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特開2023-66046ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤及びその製造方法と応用、石炭の自然発火防止方法、消火方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066046
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤及びその製造方法と応用、石炭の自然発火防止方法、消火方法
(51)【国際特許分類】
   A62D 1/00 20060101AFI20230508BHJP
   C09K 21/14 20060101ALI20230508BHJP
   C09K 21/08 20060101ALI20230508BHJP
   C09K 21/02 20060101ALI20230508BHJP
   C09K 21/04 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
A62D1/00
C09K21/14
C09K21/08
C09K21/02
C09K21/04
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176536
(22)【出願日】2021-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】520152940
【氏名又は名称】河南理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】潘 栄▲昆▼
(72)【発明者】
【氏名】李 祥臣
(72)【発明者】
【氏名】晁 江坤
(72)【発明者】
【氏名】黄 麗慧
(72)【発明者】
【氏名】賈 海林
(72)【発明者】
【氏名】湯 文韜
(72)【発明者】
【氏名】于 水軍
(72)【発明者】
【氏名】馬 鴻雁
【テーマコード(参考)】
2E191
4H028
【Fターム(参考)】
2E191AA10
2E191AB12
2E191AB13
2E191AB22
2E191AB32
4H028AA01
4H028AA25
4H028AA41
(57)【要約】
【課題】石炭の自然発火防止に優れた性能を有するハイドロゲル空気遮断防消火薬剤及びその製造方法及び応用、石炭の自然発火防止方法、消火方法を提供する。
【解決手段】ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤は、以下の質量パーセント含量の成分を含む:2~5%のフルオロカーボン界面活性剤、8~35%の水素炭素含有界面活性剤、0.1~1%の有機粘性樹脂、8~28%の無機耐燃剤、0.1~2%の展着剤、0.5~3.5%の膜形成剤、1~5%の安定剤、0.8~3.5%の難燃助剤、2.5~5.5%の凝固促進剤及び残部の水。有機粘性樹脂はキサンタンガム、グアーガム、アルギン酸ナトリウムのうち1種以上を含む。このようなハイドロゲル空気遮断防消火薬剤は粘度が高く、一般的なゲル材が有する技術的な欠点を克服できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2~5%のフルオロカーボン界面活性剤、8~35%の水素炭素含有界面活性剤、0.1~1%の有機粘性樹脂、8~28%の無機耐燃剤、0.1~2%の展着剤、0.5~3.5%の膜形成剤、1~5%の安定剤、0.8~3.5%の難燃助剤、2.5~5.5%の凝固促進剤及び残りの水、
上記の質量パーセント含量の成分であり、
前記有機粘性樹脂はキサンタンガム、グアーガム及びアルギン酸ナトリウムのうち1種以上を含むハイドロゲル空気遮断防消火薬剤。
【請求項2】
2.5~4%のフルオロカーボン界面活性剤、15~25%の水素炭素含有界面活性剤、0.3~0.8%の有機粘性樹脂、10~25%の無機耐燃剤、0.5~1%の展着剤、1~3%の膜形成剤、2~4%の安定剤、1.5~3%の難燃助剤、3~5%の凝固促進剤及び残りの水、
上記の質量パーセント含量の成分であることを特徴とする請求項1に記載のハイドロゲル空気遮断防消火薬剤。
【請求項3】
前記無機耐燃剤は尿素、塩化ナトリウム及び塩化バリウムのうち1種以上を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のハイドロゲル空気遮断防消火薬剤。
【請求項4】
前記難燃助剤はリン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム及び炭酸アンモニウムのうち1種以上を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のハイドロゲル空気遮断防消火薬剤。
【請求項5】
前記凝固促進剤は硫酸第一鉄、硫酸アルミニウム及び硫酸マグネシウムのうち1種以上を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のハイドロゲル空気遮断防消火薬剤。
【請求項6】
前記膜形成剤はn-ブチルアルコール及び/又はイソブタノールを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のハイドロゲル空気遮断防消火薬剤。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の製造方法であって、
水と安定剤とを混合し、安定剤水溶液を得る手順と、
前記安定剤水溶液、難燃助剤、有機粘性樹脂、無機耐燃剤、展着剤、膜形成剤及び凝固促進剤を混合し、混合溶液を得る手順と、
前記混合溶液、フルオロカーボン界面活性剤及び水素炭素含有界面活性剤を混合し、前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤を得る手順と、
を含むことを特徴とするハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の石炭の自然発火防止又は消火における応用。
【請求項9】
請求項1~6のいずれかに記載のハイドロゲル空気遮断防消火薬剤又は請求項7に記載の製造方法によって得たハイドロゲル空気遮断防消火薬剤を石炭表面に吹き付けた後、乾燥させる手順を含み、
前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の吹き付け量は30~150L/mであることを特徴とする石炭の自然発火防止方法。
【請求項10】
請求項1~6のいずれかに記載のハイドロゲル空気遮断防消火薬剤又は請求項7に記載の製造方法によって得たハイドロゲル空気遮断防消火薬剤と水とを混合し、ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の混合スラリーを得る手順と、
発火エリアで穿孔した後、グラウトポンプで前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の混合スラリーを穿孔ポンプから発火エリアに送る手順と、
を含み、
前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤と水との質量比は1:(100~200)であることを特徴とする消火方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消火薬剤の製造技術分野に属し、特にハイドロゲル空気遮断防消火薬剤及びその製造方法と応用、石炭の自然発火防止方法、消火方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭は国家の基礎エネルギーの一つとして、各業界の急速な発展のために巨大なエネルギーを提供しているが、石炭の生産と管理の過程では、例えば石炭の自然発火、ガス爆発、石炭やガスの突出及び山はねなど、避けがたく事故が発生する。その中で、石炭の自然発火は石炭の採掘と貯蔵過程の重大な事故の一つであり、石炭の自然発火による火災は、大量の石炭資源の損失と凍結を招き、巨大な経済損失をもたらすだけでなく、ガスや煤塵の爆発を引き起こし、鉱坑や設備を破壊し、有毒有害ガスを発生させ、炭鉱労働者の心身の健康を害し、大気環境を汚染し、地表の植生を破壊し、地面の陥没を引き起こす。
【0003】
現在、石炭の自然発火防止方法には主にスラリー注入、不活性ガス、ゲル、負触媒などがある。その中で、ゲルは優れた吸水性、保水性及び高温安定性などの特徴を持っているため、鉱坑の防消火に広く応用されている。従来の技術において、よく使われる一般的な泡沫ゲル技術は、ハイドロゲルに添加剤(例えば泡形成剤)を加え、窒素(又は圧縮空気)と均一的に混合し泡沫を形成させた後、さらにゆっくりとゲルを形成させるが、生成されたゲルの粘度は小さく、一般に5.5×10-3~9.8×10-3Pa・sであるため、石炭の空気中での貯蔵で水分の揮発、収縮、乾燥によるき裂、粉化などが起こりやすいという技術的欠陥をもたらし、さらには一般的な泡沫ゲルによる石炭の自然発火防止という効果がこれに伴って消失する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに鑑み、本発明はハイドロゲル空気遮断防消火薬剤及びその製造方法と応用、石炭の自然発火防止方法、消火方法を提供することを目的とする。本発明が提供するハイドロゲル空気遮断防消火薬剤は粘度が高く、従来技術において一般的な泡沫ゲル薬剤に存在する水分の揮発、収縮、乾燥によるき裂、粉化などが起こりやすいという技術的な欠陥を克服することができ、石炭の自然発火を防止する優れた性能を持っている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の発明目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決手段を提供する。
本発明はハイドロゲル風通し防止用消火材を提供する。以下の質量パーセント含量の成分を含む。
【0006】
2~5%のフルオロカーボン界面活性剤、8~35%の水素炭素含有界面活性剤、0.1~1%の有機粘性樹脂、8~28%の無機耐燃剤、0.1~2%の展着剤、0.5~3.5%の膜形成剤、1~5%の安定剤、0.8~3.5%の難燃助剤、2.5~5.5%の凝固促進剤及び残りの水。
【0007】
前記有機粘性樹脂はキサンタンガム、グアーガム、アルギン酸ナトリウムのうち1種以上を含む。
好ましくは、前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤は、以下の質量パーセント含量の成分を含む:
【0008】
2.5~4%のフルオロカーボン界面活性剤、15~25%の水素炭素含有界面活性剤、0.3~0.8%の有機粘性樹脂、10~25%の無機耐燃剤、0.5~1%の展着剤、1~3%の膜形成剤、2~4%の安定剤、1.5~3%の難燃助剤、3~5%の凝固促進剤及び残りの水。
【0009】
好ましくは、前記無機耐燃剤は尿素、塩化ナトリウム及び塩化バリウムのうち1種以上を含む。
【0010】
好ましくは、前記難燃助剤はリン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム及び炭酸アンモニウムのうち1種以上を含む。
【0011】
好ましくは、前記凝固促進剤は硫酸第一鉄、硫酸アルミニウム及び硫酸マグネシウムのうち1種以上を含む。
好ましくは、前記膜形成剤はn-ブチルアルコール及び/又はイソブタノールを含む。
【0012】
好ましくは、前記安定剤は安息香酸ナトリウム及び/又はソルビン酸カリウムを含む。
本発明はさらに、上記技術的解決手段における前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の製造方法を提供する。以下の手順を含む。
【0013】
水と安定剤を混合し、安定剤水溶液を得る。
前記安定剤水溶液、難燃助剤、有機粘性樹脂、無機耐燃剤、展着剤、膜形成剤及び凝固促進剤を混合し、混合溶液を得る。
【0014】
前記混合溶液、フルオロカーボン界面活性剤、水素炭素含有界面活性剤を混合し、前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤を得る。
【0015】
本発明はさらに、上記技術的解決手段における前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の石炭の自然発火防止又は消火への応用を提供する。
本発明はさらに、石炭の自然発火防止方法を提供する。以下の手順を含む。
【0016】
上記技術的解決手段における前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤又は上記技術的解決手段における前記製造方法により製造されたハイドロゲル空気遮断防消火薬剤を石炭表面に吹き付けた後、乾燥させる。
【0017】
前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の吹き付け量は石炭層の空隙率と関係があり、同じ体積の石炭層であっても、空隙率の大きい石炭層の注入量は大きくなり、一般に30~150L/mである。
本発明はさらに、消火方法を提供する。以下の手順を含む。
【0018】
上記技術的解決手段における前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤又は上記技術的解決手段における前記製造方法により製造されたハイドロゲル空気遮断防消火薬剤と水を混合し、ハイドロゲル空気遮断防消火薬材の混合スラリーを得る。前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤と水との質量比は1:(100~200)である。
【0019】
発火エリアで穿孔した後、グラウトポンプで前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の混合スラリーを穿孔ポンプから発火エリアに送る。
【0020】
本発明が提供するハイドロゲル空気遮断防消火薬剤は、質量パーセント含量で、2~5%のフルオロカーボン界面活性剤、8~35%の水素炭素含有界面活性剤、0.1~1%の有機粘性樹脂、8~28%の無機耐燃剤、0.1~2%の展着剤、0.5~3.5%の膜形成剤、1~5%の安定剤、0.8~3.5%の難燃助剤、2.5~5.5%の凝固促進剤及び残りの水を成分とし、前記有機粘性樹脂はキサンタンガム、グアーガム、アルギン酸ナトリウムのうち1種以上を含む。
【0021】
本発明は有機粘性樹脂を添加することにより、ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の粘度を効果的に高め、ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤を、石炭の自然発火防止過程において石炭表面に付着させ、さらに石炭表面に高水分付着層を形成させ、該高水分付着層が一方では石炭と空気との接触を阻止し、酸素遮断による良好な窒息作用を果たし、もう一方では優れた吸熱・降温効果を備えることで、石炭の酸化・昇温を抑制することができる。本発明において、フルオロカーボン界面活性剤と水素炭素含有界面活性剤は水の界面張力を大幅に引き下げることができ、これによりハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の石炭に対するぬれ性を高め、ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の石炭(壁)への付着力を一段と向上させ、石炭に対して高い包み込み効果をもたらすことにもプラスとなり、石炭に対するハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の比表面積を大きくし、他の成分を配合することにより、無機耐燃剤による吸熱効果の向上、難燃助剤による難燃効果の向上が促進され、各成分が相乗的に作用することにより、ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤は優れた石炭の自然発火防止性能を備えるようになり、空気中での貯蔵で水分の揮発、収縮、乾燥によるき裂、粉化等の現象が起こりにくくなる。
【0022】
本発明が提供するハイドロゲル空気遮断防消火薬剤は極めて安定した性能を持ち、無味無臭で、長期間保存しても腐敗せず、人体に無害で、保存・貯蔵しやすい。
【発明の効果】
【0023】
さらに、本発明が提供するハイドロゲル空気遮断防消火薬剤は優れた分散性を備え、汎用性が高く、微細黄砂、フライアッシュ、炭酸カルシウム、ベントナイト、カオリン、タルク、軽質炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、リン酸塩などの無機岩粉に対しても優れた分散性を備える。形成されるハイドロゲルスラリーのブリーディング率は低く、コンクリートに対する防火・消火性能は大幅に向上する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明はハイドロゲル空気遮断防消火薬剤を提供する。以下の質量パーセント含量の成分を含む。
【0025】
2~5%のフルオロカーボン界面活性剤、8~35%の水素炭素含有界面活性剤、0.1~1%の有機粘性樹脂、8~28%の無機耐燃剤、0.1~2%の展着剤、0.5~3.5%の膜形成剤、1~5%の安定剤、0.8~3.5%の難燃助剤、2.5~5.5%の凝固促進剤及び残りの水。
【0026】
本発明において、別途説明のない限り、使用される原料は当分野向けに一般的に市販されている製品である。
【0027】
本発明において、前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤は、質量パーセント含量で2~5%のフルオロカーボン界面活性剤を含む。好ましくは2.5~4%で、さらに好ましくは3%である。本発明において、前記フルオロカーボン界面活性剤は、デュポン又はBASFから購入することが好ましい。
【0028】
本発明において、前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤は、質量パーセント含量で8~35%の水素炭素含有界面活性剤を含む。好ましくは15~25%で、さらに好ましくは20%である。本発明において、前記水素炭素含有界面活性剤はα-オレフィンスルホン酸ナトリウム(AOS)、脂肪族アルキルエーテル硫酸ナトリウム(AES)及びドデシル硫酸ナトリウム(K-12)のうち1種以上を含むことが好ましい。
【0029】
本発明において、フルオロカーボン界面活性剤と水素炭素含有界面活性剤は水の界面張力を大幅に引き下げることができ、これによりハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の石炭に対するぬれ性を高め、ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の石炭(壁)への付着力を一段と向上させる。
【0030】
本発明において、前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤は、質量パーセント含量で0.1~1%の有機粘性樹脂を含む。好ましくは0.3~0.8%で、さらに好ましくは0.6%である。本発明において、前記有機粘性樹脂はキサンタンガム、グアーガム及びアルギン酸ナトリウムのうち1種以上を含み、前記有機粘性樹脂が好ましくはキサンタンガムとグアーガムとの混合物である場合、前記キサンタンガムとグアーガムとの質量比は(1~10):(1~10)であることが好ましい。
【0031】
前記有機粘性樹脂が所望によりキサンタンガムとアルギン酸ナトリウムとの混合物である場合、前記キサンタンガムとアルギン酸ナトリウムとの質量比は(1~10):(1~10)であることが好ましい。前記有機粘性樹脂が所望によりグアーガムとアルギン酸ナトリウムとの混合物である場合、前記グアーガムとアルギン酸ナトリウムとの質量比は(1~10):(1~10)であることが好ましい。前記有機粘性樹脂が所望によりキサンタンガム、グアーガム及びアルギン酸ナトリウムの混合物である場合、前記キサンタンガム、グアーガム及びアルギン酸ナトリウムとの質量比は(1~10):(1~10):(1:10)であることが好ましい。
本発明は、有機粘性樹脂を添加することにより、ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の粘度を効果的に高め、ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤を実際の消火過程において石炭表面に付着させ、さらに石炭表面に高水分付着層を形成させ、該高水分付着層が一方では石炭と空気との接触を阻止し、酸素遮断による良好な窒息作用を果たし、もう一方では優れた吸熱・降温効果を備えることで、石炭の酸化・昇温を抑制することができる。
【0032】
本発明において、前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤は、質量パーセント含量で8~28%の無機耐燃剤を含む。好ましくは10~25%で、さらに好ましくは15~20%である。本発明において、前記無機耐燃剤は尿素、塩化ナトリウム及び塩化バリウムのうち1種以上を含むことが好ましい。該成分は薬剤の比熱容量を大きくし、薬剤の吸熱性を向上させ、薬剤の昇温速度を抑制し、これによりハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の耐燃性を向上させる。
【0033】
本発明において、前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤は、質量パーセント含量で0.1~2%の展着剤を含む。好ましくは0.5~1%で、さらに好ましくは0.8%である。本発明において、前記展着剤はポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル-10(OP-10)及び/又はスパン80を含むことが好ましく、これにより薬剤と石炭との間のぬれ性を高め、薬剤の石炭への付着効果をさらに良くし、ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の石炭表面における高水分付着層の形成を促進することができる。
【0034】
本発明において、前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤は、質量パーセント含量で0.5~3.5%の膜形成剤を含む。好ましくは1~3%で、さらに好ましくは2%である。本発明において、前記膜形成剤はn-ブチルアルコール及び/又はイソブタノールを含むことが好ましく、これにより水膜の厚さを増加させることができる。
【0035】
本発明において、前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤は、質量パーセント含量で1~5%の安定剤を含む。好ましくは2~4%で、さらに好ましくは3%である。本発明において、前記安定剤は安息香酸ナトリウム及び/又はソルビン酸カリウムを含むことが好ましく、これにより材料の品質安定性を向上させ、貯蔵中に性能が変化しないようにすることができる。
【0036】
本発明において、前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤は、質量パーセント含量で0.8~3.5%の難燃助剤を含む。好ましくは1.5~3%で、さらに好ましくは2.5%である。本発明において、前記難燃助剤はリン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム及び炭酸アンモニウムのうち1種以上を含むことが好ましく、これによりハイドロゲル空気遮断防消火薬剤全体において耐燃剤を助け、難燃効果を高めることができる。
【0037】
本発明において、前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤は、質量パーセント含量で2.5~5.5%の凝固促進剤を含む。好ましくは3~5%で、さらに好ましくは4%である。本発明において、前記凝固促進剤は硫酸第一鉄、硫酸アルミニウム及び硫酸マグネシウムのうち1種以上を含むことが好ましく、これにより金属イオンの高原子価状態を利用してハイドロゲル空気遮断防消火薬剤におけるハイドロゲルの形成を促進する。本発明により形成されたハイドロゲルは含水率が高く、水の揮発速度が小さく、温度引き下げ・制御性能が高く、ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の防消火効果を高めることができる。
【0038】
本発明において、前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤は残りの水を含む。
本発明はさらに、上記技術的解決手段における前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の製造方法を提供する。以下の手順を含む。
水と安定剤を混合し、安定剤水溶液を得る。
【0039】
前記安定剤水溶液、難燃助剤、有機粘性樹脂、無機耐燃剤、展着剤、膜形成剤及び凝固促進剤を混合し、混合溶液を得る。
前記混合溶液、フルオロカーボン界面活性剤、水素炭素含有界面活性剤を混合し、前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤を得る。
【0040】
本発明は、水と安定剤を1番目に混合し、安定剤水溶液を得る。本発明において、前記1番目の混合の回転速度は400r/minであることが好ましい。本発明は前記1番目の混合の方式について特に限定しない。当業者の熟知する混合方式を採用すればよく、本発明の具体的な実施例においては撹拌することが好ましい。
【0041】
安定剤水溶液を得た後、本発明は前記安定剤水溶液、難燃助剤、有機粘性樹脂、無機耐燃剤、展着剤、膜形成剤及び凝固促進剤を2番目に混合し、混合溶液を得る。本発明において、前記2番目の混合の回転速度は400r/minであることが好ましい。前記2番目の混合の時間は1hであることが好ましい。本発明は前記2番目の混合の方式について特に限定しない。当業者が熟知する混合方式を採用すればよく、本発明の具体的な実施例においては撹拌することが好ましい。
【0042】
この混合溶液を得た後、本発明は前記混合溶液、フルオロカーボン界面活性剤と水素炭素含有界面活性剤を3番目に混合し、前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤を得る。本発明において、前記3番目の混合の回転速度は100r/minであることが好ましい。前記3番目の混合の時間は20minであることが好ましい。本発明は前記3番目の混合の方式について特に限定しない。当業者が熟知する混合方式を採用すればよく、本発明の具体的な実施例においては撹拌することが好ましい。
【0043】
本発明が提供するハイドロゲル空気遮断防消火薬剤は粘度が高く、粒子の沈降を引き下げ、粒子の浮遊性を高めることができ、ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤には優れた
分散性を備え、汎用性が高く、微細黄砂、フライアッシュ、炭酸カルシウム、ベントナイト、カオリン、タルク、軽質炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、リン酸塩などの無機岩粉に対しても優れた分散性を備える。形成されたハイドロゲルスラリーのブリーディング率は低く、コンクリートに対する防火・消火性能は大幅に向上する。
【0044】
本発明はさらに、上記技術的解決手段における前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の石炭の自然発火防止又は消火への応用を提供する。
本発明はさらに、石炭の自然発火防止方法を提供する。以下の手順を含む。
【0045】
上記技術的解決手段における前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤又は上記技術的解決手段における前記製造方法により製造されたハイドロゲル空気遮断防消火薬剤を石炭表面に吹き付けた後、乾燥させる。
【0046】
本発明において、前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の吹き付け量は30~150L/mであり、実際の必要に応じて前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の吹き付け量を決定することがさらに好ましい。本発明は穿孔グラウト注入方法で前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤を吹き付けることが好ましく、グラウト注入中に孔近傍のグラウト抜け現象が発生した場合には、グラウト注入を停止することがさらに好ましい。
本発明は前記乾燥方法について特に限定しない。吹き付け後の石炭を乾燥できればよい。
本発明はさらに、消火方法を提供する。以下の手順を含む。
【0047】
上記技術的解決手段における前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤又は上記技術的解決手段における前記製造方法により製造されたハイドロゲル空気遮断防消火薬剤を水と混合し、ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の混合スラリーを得る。
発火エリアで穿孔した後、グラウトポンプで前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の混合スラリーを穿孔ポンプから発火エリアに送る。
【0048】
上記技術的解決手段における前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤又は上記技術的解決手段における前記製造方法により製造されたハイドロゲル空気遮断防消火薬剤を水と混合し、ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の混合スラリーを得る。
【0049】
本発明において、前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤と水の質量比は1:(100~200)であり、好ましくは1:(120~180)で、さらに好ましくは1:150である。本発明において、ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤は実際の応用過程において、使用量が少なく、コストが低く、起泡性が低く、混合する過程で泡の発生が少なく、粘度が高く、展着効果もよいため、垂直立面の火災に対する温度引き下げ、防消火効果が高い。
【0050】
本発明において、前記混合の回転速度は100r/minであることが好ましい。前記混合の時間は90分であることが好ましい。本発明は前記混合の方式について特に限定しない。当業者が熟知する混合方式を採用すればよく、本発明の具体的な実施例では撹拌することが好ましい。
【0051】
発火エリアで穿孔した後、本発明はグラウトポンプで前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の混合スラリーを穿孔ポンプから発火エリアに送る。
本発明において、前記ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の混合スラリーのポンプ送り量は10~50m/hであることが好ましい。
本発明は前記穿孔の方式について特に限定しない。当業者が熟知する穿孔方式を採用すればよい。
【0052】
前記穿孔後、本発明は穿孔中に管を通すことが好ましい。本発明は前記管を通す方式について特に限定しない。当業者が熟知する管通し方式を採用すればよい。
本発明は前記グラウトポンプに対する具体的な要件はない。当業者が熟知するグラウトポンプを採用すればよい。
【0053】
本発明は前記穿孔から排出されるCOの含有量及びCOの温度を検出することにより、可燃物の燃焼が停止したか否かを判定することが好ましい。前記COの含有量が0.0024%未満である場合、又は前記COの温度が35℃未満であれば、可燃物の燃焼が停止したものとみなす。
【0054】
以下は実施例を踏まえて本発明が提供するハイドロゲル空気遮断防消火薬剤及びその製造方法、石炭の自然発火防止方法、消火方法について詳細に説明するが、これらを本発明の保護範囲を限定するものと考えることはできない。
【0055】
実施例1
質量パーセント含量によって以下の成分を量る。
【0056】
2.5%のフルオロカーボン界面活性剤、15%の水素炭素含有界面活性剤、0.5%のキサンタンガム、8%の尿素、0.1%のOP-10、0.5%のイソブタノール、1%の安息香酸ナトリウム、0.8%のリン酸二水素アンモニウム、2.5%の硫酸水素マグネシウム及び残りの水。
水に安息香酸ナトリウムを添加し、撹拌・溶解させ、安息香酸ナトリウム水溶液を得る。
【0057】
安息香酸ナトリウム水溶液にリン酸水素アンモニア、キサンタンガム、尿素、OP-10、イソブタノール及び硫酸水素マグネシウムを添加した後、撹拌する。撹拌速度は400r/minとし、1時間後、混合溶液を得る。
【0058】
混合溶液にフルオロカーボン活性剤と水素炭素活性剤を添加し、撹拌する。撹拌速度は100r/minとし、30min後、ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤を得る。
【0059】
得られたハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の粘度の試験を行う。回転式粘度計を採用し、適切なローターと測定範囲を選択して、測定された粘度は0.024Pa・sである。
【0060】
得られたハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の安定性の試験を行う。ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤を50℃の恒温器に入れ、酸素を供給し続ける条件下で熱老化試験を行い、18カ月後、その粘度を測定したところ、粘度値は0.022Pa・sで有意な変化がなく、本発明が提供するハイドロゲル空気遮断防消火薬剤は優れた安定性を持っていることが明らかになった。
【0061】
本実施例で得られたハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の性能について試験を行った。試験結果は表1参照。
実施例2
質量パーセント含量によって以下の成分を量る。
【0062】
2.5%のフルオロカーボン界面活性剤、20%の水素炭素含有界面活性剤、5%のアルギン酸ナトリウム、20%の塩化ナトリウム、1%のOP-10、2%のイソブタノール、1%の安息香酸ナトリウム、1.5%の炭酸水素ナトリウム、3%の硫酸水素マグネシウム及び残りの水。
水に安息香酸ナトリウムを添加し、撹拌・溶解させ、安息香酸ナトリウム水溶液を得る。
【0063】
安息香酸ナトリウム水溶液に炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、OP-10、イソブタノール及び硫酸水素マグネシウムを添加した後、撹拌する。撹拌速度は400r/minとし、1時間後、混合溶液を得る。
【0064】
混合溶液にフルオロカーボン活性剤と水素炭素活性剤を添加し、撹拌する。撹拌速度は100r/minとし、30min後、ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤を得る。
【0065】
得られたハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の粘度の試験を行う。回転式粘度計を採用し、適切なローターと測定範囲を選択して、測定された粘度は0.02Pa・sである。
【0066】
得られたハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の安定性の試験を行う。ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤を50℃の恒温器に入れ、酸素を供給し続ける条件下で熱老化試験を行い、18カ月後、その粘度を測定したところ、粘度値は0.019Pa・sで有意な変化がなく、本発明が提供するハイドロゲル空気遮断防消火薬剤は優れた安定性を持っていることが明らかになった。
【0067】
本実施例で得られたハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の性能について試験を行った。試験結果は表1参照。
実施例3
質量パーセント含量によって以下の成分を量る。
【0068】
5%のフルオロカーボン界面活性剤、15%の水素炭素含有界面活性剤、0.5%のアルギン酸ナトリウム、25%の尿素、2%のスパン80、3.5%のn-ブチルアルコール、1%の安息香酸ナトリウム、0.8%の炭酸水素アンモニウム、2.5%の硫酸アルミニウム及び残りの水。
水に安息香酸ナトリウムを添加し、撹拌・溶解させ、安息香酸ナトリウム水溶液を得る。
【0069】
安息香酸ナトリウム水溶液に炭酸水素アンモニウム、アルギン酸ナトリウム、尿素、スパン80、n-ブチルアルコール及び硫酸アルミニウムを添加した後、撹拌する。撹拌速度は400r/minとし、1時間後、混合溶液を得る。
【0070】
混合溶液にフルオロカーボン活性剤と水素炭素活性剤を添加し、撹拌する。撹拌速度は100r/minとし、30min後、ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤を得る。
【0071】
得られたハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の粘度の試験を行う。回転式粘度計を採用し、適切なローターと測定範囲を選択して、測定された粘度は0.029Pa・sである。
【0072】
得られたハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の安定性の試験を行う。ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤を50℃の恒温器に入れ、酸素を供給し続ける条件下で熱老化試験を行い、18カ月後、その粘度を測定したところ、粘度値は0.026Pa・sで有意な変化がなく、本発明が提供するハイドロゲル空気遮断防消火薬剤は優れた安定性を持っていることが明らかになった。
本実施例で得られたハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の性能について試験を行った。試験結果は表1参照。
【0073】
表1 実施例1~3から得られたハイドロゲル風通し防止用消火材の技術指標試験結果
【0074】
表1から分かるように、本発明が提供するハイドロゲル空気遮断防消火薬剤は各技術指標においていずれも標準技術指標の要求を満たし、石炭の自然発火防止及び消火に応用することができる。
【0075】
応用例1
実施例1~3で得られたハイドロゲル空気遮断防消火薬剤、及び当分野において一般的な泡沫ゲル材をそれぞれ石炭表面に吹き付ける。吹き付け量はいずれも5トン/mで、乾燥後、吹き付け後の石炭を得る。
【0076】
本発明における実施例1~3で得られたハイドロゲル空気遮断防消火薬剤吹き付け後の石炭は、空気中において18カ月間貯蔵した後も、水分の揮発、収縮、乾燥によるき裂、粉化などの現象が発生せず、自然発火しにくい。
【0077】
当分野の一般的な泡沫ゲル材料吹き付け後の石炭は、空気中において1カ月貯蔵した後、水分の揮発、収縮、乾燥によるき裂、粉化などの現象が発生し、自然発火が発生しやすい。
【0078】
応用例2
実施例1で得られたハイドロゲル空気遮断防消火薬剤と水を1:100の質量比で混合し、ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の混合スラリーを得る。
【0079】
ある空き地に発火エリアを設置し、火の勢いを強くする。発火エリアで穿孔した後、グラウトポンプでハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の混合スラリーを前記発火エリアに送る。ハイドロゲル空気遮断防消火薬剤の混合スラリーのポンプ送り量は200 L/minとする。孔から排出されたCOの含有量及びCOの温度を測定したところ、30min以内では、孔から排出されたCOの含有量が0.0024%未満であり、可燃物の燃焼も停止したことがわかり、本発明が提供するハイドロゲル空気遮断防消火薬剤は優れた消火性能を持っていることが明らかになった。
【0080】
以上述べたところは単に本発明の好ましい実施形態であり、当業者にとっては、本発明の原理を逸脱しないことを前提に、いくつかの改良や修正を行うことが可能であり、これらの改良や修正も本発明の保護範囲とみなされるべきであることに留意されたい。