鉛直向きに沿う第1軸まわりに旋回する旋回ベースと、
前記旋回ベースに基端側が支持され、前記第1軸と垂直な第2軸まわりに旋回するロアアームと、
前記ロアアームの先端側に基端側が支持され、前記第2軸と平行な第3軸まわりに旋回するアッパーアームと、
前記アッパーアームの先端側に基端側が支持され、先端側にエンドエフェクタを取り付け可能な3軸構成の手首部と
を備え、
前記アッパーアームは、
基端側の第1アッパーアームと、先端側の第2アッパーアームとを備え、
前記第2アッパーアームは、
前記第1アッパーアームの先端側に基端側が支持され、前記第3軸と平行な第4軸まわりに旋回するとともに、アーム長が前記第1アッパーアームのアーム長よりも長く、かつ、当該アーム長の2倍よりも短いこと
を特徴とする塗装ロボット。
【請求項2】
ロボットの外部に配索される線条体を旋回可能に支持する支持部
をさらに備え、
前記第2アッパーアームは、
前記ロアアームによって支持される側面側で前記第1アッパーアームによって支持され、
前記支持部は、
前記第1アッパーアームの正面側を横切って前記第2アッパーアームへ向けて配索される前記線条体を前記第1アッパーアームの正面側で支持すること
を特徴とする請求項1に記載の塗装ロボット。
【請求項3】
前記支持部は、
前記ロアアームの背面側を横切って前記第1アッパーアームへ向けて配索される前記線条体を前記ロアアームの背面側で支持すること
を特徴とする請求項2に記載の塗装ロボット。
【請求項4】
前記手首部は、
塗装用の2ロールホローリストであること
を特徴とする請求項1、2または3に記載の塗装ロボット。
【請求項5】
塗装ブースと、
請求項1~4のいずれか一つに記載の塗装ロボットと
を備え、
前記塗装ロボットは、
ワークの搬送向きについて前記ワークを挟むように前記塗装ブースに少なくとも一対が配置され、
一対の前記塗装ロボットは、
前記搬送向きに沿う搬送中心面に対してお互いに軸構成が対称であり、前記第1軸と前記搬送中心面との距離がお互いに等しいこと
を特徴とする塗装システム。
【請求項6】
一対の前記塗装ロボットは、
前記搬送向きについて前記ロアアームよりも上流側に前記第1アッパーアームがそれぞれ配置されること
を特徴とする請求項5に記載の塗装システム。
【請求項7】
一対の前記塗装ロボットは、
前記第1軸が前記基台よりも上方で前記搬送中心面において交差する姿勢でそれぞれ配置されること
を特徴とする請求項5または6に記載の塗装システム。
【請求項8】
一対の前記塗装ロボットは、
前記ワークに対する塗装作業中は、前記第1アッパーアームに対して前記第2アッパーアームを畳んだ姿勢で前記第4軸まわりの旋回を固定すること
を特徴とする請求項5、6または7に記載の塗装システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、塗装ロボットおよび塗装システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の関節部をそれぞれ駆動して動作するロボットが知られている。かかるロボットの先端には、溶接や把持といった用途にあわせたエンドエフェクタが取り付けられ、ワークの加工や移動といった様々な作業が行われる。
【0003】
また、塗装用のエンドエフェクタを取り付けた塗装ロボットを塗装ブース内に配置し、ワークに相当する自動車のボディ外板を塗装する塗装システムが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-006235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ボディ外板ではなくボディ内板を塗装する場合には、ロボットとワークとの干渉が特に問題となりやすい。そして、干渉防止のためにワークとロボットとの距離を確保しようとすると塗装ブースが大型化しやすい。
【0006】
実施形態の一態様は、有効動作範囲を拡張することでワークへの接近性を向上させた塗装ロボットおよび塗装システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係る塗装ロボットは、基台と、旋回ベースと、ロアアームと、アッパーアームと、手首部とを備える。基台は、設置面に固定される。旋回ベースは、前記基台の上面側に基端側が支持され、鉛直向きに沿う第1軸まわりに旋回する。ロアアームは、前記旋回ベースに基端側が支持され、前記第1軸と垂直な第2軸まわりに旋回する。アッパーアームは、前記ロアアームの先端側に基端側が支持され、前記第2軸と平行な第3軸まわりに旋回する。手首部は、前記アッパーアームの先端側に基端側が支持され、先端側にエンドエフェクタを取り付け可能な3軸構成である。前記アッパーアームは、基端側の第1アッパーアームと、先端側の第2アッパーアームとを備える。前記第2アッパーアームは、前記第1アッパーアームの先端側に基端側が支持され、前記第3軸と平行な第4軸まわりに旋回するとともに、アーム長が前記第1アッパーアームのアーム長よりも長く、かつ、当該アーム長の2倍よりも短い。
【0008】
実施形態の一態様に係る塗装システムは、塗装ブースと、前記塗装ロボットとを備える。前記塗装ロボットは、ワークの搬送向きについて前記ワークを挟むように前記塗装ブースに少なくとも一対が配置される。一対の前記塗装ロボットは、前記搬送向きに沿う搬送中心面に対してお互いに軸構成が対称であり、前記第1軸と前記搬送中心面との距離がお互いに等しい。
【発明の効果】
【0009】
実施形態の一態様によれば、ワークへの接近性を向上させた塗装ロボットおよび塗装システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る塗装ロボットの側面図である。
図2A図2Aは、床置きの設置例を示す図である。
図2B図2Bは、壁掛けの設置例を示す図である。
図3A図3Aは、支持部の設置位置を示す側面図である。
図3B図3Bは、支持部の側面図である。
図4図4は、実施形態に係る塗装システムの上面模式図である。
図5図5は、実施形態に係る塗装システムの側面模式図である。
図6A図6Aは、2ロールホローリストの軸構成を示すモデル図である。
図6B図6Bは、レンマリストの軸構成を示すモデル図である。
図6C図6Cは、インラインリストの軸構成を示すモデル図である。
図6D図6Dは、3ロールホローリストの軸構成を示すモデル図である。
図7図7は、塗装システムの構成を示すブロック図である。
図8図8は、塗装ロボットの動作手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する塗装ロボットおよび塗装システムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、以下では、自動車などの車両が被塗装物である場合について説明するが、被塗装物は車両には限られない。また、以下では、被塗装物を「ワーク」と記載することとする。
【0012】
また、以下に示す実施形態では、「垂直」、「直交」、「鉛直」、「同一」あるいは「対称」といった表現を用いるが、厳密にこれらの状態を満たすことを要しない。すなわち、上記した各表現は、製造精度、設置精度、処理精度、検出精度などのずれを許容するものとする。
【0013】
まず、実施形態に係る塗装ロボット10について図1を用いて説明する。図1は、実施形態に係る塗装ロボット10の側面図である。図1では、説明をわかりやすくするために、鉛直上向きを正方向とするZ軸、後述するワークの搬送向きを正方向とするX軸、X軸およびZ軸と直交するY軸の3次元の直交座標系を示している。かかる直交座標系は、以下の説明で用いる他の図面においても示す場合がある。なお、「直交」とは、お互いに「垂直」で、かつ、「交差」することを指す。
【0014】
図1に示すように、塗装ロボット10は、基台10bと、旋回ベース11と、ロアアーム12と、アッパーアームUAと、手首部WUとを備える。基台10bは、設置面ISに固定される。旋回ベース11は、基台10bの上面側に基端側が支持され、鉛直向き(Z軸)に沿う第1軸A1まわりに旋回する。
【0015】
ここで、「旋回」とは、隣り合うアームのなす角度を変化させる動作を指す。また、「回転」とは、隣り合うアームのなす角度を変化させずに相対的に回転させる動作を指す。なお、「旋回」とは、回転軸まわりにアームを振り回す動作を指し、「回転」とは、アームの延伸向きに沿う回転軸まわりにアームを回す動作を指すともいえる。
【0016】
ロアアーム12は、旋回ベース11に基端側が支持され、第1軸A1と垂直な第2軸A2まわりに旋回する。アッパーアームUAは、ロアアーム12の先端側に基端側が支持され、第2軸A2と平行な第3軸A3まわりに旋回する。
【0017】
手首部WUは、アッパーアームUAの先端側に基端側が支持され、先端側にエンドエフェクタEEを取り付け可能な3軸構成の機構である。具体的には、手首部WUは、第5アーム15と、第6アーム16と、第7アーム17とを備える。第5アーム15は、アッパーアームUAの先端側に基端側が支持され、第4軸A4と直交する第5軸A5まわりに回転する。第6アーム16は、第5アーム15の先端側に基端側が支持され、第5軸A5と交差する第6軸A6まわりに回転する。
【0018】
ここで、第5軸A5と第6軸A6との傾き角は、鋭角側が0度よりも大きく、90度よりも小さい任意の角度とすることができる。第7アーム17は、第6アーム16の先端側に基端側が支持され、第6軸A6と交差する第7軸A7まわりに回転する。そして、第7アーム17の先端側には塗装用のエンドエフェクタEE(図1の破線参照)を取り付け可能である。なお、図1に示した手首部WUは、いわゆる、塗装用の「2ロールホローリスト(2 Roll Hollow Wrist)」である。このように、手首部WUを中空とすることで、中空部にホースやチューブ、ケーブル等を配索することが可能となる。したがって、複雑な形状のワークに対してもホースやチューブ、ケーブル等の干渉を懸念することなく塗装作業を容易に行うことができる。
【0019】
ここで、アッパーアームUAは、基端側の第1アッパーアーム13と、先端側の第2アッパーアーム14とを備える。第1アッパーアーム13は、ロアアーム12の先端側に基端側が支持され、上記した第3軸A3まわりに旋回する。第2アッパーアーム14は、第1アッパーアーム13の先端側に基端側が支持され、第3軸A3と平行な第4軸A4まわりに旋回する。つまり、アッパーアームUAは、いわゆる「冗長軸」に相当する第4軸A4を有する2アーム構成であり、第4軸A4まわりの旋回動作によってアームの屈伸動作が可能である。
【0020】
本実施形態では、第3軸A3と第4軸A4との距離を第1アッパーアーム13のアーム長とし、第5軸A5と第6軸A6との交点であるP点Pと第4軸A4との距離を第2アッパーアーム14のアーム長とする。ここで、第2アッパーアーム14のアーム長は、第1アッパーアーム13のアーム長よりも長く、かつ、第1アッパーアーム13のアーム長の2倍よりも短い。
【0021】
つまり、第1アッパーアーム13のアーム長を「L1」とし、第2アッパーアーム14のアーム長を「L2」とすると、「L1<L2<L1×2」の関係を有する。このようにすることで、ワークへの干渉防止と、ワークへの接近性との両立を図ることができる。なお、「L2=1.2×L1」程度とすると干渉防止および接近性の両立性の観点から、さらに好ましい。
【0022】
このように、アッパーアームUAに冗長軸を持たせるとアッパーアームUAの屈伸動作が可能となるので、ワークとの干渉を回避しつつ塗装ロボット10の設置位置をよりワークに近づけることができる。また、第2アッパーアーム14を第1アッパーアーム13よりも長くすることで、ワークとの干渉を回避した動作範囲である「有効動作範囲」を拡張することができ、ワークへの接近性をさらに向上させることが可能となる。
【0023】
なお、図1に示した塗装ロボット10の軸構成を、鉛直軸(Z軸)と平行な対称面に対してミラー構成とすることもできるが、この点については、図4等を用いて後述する。また、図1に示した手首部WUを異なる軸構成のものとしてもよいが、この点については、図6A図6Dを用いて後述することとする。
【0024】
次に、図1に示した塗装ロボット10の塗装ブース200への設置例について図2Aおよび図2Bを用いて説明する。図2Aは、床置きの設置例を示す図であり、図2Bは、壁掛けの設置例を示す図である。図2Aおよび図2Bに示すように、塗装ブース200は、床面201と、一対の壁面202(一方は図示略)と、天面203とに囲まれ、ワークの搬送向きの上流側(X軸負方向側)と下流側(X軸正方向側)とを開放可能な半閉空間である。
【0025】
なお、図2Aおよび図2Bでは、ワークの搬送向き(X軸正方向)について塗装ブース200における右側(Y軸負方向側)の壁面202付近に塗装ロボット10を設置した場合を示している。また、図2Aおよび図2Bの方向視は図1の方向視と同一である。
【0026】
図2Aに示すように、塗装ロボット10を床置きにする場合には、基台10bの底面を塗装ブース200の床面201に固定する。ここで、塗装ロボット10の第1軸A1は、鉛直軸(Z軸)と平行である。なお、図2Aでは、基台10bを床面201に直接固定する場合を示したが、床面201に固定された台の上に基台10bを固定することとしてもよい。
【0027】
図2Bに示すように、塗装ロボット10を壁掛けにする場合には、基台10bの下面側に設けられる補助部材10cを介して塗装ブース200の壁面202に壁掛けする。ここで、塗装ロボット10の第1軸A1は、図2Aに示した場合と同様に、鉛直軸(Z軸)と平行である。なお、図2Bでは、基台10bの側面が壁面202に接するように設置される場合を示したが基台10bの側面を壁面202から離して設置することとしてもよい。また、補助部材10cを省略して基台10bの側面を壁面202に固定することとしてもよい。
【0028】
なお、図2Aおよび図2Bでは、塗装ロボット10の第1軸A1が鉛直軸(Z軸)と平行となるように塗装ロボット10を配置する場合を示したが、第1軸A1が鉛直軸(Z軸)に対して傾いた姿勢で塗装ロボット10を配置することとしてもよい。たとえば、第1軸A1が、図2Aおよび図2Bに示したYZ平面と平行、かつ、Y軸に対して45度から90度の範囲となるように塗装ロボット10を配置してもよい。ここで、90度は図2Aおよび図2Bに示した姿勢に相当する。このように、塗装ロボット10を傾斜配置する場合、床面201や壁面202を傾斜させてもよく、基台10bあるいは補助部材10cを傾斜させてもよい。
【0029】
次に、図1に示したエンドエフェクタEEへ向けて塗装ロボット10に配索される線条体18を支持する支持部19について図3Aおよび図3Bを用いて説明する。図3Aは、支持部19の設置位置を示す側面図であり、図3Bは、支持部19の側面図である。図3Aは、図2Aに示した壁面202から塗装ロボット10をみた側面図に相当し、図3Bは、支持部19におけるスイング軸ASと垂直な向きから支持部19をみた側面図に相当する。なお、図3Aに示した塗装ロボット10の姿勢は、図1に示した姿勢とは異なる。
【0030】
ここで、線条体18は、エンドエフェクタEEへ塗料や気体を供給するホースやチューブ、電気信号を伝送するケーブル等を含む。なお、複数のホースやチューブ、ケーブルは、結束バンド等で束ねることとしてもよく、大きめのチューブ内にまとめて配置することとしてもよい。
【0031】
図3Aには、図1に示したロアアーム12、第1アッパーアーム13および第2アッパーアーム14を鉛直向き上方に伸ばした姿勢をとった塗装ロボット10を示している。つまり、ロアアーム12、第1アッパーアーム13および第2アッパーアーム14の延伸向きはZ軸と平行である。
【0032】
ここで、図3Aの姿勢において各アームの「正面」をY軸正方向側の面とし、「背面」は、Y軸負方向側の面とする。つまり、図3Aの姿勢において第1軸A1(図1参照)から遠い側の面が各アームの「正面」であり、近い側の面が各アームの「背面」である。なお、図3Aでは、第2アッパーアーム14の先端側以降の記載については省略している。
【0033】
図3Aに示すように、塗装ロボット10の第2アッパーアーム14は、第1アッパーアーム13がロアアーム12によって支持される側面側で、第1アッパーアーム13によって支持される。つまり、第2アッパーアーム14およびロアアーム12は、第1アッパーアーム13における同じ側の側面にそれぞれ接続される。
【0034】
線条体18は、設置面ISから導出されて塗装ロボット10の外部に配索され、第2アッパーアーム14の外部から手首部WU(図1参照)の中空部へ導入される。そして、線条体18の一端は、エンドエフェクタEE(図1参照)に接続される。なお、線条体18の他端は、図2A等に示した塗装ブース200の外部に配置される塗料タンク等に接続される。また、線条体18が塗装ブース200を貫通する箇所は、塗装ブース200の外周を囲む外壁(床壁や天壁を含む)のいずれであってもよい。
【0035】
図3Aに示したように、線条体18は、ロアアーム12における第1アッパーアーム13とは反対側の側面からロアアーム12の背面側を横切って湾曲しつつ、第1アッパーアーム13の正面側を横切って第2アッパーアーム14の正面側へ案内される。つまり、線条体18の配索経路は、図3Aの方向視ではS字状である。
【0036】
ここで、塗装ロボット10は、第1アッパーアーム13およびロアアーム12にそれぞれ支持部19を備える。なお、2つの支持部19を区別する場合には、第1アッパーアーム13の支持部19を支持部19A、ロアアーム12の支持部19を支持部19Bのように記載する。
【0037】
支持部19は、線条体18を旋回可能に支持する。具体的には、支持部19は、支持部19が取り付けられるアーム表面の法線方向まわりを旋回する機構を有している。そして、支持部19は、塗装ロボット10の姿勢変化によって線条体18が押されたり引っ張られたりすると線条体18の姿勢変化に従動して旋回する。これにより、支持部19は、線条体18にかかるストレスを緩和することができる。
【0038】
第1アッパーアーム13に設けられる支持部19Aは、第1アッパーアーム13の正面側を横切って第2アッパーアーム14の正面側へ向けて配索される線条体18を、第1アッパーアーム13の正面側で支持する。このように、線条体18を旋回可能に支持する支持部19Aを第1アッパーアーム13に設けることで、アッパーアームUAの屈伸動作によってアッパーアームUAの基端から先端までの距離が変化した場合であっても、線条体18を円滑に案内することができる。
【0039】
また、ロアアーム12に設けられる支持部19Bは、ロアアーム12の背面側を横切って第1アッパーアーム13の正面側へ向けて配索される線条体18を、ロアアーム12の背面側で支持する。このように、線条体18を旋回可能に支持する支持部19Bをロアアーム12に設けることで、第1アッパーアーム13とロアアーム12との相対姿勢が変化した場合であっても、線条体18を円滑に案内することができる。
【0040】
ここで、図3Aでは、支持部19Aおよび支持部19Bをロアアーム12および第1アッパーアーム13の延伸向きにおける中央部分にそれぞれ設ける場合を示した。しかしながらこれに限らず、それぞれのアームの基端側や先端側にずらした位置に各支持部19を設けることとしてもよい。なお、支持部19Aまたは支持部19Bを省略することとしてもよい。
【0041】
図3Bに示すように、支持部19は、取付部19aと、ホルダー部19bとを備える。取付部19aは、塗装ロボット10の表面に取り付けられるとともに、ホルダー部19bを支持する。ホルダー部19bは、ホルダー部19bに対してスイング軸ASまわりに旋回可能である。また、ホルダー部19bは、スイング軸ASと垂直な向き、すなわち、塗装ロボット10の表面に沿う向きに線条体18を通過させる貫通孔SHを有する。
【0042】
なお、貫通孔SHが半円状となるようにホルダー部19bを分割可能な構成とすることとしてもよい。このようにすることで、線条体18の配索がさらに容易となる。また、ホルダー部19bは、線条体18が延伸向きにずれないように線条体18を保持することとしてもよいし、延伸向きのずれを許容するように保持することとしてもよい。
【0043】
なお、図3Bでは、支持部19をロアアーム12における背面側の表面に取り付ける場合について示したが、支持部19は、同様の姿勢で第1アッパーアーム13に取り付けることができる。なお、第1アッパーアーム13に取り付ける場合には、支持部19は第1アッパーアーム13における正面側の表面に取り付けられることになる。
【0044】
次に、図1等に示した塗装ロボット10を備える塗装システム1について図4および図5を用いて説明する。図4は、実施形態に係る塗装システム1の上面模式図であり、図5は、実施形態に係る塗装システム1の側面模式図である。なお、図4および図5では、ワーク500が車両である場合を示している。また、図4および図5では、一対の塗装ロボット10をそれぞれ示したが、二対以上の塗装ロボット10を塗装システム1に含めることとしてもよい。
【0045】
また、以下では、塗装ブース200に設けられる搬送装置210の搬送向き(X軸正方向)を「下流側」、逆向きを「上流側」、搬送向きに向かって右を「右側」、左を「左側」と記載する。また、上面視で、搬送装置210の搬送向きについて中央を通る面を搬送中心面P1とする。
【0046】
なお、塗装ブース200内に複数台設置される塗装ロボット10については、符号の末尾に識別用の文字を付加することとする。たとえば、搬送装置210の右側に設置される塗装ロボット10には「R」を、左側に設置される装置には「L」を付加する。
【0047】
ここで、ワーク500は、搬送中心面P1について、たとえば、対称な形状である。ただし、ワーク500は厳密に対称な形状である必要はなく、ワーク500の左側の塗装ロボット10Lおよび右側の塗装ロボット10Rが同じ動作を行う程度の形状であればよい。なお、ワーク500の左側については、塗装ロボット10Lが塗装作業を行い、右側については、塗装ロボット10Rが塗装作業を行う。
【0048】
図4に示したように、ワーク500は、搬送中心面P1について対称な形状であるので、搬送装置210を挟んで対向する各ロボットは、お互いに左右対称な動作を行いつつワーク500に対する塗装作業を行う。
【0049】
以下、塗装ブース200内に設置される各装置について説明する。塗装ブース200内には、搬送装置210と、塗装ロボット10とが設置される。ここで、塗装ブース200は、上記したように、外部と隔離された空間を有する塗装用の部屋である。
【0050】
塗装ブース200の床面201(図2A参照)には、コンベアなどの搬送装置210が設置される。そして、搬送装置210は、ワーク500を、所定の搬送向き(図4におけるX軸正方向)へ、所定の速度で搬送する。なお、ワーク500は、図示しない治具などによって搬送装置210の可動部分に固定された状態で搬送される。
【0051】
塗装ロボット10は、ワーク500を塗装するロボットであるが、構成については図1等を用いて既に説明したので、ここでの説明を省略する。なお、塗装ロボット10は、内部に不燃性ガスなどの気体を導入して内圧を高めることで、外部からの気体の流入を抑えることができる。
【0052】
塗装ロボット10Rおよび塗装ロボット10Lは、搬送中心面P1について対称な位置にそれぞれ配置される。つまり、図1に示した第1軸A1と搬送中心面P1との距離がお互いに等しい。また、一対の塗装ロボット10Rおよび塗装ロボット10Lは、それぞれの「アーム構成」が搬送中心面P1について対称である。ここで、「アーム構成」とは、各アームを旋回または回転させる各軸の配置を指す。そして、各軸の配置には、隣り合う各軸のなす角、隣り合う各軸の軸間距離が含まれる。
【0053】
すなわち、「アーム構成」が対称という場合、アームの外形や、形状の差異は問わない。つまり、アームの外形や、形状が異なっていても、各軸の配置が対称であれば、アーム構成は対称であるという。同様に、アームの外形や、形状が異なっていても、各軸の配置が同一であれば、アーム構成は同一であるという。
【0054】
このように、アーム構成が対称のロボットを用いることで、教示データを反転させて利用することが可能となるので、教示データの生成コストを抑制することができ、ロボットの製造コストを抑制することができる。
【0055】
図4には、側方のドア510および後方のテールゲート520を開けた状態のワーク500を示している。塗装ロボット10は、ワーク500との干渉を回避しつつ、ドア510の内側や、車内の塗装作業を行う。このように、軸構成が対称な塗装ロボット10を搬送中心面P1についてワーク500を挟んで等距離に配置することで、教示データの再利用が可能となり、教示作業の効率化を図ることができる。
【0056】
ここで、図4に示したように、一対の塗装ロボット10(塗装ロボット10Rおよび塗装ロボット10L)は、搬送向きについてロアアーム12よりも上流側(X軸負方向側)に、第1アッパーアーム13があるようにそれぞれ配置される。このように、各塗装ロボット10を配置することで、たとえば、第1アッパーアーム13とドア510との干渉を回避しやすくなり、塗装作業を迅速に行うことが可能となる。
【0057】
図5は、図4に示した塗装システム1をワーク500の搬送向きの上流側からみた側面図に相当する。図5に示すように、各塗装ロボット10は、アッパーアームUAを畳んだ姿勢でワーク500に対する塗装作業を行うことができる。また、たとえば、アッパーアームUAを振り上げつつ伸ばした姿勢とすることで搬送されるワーク500を回避することができる。
【0058】
なお、図5では、一対の塗装ロボット10の第1軸A1(図1参照)がそれぞれ鉛直向き(Z軸)に沿う姿勢で配置される場合について示したが、第1軸A1が鉛直軸(Z軸)に対して傾いた姿勢で各塗装ロボット10を配置することとしもよい。具体的には、それぞれの第1軸A1が、基台10b(図1参照)よりも上方で搬送中心面P1において交差する姿勢で一対の塗装ロボット10をそれぞれ配置することとしてもよい。このように、各塗装ロボット10をワーク500に対して前のめりの姿勢となるように傾けて配置することで、ワーク500との干渉を回避しつつ、様々な形状のワーク500に対する塗装作業を柔軟に行うことができる。
【0059】
次に、図1に示した手首部WUのバリエーションについて図6A図6Dを用いて説明する。図6Aは、2ロールホローリストの軸構成を示すモデル図であり、図6Bは、レンマリストの軸構成を示すモデル図である。また、図6Cは、インラインリストの軸構成を示すモデル図であり、図6Dは、3ロールホローリストの軸構成を示すモデル図である。
【0060】
ここで、図6Aは、図1に示した手首部WUに対応し、図6B図6Cおよび図6Dは、図1に示した手首部WUのバリエーションに相当する。なお、図6A図6Dにそれぞれ示した手首部WUは、軸構成がお互いに異なるものの、いずれも3軸構成である点については共通している。
【0061】
また、図6A図6Dでは、手首部WUの各関節部をシンボル化して示している。具体的には、矩形のシンボルは「回転関節」を、円のシンボルは「旋回関節」をそれぞれあらわしている。ここで、矩形のシンボルの対角を結ぶ直線は、関節の回転面に対応しており、もう一方の対角を結ぶ回転軸まわりに関節が回転することを示している。
【0062】
また、円のシンボルに付した点は回転軸を示しており、かかる回転軸まわりに関節は回転する。なお、図6A図6Dでは、図1に示した第2アッパーアーム14をシンボル化して直線として示しており、かかる直線は、第2アッパーアーム14の延伸向きを指している。ただし、図6A図6Dは、単に軸構成を示しているにすぎず、中空構造または中実構造の区別を示すものではない。なお、塗装用のロボットでは、一般的に、いずれのバリエーションにおいても手首部WUの内部にホースやチューブ、ケーブル等を配索可能な中空構造が採用されるケースが多い。
【0063】
図6Aに示した手首部WUは、図1を用いて既に説明したように、いわゆる「2ロールホローリスト」である。図6Aに示すように、手首部WUは、シンボル化した第2アッパーアーム14と重なる第5軸A5まわりに回転するとともに、第5軸A5に対して傾いて交差する第6軸A6まわりに回転する。また、手首部WUは、第7軸A7まわりに回転する。なお、図1を用いて既に説明したP点Pは、第5軸A5と、第6軸A6との交点となる。
【0064】
図6Bに示した手首部WUは、いわゆる「レンマリスト」である。図6Bに示すように、手首部WUは、第2アッパーアーム14の延伸向きと垂直な第5軸A5まわりに旋回するとともに、第5軸A5と直交する第6軸A6まわりに回転する。また、手首部WUは、第6軸A6と直交する第7軸A7まわりに回転する。なお、P点Pは、第5軸A5と、シンボル化した第2アッパーアーム14との交点となる。
【0065】
図6Cに示した手首部WUは、いわゆる「インラインリスト」である。図6Cに示すように、手首部WUは、シンボル化した第2アッパーアーム14と重なる第5軸A5まわりに回転するとともに、第5軸A5と直交する第6軸A6まわりに旋回する。また、手首部WUは、第6軸A6と直交する第7軸A7まわりに回転する。なお、P点Pは、第5軸A5と、第6軸A6との交点となる。
【0066】
図6Dに示した手首部WUは、いわゆる「3ロールホローリスト」である。図6Dに示すように、手首部WUは、シンボル化した第2アッパーアーム14と重なる第5軸A5まわりに回転するとともに、第5軸A5に対して傾いて交差する第6軸A6まわりに回転する。また、手首部WUは、第5軸A5および第6軸A6に対して傾いて交差する第7軸A7まわりに回転する。つまり、第5軸A5、第6軸A6および第7軸A7の延長線は、三角形状を形成する。なお、P点Pは、第5軸A5と、第6軸A6との交点となる。
【0067】
このように、図1に示した手首部WUの代わりに、図6B図6Cおよび図6Dに示した手首部WUを用いることとしてもよい。また、3軸構成であることを条件として図6A図6Dに示した軸構成以外の機構を手首部WUとして用いることとしてもよい。
【0068】
次に、塗装システム1の構成について図7を用いて説明する。図7は、塗装システム1の構成を示すブロック図である。図7に示すように、塗装システム1は、塗装ブース200内に、搬送装置210と、塗装ロボット10とを備える。また、塗装システム1は、コントローラ100を備える。なお、搬送装置210および塗装ロボット10は、コントローラ100に接続されている。
【0069】
まず、塗装ロボット10については図1等を用いて既に説明したので、ここでの説明を省略する。搬送装置210は、図4等を用いて既に説明したように、ワーク500(図4参照)を所定の搬送向きに搬送するコンベアなどの装置である。なお、搬送装置210は、ワーク500の位置を検出するセンサなどの検出装置(図示せず)を有しており、ワーク500が通過したタイミングなどをコントローラ100へ通知する。また、搬送装置210は一定速度でワーク500を搬送するものとする。
【0070】
コントローラ100は、制御部110と、記憶部120とを備える。制御部110は、タイミング取得部111と、動作制御部112とを備える。記憶部120は、教示情報121を記憶する。なお、図7には、説明を簡略化するために、1台のコントローラ100を示したが、搬送装置210と、それぞれの塗装ロボット10とを別々のコントローラ100に接続することとしてもよい。このように、複数台のコントローラ100を用いる場合には、各コントローラ100を束ねる上位のコントローラ100を設けることとしてもよい。
【0071】
ここで、コントローラ100は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。
【0072】
コンピュータのCPUは、たとえば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、制御部110のタイミング取得部111および動作制御部112として機能する。
【0073】
また、タイミング取得部111および動作制御部112の少なくともいずれか一つまたは全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
【0074】
また、記憶部120は、たとえば、RAMやHDDに対応する。RAMやHDDは、教示情報121を記憶することができる。なお、コントローラ100は、有線や無線のネットワークで接続された他のコンピュータや可搬型記録媒体を介して上記したプログラムや各種情報を取得することとしてもよい。さらに、コントローラ100を複数台の相互に通信可能な装置として構成してもよく、上位または下位の装置と通信可能な階層式の装置として構成してもよい。
【0075】
制御部110は、搬送装置210から、ワーク500(図4参照)を搬送装置210の可動部分に固定する台座などの治具の位置情報(パルス信号)や、各装置を排他的に動作させるためのインターロック信号を取得しつつ、各塗装ロボット10の動作制御を行う。なお、コントローラ100が複数台で構成される場合には、制御部110は、コントローラ100間の同期をとる処理を併せて行う。
【0076】
タイミング取得部111は、上記した位置情報やインターロック信号を搬送装置210から取得する。そして、タイミング取得部111は、取得した位置情報やインターロック信号に応じて各ロボットの動作タイミングを決定し、決定した動作タイミングを動作制御部112へ通知する。たとえば、タイミング取得部111は、ワーク500(図4参照)が塗装ブース200内の所定位置に達したタイミングを取得し、取得したタイミングに基づいて各塗装ロボット10を動作させるよう動作制御部112へ指示する。
【0077】
動作制御部112は、タイミング取得部111からの指示および教示情報121に基づいて各塗装ロボット10を動作させる。動作制御部112は、各塗装ロボット10の動力源であるアクチュエータ(図示せず)におけるエンコーダ値を用いつつフィードバック制御を行うなどして各塗装ロボット10の動作精度を向上させる。
【0078】
教示情報121は、各塗装ロボット10へ動作を教示するティーチング段階で作成され、各塗装ロボット10の動作経路を規定する「ジョブ」を含んだ情報である。なお、塗装システム1では、上記したように、アーム構成が対称なロボットを用いたり、搬送装置210(図4参照)を挟んだ対称な位置に各ロボットを配置したりしている。したがって、一方の塗装ロボット10の教示データに基づいて他方の塗装ロボット10の教示データを生成することが容易となる。
【0079】
たとえば、図4においてワーク500の右側に対して作業する塗装ロボット10Rの教示データは、一部の変更、または、教示データに含まれる教示位置の座標変換でワーク500の左側に対して作業する塗装ロボット10Lの教示データへ変換可能である。したがって、塗装システム1によれば、かかる教示データを含んだ教示情報121の生成の手間とコストとを抑制することができる。
【0080】
次に、塗装システム1における塗装ロボット10の動作手順について図8を用いて説明する。図8は、塗装ロボット10の動作手順を示すフローチャートである。図8に示すように、ワーク500(図4参照)が上流側から近づいてくると、塗装ロボット10(図1参照)は、アッパーアームUAを伸ばした姿勢でワーク500へアプローチする(ステップS101)。ここで、アプローチとは、ワーク500に干渉しない程度にアッパーアームUAをワーク500側へ向けることを指す。
【0081】
次に、さらにワーク500が近づいてきたならば、塗装ロボット10は、アッパーアームUAを畳んだ姿勢へ姿勢を変化させる(ステップS102)。ここで、アッパーアームUAを畳んだ姿勢とは、ワーク500のドア510と干渉しない程度に、第1アッパーアーム13に対して第2アッパーアーム14を屈曲させた姿勢を指す。たとえば、第1アッパーアーム13の先端がドア510の上方にある状態で第2アッパーアーム14を下方に旋回させることで手首部WUをドア510の内側に位置付けることができる。
【0082】
そして、塗装システム1は、塗装開始タイミングであるか否かを判定し(ステップS103)、塗装開始タイミングであると判定した場合には(ステップS103,Yes)、第4軸A4まわりの回転を固定して塗装作業を実行する(ステップS104)。
【0083】
このように、アッパーアームUAを畳んだ姿勢で第4軸A4を固定することで、ワーク500への接近性を高めつつ、ワーク500との不慮の干渉を回避することができる。なお、ステップS103において塗装開始タイミングではないと判定された場合には(ステップS103,No)、ステップS103の処理を繰り返す。
【0084】
次に、塗装システム1は、塗装作業が終了したか否かを判定し(ステップS105)、終了したと判定した場合には(ステップS105,Yes)、第4軸A4の固定を解除するとともに(ステップS106)、塗装ロボット10をワーク500から退避させ(ステップS107)、処理を終了する。なお、ステップS105において終了していないと判定された場合には(ステップS105,No)、ステップS105の処理を繰り返す。
【0085】
なお、図8では、塗装作業中には第4軸A4を常に固定する場合を示したが、塗装作業中であっても第4軸A4を意図的に動作させることとしてもよい。たとえば、アッパーアームUAを畳んだ姿勢で第4軸A4を固定して塗装作業を開始し、塗装作業中にそのままの姿勢では遠方にアクセスしにくい場合があったとする。この場合には、第4軸A4の固定を解除してアッパーアームUAを伸ばす向きに第4軸A4を動作させることとしてもよい。また、近方にアクセスしにくい場合には、アッパーアームUAをさらに畳む向きに第4軸A4を動作させることとしてもよい。つまり、塗装作業中であっても、冗長軸をもつ7軸のロボットとして塗装ロボット10を動作させることとしてもよい。
【0086】
上述してきたように、実施形態の一態様に係る塗装ロボット10は、基台10bと、旋回ベース11と、ロアアーム12と、アッパーアームUAと、手首部WUとを備える。基台10bは、設置面ISに固定される。旋回ベース11は、基台10bの上面側に基端側が支持され、鉛直向きに沿う第1軸A1まわりに旋回する。ロアアーム12は、旋回ベース11に基端側が支持され、第1軸A1と垂直な第2軸A2まわりに旋回する。アッパーアームUAは、ロアアーム12の先端側に基端側が支持され、第2軸A2と平行な第3軸A3まわりに旋回する。
【0087】
手首部WUは、アッパーアームUAの先端側に基端側が支持され、先端側にエンドエフェクタEEを取り付け可能な3軸構成である。アッパーアームUAは、基端側の第1アッパーアーム13と、先端側の第2アッパーアーム14とを備える。第2アッパーアーム14は、第1アッパーアーム13の先端側に基端側が支持され、第3軸A3と平行な第4軸A4まわりに旋回するとともに、アーム長が第1アッパーアーム13のアーム長よりも長く、かつ、第1アッパーアーム13のアーム長の2倍よりも短い。
【0088】
このように、塗装ロボット10は、アッパーアームUAを2アーム構成とし、アッパーアームUAに冗長軸である第4軸A4を設けることでアッパーアームUAの屈伸動作を可能とした。そして、第2アッパーアーム14のアーム長を、第1アッパーアーム13のアーム長よりも長く、かつ、2倍よりも短くした。したがって、塗装ロボット10によれば、有効動作範囲を拡張することができ、ワーク500への接近性を向上させることが可能となる。
【0089】
また、実施形態の一態様に係る塗装システム1は、塗装ブース200と、塗装ロボット10とを備える。塗装ロボット10は、ワーク500の搬送向きについてワーク500を挟むように塗装ブース200に少なくとも一対が配置される。一対の塗装ロボット10は、搬送向きに沿う搬送中心面P1に対してお互いに軸構成が対称であり、第1軸A1と搬送中心面P1との距離がお互いに等しい。
【0090】
このように、軸構成が対称な塗装ロボット10を搬送中心面P1についてワーク500を挟んで等距離に配置することで、教示データの再利用が可能となり、教示作業の効率化を図ることができる。また、塗装ロボット10をワーク500の近くに配置することができるので、塗装ブースの小型化に寄与することが可能となる。
【0091】
なお、上述した実施形態では、塗装ロボット10が1つの冗長軸を有する7軸ロボットである場合を例示したが、複数の冗長軸を有する8軸以上のロボットとすることとしてもよい。
【0092】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施例に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 塗装システム
10 塗装ロボット
10b 基台
10c 補助部材
11 旋回ベース
12 ロアアーム
13 第1アッパーアーム
14 第2アッパーアーム
15 第5アーム
16 第6アーム
17 第7アーム
18 線条体
19 支持部
19a 取付部
19b ホルダー部
100 コントローラ
110 制御部
111 タイミング取得部
112 動作制御部
120 記憶部
121 教示情報
200 塗装ブース
201 床面
202 壁面
203 天面
210 搬送装置
500 ワーク
510 ドア
520 テールゲート
A1 第1軸
A2 第2軸
A3 第3軸
A4 第4軸
A5 第5軸
A6 第6軸
A7 第7軸
AS スイング軸
EE エンドエフェクタ
IS 設置面
P P点
SH 貫通孔
UA アッパーアーム
WU 手首部
P1 搬送中心面
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8