(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065981
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】逆流防止構造体
(51)【国際特許分類】
F16K 15/02 20060101AFI20230508BHJP
【FI】
F16K15/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176433
(22)【出願日】2021-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三好 新二
(72)【発明者】
【氏名】神谷 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】野原 秀俊
【テーマコード(参考)】
3H058
【Fターム(参考)】
3H058AA02
3H058BB27
3H058BB34
3H058CA03
3H058CA04
3H058CA06
3H058CA15
3H058CB06
3H058CB13
3H058CC02
3H058CC11
3H058CD05
3H058DD09
(57)【要約】
【課題】弁体の近傍で衝撃波が発生することを抑制する。
【解決手段】逆流防止構造体は、流体が流入する入口流路と、流体が流出する出口流路と、入口流路と出口流路とを連通させる弁体収容室とを有するハウジングと、弁体収容室に配置され、弁体収容室を移動する弁体と、を備える。弁体は、入口流路に流体が流入するときに弁体収容室の内壁面に設けられた開口部を開放し、入口流路に流体が流入しないときには開口部を閉塞させ、出口流路の最小流路断面積は、入口流路の最小流路断面積よりも小さい。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆流防止構造体であって、
流体が流入する入口流路と、前記流体が流出する出口流路と、前記入口流路と前記出口流路とを連通させる弁体収容室とを有するハウジングと、
前記弁体収容室に配置され、前記弁体収容室を移動する弁体と、
を備え、
前記弁体は、前記入口流路に前記流体が流入するときに前記弁体収容室の内壁面に設けられた開口部を開放し、前記入口流路に前記流体が流入しないときには前記開口部を閉塞させ、
前記出口流路の最小流路断面積は、前記入口流路の最小流路断面積よりも小さい、
逆流防止構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、逆流防止構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水素自動車の水素タンクと当該水素タンクに水素ガスを供給するための供給口との間に逆止弁を備える構造体が開示されている。この構造体では、逆止弁に対して供給口側の水素ガスの圧力と逆止弁に対して水素タンク側の水素ガスの圧力との圧力差に応じて逆止弁の弁体が移動することで、水素タンクからの水素ガスの逆流を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献のように流体の逆流を防止するための弁体を備える構造体では、大流量の流体が流入した場合に、弁体の先端部の近傍で衝撃波が発生することがある。弁体の先端部の近傍で衝撃波が発生すると、弁体が加熱されて高温になる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の一形態によれば、逆流防止構造体が提供される。この逆流防止構造体は、流体が流入する入口流路と、前記流体が流出する出口流路と、前記入口流路と前記出口流路とを連通させる弁体収容室とを有するハウジングと、前記弁体収容室に配置され、前記弁体収容室を移動する弁体と、を備える。前記弁体は、前記入口流路に前記流体が流入するときに前記弁体収容室の内壁面に設けられた開口部を開放し、前記入口流路に前記流体が流入しないときには前記開口部を閉塞させ、前記出口流路の最小流路断面積は、前記入口流路の最小流路断面積よりも小さい。
この形態の逆流防止構造体によれば、出口流路の最小流路断面積が入口流路の最小流路断面積よりも小さいので、入口流路から、出口流路のうちの最小流路断面積を有する部分までの間で、流体の流速が超音速になることを抑制できる。そのため、弁体の近傍で衝撃波が発生することを抑制できる。
本開示は、逆流防止構造体以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、レセプタクルや逆止弁などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態の逆流防止構造体の構成を示す第1の断面図。
【
図2】第1実施形態の逆流防止構造体の構成を示す第2の断面図。
【
図3】第1実施形態の逆流防止構造体の構成を示す分解斜視図。
【
図6】第2実施形態の逆流防止構造体の構成を示す断面図。
【
図8】第3実施形態の逆流防止構造体の構成を示す断面図。
【
図9】第4実施形態の逆流防止構造体の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における逆流防止構造体10の構成を示す第1の断面図である。
図2は、第1実施形態における逆流防止構造体10の構成を示す第2の断面図である。
図3は、逆流防止構造体10の構成を示す分解斜視図である。
図4は、
図1におけるIV-IV線断面図である。
図5は、
図1におけるV-V線断面図である。
図1に示すように、本実施形態における逆流防止構造体10は、燃料電池と水素タンクとを搭載した燃料電池車両に設けられたレセプタクルとして構成されている。逆流防止構造体10は、ハウジング20と、逆止弁30とを備えている。
【0009】
ハウジング20は、中心軸CL1を中心とする筒状に構成されている。ハウジング20は、燃料電池車両のボデー15に設けられた開口部に挿入されている。ハウジング20には、固定部材16が固定されており、固定部材16は、ボルト17によってボデー15に固定されている。
【0010】
ハウジング20の一端には、流入口25が設けられており、ハウジング20の他端には、流出口29が設けられている。流入口25は、ボデー15の外側に配置されており、流出口29は、ボデー15の内側に配置されている。流入口25には、水素ステーションに設置されたディスペンサから水素ガスが供給される。流入口25には、ディスペンサのノズルが接続される。ディスペンサのノズルからは、例えば、80MPaに昇圧され、摂氏マイナス40度に冷却された水素ガスが噴射される。流入口25には、流入口25とノズルとの間のシール性を確保するためのOリング19が嵌め込まれている。流出口29には、図示されていない配管を介して水素タンクが接続されている。
【0011】
ハウジング20のうちの流入口25と流出口29との間の部分には、中心軸CL1に沿って、逆止弁収容室27が設けられている。逆止弁収容室27は、逆止弁30を収容するための内部空間を有している。流入口25と逆止弁収容室27との間には、中心軸CL1に沿って、入口絞り部26が設けられている。入口絞り部26は、流入口25と逆止弁収容室27とを連通させている。逆止弁収容室27と流出口29との間には、中心軸CL1に沿って、出口絞り部28が設けられている。出口絞り部28は、逆止弁収容室27と流出口29とを連通させている。
【0012】
図3に示すように、本実施形態では、ハウジング20は、第1筒部材21と第2筒部材22とによって構成されている。第1筒部材21の端部の内壁面には、雌ネジが形成されており、第2筒部材22の端部の外壁面には、雄ネジが形成されている。第1筒部材21および第2筒部材22は、雄ネジと雌ネジとによるネジ締結によって互いに連結されている。本実施形態では、流入口25および入口絞り部26は、第1筒部材21に設けられている。流出口29および出口絞り部28は、第2筒部材22に設けられている。逆止弁収容室27は、第1筒部材21と第2筒部材22とが連結されることによって形成される。第1筒部材21および第2筒部材22は、例えば、ステンレス鋼で形成されている。
【0013】
図4に示すように、本実施形態では、入口絞り部26は、直径d1を有する円形の貫通穴として構成されている。
図5に示すように、本実施形態では、出口絞り部28は、直径d2を有する円形の貫通穴として構成されている。出口絞り部28の直径d2は、入口絞り部26の直径d1よりも小さい。出口絞り部28の長さL2は、出口絞り部28の直径d2の2倍以上である。
【0014】
図1に示すように、逆止弁30は、逆止弁収容室27に配置されている。本実施形態では、逆止弁30は、バルブハウジング40と、弁体50と、弾性部材60と、フィルタ70とを備えている。バルブハウジング40は、中心軸CL2を中心とする筒状に構成されている。バルブハウジング40の中心軸CL2がハウジング20の中心軸CL1に重なるように、バルブハウジング40が逆止弁収容室27に配置されている。なお、バルブハウジング40とハウジング20とを合わせてハウジングと呼ぶことがある。
【0015】
本実施形態では、バルブハウジング40は、第3筒部材41と第4筒部材42とによって構成されている。第3筒部材41の端部の内壁面には、雌ネジが形成されており、第4筒部材42の端部の外壁面には、雄ネジが形成されている。第3筒部材41および第4筒部材42は、雄ネジと雌ネジとによるネジ締結によって互いに連結されている。第3筒部材41および第4筒部材42は、例えば、ステンレス鋼で形成されている。
【0016】
バルブハウジング40には、バルブハウジング40の外径が拡大された拡径部43が設けられている。本実施形態では、拡径部43は、第3筒部材41に設けられている。第1筒部材21の内壁面に設けられた段差部と第2筒部材22の端部とに拡径部43が挟持されることによって、バルブハウジング40がハウジング20に固定されている。バルブハウジング40がハウジング20に固定されている状態では、逆止弁収容室27は、拡径部43によって2つの部屋に仕切られている。以下の説明では、2つの部屋に仕切られた逆止弁収容室27のうちの拡径部43に対して流入口25側の部分のことを第1逆止弁収容室27Aと呼び、逆止弁収容室27のうちの拡径部43に対して流出口29側の部分のことを第2逆止弁収容室27Bと呼ぶ。
【0017】
バルブハウジング40は、第1連通穴45と、弁体収容室46と、第2連通穴47とを有している。第1連通穴45は、バルブハウジング40のうち、流入口25を向く端部に設けられている。第1連通穴45は、中心軸CL2に沿って設けられており、第1逆止弁収容室27Aと弁体収容室46とを連通させている。弁体収容室46は、中心軸CL2に沿って設けられている。弁体収容室46は、弁体50を収容するための内部空間を有している。弁体収容室46の内壁面には、第1連通穴45の開口部を囲むように弁座48が設けられている。第2連通穴47は、バルブハウジング40の側面部に設けられている。本実施形態では、バルブハウジング40には、4つの第2連通穴47が設けられている。各第2連通穴47は、バルブハウジング40の周方向に沿って等間隔に配置されている。各第2連通穴47は、バルブハウジング40の中心軸CL2から遠ざかるほど第1連通穴45から遠ざかるように、斜めに設けられている。各第2連通穴47は、弁体収容室46と第2逆止弁収容室27Bとを連通させている。
【0018】
弁体50は、弁体収容室46に配置されている。弁体50は、軸状部材である。弁体50の先端部51は、第1連通穴45に向けられている。本実施形態では、弁体50の先端部51は、略円錐状に構成されており、弁体50の後端部52は、円柱状に構成されている。弁体50は、バルブハウジング40の中心軸CL2に沿って弁体収容室46を移動する。本実施形態では、弁体50は、樹脂材料で形成されている。なお、他の実施形態では、弁体50は、樹脂材料ではなく、例えば、ステンレス鋼などの金属材料で形成されてもよい。
【0019】
弾性部材60は、弁体収容室46に配置されている。弾性部材60は、バルブハウジング40の中心軸CL2に沿って伸縮する。弾性部材60は、弁体50を弁座48に向けて付勢している。本実施形態では、弾性部材60は、圧縮コイルバネである。弾性部材60の一端は、弁体50の先端部51と後端部52との間の段差面に接触しており、弾性部材60の他端は、第4筒部材42の端部に設けられた底面に接触している。第4筒部材42の底面には、当該底面を貫通する呼吸穴49が設けられている。呼吸穴49は、弁体収容室46のうちの弁体50の後方の空間と第2逆止弁収容室27Bとを連通させている。
【0020】
フィルタ70は、バルブハウジング40のうち、第1連通穴45を有する端部に連結されている。本実施形態では、フィルタ70は、フィルタ支持部71とフィルタ本体部72とによって構成されている。フィルタ支持部71は、フィルタ本体部72を支持する骨格部材である。フィルタ支持部71の内部には、第1逆止弁収容室27Aと第1連通穴45とを連通させるフィルタ内部流路75が設けられている。フィルタ内部流路75は、フィルタ支持部71の側面部に複数の開口部を有している。フィルタ本体部72は、フィルタ支持部71の側面部に設けられたフィルタ内部流路75の開口部を覆うように配置されている。フィルタ本体部72は、例えば、ステンレス鋼などの金属材料で形成されたメッシュフィルタである。フィルタ本体部72は、水素ガスに含まれる異物を捕集する。なお、フィルタ本体部72は、樹脂材料で形成されてもよい。
【0021】
図1に示すように、ディスペンサから流入口25に水素ガスが供給されていないときには、弁体50の先端部51が弁座48に接触しているので、弁体収容室46の内壁面に設けられた第1連通穴45の開口部が閉塞されている。
【0022】
ディスペンサから流入口25への水素ガスの供給が開始されると、流入口25からハウジング20内に流入した水素ガスは、入口絞り部26を介して、第1逆止弁収容室27Aに流れる。第1逆止弁収容室27Aに流入した水素ガスは、フィルタ内部流路75を介して、第1連通穴45に流れる。弁体50の先端部51から後端部52に向かって第1連通穴45の水素ガスが弁体50を押す力が、弁体50の後端部52から先端部51に向かって弾性部材60と弁体50の後方の水素ガスとが弁体50を押す力を上回ると、
図2に示すように、弁体50の先端部51が弁座48から離れる。弁体50の先端部51が弁座48から離れることによって弁体収容室46の内壁面に設けられた第1連通穴45の開口部が開放され、弁体50の先端部51と弁座48との隙間を介して弁体収容室46に水素ガスが流入する。弁体収容室46に流入した水素ガスは、第2連通穴47と、第2逆止弁収容室27Bと、出口絞り部28とをこの順に流れて、流出口29からハウジング20外に流出する。流出口29からハウジング20外に流出した水素ガスは、配管を流れて、水素タンクに貯蔵される。
【0023】
ディスペンサからの水素ガスの供給が停止されて、第1連通穴45の水素ガスが弁体50の先端部51から後端部52に向かって弁体50を押す力が、弁体50の後端部52から先端部51に向かって弾性部材60と弁体50の後方の水素ガスとが弁体50を押す力を下回ると、
図1に示すように、弁体50の先端部51が弁座48に接触する。弁体50の先端部51が弁座48に接触することによって、弁体収容室46の内壁面に設けられた第1連通穴45の開口部が閉塞される。そのため、水素タンクや配管から流入口25に水素ガスが逆流することが抑制される。
【0024】
以下の説明では、流入口25から弁体収容室46の内壁面に設けられた第1連通穴45の開口部までの水素ガスの流路のことを入口流路101と呼び、弁体収容室46の内壁面に設けられた第2連通穴47の開口部から流出口29までの水素ガスの流路のことを出口流路102と呼ぶ。入口流路101には、入口絞り部26、第1逆止弁収容室27A、フィルタ内部流路75、および、第1連通穴45が含まれる。出口流路102には、第2連通穴47、第2逆止弁収容室27B、および、出口絞り部28が含まれる。
【0025】
本実施形態では、出口流路102の最小流路断面積A2は、入口流路101の最小流路断面積A1よりも小さい。入口流路101の最小流路断面積A1とは、入口流路101のうちの流路断面積が最も小さい部分の流路断面積のことを意味する。出口流路102の最小流路断面積A2とは、出口流路102のうちの流路断面積が最も小さい部分の流路断面積のことを意味する。本実施形態では、入口流路101のうちの流路断面積が最も小さい部分は、入口絞り部26であり、出口流路102のうちの流路断面積が最も小さい部分は、出口絞り部28である。入口流路101の最小流路断面積A1は、入口絞り部26の直径d1を用いて、下式(1)で表される。出口流路102の最小流路断面積A2は、出口絞り部28の直径d2を用いて、下式(2)で表される。
A1=π×d12/4・・・(1)
A2=π×d22/4・・・(2)
なお、本実施形態では、逆止弁30が全開状態のとき、つまり、弁体50の先端部51と弁座48との隙間の大きさが最大になるとき、弁体50の先端部51と弁座48との隙間の流路断面積は、出口流路102の最小流路断面積A2よりも大きい。他の実施形態では、入口流路101のうちの流路断面積が最も小さい部分が第1連通穴45になるように逆止弁30が構成されてもよい。また、入口絞り部26の流路断面積と第1連通穴45の粒度断面積とが同じになるように逆止弁30が構成されてもよい。
【0026】
以上で説明した本実施形態における逆流防止構造体10によれば、出口流路102の最小流路断面積A2が入口流路101の最小流路断面積A1よりも小さいので、出口流路102のうちの最小流路断面積A2を有する出口絞り部28よりも上流での水素ガスの圧力低下を抑制できる。そのため、流入口25から出口絞り部28までの間で、水素ガスの流速が超音速になることを抑制できる。したがって、流入口25から大流量の水素ガスが供給されたときに弁体50の近傍で衝撃波が発生することを抑制できる。衝撃波の発生が抑制されることによって、衝撃波を通過して高温になった水素ガスにより弁体50が加熱されることを抑制できるので、逆止弁30の耐久性を高めることができる。
【0027】
また、本実施形態では、入口絞り部26は、1つの貫通穴として構成されているので、簡単にハウジング20に入口絞り部26を形成できる。さらに、本実施形態では、出口絞り部28は、1つの貫通穴として構成されているので、簡単にハウジング20に出口絞り部28を形成できる。
【0028】
また、本実施形態では、出口絞り部28の長さL2は、出口絞り部28の直径d2の2倍以上である。そのため、出口絞り部28よりも上流での水素ガスの圧力低下を効果的に抑制できる。
【0029】
B.第2実施形態:
図6は、第2実施形態における逆流防止構造体10bの構成を示す断面図である。
図7は、
図6におけるVII-VII線断面図である。第2実施形態における逆流防止構造体10bでは、ハウジング20bの第2筒部材22bに設けられた出口絞り部28bが複数の貫通穴で構成されていることが第1実施形態とは異なる。その他の構成については、特に説明しない限り、第1実施形態と同じである。
【0030】
図7に示すように、本実施形態では、出口絞り部28bは、4つの円形の貫通穴で構成されている。出口絞り部28bの各貫通穴は、互いに同じ直径d3を有している。出口絞り部28bの貫通穴の直径d3は、入口絞り部26の貫通穴の直径d1よりも小さい。なお、本実施形態の出口絞り部28bの貫通穴の直径d3は、
図5に示した第1実施形態の出口絞り部28の貫通穴の直径d2よりも小さい。
【0031】
図6に示すように、出口絞り部28bの各貫通穴は、ハウジング20bの中心軸CL2に沿って設けられている。出口絞り部28bの各貫通穴は、第2逆止弁収容室27Bと流出口29とを連通させている。出口絞り部28bの各貫通穴は、互いに同じ長さL3を有している。出口絞り部28bの貫通穴の長さL3は、貫通穴の直径d3の2倍以上である。なお、本実施形態の出口絞り部28bの貫通穴の長さL3は、
図1に示した第1実施形態の出口絞り部28の貫通穴の長さL2よりも短い。
【0032】
本実施形態では、出口流路102bのうちの流路断面積が最小の部分は、出口絞り部28bである。出口流路102bの最小流路断面積A3は、出口絞り部28bの貫通孔の直径d3を用いて、下式(3)で表される。
A3=4×π×d32/4・・・(3)
なお、本実施形態では、逆止弁30が全開状態のとき、つまり、弁体50の先端部51と弁座48との隙間の大きさが最大になるとき、弁体50の先端部51と弁座48との隙間の流路断面積は、出口流路102bの最小流路断面積A3よりも大きい。
【0033】
以上で説明した本実施形態における逆流防止構造体10bによれば、出口絞り部28bが4つの貫通穴で構成されているので、出口流路102bのうちの最小流路断面積A3を有する出口絞り部28bよりも上流での水素ガスの圧力低下を効果的に抑制できる。そのため、弁体50の近傍で衝撃波が発生することを効果的に抑制できる。また、出口絞り部28bよりも上流での水素ガスの圧力低下を抑制するためには、出口絞り部28bの各貫通穴の長さL3が出口絞り部28bの各貫通穴の直径d3の2倍以上であることが好ましい。本実施形態では、出口絞り部28bの各貫通穴の直径d3は、第1実施形態の出口絞り部28の貫通穴の直径d2よりも小さいので、出口絞り部28bの各貫通穴の長さL3を出口絞り部28bの各貫通穴の直径d3の2倍以上確保しつつ、出口絞り部28bの各貫通穴の長さL3を第1実施形態の出口絞り部28の長さL2よりも短くできる。そのため、出口絞り部28bの各貫通穴の長さL3を短くすることで、ハウジング20bを小型化できる。
【0034】
C.第3実施形態:
図8は、第3実施形態における逆流防止構造体10cの構成を示す断面図である。第3実施形態における逆流防止構造体10cでは、逆止弁30cの弁体50cの形状が第1実施形態とは異なる。その他の構成については、特に説明しない限り、第1実施形態と同じである。
【0035】
本実施形態では、弁体50cは、先端部51のうちの第1連通穴45を向く面の中央に平坦面55を有している。平坦面55の形状は、中心軸CL2を中心とする円形である。平坦面55の直径dvは、第1連通穴45の直径diよりも大きい。
【0036】
以上で説明した本実施形態における逆流防止構造体10cによれば、弁体50cの先端部51に平坦面55が設けられているので、弁体50cの先端部51の近傍を水素ガスがプラントル・マイヤー流れとして通過する。そのため、弁体50cの先端部51の近傍で衝撃波が発生することを効果的に抑制できる。なお、本実施形態と第2実施形態とが組み合わされてもよい。つまり、逆流防止構造体10cは、弁体50cの先端部51に平坦面55を有するとともに、
図6に示した出口絞り部28bを有してもよい。
【0037】
D.第4実施形態:
図9は、第4実施形態における逆流防止構造体10dの構成を示す断面図である。第4実施形態における逆流防止構造体10dでは、逆止弁30dの弁体50dの形状が第1実施形態とは異なる。その他の構成については、特に説明しない限り、第1実施形態と同じである。
【0038】
本実施形態では、弁体50dは、先端部51のうちの第1連通穴45を向く面の中央に凹部56を有している。凹部56の表面は、弁体50dの先端部51から後端部52に向かって窪んでいる。
【0039】
以上で説明した本実施形態における逆流防止構造体10dによれば、弁体50dの先端部51に凹部56が設けられているので、弁体50dの先端部51の近傍を水素ガスがプラントル・マイヤー流れとして通過する。そのため、弁体50dの先端部51の近傍で衝撃波が発生することを効果的に抑制できる。なお、本実施形態と第2実施形態とが組み合わされてもよい。つまり、逆流防止構造体10dは、弁体50dの先端部51のうちの第1連通穴45を向く面の中央に凹部56を有するとともに、
図6に示した出口絞り部28bを有してもよい。
【0040】
E.他の実施形態:
(E1)上述した各実施形態の逆流防止構造体10~10dは、燃料電池車両の水素タンクに水素ガスを供給するためのレセプタクルとして構成されている。これに対して、逆流防止構造体10~10dは、LPG(Liquid Petroleum Gas)車両のLPGタンクにLPGを供給するためのレセプタクルとして構成されてもよい。逆流防止構造体10~10dは、レセプタクルではなく、例えば、レセプタクルと対になるプラグとして構成されてもよい。あるいは、逆流防止構造体10~10dは、燃料電池車両の水素タンクの口金に設けられた逆止弁を含む構造体として構成されてもよい。逆流防止構造体10~10dは、車両以外の移動体に設けられてもよい。例えば、船舶や航空機に逆流防止構造体10~10dが設けられてもよい。
【0041】
(E2)上述した各実施形態の逆流防止構造体10~10dでは、出口絞り部28,28bの長さL2,L3は、出口絞り部28,28bの貫通穴の直径d2,d3の2倍以上である。これに対して、出口絞り部28,28bの長さL2,L3は、出口絞り部28,28bの貫通穴の直径d2,d3の2倍未満でもよい。
【0042】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
10~10d…逆流防止構造体、15…ボデー、16…固定部材、17…ボルト、19…Oリング、20,20b…ハウジング、21…第1筒部材、22,22b…第2筒部材、25…流入口、26…入口絞り部、27…弁収容室、28,28b…出口絞り部、29…流出口、30,30c,30d…逆止弁、40…バルブハウジング、41…第3筒部材、42…第4筒部材、43…拡径部、45…第1連通穴、46…弁体収容室、47…第2連通穴、48…弁座、49…呼吸穴、50,50c,50d…弁体、51…先端部、52…後端部、55…平坦面、56…凹部、60…弾性部材、70…フィルタ、71…フィルタ支持部、72…フィルタ本体部、75…フィルタ内部流路、101…入口流路、102,102b…出口流路