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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066054
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】RFIDタグ、導通判定装置
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/07 20060101AFI20230508BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20230508BHJP
   G06K 7/10 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
G06K19/07 160
G06K19/077 200
G06K7/10 184
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176544
(22)【出願日】2021-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】391019658
【氏名又は名称】株式会社中部プラントサービス
(71)【出願人】
【識別番号】514221115
【氏名又は名称】株式会社イーガルド
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小▲浜▼ 清
(72)【発明者】
【氏名】加藤 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】蟹江 吉弘
(72)【発明者】
【氏名】稲本 悦郎
(72)【発明者】
【氏名】亀井 翔平
(57)【要約】
【課題】2つの金属体間における導通状態を非接触で検出する。
【解決手段】RFIDタグ20は、一方向に長いブロック状のベース基板21と、ベース基板21の第1面21Aに重ねた状態で配置されるアンテナ基板22と、ベース基板21とアンテナ基板22の間に位置し、ベース基板21との対向面に第1電極33Aと第2電極33Bを有するICチップモジュール23と、ICチップモジュール23の第1電極33Aに電気的に接続された第1検出端子25Aと、ICチップモジュール23の第2電極33Bに電気的に接続された第2検出端子25Bと、を備え、第1検出端子25Aと第2検出端子25Bは、それぞれ第1金属体M1と第2金属体M2に電気的に接続され、アンテナ基板22は、2つの金属体間の導通の有無の検出結果を電波で発信する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDタグであって、
一方向に長いブロック状のベース基板と、
前記ベース基板の第1面に重ねた状態で配置されるアンテナ基板と、
前記ベース基板と前記アンテナ基板の間に位置し、前記ベース基板との対向面に第1電極と第2電極を有するICチップモジュールと、
前記ICチップモジュールの第1電極に電気的に接続された第1検出端子と、
前記ICチップモジュールの第2電極に電気的に接続された第2検出端子と、を備え、
前記第1検出端子と前記第2検出端子は、それぞれ第1金属体と第2金属体に電気的に接続され、
前記アンテナ基板は、2つの金属体間の導通の有無の検出結果を電波で発信する、RFIDタグ。
【請求項2】
請求項1に記載のRFIDタグであって、
前記ベース基板は、絶縁性の材料からなり、前記第1面の反対側に第2面を有し、
前記第2面は、前記第1面とは所定距離以上離隔しており、
前記第2面を装着面として、前記金属体に装着される、RFIDタグ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のRFIDタグであって、
前記ベース基板に対して前記アンテナ基板を保持するクリップを備え、
前記第1検出端子及び前記第2検出端子は、前記クリップの弾性力により、前記第1電極及び前記第2電極との接触状態を保つことで、電極との電気的な接続を維持する、RFIDタグ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のRFIDタグと、
前記RFIDタグから非接触で検出結果を読み取るリーダと、を備えた、導通判定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の導通判定装置であって、
前記第1検出端子と前記第2検出端子には、犠牲防食効果を有する組み合わせの金属がそれぞれ接続される、導通判定装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の導通判定装置であって、
前記リーダは、
前記RFIDタグとの間で電波を送受信するリーダ側アンテナと、
制御部と、を含み、
前記RFIDタグは、受信した電波から電力の供給を受けて、導通状態の検出及び検出結果の発信を行うパッシブ型であり、
前記制御部は、前記リーダ側アンテナで前記RFIDタグが発信する検出結果を受信できるように、前記RFIDタグに出力する電波のレベルを自動調整する、導通判定装置。
【請求項7】
請求項6に記載の導通判定装置であって、
前記制御部は、前記リーダ側アンテナで前記RFIDタグが発信する前記検出結果を受信できない場合、出力する電波のレベルを上昇させる、導通判定装置。
【請求項8】
請求項7に記載の導通判定装置であって、
前記検出結果は、前記第1検出端子と前記第2検出端子の間が導通しているときに検出されるクローズ信号、又は、導通していないときに検出されるオープン信号であり、
前記制御部は、受信した前記オープン信号及び前記クローズ信号の順序及び数に基づき、導通の有無を判定する、導通判定装置。
【請求項9】
請求項8に記載の導通判定装置であって、
前記制御部は、前記クローズ信号を複数回受信する前に、前記オープン信号を1回以上受信した場合は、前記第1検出端子と、前記第2検出端子とが導通していないと判定し、
前記オープン信号を1回以上受信する前に、前記クローズ信号を複数回受信した場合は、前記第1検出端子と、前記第2検出端子とが導通していると判定する、導通判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2点間における導通の有無を検出するRFIDタグ、及び、導通の有無を判定する導通判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の鉄鋼材防食用保護シートは、鉄鋼材と、卑金属薄板(犠牲防食材)とが、導電性接着剤により電気的に接続されることで、犠牲防食効果により鉄鋼材の腐食を抑制する。しかし、鉄鋼材と卑金属薄板との導通が途切れると防食効果は失われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4643288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属体間の導通の有無は、例えばテスターを用いて判定することができるが、事前に表面を研磨して金属を露出させる必要がある。また、犠牲防食材等の検査対象物が高所にある場合は足場を設置する必要がある。非接触で導通の有無を判定できれば、表面の研磨や足場の設置は不要となり、作業効率は改善する。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、金属体間の導通状態を検出するRFIDタグ、並びに、金属体間の導通状態を非接触で判定する導通判定装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のRFIDタグは、一方向に長いブロック状のベース基板と、前記ベース基板の第1面に重ねた状態で配置されるアンテナ基板と、前記ベース基板と前記アンテナ基板の間に位置し、前記ベース基板との対向面に第1電極と第2電極を有するICチップモジュールと、前記ICチップモジュールの第1電極に電気的に接続された第1検出端子と、前記ICチップモジュールの第2電極に電気的に接続された第2検出端子と、を備え、前記第1検出端子と前記第2検出端子は、それぞれ第1金属体と第2金属体に電気的に接続され、前記アンテナ基板は、2つの金属体間の導通の有無の検出結果を電波で発信する。
【0007】
このようにすると、導通の有無の検出結果を、電波を介して非接触で発信することができる。
【0008】
この発明の実施態様として、以下の構成が望ましい。前記ベース基板は、絶縁性の材料からなり、前記第1面の反対側に第2面を有し、前記第2面は、前記第1面とは所定距離以上離隔しており、RFIDタグは、前記第2面を装着面として、前記金属体に装着される。
【0009】
金属体とICチップモジュールの距離が所定距離未満まで接近すると、ICチップモジュールが外乱の影響を受けて検出の正確性が低下するおそれがある。第1面と第2面との距離を所定距離以上にすると、金属体とICチップモジュールが所定距離以上離隔するため、外乱による影響を低減し、より正確に導通の有無を検出できる。
【0010】
RFIDタグは、前記ベース基板に対して前記アンテナ基板を保持するクリップを備え、前記第1検出端子及び前記第2検出端子は、前記クリップの弾性力により、前記第1電極及び前記第2電極との接触状態を保つことで、電極との電気的な接続を維持する。
【0011】
各端子と各電極は、クリップで押さえつけられることで接触状態を保ち、電気的な接続が維持される。電極に対して端子が固定されていないので、温度変化と線膨張係数の違いにより電極と端子の位置にずれが生じても、接続部分が破損せず、良好な接続状態を維持することができる。これにより、温度変化に強いRFIDタグにすることができる。
【0012】
導通判定装置は、RFIDタグと、前記RFIDタグから非接触で検出結果を読み取るリーダと、を備える。このようにすると、リーダを用いてRFIDタグの検出結果を非接触で受信できる。
【0013】
前記第1検出端子と前記第2検出端子には、犠牲防食効果を有する組み合わせの金属がそれぞれ接続されていてもよい。導通の有無から、犠牲防食の効果を維持しているか否かを判断できる。
【0014】
前記リーダは、前記RFIDタグとの間で電波を送受信するリーダ側アンテナと、制御部と、を含み、前記RFIDタグは、受信した電波から電力の供給を受けて、導通状態の検出及び検出結果の発信を行うパッシブ型であり、前記制御部は、前記リーダ側アンテナで前記RFIDタグが発信する検出結果を受信できるように、前記RFIDタグに出力する電波のレベルを自動調整してもよい。
【0015】
このようにすると、リーダは、RFIDタグの検出結果を、より確実に受信することができる。
【0016】
前記制御部は、前記リーダ側アンテナで前記RFIDタグが発信する前記検出結果を受信できない場合、出力する電波のレベルを上昇させてもよい。電波レベルの上昇により、リーダからRFIDタグに供給する電力が増大すると、RFIDタグがリーダに向けて発信する電波のレベルも上昇する。これにより、リーダはより確実にRFIDタグからの電波を受信できる。
【0017】
前記検出結果は、前記第1検出端子と前記第2検出端子の間が導通しているときに検出されるクローズ信号、又は、導通していないときに検出されるオープン信号であり、前記制御部は、受信した前記オープン信号及び前記クローズ信号の順序及び数に基づき、導通の有無を判定してもよい。
【0018】
検出結果には、実際の導通状況とは異なる結果を示すエラーが含まれることがある。リーダが受信したオープン信号及びクローズ信号の順序及び数に基づいて導通の有無を判定することにより、エラーの影響を除外して、導通の有無をより正確に判定できる。
【0019】
前記制御部は、前記クローズ信号を複数回受信する前に、前記オープン信号を1回以上受信した場合は、前記第1検出端子と、前記第2検出端子とが導通していないと判定し、前記オープン信号を1回以上受信する前に、前記クローズ信号を複数回受信した場合は、前記第1検出端子と、前記第2検出端子とが導通していると判定してもよい。
【0020】
このようにすると、少なくとも最初に検出されるクローズ信号は導通の有無の判断には用いられないため、最初のクローズ信号がエラーであったとしても、判定結果に与える影響を除外することができる。2度目以降のクローズ信号により、正確な判定をすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本開示のRFIDタグによれば、導通の有無についての検出結果を、非接触で発信することができる。本開示の導通判定装置によれば、導通の有無を非接触で判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】導通判定装置の説明図
図2】RFIDタグの斜視図
図3】RFIDタグの分解図
図4a】ICチップモジュールの底面図
図4b】ICチップモジュールのB-B断面図
図5】RFIDタグのA-A断面図
図6】リーダのブロック図
図7a】エラー発生の説明図
図7b】エラー発生の説明図
図7c】エラー発生の説明図
図7d】エラー発生の説明図
図8】導通判定処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施形態>
図1から図8を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
【0024】
1.全体構成
図1は、鋼構造物を構成する金属体M1と、犠牲防食材である金属体M2との導通の有無を検出する導通判定装置10を示す図である。鋼構造物は、例えば屋外に設置される橋梁、鉄塔、標識柱等である。
【0025】
導通判定装置10は、リード線27A、27Bを介して金属体M1、M2にそれぞれ電気的に接続され、金属体M1、M2間の導通の有無を検出するRFIDタグ20と、RFIDタグ20の検出結果を非接触で受信するリーダ40と、を備える。金属体M1、M2はそれぞれ「第1金属体」、「第2金属体」の一例である。RFIDタグ20は、金属体M1又はM2の表面に取り付けられる。
【0026】
なお、図の簡略化のため、図1では金属体M1、M2及びRFIDタグ20を保護するための防食被覆を図示省略している。防食被覆はシート状であり、金属体M2及びRFIDタグ20を覆うように、金属体M1に貼り付けられる。
【0027】
金属体M1は、例えば屋外に設置される鋼構造物を構成する部材であり、その材質は鋼である。金属体M2は、鋼よりもイオン化傾向の高い、マグネシウム合金・亜鉛合金・アルミニウム合金などからなる板状の部材である。本実施形態では、一例として、金属体M2の材質をマグネシウム合金とする。金属体M2の大きさは、金属体M1と比べて小さい。金属体M2は導電性接着剤Pを介して金属体M1の表面に取り付けられる。
【0028】
導電性接着剤Pは、金属体M1と金属体M2の間の導通を保ちつつ、両者を接着する。導電性接着剤Pとしては、エポキシ系接着剤をバインダーとし、銀などの金属粒子を添加した接着剤を例示することができる。
【0029】
金属体M1、M2のイオン化傾向の違いにより、金属体M1と導通している金属体M2は犠牲防食効果を有する。具体的には、鋼構造物に水分等の電解質が付着すると、金属体M2中のマグネシウム・亜鉛・アルミニウムなどがイオン化(腐食)し、これに伴い発生した電子が導電性接着剤Pを介して金属体M1に移動する。これにより、金属体M2の腐食が進行する代わりに金属体M1の腐食は抑制される。
【0030】
金属体M1、M2間の導通が途切れると、上述した電子の移動ができなくなるため、防食効果が失われ、金属体M1の腐食が進行する。したがって、金属体M1、M2間の導通の有無を検出することで、防食効果が維持できているか否かを判定することができる。
【0031】
金属体M1、M2間の導通が失われる原因としては、導電性接着剤Pからの金属体M2の剥離や、腐食が進行することによる金属体M2の消耗等が考えられる。
【0032】
2.RFIDタグ20について
図2から図6を用いてRFIDタグ20について説明する。RFIDタグ20は、リーダ40の求めに応じて金属体M1、M2間の導通状態を検出し、検出結果をリーダ40に電波で送信する機能を有している。
【0033】
図2及び図3に示すように、RFIDタグ20は、ベース基板21と、アンテナ基板22と、ICチップモジュール23と、クリップ24と、接続端子25(25A、25B)と、カシメ端子26と、リード線27(27A、27B)と、からなる。以下の説明において、図2に示すベース基板21の長手方向をX方向、ベース基板21からリード線27が延出する方向をY方向、X方向とY方向の両方に直交する方向をZ方向(上下方向)とする。接続端子25A、25Bは、それぞれ「第1検出端子」、「第2検出端子」の一例である。
【0034】
ベース基板21は、絶縁性を有する合成樹脂等からなり、その形状はX方向に長い略直方体状(ブロック状)である。以降の説明において、ベース基板21のZ方向の長さを、ベース基板21の厚みともいう。
【0035】
ベース基板21の上面21Aには、後述する接続端子25及びICチップモジュール23が格納される格納部28が凹設されている。上面21Aは、「第1面」の一例である。格納部28は、ベース基板21の上面21Aに凹設された第1格納部28Aと、第1格納部28Aの底面に凹設された第2格納部28Bと、からなる。
【0036】
第2格納部28Bには、接続端子25の一部が格納され、第1格納部28Aには、ICチップモジュール23が格納される。
【0037】
アンテナ基板22は、後述するICチップモジュール23の内層に形成されている内層アンテナ32と電磁結合して、内層アンテナ32の感度を向上させる機能を有している。
【0038】
アンテナ基板22は、アルミ合金等の金属板からなり、X方向に長いアンテナ本体22Aと、アンテナ本体22AのY方向の端縁から下向きに延びる4つの爪部22Bと、を備える。アンテナ本体22Aは、ベース基板21の上面21Aを覆うが、一部には後述するクリップ24との干渉を避けるための切り欠き部22Cが形成されている。
【0039】
爪部22Bは、Y方向に間隔を空けて並ぶ2つを一対として、アンテナ基板22に2対設けられている。一対の爪部22Bは、ベース基板21を両側から挟み込み、アンテナ基板22をベース基板21に対して固定する。
【0040】
爪部22Bの上下方向の長さは、ベース基板21の厚みよりも小さく、爪部22Bはベース基板21の下面21Bよりも下方には突出しない。
【0041】
ICチップモジュール23は、図4(a)、(b)に示すように、パッケージ29と、ICチップ30と、を有する。図4(b)は、図4(a)のB-B断面図である。パッケージ29は、セラミックを絶縁材とした矩形板状の積層基板であり、ICチップ30が実装されている。
【0042】
ICチップモジュール23は、リーダ40が発する電波から電力の供給を受けたICチップ30が2つの電極33(33A、33B)間の導通の有無を検出し、検出結果をリーダ40に送信することができるモジュールである。ICチップモジュール23はいわゆるパッシブ型であり、受信する電波から電力を得るため、モジュール側の電源は不要である。
【0043】
パッケージ29は、キャビティ31、内層アンテナ32、2つの電極33(33A、33B)を備える。電極33A、33Bは、それぞれ「第1電極」「第2電極」の一例である。
【0044】
キャビティ31は、パッケージ29の表面に開口した凹部であり、キャビティ31の底にICチップ30が実装される。キャビティ31の底面には、内層アンテナ32及び電極33A、33Bにそれぞれ接続される複数の電極(図示せず)が設けられている。これらの電極と、ICチップ30側の電極とは、ワイヤボンディングで接続される。ワイヤボンディングは、ワイヤに変位裕度があり、温度変化に対する接続信頼性が高い接続方法である。
【0045】
キャビティ31は、エポキシ樹脂等からなるモールド材35で隙間なく埋められ、ICチップ30及びICチップ30とパッケージ29との接続を保護する。
【0046】
内層アンテナ32は、パッケージ29の内層に設けられた導体パターンにより形成されたアンテナである。内層アンテナ32は、ICチップ30と電気的に接続され、ICチップ30への電力の供給や電波の送受信を行う。内層アンテナ32は、アンテナ本体22Aと電磁結合しているため、内層アンテナ32とアンテナ基板22を併せて、感度の高い1つのアンテナとして取り扱うことができる。
【0047】
RFIDタグ20は、金属体M1又は金属体M2の表面に取り付けられるため(図1参照)、アンテナ本体22A及び内層アンテナ32は、金属体M1、M2の表面で反射した電波に起因する外乱の影響を受けやすい。外乱の影響は、距離が近いほど大きくなるため、アンテナ本体22A及び内層アンテナ32と、金属体M1、M2との距離は、送受信に影響しない距離(所定距離)以上離隔する必要がある。
【0048】
RFIDタグ20では、ベース基板21の厚みを所定距離以上に設定している。上面21Aと対向する下面21Bが、金属体M1に対する装着面である。アンテナ本体22A及び内層アンテナ32と、金属体M1、M2との間にベース基板21が位置するため、両者は所定距離以上離隔され、外乱の影響を受けにくくなる。下面21Bは「第2面」の一例である。なお、ベース基板21の厚みは所定距離以上の値で任意に変更することができる。
【0049】
電極33A、33Bは、パッケージ29の表面に2つ並んで配されている。ICチップモジュール23が第1格納部28Aに格納されている状態では、電極33はベース基板21との対向面に位置する。電極33A、33Bと、ICチップ30とは、パッケージ29の内層において電気的に接続されている。
【0050】
接続端子25は、金属製であり、接続部251と、接続部251からY方向に延びる延設部252と、からなる。接続部251は、略正方形状であり、上面には上方に向けて円柱状に突出した凸部253が形成されている。延設部252は、接続部251よりも幅が狭く、Y方向に長い長方形状である。接続端子25と、リード線27とは、カシメ端子26を介して連結され、かつ電気的に接続されている。
【0051】
2本のリード線27は、図1に示すようにそれぞれ金属体M1、M2と接続される。
【0052】
クリップ24は、弾性を有する線材を所定の形状に屈曲したものである。クリップ24は、図3に示すように、ICチップモジュール23の上面に当接する上側当接部24Aと、ベース基板21の下面21Bに当接する下側当接部24Bと、上側当接部24Aと下側当接部24Bとを繋ぐ中間部24Cと、からなる。
【0053】
図5に示すように、クリップ24は、弾性力によってICチップモジュール23の上面と、ベース基板21の下面21Bとを挟み込み、ICチップモジュール23がベース基板21から離れないように保持する。同時に、クリップ24の弾性力により、ICチップモジュール23の底面に位置する電極33は、接続端子25に押し当てられる。これにより、電極33と接続端子25との接触状態が保たれて、電気的な接続が維持される。
【0054】
3.リーダ40について
リーダ40は、RFIDタグ20に対してUHF帯の電波を送信して非接触で電力を供給し、導通の有無を検出させる機能と、RFIDタグ20が発信した電波を受信して、検出結果を受信する機能とを有する。リーダ40とRFIDタグ20は、数m以上離れた距離でも、電力の供給及び通信をすることができる。
【0055】
図6は、リーダ40の電気的構成を示すブロック図である。リーダ40は、制御部41と、送信回路42と、受信回路43と、リーダ側アンテナ44と、表示部45と、を備える。
【0056】
制御部41は、リーダ40の制御装置である。制御部41は、CPU46とメモリ47とを有している。
【0057】
制御部41は、リーダ40を制御するコントローラである。メモリ47には、RFIDタグ20に送信する電波のレベルを決定したり、RFIDタグ20から受信した信号に基づき導通の有無を判定したりする導通判定処理のプログラム等が記憶されている。また、メモリ47は、受信した検出結果を累積的に記憶する記憶媒体である。
【0058】
表示部45は、液晶パネルやタッチパネル等の表示装置であり、リーダ40の動作状況に関する情報や、送信した電波のレベル、受信した検出結果等を表示する。
【0059】
送信回路42は、制御部41からの指示により、UHF帯の電波を出力する。電波はリーダ側アンテナ44から放射され、電波を受信したRFIDタグ20に電力を供給する。リーダ側アンテナ44から放射する電波レベルは、一例として最大30dBmである。また、リーダ側アンテナ44は、RFIDタグ20が発信する検出結果を受信する。受信した検出結果は受信回路43で増幅されたのちに、制御部41に送信される。
【0060】
4.検出原理及び検出エラーについて
上述したように、RFIDタグ20はリーダ40が発信した電波により供給された電力を使って金属体M1、M2間の導通の有無を検出し、検出結果をリーダ40に送信する。以下、RFIDタグ20の検出原理及びエラーの発生について説明する。
【0061】
図7(a)、(b)は、RFIDタグ20の2つの接続端子25間がショートしている状態と、オープンしている状態を示している。図7(a)に示すように、RFIDタグ20は、一方の接続端子25Aから電荷が放出され、他方の接続端子25Bに電荷が到達したことを観測すると、接続端子25間の導通があると判断し、内層アンテナ32から「クローズ信号CS」を発信する。これに対し、図7(b)に示すように、接続端子25Bに戻る電荷を観測できない場合や、接続端子25Aから電荷が放出できない場合は、接続端子25間に導通がないと判断し、「オープン信号OS」を発信する。
【0062】
しかし、接続端子25間に金属体M1、M2を接続する実際の測定においては、接続端子25間の導通がない場合であっても、RFIDタグ20が「クローズ信号CS(導通あり)」を発信することがある。
【0063】
図7(c)は、金属体M1、M2が剥離しており、導通していない状態を示している。しかし、リーダ40が発信する電波を受けた金属体M1、M2には電荷が発生する。発生した電荷は、金属体M2から接続端子25Bに供給され、RFIDタグ20は、接続端子25Aから放出した電荷が接続端子25Bに戻ってきたと判断する。この場合、実際には導通していないにもかかわらず、「クローズ信号CS」が発信されるというエラーが発生する。
【0064】
図7(d)は、金属体M1、M2間が導電性接着剤Pによって導通している状態を示している。この状態で、リーダ40が発信する電波を受けて金属体M1で発生した電荷が、接続端子25Aに向かうことがある。
【0065】
この場合、実際には接続端子25間は導通しているにもかかわらず、接続端子25Aから金属体M1に向かう電荷が、金属体M1で発生した電荷によって阻害されて接続端子25Bに到達できない。実際には導通しているにもかかわらず、「オープン信号OS」が発信されるというエラーが発生する。
【0066】
エラーの発生を抑制するためには、金属体M1、M2で発生する電荷の量を少なくするために、リーダ40から送信する電波のレベルを低くすることが有効である。しかし、電波のレベルが低いとRFIDタグ20に供給する電力が減少し、RFIDタグ20が発信する電波レベルも低下するため、リーダ40での受信が困難になる。
【0067】
そこで、リーダ40において、後述する導通判定処理を行い、エラーが発生したとしても、導通の有無を正確に判定する。
【0068】
5.導通判定処理について
図8は、リーダ40の制御部41で行われる、導通判定処理のフローチャートである。メモリ47には、下記のフローチャートを実行するためのプログラムが保存されている。
【0069】
制御部41の指示により導通判定処理がスタートすると、制御部41は、リーダ40が発信する電波レベルの初期値を調整する(S10)。電波レベルの初期値は、例えばリーダ40とRFIDタグ20との距離に基づき制御部41が自動的に設定する。電波レベルの初期値は、リーダ40のユーザが任意の値を入力してもよいし、設定しうる最も小さい値としてもよい。
【0070】
原則として、リーダ40とRFIDタグ20の距離が遠いほど、電波レベルの初期値を大きく設定する。一例として、距離50cmのときの初期値は9dBm、距離50cm~2mのときの初期値は15dBm、距離2m以上のときの初期値は20dBmである。
【0071】
次に、制御部41は、調整された電波レベルの値で、所定時間(例えば2秒間)電波を送信する(S20)。電波の送信は、例えば毎秒50回の頻度で行われる。RFIDタグ20は、リーダ40からの電波を受信すると、その都度検出結果(「オープン信号OS」又は「クローズ信号CS」)を、リーダ40に送信する。検出結果は、メモリ47に累積的に保存される。リーダ40は、RFIDタグ20に向けて電波を送信しつつ、同時に、受信した検出結果について下記の処理を行う。なお、RFIDタグ20に十分な電力が供給されず電波を送信できなかった場合や、RFIDタグ20が送信した電波が微弱なためリーダ40で受信できなかった場合には、検出結果は保存されない。
【0072】
制御部41は、メモリ47に保存されている検出結果を受信した順にカウントし、「オープン信号OS」が1以上含まれている場合(S30:YES)、金属体M1、M2間の導通がないと判定する。判定した時点で電波の送信開始から所定時間経過していなくても、導通判定処理を終了する。このとき、制御部41は、導通がないことを表示部45に表示したり、音を鳴らしたりして、リーダ40のユーザに判定結果(導通なし)を報知する。
【0073】
「オープン信号OS」が1以上ない場合、つまり1度も「オープン信号OS」を受信していない場合は(S30:NO)、制御部41は、累積保存されている検出結果中に、「クローズ信号CS」が3以上含まれているか否かを判断する(S40)。
【0074】
「クローズ信号CS」が3以上含まれている場合は(S40:YES)、制御部41は、金属体M1、M2間が導通していると判定し、電波の送信開始から所定時間経過前であっても導通判定処理を終了する。そして、制御部41は、ユーザに判定結果(導通あり)を報知する。
【0075】
「クローズ信号CS」が3以上含まれていない場合は(S40:NO)、制御部41は、リーダ40が出力する電波のレベルが30dBm(リーダ40の最大出力)に到達しているか否かを判定する(S50)。電波のレベルが30dBmに到達している場合は(S50:YES)、一旦導通判定処理を終了する。この場合、導通判定装置10は導通の有無を判定できていない。
【0076】
制御部41は、表示部45に、例えば「リーダをRFIDタグに近付けて再度計測してください」と表示させ、ユーザに対してリーダ40をRFIDタグ20に近付けた上で、再度導通判定処理を開始するよう促す。リーダ40とRFIDタグ20を近付けることで、RFIDタグ20に供給される電力が増大するため、再度の導通判定処理において判定結果が得られる可能性がある。
【0077】
未だ電波のレベルが30dBmに到達していない場合は(S50:NO)、制御部41は、送信回路42に電波のレベルを1dBm増加させるよう指示し、増加後の電波レベルで所定時間にわたって電波を送信する(S20)。
【0078】
この構成では、リーダ40が受信したRFIDタグ20の信号に応じて、リーダ40が出力する電波レベルが自動調整されるため、ユーザが電波レベルを逐一調整する必要がない。
【0079】
また、測定開始時点では電波レベルの低い電波をRFIDタグ20に向けて発信するため、金属体M1、M2に発生する電荷の量が少なくなり、発生した電荷に起因したエラー(図7(c)、(d)参照)の発生を抑制できる。
【0080】
リーダ40が発信する電波レベルが低ければ、RFIDタグ20に供給される電力が少なくなり、RFIDタグ20からリーダ40に向けて発信する電波レベルも低くなる。しかし、制御部41がリーダ40から繰り返し発信される電波レベルを次第に上昇するように自動調整することで、RFIDタグ20が発信する電波レベルも上昇するため、最終的にはリーダ40で受信可能な電波レベルになる。これにより、エラーの発生を抑制しつつ、導通の有無をより確実に判定することができる。
【0081】
また、上述したように、金属体M1、M2に発生した電荷に起因して、実際にはオープン状態であるにもかかわらず、クローズ信号CSを発信するというエラーが発生しうる(図7(c)参照)。一方、RFIDタグ20がクローズ信号CS又はオープン信号OSを発信する際には、電荷が消費される。
【0082】
本実施形態では、図8のS40に示すように、制御部41は、3回以上クローズ信号CSを受信した場合にのみ、導通ありと判定する。つまり、クローズ信号CSの検出回数が2回以下の場合は、導通ありとは判定しない。このようにすると、金属体M1、M2に発生した電荷は、RFIDタグ20による2度のクローズ信号CSの発信により消費されるため、3回目以降にリーダ40が受信するクローズ信号CSにはエラーが含まれる可能性が低くなる。これにより、発生した電荷の影響を除外して、より正確に導通の有無を判定することができる。
【0083】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0084】
(1)上記実施形態では、リーダ40が発信する電波により金属体M1、M2に電荷が発生していたが、リード線27の導体部分にも同様に電荷が発生する。リード線27に発生する電荷が検出結果に及ぼす影響を小さくするために、リード線27の長さを短くしてもよい。例えばリード線27の長さを50cm以下にすれば、検出結果に及ぼす影響を低減できる。
【0085】
(2)リード線27に電流が流れると起電力が生じ、ICチップモジュール23の検出に影響を及ぼすおそれがある。リード線27がループを形成するように取り回すことで、起電力の影響を相殺して、より正確な検出結果を得ることができる。
【0086】
(3)上記実施形態では、金属体M1は鋼、金属体M2はマグネシウム合金の場合を例示したが、他の金属材料でも本発明は適用可能である。金属体M1、M2は、犠牲防食効果を有しない金属の組み合わせであってもよい。
【0087】
(4)上記実施形態では、リーダ40とRFIDタグ20間の通信にUHF帯の電波を用いたが、他の周波数帯の電波で通信してもよい。
【0088】
(5)リーダ40は検査結果を累積的に記憶したデータを他の端末(例えばパーソナルコンピュータ)に送信するインターフェース部を備えていてもよい。
【0089】
(6)上記実施形態では、クローズ信号CSを3回以上受信した際に導通ありと判定する場合を例示したが、クローズ信号CSの受信回数は、「複数回」であればよく、3回に限られない。2回や4回以上としてもよい。
【符号の説明】
【0090】
10 導通判定装置
20 RFIDタグ
21 ベース基板
21A 第1面
22 アンテナ基板
23 ICチップモジュール
25A 第1検出端子
25B 第2検出端子
33A 第1電極
33B 第2電極
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図7d
図8